(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の種類の単繊維区域は、前記アッパーの前記外側面に関連する第1単繊維ストランドと、前記アッパーの前記内側面に関連する天然または合成繊維撚糸ヤーンとを含む、請求項15に記載の履物製品。
前記複数の単繊維区域は、前記アッパーの内側側部、前記アッパーの外側側部、前記アッパーの足先部、および前記アッパーのかかと部のうちの少なくとも2つに設けられている、請求項29に記載の履物製品。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明および添付の図面は、ニット構成要素およびニット構成要素の製造に関わる多様な概念を開示する。ニット構成要素は多様な製品で使用されてもよいが、1つ以上のニット構成要素を組み込んだ履物製品を一実施例として以下に開示する。
【0015】
図1から
図17は、ニット構成要素の残りの部分との一体ニット構造で形成される1つ以上の単繊維区域を含むニット構成要素を組み込んだ履物製品の実施形態を示す。本明細書で説明するニット構成要素のいずれの個々の特徴も、履物製品の異なる構成においては、組み合わせて使用してもよく、または別々に提供されてもよい。くわえて、いずれの特徴も任意としてもよく、ニット構成要素のいずれか特定の実施形態では含まなくてもよい。
【0016】
図1から
図4は、単に製品100とも呼ばれる履物製品100の実施形態を示す。いくつかの実施形態では、履物製品100は、ソール構造110とアッパー120とを含んでいる。製品100はランニングに適した一般構成を有するように図示されているが、製品100に関連する概念は、たとえば、サッカーシューズ、ベースボールシューズ、バスケットボールシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、テニスシューズ、トレーニングシューズ、ウォーキングシューズ、およびハイキングブーツを含め、多様な他の運動用の履物の種類にも適用してもよい。この概念は、ドレスシューズ、ローファー、サンダルおよび作業靴を含め、一般に非運動用と考えられる履物の種類にも適用してもよい。したがって、製品100に関して開示する概念は、多様な履物の種類に適用してもよい。
【0017】
参照のために、
図1、
図2および
図3に図示するように、製品100は、足先領域10と中足領域12とかかと領域14との大略的に3つの領域に分割される。足先領域10は、大略的に、つま先および中足骨と指骨とを接続する関節に対応する製品100の部分を含んでいる。中足領域12は、大略的に、足のアーチ部位に対応する製品100の部分を含んでいる。かかと領域14は、大略的に、踵骨を含めて足の後部に対応する。製品100は外側側部16および内側側部18も含んでおり、足先領域10、中足領域12、およびかかと領域14を通って延びており、製品100の両側に対応する。より具体的には、外側側部16は足の外側部位に対応し(つまり、反対の足から遠ざかる方を向く面)、内側側部18は足の内側部位に対応する(つまり、反対の足の方を向く面)。
【0018】
足先領域10、中足領域12およびかかと領域14、ならびに外側側部16、内側側部18は、製品100の厳密な区域を区切ることを意図していない。むしろ、足先領域10、中足領域12、かかと領域14、ならびに外側側部16、内側側部18は、以下の説明の助けになるように、製品100の大略的な区域を表すことを意図している。製品100に加えて、足先領域10、中足領域12、かかと領域14、ならびに外側側部16、内側側部18は、ソール構造110、アッパー120およびそれらの個々の要素にも適用してもよい。
【0019】
実施形態では、ソール構造110はアッパー120に固定されて、製品100が着用されるとき、足と地面との間に延びる。いくつかの実施形態では、ソール構造110は、ミッドソール、アウトソールおよび/または中敷きもしくはインソールを含め1つ以上の構成要素を含んでもよい。実施形態では、ソール構造110は、アッパー120の下面に固定されるアウトソール112、および/またはソール構造110をアッパー120に固定するように構成されているベース部を含んでもよい。ある実施形態では、アウトソール112は、トラクションを付与するようにテクスチャー加工された耐摩耗性のゴム材料から形成してもよい。ソール構造110のこの構成は、アッパー120に関連して使用してもよいソール構造の一実施例を提供するが、ソール構造110の多様な従来通りまたは従来にない他の構成も使用してもよい。したがって、他の実施形態では、ソール構造110またはアッパー120とともに使用される任意のソール構造の特徴は変わってもよい。
【0020】
たとえば、他の実施形態では、ソール構造110はミッドソールおよび/または中敷きを含んでもよい。ミッドソールはアッパーの下面に固定してもよく、ある場合には、歩いているとき、走っているとき、または他の歩行活動中に足と地面との間で圧縮されると、地面の反力を弱める(つまり、クッション材となる)圧縮可能なポリマー発泡体要素(例、ポリウレタンまたはエチルビニルアセテート発泡体)から形成してもよい。他の場合には、ミッドソールは、力をさらに弱め、安定性を高め、または足の運動に影響するプレート、モデレータ、流体充填チャンバ、ラスティング要素、またはモーションコントロール部材を組み込んでもよい。さらに他の場合には、ミッドソールは、アッパー内に配置されて、足の下面の下に延びて製品の快適性を高めるように位置付けられている流体充填チャンバから主に形成してもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、アッパー120はソール構造110に対して足を受け入れて固定するための空洞を製品100の内部に画成する。空洞は足を収容するように成形されて、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上、かかとの周り、さらに足の下に延びている。アッパー120は外側面121および反対側の内側面122を含む。外側面121は外向きで、製品100から離れる方を向くが、内側面122は内向きで、足を受け入れるための、製品100内の空洞の大半または比較的大きな部分を画成する。また、内側面122は足または足を被覆している靴下に対接してもよい。
【0022】
アッパー120は、少なくともかかと領域14に配置されてスロート開口部140を形成するカラー123も含んでもよい。空洞へのアクセスはスロート開口部140によって提供される。より具体的には、足は、カラー123が形成するスロート開口部140からアッパー120に入れてもよく、また、足は、カラー123が形成するスロート開口部140を通してアッパー120から抜いてもよい。いくつかの実施形態では、甲周り区域150は、かかと領域14のカラー123および足首開口部140から前方に、中足領域12の足の甲に対応する区域の上に、足先領域10に隣接する区域まで延びている。
【0023】
いくつかの実施形態では、アッパー120はベロ部152を含んでもよい。ベロ部152は、甲周り区域150を通してアッパー120の外側側部16と内側側部18との間に配置してもよい。実施形態では、ベロ部152は甲周り区域150を通して外側側部および内側側部に沿って、アッパー120の一部に一体的に装着して、アッパー120の一部との一体ニット構造で形成されてもよい。したがって、図に図示するように、アッパー120は、外側側部16と内側側部18との間に甲周り区域150をまたいで実質的に連続して延びていてもよい。他の実施形態では、ベロ部152は、ベロ部152が甲周り区域150の両側で外側部と内側部との間の開口部内で移動可能であるように、甲周り区域150を通って外側側部および内側側部に沿って分離していてもよい。
【0024】
締めひも154は、アッパー120の複数の締めひも開口部153を通って延び、着用者がアッパー120の寸法を調節して足のさまざまなプロポーションを収容することを可能にする。いくつかの実施形態では、締めひも154は、甲周り区域150のいずれかの側に沿って配置されている締めひも開口部153を通って延びてもよい。より具体的には、締めひも154は、着用者が足の周りにアッパー120を締め付けることを可能にし、また、締めひも154は、空洞から(つまりスロート開口部140を通して)足を出し入れしやすいように着用者がアッパー120を緩めることを可能にする。くわえて、甲周り区域150のアッパー120のベロ部152は締めひも154の下に延びて、製品100の快適性を高める。
【0025】
締めひも154は
図1では製品100とともに図示されているが、
図2から
図4では、明確にするために締めひも154を省いている。さらなる構成において、アッパー120は、(a)かかと領域14に安定性を高めるヒールカウンタ、(b)足先領域10に耐摩耗性材料から形成されるつま先ガード、ならびに(c)ロゴ、商標および注意事項や材料情報を記載した札などの追加要素を含んでもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、より詳細に以下で説明するように、アッパー120は、単繊維ストランドを含む1つ以上の部分を含んでもよい。単繊維ストランドは、単繊維ストランドを形成するように押出成形されたプラスチックまたはポリマー材料から作ってもよい。一般に、単繊維ストランドは軽量で、高い引っ張り強さを有してもよく、つまり、引張り破壊または破断する前に、かなりの程度の応力に耐えることができるので、アッパー120に大きな量または程度の耐伸縮性を提供する。実施形態では、アッパー120の、単繊維ストランドを含む部分は、1つ以上の単繊維区域160に配置されてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、単繊維区域160は、アッパー120のさまざまな部分に配置してもよい。実施形態では、1つ以上の単繊維区域160は、アッパー120がアッパー120内に配される着用者の足に対して略平らになる製品100の部分に配置してもよい。この実施形態では、単繊維区域160は、アッパー120の内側側部18に設けられる内側単繊維部162と、アッパー120の外側側部16に設けられる外側単繊維部166とを含む。内側単繊維部162および外側単繊維部166は、大略的に中足領域12に配置してもよい。いくつかの実施形態では、単繊維区域160は、アッパー120の足先領域10の甲周り区域150の前方に設けられる足先単繊維部164をさらに含んでもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、単繊維区域160は、アッパー120にわたって各単繊維区域160間同士が実質的に連続していてもよい。たとえば、ある実施形態では、内側単繊維部162は足先単繊維部164と連続していてもよく、外側単繊維部166も足先単繊維部164と連続していてもよい。この構成により、単繊維区域160は外側側部16から足先領域10を越えて内側側部18までアッパー120にわたって延びる、実質的に連続したゾーンを形成してもよい。他の実施形態では、内側単繊維部162、足先単繊維部164および/または外側単繊維部166を含め、各単繊維区域160は、アッパー120に設けられる他の単繊維区域160と不連続であってもよい。単繊維区域160が不連続である実施形態では、各単繊維区域160、たとえば、内側単繊維部162、足先単繊維部164および/または外側単繊維部166は、アッパー120の残りの部分によって取り囲まれるか、または包囲されてもよい。
【0029】
多くの従来の履物のアッパーは、たとえば縫製または接着により接合される複数の材料要素(例、布地、ポリマー発泡体、ポリマーシート、革、合成皮革)から形成されている。対して、いくつかの実施形態では、より詳細に以下で述べるように、アッパー120の大半がニット構成要素130から形成される。ニット構成要素130は、たとえば、平編みプロセスで製造してもよく、足先領域10、中足領域12およびかかと領域14のそれぞれを通り、外側側部16および内側側部18の両方に沿って、足先領域10の上、さらにかかと領域14の周りに延びている。
【0030】
実施形態では、ニット構成要素130は、外側面121および内側面122の大半または比較的大きな部分を含めて、アッパー120の実質的に全部を形成し、それによってアッパー120内部に空洞の一部を画成する。いくつかの実施形態では、ニット構成要素130は足の下にも延びていてもよい。しかし、他の実施形態では、ストローベル式中敷きまたは薄いソール状の材料片をニット構成要素130に固定して、ソール構造110との装着のために足の下に延びているアッパー120のベース部を形成する。くわえて、
図4に描かれるように、縫い目129がかかと領域14を垂直に通って延びて、ニット構成要素130の縁部を接合している。
【0031】
ニット構成要素130に縫い目が存在してもよいが、ニット構成要素130の大半は実質的にシームレスな構成を有する。また、ニット構成要素130は一体ニット構造で形成されてもよい。
【0032】
本明細書で利用する場合、ニット構成要素(例、ニット構成要素130)は、編みプロセスによりワンピース要素として形成されるとき、「一体ニット構造」で形成されると定義する。すなわち、編みプロセスは、大幅な追加の製造ステップまたはプロセスを必要とせずに、ニット構成要素130のさまざまな特徴および構造を実質的に形成する。一体ニット構造を用いて、ヤーンの1つ以上のコースを含む構造または要素を有するニット構成要素、ストランド、または、構造もしくは要素が少なくとも1つの共通のコースを含む(すなわち、共通のヤーンを共有する)、および/もしくは構造もしくは要素の各間に実質的に連続するコースを含むように接合される他のニット素材を形成してもよい。この構成を用いて、一体ニット構造のワンピース要素が提供される。
【0033】
編みプロセスの後にニット構成要素130の一部を互いに接合してもよいが(例、ニット構成要素130の縁部を互いに接合する)、ニット構成要素130はワンピースニット要素として形成されるので、依然として一体ニット構造で形成されている。また、編みプロセスの後に他の要素(例、締めひも、ロゴ、商標、注意書きおよび材料情報を記載した札、構造要素)を追加する場合も、ニット構成要素130は依然としてニット構成要素で形成されている。
【0034】
ニット構成要素130は、アッパー120の個々の区域に異なる特性を付与するさまざまな種類のヤーンを組み込んでもよい。すなわち、ニット構成要素130のある区域は特性の第1のセットを付与する第1の種類のヤーンから形成してもよく、ニット構成要素130の別の区域は特性の第2のセットを付与する第2の種類のヤーンから形成してもよい。この構成では、ニット構成要素130の異なる区域に固有のヤーンを選択することにより、アッパー120全体で特性を変えてもよい。ある特定の種類のヤーンがニット構成要素130のある区域に付与することになる特性は、ヤーン内部のさまざまなフィラメントおよびファイバーを形成する材料に部分的に依存する。
【0035】
たとえば、綿は、ソフトな手触り、自然な美しさおよび生分解性を備えている。エラステインおよび伸縮性ポリエステルは、それぞれ、かなりの伸縮性および復元性を備えており、伸縮性ポリエステルはさらにリサイクル性も備えている。レーヨンは、高い光沢性および吸湿性を備えている。ウールも、断熱性および生分解性に加えて、高い吸湿性を備えている。ナイロンは、比較的高い強度を有する耐久性がある耐摩耗性の材料である。ポリエステルは、比較的高い耐久性も備えている疎水性材料である。
【0036】
材料に加えて、ニット構成要素130のために選択されるヤーンの他の側面がアッパー120の特性に影響を与えることもある。たとえば、ニット構成要素130を形成するヤーンは単繊維ヤーンまたは多繊維ヤーンであってもよい。ヤーンはそれぞれ異なる材料から形成される個別のフィラメントも含んでもよい。くわえて、ヤーンは、フィラメントが鞘芯構成を有するか、または異なる材料から形成される2種類のフィラメントを半分ずつ用いた複合ヤーンなど、2種類以上の異なる材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでもよい。異なる撚度および捲縮の程度、ならびに異なるデニールもアッパー120の特性に影響してもよい。したがって、ヤーンを形成する材料とヤーンの他の側面との両方を、アッパー120の個々の区域に多様な特性を付与するように選択してもよい。
【0037】
ニット構成要素130のいくつかの構成では、ヤーンを形成する材料は非融着性または融着性であってもよい。たとえば、非融着ヤーンは実質的に熱硬化性ポリエステル材料から形成してもよく、融着ヤーンは少なくとも部分的に熱可塑性ポリエステル材料から形成してもよい。融着ヤーンを加熱して、非融着ヤーンに融着すると、このプロセスはニット構成要素130の構造を剛化または硬化する効果を有する。また、非融着ヤーンの部分を融着ヤーンを用いて接合することは、ニット構成要素130内の非融着ヤーンの相対位置を固定またはロックする効果を有し、それにより耐伸縮性および剛性を付与してもよい。すなわち、非融着ヤーンの部分は、融着ヤーンで融着すると、互いに対して滑らなくなり、それによってニット構造の相対的な移動によるニット構成要素130の歪みまたは恒久的な伸張を防止してもよい。ニット構成要素130の部分に融着ヤーンを用いる別の特徴は、ニット構成要素130の一部が傷んできたかまたは非融着ヤーンの1本が切れた場合に、解けるのを制限することに関わる。したがって、ニット構成要素130の区域は、ニット構造内に融着ヤーンおよび非融着ヤーンの両方を用いて構成してもよい。
【0038】
実施形態では、アッパー120は、単繊維区域160以外のニット構成要素130の部分を形成するために編まれる第1の種類のヤーンを含んでもよい。アッパー120の単繊維区域160は、第1の種類のヤーンで編まれる部分とともに一体ニット構造のニット構成要素130を形成するために、単繊維ストランドを用いて編むことにより形成してもよい。すなわち、単繊維区域160は、ワンピース要素となるように、ニット構成要素130の残りの部分との一体ニット構造で形成される。
【0039】
いくつかの実施形態では、ニット構成要素130は1つ以上の境界ゾーンを含んでもよい。境界ゾーンは、ニット構成要素130を編むために使用されるヤーンが、あるヤーンの種類から別のヤーンの種類に移行する、ニット構成要素130の部分を画成する。たとえば、ニット構成要素130は、アッパー120の1つ以上の境界ゾーンで、第1の種類のヤーンから、単繊維区域160を形成する単繊維ストランドに移行してもよい。
【0040】
実施形態では、第1の種類のヤーンは、単繊維区域160のそれぞれに関連する1つ以上の境界ゾーンで、天然または合成繊維撚糸ヤーンから単繊維ストランドに移行する。この実施形態では、内側単繊維部162は、アッパー120のかかと領域14に向かって設けられている後部内側境界200を含み、そこで、内側単繊維部162を形成する単繊維ストランドが、ニット構成要素130の残りの部分を形成するために使用される第1の種類のヤーンに移行する。内側単繊維部162は、上部内側境界204および底部内側境界206をさらに含んでもよい。ある実施形態では、上部内側境界204は、アッパー120の内側側部18に沿って配置され、第1の距離D1の分だけカラー123およびスロート開口部140から離間していてもよい。ある実施形態では、底部内側境界206もアッパー120の内側側部18に沿って配置され、第2の距離D2の分だけソール構造110から離間していてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、前部内側境界202は、アッパー120の内側単繊維部162の前位置を画成してもよい。単繊維区域160が実質的に連続している実施形態では、前部内側境界202は、足先単繊維部164に単純に移行してもよい。しかし、各単繊維区域160が不連続の実施形態では、前部内側境界202は、単繊維ストランドから第1のヤーンの種類に戻る移行部を画成してもよい。該不連続の実施形態では、足先単繊維部164は、ヤーンが再び単繊維ストランドに復帰する別の境界ゾーンによって画成されることは理解されるべきである。
【0042】
アッパー120に沿って続いて、足先単繊維部164は、後部足先境界208および前部足先境界209を含んでもよい。ある実施形態では、後部足先境界208は、甲周り区域150の前方に配置されて、第3の距離D3の分だけ離間していてもよい。同様に、前部足先境界209は、製品100のつま先端付近に配置されて、第4の距離D4の分だけ離間していてもよい。この実施形態では、外側単繊維部166は、アッパー120のかかと領域14に向かって設けられる後部外側境界210を含み、そこで、外側単繊維部166を形成する単繊維ストランドは、ニット構成要素130の残りの部分を形成するために使用される第1の種類のヤーンに移行する。外側単繊維部166は、上部外側境界214および底部外側境界216をさらに含んでもよい。ある実施形態では、上部外側境界214は、アッパー120の外側側部16に沿って配置され、第5の距離D5の分だけカラー123およびスロート開口部140から離間していてもよい。ある実施形態では、底部外側境界216もアッパー120の外側側部16に沿って配置され、第6の距離D6の分だけソール構造110から離間していてもよい。
【0043】
異なる実施形態では、第1の距離D1、第2の距離D2、第3の距離D3、第4の距離D4、第5の距離D5および/または第6の距離D6に関連する距離は変わってもよい。たとえば、いくつかの場合には、第1の距離D1および第5の距離D5は1cmから4cmの間で変わってもよい。ある実施形態では、第1の距離D1および第5の距離D5は約2cmから3cmであってもよい。いくつかの場合には、第2の距離D2および第6の距離D6は0.1cmから1cmの間で変わってもよい。ある実施形態では、第2の距離D2および第6の距離D6は約0.25cmから0.5cmであってもよい。いくつかの場合には、第3の距離D3は1cmから4cmの間で変わってもよい。ある実施形態では、第3の距離D3は約2cmから3cmであってもよい。いくつかの場合には、第4の距離D4は2cmから6cmの間で変わってもよい。ある実施形態では、第4の距離D4は約3cmから5cmであってもよい。他の場合には、第1の距離D1、第2の距離D2、第3の距離D3、第4の距離D4、第5の距離D5および/または第6の距離D6は、さまざまな形状および/またはサイズの単繊維区域160を提供するために、より大きくまたはより小さくしてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、前部外側境界212は、アッパー120の外側単繊維部166の前位置を画成してもよい。前部内側境界202と同様に、単繊維区域160が実質的に連続している実施形態では、前部外側境界212は足先単繊維部164に単純に移行してもよい。しかし、各単繊維区域160が不連続の実施形態では、前部外側境界212は、単繊維ストランドが第1のヤーンの種類に戻る移行部を画成してもよい。該不連続の実施形態では、足先単繊維部164は、ヤーンが再び単繊維ストランドに復帰する別の境界ゾーンによって画成されることは理解されるべきである。
【0045】
いくつかの実施形態では、内側単繊維部162および外側単繊維部166は、ほぼ対称になるように、内側側部18および外側側部16のそれぞれに同様な配列を有してもよい。これらの実施形態では、第1の距離D1および第5の距離D5はほぼ等しくしてもよい。同様に、第2の距離D2および第6の距離D6もほぼ等しくしてもよい。
【0046】
しかし、他の実施形態では、内側側部18および外側側部16のそれぞれが、各側部同士で異なる単繊維区域160を有してもよい。したがって、該他の実施形態では、内側単繊維部162および外側単繊維部166をカラー123および/またはソール構造110に対してさらに遠くにもしくはさらに近くに配置するために、第1の距離D1および第5の距離D5のそれぞれが異なってもよく、ならびに/または第2の距離D2および第6の距離D6が異なってもよい。さらに他の実施形態では、内側側部18または外側側部16のうちの1つのみが単繊維区域160を含んでもよい。さまざまなサイズ、形状および/または場所の単繊維区域160の他の構成は、本明細書で説明するプロセスに従って構成してもよいことは理解されるべきである。
【0047】
いくつかの実施形態では、アッパー120の単繊維区域160は、各単繊維区域160を形成する単繊維ストランドの作成に使用される材料の特徴または特性に応じて、透明、半透明または不透明であってもよい。ある実施形態では、約0.114mmの直径を有する1本の単繊維ストランドを、内側単繊維部162、足先単繊維部164および外側単繊維部166のそれぞれを含め、単繊維区域160を形成するために使用してもよい。他の実施形態では、これより大きい直径または小さい直径を有する単繊維ストランドを使用してもよい。くわえて、他の実施形態では、各単繊維区域160に異なる特性または特徴を与えるように、アッパー120の個々の単繊維区域160にそれぞれ異なる単繊維ストランドを使用してもよい。
【0048】
単繊維区域160を有するニット構成要素130を製品100のアッパー120に組み込むことにより、単繊維区域160は、強度、耐伸縮性、軽量化を提供し、および/またはアッパー120を通る気流を補助して、製品100の内部に通気性を与えることができる。
【0049】
たとえば、
図5に図示されるように、内側単繊維部162および外側単繊維部166は、中足領域12にアッパー120の内側側部18および外側側部16のそれぞれに沿って設けられている。この構成を用いて、アッパー120の内側側部18および外側側部16は、これらの区域の強度および耐伸縮性を増大させてもよい。くわえて、内側単繊維部162および外側単繊維部166の構造は、アッパー120から製品100の内部に空気を容易に通させる。たとえば、着用者の足が製品100の内部の中のアッパー120のベース部500に沿って配されるとき、空気がアッパー120に出入りして循環し、製品100に通気性を与える補助をしてもよい。
【0050】
また、1つ以上の単繊維区域160を有するアッパー120を形成することにより、アッパー120の総重量は、全体を天然または合成繊維撚糸ヤーンから形成したアッパーと比べて、大幅に軽量化される。たとえば、ある実施形態では、成人男性のサイズ8用のアッパーは、天然または合成繊維撚糸ヤーンで編んだ場合、重量が約49グラムになる。対して、単繊維区域160を有するアッパー120の重量は、同様なサイズで29グラムしかない。そのため、アッパー120の単繊維区域160に単繊維ストランドを使用することに伴う軽量化で、少なくとも40%軽くなる。くわえて、アッパー120の単繊維区域160の数、形状および/またはサイズを変えることにより、40%を超える重量の減少幅を増やすための、さらなる軽量化を達成してもよい。
【0051】
ここで
図6および
図7を参照すると、ニット構成要素130の実施形態が平面または平らな構成で示されている。この実施形態では、ニット構成要素130は外周縁部600によって輪郭が示される、略Y字形の構成を有する。この実施形態では、外周縁部600は外側側部16から内側側部18までニット構成要素130の周りに延びている。ニット構成要素130の外周は、外側側部16および内側側部18のそれぞれに設けられている一対のかかと縁部602も含む。実施形態では、ニット構成要素130は、上記説明したスロート開口部140に関連付けられ、これを画成するカラー123に沿って内周縁部をさらに含んでもよい。製品100を含む履物製品に組み込まれるとき、外周縁部600、およびかかと縁部602の少なくとも一部は、
図5に図示されるベース部500として、ソール構造110の上面に当ててもよい。他の実施形態では、ニット構成要素130は、ソール構造110に装着するために、ストローベル式中敷きまたは中敷きに接合してもよい。くわえて、かかと縁部602は互いに接合して、製品100のかかと領域14に垂直に延びて縫い目129を形成する。履物製品のいくつかの実施形態では、ある材料要素がかかと縁部602間の縫い目129を被覆して、縫い目129を補強するとともに、製品の美的魅力を向上させてもよい。
【0052】
ニット構成要素130は、上記説明したように、アッパー120の残りの部分との一体ニット構造で形成される甲周り区域150を含んでもよい。いくつかの実施形態では、甲周り区域150はニット構成要素130に設けられる複数の締めひも開口部153を含む。締めひも開口部153はニット構成要素130を外側面121から内側面122まで貫通して、締めひも154を含む締めひもを受け入れるように構成されている。実施形態では、締めひも開口部153は、編むことによりニット構成要素130に直接形成されてもよい。しかし、他の実施形態では、締めひも開口部153はニット構成要素130に追加される追加の補強要素を含んでもよい。
【0053】
さまざまな実施形態において、ニット構成要素130は、アッパー120の個々の区域に異なる特性を付与するさまざまな種類のヤーンを組み込んでもよい。たとえば、ニット構成要素130のある区域は特性の第1のセットを付与する第1の種類のヤーンから形成してもよく、第1ニット構成要素130の別の区域は、特性の第2のセットを付与する第2の種類のヤーンから形成してもよい。この構成では、ニット構成要素130の異なる区域に固有のヤーンを選択することにより、アッパー120全体で特性を変えてもよい。実施形態では、上記説明したように、ニット構成要素130は単繊維区域160を含む。ある実施形態では、単繊維区域160は、内側単繊維部162、足先単繊維部164および/または外側単繊維部166を含んでもよい。上記説明したように、ニット構成要素130は、単繊維区域160を含めてニット構成要素130の区域のそれぞれがワンピース要素として編まれるように、一体ニット構造で形成される。
【0054】
ここで
図7を参照すると、ニット構成要素130の一体ニット構造を示すために、さまざまな境界ゾーンに沿った単繊維区域160の部分の拡大図が示されている。上記説明したように、ニット構成要素130の境界ゾーンは、ニット構成要素130を編むために使用されるヤーンが、あるヤーンの種類から別のヤーンの種類に移行する、ニット構成要素130の部分を画成する。たとえば、ニット構成要素130は、アッパー120の1つ以上の境界ゾーンで、第1の種類のヤーン700から、単繊維区域160を形成する単繊維ストランド701に移行してもよい。実施形態では、第1の種類のヤーン700は、単繊維区域160のそれぞれに関連する1つ以上の境界ゾーンで、天然または合成繊維撚糸ヤーンから単繊維ストランド701に移行する。
【0055】
図7に図示されるように、ニット構成要素130の足先領域10の前部足先境界209で、ニット構成要素130は、単繊維ストランド701によって形成される足先単繊維部164から、第1の種類のヤーン700によって形成されるニット構成要素130の残りの部分に移行する。この実施形態では、単繊維ストランド701のコースを、第1の種類のヤーン700の隣接コースに(例、インタールーピングにより)接合する。すなわち、単繊維ストランド701を編むことにより形成されるコースは、第1の種類のヤーン700を編むことにより形成されるコースと実質的に連続している。この構成を用いて、単繊維区域160は、ニット構成要素130との一体ニット構造で形成されてもよい。
【0056】
同様に、ニット構成要素130の隣接するウェールも、境界ゾーンで、ある種類のヤーンから異なる種類のヤーンに移行してもよい。
図7に図示されるように、上部内側境界204で、ニット構成要素130は、第1の種類のヤーン700によって形成される部分から、単繊維ストランド701によって形成される内側単繊維部162に移行する。この実施形態では、第1の種類のヤーン700のウェールは単繊維ストランド701の隣接ウェールに接合される。ある実施形態では、境界ゾーンに沿ってヤーンの種類間を移行するために、単繊維区域160はインターシャ編み技法を用いて編んでもよい。たとえば、インターシャニット構造技法を用いることによって、第1の種類のヤーン700のウェールを単繊維ストランド701の隣接ウェールに接合してもよい。この構成を用いて、単繊維区域160は、ニット構成要素130との一体ニット構造で形成されてもよい。
【0057】
一体ニット構造の単繊維区域160を有するニット構成要素130を形成することにより、単繊維区域160は、単繊維区域160に張力をかけておくように、ニット構成要素130の残りの部分によって取り囲まれるか、または包囲されてもよい。すなわち、第1の種類のヤーン700は、単繊維ストランド701によって形成される単繊維区域160を取り囲むように構成されてもよい。第1の種類のヤーン700は、弾力がなく耐伸縮性の単繊維ストランド701よりも小さい耐伸縮性を有してもよいので、ニット構成要素130は、単繊維区域160にわずかな張力がかかるように、単繊維区域160を取り囲む部分は伸張してもよい。この構成を用いて、ニット構成要素130の周囲部により単繊維160にかけられる張力が、単繊維区域160において、着用者の足に不快感を生じることがある単繊維ストランド701のよじれまたは急な曲がりを防止または軽減する補助をしてもよい。
【0058】
異なる実施形態では、異なる特徴を有するニット構成要素を組み込んだ履物製品を提供してもよい。いくつかの実施形態では、履物製品は、アッパーに異なる種類の単繊維区域を有するニット構成要素を用いて構成してもよい。所望の種類および場所により、単繊維区域は、アッパーに異なる特性を与えるように変えてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、着用者の足に快適性を提供するために、天然または合成繊維撚糸ヤーンの内層を有する単繊維区域が構成されてもよい。
【0059】
図8から
図17は、単に製品800とも呼ばれる、複数の種類の単繊維区域860を有する履物製品800の別の実施形態を図示する。いくつかの実施形態では、履物製品800は、上記説明したソール構造110に装着されるアッパー820を含んでもよい。実施形態では、アッパー820は、複数の種類の単繊維区域860を含んでもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、アッパー820は、上記説明したアッパー120の構成要素と実質的に同様な複数の構成要素を含んでもよい。たとえば、アッパー820は、上記説明した外側面121および内側面122と実質的に同様な外側面821および反対側の内側面822を含んでもよい。アッパー820は、カラー123と実質的に同様で、少なくともかかと領域14に配置されて、スロート開口部840を形成するカラー823も含んでもよく、アッパー820の内部へのアクセスを提供する。くわえて、アッパー820は、上記説明した甲周り区域150と実質的に同様な甲周り区域850も含んでもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、甲周り区域850は、甲周り区域850を通ってアッパー820の外側側部16と内側側部18との間に設けられているベロ部852をさらに含んでもよい。実施形態では、ベロ部852は上記説明したベロ部152と実質的に同様にしてもよく、甲周り区域850を通って外側側部および内側側部に沿ったアッパー820の部分に一体的に装着されて、アッパー820の部分との一体ニット構造で形成されてもよい。ベロ部152と同様に、他の実施形態では、ベロ部852は、ベロ部852が甲周り区域850の両側の外側部と内側部との間の開口部内で移動可能であるように、甲周り区域850を通って外側側部および内側側部に沿って同様に分離していてもよい。
【0062】
製品800はさらに、上記説明した締めひも154とともに使用してもよく、締めひも154は、アッパー820の複数の締めひも開口部853を通って延び、着用者がアッパー820の寸法を調節して足のさまざまなプロポーションを収容できるようにする。いくつかの実施形態では、締めひも154は甲周り区域850のどちらの側にも沿って設けられている締めひも開口部853を通って延びてもよい。いくつかの実施形態では、締めひも開口部853は、以下さらに説明するように、インレイ伸張要素832のループ部によって形成される締めひも収容部材であってもよい。より具体的には、締めひも154は、着用者がアッパー820を足の周りに締め付けることを可能にし、締めひも154は、着用者がアッパー820を緩めて、空洞から(すなわち、スロート開口部840を通して)足の出し入れを容易にすることを可能にする。くわえて、甲周り区域850のアッパー820のベロ部852が締めひも854の下に延びて、製品800の快適性を高める。
【0063】
図8では締めひも154を製品800とともに図示しているが、
図9から
図11では、明確にするために、締めひも154を省略している。さらなる構成において、アッパー820は、(a)かかと領域14に安定性を高めるヒールカウンタ、(b)足先領域10に耐摩耗性材料から形成されるつま先ガード、ならびに(c)ロゴ、商標、および注意書きや材料情報を記載した札など、追加の要素を含んでもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、アッパー820は、上記説明したように、単繊維ストランドを含む1つ以上の部分を含んでもよい。実施形態では、単繊維ストランドを含むアッパー820の部分は、1つ以上の単繊維区域860に配置してもよい。この実施形態では、単繊維区域860は2つ以上の異なる種類の単繊維区域を含んでもよい。たとえば、ある実施形態では、異なる単繊維区域は異なるニット構造を有してもよい。別の実施形態では、異なる単繊維区域は、単繊維ストランドと天然または合成繊維撚糸ヤーンとの組み合わせを使用して形成してもよい。
【0065】
上記説明した単繊維区域160と同様に、単繊維区域860は、アッパー820のさまざまな部分に配置してもよい。実施形態では、1つ以上の単繊維区域860を、アッパー820がアッパー820内に配される着用者の足に略平らに当たる製品800の部分に配置してもよい。この実施形態では、単繊維区域860は、アッパー820の内側側部18に設けられる内側単繊維部862と、アッパー820の外側側部16に設けられる外側単繊維部866とを含む。内側単繊維部862および外側単繊維部866は大略的に中足領域12に配置してもよい。いくつかの実施形態では、単繊維区域860は、足先単繊維部864およびかかと単繊維部868をさらに含んでもよい。足先単繊維部864はアッパー820の足先領域10の甲周り区域850の前方に設けられ、かかと単繊維部868はかかと領域14に設けられる。実施形態では、かかと単繊維部868は、外側側部16と内側側部18との間にアッパー820のかかと領域14の周りに実質的に連続して延びていてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、単繊維区域860は、アッパー820にわたって各単繊維区域860間同士が実質的に連続していてもよい。たとえば、ある実施形態では、内側単繊維部862は足先単繊維部864と連続していてもよく、外側単繊維部866も足先単繊維部864と連続していてもよい。同様に、外側単繊維部866はかかと単繊維部868と連続していてもよく、内側単繊維部862もかかと単繊維部868の少なくとも一部と連続していてもよい。この構成を用いて、単繊維区域860は、外側側部16から足先領域10を越えて、製品100の前部の内側側部18までアッパー820にわたって延びる実質的に連続したゾーンを形成してもよく、外側側部からかかと領域14を越えて、製品100の後部の内側側部まで、アッパー820をわたって延びる実質的に連続したゾーンも形成してもよい。
【0067】
他の実施形態では、内側単繊維部862、足先単繊維部864、外側単繊維部866および/またはかかと単繊維部868を含め、各単繊維区域860は、アッパー820に設けられる他の単繊維区域860と不連続であってもよい。単繊維区域860が不連続の実施形態では、各単繊維区域860は、アッパー820の残りの部分によって全体を取り囲まれるか、または包囲されてもよい。
【0068】
図8から
図16に図示されるニット構成要素830は、上記説明したニット構成要素130と比較したとき、追加の構造または要素を含んでいる。実施形態では、ニット構成要素830の主要要素は、ニット要素831およびインレイ伸張要素832である。ニット要素831は、(例、編み機を用いて)操作して、多様なコースおよびウェールを画成する複数の互いに絡み合ったループを形成する少なくとも1本のヤーンから形成されてもよい。すなわち、ニット要素831はニット布地の構造を有する。
【0069】
インレイ伸張要素832はニット要素831を通って延び、ニット要素831内のさまざまなループ間を通る。インレイ伸張要素832は一般にニット要素831内のコースに沿って延びるが、インレイ伸張要素832はニット要素831内のウェールに沿って延びてもよい。インレイ伸張要素832は耐伸縮性を付与してもよく、製品800に組み込まれたとき、締めひも154とともに機能して製品800のフィット性を高める。実施形態では、インレイ伸張要素832は、1つ以上の単繊維区域860の部分を含めて、ニット要素831の1つ以上の部分を通過する。
【0070】
いくつかの実施形態では、インレイ伸張要素832は、ソール構造110から甲周り区域850に向かって垂直方向にニット要素831を通って上方に延びていてもよい。実施形態では、インレイ伸張要素832の部分は、締めひも開口部853として機能するループを形成してもよく、それから甲周り区域850からソール構造110に向かって垂直方向に下方に戻って延びてもよい。くわえて、製品800に締めひも154が備えられている場合、インレイ伸張要素832は締めひも154を締めると張力がかけられてもよく、インレイ伸張要素832はアッパー820の伸張を阻止する。また、インレイ伸張要素832は、アッパー820を足周りに固定することを補助し、締めひも154とともに機能して製品800のフィット性を高める。いくつかの実施形態では、インレイ伸張要素832は、甲周り区域850の内側側部および外側側部に沿った部分を含め、1つ以上の部分でニット要素831から出て、アッパー820の外側面821に露出するようにしてもよい。
【0071】
ニット構成要素130を参照して上記説明したように、ニット構成要素830も同様に、上記説明したヤーンを形成するのに適した任意の材料を含めて、異なる材料から形成されるヤーンを含んでもよい。いくつかの実施形態では、上記説明したように、ニット構成要素830は非融着ヤーンおよび融着ヤーンをさらに含んでもよい。融着ヤーンを加熱して非融着ヤーンに融着するとき、このプロセスはニット構成要素830の構造を剛化または硬化する効果を有してもよい。また、(a)非融着ヤーンのある部分を非融着ヤーンの別の部分に、および/または(b)非融着ヤーンとインレイ伸張要素832とを互いに接合することにより、非融着ヤーンおよびインレイ伸張要素832の相対的な位置を固定またはロックする効果を有し、それにより耐伸縮性および剛性を付与する。すなわち、非融着ヤーンの部分は、融着ヤーンと融着するとき、互いに対して滑らなくなり、それによりニット構造の相対的な動きによるニット要素831の歪みまたは恒久的な伸張を防止する。くわえて、インレイ伸張要素832がニット要素831に対して滑らないことにより、インレイ伸張要素832の部分がニット要素831から外方に引っ張られることを防止する。したがって、ニット構成要素830の区域は、ニット要素831内に融着ヤーンおよび非融着ヤーンの両方を用いて構成してもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、ニット構成要素830は、複数のニット層を有するニット要素831を含んでもよい。ニット構成要素830に関連するニット層は、ニット層間を行き来して通って層を互いに接合して連結する少なくとも1本の共通のヤーンまたは単繊維ストランドを含む、ニット要素831の、部分的に同一の広がりをもって重なり合う部分であってもよい。この構成を用いて、ニット層は一緒に一体ニット構造で形成される単一のニット布地を形成する。
【0073】
実施形態では、ニット要素831は、1つ以上の部分で互いに連結されてニット構成要素830を形成する、少なくとも2つのニット層を含んでもよい。ある実施形態では、第1ニット層はニット構成要素830の第1側の大半を形成してもよく、第2ニット層はニット構成要素830の第2側の大半を形成してもよい。いくつかの実施形態では、第1ニット層は外側面821の大半に関連してもよく、第2ニット層は内側面822の大半に関連してもよい。実施形態では、インレイ伸張要素832は、第1ニット層、第2ニット層の部分、および/または第1ニット層と第2ニット層との間のニット要素831の部分を通って延びていてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、ニット構成要素130を参照して上記説明したように、ニット構成要素830は、1つ以上の境界ゾーンを含んでもよい。境界ゾーンは、ニット構成要素830の一部を編むために使用されるヤーンが、あるヤーンの種類から別のヤーンの種類に移行する、ニット構成要素830の部分を画成する。たとえば、ニット構成要素830は、アッパー820の1つ以上の境界ゾーンで、第1の種類のヤーンから、単繊維区域860を形成する単繊維ストランドに移行してもよい。くわえて、ニット構成要素830が複数のニット層の構成をさらに有してもよい実施形態では、境界ゾーンは第1ニット層および第2ニット層のうちの一方のみでヤーンの種類を移行させてもよく、または第1ニット層および第2ニット層の両方でヤーンの種類を移行させてもよい。すなわち、境界ゾーンは、ニット要素831の個々のニット層のレベルで適用してもよい。
【0075】
実施形態では、第1の種類のヤーンは、単繊維区域860のそれぞれに関連する1つ以上の境界ゾーンで、天然または合成繊維撚糸ヤーンから単繊維ストランドに移行する。この実施形態では、内側単繊維部862は、かかと領域14に向かって内側側部18のアッパー820の一部に沿って設けられる後部内側境界900を含み、ここで、内側単繊維部862の1つのニット層を形成する少なくとも1本の単繊維ストランドは、ニット構成要素830の残りの部分を形成するために使用されるニット要素831の少なくとも1つのニット層内の第1の種類のヤーンに移行する。内側単繊維部862は、上部内側境界904および底部内側境界906をさらに含んでもよい。ある実施形態では、上部内側境界904はアッパー820の内側側部18に沿って配置されて、第1の距離D1の分だけカラー823およびスロート開口部840から離間していてもよく、底部内側境界906もアッパー820の内側側部18に沿って配置されて、上記説明した第2の距離D2の分だけソール構造110から離間していてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、前部内側境界902は、アッパー820の内側単繊維部862の前位置を画成してもよい。単繊維区域860が実質的に連続している実施形態では、前部内側境界902は足先単繊維部864に単純に移行してもよい。しかし、各単繊維区域860が不連続の実施形態では、前部内側境界902は、単繊維ストランドから、ニット要素831を形成する両ニット層の第1のヤーンの種類に戻る、移行部を画成してもよい。該不連続の実施形態では、足先単繊維部864は、ヤーンが再び少なくとも1つのニット層を形成する単繊維ストランドに復帰する別の境界ゾーンによって画成されることは理解されるべきである。
【0077】
アッパー820に沿って続けて、足先単繊維部864は後部足先境界908および前部足先境界909を含んでもよい。ある実施形態では、上記説明したように、後部足先境界908は甲周り区域850の前方に配置されて、第3の距離D3の分だけ離間していてもよく、前部足先境界909は製品800のつま先端付近に配置されて、第4の距離の分だけ離間していてもよい。この実施形態では、外側単繊維部866はかかと領域14に向かってアッパー820の外側側部16に設けられている後部外側境界910を含み、外側単繊維部866の1つのニット層を形成する少なくとも1本の単繊維ストランドは、ニット構成要素830の残りの部分を形成するために使用されるニット要素831の少なくとも1つのニット層内のヤーンの第1の種類に移行する。外側単繊維部866は、上部外側境界914および底部外側境界916をさらに含んでもよい。ある実施形態では、上記説明したように、上部外側境界914はアッパー820の外側側部16に沿って配置され、第5の距離D5の分だけカラー823およびスロート開口部840から離間していてもよく、底部外側境界916もアッパー820の外側側部16に沿って配置してもよく、第6の距離D6の分だけソール構造110から離間していてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、前部外側境界912は、アッパー820の外側単繊維部866の前位置を画成してもよい。前部内側境界902と同様に、単繊維区域860が実質的に連続している実施形態では、前部外側境界912は足先単繊維部864に単純に移行してもよい。しかし、各単繊維区域860が不連続の実施形態では、前部外側境界912は、単繊維ストランドから、ニット要素831を形成する両ニット層の第1のヤーンの種類に戻る、移行部を画成してもよい。該不連続の実施形態では、足先単繊維部864は、ヤーンが再び少なくとも1つのニット層を形成する単繊維ストランドに復帰する別の境界ゾーンによって画成されることは理解されるべきである。
【0079】
いくつかの実施形態では、上記ニット構成要素130を参照して説明したように、内側単繊維部862および外側単繊維部866は、ほぼ対称になるように、内側側部18および外側側部16の各々に同様な配列を有してもよい。これらの実施形態では、第1の距離D1および第5の距離D5はほぼ等しくてもよい。同様に、第2の距離D2および第6の距離D6もほぼ等しくてもよい。しかし、他の実施形態では、内側側部18および外側側部16のそれぞれは、各側部同士で異なる単繊維区域860を有してもよい。したがって、該他の実施形態では、内側単繊維部862および外側単繊維部866をカラー823および/またはソール構造110に対してさらに遠くにまたはさらに近くに配置するように、第1の距離D1および第5の距離D5のそれぞれは異なっていてもよく、および/または第2の距離D2および第6の距離D6は異なっていてもよい。さらに他の実施形態では、内側側部18または外側側部16のうちの一方のみが単繊維区域860を含んでいてもよい。さまざまなサイズ、形状、および/または場所の単繊維区域860の他の構成は、本明細書に説明されるプロセスに従って構成してもよいことは理解されるべきである。
【0080】
くわえて、実施形態では、ニット構成要素830は、かかと単繊維部868に関連する境界ゾーンをさらに含んでもよい。この実施形態では、かかと単繊維部868は、上部かかと境界920および底部かかと境界922を含んでもよい。上部かかと境界920は、アッパー820のかかと領域14においてカラー823およびスロート開口部840から離間していてもよく、底部かかと境界922は、ソール構造110から離間していてもよい。いくつかの実施形態では、上部かかと境界920は、上部内側境界904および/または上部外側境界914と実質的に同様な距離の分だけカラー823から離間していてもよく、底部かかと境界922は、底部内側境界906および/または底部外側境界916と実質的に同じ距離の分だけソール構造110から離間していてもよい。他の実施形態では、上部かかと境界920および/または底部かかと境界922の間隔は変わってもよい。
【0081】
上記説明したように、いくつかの実施形態では、ニット構成要素830は異なる構造を有する複数の種類の単繊維区域860を含んでもよい。たとえば、実施形態では、単繊維区域860は、単繊維ストランドで編まれた2つのニット層から形成される第1の種類の単繊維区域と、単繊維ストランドおよび天然または合成繊維撚糸ヤーンで編まれた2つのニット層から形成される第2の種類の単繊維区域とを含んでもよい。実施形態では、第1の種類の単繊維区域860、すなわち、単繊維ストランドの2つのニット層は、外側側部16および内側側部18それぞれに沿って設けられてもよい。この実施形態では、内側単繊維部862および/または外側単繊維部866は第1の種類の単繊維区域であってもよい。すなわち、内側単繊維部862および/または外側単繊維部866は、第1単繊維ストランドから形成される第1ニット層と、第2単繊維ストランドから形成される第2ニット層とを含んでもよい。
【0082】
実施形態では、アッパー820内に設けられたときに、着用者の足のつま先およびかかとに当たるように構成されているニット構成要素830の部分は、第2の種類の単繊維区域860を用いて構成されてもよく、すなわち、2つのニット層は、単繊維ストランドから形成される1つのニット層と、天然または合成繊維撚糸ヤーンから形成される1つのニット層とを有する。この実施形態では、足先単繊維部864および/またはかかと単繊維部868は第2の種類の単繊維区域であってもよい。すなわち、足先単繊維部864および/またはかかと単繊維部868は、単繊維ストランドから形成される第1ニット層と、天然または合成繊維撚糸ヤーンから形成される第2ニット層とを含んでもよい。
【0083】
実施形態では、足先単繊維部864および/またはかかと単繊維部868の単繊維ストランドから形成される第1ニット層はアッパー820の外側面821に関連していてもよく、足先単繊維部864および/またはかかと単繊維部868の天然もしくは合成繊維撚糸ヤーンから形成される第2ニット層はアッパー820の内側面822に関連していてもよい。たとえば、ある実施形態では、内側面822に関連する第2ニット層は、足先単繊維部864および/またはかかと単繊維部868のポリエステルヤーンから作成してもよい。この構成を用いて、ポリエステルヤーンの第2ニット層は、アッパー820内に配される着用者の足のために滑らかで柔らかい内側面822を提供してもよい。くわえて、第2ニット層は、足先単繊維部864および/またはかかと単繊維部868の単繊維ストランドから形成される第1ニット層のとがった縁または急な曲げ部分からの足の保護を提供してもよい。
【0084】
別の実施形態では、内側面822に関連する第2ニット層は、足先単繊維部864および/またはかかと単繊維部868において、ポリエステルヤーンと融着ヤーンとの組合せから作成してもよい。この構成を用いて、第2ニット層に関連する融着ヤーン部は、上記説明したように、加熱したとき、足先単繊維部864および/またはかかと単繊維部868をニット構成要素830内の適所に設定することを補助するように構成されてもよい。
【0085】
異なる種類の単繊維区域860を有するニット構成要素830を製品800のアッパー820に組み込むことにより、上記説明したように、単繊維区域860は、強度、耐伸縮性、軽量化を提供し、および/またはアッパー820を通る気流を補助して、製品800の内部への通気性を提供してもよい。くわえて、単繊維区域860の2つのニット層構成を変えることにより、着用者の足に快適性も残しつつ、アッパー820はこれらの特徴を提供する。
【0086】
ここで
図12Aから
図12Cを参照すると、異なる種類の単繊維区域860を有するニット構成要素830を組み込んだアッパー820を有する製品800の断面図が図示されている。
【0087】
図12Aは、アッパー820を切断した足先領域10の断面図を示す。この実施形態では、足先単繊維部864はアッパー820の上部に沿って設けられている。実施形態では、足先単繊維部864は上記説明した第2の種類の単繊維区域860であってもよい。この実施形態では、足先単繊維部864は2つのニット層を含み、ニット構成要素830の外側面821に関連し、単繊維ストランドによって形成される第1ニット層と、内側面822に関連して、天然または合成繊維撚糸ヤーンによって形成される第2ニット層とを含む。いくつかの実施形態では、足先単繊維部864の第2ニット層は、ニット構成要素830を形成するニット要素831の残りの部分と同じヤーンから作成してもよい。
【0088】
この構成を用いて、着用者の足が製品800の内部の中のアッパー820のベース部1200に沿って配されているとき、空気がアッパー820から出入りして循環し、製品800に通気性を与える補助をしてもよく、足先単繊維部864は内側面822に沿ってより柔らかいニット層を含んで、足に快適感を与えてもよい。
【0089】
図12Bは、アッパー820を切断した中足領域12の断面図を示す。この実施形態では、内側単繊維部862および外側単繊維部866は、中足領域12においてアッパー820の内側側部18および外側側部16のそれぞれに沿って設けられている。実施形態では、内側単繊維部862および/または外側単繊維部866は、上記説明した第1の種類の単繊維区域860であってもよい。この実施形態では、内側単繊維部862および/または外側単繊維部866は2つのニット層を含み、ニット構成要素830の外側面821に関連した第1単繊維ストランドによって形成される第1ニット層と、内側面822に関連した第2単繊維ストランドによって形成される第2ニット層とを含む。この構成を用いて、アッパー820の内側側部18および外側側部16はこれらの区域で強度および耐伸縮性を増してもよい。
【0090】
図12Cは、アッパー820を切断したかかと領域14の断面図を示す。この実施形態では、かかと単繊維部868は、アッパー820の外側側部16および内側側部18に沿って設けられている。実施形態では、かかと単繊維部868は、上記説明した第2の種類の単繊維区域860であってもよい。この実施形態では、かかと単繊維部868は足先単繊維部864と実質的に同様な構造を有してもよく、ニット構成要素830の外側面821に関連し、単繊維ストランドによって形成される第1ニット層と、内側面822に関連して天然または合成繊維撚糸ヤーンによって形成される第2ニット層とを含む。いくつかの実施形態では、かかと単繊維部868の第2ニット層は、ニット構成要素830を形成するニット要素831の残りの部分と同じヤーンから作成してもよい。
【0091】
くわえて、この実施形態では、インレイ伸張要素832の部分が、ニット要素831を含めたニット構成要素830の部分、および単繊維区域860、たとえば、かかと単繊維部868を通って延びているところが示されている。
【0092】
ここで
図13および
図14を参照すると、ニット構成要素830の実施形態が平面または平らな構成で示されている。上記説明したように、ニット構成要素830はニット要素831とインレイ伸張要素832とを含む。この実施形態では、ニット構成要素830は、上部足先周縁部1300、上部側周縁部1302、内側かかと縁部1304および外側かかと縁部1314を含む一対のかかと縁部、底部側周縁部1312、ならびに底部足先周縁部1310によって輪郭が示される楕円オフセット構成を有してもよい。くわえて、ニット要素831は、アッパー820の外側面821の一部を形成する第1側と、アッパー820の内側面822の一部を形成することによってアッパー820内の空洞の少なくとも一部を画成してもよい反対側の第2側とを有する。多くの構成では、インレイ伸張要素832は、ニット要素831の第1側と第2側との間に、単繊維区域860の部分を含めてニット要素831の部分を通って延びていてもよい。
【0093】
図13および
図14に図示されるように、インレイ伸張要素832は、上部側周縁部1302から甲周り区域850に向かって延び、そこでインレイ伸張要素832の一部は締めひも開口部853として機能するループを形成してから、上部側周縁部1302に戻ることを繰り返す。インレイ伸張要素832は、ニット構成要素830の両側で同様な経路をたどってもよい。この実施形態では、インレイ伸張要素832は、底部側周縁部1312から甲周り区域850に向かって延び、そこでインレイ伸張要素832の一部が締めひも開口部853として機能するループを形成してから、底部側周縁部1312に戻ることを繰り返す。いくつかの実施形態では、インレイ伸張要素832の一部は後方に角度を成して、内側かかと縁部1304および/または外側かかと縁部1314まで延びていてもよい。くわえて、インレイ伸張要素832が上部側周縁部1302および/または底部側周縁部1312に向かって、もしくはそれから離れて延びるとき、インレイ伸張要素832は内側単繊維部862および/または外側単繊維部866の部分を含めて、ニット構成要素830の1つ以上の単繊維区域860を通過してもよい。同様に、インレイ伸張要素832が内側かかと縁部1304および/または外側かかと縁部1314に向かって、もしくはそれから離れて延びるとき、インレイ伸張要素832は足先単繊維部864および/またはかかと単繊維部868の部分も通過してもよい。
【0094】
ニット要素831と比較して、インレイ伸張要素832は、より大きな耐伸縮性を呈してもよい。すなわち、インレイ伸張要素832はニット要素831よりも伸張しなくてもよい。インレイ伸張要素832の複数の区画がニット要素831を通って延びていることを考えると、インレイ伸張要素832は甲周り区域850とソール構造110に隣接する下方区域との間のアッパー820の部分に耐伸縮性を付与してもよい。また、締めひも154に張力を掛けるとインレイ伸張要素832に張力が付与され、それによって甲周り区域850と下方区域との間のアッパー820の部分が足に当たるよう誘導する。くわえて、インレイ伸張要素832の複数の区画が内側かかと縁部1304および/または外側かかと縁部1314に向かって延びていることを考えると、インレイ伸張要素832はかかと領域14のアッパー820の部分に耐伸縮性を付与してもよい。さらに、締めひも154に張力を掛けることで、かかと領域14のアッパー820の部分が足に当たるよう誘導する。たとえば、インレイ伸張要素832は単繊維区域860をアッパー820の外側側部16および内側側部18に沿って配置する補助をして、着用者の足に平らに当ててもよい。このように、インレイ伸張要素832は締めひも154とともに機能して製品800のフィット性を高める。
【0095】
ニット要素831はニット構成要素130について上記説明したさまざまな種類のヤーンのいずれをも組み込んでもよい。いくつかの実施形態では、インレイ伸張要素832の構成は大幅に変えてもよい。ヤーンに加えて、インレイ伸張要素832は、たとえば、フィラメント(例、単繊維)、スレッド、ロープ、帯、ケーブル、または鎖の構成を有してもよい。ニット要素831を形成するヤーンと比較して、インレイ伸張要素832の厚みはより大きくしてもよい。いくつかの構成では、インレイ伸張要素832はニット要素831のヤーンよりも大幅に厚くした厚みを有してもよい。インレイ伸張要素832の断面形状は円形にしてもよいが、三角形、正方形、長方形、楕円形または不規則形状も利用してもよい。また、インレイ伸張要素832を形成する材料は、綿、エラステイン、ポリエステル、レーヨン、ウールおよびナイロンなど、ニット要素831内のヤーンの材料のいずれを含んでもよい。前述したように、インレイ伸張要素832はニット要素831よりも大きい耐伸縮性を呈してもよい。このように、インレイ伸張要素832に適した材料は、ガラス、アラミド(例、パラアラミドおよびメタアラミド)、超高分子量ポリエチレン、および液晶ポリマーを含め、高引っ張り強度の用途に利用される多様なエンジニアリングフィラメントを含んでもよい。別の実施例として、インレイ伸張要素832として、ポリエステル編組スレッドも利用してもよい。
【0096】
その開示の全体が本明細書に組み込まれる、Huffaらの特許文献1は、ニット要素内にインレイ伸張要素を挿入またはその他の形で配置するプロセスを含め、ニット構成要素(例、ニット構成要素130,830)が形成される態様の説明を提供する。
【0097】
実施形態では、ニット構成要素830の周縁部の1つ以上を接合してアッパー820を形成してもよい。この実施形態では、ニット構成要素830は、上部足先周縁部1300と底部足先周縁部1310との間の屈曲点1306で屈曲して、上部足先周縁部1300および底部足先周縁部1310を互いに接触させて配置してもよい。同様に、上部側周縁部1302を底部側周縁部1312に接触させて配置してもよく、対のかかと縁部、内側かかと縁部1304および外側かかと縁部1314を互いに接触させて配置してもよい。実施形態では、内側かかと縁部1304および外側かかと縁部1314は、かかと領域14のアッパー820の内側側部18に沿って設けられる縫い目829に沿って接合してもよい。くわえて、縫い目829は、上部足先周縁部1300および底部足先周縁部1310ならびに上部側周縁部1302および底部側周縁部1312のそれぞれに沿ってさらに延びて連結し、アッパー820を形成してもよい。
【0098】
ここで
図14を参照すると、ニット構成要素830の一体ニット構造を示すために、ニット要素831および異なる種類の単繊維区域860を含むニット構成要素の部分の拡大図が図示されている。上記説明したように、ニット構成要素830の単繊維区域860は、異なる構造を有する複数の種類の単繊維区域860を含んでもよい。たとえば、実施形態では、単繊維区域860は、単繊維ストランドで編まれた2つのニット層から形成される第1の種類の単繊維区域と、単繊維ストランドおよび天然または合成繊維撚糸ヤーンで編まれた2つのニット層から形成される第2の種類の単繊維区域とを含んでもよい。この実施形態では、内側単繊維部862および/または外側単繊維部866は第1の種類の単繊維区域であってもよい。すなわち、内側単繊維部862および/または外側単繊維部866は、第1単繊維ストランド1400から形成される第1ニット層と、第2単繊維ストランド1401から形成される第2ニット層とを含んでもよい。このように、
図15Bで分かるように、この第1の種類の単繊維区域860は、アッパー820の外側面821および内側面822の両方に、単繊維ストランドから形成されるニット層を含む。
【0099】
この実施形態では、足先単繊維部864および/またはかかと単繊維部868は、第2の種類の単繊維区域であってもよい。すなわち、足先単繊維部864および/またはかかと単繊維部868は、単繊維ストランド1400から形成される第1ニット層と、天然または合成繊維撚糸ヤーン1403から形成される第2ニット層とを含んでもよい。実施形態では、
図15Aで分かるように、単繊維ストランド1400から形成される第1ニット層はニット構成要素830の外側面821に関連してもよく、天然または合成繊維撚糸ヤーン1403から形成される第2ニット層は内側面822に関連してもよい。
【0100】
くわえて、インレイ伸張要素832が単繊維区域860を含むニット構成要素830の部分を通って延びる実施形態では、インレイ伸張要素832は、アッパー820の外側面821と内側面822との間に配置してもよい。
図15Cに図示されるように、インレイ伸張要素832は、外側面821に関連し、単繊維ストランドから形成される第1ニット層と、内側面822に関連し、天然または合成繊維撚糸ヤーンから形成される第2ニット層との間に、かかと単繊維部868を通って延びている。いくつかの構成において、インレイ伸張要素832の部分は表面の一方または両方から見えてもよい。他の実施形態では、インレイ伸張要素832の部分は外側面821および/もしくは内側面822の一方に据えてもよく、またはニット要素831はインレイ伸張要素832が通過する凹みもしくは開口部を形成してもよい。
【0101】
単繊維区域860を含まないニット構成要素830の残りの部分では、ニット要素831は同様な2つのニット層構造を有してもよい。たとえば、
図14に図示されるように、ニット要素831の一部は第1天然または合成繊維撚糸ヤーン1402から形成される第1ニット層と、第2天然または合成繊維撚糸ヤーン1403から形成される第2ニット層とを含んでもよい。実施形態では、第1天然または合成繊維撚糸ヤーン1402から形成される第1ニット層はニット構成要素830の外側面821に関連してもよく、第2天然または合成繊維撚糸ヤーン1403から形成される第2ニット層は内側面822に関連してもよい。実施形態では、同じ第2天然または合成繊維撚糸ヤーン1403は、第2の種類の単繊維区域860と、同じく第2天然または合成繊維撚糸ヤーン1403を含むニット構成要素830の残りの部分とを編むために使用してもよい。
【0102】
ニット構成要素130を参照して上記説明したように、一体ニット構造の単繊維区域860を有するニット構成要素830を形成することにより、単繊維区域860は、単繊維区域860に張力をかけておくように、ニット構成要素830の残りの部分によって取り囲まれるか、または包囲されてもよい。この構成を用いて、ニット構成要素830の周囲部により単繊維860にかけられる張力が、単繊維区域860において、着用者の足に不快感を生じることがある単繊維ストランドのよじれまたは急な曲がりを防止または軽減する補助をしてもよい。
【0103】
ここで
図16Aを参照すると、内側単繊維部862を含むニット構成要素830の一部が図示されている。この実施形態では、インレイ伸張要素832はニット要素831および内側単繊維部862を通って延びている。実施形態では、上記説明したように、底部内側境界906のニット構成要素830の部分は、内側単繊維部862を形成する単繊維ストランド1400から、ニット要素831の残りの部分を形成する天然または合成繊維撚糸ヤーン1402に移行してもよい。
【0104】
図16Aの拡大図に図示されるように、ニット構成要素830の第1コース1600およびニット構成要素830の第4コース1606は、底部内側境界906で、内側単繊維部862を形成する単繊維ストランド1400から、天然または合成繊維撚糸ヤーン1402に移行する。ある実施形態では、ニット構成要素830の第2コース1602および第3コース1604もインレイ伸張要素832を含む。この実施形態では、第2コース1602および第3コース1604も、第1コース1600および第4コース1606と同様に、底部内側境界906で、単繊維ストランド1400から、天然もしくは合成繊維撚糸ヤーン1402または別の異なる種類のヤーンに移行する。
【0105】
実施形態では、インレイ伸張要素832がニット要素831を通って延びるとき、第2コース1602および第3コース1604はインレイ伸張要素832に一致してもよい。この構成を用いて、インレイ伸張要素832は内側単繊維部862で単繊維ストランド1400を通って延びて、ニット要素831の残りの部分では天然または合成繊維撚糸ヤーン1402を通って延び続けてもよい。したがって、天然または合成繊維撚糸ヤーン1402は、内側単繊維部862外のニット要素831の残りの部分を通って延びるとき、インレイ伸張要素832の部分を実質的に取り囲んでもよい。この構成を用いて、インレイ伸張要素832は、単繊維区域860外のニット構成要素830の外側面821では隠れて見えなくてもよい。
【0106】
他の実施形態では、単繊維ストランドを含むニット構成要素830の1つ以上のコースは、単繊維区域860を越えてニット要素831の残りの部分を通って延びてもよい。ここで
図16Bを参照すると、内側単繊維部862を含むニット構成要素830の部分のオプション構成が図示されている。
図16Aと同様に、インレイ伸張要素832は、ニット要素831および内側単繊維部862を通って延びている。しかし、この実施形態では、単繊維ストランド、たとえば、上記説明した単繊維ストランド1400によって形成される1つ以上のコースは、インレイ伸張要素832とともに内側単繊維部862外のニット要素831を通ってさらに延びていてもよい。
【0107】
実施形態では、上記説明したように、底部内側境界906におけるニット構成要素830の部分は、内側単繊維部862を形成する単繊維ストランド1400から、ニット要素831の残りの部分を形成する天然または合成繊維撚糸ヤーン1402に移行してもよい。
【0108】
図16Bの拡大図に図示されるように、ニット構成要素830の第1コース1600およびニット構成要素830の第4コース1606は、底部内側境界906において、内側単繊維部862を形成する単繊維ストランド1400から、天然または合成繊維撚糸ヤーン1402に移行する。ある実施形態では、ニット構成要素830の第2コース1602および第3コース1604は、底部内側境界906において、単繊維ストランド1400から、天然もしくは合成繊維撚糸ヤーン1402、または別の異なる種類のヤーンに移行しない。代わりに、第2コース1602および第3コース1604は、実質的に連続的に、内側単繊維部862を形成する同じ単繊維ストランド1400で形成され続ける。
【0109】
この実施形態では、インレイ伸張要素832がニット要素831を通って延びているため、単繊維ストランド1400で編まれる第2コース1602および第3コース1604はインレイ伸張要素832と一致してもよい。この構成を用いて、インレイ伸張要素832は、内側単繊維部862の単繊維ストランド1400、およびニット要素831の残りの部分を通って延びてもよい。したがって、単繊維ストランド1400は、内側単繊維部862外のニット要素831の残りの部分を通って延びているとき、インレイ伸張要素832の部分を実質的に取り囲んでもよい。他の実施形態では、単繊維ストランドの1つ以上のコースは、内側単繊維部862、足先単繊維部864、外側単繊維部866および/またはかかと単繊維部868を含め、各単繊維区域860外に延びて、ニット構成要素830全体でインレイ伸張要素832の経路をたどって、これと一致してもよい。インレイ伸張要素832を単繊維ストランド1400で囲うかまたは取り囲むことにより、インレイ伸張要素832に追加の強度および支持を与えてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、第2の種類の単繊維区域860、すなわち、単繊維ストランドから形成される1つのニット層と天然または合成繊維撚糸ヤーンから形成される1つのニット層とを有する2つのニット層は、編みプロセス中に、天然または合成繊維撚糸ヤーンから形成されるニット層に複数の凹みを形成するニット構造で編んでもよい。このような構成は、内側面822に沿って着用者の足に快適感をなお与えながら、アッパー820の内部に通気性をさらに与える。
【0111】
第2の種類の単繊維区域860を形成するのに適したニット構造は、1×1反転モックメッシュニット構造または2×2反転モックメッシュ構造を含む。第1ニット層および第2ニット層の両方を含め、ニット要素を完全に貫通する開口部を形成するために使用してもよいメッシュニット構造と対照的に、反転モックメッシュニット構造は第2ニット層(すなわちアッパー820の内側面822に対応する層)に凹みを形成する。反転2×2モックメッシュ構造を編むためのルーピングの略
図1700の実施形態が図示されている。この実施形態では、ルーピングの略
図1700は、編み機、たとえば平編み機、によって行われるステッチおよび動きのシーケンスを示しており、第2の種類の単繊維区域860の部分を作り上げる反転2×2モックメッシュ構造を形成する。
図17に図示されるように、離間した点印は編み機の針を表し、図示されるステップは編み機の前床および後床のそれぞれの針間のヤーンまたはストランドの動きの方向を表す。
【0112】
図17に図示されるように、単繊維ストランド1400はアッパー820の外側面821に関連する単繊維区域860の第1ニット層を編むために使用してもよいのに対し、天然または合成繊維撚糸ヤーン1403はアッパー820の内側面822に関連した単繊維区域860の第2ニット層を編むために使用してもよい。第1ニット層と対照的に、第2ニット層は天然または合成繊維撚糸ヤーン1403を用いて行われる複数のタック編みを含む。この実施形態では、第2ニット層の幅またはギャップは、反転2×2モックメッシュ構造を形成する2本の針に関連する。たとえば、このような反転2×2モックメッシュ構造は、上記説明した足先単繊維部864および/またはかかと単繊維部868の1つ以上を形成するために使用してもよい。しかし、他の実施形態では、より多いかまたはより少ない数の針に関連するギャップを作成することにより、より大きいかまたはより小さいニット構造が提供されてもよい。たとえば、反転3×3モックメッシュ構造はギャップを3針に増やすことによって形成してもよく、反転1×1モックメッシュ構造はギャップを1針に減らすことにより形成してもよい。
【0113】
図17は、単繊維区域860の一部を形成するためにニット構成要素830とともに使用してもよいニット構造の、例示的な一実施形態を示す。メッシュニット構造、モックメッシュニット構造、および他の適当なニット構造は、本実施形態で使用するために該ニット構造を編むための添付のループ図とともに、上記参照され、本明細書に組み込まれるHuffaらの特許文献1に説明されている。
【0114】
本発明のさまざまな実施形態を説明してきたが、この説明は制限ではなく例示的なものを意図しており、本発明の範囲内にある他の多くの実施形態および実施態様が可能であることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の請求項およびその均等物に鑑みる場合を除き制限されるべきではない。また、さまざまな修正および変更を、添付の請求項の範囲内で行ってもよい。