(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406695
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ガラス固化体中の異物の検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/73 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
G01N21/73
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-182856(P2014-182856)
(22)【出願日】2014年9月9日
(65)【公開番号】特開2016-57137(P2016-57137A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年7月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.日本原子力学会「2014年春の年会」日程表と発表プログラムのコピー(抜粋)及びOHP 2.「日本原子力学会2014春の年会予稿集」の表紙、日程表、発表プログラムのコピー(抜粋)、「レーザアブレーション法ICP−AESによる模擬ガラス固体化の元素分析(3)ガラス固体化中の未溶解物検出及び異物溶解量測定」講演予稿掲載ページのコピー
(73)【特許権者】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(72)【発明者】
【氏名】西澤 代治
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】大山 孝一
(72)【発明者】
【氏名】宮内 厚志
(72)【発明者】
【氏名】永井 崇之
【審査官】
吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0073586(US,A1)
【文献】
特開2001−242144(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0303822(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62−74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
YAGレーザ第5高調波光が光源として用いられるレーザアブレーション法誘導結合プラズマ発光分光分析法によるガラス固化体中の異物の検出方法であって、
検量線作成用標準ガラス試料が、分析対象のガラス固化体の化学組成に類似させられて作製され検量線が作成される工程、
上記検量線が使用され、分析対象のガラス固化体の元素濃度が分析される工程、を基本工程として含み、さらに、
当該レーザ光の線状照射により、異物に特有な元素の局所的なICP(誘導結合プラズマ)発光強度又はICP発光強度の変化が測定され、ガラス固化体中に混入又は偏在する異物が検出される工程を含む、ガラス固化体中の異物の検出方法。
【請求項2】
YAGレーザ第5高調波光が光源として用いられるレーザアブレーション法誘導結合プラズマ発光分光分析法によるガラス固化体中の異物の検出方法であって、
検量線作成用標準ガラス試料が、分析対象のガラス固化体の化学組成に類似させられて作製され検量線が作成される工程、
上記検量線が使用され、分析対象のガラス固化体の元素濃度が分析される工程、を基本工程として含み、さらに、
当該レーザ光の線状照射により、上記検量線が使用され、異物に特有な酸化物の局所的な濃度又は濃度変化が測定され、ガラス固化体中に混入又は偏在する異物が検出される工程を含む、ガラス固化体中の異物の検出方法。
【請求項3】
ガラス固化体中の異物がガラス溶融炉天井レンガ成分、ガラス溶融炉接液部レンガ成分及び/又はイエローフェーズである、請求項1又は2に記載されているガラス固化体中の異物の検出方法。
【請求項4】
ガラス溶融炉天井レンガがアルミナ・ジルコニア質焼成レンガ、ガラス溶融炉接液部レンガがクロミア・アルミナ系電鋳レンガである、請求項3に記載されているガラス固化体中の異物の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、YAGレーザ第5高調波光(YAG−5ωレーザ、波長λ≒213nm)を光源として用いるレーザアブレーション法誘導結合プラズマ発光分光分析法(LA法ICP−AES)による、ガラス固化体中の異物の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所から搬出される使用済み核燃料を再処理すると、高濃度の放射性物質を含む廃液(高レベル放射性廃液)が生ずる。高レベル放射性廃液は、再処理施設のガラス固化設備のガラス溶融炉にて溶融するホウケイ酸塩ガラスと混合され、キャニスタ中に流下され、次いで冷却されると、高レベルの放射性物質がガラス中に固定され、ガラス固化体が得られる。ガラス固化体は廃棄物管理施設で保管され、最終的に地層中に処分される。
【0003】
ガラス溶融炉の開発及びガラス固化体製造方法の確立は難しく、開発過程では、通常、モックアップガラス溶融炉(モックアップ溶融炉)を用いて、放射能を有しない模擬高レベル放射性廃液(模擬廃液)をガラス固化する試験方法が用いられる。モックアップ溶融炉により製造されるガラス固化体が模擬ガラス固化体である。
【0004】
高レベル放射性廃液をガラス溶融炉実機でガラス固化させる時と同様に、模擬廃液をモックアップ溶融炉でガラス固化させる時も、模擬廃液中の白金族元素(Pd、Rh、Ru等)、溶融ガラス中に落下した溶融炉天井レンガ成分、溶融ガラス中に溶損した溶融炉接液部レンガ成分等の異物は、比較的大きな固まりになって溶融ガラス中で偏在しやすく、モックアップ溶融炉の出口ノズルを閉塞させるため、溶融ガラスのキャニスタ内への流下の閉塞(流下不調)が生じやすい。
また、モリブデン酸塩とクロム酸塩が主成分である水溶性のイエローフェーズ(YP)が溶融ガラス(ガラス固化体)中に発生又は混入すると、地層処分後にガラス固化体が水分と接した時にガラス固化体中の放射性物質が溶出するおそれがある。
従って、白金族元素のみならず、溶融炉天井レンガ成分、溶融炉接液部レンガ成分、イエローフェーズ等の異物の検出又は元素濃度分析は、ガラス溶融炉の運転管理及びガラス固化体の製造品質管理にとって極めて重要である。
【0005】
従来より、(1)溶液法誘導結合プラズマ発光分光分析法(溶液法ICP−AES)及び(2)蛍光X線分析法(XRF)が、ガラス固化体(以下、模擬ガラス固化体を含む総称として用いる)の元素濃度分析方法(異物の検出方法を含む)として用いられている。また、(3)目視確認も、レンガ成分やYP等の異物検出のために従来より用いられている。
しかし、従来技術(1)及び(2)は、ガラス固化体の元素濃度分析を行うまでの前処理に非常に多くの労力と時間、更にコストを要する。
(1)溶液法ICP−AESは、試料溶液の調製(ガラス固化体の一部を採取し、酸に溶解させ、測定用溶液を作製する)に多くの時間と労力を必要とする。更に、酸の使用は2次廃棄物(塩酸廃液、硝酸廃液)を発生させ、その処理コストを要する。
(2)XRFは、ガラス固化体を粉砕・微細化して測定用試料を作製する工程を要し、当該工程は多くの時間と労力を必要とする。
(3)目視確認は、流下ガラス(ガラス固化体)中のレンガ成分やYP等の異物の混入・発生の認定を可能とするが、異物の定量又は定性分析ができないという欠点を有する。
【0006】
ところで、LA法ICP−AESによる貴金属(白金族元素、金及び銀)の分析法が検討された(例えば、特許文献1参照)。また、赤外線レーザが光源として用いられるLA法ICP−AESによる金属やガラス等の固体試料の元素濃度分析方法が検討された(例えば、特許文献2参照)。しかし、上記のLA法ICP−AESによりガラス固化体の元素濃度分析、及びガラス固化体中の異物の検出はできない。
【0007】
なお、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、略称ICP)は、気体に高電圧が印加されて発生するプラズマの内部に、高周波の変動磁場によって渦電流によるジュール熱を発生させて得られる高温のプラズマである。
発光分光分析(Atomic Emission Spectrometry、略称AES)は、原子化・熱励起された試料が基底状態に戻る際の発光スペクトルを測定する、元素の定性・定量分析法であり、原子吸光法と異なり、一度に複数の元素が分析される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−106961号公報
【特許文献2】特開平5−107186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、簡単、迅速、正確なガラス固化体の元素濃度分析方法と同時にガラス固化体中の異物の検出方法が求められていたが、このような異物の検出方法は実現されていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、簡単で迅速なガラス固化体中の異物の検出方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、 YAG−5ωレーザが光源として用いられるLA法ICP−AESによるガラス固化体中の異物の検出方法であって、
検量線作成用標準ガラス試料が、分析対象のガラス固化体の化学組成に類似させられて作製され検量線が作成される工程、 上記検量線が使用され、分析対象のガラス固化体の元素濃度が分析される工程、を基本工程として含み、さらに、 当該レーザ光の線状照射により、異物に特有な元素の局所的なICP発光強度又はICP発光強度の変化が測定され、ガラス固化体中に混入又は偏在する異物が検出される工程を含む、ガラス固化体中の異物の検出方法である。
【0011】
更に、本発明は、YAG−5ωレーザが光源として用いられるLA法ICP−AESによるガラス固化体中の異物の検出方法であって、
検量線作成用標準ガラス試料が、分析対象のガラス固化体の化学組成に類似させられて作製され検量線が作成される工程、 上記検量線が使用され、分析対象のガラス固化体の元素濃度が分析される工程、を基本工程として含み、さらに、 当該レーザ光の線状照射により、
上記検量線が使用され、異物に特有な酸化物の局所的な濃度又は濃度変化が測定され、ガラス固化体中に混入又は偏在する異物が検出される工程を含む、ガラス固化体中の異物の検出方法である。
【0012】
ガラス固化体中の上記異物の具体例は、ガラス溶融炉天井レンガ成分、ガラス溶融炉接液部レンガ成分及び/又はイエローフェーズである。上記ガラス溶融炉天井レンガの具体例はアルミナ・ジルコニア質焼成レンガであり、上記ガラス溶融炉接液部レンガの具体例はクロミア・アルミナ系電鋳レンガである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガラス固化体中の異物の検出方法は、簡単で迅速な異物検出を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、ガラス固化体の元素濃度分析装置(=ガラス固化体中の異物の検出装置)の模式図である。
【
図2】
図2は、YP析出部付近のMo、Cr、Fe及びZrのICP発光強度の変化を示す図(ガラス試料におけるレーザ照射部の位置とICP発光強度のデータを組み合わせた図)である。
【
図3】
図3は、YP析出部付近のMoO
3、Cr
2O
3、Fe
2O
3及びZrO
2の濃度変化を示す図(ガラス試料におけるレーザ照射部の位置と酸化物濃度のデータを組み合わせた図)である。
【
図4】
図4は、ガラス試料2中のガラス/クロミア・アルミナ系電鋳レンガ片境界付近のMgO、Cr
2O
3及びFe
2O
3の濃度変化を示す図(ガラス試料におけるレーザ照射部の位置と酸化物濃度のデータを組み合わせた図)である。
【
図5】
図5は、ガラス試料3中のアルミナ・ジルコニア質焼成レンガ成分に由来するZr及びFeのICP発光強度の変化を示す図(実測データ)である。
【0015】
本発明のガラス固化体中の異物の検出方法には、大別して以下の2つの方法がある。
(1)ガラス固化体中の異物に特有な元素のICP発光強度又はICP発光強度の変化を測定する。
(2)ガラス固化体中の異物に特有な酸化物の濃度又は濃度変化を測定する。
以下、(2)について、本発明のガラス固化体中の異物の検出方法の原理を
図1を用いて説明する。LA装置により、YAG−5ωレーザ(非線形光学効果を用いて発生させるYAGレーザ第5高調波光)が固体試料である検量線作成用の標準ガラス試料に照射され、エアロゾルが発生する。当該エアロゾルがICP−AES装置のトーチに送られ、検量線作成用の標準ガラス試料を構成する酸化物(元素)の濃度が分析される。
【0016】
次に、測定対象の酸化物(元素)の濃度が異なる残りの検量線作成用の標準ガラス試料について、この作業を繰り返す。
【0017】
同様に、YAG−5ωレーザが異物検出対象のガラス固化体に照射され、エアロゾルが発生する。当該エアロゾルが、ICP−AES装置のトーチに送られ、異物を含むガラス固化体を構成する酸化物(元素)濃度が分析される。好ましいYAG−5ωレーザの試料スキャン速度は100μm/s以上、パルス繰返し数は20Hz以上、レーザパルスエネルギー強度は5J/cm
2程度である。
【0018】
異物検出対象のガラス固化体が、ガラス固化体中で偏在し易いレンガ成分及び/又はYP等の異物を含む場合、試料スキャン速度が100μm/s以上にて、パルス繰返し数が20Hz以上、レーザパルスエネルギー強度が5J/cm
2程度のYAG−5ωレーザが照射され、ガラス固化体中に偏在する異物に特有な酸化物の平均濃度が定量される。
【0019】
LA装置及びICP−AES装置は市販されている。市販されているLA装置の具体例はesi社製NWR213である。市販されているICP−AES装置の具体例は、PerkinElmer社製Optima 7300DVである。
【0020】
LA法ICP−AESは、ICPの発光強度はトーチに届くエアロゾル量に比例し、測定対象元素のエアロゾル量は試料(ガラス固化体)中の元素濃度に比例する、という原理を用いる元素濃度分析方法である。従って、レーザ出力(レーザエネルギー)はアブレーションだけに消費される(エネルギーが熱変形、破砕片の発生等に消費されない)ことが理想的である。よって、レーザのエネルギーが非熱プロセスで専ら照射対象の固体の化学結合切断に消費され易い、短波長のパルスUVレーザがLAの光源として適しているとされる。現状、YAG−5ωレーザは、扱いが容易で且つハロゲンガス等の2次廃棄物を発生させない固体レーザにて、実効的なパルスUVレーザ出力を取り出せる最短波長のレーザである。
【0021】
本発明の発明者らは、YAG−5ωレーザが光源として用いられるLA法ICP−AESによりガラス固化体の元素濃度が分析される方法であって、検量線作成用標準ガラス試料が、分析対象のガラス固化体の化学組成に類似させられて作製され検量線が作成される工程、上記検量線が使用され、分析対象のガラス固化体の元素濃度が分析される工程を含むガラス固化体の元素濃度分析方法を出願した(特願2014−29623号)。
【0022】
測定対象となる元素の検量線は、検量線作成用標準ガラス試料(例えば、低模擬標準ガラス試料)により作成される。その後、分析対象のガラス固化体中の測定対象元素の発光スペクトルがLA法ICP−AESにより測定され、検量線が利用されて、ガラス固化体中の当該元素濃度が求められる。YAG−5ωレーザを用いるLA法ICP−AESによるガラス固化体の元素濃度分析の測定対象元素(濃度定量対象元素)の具体例は、Ce、Nd、Si、B、Ca、Al、Zn、Li、Na、P、Cr、Fe、Ni、K、Mn、Mg、Mo、Co、Cs、Ba、La、Pr、Sm、Ru、Rh、Pd、Zr等である。
【0023】
前記のYPはMoO
3及びCr
2O
3、ガラス溶融炉天井レンガ成分はZrO
2及びFe
2O
3、ガラス溶融炉接液部レンガ成分はMgO、Cr
2O
3及びFe
2O
3の各酸化物をそれぞれ特異的に含有している。そこで、YAG−5ωレーザが、YP、ガラス溶融炉天井レンガ成分、ガラス溶融炉接液部レンガ成分等の異物を含むガラス固化体に線状照射され、(a)これら5つの金属元素のICP発光強度又はICP発光強度の変化、若しくは(b)これら5つの金属酸化物の濃度又は濃度変化がLA法ICP−AESにより測定されると、ガラス固化体中のYP、ガラス溶融炉天井レンガ成分、ガラス溶融炉接液部レンガ成分等の異物が検出される。
【0024】
ガラス溶融炉天井レンガ及びガラス溶融炉接液部レンガは市販されている。ガラス溶融炉天井レンガの具体例はアルミナ・ジルコニア質焼成レンガであり、例えば、商品名AZ-GSレンガが市販されている。ガラス溶融炉接液部レンガの具体例はクロミア・アルミナ系電鋳レンガであり、例えば、商品名K−3レンガが市販されている。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明が詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0026】
実施例1
ガラスビーズ、模擬廃液構成成分の各酸化物等の粉末試薬、YPの起源となる酸化クロム(Cr
2O
3)及びモリブデン酸ナトリウム(Na
2Mo
4・2H
2O)の粉末試薬をるつぼ内に入れ、当該るつぼを電気炉にて1200℃以上に加熱した。その後、当該るつぼを1200℃以上の高温雰囲気で2時間維持した後、電気炉から取り出して徐冷炉に移した。徐冷終了後、当該るつぼを徐冷炉から取り出し、るつぼ内のガラスを切断・粗研磨してガラス試料1を作製した。
YPの析出と推定される変色部(以下、YP析出部という)を当該ガラス試料1に視認したので、YAG−5ωレーザ(レーザ強度8.5J/cm
2、パルス繰返し数20Hz、ビーム照射径φ110μm、試料スキャン速度100μm/s)を当該YP析出部を横切るように線状照射してゆき、YPを構成する各元素のICP発光強度を測定していった。そして、YAG−5ωレーザのYP析出部への照射時に、YPに特有な元素であるMo及びCrのICP発光強度がその前後に比べて急激に高くなることを確認した。更に、この時、YP析出部でFe及びZrのICP発光強度が急低下していることを確認した(
図2)。この結果、ICP発光強度を元素又は酸化物の濃度に換算するまでもなく、ガラス固化体中の異物であるYPを検出できた。
【0027】
図2に示されるMo、Cr、Fe及びZr各元素のICP発光強度を基に、別途作製された標準ガラス試料のICP発光強度を測定し、検量線法によりYPに特有な酸化物の濃度を求めた(
図3)。
ICP発光強度同様に、YP析出部において、YPに特有な酸化物であるMoO
3、Cr
2O
3の濃度が急激に高くなっていることが分かる。この時、YPとは無関係の酸化物であるFe
2O
3及びZrO
2の濃度は、YP析出部において急激に低くなっていることが分かった。
【0028】
実施例2
表1に示される組成の、ガラス溶融炉接液部レンガとして使用されるクロミア・アルミナ系電鋳レンガであるK−3レンガの立方体と、別途実施した試験終了後に取り出した模擬ガラス固化体の破砕片をるつぼに入れ、実施例1と同様の方法で加熱・徐冷して、異物としてのガラス溶融炉接液部レンガ片(成分)を含むガラス試料2が作製された。実施例1と同一条件のYAG−5ωレーザが、当該ガラス試料2に線状照射され、MgO、Cr
2O
3及びFe
2O
3濃度が検量線法により測定され(
図4)、これら3つの金属酸化物濃度が、ガラス/K−3レンガ境界で上昇していることが確認された。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例3
表1に示される組成の、ガラス溶融炉天井レンガとして使用されるアルミナ・ジルコニア質焼成レンガであるAZ−GSレンガの粉末と、上記模擬ガラス固化体の破砕片をるつぼに入れ、実施例1と同様の方法で加熱・徐冷して、異物としてのガラス溶融炉天井レンガ成分を含むガラス試料3が作製された。実施例1と同一条件のYAG−5ωレーザが当該ガラス試料3に線状照射され、AZ−GSに特有な元素であるZr、FeのICP発光強度が測定され(
図5)、AZ−GS成分がガラス中に概ね均一に存在していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のガラス固化体中の異物の検出方法は、ガラス固化体中のガラス溶融炉天井レンガ成分、ガラス溶融炉接液部レンガ成分、YP等の異物を実用的な精度で簡単、迅速に検出し、溶融炉運転管理及びガラス固化体品質管理に寄与する。