(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化したヒータ及び酸素センサの一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1を参照して、一例としての酸素センサ1の全体の構成について説明する。参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載している酸素センサ1の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
図1の左側、右側、上側、及び下側を、各々酸素センサ1の左側、右側、上側(後端側)、下側(先端側)と定義して以下説明する。
図1及び
図2において、酸素センサ1の軸線を軸線Lで図示する。軸線L方向とは、酸素センサ1の長手方向であり、
図1においては上下方向に相当する。軸線Lに対して垂直に交差する方向のうち、軸線Lを始点とする方向を、径方向という。軸線Lを中心として軸線Lの回りを回る方向を、周方向という。
【0014】
図1に示す酸素センサ1は、自動車等の内燃機関から排出される排気ガスの排気管(図示略)に取り付けられて使用されるものであり、排気管内を流通する排気ガス中の酸素の有無を検出するためのセンサである。酸素センサ1の先端側(下側)にある検出素子6の先端側は、酸素センサ1の取り付け時において、排気管内に挿入される。
【0015】
図1に示すように、酸素センサ1は、検出素子6、主体金具5、プロテクタ4、外筒3、外側端子75、内側端子70、セパレータ8、グロメット9、及びヒータ100を構成の主体とする。酸素センサ1は、検出素子6を主体金具5で取り囲んで保持した構造を有する。酸素センサ1からは、検出素子6の出力する信号を取り出す2本のリード線18が引き出されている。検出素子6内に挿入されるヒータ100へ通電するための2本のリード線19(
図1ではそのうちの1本を示す。)も、酸素センサ1から引き出されている。各リード線18、19は、酸素センサ1とは離れた位置に設けられる図示略の外部回路(例えば自動車の電子制御装置(ECU))に、電気的に接続されている。
【0016】
検出素子6は、酸素分圧に応じた検出値を出力する公知の酸素センサ素子である。検出素子6は、軸線L方向に延びる中空部60を有し、先端部78が閉じられた有底筒状である。検出素子6は、固体電解質体61、基準電極部62、及び検出電極部63を主に備える。固体電解質体61は、ジルコニアを主成分とし、酸素イオン伝導性を有する。固体電解質体61の軸線L方向の略中間位置には、径方向に向かって突出する鍔状のフランジ部65が設けられている。フランジ部65の一部であって、先端側から後端側にかけて外径が広がる部位である拡径部67の後端部から、検出素子6の先端部78までは、検出部64である。検出部64は、酸素センサ1が排気管(図示略)に取り付けられた場合に、排気管内に晒される。
【0017】
基準電極部62は、固体電解質体61の内周面(内側表面)に設けられている。基準電極部62は、リード部68と基準電極69とを備える。リード部68は、白金又は白金合金からなり、固体電解質体61の後端部66における内周面に、多孔質状に形成されている。基準電極69は、白金又は白金合金からなり、リード部68よりも先端側にある固体電解質体61の内周面の略全面を覆うように多孔質状に形成されている。基準電極部62は後述する内側端子70を介して、一対のリード線18のうちの一方(
図1では右側)のリード線18に電気的に接続される。
【0018】
検出電極部63は、固体電解質体61の外周面(外側表面)に設けられている。検出電極部63は、白金又は白金合金からなり、固体電解質体61の外周面の一部に多孔質状に形成されている。検出電極部63は、耐熱性セラミックスよりなる多孔質状の電極保護層(図示略)により被覆されている。検出電極部63は、電極保護層により排気ガスによる被毒から保護されている。検出電極部63は、後述する外側端子75を介して、他方(
図1では左側)のリード線18に電気的に接続される。
【0019】
主体金具5は、SUS430等のステンレス鋼からなり、軸線L方向に延びる筒孔57を有する筒状の金属部材である。主体金具5は、外周に、先端側から順に、取付部52、雄ねじ部53、工具係合部54、係合部55、及び加締部56を備える。取付部52は、取付部52の外周に、後述するプロテクタ4をはめ込み取り付ける。検出素子6の先端部78は、取付部52よりも先端側に突出している。雄ねじ部53は、排気管の取付部(図示略)に螺合する。
【0020】
工具係合部54は、雄ねじ部53の後端側において、径方向に突出した部位である。工具係合部54は、酸素センサ1を排気管の取付部に取り付ける際に使用される取り付け工具と係合する。工具係合部54と雄ねじ部53との間の部位には、排気管の取付部を介したガス抜けを防止するための環状のガスケット11が嵌挿されている。係合部55は、後述する外筒3の先端部31と係合する。加締部56は、軸線L側先端方向に加締められた部位である。検出素子6の後端部66は、加締部56よりも後端側に突出している。
【0021】
主体金具5は、筒孔57内に、検出素子6を挿通させる。筒孔57と、検出素子6との間には、先端側から順に、パッキン12、支持部材13、パッキン14、充填部材15、スリーブ16、及びリング17が配置されている。主体金具5は、パッキン12、支持部材13、パッキン14、充填部材15、スリーブ16、及びリング17を介して検出素子6を保持する。具体的には、主体金具5は、筒孔57内に、段部59を備える。段部59は、筒孔57の先端側に設けられ、主体金具5の内周を軸線L側に向けて突出させた部位である。段部59には、金属製のパッキン12を介し、支持部材13が係止されている。支持部材13は、アルミナからなる筒状の部材で有り、内周には軸線L側に向けて突出させた段状の部位がある。支持部材13の段状の部位は、金属製のパッキン14を介し、検出素子6のフランジ部65における拡径部67と当接する。これにより支持部材13は検出素子6を支持する。充填部材15は、支持部材13の後端側に充填された、滑石粉末からなる部材である。スリーブ16は、アルミナ製で筒状部材である。スリーブ16は、充填部材15を支持部材13との間で挟むように、充填部材15の後端側に配置されている。
【0022】
リング17は、環状であり、スリーブ16の後端側に配置されている。主体金具5の加締部56を軸線L側先端方向に加締めることで、リング17を介し、スリーブ16が充填部材15に対して押しつけられている。加締部56が加締められることによって、主体金具5の段部59に係止された支持部材13に向けて検出素子6のフランジ部65が押圧されるよう、充填部材15が主体金具5の筒孔57内に圧縮充填されている。筒孔57の内周面と検出素子6の外周面との間の間隙は、充填部材15によって、気密に埋められる。このように、検出素子6は、主体金具5の加締部56と段部59との間において挟持された各部材を介し、主体金具5の筒孔57内で保持されている。
【0023】
プロテクタ4は、検出素子6の先端部78を覆い、酸素センサ1が排気管(図示略)に取り付けられた際に排気管内に露出する検出素子6の検出部64を、排気ガス中に含まれる水滴及び異物等の衝突から保護する。プロテクタ4は、外側プロテクタ41と内側プロテクタ45とからなる2重構造を有する。外側プロテクタ41は有底筒状をなし、開放された側(後端側)の周縁部が取付部52に溶接により接合される。内側プロテクタ45も同様に有底筒状をなし、外側プロテクタ41の内部に固定される。外側プロテクタ41及び内側プロテクタ45の外周面には、内部に排気ガスを導入し、検出素子6の検出部64へと導く導入口42、47が、各々設けられている。外側プロテクタ41及び内側プロテクタ45の底面には、内部に入り込んだ水滴及び排気ガスを排出するための排出口43、48が、各々設けられている。
【0024】
外筒3は、SUS304等のステンレス鋼からなる、軸線L方向に沿って延びる筒状部材である。外筒3は、主体金具5の後端側に組み付けられている。外筒3は、略中央より先端側を、後端側よりも大径に形成されている。外筒3の先端部31は、主体金具5の係合部55にはめ込まれ、外周側から係合部55に加締められている。先端部31の外周には、全周にわたってレーザ溶接が施されている。外筒3は、検出素子6の後端部66、セパレータ8及びグロメット9(後述)の外周を取り囲んでいる。
【0025】
外側端子75は、筒状に形成された先端部76と、先端部76から後端側へ向けて棒状に延びる後端部77とを有する。先端部76は、自身の内周面が検出素子6の後端部66の外周面と当接するように嵌め込まれている。先端部76は、切れ目を有して径方向に弾性的に撓むことができ、軸線L側に向かう付勢力によって検出素子6の後端部66との当接を維持する。これにより、外側端子75と検出電極部63とは電気的な接続を確保される。内側端子70も同様に、筒状に形成された先端部71と、先端部71から棒状に延びる後端部72とを有する。先端部71は、自身の外周面がリード部68と当接するように中空部60に嵌め込まれている。先端部71は切れ目を有して軸線L側に弾性的に撓むことができ、径方向の付勢力によってリード部68との当接を維持する。これにより、内側端子70と基準電極部62との電気的な接続が確保される。内側端子70の後端部72と、外側端子75の後端部77とには各々、リード線18の芯線が加締め接合されている。
【0026】
セパレータ8は、絶縁性セラミックスからなり、筒状に形成されている。セパレータ8は、検出素子6の後端部66よりも後端側に配置されている。セパレータ8は、複数の収容部82、及びフランジ部81を有する。
【0027】
複数の収容部82は、内側端子70の後端部72と、外側端子75の後端部77と、後述する2つの電極端子130(
図1では一方の電極端子130のみを示す)とを互いに分離して収容する。各収容部82はセパレータ8を軸線L方向に貫通しており、セパレータ8を挟んで先端側と後端側との間で大気連通が可能である。内側端子70の後端部72、及び外側端子75の後端部77の各々に接続された2本のリード線18は、後述するグロメット9の挿通孔92を介して酸素センサ1の外部に引き出され、電子制御装置(図示略)に接続されている。電子制御装置は、基準電極部62及び検出電極部63を介して固体電解質体61に対して通電可能である。
【0028】
フランジ部81は、セパレータ8の外周面に設けられた、径方向に突出する部位である。フランジ部81の配置位置の後端に相当する外筒3の外周面には、周方向の3カ所以上において内向きに突出する係合部32が形成されている。セパレータ8は、フランジ部81の後端側の面が係合部32に当接し、上方向への移動が規制されている。
【0029】
フランジ部81よりも先端側で、外筒3とセパレータ8との間の間隙には、保持金具85が配置されている。保持金具85は、筒状に形成された金属製の部材である。保持金具85は、自身の後端を内側に折り曲げて構成した支持部86を有する。保持金具85は、自身の内部に挿通されるセパレータ8のフランジ部81の先端向きの面を支持部86に係止させて、セパレータ8を支持している。この状態で、保持金具85が配置された部分の外筒3の外周面が加締められ、セパレータ8を支持した保持金具85が外筒3に固定されている。
【0030】
グロメット9は、フッ素ゴムからなり、セパレータ8の後端側に配置されている。グロメット9は、外筒3の後端側の開口33に嵌められて、開口33付近の外周が加締められることにより、外筒3に保持されている。グロメット9には、外筒3内に大気を導入するための連通孔91が、軸線L方向に貫通して形成されている。酸素センサ1では、連通孔91及びセパレータ8の収容部82を介し、外筒3内に大気を導入し、検出素子6内の基準電極69が大気に晒されるように構成されている。連通孔91内には、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂から形成された薄膜状のフィルタ部材87及びその留め金具88が挿入されており、水滴等の進入が防止されている。グロメット9には、リード線18、19を挿通するための5つの挿通孔92も、各々独立に形成されている(
図1では5つのうちの2つの挿通孔92を示す)。
【0031】
ヒータ100は、固体電解質体61を加熱して活性化させる。ヒータ100は、軸線L方向に延びる中空部102(
図2参照)を有する筒状の形状をなし、検出素子6の中空部60内に挿入されている。ヒータ100の先端部110は中空部60に当接している。ヒータ100の後端部120は中空部60から後端側に突出し、セパレータ8の収容部82内に配置されている。中空部60内の後端部の近傍においては、ヒータ100の外周面は、内側端子70の先端部71の内周面と当接している。
【0032】
図2に示すように、ヒータ100は、アルミナセラミック製で丸棒状の碍管101を芯棒とし、碍管101の外周に絶縁性の高いアルミナセラミック製のグリーンシート140を巻き付けた状態で焼成したものをセラミック基体105としている。グリーンシート140は、グリーンシート140の先端が碍管101の先端から1.0mmだけ後端側に配置された状態で、碍管101に巻き付けられている。セラミック基体105内には、タングステン系の発熱抵抗体141が埋設されている。グリーンシート140は2枚のシートからなり、発熱抵抗体141は2枚のシート間に、ヒータパターンとして形成され、焼成によって埋設される。発熱抵抗体141は、発熱抵抗体141の先端がグリーンシート140の先端から0.8mmだけ後端側に配置された状態で、グリーンシート140に埋没されている。発熱抵抗体141のヒータパターンは、ヒータ100の先端部110に配置される発熱体142と、発熱体142の両端各々に接続され、後端部120へ向けて延びる一対のリード部143とからなる。
図3に示すように、発熱体142は、軸線方向に延びる複数の延伸部142aを備え、複数の延伸部142aのうち隣りあう延伸部142a同士が連結部142bを介して接続されてなり、一対のリード部143の一端側の各々の端部145間を接続する細幅で蛇行形状(ミアンダ形状)に形成されている。一対のリード部143は、直線状に互いに平行に延びる。発熱体142のパターンはリード部143のパターンよりも通電抵抗を大きくするために断面積が小さく形成されている。一対のリード部143間に通電されると、主に発熱体142において発熱する。
【0033】
図2に示すように、ヒータ100のセラミック基体105の後端部120には、外表面上に2つの電極パッド150が形成されている。また、発熱抵抗体141の一対のリード部143は、各々、グリーンシート140内で電極パッド150の形成位置まで延びている。グリーンシート140には、2つの電極パッド150の形成位置各々に、軸線L方向に並ぶ2つのスルーホール144が各々形成されている。各スルーホール144には、メタライズインクが充填されている。電極パッド150とリード部143とは、スルーホール144を介し、電気的に接続されている。
【0034】
2つの電極パッド150には各々、電極端子130(
図1参照)がロー付けされている。
図1に示すように、2本のリード線19は電極端子130に接続される。2本のリード線19は、グロメット9の挿通孔92を介して酸素センサ1の外部に引き出され、電子制御装置(図示略)に接続されている。これにより、電子制御装置はヒータ100の発熱体142に通電可能となっている。
【0035】
本実施形態のヒータ100は、従来のヒータに比べ、消費電力を低減させ、且つ、昇温速度を速くするために、以下のような構成を有する。
図4に示すように、軸線L方向に直交するヒータ100の断面のうち、発熱体142を含む全ての断面について(
図2の矢印Bで示す範囲の断面)、中空部102の直径の最大値rと、セラミック基体105の直径の最大値Rとは、0.36≦r/R≦0.54の関係を満たす。中空部102を除いた、ヒータ100の軸線L方向に垂直な断面の面積Sは、4.40mm
2≦S≦5.31mm
2を満たす。
【0036】
[評価試験1]
酸素センサ1のヒータ100の消費電力が、従来のヒータに比べ低減しているか否かを確認する試験を、評価試験1として行った。中空部102の直径の最大値rと、セラミック基体105の直径の最大値Rとの組み合わせが互いに異なるサンプルを作製し、各サンプルに対して目標温度で加熱した場合の消費電力を測定した。作成したサンプルのr/Rの値(断面積Sの値)は各々、0.25(5.76mm
2)、0.36(5.31mm
2)、0.42(5.05mm
2)、0.48(4.72mm
2)、0.51(4.53mm
2)、及び0.54(4.40mm
2)である。目標温度として、750℃、900℃、及び1050℃の3種類の温度を設定した。750℃は、自動車等の排気管(図示略)内を流通する排気ガス中の酸素を検出する場合の、固体電解質体61の活性化温度を考慮した値である。試験結果を
図5及び
図6に示す。
図5において、縦軸は消費電力(W)を示し、横軸はr/Rを示す。
図5において、太線は0.36≦r/R≦0.54の関係を満たす範囲を示す。
図6において、縦軸は消費電力(W)を示し、横軸は断面積S(mm
2)を示す。
図6において、太線は4.40mm
2≦S≦5.31mm
2の関係を満たす範囲を示す。サンプル数は各30個、プロットした値は30個のサンプルの測定値の平均値である。
【0037】
図5に示すように、750℃、900℃、及び1050℃の何れの目標温度においても、r/Rの値が大きいほど、r/Rの値が小さい場合に比べ、消費電力が小さいことが確認された。従来のヒータのr/Rの値は、0.23から0.29の範囲である。ヒータ100は、0.36≦r/Rの関係を満たすことにより、従来のヒータに比べ消費電力を低減できることが確認できた。
【0038】
図6に示すように、750℃、900℃、及び1050℃の何れの温度においても、断面積Sの値が小さいほど、断面積Sの値が大きい場合に比べ、消費電力が小さいことが確認された。従来のヒータの断面積Sの値は、5.60mm
2から5.80mm
2の範囲である。ヒータ100は、S≦5.31mm
2を満たすことにより、従来のヒータに比べ消費電力を低減できることが確認できた。
【0039】
[評価試験2]
酸素センサ1のヒータ100の昇温速度を確認する試験を、評価試験2として行った。評価試験1と同様の、中空部102の直径の最大値rと、セラミック基体105の直径の最大値Rとの組み合わせが互いに異なるサンプルを作製し、各サンプルに対して昇温速度を測定した。初期温度を常温、目標温度を900℃とした場合の、ヒータ100の加熱を開始してから800℃に到達するまでの時間を昇温速度として測定した。温度は、物体から放射される熱エネルギーを温度分布として画像表示するサーモトレーサー(株式会社チノー:サーモビジョン CPA−8000)を用いて測定した。試験結果を
図7に示す。
図7において、縦軸は消費電力(W)を示し、横軸は加熱開始からの時間(s)、縦軸はヒータ100の表面温度(℃)を示す。サンプル数は各3個、プロットした値は3個のサンプルの測定値の平均値である。
【0040】
図7に示すように、何れの条件も、加熱開始後急峻に温度が上昇し、800℃を超えて900℃に近づくにつれ、温度変化が緩やかになった。r/Rの値が大きいほど、r/Rの値が小さい場合に比べ、昇温速度が速いことが確認された。同様に断面積Sの値が小さいほど、断面積Sの値が大きい場合に比べ、昇温速度が速いことが確認された。ヒータ100は、0.36≦r/Rの関係を満たすことにより、従来のヒータに比べ、800℃に達するのに要する昇温速度が4秒から5秒程度短くすることが可能であることが確認できた。同様に、断面積Sの値が小さいほど、断面積Sの値が大きい場合に比べ、昇温速度が速いことが確認された。ヒータ100は、S≦5.31mm
2を満たすことにより、従来のヒータに比べ、800℃に達するのに要する昇温速度が4秒から5秒程度短くすることが可能であることが確認できた。
【0041】
[評価試験3]
酸素センサ1のヒータ100の抗折強度を確認する試験を、評価試験3として行った。評価試験1と同様の、中空部102の直径の最大値rと、セラミック基体105の直径の最大値Rとの組み合わせが互いに異なるサンプルを複数個作製し、各サンプルに対してヒータ100が酸素センサ1に組み付けられた場合を想定した抗折強度を測定した。作成したサンプルのr/Rの値(断面積Sの値)は各々、0.25(5.76mm
2)、0.42(5.05mm
2)、0.48(4.72mm
2)、0.51(4.53mm
2)、及び0.54(4.40mm
2)である。具体的には、
図8に模式的に示すように、ヒータ100を治具200の孔に差し込み、ヒータ100の先端側を治具201の側面に接触させた。これにより、ヒータ100は、治具200及び201の2カ所で支持された。治具200及び201の間隔は、35mmとした。引張圧縮試験機にて、治具200から先端側に20mmの部位202に、ヒータ100が折れるまで力を加え、折れた時の力を、抗折強度(N)とした。試験結果を
図9及び
図10に示す。
図9において、縦軸は抗折強度(N)を示し、横軸はr/Rを示す。
図10において、縦軸は抗折強度(N)を示し、横軸は断面積S(mm
2)を示す。サンプル数は各30個、プロットした値は30個のサンプルの測定値の平均値である。
【0042】
過去の同様の試験により抗折強度が1.5N以下である場合には、製造過程で、焼成前の碍管101が折れやすいことが確認されている。このため、ヒータ100の抗折強度は1.5Nより大きいことが好ましい。
図9に示すように、r/Rが大きくなるほど、r/Rが小さい場合に比べ、抗折強度が小さくなることが確認された。r/R≦0.54であれば、抗折強度が1.5Nよりも大きくなることが確認された。
【0043】
図10に示すように、断面積Sが小さくなるほど、断面積Sが大きい場合に比べ、抗折強度が小さくなることが確認された。4.40mm
2≦Sであれば、抗折強度が1.5Nよりも大きくなることが確認された。
【0044】
[評価試験4]
酸素センサ1のヒータ100の耐熱衝撃性を確認する試験を、評価試験4として行った。発熱体142のうち、延伸部142aの幅w1と、隣り合う延伸部142a間の最短距離c1とが異なるサンプルを複数個作製し、各サンプルに対して過大な電圧を所定時間通電させた際に、ヒータ100にかかる応力を測定することで耐熱衝撃性を評価した。なお、いずれのサンプルにおいてもr/Rの値(断面積Sの値)は0.48(4.72mm
2)とし、発熱体142の抵抗値が6Ωとなるように設計している。また、試験時の通電条件は14V、9secである。なお、作成したサンプルの幅w1と最短距離c1は以下の通りである。また、ここでいう最短距離c1とは、それぞれの延伸部142aの対向する側面間における最短距離を意味する。
サンプル1:w1=0.32mm、c1=0.40mm
サンプル2:w1=0.32mm、c1=0.48mm
サンプル3:w1=0.32mm、c1=0.56mm
サンプル4:w1=0.34mm、c1=0.66mm
【0045】
試験結果を
図11に示す。
図11において、縦軸はヒータ100にかかる応力(MPa)を示し、横軸は最短距離c1を示す。なお、ヒータ100にかかる応力が230MPaを超過すると、ヒータ100にクラックが生じる危険性が高まる為、ここでは230MPaを上限値として耐熱衝撃性を評価している。換言すると、応力が230MPa以下であれば耐熱衝撃性が向上したと判断される。
図11に示すように、サンプル1〜3において、サンプル3のみが上限値を下回ることが確認された。また、サンプル3、4において、共に上限値を下回ることが確認された。これより、隣り合う延伸部142a間の最短距離c1が0.56mm以上であると、耐熱衝撃性が向上することが分かる。
【0046】
以上の評価試験1から4から、ヒータ100は、0.36≦r/R≦0.54の関係を満たすことにより、製造時における焼成前のセラミック基体の強度を維持しつつ、従来のヒータに比べ、消費電力及び昇温速度を改善していることが確認された。ヒータ100は、4.40mm
2≦S≦5.31mm
2を満たすことにより、製造時における焼成前のセラミック基体の強度を維持しつつ、従来のヒータに比べ、消費電力及び昇温速度を改善していることが確認された。また、発熱体142のうち、隣り合う延伸部142a間の最短距離c1が0.56mm以上であると、耐熱衝撃性が向上することが確認された。
【0047】
上記酸素センサ1において、中空部102、セラミック基体105、発熱体142、リード部143、及びヒータ100は、各々、本発明の第一中空部、セラミック基体、発熱体、リード部、及びヒータに相当する。中空部60、固体電解質体61、検出素子6、及び酸素センサ1は各々、本発明の第二中空部、固体電解質体、検出素子、及びガスセンサに相当する。基準電極部62及び検出電極部63は、本発明の一対の電極に相当する。
【0048】
本発明のヒータ及びガスセンサは、以上詳述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられてもよい。例えば、以下の(1)又は(2)の変形が適宜加えられてもよい。
【0049】
(1)酸素センサの各部材の形状及び材料は適宜変更されてよい。本発明は酸素センサ以外のガスセンサに適用されてもよい。ヒータは、ガスセンサに組み付けられる必要はない。ヒータは、0.36≦r/R≦0.54の関係を満たせば、4.40mm
2≦S≦5.31mm
2を満たさなくてもよい。
【0050】
(2)発熱体142及びリード部143の構成は適宜変更されてよい。例えば、発熱体142は、渦巻き状等他の形状であってもよい。また、延伸部は直線の他、蛇行していてもよい。連結部は延伸部の端部以外で接続されていてもよい。発熱体142及びリード部143は、セラミック基体に埋没されていればよい。このため、セラミック基体105は、丸棒状の碍管101を芯棒とし、碍管101の外周にグリーンシート140を巻き付けて形成される必要はない。碍管102の先端の位置に対するグリーンシート140の先端の位置は適宜変更可能である。例えば、グリーンシート140の先端は、碍管102の先端から0.5mmだけ後端側に配置されてもよい。グリーンシート140の先端の位置に対する発熱抵抗体141の先端の位置は適宜変更可能である。例えば、発熱抵抗体141の先端は、グリーンシート140の先端から0.5mmだけ後端側に配置されてもよい。