特許第6406788号(P6406788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406788
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20181004BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   H02K15/02 F
   H02K1/18 B
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-245095(P2014-245095)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-149884(P2015-149884A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年11月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-3486(P2014-3486)
(32)【優先日】2014年1月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】長井 亮
(72)【発明者】
【氏名】手塚 昇吾
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−127015(JP,A)
【文献】 特開平10−322945(JP,A)
【文献】 特表2003−529309(JP,A)
【文献】 特開2005−287134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/18
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心片にダミー片部を設けた拡大鉄心片を打ち抜き形成して積層し、前記ダミー片部を積層したダミー積層部を除去して積層鉄心を製造する方法において、
前記拡大鉄心片を整列して積層して、前記ダミー積層部と前記積層鉄心とを連続して備えた複合積層鉄心を形成する工程と、
前記複合積層鉄心を治具に載置して位置決めを行い、前記ダミー積層部を除去して前記各鉄心片同士を拘束する構成が存在しない状態にする工程と、
前記ダミー積層部が除去されて前記各鉄心片同士を拘束する構成が存在しない状態にされた前記積層鉄心の前記各鉄心片同士を接合する工程とを有し、
前記治具は、軸心を有する前記複合積層鉄心を軸心側から位置決めすることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
鉄心片にダミー片部を設けた拡大鉄心片を打ち抜き形成して積層し、前記ダミー片部を積層したダミー積層部を除去して積層鉄心を製造する方法において、
前記拡大鉄心片を整列して積層して、前記ダミー積層部と前記積層鉄心とを連続して備えた複合積層鉄心を形成する工程と、
前記ダミー積層部を除去して前記各鉄心片同士を拘束する構成が存在しない状態で、残った前記積層鉄心を治具に載置して位置決めを行う工程と、
前記ダミー積層部が除去されて前記各鉄心片同士を拘束する構成が存在しない状態にされた前記積層鉄心の前記各鉄心片同士を接合する工程とを有し、
前記治具は、軸心を有する前記積層鉄心を軸心側から位置決めすることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の積層鉄心の製造方法において、前記各鉄心片同士の接合は、前記積層鉄心の樹脂接合部に樹脂を充填して樹脂接合することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1記載の積層鉄心の製造方法において、前記ダミー片部は仮接合されていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1記載の積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心又は前記複合積層鉄心は、前記治具に載せる前に焼鈍されていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1記載の積層鉄心の製造方法において、前記治具は、載置台と該載置台に立設されたガイド部材とを有する搬送治具であることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1記載の積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は単位ブロック鉄心から形成されることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の積層鉄心の製造方法において、複数の前記単位ブロック鉄心を積層して一つの前記複合積層鉄心とすることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項9】
請求項7記載の積層鉄心の製造方法において、前記単位ブロック鉄心は、環状の積層鉄心を円周方向に分割した分割コアと、該分割コアに連接される前記ダミー積層部とを有して形成されることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1記載の積層鉄心の製造方法において、前記複合積層鉄心は、固定子積層鉄心と、該固定子積層鉄心の半径方向内側、半径方向外側、又はスロット内に形成された前記ダミー積層部とを有していることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1記載の積層鉄心の製造方法において、前記複合積層鉄心は、回転子積層鉄心と、該回転子積層鉄心の半径方向内側、半径方向外側、又は前記回転子積層鉄心に形成される貫通孔内に形成された前記ダミー積層部とを有していることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ダミー片部を設けた鉄心片を積層後、ダミー積層部を除去する積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層鉄心の製造方法としては、例えば、厚みが0.3mm以下の鉄心片を積層し、かしめなどで接合することが広く行われている。しかし、かしめによって接合すると、鉄心片が積層方向に導通することになり、渦電流損が発生してモータ性能が低下するという問題がある。
また、かしめ接合の場合、隣接する鉄心片のかしめを圧入して嵌合することになるので、
積層鉄心の表面にうねりが発生したり、真直度が低下する等、形状精度への影響もある。
【0003】
以上の問題を解決するために、特許文献1に記載のように(図17(A)、(B)参照)、鉄心片80に設けた貫通孔を積層方向に連通させた接合孔81に樹脂82を注入して硬化させることで、鉄心片80を積層状態で接合して積層鉄心83を製造する方法が提案されている。樹脂82は絶縁体であるので、隣接する鉄心片80が導通することなく、更にはかしめの影響による形状精度の低下もなくなる。
【0004】
しかしながら、特許文献1には、鉄心片80を打ち抜き積層する工程から樹脂82を注入するまでの工程や、搬送方法及び搬送形態については、何ら記載されていない。排出する鉄心片80を一枚ずつ搬送することは可能であるが、搬送が複雑になり、次工程での取扱に手間がかかり、作業性が悪いという問題がある。
また、鉄心片を一枚ずつ搬送するとしても、搬送手段で直接鉄心片を把持することになり、厚みの小さい鉄心片は変形する恐れがあり、製品の品質に影響を及ぼすという問題がある。
【0005】
以上の問題を解決するために、特許文献2(図18(A)、(B)参照)にあるように、
鉄心片91に連結片部92を介して連結されたダミー片部93を設けた複合鉄心片95を打ち抜き形成し、この複合鉄心片95をダミー片部93に設けたかしめ93aを介してかしめ積層して、製品となる積層鉄心96、連結部97及びダミー積層部98を有する複合積層鉄心99を形成する。そして、積層鉄心96を側面に設けた溶接部100で接合し、
連結部97でダミー積層部98を切断し、積層鉄心96を製造する方法を適用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2003−529309号公報
【特許文献2】特開平10−127015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献2記載の方法であれば、積層鉄心96にかしめ93aが形成されないので、
鉄心片91間の導通はないが、かしめ接合されたダミー積層部98を残したまま積層鉄心96を接合しているため、かしめ部の精度が製品に反映されてしまう。かしめは一般に上層の鉄心片のかしめ突起を下層の鉄心片のかしめ孔部に圧入して嵌合するので、かしめ93aによる形状精度への影響が積層鉄心96に残ってしまう。また、溶接や接着等別の手段を用いる場合でも、仮接合時の精度が製品形状の精度に繋がるため、ダミー片部93の接合時から高い精度の接合が要求される。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、積層鉄心に付属して設けたダミー積層部の精度に関係なく、位置精度がよい状態で、上下の鉄心片が接合された積層鉄心を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う本発明の第1の発明に係る積層鉄心の製造方法は、鉄心片にダミー片部を設けた拡大鉄心片を打ち抜き形成して積層し、前記ダミー片部を積層したダミー積層部を除去して積層鉄心を製造する方法において、
前記拡大鉄心片を整列して積層して、前記ダミー積層部と前記積層鉄心とを連続して備えた複合積層鉄心を形成する工程と、
前記複合積層鉄心を治具に載置して位置決めを行い、前記ダミー積層部を除去して前記各鉄心片同士を拘束する構成が存在しない状態にする工程と、
前記ダミー積層部が除去されて前記各鉄心片同士を拘束する構成が存在しない状態にされた前記積層鉄心の前記各鉄心片同士を接合する工程とを有し、
前記治具は、軸心を有する前記複合積層鉄心を軸心側から位置決めする。
【0010】
前記目的に沿う本発明の第2の発明に係る積層鉄心の製造方法は、鉄心片にダミー片部を設けた拡大鉄心片を打ち抜き形成して積層し、前記ダミー片部を積層したダミー積層部を除去して積層鉄心を製造する方法において、
前記拡大鉄心片を整列して積層して、前記ダミー積層部と前記積層鉄心とを連続して備えた複合積層鉄心を形成する工程と、
前記ダミー積層部を除去して前記各鉄心片同士を拘束する構成が存在しない状態で、残った前記積層鉄心を治具に載置して位置決めを行う工程と、
前記ダミー積層部が除去されて前記各鉄心片同士を拘束する構成が存在しない状態にされた前記積層鉄心の前記各鉄心片同士を接合する工程とを有し、
前記治具は、軸心を有する前記積層鉄心を軸心側から位置決めする。
【0011】
第1、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記各鉄心片同士の接合は、前記積層鉄心の樹脂接合部に樹脂を充填して樹脂接合するのが好ましい。また、前記ダミー片部は仮接合されるのが好ましい。
前記ダミー片部と前記鉄心片は、直接連結されていてもよいし、連結片部を介して連結されていてもよい。連結片部を介して連結する場合、積層した連結片部(即ち、連結部)は、ダミー積層部と積層鉄心(本体)を連結する。
なお、ここでいう連結とは、半抜き又は一度切り離した部分を再度嵌め込む場合、所謂プッシュバックを含み、取扱中に分離しない程度の結合力があればよい。
また、前記積層鉄心又は前記複合積層鉄心は、前記治具に載せる前に焼鈍されているのが好ましい。樹脂接合した積層鉄心は焼鈍できないが、焼鈍による影響がない接合部(かしめや溶接)で仮接合した積層鉄心であれば、搬送も容易で生産効率もよく、複数の積層鉄心(又は複合積層鉄心)を焼鈍することができる。
【0012】
また、第1、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記治具は、載置台と該載置台に立設されたガイド部材とを有する搬送治具であるのが好ましい。この搬送治具を使用することによって、積層鉄心又は複合積層鉄心の搬送が容易となる。
【0013】
第1、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は単位ブロック鉄心から形成されてもよい。
ここで、複数の前記単位ブロック鉄心を積層して一つの前記複合積層鉄心としてもよい。
これによって、金型内で転積するのではなく、金型外で単位ブロック鉄心を転積することができるので、金型装置の構造が簡潔になり、製造コストが減少する。更に、一個当たりの単位ブロック鉄心の重量が減るので、搬送が容易となる。
【0014】
また、前記単位ブロック鉄心は、環状の積層鉄心を円周方向に分割した分割コアと、該分割コアに連接される前記ダミー積層部とを有して形成されてもよい。これによって、板取りを向上させることができる。
第1、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記複合積層鉄心は、固定子積層鉄心と、該固定子積層鉄心の半径方向内側、半径方向外側、又はスロット内に形成された前記ダミー積層部とを有することもできる。
第1、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記複合積層鉄心は、回転子積層鉄心と、該回転子積層鉄心の半径方向内側、半径方向外側、又は前記回転子積層鉄心に形成される貫通孔内に形成された前記ダミー積層部とを有することもできる。貫通孔としては、永久磁石を挿入、固定する磁石挿入孔や、回転子の重量を軽減するための孔、冷却媒体を通過させて回転子積層鉄心を冷却するための孔等がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る積層鉄心の製造方法においては、ダミー片部を設けた拡大鉄心片を整列させて積層して複合積層鉄心を形成し、ダミー積層部を除去した後に積層鉄心の接合を行うので、搬送時に鉄心片ではなく、ダミー片部を把持することができ、搬送中に鉄心片が変形するのを防止できる。
また、拡大鉄心片をダミー片部によって仮接合して、一つの複合積層鉄心を形成することで、複合積層鉄心の取扱が容易となり、作業性も向上する。ダミー積層部を除去した後に積層鉄心の接合を行うので、積層鉄心(本体部)がダミー片部の接合時に発生する応力による歪やうねりの影響を受けにくい。
更に、ダミー積層部の除去を行う前後に、複合積層鉄心又は積層鉄心を治具に載置して、
位置決めを行い、鉄心片同士を接合する(例えば、樹脂接合部に樹脂を充填する)ので、
完成した積層鉄心の精度が増す。
【0016】
ここで、ダミー積層部を付けたまま複合積層鉄心を治具に載せると、その後の処理の作業性がよい。また、ダミー積層部を除去した状態で、積層鉄心を治具に載せるとかしめによる影響がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図2】同積層鉄心の製造方法の説明図である。
図3】同積層鉄心の製造方法の説明図である。
図4】同積層鉄心の製造方法によって製造された積層鉄心の斜視図である。
図5】同積層鉄心の製造方法において、特に、樹脂接合の工程を示す説明図である。
図6】(A)は軸心にガイド部材を挿入しない状態での複合積層鉄心の一部断面図、(B)は軸心にガイド部材を挿入した状態での複合積層鉄心の一部断面図である。
図7】(C)は軸心にガイド部材を挿入しかつダミー積層部を除去した状態の積層鉄心の一部断面図、(D)は更に樹脂接合部に樹脂を充填した状態の積層鉄心の一部断面図である。
図8】(E)は軸心にガイド部材を挿入しかつダミー積層部を除去しない状態の複合積層鉄心の一部断面図、(F)は同複合積層鉄心のダミー積層部を除去した状態の一部断面図である。
図9】(A)〜(D)はそれぞれ第1〜第4例に係る連結部の説明図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図11】(A)、(B)は本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図12】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第4、第5の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図13】本発明の第6の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法によって製造された積層鉄心の平面図である。
図14】本発明の第7の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図15】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第8、第9の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図16】本発明の第10の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法によって製造された積層鉄心の斜視図である。
図17】(A)、(B)はそれぞれ従来例に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図18】(A)、(B)はそれぞれ他の従来例に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法は、打ち抜き形成した鉄心片11を積層し、各鉄心片11を樹脂接合して積層鉄心19を製造する方法である。まず、図示しない金型装置によって、拡大鉄心片10を打ち抜き形成する。
この拡大鉄心片10は、鉄心片11と、この鉄心片11に連結片部12を介して連結されるダミー片部13とを有している。また、鉄心片11は環状のヨーク片部14とその内側に形成される複数の磁極片部15とを有している。
以下の実施の形態ではダミー片部を仮接合する場合について説明するが、単に拡大鉄心片を整列させて積層し、複合積層鉄心を形成する場合もある。
【0019】
各ダミー片部13の中央位置には半抜きかしめ又はVかしめ等からなるかしめ16が形成され、ヨーク片部14には円周方向に均等角度で複数の樹脂孔17が形成されている。複合積層鉄心18は複数の拡大鉄心片10をかしめ16を介して積層連結(仮接合)して構成され、製品本体となる積層鉄心19と、積層鉄心19に連結部20を介して、半径方向外側に連結されるダミー積層部21とを有している。即ち、拡大鉄心片10は、ダミー片部13でのみ接合されており、鉄心片11同士は接合されずに積層されただけの状態になっている。なお、積層鉄心19は鉄心片11が積層され、連結部20は連結片部12が積層され、ダミー積層部21はダミー片部13が整列して積層して形成されている。
【0020】
かしめ16によって上下隣り合う拡大鉄心片10が連結されて構成される複合積層鉄心18は、図2に示すように、搬送治具(治具の一例)23に載置する。搬送治具23は略円形の載置台24と載置台24の中央に設けられたガイド部材の一例である芯材25とを有している。芯材25は上端に面取り25aが形成されているが、その他の部分の芯材25は断面円形又は断面多角形となって、積層鉄心19の磁極部26の内側端部27に当接している。これによって、図2図3に示すように、複合積層鉄心18及び積層鉄心19の軸心の位置決めができる。ここで、26aはヨーク片部14が積層されたヨーク部を示す。また、芯材の代わりに位置決め部材を使用してもよい。
【0021】
そして、載置台24の上には、複合積層鉄心18の隣り合う磁極部26の間にあって、磁極部26に当接し、載置台24と複合積層鉄心18(及び積層鉄心19)の回り止めを行う位置決め部材(図示せず)が対向配置位置に設けられている。
また、載置台24の周囲で、複合積層鉄心18のダミー積層部21の直下位置には、ダミー積層部21及び連結部20が遊嵌する切欠き28が形成されている。拡大鉄心片10を芯材25を用いて位置決めを行って積層することによって、樹脂孔17が上下に連結した断面円形の樹脂接合部29を形成する。なお、ダミー積層部21が積層鉄心19の半径方向外側以外の部分(スロット内等)に設けられている場合には、載置台24に貫通孔が設けられていてもよい。
【0022】
次に、図3に示すように、連結部20の位置、正確には連結部20の半径方向内側で、連結部20を積層鉄心19から分離し、これによって、ダミー積層部21によって拘束されていた各鉄心片11が解放され、芯材25に沿って鉄心片11が揃い、より精度の高い積層鉄心19となる。なお、30は連結部20の分離跡を示す。
【0023】
そして、図4に示すように、樹脂接合部29に樹脂29aを充填して、各鉄心片11を上下方向に連結する。樹脂接合部29の断面積Sと、樹脂接合部29の個数nとの積は、鉄心片11の接合強度に比例するので、樹脂29aの強度を考慮して、適正値に定める。
【0024】
ここで、積層鉄心19の樹脂封止(樹脂接合)は、例えば、図5に示すように、搬送治具23に積層鉄心19を載せた状態で、上型31と下型32の間に搬送し、上型31と下型32で積層鉄心19を挟持して行う。そして、上型31に形成された樹脂溜めポット33から樹脂29aを押し出し、ランナー34を介して樹脂接合部29に樹脂29aを充填する。なお、下型32から樹脂29aを樹脂接合部29に充填することも可能である。樹脂29aは熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)でもよいし熱可塑性樹脂であってもよい。
【0025】
続いて、図6(A)、(B)、図7(C)、(D)、図8(E)、(F)を参照しながら、前記実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の作用効果について更に詳細に説明する。
拡大鉄心片10を金型装置によって製造し、かしめ16で積層した時点では、図6(A)に示すように、かしめ16の位置は垂線上にあるが、複合積層鉄心18を形成する各拡大鉄心片10の内側端部37及び外側端部38の位置は揃っていない。また、拡大鉄心片10の表面にはうねり39が発生している。
【0026】
次に、図6(B)に示すように、位置合わせ用の芯材25を挿入して位置決めを行うと、
各拡大鉄心片10の内側端部37は揃うが、拡大鉄心片10の外側はかしめ16で拘束されるので、拡大鉄心片10の表面のうねり39は増大する。
【0027】
次に、図7(C)に示すように、連結部20の基部でダミー積層部21を切り落とすと、
かしめ16による拘束から解放されて、拘束によって発生しているうねり39が軽減される。この状態で、図7(D)に示すように、樹脂接合部29に樹脂29aを充填する。これによって、各鉄心片11が固着し、積層鉄心19が完成する。
【0028】
ところが、図8(E)に示すように、複合積層鉄心18のダミー積層部21を除去しないで、芯材25を複合積層鉄心18の中心部に入れて複合積層鉄心18の位置決めをし、そのまま樹脂接合部29に樹脂29aを入れて、各拡大鉄心片10を固定すると、複合積層鉄心18の外側が、ダミー積層部21で拘束されているので、図8(F)のように、ダミー積層部21を除去しても、積層鉄心19を形成する鉄心片11はかしめ16により拘束されていた状態のまま樹脂接合部29の樹脂29aで接合されて、うねり39はそのまま残り、内側端部37の凹凸も解消しない。従って、真直性が悪く、寸法精度の悪い積層鉄心が形成されるが、本発明方法によってこれらの問題点が解消されている。
【0029】
前記実施の形態においては、複合積層鉄心18を搬送治具23に載せた後、ダミー積層部21を除去し、樹脂接合を行ったが、複合積層鉄心18のダミー積層部21を連結部20で分離した後、残った積層鉄心19を搬送治具23に載せることもできる。この場合、搬送治具23の載置台24には、各鉄心片11を所定角度に保つ位置決め部材(ガイド部材)が設けられている。これによって、位置決めされて積み重ねられた鉄心片11の真直性が確保され、かつ表面にうねりの発生もないので、上型31及び下型32で挟持して、樹脂接合部29に樹脂29aを充填することができる(以下の実施の形態においても同じ)。
【0030】
次に、図9(A)〜(D)に、ダミー積層部21を積層鉄心19に連結する連結部20及び連結片部12について説明する。なお、これらの変形例は、以上の実施の形態だけでなく、以下の実施の形態においても適用可能である。
第1の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法によって用いられる複合積層鉄心18において、連結部20は平面視して単なる矩形状をしていたが、図9(A)に示す第1例のように、連結部20(連結片部12)の切断位置に幅狭部42を形成する。これによって、連結部20の切断が容易となり、その位置も決定される。
【0031】
図9(B)には、第2例に係る連結部20(連結片部12)の形状が記載されているが、
連結部20の基部(正確には各連結片部12の基部)に薄肉部43が形成されている。この薄肉部43の形成は、コイニング加工によって行う。これによって、ダミー積層部21の除去(切断)が薄肉部43で行え、分断処理がより容易となる。
【0032】
図9(C)には、第3例に係る連結部20(連結片部12)を示すが、連結片部12の基部44に、鉄心片11に嵌入するプッシュバック部45が設けられている。このプッシュバック部45は連結片部12の基部44をコ字状に半抜きし、連結片部12の基部44が部分的に鉄心片11に連結している状態とした後、上下から基部44とその周囲を平押しして、基部44とその周囲の鉄心片11のレベルを一致させて形成される。プッシュバック部45の形成は、連結片部12を一度完全に切り離した後押し戻して再嵌入させてもよい。プッシュバック部45の形状は、テーパー、逆テーパー等様々な形状を適用できる。
ダミー積層部21はプッシュバック部45に少しの荷重を加えることで、積層鉄心19から分離される。
なお、図9(D)に示す第4例のように、連結片部12を設けずに、鉄心片11とダミー片部13を直接連結してもよい。
なお、連結部の形状に限定はなく、ダミー片部13を鉄心片11にプッシュバックするものも含む。
以上の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法において、打ち抜き形成された後積層して形成された複合積層鉄心18(又は積層鉄心19)は、搬送治具23に載せる前に、又は搬送治具23に載せた後で、かつ樹脂封止の前に焼鈍されていることが好ましい。これによって、内部に溜まった残留応力の除去ができる(以下の実施の形態においても同じ)。
【0033】
図10には本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を示すが、製造される分割コア46(積層鉄心の一例)は、単位ブロック鉄心46aからダミー積層部21を除去して形成され、この単位ブロック鉄心46aは、図1に示すように複合積層鉄心18を、
円周方向に分割した形状に形成される。この単位ブロック鉄心46aは分割ヨーク部47と、分割ヨーク部47の内側に形成される磁極部48と、分割ヨーク部47の外側に連結部20を介して接合されるダミー積層部21とを有し、所定個数の分割コア46を環状に並べて、環状積層鉄心とし一つのモータ等に使用する固定子積層鉄心を形成する。
【0034】
この単位ブロック鉄心46aを位置決めする場合は、それぞれダミー積層部21を有する所定個数の単位ブロック鉄心46aを環状に並べて、第1の実施の形態に係る複合積層鉄心18と同一の方法で搬送治具23上に位置決めするのが好ましい。この場合、環状に並べた単位ブロック鉄心46aの分割ヨーク部47の外側を位置決めする位置決め部材を搬送治具23に設けておくのが好ましい。
【0035】
搬送治具23上に位置決めした複数の単位ブロック鉄心46aから、ダミー積層部21を除去し、各分割鉄心片49を自由状態とした後、樹脂接合部29に樹脂を充填して、各分割鉄心片49の固定を行い、分割コア46が完成する。
【0036】
続いて、図11(A)、(B)を参照しながら本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。この実施の形態においては、複数の単位ブロック鉄心50を製造し、この単位ブロック鉄心50を複数重ねて一つの複合積層鉄心18を形成している。
単位ブロック鉄心50は、単位ブロック鉄心片50aを積層して形成され、積層鉄心本体51とその周囲に形成される単位連結部52及び単位ダミー積層部53とを有している。
この単位ブロック鉄心50の製造方法は、複合積層鉄心18と同様であるが、全体の厚みが薄くなって、持ち運びが容易となっている。
【0037】
この単位ブロック鉄心50は、90度角度を変えて4の単位ダミー積層部53を有しているが、その内の一つの単位ダミー積層部53(以下、53aと称する)は他の単位ダミー積層部53と異なる形状(例えば、大きさが異なる)をしており、これによって、薄板条材からの打ち抜き角度位置が判る。従って、図11(B)に示すように、複数の単位ブロック鉄心50を重ねる場合は、異なる形状の単位ダミー積層部53aの位置を確認しながら、単位ブロック鉄心50の転積を行うことができる。
【0038】
この状態で、まず搬送治具23に積層された単位ブロック鉄心50(複合積層鉄心18)を搭載し、積層された単位ダミー積層部53、53aを除去し、上型と下型の間に位置決めし、上型と下型で積層状態の単位ブロック鉄心50を挟持し、樹脂接合部29に樹脂を充填する。これによって、より高さの均一な積層鉄心19が形成される。
【0039】
次に、図12(A)、(B)、図13を参照しながら、本発明の第4〜第6の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。
図12(A)に示すように、複合積層鉄心56は、回転子積層鉄心(本体)55の中央に形成された軸孔57(即ち、回転子積層鉄心55の半径方向内側)に連結部58を介して複数のダミー積層部59が軸対称に形成されている。なお、ダミー積層部は回転子積層鉄心55の半径方向外側に設けてもよい。更に、図12(B)に示すように、磁石挿入孔(貫通孔の一例)60内にダミー積層部59aを設けてもよい。また、図13に示すように、重量軽減用(又は冷却用)の貫通孔63aにダミー積層部59bを設けてもよい。ここで、ダミー積層部59a、59bは、磁石挿入孔60、貫通孔63aとそれぞれ同一サイズとしているが、ダミー積層部は、磁石挿入孔60や貫通孔63aより小さいサイズであってもよい。
ダミー積層部59、59a、59bはかしめ積層する場合としない場合があり、いずれも本発明が適用される。
【0040】
図12(A)に示す回転子積層鉄心55においては、半径方向外側領域に複数の磁石挿入孔60を備えており、この磁石挿入孔60に永久磁石を入れて樹脂を充填するので、磁石挿入孔60が樹脂接合部の役割を果たす。
従って、複合積層鉄心56を形成する拡大鉄心片61を薄板条材(磁性鋼板)から打ち抜き形成し、ダミー積層部59の中央に設けられたかしめ62を介して、拡大鉄心片61をかしめ積層して、複合積層鉄心56を形成する。
なお、磁石挿入孔60のみでは樹脂接合部としての強度が不足する場合や、磁石挿入孔60が設けられている以外の部分でも接合したい場合は、別途貫通孔を設けて樹脂を充填してもよい。
【0041】
次に、この複合積層鉄心56を搬送治具に載せる。この場合、搬送治具は載置台とガイド部材(位置決め部材)からなって、位置決め部材によって、複合積層鉄心56の半径方向外側端部の複数箇所又は軸孔57を位置決めし、載置台の上に固定配置する。そして、磁石挿入孔60に所定の永久磁石(未磁化)を入れた後、下型と上型の間に位置決め配置して押圧し、磁石挿入孔60に樹脂を充填する。
【0042】
なお、ダミー積層部59は永久磁石を磁石挿入孔60に入れる前、又は入れた後に除去する。これによって、回転子積層鉄心55を構成する各鉄心片は自由状態となり、位置決め部材によって、その位置が決定される。これによって、回転子積層鉄心55の真直性が増す。樹脂を磁石挿入孔60に充填すると、回転子積層鉄心55を構成する鉄心片は固定される。また、図12(A)に示すように、ダミー積層部59(ダミー片部)の連結部58(連結片部)が回転子積層鉄心55(鉄心片本体)に接続される部分に溝部58aを形成することもでき、これによって、容易にダミー積層部59を除去できる。
【0043】
図14に本発明の第7の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法によって製造される複合積層鉄心76を示す。この複合積層鉄心76は固定子積層鉄心を有し、周囲に電動機のケース等にボルト等で固定するための貫通孔77が設けられ、この貫通孔77を閉塞する半抜き状態のダミー片部にかしめ78が設けられて、各鉄心片79を仮固定している。この実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、搬送治具23にこの複合積層鉄心76を搭載し、ダミー片部からなるダミー積層部を除去してから、樹脂接合部29に樹脂を充填する。
【0044】
続いて、図15に示す本発明の第8、第9の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。図15(A)に示す第8の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法では、積層鉄心63の周囲に連結部20を介して設けられたダミー積層部64の各ダミー片部65の接合に溶接66を用いている。この溶接66はかしめ16の代わりに使用するもので、その他は第1の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法と同一であるので省略する。
また、図15(B)に示す第9の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法では、各ダミー片部70に設けた貫通孔71にピン72を挿入してダミー片部70を仮接合している。その他、ダミー片部の接合には、接着材等様々な接合方法を適用することができる。
【0045】
図16を参照しながら、本発明の第10の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。
積層鉄心67の製造は、基本的には第1の実施の形態と同様であるが、樹脂接合部68を積層鉄心67の外周端部69に形成している。樹脂封止時は、この樹脂接合部68の外側を囲む金型を用意し、樹脂接合部68を閉じた空間として樹脂封止を行う。
【0046】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、例えば、第1〜第10の実施の形態及び部分的な変形例を組み合わせて、本発明を形成することもできる。
積層鉄心(即ち、各鉄心片)の接合は、樹脂接合に限らず、溶接又は接着等であってもよい。
かしめの種類はVかしめ、半抜きかしめ等があるが、他のかしめであってもよい。固定子積層鉄心において、ダミー片部の接続位置は、鉄心片の外形部分(例えば、半径方向内側、半径方向外側、スロット内、又は貫通孔(ボルト孔))であれば、特に限定されないが、ダミー積層部の除去のし易さ、モータ特性への影響が少ない等を考慮して適宜設定する。
【符号の説明】
【0047】
10:拡大鉄心片、11:鉄心片、12:連結片部、13:ダミー片部、14:ヨーク片部、15:磁極片部、16:かしめ、17:樹脂孔、18:複合積層鉄心、19:積層鉄心、20:連結部、21:ダミー積層部、23:搬送治具、24:載置台、25:芯材、
25a:面取り、26:磁極部、26a:ヨーク部、27:内側端部、28:切欠き、29:樹脂接合部、29a:樹脂、30:分離跡、31:上型、32:下型、33:樹脂溜めポット、34:ランナー、37:内側端部、38:外側端部、39:うねり、42:幅狭部、43:薄肉部、44:基部、45:プッシュバック部、46:分割コア、46a:単位ブロック鉄心、47:分割ヨーク部、48:磁極部、49:分割鉄心片、50:単位ブロック鉄心、50a:単位ブロック鉄心片、51:積層鉄心本体、52:単位連結部、
53、53a:単位ダミー積層部、55:回転子積層鉄心、56:複合積層鉄心、57:軸孔、58:連結部、58a:溝部、59、59a、59b:ダミー積層部、60:磁石挿入孔、61:拡大鉄心片、62:かしめ、63:積層鉄心、63a:貫通孔、64:ダミー積層部、65:ダミー片部、66:溶接、67:積層鉄心、68:樹脂接合部、69:外周端部、70:ダミー片部、71:貫通孔、72:ピン、76:複合積層鉄心、77:貫通孔、78:かしめ、79:鉄心片

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18