(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電流供給用の一対の金属ローラが、ローラ周面に、ビッカーズ硬度が150以上200以下の金コバルト合金めっき層と、ビッカーズ硬度が280以上320以下の金ニッケル合金めっき層と、ビッカーズ硬度が250以上380以下の金・銅合金めっき層と、ビッカーズ硬度が100以上230以下の硬質銀めっき層と、ビッカーズ硬度が150以上250以下の硬質銅めっき層との中から選択されたいずれかの金属めっき層を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気抵抗測定手段。
非金属繊維を芯線として送り出して、その周囲に金属めっきをし、金属めっきされた導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を測定させてから、巻取ローラに送り出させるめっき装置において、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の前記電気抵抗測定手段を含み、
前記芯線が送り出される速度を調整させる速度制御手段と、第1の設定電気抵抗値と第2の設定電気抵抗値が記憶された記憶手段とを含み、
第1の設定電気抵抗値が、上限許容電気抵抗値とされ、第2の設定電気抵抗値が異常電気抵抗値とされ、
前記速度制御手段は、前記電気抵抗測定手段により測定された前記電気抵抗値が第1の設定電気抵抗値を超えている場合には、前記無電解めっき工程において前記導電性めっき繊維糸の送り出し速度を遅くさせると共に、前記電気抵抗測定手段により測定された前記電気抵抗値が第2の設定電気抵抗値を超えている場合には、前記無電解めっき工程において前記導電性めっき繊維糸の送り出しを停止させる、
ことを特徴とするめっき装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を測定させる方法として、めっきされて送出される導電性めっき繊維糸に、複数の金属ローラを接触させて電気抵抗値を測定させる方法が知られている。具体的には、二端子測定法・四端子測定法が知られている。対をなす金属ローラの間に接触させながら、導電性めっき繊維糸を移動させて、対をなす金属ローラから一定値の電流を流して、その導電性めっき繊維糸に印加される電圧値を測定し、その電圧値を電流値で除算させることにより電気抵抗値が算出されていた。
【0003】
従来の電気抵抗測定手段に含まれる金属ローラは、導電性めっき繊維糸が長期間に亘って摺動されても、ローラ部分が損耗されにくいように、ステンレス鋼製とされている。しかし、ステンレス鋼製の金属ローラの導電性が低いことに起因して、導電性めっき繊維糸の表面に必要・十分な厚さのめっき層が形成されている場合であっても、その電気抵抗値が許容される範囲外と誤測定され、めっき不良と判定されることがあった。
【0004】
良好なめっきがされている導電性めっき繊維糸の一部にめっき不良とされた部分があると、めっき不良とされた部分を含めて、ロット単位又は相当な長さの導電性めっき繊維糸を廃棄しなければならなくなり、歩留まり低下の原因の一つとなっていた。導電性めっき繊維糸の生産性を向上させるためには、めっきされた導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を正確に測定することができる電気抵抗測定手段が必要とされていた。
【0005】
また、導電性めっき繊維糸のめっき装置は、生産性の向上を図るために、幅が狭く長く延びた一つのめっき空間の中を、複数本の導電性めっき繊維糸を平行に移動させて、同時にめっきするようにさせている。そして、複数本の導電性めっき繊維糸をめっきさせるめっき工程に連続させるようにして、各々の導電性めっき繊維糸に対して、ひとつの電気抵抗測定手段により電気抵抗値が測定されていた。
【0006】
生産性を向上させるために、幅が狭いめっき空間の中を同時に通過させる導電性めっき繊維糸の本数を増やそうとすると、従来のめっき装置と同じ長さで、繊維線の本数に応じた電気抵抗測定手段が配置できるように、電気抵抗測定手段の小型化が必要とされていた。
【0007】
特許文献1には、一対の金属ローラが使用される二端子法により、導電性繊維糸の電気抵抗値が測定される電気抵抗測定方法及び測定装置の技術が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、間隔をおいて配置した一対の回転可能な金属ローラから電流を供給させると共に、その金属ローラの間に導電性繊維糸を接触させて電気抵抗値を測定させている。金属ローラの損耗を抑制するために、金属ローラの表面に硬質クロムめっき層を備えさせてもよいとされている。また、電気抵抗値を測定させる際に、導電性繊維糸が弛まないように、一定の張力下で金属ローラに接触されるように、導電性繊維糸に張力ローラを使って張力をかけるとされている。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の二端子測定法の技術によれば、導電性繊維糸自体の電気抵抗値と、導電性繊維糸と金属ローラとの接触電気抵抗とを合算した電気抵抗値が測定されることになる。しかし、合算した電気抵抗値に対して、接触電気抵抗が占める割合が高いため、導電性繊維糸の電気抵抗値を正確に測定することは困難であるという課題があった。
【0009】
また、硬質クロムめっき層を備えさせた場合には、クロムの電気抵抗値は導電性の高い金・銀・銅等と比較して約5倍〜8倍と高く、また、クロムの接触電気抵抗値は、接触電気抵抗値の小さい金・銀と比較して約5000倍、ステンレス鋼と比べても約25倍と大きな値となっている。そうすると、硬質クロムめっき層を備えさせると、金属ローラの損耗は抑制できても、導電性繊維糸の電気抵抗値の測定精度が低下するという課題があった。
【0010】
特許文献2には、二対の金属ローラが用いられる四端子法により、導電性繊維糸の電気抵抗値が測定される電気抵抗測定方法及び測定装置の技術が開示されている。特許文献2に記載の技術によれば、金属ローラと導電性繊維糸との接触電気抵抗の影響を低減させることができるとされている。具体的には、直列的に配置された四組の金属ローラとゴムローラとにより、導電性繊維糸を上下から挟んで保持させた状態で電気抵抗値を測定させることにより、常に一定長の導電性繊維糸の電気抵抗値の測定ができるとされている。
【0011】
しかし、導電性繊維糸が金属ローラとゴムローラとにより挟持された状態で電気抵抗値が測定されるため、導電性めっき繊維糸に形成させためっき層が剥離される可能性があるという課題があった。更に、一対のローラの回転が不均一となった場合には繊維が破断される可能性があると共に、破断された繊維がローラに絡まりメンテナンスに手間がかかる可能性もあった。また、ゴムローラの損耗状態やゴムローラが損耗された破片が金属ローラの表面に付着していないかを随時点検する必要もあり、メンテナンスに手間がかかるという課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、高分子繊維、カーボン繊維、セラミック繊維等からなる非金属繊維を芯線として、その周囲に金属めっきをした導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を測定させる電気抵抗測定手段に含まれる金属ローラ、電気抵抗測定手段及びめっき装置を提供することである。より詳細には、導電性めっき繊維糸の電気抵抗値が誤測定されることがなく、導電性めっき繊維糸の生産性を向上することができる金属ローラ、電気抵抗測定手段及びめっき装置を提供することである。更に、導電性めっき繊維糸の電気抵抗値の測定結果に応じてめっき時間を調整させ、より生産性を向上できるめっき装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の発明の電気抵抗測定手段は、非金属繊維を芯線として、その周囲に金属めっきをした導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を測定させる電気抵抗測定手段であって、金属めっき工程後に巻取ローラに送り出されるまでに、前記導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を測定させるに適し、前記導電性めっき繊維糸に定電流を供給させる電流供給用の一対の金属ローラと、前記導電性めっき繊維糸に供給された定電流の電圧値を測定させる電圧測定用の一対の金属ローラとが備えられ、前記電圧測定用の一対の金属ローラが、ローラ周面に金と銀と銅とこれらの2種以上の合金との中から選択されたいずれかの金属による金属めっき層を有し、前記電圧測定用の一対の金属ローラが、前記電流供給用の一対の金属ローラの間に挟まれるように配され、前記導電性めっき繊維糸が、隣り合う各々の金属ローラの上周面と下周面とに交互に、折れ曲がった状態で接触されると共に、前記電圧測定用の一対の金属ローラの周面と円弧状に接触された状態で前記電気抵抗値が測定されることを特徴としている。
【0015】
導電性めっき繊維糸とは、芯線の周囲にめっき層が備えられることにより、高分子繊維、カーボン繊維、セラミック繊維等の芯線をなす非金属繊維に導電性が付与された繊維糸のことをいう。芯線をなす繊維は、単繊維であってもよく繊維束であってもよい。芯線の周囲に備えられるめっき層は、無電解めっき層のみからなる場合に限定されず、無電解めっき層に電解めっき層が積層されてもよい。また、芯線の周囲に備えられるめっき層の金属材質も限定されない。
【0016】
電圧測定用の金属ローラが、ローラ周面に金と銀と銅とこれらの2種以上の合金との中から選択されたいずれかの金属による金属めっき層を有している。電気抵抗値を従来のステンレス鋼からなる金属ローラと比較すると、金は約25分の1であり、銅・銀は約40分の1であり、金属内の導電性が優れている。また、接触電気抵抗値を従来のステンレス鋼からなる金属ローラと比較すると、金・銀は約200分の1以下であり、銅は約15分の1以下である、金属の接触部分の導電性も優れている。金・銀・銅のいずれの金属単体とした場合でも、金属内及び金属の接触部分での導電性が、従来のステンレス鋼に比較して向上するため、導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を測定させる際の誤差を低減させることができる。
【0017】
特に、金属めっき層が金のみからなる場合には、接触電気抵抗を金属の中で最も小さくでき、電圧値をより高い精度で測定することができ好適である。一方、金と銀、金と銅、銀と銅、金と銀と銅の合金のいずれかとすれば、金に比べて接触電気抵抗が大きくなる。しかし、金よりも金属内での導電性が高い銀又は銅を含んでいる前記の合金めっきは、金属内及び金属の接触部分における電気抵抗値が、従来のステンレス鋼又は硬質クロムめっきと比較して小さく、測定誤差を低減することができる。また、前記の合金めっきは、金単体に比較してビッカーズ硬度が大きい。金属ローラの耐久性を重視する場合には、金属ローラを前記の合金めっきとすればよい。
【0018】
従来のステンレス鋼製の金属ローラと比べて、本発明の金属ローラは、金属内及び金属の接触部分における導電性を高くすることができ、導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を正確に測定させることができる。これにより、めっき繊維糸の生産性を向上させることができる。なお、電流供給用の金属ローラにも、電圧測定用の金属ローラと同一の金属ローラを使用することにより、供給させる電流値を誤差のない電流とし、より正確に電気抵抗値を測定させることができることは勿論のことである。
【0019】
導電性めっき繊維糸が、隣り合う各々の金属ローラの上周面と下周面とに交互に、折れ曲がった状態で接触されると共に、電圧測定用の一対の金属ローラの周面と円弧状に接触された状態で電気抵抗値が測定されている。これにより、各々の金属ローラと導電性めっき繊維糸との接触電気抵抗が小さくなると共に、導電性めっき繊維糸が金属ローラから離れにくくなり、正確に電気抵抗値を測定させることができるようになる。
【0020】
また、各々の金属ローラを一つの方向に並んで配列させているため、導電性めっき繊維糸が移動されている経路の途中に、電気抵抗測定手段を配置させることができ、製造ラインを直線状に配列させて、めっき装置で同時にめっきできる導電性繊維の本数を増やすことができる。
【0021】
本発明の第2の発明は、第1の発明の電気抵抗測定手段であって、前記電流供給用の一対の金属ローラが、ローラ周面に、ビッカーズ硬度が150以上200以下の金コバルト合金めっき層と、ビッカーズ硬度が280以上320以下の金ニッケル合金めっき層と、ビッカーズ硬度が250以上380以下の金・銅合金めっき層と、ビッカーズ硬度が100以上230以下の硬質銀めっき層と、ビッカーズ硬度が150以上250以下の硬質銅めっき層との中から選択されたいずれかの金属めっき層を有していることを特徴としている。
【0022】
第2の発明による金属ローラに使用された金属めっき層の電気抵抗値は、いずれも従来使用されているステンレス鋼に対して20分の1以下であるため、導電性めっき繊維糸に金属ローラを接触させて定電流を供給させる際の電流値の変動を抑制することができる。また、ビッカーズ硬度が約180とされているステンレス鋼と同等以上の硬い金属が選択されるため、電気抵抗測定手段を長期間使用しても、電流供給用の金属ローラが損耗されにくい。
【0023】
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明の電気抵抗測定手段であって、前記電流供給用の一対の金属ローラのうちの、少なくともいずれか一方の金属ローラに、張力調整手段が含まれ、前記張力調整手段は、前記導電性めっき繊維糸の電圧測定の際に、前記少なくともいずれか一方の金属ローラを、前記周面に接する導電性めっき繊維糸に向けて押し付けており、各々の金属ローラと前記導電性めっき繊維糸とが離間しないように、前記導電性めっき繊維糸の張力が調整されていることを特徴としている。
【0024】
張力調整手段は、例えば、電流供給用の金属ローラを、自重により、上下方向に動作可能な浮動ローラとすればよい。電流供給用の金属ローラが導電性めっき繊維糸を上から押さえ付けていることにより、各々の電流供給用の金属ローラと導電性めっき繊維糸とが離間しない。電流供給用の金属ローラに付勢手段を付設させ、付勢力により押し付けてもよいことは勿論のことである。
【0025】
導電性めっき繊維糸の下から、電流供給用の金属ローラを接しさせる場合には、エアシリンダー等の付勢手段により、電流供給用の金属ローラを導電性めっき繊維糸に向けて押し付けるようにしてもよい。電流供給用の金属ローラを押し付ける力は、金属ローラと導電性めっき繊維糸が離間されない程度の小さな力でよく、小型のエアシリンダーであればよい。
【0026】
また、電流供給用の金属ローラのみに張力調整手段が設けられ、電圧測定用の金属ローラの位置は固定されているため、電流供給用の金属ローラが上下に動作されても、導電性めっき繊維糸の電圧測定用の測定長さが変化しない。これにより、導電性めっき繊維糸がたるむことによる誤測定を抑制できる。
【0027】
本発明の第4の発明は、第1の発明から第3の発明の電気抵抗測定手段であって、前記電圧測定用の一対の金属ローラが、損耗抑制手段を含み、前記損耗抑制手段は、前記電圧測定用の一対の金属ローラの回転軸が平行に配されていると共に、各々の前記回転軸が前記導電性めっき繊維糸の送り出し方向に直交しない方向に配されることで、前記電圧測定用の各々の金属ローラの周面が、前記導電性めっき繊維糸の太さよりも広い幅で、前記導電性めっき繊維糸と接触するようにされ、前記電圧測定用の一対の金属ローラをなす前記金属めっき層の損耗が抑制されるようにするものであることを特徴としている。
【0028】
導電性めっき繊維糸が金属ローラの周面の所定の幅の範囲に接触されている。そのため、従来のように、金属ローラの周面と導電性めっき繊維糸とが、導電性めっき繊維糸の太さの幅で接触される場合と比べて、金属めっき層の損耗を抑制させることができる。そのため、電圧測定用の金属ローラに備えられた金属めっき層が、ビッカーズ硬度の小さい金めっき層・銀めっき層であっても、損耗されにくくなる。また、金属ローラの回転軸が前記導電性めっき繊維糸に対して斜めに、且つ平行に配されるだけであり、簡易な構成で金属ローラの損耗を抑制することができる。
【0029】
これにより、接触電気抵抗が小さく、導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を正確に測定できることに加えて、軟らかく損耗されやすい金属めっき層を備えた金属ローラであっても、金属ローラの交換周期を長くすることができるという有利な効果を奏する。
【0030】
本発明の第5の発明のめっき装置は、非金属繊維を芯線として送り出して、その周囲に金属めっきをし、金属めっきされた導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を測定させてから、巻取ローラに送り出させるめっき装置において、第1の発明から第4の発明の前記電気抵抗測定手段を含み、前記芯線が送り出される速度を調整させる速度制御手段と、第1の設定電気抵抗値と第2の設定電気抵抗値が記憶された記憶手段とを含み、第1の設定電気抵抗値が、上限許容電気抵抗値とされ、第2の設定電気抵抗値が異常電気抵抗値とされ、前記速度制御手段は、前記電気抵抗測定手段により測定された前記電気抵抗値が第1の設定電気抵抗値を超えている場合には、前記無電解めっき工程において前記導電性めっき繊維糸の送り出し速度を遅くさせると共に、前記電気抵抗測定手段により測定された前記電気抵抗値が第2の設定電気抵抗値を超えている場合には、前記無電解めっき工程において前記導電性めっき繊維糸の送り出しを停止させることを特徴としている。
【0031】
導電性めっき繊維糸の周囲に形成されためっき層の膜厚が小さい場合には、電気抵抗値は大きくなる。速度制御手段は、電気抵抗測定手段により測定された電気抵抗値が、上限許容電気抵抗値とされる第1の設定電気抵抗値を超えている場合には、導電性めっき繊維糸の送り出し速度を遅くさせる。導電性めっき繊維糸の送り出し速度を遅くさせると、無電解めっき工程における導電性めっき繊維糸の浴時間が長くされ、導電性めっき繊維糸のめっき層の膜厚を厚くし、上限許容電気抵抗値の範囲にとどめることができる。
【0032】
電気抵抗測定手段により測定された電気抵抗値が、異常電気抵抗値とされる第2の設定電気抵抗値を超えている場合には、前記無電解めっき工程において導電性めっき繊維糸の送り出しを停止させるようにする。突発的に異常抵抗値が発生した場合には、前記無電解めっき工程において導電性めっき繊維糸の送り出しを停止させ、異常が発生している導電性めっき繊維糸の部分だけを廃棄することができる。これにより、全体の生産効率を向上させることができる。
【0033】
本発明の第6の発明は、第5の発明のめっき装置であって、前記記憶手段には、第3の設定電気抵抗値が記憶され、第3の設定電気抵抗値が、下限許容電気抵抗値とされ、前記速度制御手段は、前記電気抵抗測定手段により測定された前記電気抵抗値が、第3の設定電気抵抗値を下回った場合には、前記無電解めっき工程において前記導電性めっき繊維糸の送り出し速度を速くさせることを特徴としている。
【0034】
導電性めっき繊維糸に備えられためっき層の膜厚は、所定の厚さがあれば、導電線としての機能は維持される。そこで、第6の発明では、電気抵抗測定手段により測定された電気抵抗値が第3の設定電気抵抗値を下回った場合、換言すれば必要・十分な膜厚のめっき膜厚がある場合には、導電性めっき繊維糸の送り出し速度を、速度制御手段により速くさせている。これにより、同一の時間でも、長い導電性めっき繊維糸を生産することができ、生産効率の高いめっき装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0035】
・本発明の第1の発明によれば、導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を正確に測定させることができ、めっき繊維糸の生産性を向上させることができる。また、接触電気抵抗が小さくなると共に、導電性めっき繊維糸が金属ローラから離れにくくなり、正確に電気抵抗値を測定させることができるようになる。
・本発明の第2の発明によれば、導電性めっき繊維糸に金属ローラを接触させて定電流を供給させる際の電流値の変動を抑制することができる。また、電流供給用の金属ローラが損耗されにくく、金属ローラの交換周期を長くさせることができる。
・本発明の第3の発明によれば、導電性めっき繊維糸がたるむことによる誤測定を抑制できる。
【0036】
・本発明の第4の発明によれば、軟らかく損耗されやすい金属めっき層を備えた金属ローラであっても、金属ローラの交換周期を長くすることができるという有利な効果を奏する。
・本発明の第5、第6の発明によれば、全体の生産効率を向上させることができるめっき装置とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
導電性めっき繊維糸の生産性を向上させるために、導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を正確に測定できるようにすると共に、電気抵抗測定手段のメンテナンスの手間が減少するようにした。更に、導電性めっき繊維糸のめっき膜厚に応じて、導電性めっき繊維糸の送り出し速度を調整して、生産性が向上されるめっき装置とした。
【実施例1】
【0039】
実施例1では、各々の金属ローラ10,20を導電性の高い金属でめっきさせると共に、各々の金属ローラを横方向に並ばせて配設し、導電性めっき繊維糸90が隣り合う金属ローラの上周面と下周面とに交互に接すると共に、所定の長さで接した状態で電気抵抗が測定されるめっき装置100を、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0040】
図1は、電気抵抗測定手段1の構成を説明する説明図を示している。
図1(A)図は、している。なお、
図1(D)図では理解を容易にするため、金属ローラとスリップリングの構成を一部切欠き断面図により示している。
図2(A)図は、めっき装置100の全体の概要図を示し、
図2(B)図は、一本の導電性めっき繊維糸の製造ラインについての概要図を示している。
【0041】
電気抵抗測定手段1には、電圧測定用の金属ローラ10と電流供給用の金属ローラ20とが夫々対をなすように備えられている。一対の電圧測定用の金属ローラ10,10は、一対の電流供給用の金属ローラ20,20の間に挟まれると共に、各々の金属ローラが導電性めっき繊維糸90の延びる方向に沿って、横方向に並んで配列されている(
図1(A)図参照)。
【0042】
導電性めっき繊維糸90は、隣り合う金属ローラの上周面と下周面とに交互に接するようにされ(
図1(B)図ab間,cd間)、導電性めっき繊維糸90と金属ローラとが所定の長さで接触されている。実施例1においては、夫々の金属ローラ10,20の垂直方向の高さは略同一の高さに揃えられているが、夫々の金属ローラの垂直方向の位置は限定されず、導電性めっき繊維糸が金属ローラに接触される位置とされればよい。
【0043】
電圧測定用の金属ローラ10は、本体部がステンレス鋼製とされ、その周面に導電性の高い金属めっき層11を備えている。導電性の高い金属めっき層11は、金と銀と銅とこれらの2種以上の合金のうちのいずれかとされている。
【0044】
また、金属めっき層11の膜厚は限定されず、金属めっき層の金属の種類に応じて適宜選択されればよい。例えば、金めっき層であれば、コストの観点からめっき膜厚が1μm〜10μmとされればよい。銀めっき層、銅めっき層、合金めっき層であれば、金属めっき層の膜厚を厚くさせ、めっき膜厚が10μm〜20μmの膜厚とされればよい。
【0045】
ここで、
図1(D)図を参照して、金属ローラが回転可能に装着されるスリップリング30について簡単に説明する。スリップリングとは、回転軸部を軸部の回りに回転させて、回転軸部と外部との間で電力・電気信号を伝達することができるようにしたコネクタである。スリップリングの回転軸部31の先方には、金属ローラ10が装着されている。金属ローラと回転軸部の中央部には軸方向に沿って貫通孔12,32が設けられ、金属ローラと接地された導電線33が回転軸部31の基部に向けて延びている。
【0046】
回転軸部31の基部には、回転軸部と一体をなす複数の金属リング部36が装着され、金属リング36の周面には導電ブラシ部39が接触される。金属ローラから延びた導電線33は、金属リング部36を介して導電ブラシ部39に接地され、金属ローラと導電ブラシ部39との間で、正確な電力・電気信号を伝達させている。
【0047】
金属ローラ10は、スリップリングの回転軸部31の先方に着脱自在に装着されている。金属ローラは、回転軸部31と導電線33と金属リング部36と一体に回転される。一方、スリップリングの枠体部分37や、枠体部分から延びている導電線38は回転されない。また、前記貫通孔32を介して、金属リング部36に向けて、絶縁被覆された導電線33が延びている。また、貫通孔に貫通されている導電線33は、回転軸部31と一体をなす複数の金属リング部36の夫々に接続されている。
【0048】
また、導電線33の先端には、先方が二又に分かれた接続端子34が備えられ、接続端子と金属ローラ10とが螺子35により着脱容易に取付けられている。導電性めっき繊維糸90から金属ローラ10に電流が供給されると、金属ローラ10、接続端子34、導電線33、金属リング部36、導電ブラシ部39と順に電流が伝達される(
図1(D)図参照)。なお、電流供給用の金属ローラ20では、この伝達経路が逆とされる。
【0049】
次に、電流供給用の金属ローラ20について説明する。電流供給用の金属ローラ20の構成は、金属めっき層21の材質が異なっている以外は、電圧測定用の金属ローラ10と同一の構成とされるため、金属めっき層以外については説明を省略する。電流供給用の金属ローラ20も本体部がステンレス鋼製とされ、その周面に導電性が高く、かつ、ビッカーズ硬度が大きい金属めっき層21を備えている。
【0050】
具体的には、ビッカーズ硬度が150以上200以下の金コバルト合金めっき層と、ビッカーズ硬度が280以上320以下の金ニッケル合金めっき層と、ビッカーズ硬度が250以上380以下の金銅合金めっき層と、ビッカーズ硬度が100以上230以下の硬質銀めっき層と、ビッカーズ硬度が150以上250以下の硬質銅めっき層との中から選択されたいずれかの金属めっき層が形成されている。なお、金属めっき層の膜厚は限定されない。
【0051】
ここで、
図1(C)図を参照して、四端子測定法により電気抵抗値を測定させる方法を簡単に説明する。電気抵抗測定手段1は、電源80から電流供給用の金属ローラ20,20を介して導電性めっき繊維糸90に電流を供給させ、2つの電圧測定用の金属ローラ10,10の間の導電性めっき繊維糸(
図1(C)図e部分)の電圧値を電圧計81により測定させている。そして、測定された測定電圧値をアナログ/デジタル変換器82によりデジタル信号に変換させ、中央処理装置83に送信させる。中央処理装置83は、測定電圧値を入力された電流で除算させることにより、導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を演算させると共に、その結果を記憶させる。
【0052】
次に、電気抵抗測定手段1を備えためっき装置100(
図1参照)を、
図2の各々の図を参照して説明する。めっき装置100は、図上左側を始点として、芯線送出部110、めっき浴槽120、水洗装置130、乾燥装置140、電気抵抗測定手段1、導電性めっき繊維糸の巻取部150の順で配置されており、複数の導電性めっき繊維糸を製造させる製造ラインをなしている(
図2(A)図矢印参照)。
【0053】
めっき装置の芯線送出部110には、複数の糸送りローラ111が備えられており、複数の芯線91が同時にめっきできるようにされている。複数の糸送りローラ111には、導電性めっき繊維糸をなす芯線91がボビンに巻きつけられた状態で装着されている。芯線送出部110には、糸送りローラ111と同数のピンチローラ112と、糸の張力を調整するダンサー113とが備えられており、芯線91を張りすぎないようにめっき浴槽120に送出させている。芯線の材質は、高分子繊維(絹等の天然繊維、アラミド繊維等の樹脂繊維を含む)・カーボン繊維・セラミック繊維(ガラス繊維を含む)であればよい。また、芯線は単繊維であってもよく、単繊維が束ねられた繊維束であってもよい。また、芯線は無電解めっき浴に先立って超臨界めっき前処理等の下処理工程を行っている。
【0054】
めっき浴槽120では、芯線91が無電解めっき浴され、芯線の周囲にめっき層が形成される(
図2(B)図参照)。無電解めっき浴の浴条件等は限定されない。例えば、無電解銅によるめっき浴であれば、銅めっき液の主な成分は、銅めっき水溶液1リットルあたり、硫酸銅10g、還元剤をなすホルムアルデヒド溶液(35重量%水溶液)2〜3gとされる。浴温度が40〜50℃、pHが8〜13、浴時間が5分〜15分とされる。この無電解めっき浴の浴条件で、芯線91の周囲に、0.2μm〜0.5μmの無電解銅めっき層が形成される。
【0055】
また、めっき浴槽120におけるめっき浴は、無電解めっき浴のみに限定されず、無電解めっき浴に連続して電気めっき浴が含まれても良いことは勿論のことである。例えば、硫酸銅めっき浴であれば、銅めっき液は、硫酸銅めっき水溶液1リットルあたり、硫酸銅180〜250g、硫酸(硫酸成分が98重量%)45〜60g、浴温度が20〜35℃とされる。電流密度は0.5〜5A/dm2、めっき浴時間は、5〜30分とされる。この電気めっき浴の浴条件で、1.0〜5μmの厚さの硫酸銅めっき層が形成される。
【0056】
めっき浴槽におけるめっき浴工程の後に、導電性めっき繊維糸90が水洗装置130、乾燥装置140の順に送られ、水洗・乾燥され、引き続いて電気抵抗測定手段1において電気抵抗値が測定される。そして、電気抵抗値の測定された導電性めっき繊維糸90が、糸送りローラ111と同期して回転される巻取ローラ151に巻き取られる。
【実施例2】
【0057】
実施例2では、張力調整手段40が備えられた電気抵抗測定手段2の実施例を、
図3を参照して説明する。
図3(A)図は、電流供給用の金属ローラ20の側面図を示している。
図3(B)図は、張力調整手段40により電流供給用の金属ローラ20が導電性めっき繊維糸90に押し付けられる前の状態を示し、
図3(C)図は押し付けられた後の状態を示している。なお、
図3(B)図では、電流供給用の金属ローラの軸心を結ぶ仮想線43を一点鎖線で示している。
【0058】
一対の電流供給用の金属ローラ20のうち、導電性めっき繊維糸が下周面に接している金属ローラ23が、上下に動作可能とされる浮動ローラとされて、張力調整手段40とされている。張力調整手段は、金属ローラ23の自重と板バネ41とされる。板バネ41は、天板部42の下面側に付設され、電流供給用の金属ローラ23を、前記仮想線43と交差する方向(図上、下方向)に押し付けている(
図3(B)図白抜き矢印参照)。なお、張力調整手段40は板バネに限定されず、周知の付勢手段であればよい。また、エアシリンダーやサーボモータ等により金属ローラを移動させて、導電性めっき繊維糸90に押し付けるようにさせてもよい。
【0059】
導電性めっき繊維糸90は、夫々の金属ローラ10,20の上周面と下周面とに交互に接するように掛け渡されている。そのため、ひとつの金属ローラ23を導電性めっき繊維糸90に押し付けると、夫々の金属ローラ10,20の間に接している導電性めっき繊維糸90に張力が作用され、導電性めっき繊維糸と各々の金属ローラとが離れないようになる(
図3(C)図矢印参照)。
【0060】
張力調整手段40による導電性めっき繊維糸への金属ローラの押し付けは、導電性めっき繊維糸90と各々の金属ローラ10,20とが離間されない程度の小さな力でよい。例えば、張力調整手段により導電性めっき繊維糸が押し下げられる高さは、約5mmから約10mmであればよい(
図3(C)図、幅f参照)。そのため、金属ローラの自重と小さな板バネによる小さな押付力であっても十分に機能される。
【0061】
これにより、導電性めっき繊維糸と夫々の金属ローラとが離間されず、電気抵抗値が誤測定されることを防止させることができる。また、張力調整手段が浮動ローラと板バネによる簡易な構成であるため、電気抵抗測定手段2が大型化することもなく、めっき装置のライン上の限られたスペースに多くの電気抵抗測定手段を配置させることが容易となる。
【実施例3】
【0062】
実施例3では、エアシリンダー50を張力調整手段とした電気抵抗測定手段3の別の実施例を、
図4を参照して説明する。
図4(A)図は、電圧測定用の金属ローラ10の側面図を示している。
図4(B)図は、エアシリンダー50により、電圧測定用の金属ローラ10が導電性めっき繊維糸90に押し付けられる前の状態を示し、
図4(C)図は押し付けられた後の状態を示している。なお、
図4(B)図では、電圧測定用の金属ローラの軸心を結ぶ仮想線52を一点鎖線で示している。
【0063】
実施例3では、一対の電圧測定用の金属ローラ10,10のいずれもが一体に上下に動作される浮動ローラとされている。張力調整手段は、電圧測定用の金属ローラ10の下方に備えられたエアシリンダー50とされる。エアシリンダー50は、電圧測定用の金属ローラ10を、電流供給用の金属ローラの軸心を結ぶ仮想線52と交差する方向に押し付けている(
図4(B)図白抜き矢印)。押し上げられる高さ(
図4(C)図、幅g参照)は、実施例2と同様に、約5mmから10mm程度であればよい。
【0064】
また、エアシリンダー50の進退軸の先方には、電圧測定用の一対の金属ローラ10,10を繋ぐ平板体51が備えられている。平板体51が二つのスリップリング30の下面を押し上げることにより、一対の電圧測定用の金属ローラ10,10の相対的な位置関係が変更されないで、導電性めっき繊維糸90に押し付けられる(
図4(B)図白抜き矢印)。そして、導電性めっき繊維糸90に張力が作用し、たるみが防止される(
図4(C)図矢印)。なお、エアシリンダーによっても、僅かな力を発生させればよいため、小さなエアシリンダーで足り、電気抵抗測定手段3の配置スペースを拡大させない。
【0065】
また、導電性めっき繊維糸90は、両側の一対の電流供給用の金属ローラ20,20の下周面と、その間に挟まれた一対の電圧測定用の金属ローラ10,10の上周面とに接するようにされている(
図4(B)図参照)。そのため、電圧測定用の金属ローラ10が、導電性めっき繊維糸90に押し付けられる際に、導電性めっき繊維糸の測定長さ(
図4(B)図、
図4(C)図hi間参照)が変わることもない。
【実施例4】
【0066】
実施例4では、損耗抑制手段60が備えられた電気抵抗測定手段4の一例を、
図5を参照して説明する。
図5(A)図は、電気抵抗測定手段4と損耗抑制手段60の平面図を示し、
図5(B)図には金属ローラ10の側面図を示し、
図5(C)図に金属ローラ10と導電性めっき繊維糸90の接触長を説明する説明図を示している。また、
図5(D)図から
図5(F)図に、比較例として、金属ローラの上周面に導電性めっき繊維糸の幅で接触される場合を示している。
【0067】
一対の電圧測定用の金属ローラの各々の回転軸13,13が、導電性めっき繊維糸90に対して斜めに、且つ平行に配することが損耗抑制手段60をなしている。そうすると、導電性めっき繊維糸90が金属ローラ10の周面の所定の幅の範囲(
図5(B)図と
図5(C)図jk間)に接触されるようになる。そのため、損耗抑制手段を有さずに、導電性めっき繊維糸と金属ローラとが導電性めっき繊維糸の幅で接触される場合(
図5(D)図から
図5(F)図)と比べて、導電性めっき繊維糸90と金属めっき層11の接触面積が広くなり、金属めっき層11の損耗が抑制される。
【実施例5】
【0068】
実施例5では、
図6を参照して、損耗抑制手段をなす進退手段70が備えられた電気抵抗測定手段5の一例を説明する。
図6(A)図は、電気抵抗測定手段5と進退手段70の側面図を示し、
図6(B)図には、その平面図を示している。
図6(C)図及び
図6(D)図には、進退手段70により導電性めっき繊維糸90と金属ローラ10とが接する位置が変えられた状態を示している。なお、以下に記載される回転方向や移動方向は、すべて図上における方向を示している。
【0069】
進退手段70は、サーボモータ71と、歯車ギア72と、平歯ギア73と、電圧測定用の金属ローラとの間に架け渡された平板体74とされている。歯車ギア72はサーボモータ71の駆動軸に装着されており、平歯ギア74と咬合されている。平歯ギア73は平板体74の上面に配設されており、サーボモータ70の駆動力を金属ローラ10に伝達させるようにされている。
【0070】
サーボモータ70を時計回りに回転させると、金属ローラ10が前方に移動され、導電性めっき繊維糸90が金属ローラ10のローラ周面の中央から右側に移動される(
図6(A)図、
図6(C)図参照)。サーボモータ70を反時計回りに回転させると、導電性めっき繊維糸90が金属ローラ10のローラ周面の中央から左側に移動される(
図6(D)図参照)。この金属ローラ10が進退される幅(
図6(C)図,
図6(D)図、幅m参照)に、導電性めっき繊維糸90と金属ローラ10との接点が分散されることになるため、金属めっき層の損耗が抑制される。なお、金属ローラ10が進退される幅は、導電性めっき繊維糸の太さに応じて選択されればよい。単繊維あたりの線径12μmのフィラメントが267本集まった導電性めっき糸の幅は1mm程度であるため、5mm〜10mm程度の幅で進退させればよい。
【実施例6】
【0071】
実施例6では、
図7及び
図8を参照して、速度制御手段210が備えられためっき装置200を説明する。
図7(A)図は、めっき装置200を説明する説明図を示し、
図7(B)図は、速度制御手段210の構成を説明する説明図を示している。
図8は、測定電気抵抗値の一例をグラフで示している。
図8(A)図は、測定電気抵抗値300が第1の設定電気抵抗値230を超えた場合を示し、
図8(B)図は、測定電気抵抗値310が第2の設定電気抵抗値240を超えた場合を示している。
図8(C)図は、測定電気抵抗値320が第3の設定電気抵抗値250を下回った場合を示している。
【0072】
速度制御手段210は、記憶部211と制御部217とを含んでいる。記憶部211には、第1から第3の設定電気抵抗値記憶部212,213,214と、芯線91を送り出す速度を記憶させる設定速度記憶部215と、測定された電気抵抗値を記憶させる測定電気抵抗値記憶部216とが備えられる。第1から第3の設定電気抵抗値と設定速度値は、予め入力部220から入力された数値が記憶されている。測定電気抵抗値記憶部216には、中央処理装置83により演算された電気抵抗値が記憶される。
【0073】
制御部217には、送り出し速度制御部218と電気抵抗値評価部219とが備えられる。送り出し速度制御部218は、初期状態では設定速度記憶部215に記憶された設定速度値を使って、所定の送り出し速度で芯線91を送り出すようにさせている。電気抵抗値評価部219は、測定された電気抵抗値と、予め設定された第1から第3の設定電気抵抗値とを対比させ、その結果に応じて、送り出し速度を加速・停止・減速させるように変更し、送り出し速度制御部218に送信させる。
【0074】
次に、具体的な測定電気抵抗値の変化について、
図8(A)図から
図8(C)図を参照して説明する。測定電気抵抗値300が第1の設定電気抵抗値230を超えたと評価されると、電気抵抗値評価部から送り出し速度制御部に、芯線の送り出し速度を遅くするように電気指令が送信される。そうすると、めっき装置におけるめっき浴時間が相対的に長くなり、導電性めっき繊維糸90のめっき膜厚が厚くなる。その結果、導電性めっき繊維糸の電気抵抗値300が低下され、第2の設定電気抵抗値240を超えることが未然に防がれる(
図8(A)図参照)。
【0075】
突発的に、測定電気抵抗値310が第2の設定電気抵抗値240を超えた場合には、電気抵抗値評価部から送り出し速度制御部に、送り出しを停止させるように電気指令が送信され、導電性めっき繊維糸の送り出しが停止される。そして、異常部分を含んだ導電性めっき繊維糸として、出荷対象から除外される(
図8(B)図参照)。
【0076】
一方、測定電気抵抗値320が第3の設定電気抵抗値250を下回ったと評価された場合には、電気抵抗値評価部から送り出し速度制御部に、送り出しを速くさせるように電気指令が送信される。送り出し速度の加速により、めっき装置におけるめっき浴時間が相対的に短くなり、同一の時間でも、長い導電性めっき繊維糸を製造することができ、生産効率が向上される(
図8(C)図参照)。
【0077】
(その他)
・実施例1では、めっき装置に電気抵抗測定手段を備えさせ、めっき工程と連続して導電性めっき繊維糸の電気抵抗値を計測させる例を説明したが、めっき工程と独立して電気抵抗値を測定させてもよい。例えば、めっき工程後にボビンに巻き取った導電性めっき繊維糸を、めっき装置から別の巻取装置に移送し、別のボビンに巻き直しさせながら電気抵抗値を計測させてもよい。
・本発明による電気抵抗測定手段は、めっき装置等に組み込まれる場合に限定されず、独立された携帯型の電気抵抗測定手段としてもよい。一対の電圧測定用の金属ローラだけが備えられた電気抵抗測定手段としてもよいことは勿論のことである。
・今回開示した、発明は理解を容易にするため、製造ラインを水平に一直線に示して説明したが、限定されないことは勿論のことである。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
1,2,3,4,5…電気抵抗測定手段、100,200…めっき装置、
10…金属ローラ、11…金属めっき層、12…貫通孔、13…回転軸、
20,23…金属ローラ、22…金属めっき層、
30…スリップリング、31…回転軸部、32…貫通孔、33,38…導電線、
34…接続端子、35…螺子、36…金属リング部、37…枠体部分、39…導電ブラシ
部、
40…張力調整手段、41…板バネ、42…天板、43…仮想線、
50…エアシリンダー、51…平板体、52…仮想線、
60…損耗抑制手段、70…進退手段、71…サーボモータ、72…歯車ギア、
73…平歯ギア、74…平板体、80…電源、81…電圧計、
82…アナログ/デジタル変換器、83…中央処理装置、
90…導電性めっき繊維糸、91…芯線、
110…芯線送出部、111…糸送りローラ、112…ピンチローラ、
113…ダンサー、120…めっき浴槽、130…水洗装置、
140…乾燥装置、150…巻取部、151…巻取ローラ、
210…速度制御手段、211…記憶部、212…第1の設定電気抵抗値記憶部、
213…第2の設定電気抵抗値記憶部、214…第3の設定電気抵抗値記憶部、
215…設定速度記憶部、216…測定電気抵抗値記憶部、217…制御部、
218…送り出し速度制御部、219…電気抵抗値評価部、
220…入力部、230…第1の設定電気抵抗値、240…第2の設定電気抵抗値、
250…第2の設定電気抵抗値、300,310,320…測定電気抵抗値
【課題】非金属繊維を芯線とする導電性めっき繊維糸の電気抵抗値が誤測定されることがなく、導電性めっき繊維糸の生産性を向上させることができる金属ローラ、電気抵抗測定手段及びめっき装置を提供する。
【解決手段】導電性めっき繊維糸90の電気抵抗値を測定させる電気抵抗測定手段1に含まれる金属ローラ10、20において、一対の電圧測定用の金属ローラ10の周面に導電性の高い金属による金属めっき層11を備え、更に、一対の電流供給用の金属ローラ20に導電性が高く、かつ、ステンレス鋼と同等の硬い金属めっき層21を備えた電気抵抗測定用金属ローラ10,20及び、前記ローラを備えためっき装置。