(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406757
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】パネル取付構造
(51)【国際特許分類】
E01F 9/654 20160101AFI20181004BHJP
【FI】
E01F9/654
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-28878(P2015-28878)
(22)【出願日】2015年2月17日
(65)【公開番号】特開2016-151132(P2016-151132A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】505061447
【氏名又は名称】株式会社アルマックス
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 博信
【審査官】
佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3155563(JP,U)
【文献】
特開2002−180426(JP,A)
【文献】
特開平07−279301(JP,A)
【文献】
特開2002−153698(JP,A)
【文献】
特開平09−067811(JP,A)
【文献】
実開昭60−023389(JP,U)
【文献】
米国特許第07140581(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0132236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/00−11/00
E04B 9/18
E04D 1/00− 3/40
E04D 13/00−15/07
F16B 37/04
G09F 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面にパネルを固定可能なパネル取付構造であって、
パネルを裏面から支持する縁枠材と、
前記縁枠材に回動可能に取り付けられる回動部材と、
前記回動部材を前記縁枠材に固定するためのネジ部材と、
を備え、
前記回動部材は、前記縁枠材の正面に臨むように突出した押さえ部と、前記ネジ部材を取り付け可能なネジ取付部と、前記押さえ部と前記ネジ取付部との間に設けられて前記縁枠材に回動可能に係合する回動部と、を備え、
前記ネジ取付部に取り付けた前記ネジ部材を締め込んだときに、前記押さえ部が前記縁枠材の正面に押し付けられ、前記押さえ部と前記縁枠材とでパネルを挟み込んで固定可能としたことを特徴とする、パネル取付構造。
【請求項2】
前記縁枠材は、前記ネジ部材の先端を受けるネジ受部を備え、
前記ネジ受部の表面は曲面で形成されていることを特徴とする、請求項1記載のパネル取付構造。
【請求項3】
前記ネジ部材の先端を曲面で形成したことを特徴とする、請求項2記載のパネル取付構造。
【請求項4】
前記押さえ部の内側面を円弧状としたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパネル取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば工事用の立て看板などに使用可能なパネル取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工事現場などにおいて脚立状の簡便な構造の立て看板が使用されている。
【0003】
この種の立て看板に使用される構造として、例えば特許文献1には、縁枠の正面にパネルを押さえこんで取り付けた構造が開示されている。この特許文献1記載の構造においては、方形に組み合わせた縁枠の正面にパネルを重ね、このパネルを、断面がほぼアングル状の押さえプレートにより縁枠に押し付けて固定している。前記押さえプレートは、縁枠の周面であるそれぞれの框材の外側面へ被さる主部と、框材の正面へ被さる状態で前記パネルを押し付けるパネル押さえ部と、框材の背面側の外角部へ引っ掛けられる断面鉤状の引掛部とから構成され、前記主部を複数のねじによりそれぞれの框材へ固定するようにしている。
【0004】
このような構成によれば、パネルの縁枠への取り付け及び取り替えが容易となり、また、パネルの所定範囲内での厚みの変更に対応することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−180426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した特許文献1記載の構造は、アングル状の押さえプレートを使用したものであり、押さえプレートのアングル部と縁枠の角とを重なり合わせて固定する構造であった。すなわち、パネルを挟み込んだときに縁枠に対する押さえプレートの角度が固定であるため、パネルの厚みに応じて押さえプレートの角度を変えることができなかった。よって、特許文献1記載の構造では、対応可能なパネルの厚みの範囲が限定的とならざるを得なかった。
そこで、本発明は、パネルの厚みが大きく異なる場合でも同じ構造で対応することができるパネル取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明は、正面にパネルを固定可能なパネル取付構造であって、パネルを裏面から支持する縁枠材と、前記縁枠材に回動可能に取り付けられる回動部材と、前記回動部材を前記縁枠材に固定するためのネジ部材と、を備え、前記回動部材は、前記縁枠材の正面に臨むように突出した押さえ部と、前記ネジ部材を取り付け可能なネジ取付部と、前記押さえ部と前記ネジ取付部との間に設けられて前記縁枠材に回動可能に係合する回動部と、を備え、前記ネジ取付部に取り付けた前記ネジ部材を締め込んだときに、前記押さえ部が前記縁枠材の正面に押し付けられ、前記押さえ部と前記縁枠材とでパネルを挟み込んで固定可能としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、前記縁枠材は、前記ネジ部材の先端を受けるネジ受部を備え、前記ネジ受部の表面は曲面で形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、上記した請求項2に記載の発明の特徴点に加え、前記ネジ部材の先端を曲面で形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、前記押さえ部の内側面を円弧状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、縁枠材に回動可能に取り付けられる回動部材の一端側に押さえ部を設けるとともに、他端側にネジ取付部を設け、前記ネジ取付部に取り付けた前記ネジ部材を締め込んだときに、前記押さえ部が前記縁枠材の正面に押し付けられ、前記押さえ部と前記縁枠材とでパネルを挟み込んで固定可能とした。このような構造によれば、パネルの厚みに応じて回動部材を回動させ、ネジ部材の締め込みを調整することで角度を変えて固定することができるので、様々なパネルの厚みに対応することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は上記の通りであり、前記縁枠材は、前記ネジ部材の先端を受けるネジ受部を備え、前記ネジ受部の表面は曲面で形成されている。このような構造によれば、回動部材をどのような角度で固定した場合でも、ネジ部材の先端とネジ受部との接触面積を大きくすることができるので、異なる厚みのパネルを安定して固定することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は上記の通りであり、前記ネジ部材の先端を曲面で形成したので、ネジ受部の曲面との接触面積を大きくすることができるので、パネルを更に安定して固定することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は上記の通りであり、前記押さえ部の内側面を円弧状としたので、回動部材を回動させたときでも、押さえ部の内側面がパネルに干渉しにくい構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】立て看板の(a)側面図、(b)正面図である。
【
図3】パネル取付構造の構成部品を説明する図である。
【
図4】パネル取付構造の作動状況を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態に係るパネル取付構造は、例えば
図1に示すような立て看板10に使用されるものであり、正面に方形のパネル40を固定可能となっている。このパネル取付構造は、パネル40を裏面から支持するために四方に枠組みされる4本の縁枠材11と、縁枠材11に回動可能に取り付けられる回動部材20と、回動部材20に取り付けられるクリップナット35と、回動部材20を縁枠材11に固定するためのネジ部材30と、を備える。
【0019】
四方に枠組みされた4本の縁枠材11は、
図1及び
図2に示すように、それぞれパネル40の上端部40a、下端部40b、左端部40c、右端部40dの裏面に当接しており、パネル40を裏面から支持している。
【0020】
本実施形態に係る縁枠材11は、アルミニウム等の押出形材からなる。この縁枠材11は、
図3に示すように、断面略四角形で中空の柱部12と、この柱部12から突出した突出脚部13と、突出脚部13の先端に設けられた筒状の回動軸部14と、を備える。
【0021】
柱部12は、4つの面を備えた柱状部材であり、パネル40の裏面に当接する正面12aと、正面12aの反対側に設けられた背面12bと、四方枠組みの内側に向いた内側面12cと、四方枠組みの外側に向いた外側面12dと、を備える。このうち、外側面12dの表面は凹状の曲面を有しており、この凹状の曲面によってネジ受部12eが形成されている。ネジ受部12eは、後述するネジ部材30の先端33を受けるための部位である。
【0022】
突出脚部13は、正面12aと外側面12dとの間の角部から斜め方向に突出している。この突出脚部13は、後述する回動軸部14を柱部12から離れた位置で支持するためのものである。
回動軸部14は、回動部材20の回動軸となるパイプ状の部位であり、周面の一部に前述した突出脚部13が接続されている。
【0023】
回動部材20は、アルミニウム等の押出形材からなる。この回動部材20は、四方に枠組みされた4本の縁枠材11のそれぞれに対応して4本使用される。それぞれの回動部材20は、対応する縁枠材11と略同じ長さで形成されている。この回動部材20は、
図3に示すように、縁枠材11に回動可能に係合する回動部21と、回動部21の一端側に設けられる押さえ部22と、回動部21の他端側に設けられるネジ取付部25と、を備える。押さえ部22とネジ取付部25とは、
図4に示すように、回動部21を挟んでL字形に設けられている。この回動部材20が縁枠材11に取り付けられると、押さえ部22が柱部12の正面12aに臨み、ネジ取付部25が柱部12の外側面12dに臨むようになっている。
【0024】
回動部21は、縁枠材11の回動軸部14に係合する略C字形の内周面を有している。この回動部21が縁枠材11の回動軸部14に係合することで、回動部材20と縁枠材11とが所定角度の範囲で互いに回動自在となっている。この回動部21を回動軸部14に係合させるときには、回動部21の端部から回動軸部14の端部を挿入し、スライドさせて係合させる。なお、回動部21が回動軸部14から外れないようにするために、回動部21の略C字形の内周面は180度以上になっている。ただし、回動部21の略C字形の内周面が大きすぎると、縁枠材11に対する回動部材20の回動可能範囲が小さくなってしまう。本実施形態においては、回動部21の略C字形の内周面を190〜210度とすることで、回動部21が回動軸部14から外れず、かつ、回動部材20の回動可能範囲を大きく確保できるようにしている。
【0025】
押さえ部22は、縁枠材11の柱部12の正面12aに臨むように、回動部21から突出した鉤状の部位である。この押さえ部22は、後述するネジ部材30を締め込んだときに、縁枠材11の正面12aに押し付けられ、これにより縁枠材11と協働してパネル40を挟み込んで固定する。この押さえ部22の先端には、パネル40に当接してパネル40を押さえつけるための当接部24が設けられている。この当接部24は、回動部材20が回動部21を中心に回動したときに、縁枠材11の正面12aに対して接近または離反するようになっている。このため、回動部材20を回動させることで、当接部24と縁枠材11の正面12aとの間の距離をパネル40の厚みに合わせて変更できるようになっている。なお、この当接部24の先端面は曲面で形成されている。当接部24の先端面を曲面で形成することで、縁枠材11に対する回動部材20の角度が変化したときでも、この角度の変化が当接部24とパネル40との接触に影響を与えないようになっている。
【0026】
また、押さえ部22の内側面23は、
図3に示すように円弧状となっており、回動部材20を回動させたときに押さえ部22の内側面23がパネル40に干渉しないようになっている。すなわち、
図4(b)に示すように、押さえ部22の内側面23を円弧状とすることで、内側面23とパネル40との間にスペースSが設けられており、当接部24以外の部分がパネル40に干渉しないようになっている。
【0027】
ネジ取付部25は、回動部21から突出した板状の部位であり、ネジ部材30を取り付け可能に形成されている。このネジ取付部25には、ネジ部材30を挿通するためのネジ孔26が穿設されている。
【0028】
クリップナット35は、
図3に示すように、平板状の金属をコの字形状に曲げて形成された部材であり、上記したネジ取付部25に外側から装着される部材である。このクリップナット35は、上下のクリップベース35a,35bでネジ取付部25を挟み込んで取り付けられる。上下のクリップベース35a,35bには、互いに重なり合う位置に固定穴35c,35dが貫通形成されている。この固定穴35c,35dは、ネジ部材30の軸部32に形成された雄ねじに螺合するように形成されている。
【0029】
ネジ部材30は、回動部材20を縁枠材11に固定するために使用される。このネジ部材30は、クリップナット35を使用して回動部材20のネジ取付部25に取り付けられる。具体的には、まず、固定穴35c,35dとネジ孔26とが重なり合うようにネジ取付部25にクリップナット35を取り付ける。そして、固定穴35c,35dとネジ孔26とを貫通するようにネジ部材30の軸部32を挿入し、螺合させる。
【0030】
なお、このようにネジ取付部25に取り付けたネジ部材30を締め込んでいくと、ネジ部材30の先端33が前進することになる。前進したネジ部材30の先端33が縁枠材11のネジ受部12eに押し付けられると、徐々に回動部材20が回動し、回動部材20の押さえ部22によってパネル40が挟み込まれていく。そして、更にネジ部材30を強く締め込むと、押さえ部22とネジ部材30の先端33とが突っ張った状態になり、それ以上は回動部材20が回動できなくなる。このように回動部材20が回動できなくなるまでネジ部材30を締め込むことで、回動部材20が縁枠材11に固定されるとともに、回動部材20と縁枠材11とでパネル40を挟み込んで固定できるようになっている。
【0031】
上記したパネル取付構造でパネル40を固定するときには、
図4(b)に示すように、まずネジ部材30を緩めて後退させ、回動部材20が自由に回動できるようにする。そして、押さえ部22と柱部12の正面12aとの間にパネル40を差し込み、ネジ部材30を締め付ける。ネジ部材30を締め付けると、ネジ部材30の先端33がネジ受部12eに当たる。更にネジ部材30を締め付けると、ネジ部材30はネジ受部12eに当たって前進できないので、ネジ取付部25が四方枠組みの外側方向へと回動する方向に力が働く。この力により、押さえ部22が縁枠材11の正面12aに押し付けられ、パネル40が挟み込まれる。ネジ部材30を目一杯まで締め付ければ、押さえ部22と縁枠材11とで強固にパネル40を挟み込んで固定することができる。
【0032】
このように固定したパネル40を取り外す際には、ネジ部材30を緩めればよい。ネジ部材30を緩めることで、押さえ部22を縁枠材11の正面12aに押し付けていた力が解除されるので、パネル40を容易に取り外すことができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、縁枠材11に回動可能に取り付けられる回動部材20の一端側に押さえ部22を設けるとともに、他端側にネジ取付部25を設け、前記ネジ取付部25に取り付けた前記ネジ部材30を締め込んだときに、前記押さえ部22が前記縁枠材11の正面に押し付けられ、前記押さえ部22と前記縁枠材11とでパネル40を挟み込んで固定可能とした。このような構造によれば、パネル40の厚みに応じて回動部材20を回動させ、ネジ部材30の締め込みを調整することで角度を変えて固定することができるので、様々なパネル40の厚みに対応することができる。
【0034】
また、前記縁枠材11は、前記ネジ部材30の先端33を受けるネジ受部12eを備え、前記ネジ受部12eの表面は曲面で形成されている。このような構造によれば、回動部材20をどのような角度で固定した場合でも、ネジ部材30の先端33とネジ受部12eとの接触面積を大きくすることができるので、異なる厚みのパネル40を安定して固定することができる。
【0035】
また、前記押さえ部22の内側面23を円弧状としたので、回動部材20を回動させたときでも、押さえ部22の内側面23がパネル40に干渉しにくい構造とすることができる。
【0036】
なお、上記した実施形態においては特に説明していないが、ネジ部材30の先端33を曲面で形成してもよい。その際のネジ部材30の先端33の曲率は、ネジ受部12eの曲率と略同じに設定してもよい。ネジ部材30の先端33を曲面で形成すれば、ネジ部材30の先端33とネジ受部12eとの接触面積を大きくすることができ、様々な厚みのパネル40を更に安定して固定することができる。また、ネジ部材30を締め付けたときに、ネジ部材30の先端33がネジ受部12e上を滑りやすくなるので、回動部材20が回動しやすくなる。すなわち、押さえ部22を縁枠材11の正面12aに押し付ける動作をスムーズに行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
10 立て看板
11 縁枠材
12 柱部
12a 正面
12b 背面
12c 内側面
12d 外側面
12e ネジ受部
13 突出脚部
14 回動軸部
20 回動部材
21 回動部
22 押さえ部
23 内側面
24 当接部
25 ネジ取付部
26 ネジ孔
30 ネジ部材
31 頭部
32 軸部
33 先端
35 クリップナット
35a,35b クリップベース
35c,35d 固定穴
40 パネル
40a 上端部
40b 下端部
40c 左端部
40d 右端部
S スペース