(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記鏝先を半田付けを行う対象部材に接触し予備加熱を行うとき、前記鏝先の温度変化が所定の条件内に入っているとき正確な対象部材の予備加熱を行っていると判断することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の半田付け装置。
前記制御部は、前記鏝先の貫通孔の内部で供給された半田片を溶融するとき、前記鏝先の温度変化が所定の条件内に入っているとき、正確な大きさの半田片が供給され、適切な状態に半田片が溶融していると判断する請求項1,請求項2,請求項4,請求項5いずれかに記載の半田付け装置。
前記制御部は、前記第1温度測定器から取得した温度が前記第2温度測定器から取得した温度よりも低く、その温度差が一定の範囲内にあるとき、前記ヒータユニットから前記鏝先に適切に熱が伝導していると判断する請求項9に記載の半田付け装置。
前記制御部は、前記第1温度測定器から取得した温度が前記第2温度測定器から取得した温度よりも高いか一定の範囲内で低いとき、供給された半田片が前記貫通孔に到達する前に溶融したと判断する請求項9又は請求項10に記載の半田付け装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1は本発明にかかる半田付け装置の一例の斜視図であり、
図2は
図1に示す半田付け装置をII-II線で切断した断面図であり、
図3は本発明にかかる半田付け装置の概略を示すブロック図である。なお、
図1では、支持部1の一部を切断し、半田付け装置の内部を表示するようにしている。
【0026】
本発明にかかる半田付け装置Aは、上方から糸半田Wを供給し、下部に設けられた半田鏝Saを利用し、半田鏝Saの下方に配置される配線基板Bdと電子部品Epとを半田付けする装置である。
図1、
図2、
図3に示すように、半田付け装置Aは支持部1、カッターユニット2、駆動機構3、半田送り機構6、半田鏝Sa及び制御部8(
図3参照)を備えている。
【0027】
半田付け装置Aは、治具Gjに取り付けられた配線基板BdのランドLdと、配線基板Bdに配置された電子部品Epの端子とに溶融半田を供給し、接続固定を行う。半田付けを行うとき、治具Gjを縦横に移動させ配線基板BdのランドLdとの位置決めを行う。また、そして、半田付け装置Aは上下方向に移動可能であり、位置決め後上下方向に移動することで、半田鏝Saの先端をランドLdに接触させることができる。
【0028】
支持部1は、立設された平板状の壁体11を備えている。カッターユニット2は、半田送り機構6によって送られた糸半田Wを所定長さの半田片に切断するものである。カッターユニット2は、摺動ガイド13に固定されたカッター下刃22と、カッター下刃22の上部に配置され、摺動可能に配置されたカッター上刃21とを備えている。また、カッターユニット2は、駆動機構3の後述する第2アクチュエータ32によって、上下方向(カッター上刃21の摺動方向と交差する方向)に駆動されるプッシャーピン23を備えている(
図2参照)。
【0029】
図2に示すように、カッター上刃21は、半田送り機構6にて送られた糸半田Wが挿入される貫通孔である上刃孔211と、プッシャーピン23が挿入された貫通孔であるピン孔212とを備えている。上刃孔211の下端の辺縁部は切刃状に形成されている。カッター下刃22は、上刃孔211を貫通した糸半田Wが挿入される貫通孔である下刃孔221を備えている。下刃孔221の上端の辺縁部は切刃状に形成されている。上刃孔211と下刃孔221とは、糸半田Wが挿入されている状態で、糸半田Wと交差する方向にずれることで、互いの切刃によって糸半田Wを半田片に切断する。
【0030】
上刃孔211とピン孔212とは、カッター上刃21の摺動方向に並んで設けられている。カッター上刃21は、上刃孔211と下刃孔221とが上下に重なる位置と、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なる位置との間を摺動する。
【0031】
図2に示すように、駆動機構3は、カッター下刃22に固定されカッター上刃21を摺動させる第1アクチュエータ31と、カッター上刃21に取り付けられ、プッシャーピン23を駆動する第2アクチュエータ32とを備えている。第1アクチュエータ31は、カッター下刃22に固定されたシリンダ311と、シリンダ311の内部に配置され、供給される空気の圧力で伸縮するピストンロッド312とを備えている。ピストンロッド312の先端部分がカッター上刃21に固定されており、ピストンロッド312の伸縮動作によってカッター上刃21が摺動する。
【0032】
なお、
図2に示す半田付け装置Aでは、第1アクチュエータ31のピストンロッド312がシリンダ311から最も突出したとき、カッター上刃21が図中左端にあり、上刃孔211が下刃孔221と上下に重なるようになっている。また、図示はしないが、ピストンロッド312がシリンダ311に収納されたとき、カッター上刃21が図中右端に移動し、ピン孔212が下刃孔221と上下に重なるようになっている。
【0033】
第2アクチュエータ32は、カッター上刃21に固定されたシリンダ321と、シリンダ321の内部に配置され、空気圧で伸縮するピストンロッド322とを備えている。ピストンロッド322の先端にはプッシャーピン23が固定されている。第2アクチュエータ32は、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なっている状態のとき、ピストンロッド322を伸長させることで、プッシャーピン23を下刃孔221に挿入し、ピストンロッド322をシリンダ321に収容することでプッシャーピン23を下刃孔221から抜く。カッターユニット2によって切断された半田片が下刃孔221に残っている場合でも、このプッシャーピン23の動作によって、押し出される。
【0034】
半田送り機構6は、糸半田Wを供給するものであり、糸半田Wを送る一対の送りローラ61と、送りローラ61で送られる糸半田Wをガイドするガイド管62とを備えている。一対の送りローラ61は、支持部1に取り付けられており、糸半田Wを挟むとともに、回転することで糸半田Wを下方に送る。送りローラ61は回転角度(回転数)によって、送り出した糸半田の長さを決定している。
【0035】
ガイド管62は、弾性変形可能な管体であり、上端は、送りローラ61の糸半田Wが送り出される部分に近接して配置されている。また、ガイド管62の下端はカッター上刃21の摺動に追従して移動するものであり、上刃孔211に連結されている。ガイド管62はカッター上刃21が摺動する範囲で引っ張られたり、突っ張ったりしないように設けられている。
【0036】
図1、
図2に示すように、半田鏝Saは、カッターユニット2の下方に固定されている。本発明にかかる半田鏝Saの詳細について説明する。
【0037】
半田鏝Saは、ヒータユニット4と、ヒータユニット4に取り付けられた鏝先5と、鏝先の温度を取得する温度取得部7とを備えている。
図2に示すように、ヒータユニット4は、通電によって発熱するヒータ41と、ヒータ41を取り付けるためのヒータブロック42と、ヒータブロック42を保持するヒータブロック保持部43とを備えている。
【0038】
ヒータブロック42は円筒形状を有しており、外周面には、ヒータ41が巻き付けられている。ヒータブロック42は、軸方向の下端部に鏝先5をとりつけるための断面円形状の凹部421と、凹部421の底部の中心部から反対側に貫通する半田供給孔422とを備えている。
【0039】
ヒータブロック保持部43は、平板状の本体部に形成された貫通孔である保持孔430を備えている。この保持孔430にヒータブロック42の凹部421と反対側の端部を圧入することでヒータブロック42はヒータブロック保持部43に保持されている。なお、
図2に示すように、ヒータブロック42の保持孔430に圧入される部分は、小径になるように段差が形成されているが、これに限定されるものではなく、段差無しの形状であってもよい。
【0040】
ヒータブロック保持部43を支持部1に取り付けることで、半田鏝Saが支持部1に固定される。
図2に示すように、半田鏝Saは、ヒータブロック保持部43を支持部1に取り付けたとき、カッター下刃22の下刃孔221とヒータブロック42の半田供給孔422とが連通する。
【0041】
図2に示すように、鏝先5は、円筒形状の部材であり、中央部分に軸方向に延びる半田孔51を備えている。鏝先5は、高い熱伝導率を有する材料、例えば、炭化ケイ素、窒化アルミ等のセラミックやタングステン等の金属で形成されていることが好ましい。
【0042】
鏝先5は、軸方向の上部をヒータブロック42の凹部421に挿入して配置されており、下端部がヒータブロック42より下方に突出する。そして、鏝先5の半田孔51と半田供給孔421とが連通する。カッターユニット2で切断された糸半田は、下刃孔221から半田供給孔421を介して半田孔51に供給される。
【0043】
半田鏝Saで半田付けを行う場合、ヒータブロック42を介してヒータ41の熱が伝達され、その熱で半田孔51に供給された半田片を溶融する。半田付け装置Aでは、筒形状の鏝先5の先端を、配線基板BdのランドLdに接触させた状態で、半田付けを行うことで、半田やフラックスヒューム等が飛び散るのを抑制している。一方で、鏝先5で半田付けを行う部分を囲んだ状態で半田付けを行うため、半田付け時の半田の状態やランドLdの予備加熱状態を確認することが困難である。そこで、本発明にかかる半田付け装置Aでは、温度取得部7で半田鏝Saの鏝先5の温度を取得している。
【0044】
図1、
図2に示すように、温度取得部7は温度測定器である非接触式の温度測定センサ71を備えている。このような非接触式の温度計としては、例えば、鏝先5から放射される赤外線を検出することで、鏝先5の温度を測定する放射温度計があるが、これに限定されない。温度測定センサ71は、ヒータブロック保持部43に形成されたステー431の先端に、赤外線を検出する検出部が鏝先5に向くように取り付けられている。そして、温度測定センサ71は測定した温度の情報を電気信号として制御部8に送信できるようになっている。
【0045】
制御部8について説明する。制御部8は、MPUやCPU等の論理回路を含む構成となっている。
図3に示すように、制御部8は、駆動部3の第1アクチュエータ31及び第2アクチュエータ32、ヒータユニット4のヒータ41、半田送り部6の送りローラ61を制御するようになっており、各部と接続され、信号の送受信ができるようになっている。また、制御部8は、温度取得部7の温度測定センサ71と接続しており、温度測定センサー71で測定した鏝先5の温度を取得している。さらに、制御部8は、記憶部81と接続しており、記憶部81との間で情報をやり取りできるようになっている。記憶部81は、情報の呼び出しが可能なROM、呼び出し及び書き込みが可能なRAM、着脱が可能なフラッシュメモリ等の半導体メモリやハードディスク等を有している。
【0046】
本発明にかかる半田付け装置Aの動作について図面を参照して説明する。
図4は本発明にかかる半田付け装置の鏝先の温度とヒータの出力とを示すタイミングチャートである。
図4は上下段の2段の折れ線を備えており、上段が温度測定センサ71で測定した鏝先5の温度の変化を、下段がヒータ41の出力を示している。また、
図4の横軸は時間であり、便宜上、最も左の部分をタイミングS0としている。さらに、
図4において、ヒータ41の出力として、第1出力H1、第2出力H2及び第3出力H3を利用するものとしている。
【0047】
半田付け装置Aでは、半田付けを迅速に行うため、駆動時間内は常に鏝先5を温度T1に維持している。鏝先5を温度T1に維持する間、ヒータ41の出力は第1出力H1としている。つまり、ヒータ41の出力を第1出力H1によって、鏝先5は温度T1に維持される。このとき、鏝先5は基板等に接触しておらず、半田片も供給されていない。
【0048】
図5は半田付けを行う前のランド及び電子部品の端子の予備加熱を行う状態の半田鏝の断面図である。半田付け装置Aでは、半田付けを行う前に、ランドLd及びランドLdより突出している電子部品の端子の予備加熱を行う。この予備加熱を行うことで、溶融した半田を適切な位置に迅速に流し込むことが可能となっている。
【0049】
図5に示すように、半田付け装置Aでは鏝先5をランドLdに接触させ、ランドLdと電子部品Epの端子を半田付けに先立って加熱する、予備加熱を行う。鏝先5をランドLdに接触させると、鏝先5が保有している熱がランドLdに伝達する。そのため、鏝先5の温度が急激に減少する。
図4に示すように、鏝先5がランドLdに接触するタイミングS1で鏝先5の温度が低下する。
【0050】
制御部8は、半田付け装置Aの移動を制御しているか、又は、別途設けられた移動を制御する制御部(不図示)から移動したことの情報を取得しているため、前記鏝先5がランドLdと接触するタイミングS1の情報を取得している。上述のとおり、鏝先5の温度は、ランドLdとの接触により低下するため、制御部8は、鏝先5とランドLdが接触する(接触しているとされる)タイミングS1で、ヒータ41の出力を第1出力H1から第2出力H2に切り替える(
図4参照)。なお、
図4に示しているように、第1出力H1より第2出力の方が大きな出力である。
【0051】
制御部8は、タイミングS1で鏝先5とランドLdとが接触したとの認識は、半田付け装置Aの動作に基づくものであり、鏝先5が半田付けを行うランドLdとは異なるランドと接触していたり、ランドLdと正確に接触していなかったりする場合も考えられる。そこで、制御部8は、鏝先5の温度に基づいて鏝先5とランドLdの接触を確認している。以下に、制御部8による鏝先5とランドLdとの接触の確認について説明する。
【0052】
温度測定センサ71は常時、鏝先5の温度を測定している。制御部8は鏝先5がランドLdと接触したと(又は接触したとされる)タイミング(タイミングS1)及そのときの鏝先5の温度を記憶部81に記憶させる。そして、制御部8は、タイミングS1から予め決められた時間が経過したとき(タイミングS2)の鏝先5の温度を取得する。そして、制御部8はタイミングS2の温度(タイミングS1との温度差)に基づいて、鏝先5とランドLdとの接触を確認している。
【0053】
図6は鏝先の接触から一定時間経過するまでの鏝先の温度変化を示す図である。
図6において、実線CL1が予め決められているランドLd(適切なランドLdとする)に鏝先5が接触したときの温度変化である。残り3本の破線のうち破線CL2、CL3は予め決められたランドLdとは異なるランドと接触した場合の鏝先5の温度変化を示し、破線CL4は鏝先5がランドLdと接触しない場合の鏝先5の温度変化を示している。
【0054】
図6に示すように、鏝先5が半田付けを行う適切なランドLdと接触した場合、タイミングS1からタイミングS2に至るまでの鏝先5の温度は、実線CL1をたどり、タイミングS2で鏝先5の温度は温度T3になる。
【0055】
一方、接触したランドLdの大きさが、半田付け予定のランドよりも大きい場合や比熱が大きい場合、鏝先5から多くの熱が奪われる。そのため、タイミングS2では、適切なランドLdと接触している場合に比べ鏝先5の温度が低くなる(破線CL2、温度T32)。逆に、接触したランドLdが、半田付け予定のランドよりも小さい場合は逆に、鏝先5の温度が高くなる(破線CL3、温度T33)。また、鏝先5がランドLdと接触しない場合、鏝先5はランドLdに熱を奪われない。また、ヒータ41は第1出力H1から第2出力H2に上げているので、タイミングS2ではタイミングS1で測定したときに比べて鏝先5の温度が高くなる(破線CL4、温度T34)。
【0056】
制御部8は、鏝先5の温度が実線CL1の温度T3になったとき、鏝先5が半田付け予定のランドLdに正確に接触していると判断する。逆に実線CL1から離れた温度変化をした場合、制御部8は、半田付け予定のランドLdと正確に接触していないか、異なるランドLdに接触しているか或いは鏝先5がランドLdと接触していないと判断する。なお実線CL1で示す鏝先5の温度変化の情報は予め記憶部81に記憶しており、制御部8はその情報と温度測定センサ71からの鏝先5の実測温度とを比較している。
【0057】
制御部8は半田付け予定のランドLdと鏝先5とが接触していないと判断したとき、半田付け装置Aは、例えば、ヒータ41の出力を調整し、鏝先5を現在接触しているランドLdから離間させるような動作を行う。
【0058】
図4に示すように、鏝先5が半田付けを行う適切なランドLdと接触しているとき、制御部8は、ヒータ41が第2出力H2を出力している状態を維持する。鏝先5とランドLdとの温度が一致すると鏝先5の温度は下降から上昇に転じる。その後、鏝先5の温度とランドLdの温度は略同じ温度で遷移(上昇)する。すなわち、鏝先5の温度が予め決められた予備加熱温度T2に到達したとき、ランドLd及び電子部品Epの端子も予備加熱温度T2に昇温される。このことを利用して、制御部8は鏝先5が予備加熱温度T2に上昇したとき(タイミングS3)、ランドLd、電子部品Epの端子の予備加熱が完了したと判断する。
【0059】
図7は鏝先の半田孔に糸半田を切断して形成した半田片を供給している状態の半田鏝の断面図である。制御部8は、鏝先5の温度が温度T2になるタイミングS3でランドLd及び電子部品Epの端子の予備加熱が完了したものと判断し、第1アクチュエータ31を駆動し糸半田Wを半田片Whに切断する。そして、制御部8は、第2アクチュエータ32を駆動しプッシャーピン23で切断された半田片Whを押し、半田片Whを鏝先5の半田案51に供給する(
図7参照)。
【0060】
半田片Whは鏝先5の半田孔51の内部で溶融するとき、鏝先5から融解熱を奪う。半田片Whは溶融するとき多くの熱を必要とするため、鏝先5の温度は下降する。制御部8は鏝先5の半田孔51の半田片Whを素早く溶融させるため、ヒータ41の出力を第2出力H2から第3出力H3となるように、ヒータ41の出力を制御する(
図4参照)。
【0061】
図7に示すように、半田片Whは、下刃孔221から半田供給孔421を介して半田孔51に供給される。半田付け装置Aでは、半田片Whが正しく供給されたか、正しい大きさ(長さ)の半田片Whが供給されたか、半田の溶融状態を外部から確認するために、鏝先5の温度の変化を利用している。
【0062】
制御部8は予備加熱が終了したタイミング(タイミングS3)及そのときの鏝先5の温度を記憶部81に記憶させる。そして、制御部8は、タイミングS3から予め決められた時間が経過したとき(タイミングS4)の鏝先5の温度を取得する。そして、制御部8はタイミングS4の温度(又は、タイミングS3との温度差)に基づいて、鏝先5とランドLdとの接触を確認している。
【0063】
図8は半田片が供給されてから一定時間経過するまでの鏝先の温度変化を示す図である。
図8において、実線DL1が正確な大きさの半田片Whが供給されたときの鏝先5の温度変化である。残り3本の破線のうち破線DL2、DL3は予め決められた大きさとは異なる半田片Whが供給されたときの鏝先5の温度変化を示し、破線DL4は半田片Whが供給されていないときの鏝先5の温度変化を示している。
【0064】
図8に示すように、鏝先5の半田孔51に適切な大きさの半田片Whが供給されると、タイミングS3からタイミングS4に至るまでの鏝先5の温度は、実線DL1をたどり、鏝先5の温度はタイミングS3のときの温度T2から、タイミングS4で温度T5に低下する。この温度低下は、上述もしているとおり半田の融解熱によるものである。
【0065】
一方、供給された半田片Whが適切な大きさの半田片Whよりも大きい(長さが長い)場合、鏝先5から多くの熱が奪われる。そのため、タイミングS4では、適切な大きさの半田片Whが供給されている場合に比べ鏝先5の温度が低くなる(破線DL2、温度T52)。逆に、供給された半田片Whが、適切な半田片Whよりも小さい場合は、鏝先5が奪われる熱が少なくなり、タイミングS4での鏝先5の温度が高くなる(破線DL3、温度T53)。また、鏝先5の半田孔51に半田片Whが供給されていない場合、鏝先5は半田片Whが溶融するときの融解熱を奪われない。また、ヒータ41は第2出力H2から第3出力H3に上げているので、タイミングS4ではタイミングS3で測定したときに比べて鏝先5の温度が高くなる(破線DL4、温度T54)。
【0066】
制御部8は、鏝先5の温度が実線DL1の温度T5になったとき、鏝先5の半田孔51に適切な半田片Whが供給されていると判断する。逆に実線DL1から離れた温度変化をした場合、制御部8は、供給された半田片Whの長さが短いか、半田片Whが供給されていないと判断する。なお、タイミングS4時点での実線DL1の温度変化の情報は予め記憶部81に記憶しており、制御部8はその情報と温度測定センサ71からの鏝先5の実測温度とを比較している。制御部8は半田付けを中止する。
【0067】
なお、適切な大きさの半田片Whが供給されなかった場合の半田付け装置Aの動作としては、例えば、次のものを挙げることができる。半田片Whが供給されている場合(鏝先5が破線DL2、DL3の温度変化を示した場合)、溶融した半田が流れ出て周囲を汚染してしまうのを抑制するため、ヒータ41からの出力を停止し、鏝先5の温度が半田の流出を抑制できる温度になるまで待つ。一方、半田片Whが供給されていない場合(鏝先5が破線DL4の温度変化を示した場合)、ヒータ41の出力を停止し鏝先5をランドLdから離す。また、半田片Whが供給されないような不良発生時には異常であることを報知するようにしてもよいし、停止するだけ又は再度同様の動作を行う構成となっていてもよい。
【0068】
また、温度取得部7を利用し、半田片Whの溶融状態を確認することで、半田片Whに熱が確実に伝達されているかどうかを判断し、鏝先5の半田孔51にドロスと呼ばれる付着物(炭化物、酸化錫等)の付着を検出することも可能である。
【0069】
図4に示すように、適切な大きさの半田片Whが供給されているとき、鏝先5の温度は、半田片Whが溶融し終わるまで下がり、その後上昇する。そして、鏝先5の温度が、予め決められた温度T4まで上昇したとき、制御部8は半田付けが終了したと判断する。そして、半田付け終了した後、鏝先5が温度T1になった後、制御部8は、鏝先5の温度T1を維持するためヒータ41の出力を第1出力H1に調整する。
【0070】
このように、鏝先5の温度を測定し、その温度に基づいて、ヒータ41の出力を調整することで、無駄な加熱をしなくなる。また、鏝先5の温度によって、鏝先5とランドLdとの適切な接触や、適切な長さの半田片Whの供給の判断を行うことができる。これにより、ランドLdや電子部品Epの加熱が不十分で半田付けが不十分になったり、過熱によって配線基板や電子部品を破損してしまったりする不具合の発生を抑制できる。また、半田片Whが供給されない状態で、半田付け動作を行ってしまい、ランドLdと電子部品Epの端子とが接続されない状態で、製造工程を終了してしまうのを抑制し、不良品が多数出るのを未然に防ぐことが可能である。
【0071】
また、本実施形態のように、非接触型の温度取得部7を用いることで、鏝先5を取り換えが容易である。また、温度を常時検出し、設定温度になったときの時間経過で異常を検出することも可能である。さらには、温度の時間変化パターンから状態を検出することも可能である。また、ワーク(ランド、端子)の形状や半田片の大きさ等に基づいて、時間と温度とを設定するデータベースを備えていてもよい。このとき、データベースの各パラメータは、事前テストによって取得するようにしてもよいし、学習機能を備えておき、随時データベースを更新できるようにしてもよい。
【0072】
(第2実施形態)
本発明にかかる半田付け装置の他の例について図面を参照して説明する。
図9は本発明にかかる半田付け装置の他の例の一部の断面図である。
図9に示す半田付け装置Bの半田鏝Sa2は温度取得部7bが、赤外線を検出する温度測定器である温度測定センサ71と、鏝先5から放出される赤外線を温度測定センサ71に反射する反射部材72を備えている。なお、温度測定センサ71は半田鏝Saの温度測定センサ71と同様の構成を有している。また、半田付け装置Bのそれ以外の部分については、半田付け装置Aと同じ構成を有しており、実質上同じ部分には同じ符号を付してあるとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0073】
図9に示すように、温度測定センサ71はステー431に取り付けられている。反射部材72もまた図示を省略しているがステー431に取り付けられている。このように、反射部材72を備えていることで、温度測定センサ71の検出部を鏝先5に向けなくてもよく、温度測定センサ71の設置場所の自由度を上げることができる。例えば、
図9に示すように、温度測定センサ71をステー431にしっかり固定することができる。
【0074】
これ以外の特徴については、第1実施形態と同じである。
【0075】
(第3実施形態)
本発明にかかる半田付け装置の他の例について図面を参照して説明する。
図10は本発明にかかる半田付け装置の他の例の一部の断面図である。
図10に示す半田付け装置Cの半田鏝Sa3は、温度取得部7cとして、鏝先5cに第1熱電対73を取り付けた構成としている。半田付け装置Cのその他の部分については、半田付け装置Aと同じ構成を有しており、実質上同じ部分には同じ符号を付してあるとともに、同じ部位の詳細な説明は省略する。
【0076】
半田鏝Sa3に用いられる鏝先5cは、側面に設けられた凹穴に第1熱電対73(温度測定器の一つ)を挿入、固定している。なお、第1熱電対73の固定方法としては、セラミック接着剤で接着する方法を採用しているが、これに限定されるものではなく、鏝先5cの温度が上昇しても、固定状態をしっかり維持できるものを広く採用することができる。
【0077】
このように、温度取得部7cとして第1熱電対73を利用することで、非接触式の温度測定センサを利用するよりもコストを低減することが可能である。鏝先5cに第1熱電対73を直接取り付けているので、鏝先5cの温度を精度よく測定することが可能である。
【0078】
また、第1熱電対73を利用することで、温度取得部7cの設置場所を小さくすることができ、半田付け装置C自体を小型化することが可能である。また、第1熱電対73は、鏝先5cに直接接触しているため、鏝先5の近傍に赤外線を遮るような部材が配置された場合でも、鏝先5cの温度を検出することができる。また、温度取得部7や温度取得部7bは、外部からの衝撃や振動で測定部の角度がずれると測定が困難になるが、第1熱電対73は鏝先5cに直接接続しているので、外部からの衝撃や振動が加えられても、鏝先5cの温度測定を続けることが可能である。すなわち、温度取得部7cを利用することで、外部からのちりやほこり等の混入や振動、衝撃等の外乱に強い半田付け装置Cを提供できる。
【0079】
これ以外の特徴については第1実施形態及び第2実施形態と同じである。
【0080】
(
参考例)
半田付け装置の
参考例について図面を参照して説明する。
図11は半田付け装置の
参考例の一部の断面図である。
図11に示す半田付け装置Dの半田鏝Sa4は、温度取得部7dとして、ヒータブロック42dに第2熱電対74を取り付けた構成としている。半田付け装置Dのその他の部分については、半田付け装置Cと同じ構成を有しており、実質上同じ部分には同じ符号を付してあるとともに、同じ部位の詳細な説明は省略する。
【0081】
図11に示すように、半田鏝Sa4に用いられるヒータブロック42dは、側面に設けられた凹穴に第2熱電対74(温度測定器の一つ)を挿入、固定している。なお、第2熱電対74の固定方法としては、第1熱電対73と同じ方法を採用してもよいし、違う方法を採用してもよい。なお、これに限定されるものではなく、ヒータブロック42dの温度が上昇しても、固定状態をしっかり維持できるものを広く採用することができる。
【0082】
半田鏝Sa4において、ヒータ41の熱はヒータブロック42dに伝導し、さらにヒータブロック42dから鏝先5に伝導する。そのため、第2熱電対74でヒータブロック42dの温度を測定し、その情報を制御部8に送信することで、制御部8はその温度から鏝先5の温度を取得することができる。
【0083】
なお、
本参考例では、鏝先5の温度を直接測定しているものではないため、制御部8が取得する温度と、半田付け装置Dの半田付け動作の各タイミングとの関係は、第1実施形態で示した
図4とは異なる関係となっている。
【0084】
本参考例の半田付け装置Dを利用することで、鏝先5に熱電対を取り付けない構成となっているので、鏝先5の着脱を簡単に行うことができ、メンテナンス性を高めることが可能となる。また、従来の半田付け装置で用いていた鏝先や新たに作製された鏝先をとりつけることも可能である。
【0085】
さらに、第2熱電対74でヒータブロック42dの温度を測定していることから、制御部8は第2熱電対74が測定したヒータブロック42dの温度が低い場合、ヒータ41が正常に動作していないと判断することができる。このように、鏝先5だけでなく、ヒータユニット4の状態も検知することが可能である。
【0086】
また、
本参考例において、ヒータブロック42dの温度を熱電対で測定しているが、半田付け装置A、半田付け装置Bのように、非接触式の温度測定センサを利用してもよい。
【0087】
なお、これ以外の特徴は第3実施形態と同じである。
【0088】
(第5実施形態)
本発明にかかる半田付け装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図12は本発明にかかる半田付け装置のさらに他の例の一部の断面図である。
図12に示す半田付け装置Eの半田鏝Sa5は、温度取得部7eとして、鏝先5cに固定された第1熱電対73と、ヒータブロック42dに固定された第2熱電対74を備えた構成としている。半田付け装置Eのその他の部分については、半田付け装置C及び半田付け装置Dと同じ構成を有しており、実質上同じ部分には同じ符号を付してあるとともに、同じ部位の詳細な説明は省略する。
【0089】
第1熱電対73及び第2熱電対74はそれぞれ、制御部8に接続されている。そして、接続部8は、第1熱電対73から鏝先5cの温度を取得しており、第2熱電対74からヒータブロック42dの温度を取得している。
【0090】
半田片Whが半田供給孔421内で引っ掛かり、半田片Whが半田供給孔421の内部で溶融してしまう場合がある。このような場合、ヒータブロック42dの温度が急激に低下する。半田付け装置Eでは、例えば、第1熱電対73から取得した鏝先5cの温度はあまり下がっていないにも関わらず、第2熱電対74から取得したヒータブロック42dの温度の低下が著しい場合、制御部8は、半田片Whが半田供給孔421で溶融したと判断する。
【0091】
また、制御部8は、第1熱電対73から取得した鏝先5cの温度が、第2熱電対74から取得したヒータブロック42dの温度に対して、著しく低い場合(予め決められた温度差よりも大きな温度差がある場合)、ヒータ41の熱が鏝先5cに伝達されていないと判断する。なお、ヒータ41の熱が鏝先5cに伝達されない理由としては、ヒータブロック42dと鏝先5cとの接触が十分でない場合や鏝先5cが破損し、隙間が開いて熱抵抗が形成されている場合等が考えられる。
【0092】
これら以外にも、制御部8は、第1熱電対73からの鏝先5cの温度情報と、第2熱電対74からのヒータブロック42dの温度情報とを利用して、半田鏝Sa5の状態を検知することが可能である。
【0093】
これ以外の特徴については、第3実施形態及び第4実施形態と同じである。
【0094】
(第6実施形態)
本発明にかかる半田付け装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。
図13は本発明にかかる半田付け装置のさらに他の例の一部の斜視図であり、
図14は
図13に示す半田付け装置の鏝先を取り外した状態の断面図であり、
図15は
図13に示す半田付け装置の鏝先を取り付けた状態の断面図である。本実施形態の半田付け装置Fの半田鏝Sa6は鏝先5fを容易に着脱できる構成となっている。
【0095】
図13に示すように、ヒータブロック保持部43は、接触部432と、接触部432とヒータブロック42fとの間に配置された近接部433とを備えている。また、近接部433には、磁石434が取り付けられている。なお、磁石434は永久磁石でもよいし、電磁石でもよい。ここでは、省エネルギの観点より、不使用時に電力の供給が不要永久磁石を利用している。
【0096】
ヒータブロック42fの凹部421の内面及び鏝先5fの挿入部52はそれぞれテーパー形状であり、挿入部52は凹部421に挿入される。また、鏝先5fは円筒形状の部分に固定された支持部53と、支持部53から離れて設けられた平板状の当接部54と、支持部53と当接部54とを接続する接続部55を備えている。なお、当接部54は、鉄、ニッケル等の強磁性体で形成されている。また、磁石434と近接する部分に磁石を備える構成であってもよい。
【0097】
そして、温度取得部7fは、ヒータブロック42fに取り付けられた第2熱電対74を備えているとともに、鏝先5fの温度に取り付けられた温度測定部75を備えている。温度測定部75は、鏝先5fの温度を測定するものであり、支持部53及び当接部54の内部に配索され鏝先5fに固定された第1熱電対751と、制御部8と接続し温度情報を含む信号を送信する信号線752と、当接部54の上面より突出した接点753と、接触部432に設けられた接点754とを備えている。
【0098】
当接部54は、長尺状の部材であり、鏝先5fの挿入部52を凹部421に挿入したとき、長手方向の先端側の端部は接触部431と接触するとともに、近接部433に設けられている磁石434の磁力によって引っ張られる。このとき、近接部433と当接部54との間には隙間が介在し、すなわち、近接部433と当接部54とは非接触な状態となっている。このように形成することで、鏝先5fは、当接部54と接触部432との接触部分を中心とし、鏝先5fの挿入部52を上方に押し上げるようなモーメントが発生する。このモーメントによって、挿入部52が凹部421に押し当てられる。
【0099】
そして、鏝先5fは、当接部54が接触部432と当接したとき、接点753が接点754と接触する。これにより、熱電対751は、接点753及び接点754を介して信号線752と電気的に接続される。
【0100】
半田付け装置Fでは、温度取得部7fの第1熱電対751が鏝先5fの温度を測定し制御部8に送信する。また、第2熱電対74がヒータブロック42fの温度を測定し制御部8に送信する。このように、半田付け装置Fでは、着脱可能な鏝先5fとヒータブロック42fの温度を測定することが可能となっている。
【0101】
このような構成とすることで、磁石434の磁力で引っ張るだけの簡単な構成で、鏝先5fをヒータブロック42fに取り付けることができるとともに、鏝先5fの温度を測定するための第1熱電対751を制御部8に接続することができる。また、第1熱電対751の鏝先5fの外面と接続する部分は支持部53の内部であり、接点753と接続する部分は当接部54の内部であることから、第1熱電対75が引っ張られにくく、第1熱電対751の断線や鏝先5fの表面から脱落するのを抑制することが可能である。
【0102】
なお、本実施形態では、鏝先5fに設けられた当接部54が、接触部432と接触し、近接部433と近接する構成としているが、近接部433を省略し、当接部54に磁石434を設けた構成であってもよい。
【0103】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。