(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るコネクタについて、該コネクタが適用可能な輸液セットとの関係に基づき、詳細に説明する。なお、コネクタは、輸液セットへの適用に限定されないことは勿論である。
【0022】
図1は、本発明に係るコネクタ10が適用される輸液セット12の一例を概略的に示す説明図である。
【0023】
コネクタ10は、既述したように、患者に輸液を行う輸液ラインにおいて、複数のチューブ同士を接続する機能を有しており、例えば、
図1に示すような輸液セット12に適用される。この輸液セット12は、上流側が輸液バック(図示せず)に接続されるとともに、下流側が留置針(図示せず)に接続される。これにより、輸液剤T(流体:
図7参照)を患者に投与(供給)可能な輸液ラインとして構築される。
【0024】
ここで、輸液剤Tは、薬液、補正用電解質液、生理食塩水等、生体に投与し得るあらゆる流体が含まれる。また、輸液剤が薬液である場合は、例えば、鎮静薬、静脈麻酔薬、麻酔系鎮痛薬、局所麻酔薬、非脱分極性筋弛緩薬、昇圧薬、降圧薬、冠血管拡張薬、利尿薬、抗不整脈薬、気管支拡張薬、止血剤、ビタミン剤、抗生剤、脂肪乳剤等、種々の薬剤を適用することができる。
【0025】
図1に示すように、輸液セット12は、輸液バックから供給される輸液剤T(
図7参照)の流量を目視で確認させる点滴筒14、輸液剤Tの流量を調整するクランプ16(クレンメとも呼ばれる)、及び輸液ラインに存在する空気を排出(又は供給)するエアベントフィルター18等を備え、各部材の間には、輸液剤Tを流通可能なチューブ20が接続(又は挿通)される。なお、輸液セット12は、
図1に示す構成に限定されないことは勿論であり、上述した部材以外にも、輸液ラインに配設される種々の部材(例えば、輸液ポンプや逆流防止弁等)を取り付けることができる。
【0026】
輸液セット12のチューブ20は、可撓性(柔軟性)を有する管体であり、実際に輸液剤Tが流通する輸液ラインを構成する。チューブ20の構成材料としては、例えば、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等、あるいはこれらを主とする材料が挙げられる。
【0027】
コネクタ10は、上記のような輸液セット12に適用される場合、例えば、クランプ16とエアベントフィルター18の間に配置される。すなわち、コネクタ10は、クランプ16の下流に接続される第1チューブ20aと、エアベントフィルター18の上流に接続される第2チューブ20bと、を接続して、第1チューブ20aから第2チューブ20bに輸液剤Tを流通させる機能を有する。また、本コネクタ10は、第1チューブ20aと第2チューブ20bによって構成されるメインラインに対し、別ラインとして構成される第3チューブ20cが接続可能な3ポートコネクタとなっている。
【0028】
なお、輸液セット12は、コネクタ10の配設位置を特に限定するものではなく、輸液ラインを構築する場合は、コネクタ10を所望箇所に配設することができる。また、輸液セット12(輸液ライン)には、コネクタ10が1つ配設されるだけでなく、複数配設してよいことは勿論であり、例えば、クランプ16とエアベントフィルター18の間と、エアベントフィルター18の下流側と、の2箇所に配設することも可能である。
【0029】
以下、上記の輸液ラインに適用される本発明に係るコネクタ10、10Aについて、好適な実施の形態(第1及び第2実施形態)を挙げて具体的に説明していく。
【0030】
〔第1実施形態〕
図2は、第1実施形態に係るコネクタ10の全体構成を示す斜視図であり、
図3は、
図2のコネクタ10の蓋体26を取り外した状態を示す斜視図であり、
図4は、
図3のコネクタ10の平面図、
図5は、
図2のコネクタ10の側面断面図である。
【0031】
図2に示すように、コネクタ10は、輸液ライン(メインライン及び別ラインを含む)の流路を内部に有するハウジング22からなる。このハウジング22は、可撓性を有するチューブ20に対して比較的硬質な樹脂材料によって成形される。ハウジング22の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル等があげられる。
【0032】
このハウジング22は、有底筒状のコネクタ基部24と、該コネクタ基部24の上部側開口部を閉塞するように取り付けられる蓋体26と、該コネクタ基部24の側周面に連結される第1ポート28及び第2ポート30とを有する。この場合、第1ポート28には、第1チューブ20aが接続され、第2ポート30には第2チューブ20bが接続される。また、蓋体26の上面には、第3チューブ20cが接続される第3ポート32(接続用端子)が連設される。
【0033】
図2〜
図5に示すように、第1ポート28は、略円筒状に形成され、コネクタ基部24に連設される基端部に対し、その先端部が輸液ラインの上流に向かって直線状に延設される。この第1ポート28の内腔は、輸液剤Tを流通可能な第1ポート流路34として構成される(
図5参照)。
【0034】
第1ポート28は、外形が雄型のルアーテーパに形成され、第1チューブ20aの管内(内腔)に挿入される。すなわち、第1ポート28の外周面には、先端部から基端側に向かって僅かに拡径するテーパ面28aが形成されている。これにより、第1ポート28は、第1チューブ20aと接続する場合に、先端部を第1チューブ20a内に容易に挿入することができる。また、テーパ面28aよりも基端側には、突起部28bが形成されている。これにより、第1チューブ20aが突起部28bを越えるまで進入させることで、第1チューブ20aが抜け難くなるとともに、第1チューブ20aと第1ポート28を液密に接続することができる。
【0035】
一方、第2ポート30は、コネクタ基部24を挟んだ第1ポート28の反対側に連結され、コネクタ基部24に連設される基端部に対し、その先端部が輸液ラインの下流に向かって直線状に延設される。すなわち、第1ポート28と第2ポート30は、平面視(
図4参照)で、軸心が一致して直線状に一列に並ぶように形成される。また、第2ポート30の内腔は、輸液剤を流通可能な第2ポート流路36として構成される(
図5参照)。
【0036】
第2ポート30は、第1ポート28と同一の形状(外周面にテーパ面30a、突起部30bを有する雄型のルアーテーパ)に形成されており、第2チューブ20bとの接続において第1チューブ20aと同様の効果を得ることができる。なお、第1及び第2チューブ20a、20bと第1及び第2ポート28、30の接続方法は、本実施の形態に限定されるものではなく、例えば第1及び第2チューブ20a、20bの先端と、第1及び第2ポート28、30の先端に接続機構を設けて、容易に着脱できるようにしてもよい。
【0037】
コネクタ10は、第1及び第2ポート流路34、36を輸液剤Tのメインラインの流路(以下、メインライン流路38という)としている。すなわち、メインライン流路38は、平面視及び側面視で、第1ポート流路34の軸心の延長線(軸方向)と、第2ポート流路36の軸心の延長線(軸方向)が互いに一致するように形成される。
【0038】
図5に示すように、第3ポート32は、第1及び第2ポート28、30の軸方向に対し直交する方向に形成される。すなわち、第1実施形態に係るコネクタ10は、メインライン流路38に対し第3ポート32の分岐角度が90度となるT字型コネクタとして構成される。この第3ポート32は、第3チューブ20cを介して供給される輸液剤を、メインライン流路38を流れる輸液剤Tに合流させる。
【0039】
ここで、第3ポート32が形成される蓋体26は、外部筐体40、内部筐体42及び弁体44からなる1つのユニットとして構成される。外部筐体40及び内部筐体42は、共に円筒体として形成され、コネクタ基部24と接続される端部側が外径方向に延出したフランジ部分となっている。蓋体26は、内部筐体42の外周面及び上面を、外部筐体40で覆うようにしてコネクタ基部24の上部側に取り付けられる。コネクタ基部24に対する蓋体26の取付では、外部筐体40(フランジ部分)の第1及び第2ポート28、30の形成方向に沿って設けられた一対の係止爪40aを、コネクタ基部24の係合部24aに引っ掛けて、該係止爪40aと内部筐体42の外縁部とで狭持する。これにより、蓋体26をコネクタ基部24に強固に固定することが可能となる。
【0040】
弁体44は、弾性材料により成形され、その周縁部が外部筐体40と内部筐体42に挟み込まれることで、蓋体26の上部に保持される。この弁体44は、第3チューブ20cが接続されていない場合に、第3ポート32を自己閉塞する。一方、第3チューブ20cが接続される場合には、プラグ46(
図6参照)の進入にともない弾性変形して、該プラグ46を液密に接続する。
【0041】
第3ポート32は、外部筐体40と内部筐体42の円筒体が径方向に重ねられて所定の厚みを有するように形成される。この場合、第3ポート32の一端側の開口部は、コネクタ基部24のメインライン流路38に連なり、他端側の開口部には前記弁体44が配置される。
【0042】
図6は、
図5のコネクタ10の第3ポート32に第3チューブ20cのプラグ46を接続した状態を示す側面断面図である。
【0043】
図6に示すように、第3ポート32には、例えば、ISOにより規格化(標準化)された第3チューブ20cのプラグ46が差し込まれる。具体的に、第3チューブ20cのプラグ46は、輸液剤Tの別ラインの流路(以下、別ライン流路48aという)を内部に有する内筒48と、この内筒48の周囲を囲う外筒50と、を有し、内筒48の外周と外筒50の内周との間で、第3ポート32を狭持するように構成される。
【0044】
これに対し、第3ポート32は、プラグ46を装着保持可能な接続側空間52を有し、この接続側空間52は、円筒体を構成する内部筐体42の内壁53(
図5参照)によって囲まれている。接続側空間52には、プラグ46の内筒48が弁体44を押し込むようにして挿入される。これにより、弁体44及び内筒48が内部筐体42の内壁53に液密に嵌合保持され、別ライン流路48aが接続側空間52を介してメインライン流路38に連通する。
【0045】
図5に示すように、接続側空間52は、弁体44が自己閉塞している場合(すなわち、プラグ46が第3ポート32に差し込まれていない場合)、弁体44及び内壁53によって所定の体積を有する空間に形成される。また、接続側空間52は、直線的に形成されるメインライン流路38に対し、側面視で上方にずれるように連設される。このため、プラグ46が第3ポート32に差し込まれていない場合は、この接続側空間52に、メインライン流路38を流通する輸液剤Tが流れ込む。
【0046】
以上の第3ポート32を有する蓋体26は、有底筒状に形成されたコネクタ基部24の上部側開口部に装着される(
図2参照)。
図3に示すように、このコネクタ基部24の内部には、第1及び第2ポート28、30の軸線方向(直線状)に沿って貫通する流路用溝部54(流路側空間)が設けられる。また、コネクタ基部24の側周壁の上部側で第1及び第2ポート28、30の形成方向には、上述したように、係止爪40aが引っ掛かる一対の係合部24aが形成される。
【0047】
コネクタ基部24に蓋体26を装着した状態では、この流路用溝部54が接続側空間52に連なるようになり、接続側空間52と流路用溝部54によって、コネクタ10の中央部分に一体的な空間が形成される(
図5参照)。
【0048】
流路用溝部54は、接続側空間52に対向する底部58と、底部58の両側から接続側空間52に向かって延びる一対の側部60a、60bとによって構成される。この流路用溝部54の延在方向の一端部には、第1ポート流路34が連通し、他端部には第2ポート流路36が連通する。すなわち、コネクタ10のメインライン流路38は、上流から下流に向かって、第1ポート流路34、流路用溝部54、第2ポート流路36を備え、これら流路(及び溝部)が直線状に連なって形成される。
【0049】
流路用溝部54の延在方向中間位置には、該流路用溝部54の底部58上にメインライン流路38の軸方向に対して斜めに延びるリブ56が形成される。リブ56は、流路用溝部54の側部60a、60bよりも低く形成され、メインライン流路38を流通する輸液剤Tを下流側に導きつつ、その壁面56aに沿って上方の接続側空間52に輸液剤Tを案内する機能を有する。第1実施形態に係るリブ56は、一端部が側部60aに連結され該連結部分が流路用溝部54の延在方向中心位置よりも上流側に位置し、他端部が側部60bに連結され該連結部分が流路用溝部54の延在方向中心位置よりも下流側に位置する。
【0050】
このリブ56は、第1ポート流路34と第2ポート流路36を臨む両面に壁面56aを備える。これら壁面56aは、リブ56の形状に基づき、平面視(
図4参照)で、底部58上にメインライン流路38の軸方向に対して斜めに延設され、その両端部が一対の側部60a、60bにそれぞれ連結される。したがって、流路用溝部54の上流側から見ると、壁面56aは、側部60aに連結される一端部が手前側にあり、側部60bに連結される他端部が奥行き側にあるように形成される。
【0051】
また、リブ56の底部58に連結する部分は、
図5に示すように、湾曲状(湾曲部56b)に形成される。この湾曲部56bは、上流からリブ56に流れる輸液剤Tを、上方の接続側空間52にスムーズに案内させる機能を有する。
【0052】
さらに、流路用溝部54の延在方向中間位置の側部60a、60bには、流路用溝部54の幅を緩やかに狭くする一対の括れ部62が内側に延出形成される。一対の括れ部62は、流路用溝部54を流れる輸液剤Tを一旦内側に導き、リブ56によって案内される輸液剤Tの量を増加させることができる。
【0053】
コネクタ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にこのコネクタ10を使用した場合の動作及び効果について説明する。なお、コネクタ10は、上述のとおり、第1〜第3チューブ20a〜20cを接続して輸液を行うことが可能なものであるが、第1実施形態に係るコネクタ10は、第3チューブ20cを接続しない場合に、より大きな効果を得られるものであるため、以下の説明では、第1及び第2チューブ20a、20bのみを接続した場合について詳述する。
【0054】
図7Aは、第1実施形態に係るコネクタ10における輸液剤Tの流れを概略的に示す側面断面図、
図7Bは、第1実施形態に係るコネクタ10における輸液剤Tの流れを概略的に示す要部拡大平面図である。
【0055】
コネクタ10は、上流側の第1ポート28に第1チューブ20a(
図1参照)が接続され、下流側の第2ポート30に第2チューブ20b(
図1参照)が接続された状態で、輸液剤Tが流通される。一方、第3チューブ20cのプラグ46(
図6参照)が差し込まれる第3ポート32は、弁体44によって閉塞状態となっている。
【0056】
輸液バックから供給される輸液剤Tは、第1チューブ20aを介して、コネクタ10に流入し、
図7Aに示すように、コネクタ10内のメインライン流路38を通過して、該コネクタ10から流出する。そして、コネクタ10の下流側に接続された留置針を介して、生体内に投与(供給)される。
【0057】
この場合、コネクタ10内では、輸液剤Tが第1チューブ20aの管内から第1ポート流路34に流入し、第1ポート流路34に沿って、下流(コネクタ基部24)に向かって直進(直線的に移動)する。
【0058】
コネクタ基部24に移動してきた輸液剤Tは、そのまま直線的に流路用溝部54に流入する。そして、流路用溝部54の延在方向中間位置に立設されているリブ56によって、その移動が所定方向に案内される。
【0059】
具体的には、
図7Bに示すように、平面視で斜めに延設される壁面56aによって、上流側(
図7B中左側)から移動してきた輸液剤Tが斜め方向に向かう。すなわち、輸液剤Tは、進行方向に対向するリブ56の壁面56aにしたがって、手前側にある側部60aから奥行きがある側部60b側に寄るように案内される。このため、輸液剤Tの進行方向が、メインライン流路38の軸方向に対して側部60b側に傾けられる。
【0060】
また、
図7Aに示すように、リブ56(壁面56a)が底部58から上方に向かって立設されていることで、第1ポート流路34から直進してきた輸液剤Tの進行方向が上方に傾けられる。この際、リブ56の壁面56aは、底部58との連結部分が湾曲部56bとなっていることで、輸液剤Tを底部58側から上方に向かってスムーズに案内することができる。
【0061】
このように、輸液剤Tは、壁面56aによって横方向(側部60bに寄せる方向)及び上方向に案内されることで、結果として、斜め上方に流れるようになるため、接続側空間52内に容易に入り込む。そして、この斜め上方の流れにより、接続側空間52の一部(
図7Bの側部60bの上方付近)に、輸液剤Tが集中する。接続側空間52内では、一部に集中して案内された輸液剤Tが対向する内壁53によって周方向に回り込むようになり、その結果、接続側空間52内に大きな流動(流体の乱れ)を生じさせる。
【0062】
ここで、コネクタの接続側空間では、既述したように、流体(輸液剤や気泡)の流動が生じないことで、接続側空間内に流体が停滞する現象(停滞流体)が発生していた。従来のコネクタ(例えば、特許文献1参照)は、単純に輸液剤を上方に案内するだけであり、接続側空間内では、案内された輸液剤が比較的緩やかに流動することで、停滞流体にほとんど影響を与えずにそのまま下流に流出してしまい、接続側空間から停滞流体を排出することが難しかった。
【0063】
これに対し、本発明に係るリブ56は、輸液剤Tを、メインライン流路38の軸方向に対して斜め上方に案内する。すなわち、リブ56によって、輸液剤Tを上方だけでなく横方向に向けることで、接続側空間52内で周方向(横方向)の流れが生じる。これにより、接続側空間52内の流体全体の乱れを大きくして流動を促進することが可能となり、停滞流体を撹拌させることができる。すなわち、接続側空間52内に停滞する停滞流体(輸液剤や気泡)が輸液剤Tに簡単に混じり込んでいく。
【0064】
特に、停滞流体は、接続側空間52の内壁53付近に比較的多く存在するが、上述のとおり、輸液剤Tが内壁53の周方向に沿って流れることで、停滞流体を効率的に流動させることができる。そして、輸液剤Tは、停滞流体を含んだ状態で、接続側空間52からリブ56を越えた流路用溝部54の反対側(下流側)に移動することで、接続側空間52内から停滞流体を排出することができる。
【0065】
この停滞流体を含む輸液剤Tは、流路用溝部54から第2ポート流路36に流れ込んで、第2ポート流路36に沿って直線的に移動し、下流側の第2チューブ20bの管内に流出する。
【0066】
コネクタ10から流出した停滞流体を含む輸液剤Tに対しては、該停滞流体の種類や輸液の状況等に応じて必要な処理を施すことができる。例えば、輸液ラインのプライミングを行う場合は、接続側空間52内の停滞流体として気泡(空気)が想定されるため、エアベントフィルター18において気泡を排気する処理を行うことができる。また、接続側空間52内の停滞流体として、供給予定の輸液剤Tとは異なる輸液剤が残留していると想定される場合は、コネクタ10の下流側にて輸液剤Tを所定時間廃棄する処理を行うことができる。
【0067】
以上のように、第1実施形態に係るコネクタ10では、壁面56aが輸液剤Tを一方の側部60bに寄せるように傾斜することで、接続側空間52内に存在する停滞流体の乱れを大きくして流動を促進するように、輸液剤Tを案内することができる。したがって、壁面56aによって導かれた輸液剤Tにより、接続側空間52に停滞する停滞流体を該接続側空間52内から容易に排出することができる。これにより、本コネクタ10を適用した輸液ラインでは、輸液の安全性を大きく高めることができ、所望の輸液剤を良好に患者に供給することができる。
【0068】
特に、第1実施形態では、壁面56aが、底部58から立設されて該底部58上を斜めに延設され、その両端部が一対の側部60a、60bに連結されることで、メインライン流路38の軸方向に流れる輸液剤T全体を、一方向に寄せることができる。そして、一方向に寄せられた輸液剤Tが接続側空間52に案内されることで、該接続側空間52内における停滞流体の流動(乱れ)を一層大きくして流動を促進することができる。その結果、接続側空間52内の停滞流体をより効率的に排出させることができる。
【0069】
また、壁面56aの連結部分が湾曲部56bとして形成されることで、メインライン流路38の底部58側を流れる輸液剤Tであっても、接続側空間52に容易に案内することができる。したがって、接続側空間52に案内される輸液剤Tの量が増加し、接続側空間52内における停滞流体の流動をより一層大きくすることができる。
【0070】
さらに、リブ56によって分断された第1ポート流路34及び第2ポート流路36を臨む両面に壁面56aが形成されることで、ハウジング22に形成される第1ポート28と第2ポート30を、第1チューブ20aと第2チューブ20bのいずれに取り付けても、壁面56aを輸液剤Tの進行方向に対向させることができ、コネクタ10の接続を簡単化することができる。
【0071】
またさらに、流路用溝部54の側部60bに、括れ部62が形成されていることで、輸液剤Tを一旦内側に集めることができる。これにより、輸液剤Tの流速が速まりつつ該輸液剤Tの進行方向を斜め上方とすることができ、接続側空間52に輸液剤Tを簡単に案内することができる。
【0072】
〔第2実施形態〕
図8は、第2実施形態に係るコネクタ10Aの全体構成を示す平面図である。なお、以降の第2実施形態に係るコネクタ10Aにおいて、上述した第1実施形態に係るコネクタ10と同一の構成又は同一の機能を奏する構成には、同じ符号を付すこととし、その詳細な説明については省略する。
【0073】
第2実施形態に係るコネクタ10Aは、リブ70の形状を略十字形状に形成した点で、第1実施形態に係るコネクタ10のリブ56とは異なる。すなわち、コネクタ10Aのリブ70は、メインライン流路38の底部58に立設されるとともに、平面視で、メインライン流路38の中心軸上に頂部72を有する。そして、リブ70の壁面70aが、頂部72から一対の側部60a、60bに向かって斜めに延設され、該一対の側部60a、60bに連結される。このように、リブ70を略十字形状に形成しても、接続側空間52内で大きな流動を生じさせ停滞流体の撹拌を促進させるように輸液剤Tを案内することができる。
【0074】
以下、コネクタ10Aを流通する輸液剤Tの動作について、具体的に説明すると、第1ポート28から流入された輸液剤Tは、メインライン流路38(流路用溝部54)の軸心上にあるリブ70の頂部72を基点として、該頂部72から一方の側部60aと、該頂部72から他方の側部60bとの二方向に分けられる。輸液剤Tは、壁面70aによって二方向に分かれても、それぞれの方向で側部60a、60bに寄せるように案内される。
【0075】
これにより、二方向且つ斜め方向に案内された輸液剤Tが、それぞれ接続側空間52に入り込み、接続側空間52内で停滞流体の流動(乱れ)を大きくすることができる。その結果、第2実施形態の壁面70aでも、接続側空間52内の停滞流体を効率的に排出することができる。
【0076】
また、壁面70aは、底部58と連結される部分が湾曲部70bとして形成される。これにより、第1実施形態のリブ56の湾曲部56bと同様に、輸液剤Tをスムーズに上方の接続側空間52に導くことができる。
【0077】
さらに、コネクタ10Aでも、リブ70によって分断された第1ポート流路34及び第2ポート流路36を臨む両面に壁面70aを形成することができる。したがって、ハウジング22に形成される第1ポート28と第2ポート30を、第1チューブ20aと第2チューブ20bのいずれに取り付けても、壁面70aを輸液剤Tの進行方向に対向させることができ、コネクタ10Aの接続を簡単化することができる。
【0078】
〔参考例〕
図9は、参考例であるコネクタ10Bの全体構成を示す平面図である。
【0079】
参考例に係るコネクタ10Bは、リブ80の幅方向中央部分が進行方向に沿って窪む略凹形状形成した点で、第1及び第2実施形態に係るコネクタ10、10Aとは異なる。すなわち、リブ80の壁面80aは、メインライン流路38の底部58に立設されるとともに、平面視で、一対の側部60a、60bからメインライン流路38の中心軸上に向かって円弧状に湾曲し、該中心軸上の頂部(谷部82)が最も奥行きを有する部分となっている。コネクタ10Bは、メインライン流路38上に、このようなリブ80(壁面80a)を形成することも考えられる。
【0080】
なお、本発明に係るコネクタ10、10Aは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。