特許第6406749号(P6406749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406749
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンター
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20181004BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   B41J2/01 129
   B41J2/01 123
   B41J2/21
   B41J2/01 303
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-12864(P2014-12864)
(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公開番号】特開2015-139906(P2015-139906A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】大西 勝
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−201370(JP,A)
【文献】 特開2009−235380(JP,A)
【文献】 特開2012−040837(JP,A)
【文献】 特開2005−153314(JP,A)
【文献】 特開2013−023505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
深紫外線より波長が長い長波長紫外線によって硬化せず深紫外線によって硬化する深紫外線硬化型インクを印刷媒体に向けて吐出する深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドと、
前記深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドから吐出されて前記印刷媒体に付着した前記深紫外線硬化型インクを硬化させる深紫外線を照射する深紫外線LED照射装置と
長波長紫外線によって硬化する長波長紫外線硬化型インクを前記印刷媒体に向けて吐出する長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドと、
前記長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドから吐出されて前記印刷媒体に付着した前記長波長紫外線硬化型インクを硬化させる長波長紫外線を照射する長波長紫外線照射装置とを備え
前記深紫外線硬化型インクは、色材を含まないクリアインクと、白色の色材を含む白インクとの少なくとも何れか1つであり、
前記深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッド、前記深紫外線LED照射装置、前記長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドおよび前記長波長紫外線照射装置は、前記印刷媒体に対して、主走査方向と、前記主走査方向に直交する副走査方向とに相対移動させられ、
前記深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッド、前記深紫外線LED照射装置、前記長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドおよび前記長波長紫外線照射装置は、前記印刷媒体に対して前記主走査方向における印刷を実行した後、前記印刷媒体に対して前記副走査方向に相対移動させられ、
前記深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドおよび前記深紫外線LED照射装置は、前記長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドおよび前記長波長紫外線照射装置に対して、前記副走査方向に位置をずらして配置されていることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項2】
前記深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドおよび前記深紫外線LED照射装置は、前記長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドおよび前記長波長紫外線照射装置に対して、前記副走査方向のうち、前記深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッド、前記深紫外線LED照射装置、前記長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドおよび前記長波長紫外線照射装置に対する前記印刷媒体の相対移動の方向における下流側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター。
【請求項3】
前記深紫外線LED照射装置は、前記深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドと前記副走査方向において同一の位置に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェットプリンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線によって硬化する紫外線硬化型インクによって印刷を実行するインクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線によって硬化する紫外線硬化型インクによって印刷を実行するインクジェットプリンターとして、多量の紫外線を吸収すると黄色に変色するアントラセンの濃度を低減したインクを使用することによって、印刷媒体に付着させたインクを紫外線によって硬化させることによって生じるインクの黄ばみを抑えるものが知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−57468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のインクジェットプリンターによって印刷媒体上で硬化されたインクは、長期間に亘って自然光などの光に曝されると、自然光などの光に含まれる青色の光をアントラセンが吸収することによって時間経過とともに少しずつ黄色に変色するので、全体としても時間経過とともに少しずつ黄ばんでしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、印刷媒体上で硬化されたインクが長期間に亘って青色の光を吸収することによって発生するインクの黄ばみを抑えることができるインクジェットプリンターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェットプリンターは、深紫外線によって硬化する深紫外線硬化型インクを印刷媒体に向けて吐出する深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドと、前記深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドから吐出されて前記印刷媒体に付着した前記深紫外線硬化型インクを硬化させる深紫外線を照射する深紫外線照射装置とを備えていることを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、深紫外線硬化型インク、すなわち、青色の光を吸収し難いインクを使用するので、印刷媒体上で硬化されたインクが長期間に亘って青色の光を吸収することによって発生するインクの黄ばみを抑えることができる。
【0008】
また、本発明のインクジェットプリンターは、深紫外線より波長が長い長波長紫外線によって硬化する長波長紫外線硬化型インクを前記印刷媒体に向けて吐出する長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドと、前記長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドから吐出されて前記印刷媒体に付着した前記長波長紫外線硬化型インクを硬化させる長波長紫外線を照射する長波長紫外線照射装置とを備えていても良い。
【0009】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、黄ばみを抑える必要性が低いインクに関しては、深紫外線硬化型インクではなく長波長紫外線硬化型インクが使用されることができる。本発明のインクジェットプリンターは、深紫外線照射装置のみでなく、深紫外線照射装置よりも量産されている長波長紫外線照射装置も備えているので、全てのインクに対して深紫外線照射装置のみを備えている構成と比較して、製造コストを低減することができる。
【0010】
また、本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記深紫外線硬化型インクは、色材を含まないクリアインクと、白色の色材を含む白インクとの少なくとも何れか1つであっても良い。
【0011】
本発明のインクジェットプリンターは、深紫外線硬化型インクがシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどの白色以外の色の色材を含むインクのように黄ばみが目立たないインクではなく、黄ばみが目立つインク、すなわち、クリアインクまたは白インクである場合に、深紫外線硬化型インクの黄ばみを抑える効果が大きい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインクジェットプリンターは、印刷媒体上で硬化されたインクが長期間に亘って青色の光を吸収することによって発生するインクの黄ばみを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンターの外観斜視図である。
図2図1に示すキャリッジの平面図である。
図3図1に示すインクジェットプリンターにおいて使用される長波長紫外線硬化型インクの色材の光吸収特性を示す図である。
図4図1に示すインクジェットプリンターにおいて使用される長波長紫外線硬化型インクの硬化開始剤および増感剤の光吸収特性を示す図である。
図5図1に示すインクジェットプリンターのブロック図である。
図6図2に示す例とは異なる例での図1に示すキャリッジの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成について説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター10の外観斜視図である。
【0017】
図1に示すように、インクジェットプリンター10は、矢印10aで示す主走査方向に延在する本体20と、主走査方向とは直交する矢印10bで示す副走査方向に用紙などの印刷媒体90を搬送する搬送装置30とを備えている。
【0018】
本体20は、矢印10aで示す主走査方向に延在しているガイドレール21と、主走査方向に移動可能にガイドレール21に支持されているキャリッジ22とを備えている。
【0019】
図2は、キャリッジ22の平面図である。
【0020】
図2に示すように、本体20(図1参照。)は、深紫外線によって硬化する深紫外線硬化型インクとしてのクリアインクを印刷媒体90に向けて吐出する深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドとしてのクリアインク用ヘッド23と、クリアインク用ヘッド23から吐出されて印刷媒体90に付着したクリアインクを硬化させる深紫外線を照射する深紫外線照射装置としての深紫外線LED(Light Emitting Diode)照射器24とを備えている。クリアインク用ヘッド23および深紫外線LED照射器24は、キャリッジ22に搭載されている。
【0021】
ここで、深紫外線とは、波長が200nm程度〜320nm程度の非常に短い紫外線である。インクジェットプリンター10は、深紫外線として波長が265nm程度〜300nm程度の紫外線、例えば、中心波長が280nm程度の紫外線が採用されるようになっている。
【0022】
また、クリアインク用ヘッド23によって吐出されるクリアインクは、例えば、モノマーおよびオリゴマーと、深紫外線を吸収することによってモノマーおよびオリゴマーに重合反応を開始させる硬化開始剤と、硬化開始剤による深紫外線の吸収効率を向上させる増感剤とを含んでいて、色材を含んでいないインクである。クリアインクは、粘度を調整する溶剤を加えたものであっても良い。クリアインクは、粘度が調整されることによって、クリアインク用ヘッド23によって吐出されて印刷媒体90に付着してから、印刷媒体90上で平坦化するまでの時間が調整されることができる。クリアインク用ヘッド23によって吐出されるクリアインクの増感剤は、吸収波長が深紫外線LED照射器24によって照射される深紫外線の波長に対応するものである。このように吸収波長が深紫外線の波長に対応する増感剤としては、例えば、BASF製のIRGACURE 127、IRGACURE 184、IRGACURE 1259などが採用されることが可能である。深紫外線硬化型インクであるクリアインクは、青色の光と比較して非常に波長が短い深紫外線を吸収することによって硬化する。
【0023】
クリアインク用ヘッド23は、深紫外線LED照射器24に対して、矢印10bで示す副走査方向において異なる位置に配置されている。
【0024】
本体20は、深紫外線より波長が長い長波長紫外線によって硬化する長波長紫外線硬化型インクとしてのシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクをそれぞれ印刷媒体90に向けて吐出する長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドとしてのシアンインク用ヘッド25a、マゼンタインク用ヘッド25b、イエローインク用ヘッド25c、ブラックインク用ヘッド25dと、シアンインク用ヘッド25a、マゼンタインク用ヘッド25b、イエローインク用ヘッド25c、ブラックインク用ヘッド25dからそれぞれ吐出されて印刷媒体90に付着したシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクを硬化させる長波長紫外線を照射する長波長紫外線照射装置としての長波長紫外線LED照射器26aおよび長波長紫外線LED照射器26bとを備えている。シアンインク用ヘッド25a、マゼンタインク用ヘッド25b、イエローインク用ヘッド25c、ブラックインク用ヘッド25d、長波長紫外線LED照射器26aおよび長波長紫外線LED照射器26bは、キャリッジ22に搭載されている。
【0025】
ここで、インクジェットプリンター10は、長波長紫外線として波長が365nm程度〜400nm程度の紫外線、例えば、中心波長が380nm程度の紫外線が採用されるようになっている。
【0026】
また、シアンインク用ヘッド25a、マゼンタインク用ヘッド25b、イエローインク用ヘッド25cおよびブラックインク用ヘッド25dによって吐出されるシアンインク、マゼンタインク、イエローインクおよびブラックインクは、それぞれ、例えば、モノマーおよびオリゴマーと、色材と、長波長紫外線を吸収することによってモノマーおよびオリゴマーに重合反応を開始させる硬化開始剤と、硬化開始剤による長波長紫外線の吸収効率を向上させる増感剤とを含んでいるインクである。なお、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクに含まれている色材の色は、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックである。また、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクおよびブラックインクは、それぞれ、粘度を調整する溶剤を加えたものであっても良い。シアンインク、マゼンタインク、イエローインクおよびブラックインクは、それぞれ、粘度が調整されることによって、シアンインク用ヘッド25a、マゼンタインク用ヘッド25b、イエローインク用ヘッド25cおよびブラックインク用ヘッド25dによって吐出されて印刷媒体90に付着してから、印刷媒体90上で平坦化するまでの時間が調整されることができる。
【0027】
シアンインク用ヘッド25a、マゼンタインク用ヘッド25b、イエローインク用ヘッド25cおよびブラックインク用ヘッド25dは、長波長紫外線LED照射器26aおよび長波長紫外線LED照射器26bに対して、矢印10bで示す副走査方向において同一の位置に配置されている。シアンインク用ヘッド25a、マゼンタインク用ヘッド25b、イエローインク用ヘッド25cおよびブラックインク用ヘッド25dは、矢印10aで示す主走査方向において、長波長紫外線LED照射器26aと、長波長紫外線LED照射器26bとの間に配置されている。
【0028】
図3は、インクジェットプリンター10において使用される長波長紫外線硬化型インクの色材の光吸収特性を示す図である。
【0029】
図3において、波長41は、長波長紫外線LED照射器26aおよび長波長紫外線LED照射器26bによって照射される長波長紫外線の波長を示している。なお、インクジェットプリンター10において使用される長波長紫外線硬化型インクの色材は、顔料である。
【0030】
図4は、インクジェットプリンター10において使用される長波長紫外線硬化型インクの硬化開始剤および増感剤の光吸収特性を示す図である。
【0031】
図4において、領域42は、長波長紫外線LED照射器26aおよび長波長紫外線LED照射器26bによって照射される長波長紫外線の波長の範囲を示している。長波長紫外線LED照射器26aおよび長波長紫外線LED照射器26bによって照射される長波長紫外線は、380nm程度の中心波長の光量が最も大きくなっていて、中心波長から離れるほど光量が少なくなっている。
【0032】
図4に示すように、インクジェットプリンター10において使用される長波長紫外線硬化型インクの増感剤は、吸収波長が長波長紫外線LED照射器26aおよび長波長紫外線LED照射器26bによって照射される長波長紫外線の波長に対応するものである。長波長紫外線硬化型インクであるシアンインク、マゼンタインク、イエローインクおよびブラックインクは、深紫外線と比較して青色の光に近い長波長紫外線を吸収することによって硬化する。
【0033】
図5は、インクジェットプリンター10のブロック図である。
【0034】
図5に示すように、インクジェットプリンター10は、上述したクリアインク用ヘッド23、深紫外線LED照射器24、シアンインク用ヘッド25a、マゼンタインク用ヘッド25b、イエローインク用ヘッド25c、ブラックインク用ヘッド25d、長波長紫外線LED照射器26a、長波長紫外線LED照射器26bおよび搬送装置30と、キャリッジ22(図1参照。)を矢印10a(図1参照。)で示す主走査方向に移動させるためのキャリッジ駆動装置51と、PC(Personal Computer)などの外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部52と、各種のデータを記憶するEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの記憶デバイスである記憶部53と、インクジェットプリンター10全体を制御する制御部54とを備えている。
【0035】
制御部54は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを予め記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMまたは記憶部53に記憶されているプログラムを実行するようになっている。
【0036】
次に、インクジェットプリンター10の動作について説明する。
【0037】
インクジェットプリンター10の制御部54は、外部から送信されてきた画像データを通信部52を介して受信すると、この画像データに基づいて印刷を実行する。
【0038】
具体的には、制御部54は、キャリッジ駆動装置51を制御してキャリッジ22をガイドレール21に沿って矢印10aで示す主走査方向に移動させることによって、キャリッジ22に搭載されているシアンインク用ヘッド25a、長波長紫外線LED照射器26aおよび長波長紫外線LED照射器26bを印刷媒体90に対して主走査方向に移動させる。このとき、制御部54は、印刷媒体90に向けてシアンインク用ヘッド25aによってシアンインクを吐出させることによって印刷媒体90にシアンインクを付着させるとともに、印刷媒体90上のシアンインクに向けて長波長紫外線LED照射器26aおよび長波長紫外線LED照射器26bの少なくとも一方によって長波長紫外線を照射させることによって、印刷媒体90上のシアンインクを硬化させる。すなわち、制御部54は、主走査方向におけるシアンインクによる印刷を実行する。そして、制御部54は、主走査方向における印刷が終了する度に、搬送装置30を制御して印刷媒体90を矢印10bで示す副走査方向に移動させることによって、シアンインク用ヘッド25a、長波長紫外線LED照射器26aおよび長波長紫外線LED照射器26bを印刷媒体90に対して副走査方向に相対移動させて、副走査方向における次の位置において再び主走査方向における印刷を実行する。
【0039】
なお、以上においては、シアンインクによる印刷について説明したが、マゼンタインク、イエローインクおよびブラックインクによる印刷についても同様である。また、クリアインクによる印刷については以下の通りである。
【0040】
制御部54は、キャリッジ駆動装置51を制御してキャリッジ22をガイドレール21に沿って矢印10aで示す主走査方向に移動させることによって、キャリッジ22に搭載されているクリアインク用ヘッド23を印刷媒体90に対して主走査方向に移動させる。このとき、制御部54は、印刷媒体90に向けてクリアインク用ヘッド23によってクリアインクを吐出させることによって印刷媒体90にクリアインクを付着させる。制御部54は、主走査方向におけるクリアインクの吐出が終了すると、搬送装置30を制御して印刷媒体90を矢印10bで示す副走査方向に移動させることによって、印刷媒体90に付着したクリアインクと、キャリッジ22に搭載されている深紫外線LED照射器24との副走査方向における位置を揃える。そして、制御部54は、キャリッジ駆動装置51を制御してキャリッジ22をガイドレール21に沿って主走査方向に移動させることによって、キャリッジ22に搭載されている深紫外線LED照射器24によって印刷媒体90上のクリアインクに向けて深紫外線を照射させることによって、印刷媒体90上のクリアインクを硬化させる。すなわち、制御部54は、主走査方向におけるクリアインクによる印刷を実行する。そして、制御部54は、主走査方向における印刷が終了する度に、搬送装置30を制御して印刷媒体90を副走査方向に移動させることによって、クリアインク用ヘッド23および深紫外線LED照射器24を印刷媒体90に対して副走査方向に相対移動させて、副走査方向における次の位置において再び主走査方向における印刷を実行する。なお、主走査方向におけるクリアインク用ヘッド23によるクリアインクの吐出と、主走査方向における深紫外線LED照射器24によるクリアインクの硬化とは、副走査方向におけるそれぞれ異なる位置の範囲に対して同時に実行されても良い。
【0041】
以上に説明したように、インクジェットプリンター10は、クリアインクとして深紫外線硬化型インク、すなわち、青色の光を吸収し難いインクを使用するので、印刷媒体90上で硬化されたクリアインクが長期間に亘って青色の光を吸収することによって発生するクリアインクの黄ばみを抑えることができる。
【0042】
なお、深紫外線硬化型インクは、青色の光と比較して非常に波長が短い深紫外線を吸収することによって硬化する。したがって、クリアインクとして深紫外線硬化型インクを使用するインクジェットプリンター10は、印刷媒体90上に印刷されたクリアインクが時間経過とともに黄ばむことを抑えることができるだけでなく、印刷媒体90に付着させたクリアインクを深紫外線によって硬化させることによって生じるクリアインクの黄ばみを抑えることもできる。
【0043】
インクジェットプリンター10は、黄ばみを抑える必要性が低いインク、すなわち、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクおよびブラックインクに関しては、深紫外線硬化型インクではなく長波長紫外線硬化型インクが使用されるようになっている。インクジェットプリンター10は、深紫外線照射装置のみでなく、深紫外線照射装置よりも量産されている長波長紫外線照射装置である長波長紫外線LED照射器26aおよび長波長紫外線LED照射器26bも備えているので、全てのインクに対して深紫外線照射装置のみを備えている構成と比較して、製造コストを低減することができる。
【0044】
また、インクジェットプリンター10は、深紫外線硬化型インクがクリアインクである。したがって、インクジェットプリンター10は、深紫外線硬化型インクがシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどの白色以外の色の色材を含むインクのように黄ばみが目立たないインクではなく、黄ばみが目立つクリアインクである場合に、インクの黄ばみを抑える効果が大きい。
【0045】
以上においては、深紫外線硬化型インクとしてクリアインクが採用される構成について説明している。しかしながら、インクジェットプリンター10は、深紫外線硬化型インクとして白インクが採用されても良い。
【0046】
深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドによって吐出される白インクは、例えば、モノマーおよびオリゴマーと、白色の色材と、深紫外線を吸収することによってモノマーおよびオリゴマーに重合反応を開始させる硬化開始剤と、硬化開始剤による深紫外線の吸収効率を向上させる増感剤とを含んでいるインクである。深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドによって吐出される白インクの増感剤は、吸収波長が深紫外線LED照射器24によって照射される深紫外線の波長に対応するものである。
【0047】
また、インクジェットプリンター10は、深紫外線硬化型インクが黄ばみが目立たないインクではなく、黄ばみが目立つ白インクである場合に、インクの黄ばみを抑える効果が大きい。すなわち、インクジェットプリンター10は、深紫外線硬化型インクが白インクである場合、真っ白な白色の印刷を実行することができる。
【0048】
インクジェットプリンター10は、深紫外線硬化型インクとしてクリアインクに代えて白インクが採用されるようになっていても良いし、クリアインクに加えて白インクも採用されるようになっていても良い。
【0049】
なお、インクジェットプリンター10は、クリアインクおよび白インク以外にも、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどのインクを深紫外線硬化型インクとして採用されることができる。
【0050】
本実施の形態において、深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッドによって吐出される深紫外線硬化型インクは、増感剤の吸収波長が深紫外線LED照射器24によって照射される深紫外線の波長に対応するものである。しかしながら、硬化開始剤の吸収波長が深紫外線LED照射器24によって照射される深紫外線の波長に対応するものであっても良い。
【0051】
インクジェットプリンター10は、図2に示すように、クリアインク用ヘッド23が深紫外線LED照射器24に対して矢印10bで示す副走査方向において異なる位置に配置されている。しかしながら、インクジェットプリンター10は、長波長紫外線LED照射器26aおよび長波長紫外線LED照射器26bに対するシアンインク用ヘッド25a、マゼンタインク用ヘッド25b、イエローインク用ヘッド25cおよびブラックインク用ヘッド25dの配置と同様に、図6に示すように、クリアインク用ヘッド23が深紫外線LED照射器24に対して副走査方向において同一の位置に配置されていても良い。インクジェットプリンター10は、クリアインク用ヘッド23および深紫外線LED照射器24が図6に示すように配置されている場合、クリアインク用ヘッド23によって印刷媒体90に付着させられた直後に、印刷媒体90上のクリアインクを深紫外線LED照射器24によって硬化させることができ、クリアインクによる印刷の精度を向上することができる。
【0052】
インクジェットプリンター10は、本実施の形態において、印刷媒体90を矢印10bで示す副走査方向に搬送することによって印刷媒体90に対してキャリッジ22を副走査方向に相対移動させる構成であるが、この構成以外の構成であっても良い。例えば、インクジェットプリンター10は、キャリッジ22を副走査方向に移動することによって印刷媒体90に対してキャリッジ22を副走査方向に相対移動させる構成であっても良い。
【符号の説明】
【0053】
10 インクジェットプリンター
23 クリアインク用ヘッド(深紫外線硬化型インク用インクジェットヘッド)
24 深紫外線LED照射器(深紫外線照射装置)
25a シアンインク用ヘッド(長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッド)
25b マゼンタインク用ヘッド(長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッド)
25c イエローインク用ヘッド(長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッド)
25d ブラックインク用ヘッド(長波長紫外線硬化型インク用インクジェットヘッド)
26a、26b 長波長紫外線LED照射器(長波長紫外線照射装置)
90 印刷媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6