特許第6406675号(P6406675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6406675電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法および電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406675
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法および電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置
(51)【国際特許分類】
   C22B 19/30 20060101AFI20181004BHJP
   C22B 7/02 20060101ALI20181004BHJP
   C22B 19/20 20060101ALI20181004BHJP
   C22B 19/04 20060101ALI20181004BHJP
   C22B 9/04 20060101ALI20181004BHJP
   C22B 9/02 20060101ALI20181004BHJP
   C22B 3/12 20060101ALI20181004BHJP
   C22B 3/14 20060101ALI20181004BHJP
   C22B 1/248 20060101ALI20181004BHJP
   C25C 1/16 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C22B19/30
   C22B7/02 A
   C22B19/20 102
   C22B19/04
   C22B9/04
   C22B9/02
   C22B3/12
   C22B3/14
   C22B1/248
   C25C1/16 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-529518(P2015-529518)
(86)(22)【出願日】2014年7月18日
(86)【国際出願番号】JP2014069184
(87)【国際公開番号】WO2015016086
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2017年7月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-157305(P2013-157305)
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】長坂 徹也
(72)【発明者】
【氏名】松八重 一代
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−102530(JP,A)
【文献】 米国特許第03512959(US,A)
【文献】 米国特許第05258055(US,A)
【文献】 CHAIRAKSA R. et al.,Reduction of ZnO in Lime Treated EAF dust with Solid Iron Powder,材料とプロセス : 日本鉄鋼協会講演論文集(CAMP-ISIJ),日本,日本鉄鋼協会,2011年 9月 1日,vol.24,No.2,p761,(論文No.21)
【文献】 CHAIRAKSA R. et al.,Alkaline Leaching of Zinc from CaO Treated EAF Dust,材料とプロセス : 日本鉄鋼協会講演論文集(CAMP-ISIJ),日本,日本鉄鋼協会,2010年 9月 1日,vol.23,Mo.2,p1038,(論文No.168)
【文献】 CHAIRAKSA Romchat et al.,New Zinc Recovery Process from EAF Dust by Lime Addition,Iron & Steel Technology Conference Proceedings,米国,Association for Iron & Steel Technology,2010年 5月 3日,vol.1,pp271-281
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気炉製鋼ダストと、その電気炉製鋼ダスト中のFeのモル数と当量以上のモル数のCaを含むカルシウム化合物とを混合後、非還元性雰囲気中で960℃以上、1100℃以下で1〜3時間熱処理して、ZnOと2CaO・Feとを得るCa混合加熱工程と、
前記Ca混合加熱工程で得られたZnOと2CaO・Feとに、前記ZnOのモル数と当量以上のモル数の鉄粉末を混合し、圧粉する鉄粉混合工程と、
前記鉄粉混合工程による圧粉体を減圧容器の内部に配置し、前記減圧容器の内部を減圧するとともに1000℃で1時間加熱して亜鉛蒸気を発生させ、前記亜鉛蒸気を冷却凝固して固体の亜鉛片を得る還元揮発工程と、
前記還元揮発工程で得られた亜鉛片を、亜鉛の融点より低い融点を有するNaCl−KClベースの多元系塩化物系フラックスに溶解させた後、冷却して、塊状の亜鉛を得る亜鉛取得工程とを、
有することを特徴とする電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法。
【請求項2】
前記カルシウム化合物は、生石灰、石灰石および消石灰のうちの少なくとも1つから成ることを特徴とする請求項1記載の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法。
【請求項3】
電気炉製鋼ダストと、その電気炉製鋼ダスト中のFeのモル数と当量以上のモル数のCaを含むカルシウム化合物とを混合後、非還元性雰囲気中で960℃以上、1100℃以下で1〜3時間熱処理して、ZnOと2CaO・Feとを取得可能に設けられたCa混合加熱手段と、
前記Ca混合加熱手段で得られたZnOと2CaO・Feとに、前記ZnOのモル数と当量以上のモル数の鉄粉末を混合し、圧粉するよう設けられた鉄粉混合手段と、
減圧容器を有し、前記鉄粉混合手段による圧粉体を前記減圧容器の内部に配置し、前記減圧容器の内部を減圧するとともに1000℃で1時間加熱して亜鉛蒸気を発生させ、前記亜鉛蒸気を冷却凝固して固体の亜鉛片を取得可能に設けられた還元揮発手段と、
前記還元揮発手段で得られた亜鉛片を、亜鉛の融点より低い融点を有するNaCl−KClベースの多元系塩化物系フラックスに溶解させた後、冷却して、塊状の亜鉛を取得可能に設けられた亜鉛取得手段とを、
有することを特徴とする電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置。
【請求項4】
前記カルシウム化合物は、生石灰、石灰石および消石灰のうちの少なくとも1つから成ることを特徴とする請求項3記載の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法および電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日本における粗鋼生産量の約3割は、電気炉を用いた鉄スクラップの再溶製・製錬によるものであり、亜鉛メッキ鋼板表面の亜鉛は、スクラップ溶解中に揮発、再酸化され、集塵ダストとして回収されている。日本全体のダスト発生量は、15kg/ton steel、すなわち年間約50〜60万tonにも達しており、自動車用メッキ鋼板スクラップの増加により今後とも増加の傾向にある。ダストは、主に鉄と亜鉛の酸化物の、ZnFe、ZnOなどから成り、いかに効率よくZnOとFeとを分離して、枯渇性希少資源である亜鉛分と鉄分とを回収できるかが重要である。
【0003】
現在、電気炉ダスト処理として国内外ともに採用されている主流の方法は、Waelz法である(例えば、特許文献1参照)。Waelz法は、ロータリーキルンを用い、電気炉ダストに炭材を加え、重油バーナーで1300℃程度まで加熱して酸化亜鉛を還元し、一旦亜鉛蒸気として揮発させるものである。しかしながら、生成された亜鉛蒸気は、雰囲気中のCOによって再酸化されるため、亜鉛は最終的には粗酸化亜鉛の形で回収され、亜鉛製錬メーカーに供給されている。一方、亜鉛分が抽出された後の残渣は炉外に排出され、一部はクリンカーとして電気炉原料としてリサイクルされるものの、他の大半は路盤材やセメント原料、あるいは埋立材として処理されている。最近では、電気炉鉄鋼メーカーやWaelzキルン事業者内に保管されるケースも多い。
【0004】
このように、Waelz法は、大量のエネルギーを使用して元々酸化物形態の亜鉛を還元して一旦金属態にするにもかかわらず、最終的に酸化物形態に戻しており、結果的に、ダスト中の酸化亜鉛を単純に分離濃縮しているだけであり、エネルギーの有効利用という観点では極めて効率が悪いという問題があった。また、Waelz法で回収される鉄成分も純度の低い酸化鉄であり、鉄の再利用率も極めて低いことから、エネルギーの投入を少なくして付加価値のある鉄酸化物に変える等、これまでの方法によらない新しい発想による高度な有効利用が望まれていた。
【0005】
このような問題点を解決するため、本発明者らは、ダスト中の鉄のモル数の2倍以上の酸化カルシウムをダストに添加し、空気中で900℃以上、1000℃以下で、60時間以上、120時間以下保持することにより、(1)式に示すように、ダスト中の亜鉛主成分であるジンクフェライトZnFeを、酸化亜鉛ZnOとダイカルシウムフェライト2CaO・Feとに変化させ、生成されたZnOと2CaO・Feとを、両者の磁気的性質の違いを利用して、高磁場勾配によって磁気分離する方法を提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−268332号公報
【特許文献2】特開2009−30121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の方法によれば、Waelz法よりも効率的に酸化亜鉛を分離することができ、酸化鉄に付加価値を付けることができる。しかし、亜鉛は酸化亜鉛として回収されており、電気炉製鋼ダストから金属亜鉛を回収する方法の開発が望まれている。また、特許文献2に記載の方法では、電気炉製鋼ダストに酸化カルシウムを添加して加熱するときの加熱時間が60時間以上であり、長すぎるという課題があった。
【0009】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、比較的短時間で高純度の金属亜鉛を回収することができる、電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法および電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、電気炉製鋼ダストに石灰を加え、非還元性雰囲気中で加熱処理する実験を行ったところ、CaO添加の有無に関わらず、鉄、亜鉛の揮発量は小さいが、塩素、フッ素のハロゲン類、鉛、カドミウムのような蒸気圧が高い重金属はいずれも大部分が揮発除去されており、特に1100℃で加熱処理後のハロゲン、鉛、カドミウム濃度は分析限界以下であることを見出して、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法は、電気炉製鋼ダストと、その電気炉製鋼ダスト中のFeのモル数と当量以上のモル数のCaを含むカルシウム化合物とを混合後、非還元性雰囲気中で960℃以上、1100℃以下で1〜3時間熱処理して、ZnOと2CaO・Feとを得るCa混合加熱工程[(2)式参照]と、前記Ca混合加熱工程で得られたZnOと2CaO・Feとに、前記ZnOのモル数と当量以上のモル数の鉄粉末を混合し、圧粉する鉄粉混合工程と、前記鉄粉混合工程による圧粉体を減圧容器の内部に配置し、前記減圧容器の内部を減圧するとともに1000℃で1時間加熱して亜鉛蒸気を発生させ[(3)式参照]、前記亜鉛蒸気を冷却凝固して固体の亜鉛片を得る還元揮発工程と、前記還元揮発工程で得られた亜鉛片を、亜鉛の融点より低い融点を有するNaCl−KClベースの多元系塩化物系フラックスに溶解させた後、冷却して、塊状の亜鉛を得る亜鉛取得工程とを、有することを特徴とする。
【0012】
【化2】
【0013】
本発明に係る電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置は、電気炉製鋼ダストと、その電気炉製鋼ダスト中のFeのモル数と当量以上のモル数のCaを含むカルシウム化合物とを混合後、非還元性雰囲気中で960℃以上、1100℃以下で1〜3時間熱処理して、ZnOと2CaO・Feとを取得可能に設けられたCa混合加熱手段[(2)式参照]と、前記Ca混合加熱手段で得られたZnOと2CaO・Feとに、前記ZnOのモル数と当量以上のモル数の鉄粉末を混合し、圧粉するよう設けられた鉄粉混合手段と、減圧容器を有し、前記鉄粉混合手段による圧粉体を前記減圧容器の内部に配置し、前記減圧容器の内部を減圧するとともに1000℃で1時間加熱して亜鉛蒸気を発生させ[(3)式参照]、前記亜鉛蒸気を冷却凝固して固体の亜鉛片を取得可能に設けられた還元揮発手段と、前記還元揮発手段で得られた亜鉛片を、亜鉛の融点より低い融点を有するNaCl−KClベースの多元系塩化物系フラックスに溶解させた後、冷却して、塊状の亜鉛を取得可能に設けられた亜鉛取得手段とを、有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法および電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置は、電気炉製鋼ダストと、その電気炉製鋼ダスト中のFeのモル数と当量以上のモル数のCaを含むカルシウム化合物とを混合後、非還元性雰囲気中で960℃以上、1100℃以下で1〜3時間熱処理することにより、鉄や亜鉛をほとんど揮発させることなく、電気炉製鋼ダストに含まれる塩素やフッ素などのハロゲン類、鉛、カドミウムのような蒸気圧が高い重金属をほぼ揮発除去することができる。また、カルシウム化合物を添加することにより、難還元性、難溶性のZnFeの生成を防ぎつつ、(2)式の反応により、ZnOと2CaO・Feとを得ることができる。熱処理時間が3時間以内と比較的短く、亜鉛回収の全行程を短時間で行うことができる。なお、このCa混合加熱工程として、特許文献2に記載の方法を用いることもできるが、熱処理時間が60時間以上と長くなってしまう。混合するカルシウム化合物は、例えば、生石灰(CaO)、石灰石(CaCO)、消石灰(Ca(OH))である。また、カルシウムフェライト(2CaO・Fe)が溶融すると予測できない現象が発生してしまうため、カルシウムフェライトが溶融しないよう、たとえ1100℃より高くなることがあったとしても、加熱温度をカルシウムフェライトの融点(約1230℃)以下に保持することが好ましい。
【0015】
得られたZnOと2CaO・Feとに鉄粉末を混合して還元することにより、(3)式に従って、亜鉛蒸気が得られ、その亜鉛蒸気を冷却凝固させることにより、金属の亜鉛片を回収することができる。還元前にカルシウム化合物添加による熱処理を行っているため、ハロゲン類や鉛等の重金属類が混入していない亜鉛片を得ることができる。なお、混合する鉄粉末としては、例えば、電解鉄粉やダライ粉(鉄スクラップの一種で、炭素鋼の切削屑)を使用することができる。また、亜鉛蒸気を発生させるための加熱温度は、減圧したときの圧力での、亜鉛の沸点以上であればよい。
【0016】
回収された金属の亜鉛片を、NaCl−KClベースの多元系塩化物系フラックスに溶解させてフラックス処理を行うことにより、亜鉛片表面の酸化層を除去することができ、塊状で高純度の金属亜鉛を回収することができる。また、亜鉛還元後の残渣の2CaO・Feは、そのまま回収して、製鋼プロセスにおける脱リン剤、あるいは高炉法における鉄源として使用することができる。
【0017】
このように、本発明に係る電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法および電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置は、電気炉製鋼ダスト中の酸化亜鉛を還元することなく酸化物として効率的に分離して、金属亜鉛を回収することができる。さらに、電気炉製鋼ダスト中の酸化鉄を製鋼プロセスにおける脱リン剤、あるいは高炉法における鉄源となる2CaO・Feとして回収することができ、電気炉製鋼ダストをほぼ完全にリサイクルすることができる。また、電気炉製鋼ダストの処理費用および投入エネルギーを大幅に削減することもできる。
【0018】
また、本発明に関する電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法は、電気炉製鋼ダストと、その電気炉製鋼ダスト中のFeのモル数と当量以上のモル数のCaを含むカルシウム化合物とを混合後、非還元性雰囲気中で960℃以上、1100℃以下で1〜3時間熱処理して、ZnOと2CaO・Feとを得るCa混合加熱工程と、前記Ca混合加熱工程で得られたZnOと2CaO・Feとを、アルカリ性または中性の水溶液中に浸漬して、ZnOを選択的に前記水溶液中に浸出させる浸出工程と、前記浸出工程でZnOが浸出した前記水溶液を電解して、陰極に亜鉛を析出させる電解採取工程とを、有していてもよい。
【0019】
本発明に関する電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置は、電気炉製鋼ダストと、その電気炉製鋼ダスト中のFeのモル数と当量以上のモル数のCaを含むカルシウム化合物とを混合後、非還元性雰囲気中で960℃以上、1100℃以下で1〜3時間熱処理して、ZnOと2CaO・Feとを取得可能に設けられたCa混合加熱手段と、前記Ca混合加熱手段で得られたZnOと2CaO・Feとを、アルカリ性または中性の水溶液中に浸漬して、ZnOを選択的に前記水溶液中に浸出させるよう設けられた浸出手段と、前記浸出手段でZnOが浸出した前記水溶液を電解して、陰極に亜鉛を析出可能に設けられた電解採取手段とを、有していてもよい。
【0020】
これらの場合、カルシウム化合物添加による熱処理で得られたZnOと2CaO・Feとを、アルカリ性または中性の水溶液中に浸漬することにより、2CaO・Feをほとんど水溶液中に溶解させることなく、ZnOを選択的に水溶液中に浸出させることができる。このため、2CaO・Feを残渣として回収することができ、製鋼プロセスにおける脱リン剤、あるいは高炉法における鉄源として使用することができる。また、ZnOが浸出した水溶液を電解することにより、陰極に亜鉛を析出させて、高純度の金属亜鉛を回収することができる。
【0021】
本発明に関する電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法で、前記浸出工程は、前記Ca混合加熱工程で得られたZnOと2CaO・Feとを、70℃以上100℃以下の前記水溶液に浸漬させることが好ましい。また、前記浸出工程の前記水溶液はNaOH水溶液またはNHCl水溶液であることが好ましい。本発明に関する電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置で、前記浸出手段は、前記Ca混合加熱手段で得られたZnOと2CaO・Feとを、70℃以上100℃以下の前記水溶液に浸漬させるよう構成されていることが好ましい。また、前記浸出手段の前記水溶液はNaOH水溶液またはNHCl水溶液であることが好ましい。これらの場合、効率的に全ての亜鉛を水溶液中に浸出させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、比較的短時間で高純度の金属亜鉛を回収することができる、電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法および電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置を示すブロック構成図である。
図2図1に示す電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置の還元揮発手段を示す側面図である。
図3】本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法について、(a)電気炉製鋼ダストのみを加熱したときの、亜鉛、鉄の揮発率、(b)塩素、フッ素、鉛、カドミウムの揮発率、(c)電気炉製鋼ダストにCaOを添加して加熱したときの、亜鉛、鉄の揮発率、(d)塩素、フッ素、鉛、カドミウムの揮発率を示すグラフである。
図4】本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法について、(a)電気炉製鋼ダストのみを加熱したとき、(b)電気炉製鋼ダストにCaOを添加して加熱したときの、熱処理後のダストのX線回折パターンである。
図5】本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法について、電気炉製鋼ダストにCaOを添加して加熱したものに鉄粉を添加し、還元揮発させたもの(石灰処理ダスト)、電気炉製鋼ダストのみを加熱したものに鉄粉を添加し、還元揮発させたもの(石灰処理なし)のX線回折パターンである。
図6】本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法について、電気炉製鋼ダストにCaOを添加して加熱したものを、NaOH水溶液に浸漬したときの、亜鉛、カルシウム、鉄の溶解量の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図6は、本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法および電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置を示している。
図1に示すように、本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置は、Ca混合加熱手段11と鉄粉混合手段12と還元揮発手段13と亜鉛取得手段14とを有している。
【0025】
図1に示すように、Ca混合加熱手段11は、混合容器と加熱装置とを有している。Ca混合加熱手段11は、電気炉製鋼ダストと、その電気炉製鋼ダスト中のFeのモル数と当量以上のモル数のCaを含むカルシウム化合物とを混合容器に入れて混合後、加熱装置により、非還元性雰囲気中で960℃以上、1100℃以下で1〜3時間熱処理するよう構成されている。これにより、Ca混合加熱手段11は、(2)式の反応により、ZnOと2CaO・Feとを取得可能になっている。なお、混合するカルシウム化合物は、例えば、生石灰(CaO)、石灰石(CaCO)、消石灰(Ca(OH))である。
【0026】
鉄粉混合手段12は、圧粉装置を有している。鉄粉混合手段12は、Ca混合加熱手段11で得られたZnOと2CaO・Feとに、ZnOのモル数と当量以上のモル数の鉄粉末を混合し、圧紛装置により、その混合物を圧粉するよう構成されている。なお、混合する鉄粉末は、例えば、電解鉄粉やダライ粉である。
【0027】
図2に示すように、還元揮発手段13は、耐熱性の減圧容器21と、減圧容器21の一端に設けられた試料保持容器22と、減圧容器21の中間部に設けられた断熱管23と、減圧容器21の他端から断熱管23の近傍まで伸びるよう設けられた低温凝縮管24と、減圧容器21の他端に設けられた排気管25とを有している。還元揮発手段13は、断熱管23より一端側の加熱ゾーン(Heating Zone)と、断熱管23より他端側の冷却ゾーン(Cooling Zone)に分かれている。還元揮発手段13は、鉄粉混合手段12による圧粉体1を、加熱ゾーンの試料保持容器22の内部に配置し、排気管25から空気を抜いて減圧容器21の内部を減圧するとともに、試料保持容器22の内部を1000℃以上に加熱することにより、(3)式に従って亜鉛蒸気2を発生させ、その亜鉛蒸気2を断熱管23の内部を通して冷却ゾーンに導入し、低温凝縮管24の表面に冷却凝固させて、固体の金属亜鉛片3を取得可能になっている。
【0028】
図1に示すように、亜鉛取得手段14は、溶解容器を有している。亜鉛取得手段14は、亜鉛の融点より低い融点を有するNaCl−KClベースの多元系塩化物系フラックスを溶解容器に入れ、還元揮発手段13で得られた亜鉛片を、溶解容器中の多元系塩化物系フラックスに溶解させた後、冷却して、塊状の亜鉛を取得可能に構成されている。
【0029】
以下、本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法について、実験結果等を参照しながら説明する。本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法は、本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置により好適に実施される。本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法は、まず、Ca混合加熱手段11により、電気炉製鋼ダストと、その電気炉製鋼ダスト中のFeのモル数と当量以上のモル数のCaを含むカルシウム化合物とを混合後、非還元性雰囲気中で960℃以上、1100℃以下で1〜3時間熱処理を行う。
【0030】
[電気炉製鋼ダストにカルシウム化合物を添加したときの加熱試験]
表1に示す電気炉製鋼ダストに、生石灰(CaO)を当量添加して混合し、3時間加熱した場合について、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、塩素(Cl)、フッ素(F)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)の揮発量と保持温度との関係を調べた。その結果を、図3(c)および(d)に示す。また、比較のため、生石灰(CaO)を添加しない場合についても同様の試験を行い、その結果を図3(a)および(b)に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
図3に示すように、CaO添加の有無に関わらず、鉄、亜鉛の揮発量は小さいが、塩素、フッ素のハロゲン類、鉛、カドミウムのような蒸気圧が高い重金属はいずれも、大部分が揮発除去されていることが確認された。特に、加熱温度が960℃以上で、それらの揮発除去率が大きく、1100℃では熱処理後のハロゲン、鉛、カドミウム濃度は分析限界以下であることが確認された。また、加熱時間1時間でもこれらの除去率は80%以上であった。なお、加熱温度を1100℃より高くしても、1100℃のときと効果が変わらないため、加熱温度は最高でも1100℃で十分である。また、加熱時間を3時間より長くしても、3時間のときと効果が変わらないため、加熱時間は最長でも3時間で十分である。
【0033】
また、CaOを添加した場合には、CaO無添加の場合に比べて、より高温でなければ、ハロゲン、鉛、カドミウムの揮発除去が進まないことが確認された。しかしながら、CaO無添加のままダストを加熱すると、ダスト中の亜鉛の30〜40%を占めるZnOがダスト中のFeと反応し、(4)式によって、難還元性、難溶性のZnFeに転化されてしまうため、ZnFeの生成を防止するためには、CaO添加が必要である。
【0034】
【化3】
【0035】
このことを確認するために、熱処理後のダストのX線回折パターンを調べ、その結果を図4に示す。図4(b)に示すように、ダストにCaOを加えることにより、処理温度の上昇と共に、ダスト中のZnFeの回折強度は小さくなり、ZnOの回折強度は大きくなっていることが確認された。これに対し、図4(a)に示すように、CaO無添加ダストの場合は逆に、処理温度の上昇と共に、ZnFeの回折強度は大きくなり、960℃ではZnOの存在割合は著しく小さくなっていることが確認された。
【0036】
さらに、CaO無添加のままダストを加熱すると、ダストに含まれる亜鉛の内、一般的に約10%を占めるZnClが大部分揮発してしまい、亜鉛のロスが避けられない。これに対し、CaOを添加することにより、亜鉛の揮発ロスはほとんど起こらないことが実験的に明らかにされており、亜鉛の歩留りの観点からも、CaO添加は有利である。
【0037】
なお、本試験では、カルシウム化合物としてCaOを用いたが、石灰石(CaCO)や消石灰(Ca(OH))を用いた場合についても同様の効果が得られることは、熱力学の解離温度や解離水蒸気圧に基づいた(5)式および(6)式から容易に推測でき、実験的にも確認されている。
【0038】
【化4】
【0039】
以上の試験結果から、電気炉製鋼ダストと、その電気炉製鋼ダスト中のFeのモル数と当量以上のモル数のCaを含むカルシウム化合物とを混合後、非還元性雰囲気中で960℃以上、1100℃以下で1〜3時間熱処理することにより、鉄や亜鉛をほとんど揮発させることなく、電気炉製鋼ダストに含まれる塩素やフッ素などのハロゲン類、鉛、カドミウムのような蒸気圧が高い重金属をほぼ揮発除去することができる。また、カルシウム化合物を添加することにより、難還元性、難溶性のZnFeの生成を防ぎつつ、ZnOと2CaO・Feとを得ることができる。熱処理時間が3時間以内と比較的短く、亜鉛回収の全行程を短時間で行うことができる。
【0040】
次に、鉄粉混合手段12により、Ca混合加熱手段11で得られたZnOと2CaO・Feとに、ZnOのモル数と当量以上のモル数の鉄粉末を混合し、圧粉する。その圧粉体1を、減圧容器21の内部に配置し、還元揮発手段13により、減圧容器21の内部を減圧するとともに1000℃以上に加熱して亜鉛蒸気2を発生させ、亜鉛蒸気2を冷却凝固して固体の金属亜鉛片3を得る。金属亜鉛片3は、フレーク状や粒状である。
【0041】
[鉄粉添加後の亜鉛還元試験]
電気炉製鋼ダスト中の鉄濃度以上のCaOを添加し、空気中で、1100℃で3時間加熱したダスト試料を用意し、これにZnO/Feのモル比が1になるように電解鉄粉を加えて混合・圧粉し、図2の還元揮発手段13の試料保持容器22の内部にセットした。その後、減圧容器21の内部を真空ポンプで減圧しながら試料保持容器22を1000℃で約1時間保持し、(3)式に従って発生した亜鉛蒸気を、冷却ゾーンに設置した低温凝縮管24の表面に凝縮させた。ダスト中の亜鉛は、1時間以内に全て還元されて揮発し、試験後の残渣は、2CaO・Feのみであった。なお、比較のため、石灰処理をしない熱処理済みのダストについても同様の金属鉄粉を加えた試験を実施した。
【0042】
低温凝縮管24の表面から回収した亜鉛片のX線回折パターンを、図5に示す。図5の下のグラフに示すように、石灰処理を施さず、ダストを直接鉄還元揮発させると、亜鉛と共にダスト中のハロゲン等揮発物が蒸発し、亜鉛と共に析出するため、金属亜鉛以外に塩化物や複合酸塩化物のピークが多数観測された。また、析出物は鉛やカドミウム、マンガン等の重金属類を数%含有しており、亜鉛の純度は71%であった。これに対し、図5の上のグラフに示すように、石灰処理ダストから回収した析出物は、金属亜鉛以外の化合物ピークは認められず、他金属の混入は認められなかった。析出した亜鉛片を化学分析した結果、亜鉛の品位は95%程度に留まっていたが、鉛他の重金属類の混入は認められなかった。
【0043】
なお、還元材として電解鉄粉の代わりにダライ粉を用いて同様の実験を行った。この場合にも、(3)式に従って亜鉛蒸気を発生させることができるが、鉄とZnOとの接触面積を確保するために、ダライ粉を電解鉄粉の2倍当量添加することにより、電解鉄粉とほぼ同じ結果が得られることが確認された。ただし、ダライ粉の粒度が十分細かければ、過剰添加量は少なくて済むことは明らかである。
【0044】
以上の試験結果から、酸化亜鉛を金属鉄で還元揮発させ、金属亜鉛を回収する方法は、ハロゲンや鉛等の事前除去を行わなければ、高純度の亜鉛を得ることはできない。すなわち、この鉄還元揮発法は、石灰処理法と組み合わせることにより、ハロゲン類や鉛等の重金属類が混入していない金属亜鉛を回収することができる。なお、亜鉛還元後の残渣の2CaO・Feは、そのまま回収して、製鋼プロセスにおける脱リン剤、あるいは高炉法における鉄源として使用することができる。
【0045】
還元揮発手段13により回収された金属亜鉛片の品位を低下させている原因は、析出物表面の酸化層であり、酸化物(酸化亜鉛)が唯一かつ最大の不純物である。そこで、次に、その亜鉛片表面の酸化層を除去するために、亜鉛取得手段14により、還元揮発手段13で得られた亜鉛片を、亜鉛の融点より低い融点を有するNaCl−KClベースの多元系塩化物系フラックスに溶解させる。その後、そのフラックスを冷却することにより、塊状の亜鉛を得ることができる。
【0046】
[フラックスへの亜鉛片の溶解試験]
Znの融点より低い融点であるNaCl−KClベースの多元系塩化物フラックスを用いて、亜鉛の溶解試験を行った。亜鉛片とフラックスとを共にアルミナるつぼに入れ、450℃で再溶解させた。溶解前はフレーク状、粒状で表面が酸化された状態であった亜鉛片が、フラックス溶解後はほぼ健全なインゴットとなった。化学分析の結果、亜鉛の純度は99%以上であった。
【0047】
この試験結果から、回収された金属の亜鉛片を、NaCl−KClベースの多元系塩化物系フラックスに溶解させてフラックス処理を行うことにより、亜鉛片表面の酸化層を除去することができ、塊状で高純度の金属亜鉛を回収することができる。
【0048】
このように、本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法および電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置は、電気炉製鋼ダスト中の酸化亜鉛を還元することなく酸化物として効率的に分離して、金属亜鉛を回収することができる。さらに、電気炉製鋼ダスト中の酸化鉄を、製鋼プロセスにおける脱リン剤、あるいは高炉法における鉄源となる2CaO・Feとして回収することができ、電気炉製鋼ダストをほぼ完全にリサイクルすることができる。また、電気炉製鋼ダストの処理費用および投入エネルギーを大幅に削減することもできる。
【0049】
なお、図1に示すように、本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収装置は、鉄粉混合手段12、還元揮発手段13および亜鉛取得手段14の代わりに、浸出手段31と電解採取手段32とを有していてもよい。浸出手段31は、浸出容器を有している。浸出手段31は、NaOH水溶液またはNHCl水溶液を浸出容器に入れて70℃以上100℃以下に保ち、この水溶液の中に、Ca混合加熱手段11で得られたZnOと2CaO・Feとを浸漬するよう構成されている。これにより、浸出手段31は、ZnOを選択的に水溶液中に浸出させるようになっている。電解採取手段32は、鉛合金製の陽極と、アルミニウム製の陰極と、陽極と陰極との間に直流電圧を印加する電源とを有している。電解採取手段32は、浸出手段31でZnOが浸出した水溶液中に陽極と陰極とを配置し、電源により陽極と陰極との間に直流電圧を印加することにより、水溶液を電解して、陰極に亜鉛を析出可能に構成されている。
【0050】
この場合、本発明の実施の形態の電気炉製鋼ダストからの亜鉛回収方法では、Ca混合加熱手段11により、電気炉製鋼ダスト中のジンクフェライトは酸にもアルカリにも容易に溶解できる酸化亜鉛に転化されるため、溶液中にダスト中の亜鉛を全て浸出させることが可能である。このとき、亜鉛回収後の残渣である2CaO・Feを製鉄原料や脱リンフラックスとして利用するためには、亜鉛と共に2CaO・Feも溶液中に溶解させることは好ましくない。そのため、浸出溶液として、酸ではなく、基本的に2CaO・Feが不溶であるアルカリ性のNaOH溶液か、中性のNHCl水溶液にダストを投入する。すなわち、Ca混合加熱手段11で得られたZnOと2CaO・Feとを、70℃以上100℃以下のNaOH水溶液またはNHCl水溶液に浸漬して、ZnOを選択的に水溶液中に浸出させる。
【0051】
[ZnO浸出試験]
Ca混合加熱手段11により石灰処理を行った電気炉製鋼ダスト 1gを、アルカリ性の2M−NaOH溶液 300ミリリットルに投入し、亜鉛の浸出率に及ぼす溶液濃度の影響および温度の影響を調べる試験を行った。水溶液の温度は、25℃、40℃、50℃、70℃とした。その浸出試験の結果を、図6に示す。図6に示すように、2M−NaOH水溶液を70℃に保持すれば、数時間で石灰処理ダストから全ての亜鉛を溶液中に浸出できることが確認された。また、2CaO・Feは、ほとんど溶液中に溶解することなく、残渣として回収可能であることも確認された。なお、100℃を越えてNaOH水溶液を加熱するのは、投入エネルギー的に好ましくない。
【0052】
NaOH水溶液の代わりにNHCl水溶液を用いても同様に、石灰処理ダスト中の全ての亜鉛を浸出できることが実験的に確認された。NHCl水溶液を用いた場合は、NaOH水溶液の場合よりも亜鉛浸出は迅速に起こるが、溶液のpHが中性付近であるため、10%程度の2CaO・Feが溶液中に溶解してしまう。このため、2CaO・Feの歩留りの観点では、NHCl水溶液はNaOH水溶液よりも若干劣っている。
【0053】
以上の試験結果から、カルシウム化合物添加による熱処理で得られたZnOと2CaO・Feとを、アルカリ性または中性の水溶液中に浸漬することにより、2CaO・Feをほとんど水溶液中に溶解させることなく、ZnOを選択的に水溶液中に浸出させることができる。このため、2CaO・Feを残渣として回収することができ、製鋼プロセスにおける脱リン剤、あるいは高炉法における鉄源として使用することができる。
【0054】
次に、浸出手段31でZnOが浸出した水溶液を、電解採取手段32により電解する。これにより、陰極に亜鉛を析出させることができ、高純度の金属亜鉛を回収することができる。
【符号の説明】
【0055】
11 Ca混合加熱手段
12 鉄粉混合手段
13 還元揮発手段
21 減圧容器
22 試料保持容器
23 断熱管
24 低温凝縮管
25 排気管
14 亜鉛取得手段

1 圧粉体
2 亜鉛蒸気
3 金属亜鉛片

31 浸出手段
32 電解採取手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6