特許第6406790号(P6406790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406790
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】美容器具
(51)【国際特許分類】
   A61H 15/00 20060101AFI20181004BHJP
   A61F 7/03 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   A61H15/00 310C
   A61F7/08 332R
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-550916(P2015-550916)
(86)(22)【出願日】2014年11月25日
(86)【国際出願番号】JP2014081005
(87)【国際公開番号】WO2015080068
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2017年9月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-247736(P2013-247736)
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−285129(JP,A)
【文献】 特開平04−061856(JP,A)
【文献】 特開2011−048374(JP,A)
【文献】 特開2008−036247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 15/00
A61F 7/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に接触させる筒状の側壁部を有するローラーと、
該ローラーを回転可能に支持するローラー受け部を有するハンドルと、
該ハンドルに内蔵され、電力を供給するオン状態と電力を遮断するオフ状態とを切り替え可能に構成された電源部と、
上記側壁部に熱的に接触し、上記オン状態において発熱するシート状発熱体とを有することを特徴とする美容器具。
【請求項2】
上記シート状発熱体は、筒状に巻き回された状態で上記ローラーの内部空間に配置されると共に、上記シート状発熱体自身の弾性力により上記側壁部の内表面に向けて付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の美容器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の美容のために用いる美容器具に関する。
【背景技術】
【0002】
肌の美容を目的とする美容器具の中で、加温されたローラーを肌に押し当てつつ転がして用いる美容器具がある。この美容器具は、ローラーにより押圧される作用と、肌を温める作用との双方の作用により、肌の血行を促進させることができる。上記美容器具は、肌のしわやたるみ、あるいは目元のくま等を改善する目的で用いられる。
【0003】
上記美容器具の例として、特許文献1には、回転可能に設置する肉厚ゲルマニウム製のローラー本体と、ローラー本体を保持する把持部材と、ローラー本体内部に配置したヒーターとを有するローラーマッサージ器が開示されている。
【0004】
また、近年では、例えば旅行や出張等の外出時に携帯できるような、携帯性に優れた上記美容器具が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−36247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のローラーマッサージ器は、肌に接触するローラー本体部とヒーターとの間に、パイプ及び保持部材の2つの部材が介在しており、熱容量が大きい。それ故、ローラー本体部を所望の温度まで加温するために比較的大きな電力を必要とするという問題がある。
【0007】
一方、携帯性を高める観点からは、小型かつ軽量な美容器具が好ましい。しかしながら、特許文献1のローラーマッサージ器は、比較的大きな電力を必要とするため、電源部の小型化及び軽量化が困難である。それ故、携帯して使用する用途には適さない。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、携帯性に優れた美容器具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
皮膚に接触させる筒状の側壁部を有するローラーと、
該ローラーを回転可能に支持するローラー受け部を有するハンドルと、
該ハンドルに内蔵され、電力を供給するオン状態と電力を遮断するオフ状態とを切り替え可能に構成された電源部と、
上記側壁部に熱的に接触し、上記オン状態において発熱するシート状発熱体とを有することを特徴とする美容器具にある。
【発明の効果】
【0010】
上記美容器具は、上記側壁部に熱的に接触し、上記オン状態において発熱するシート状発熱体(以下、「発熱体」と省略することがある。)を有している。そのため、上記発熱体からの熱を上記側壁部に効率よく伝達することができ、上記側壁部を比較的低い消費電力で十分に加温することができる。その結果、上記美容器具における電源部の小型化及び軽量化を容易に行うことができ、ひいては美容器具全体の小型化及び軽量化を容易に行うことができる。
【0011】
以上のように、上記美容器具は、小型化及び軽量化を容易に行うことができる。それ故、上記美容器具は、優れた携帯性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例における、美容器具の斜視図。
図2】実施例における、美容器具の部品展開図。
図3】実施例における、美容器具を電源ボタン側から見た平面図。
図4図3のIV−IV線矢視断面図。
図5図4のV−V線一部矢視断面図。
図6】実施例における、シート状発熱体として用いた発熱フィルムの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記美容器具において、熱的に接触とは、発熱体の少なくとも一部が側壁部の内表面に直接接触している状態に限らず、発熱体と側壁部との間に熱抵抗の小さいフィルム状部材や高い熱伝導率を有する部材が介在している状態を含む。
【0014】
また、上記シート状発熱体は、筒状に巻き回された状態でローラーの内部空間に配置されると共に、発熱体自身の弾性力により側壁部の内表面に向けて付勢されていることが好ましい。この場合には、発熱体が上記弾性力により側壁部側へ押し付けられるため、側壁部等の内表面と発熱体との接触面積がより広くなり易い。そのため、発熱体から側壁部への熱の伝達効率をより向上させることができ、側壁部をより小さな消費電力で十分に加温することができる。それ故、上記美容器具は、より優れた携帯性を有するものとなりやすい。
【0015】
また、この場合には、発熱体を側壁部側へ押し付けるための構造をローラー内に設ける必要がないため、ローラーの構造をより簡素にすることができる。その結果、上記美容器具全体の生産性をより向上させることができる。
【0016】
また、発熱体は側壁部の内表面における略全面と熱的に接触していることが好ましい。この場合には、側壁部の内表面における全面を発熱体からの熱伝達に利用することができる。そのため、発熱体から側壁部への熱の伝達効率がほぼ最大となり、側壁部をより小さな消費電力で十分に加温することができる。その結果、上記美容器具は、より優れた携帯性を有するものとなる。
【0017】
また、上記側壁部の両端には端板部が配置されており、端板部はローラーの内部空間側に立設された発熱体規制部を有しており、発熱体規制部と側壁部との間にシート状発熱体の端部が配されていてもよい。この場合には、例えば発熱体の自重や振動等によって発熱体が側壁部から離れる方向に変形しようとする場合に、発熱体の端部が上記発熱体規制部と上記側壁部との間に規制される。これにより、発熱体と側壁部との間に生じる隙間が過度に大きくなることを抑制でき、ひいては側壁部の加温が不十分となることを抑制できる。その結果、上記美容器具は、使用者に優れた美容効果を安定して体感させることができる。
【0018】
また、端板部はシート状発熱体と電気的に接続されたローラー側電極をローラーの外側に有しており、ローラー受け部は、電源部と電気的に接続されたハンドル側電極を有しており、ハンドル側電極とローラー側電極とが互いに接触していてもよい。この場合には、発熱体は、ローラー側電極及びハンドル側電極を含む電流経路により、電源部と電気的に接続される。そして、発熱体は、電源部からの電力供給を受けるための配線をローラーの外部まで伸ばす必要がない。それ故、ローラーは、上記配線のねじれ等により回転を規制されることなく、自由に回転することができる。その結果、上記美容器具は、使用者にとってより扱い易いものとなる。
【0019】
また、ハンドルは略棒状を呈しており、一対の上記ローラー受け部は上記ハンドルの端部に立設されており、ローラーは、その回転軸をハンドルの長手方向に直交する方向に向けた状態で一対のローラー受け部に支持されていてもよい。この場合には、使用者は、ハンドルを往復移動させることにより、肌を押圧しつつ肌に押し当てたローラーを容易に回転させることができる。
【0020】
また、この場合には、側壁部におけるハンドルに対面する部分、すなわちハンドルが障害となって肌に接触させることができない部分の面積が狭くなり、肌と接触可能な部分の面積を相対的に広くすることができる。そのため、使用者は、ローラーを肌に接触させる際の美容器具の姿勢をより自由に選択することができる。以上の結果、上記美容器具は、使用者にとってより扱い易いものとなる。
【0021】
また、一対のローラー受け部はハンドルの長手方向に対して斜め方向に向かって立設されており、ローラーの側壁部の少なくとも一部がハンドルよりも外方まで膨出していてもよい。すなわち、ローラーの回転軸方向から見たときに、一対のローラー受け部がハンドルに対して斜め方向に突出しており、かつ、側壁部の少なくとも一部がハンドルの外表面よりも膨出していてもよい。この場合には、使用者は、側壁部におけるハンドルよりも外方まで膨出した側を肌に向けることにより、より容易にローラーを肌に押し当てることができる。その結果、上記美容器具は、使用者にとってより扱い易いものとなる。
【0022】
また、上記ローラーは、上記オン状態において発光する発光体を内部空間に有しており、側壁部及びシート状発熱体は上記発光体からの光を透過するよう構成されていてもよい。この場合には、使用者は、上記美容器具がオン状態であるか否かを、上記発光体の発光の有無により視覚的に判断することができる。その結果、使用者が上記美容器具を誤ってオン状態にすることを容易に防止でき、誤動作等による電力の浪費を容易に抑制することができる。
【0023】
また、この場合には、誤動作等による電力の浪費を抑制することができる。そのため、上記美容器具が電力源として電池を使用している場合には、より長時間の連続使用が可能である。それ故、上記美容器具は、より優れた携帯性を有するものとなりやすい。
【0024】
上記発光体としては、例えば白熱電球や発光ダイオード素子等が用いられる。消費電力の低減及び美容器具の小型化の観点からは、発光体として発光ダイオード素子を用いることが好ましい。
【0025】
また、上記透過光は、上記側壁部を透過した後に暖色を呈するよう構成されていてもよい。ここで、暖色とは、例えば赤色、朱色、橙色、桃色、黄色などを含み、一般的な感覚として視認することにより温かみを感じる色をいう。この場合には、暖色の透過光を視認することによる心理的な作用により、上記美容器具は肌に接触した上記側壁部の温感をより効果的に使用者に体感させることができ、ひいては優れた美容効果を体感させることができる。
【0026】
なお、上記透過光は、最終的に側壁部を透過した後に暖色を呈していればよい。透過光を暖色にする構成としては、例えば、暖色に発光する発光体を用いる構成、側壁部を暖色に着色することにより、側壁部を透過した光を暖色にする構成等がある。
【0027】
上記シート状発熱体は、一対の透明樹脂フィルムと、一対の透明樹脂フィルムに挟まれた透明抵抗膜とを有しており、透明抵抗膜は酸化インジウムスズより構成されていることが好ましい。酸化インジウムスズよりなる透明抵抗膜は、通電時の温度が変動しにくく、一定の温度になり易い。そのため、上記美容器具は、側壁部の加温特性が変動しにくく、安定して優れた性能を示す。
【0028】
また、上記美容器具が発光体を有する場合には、発光体からの光が透明抵抗膜及び一対の透明樹脂フィルムを透過する。そのため、発光体からの光がシート状発熱体による減衰を受けにくい。それ故、透過光の光量が十分に大きくなり、透過光がより視認され易くなる。その結果、使用者は、上記美容器具がオン状態であるか否かの判断をより容易に行うことができる。
【0029】
また、シート状発熱体としては、上述した構成を有するもの以外に、通電により発熱すると共に、発熱体からの光を側壁部側に透過するよう構成されているものを用いることができる。シート状発熱体としては、例えば、少なくとも一部に透明な部分を有する発熱フィルムや、電熱線等の抵抗体が網状に配置された網状抵抗体等を用いることができる。
【0030】
また、上記発光体の周囲には、該発光体からの光を拡散する光拡散部材が設けられていてもよい。この場合には、光拡散部材により拡散された光が上記側壁部の全面を透過しやすくなり、上記オン状態において、上記側壁部の略全面が発光した状態となる。そのため、使用者は、透過光をより容易に視認することができ、ひいては上記美容器具がオン状態であるか否かを判断し易くなる。その結果、上記美容器具は、より扱い易いものとなる。
【0031】
光拡散部材としては、例えば、光を拡散させる作用を有する光拡散フィルム等を用いることができる。また、ローラーの側壁部やシート状発熱体等が光拡散部材としての機能を有する構成であってもよい。かかる構成としては、例えば、シート状発熱体または側壁部に光を拡散させるためのコーティング層を設ける構成や、光を拡散させる作用を有する樹脂を用いて側壁部等を形成する構成等がある。また、光を拡散させる作用を実現する具体的な手段としては、ハーフミラー等により光を多重に反射させる手段や、微粒子顔料等により光を散乱させる手段などがある。
【0032】
また、上記ハンドルは、上記オン状態と上記オフ状態とを切り替えるスイッチ部と、上記オン状態が所定時間継続した場合に上記オン状態から上記オフ状態への切り替えを行うタイマー部とを有する制御部を有していてもよい。この場合には、上記美容器具は、例えば使用者が誤ってスイッチ部を操作した場合等に、上記オン状態が所定時間を越えて継続することがない。それ故、上記美容器具は、誤動作による電力の浪費を低減でき、より長期にわたって使用可能なものとなる。
【0033】
なお、上記所定時間が過度に長いと電力の浪費を低減する効果が損なわれやすい。その反面、上記所定時間が過度に短いと、美容器具の使用途中でオフ状態に切り替わるおそれがあるため、使用者にとって扱いにくいものとなるおそれがある。そのため、電力の浪費の低減と、使用者の扱い易さとを両立させる観点から、上記所定時間は、例えば5〜20分の範囲とすることができる。
【実施例】
【0034】
上記美容器具の実施例について、図1図6を用いて説明する。美容器具1は、図1図5に示すように、ローラー2と、ハンドル3と、電源部4と、発光体51と、シート状発熱体としての発熱フィルム6とを有している。ローラー2は、図2及び図5に示すように、皮膚に接触させる筒状の側壁部21及び側壁部21の両端に配置される端板部22を有している。
【0035】
図1図3及び図5に示すように、ハンドル3は、ローラー2を回転可能に支持するローラー受け部31を有している。図2及び図4に示すように、電源部4はハンドル3に内蔵されており、電力を供給するオン状態と電力を遮断するオフ状態とを切り替え可能に構成されている。図5に示すように、発光体51は、ローラー2の内部空間20に配置され、オン状態において発光するよう構成されている。発熱フィルム6は、側壁部21に熱的に接触し、オン状態において発熱するよう構成されている。また、側壁部21及び発熱フィルム6は発光体51からの光を透過するよう構成されており、側壁部21を透過した透過光が暖色を呈する。以下、詳説する。
【0036】
図1及び図3に示すように、美容器具1は棒状を呈しており、その一端にローラー2を有している。ローラー2は、ハンドル3に設けられた一対のローラー受け部31の間において回転可能に支持されている。また、ローラー2の回転軸23は、美容器具1の長手方向に直交する方向を向いている。
【0037】
なお、以下において、美容器具1の長手方向におけるローラー2側を「前方」といい、ローラー2の反対側を「後方」ということがある。また、ローラー2の回転軸23が伸びる方向を「側方方向」ということがある。また、前後方向及び側方方向の双方に直交する方向を「上下方向」ということがある。美容器具1の方向に関するこれらの記載は便宜上のものであり、美容器具1を実際に使用する際の向きとは何ら関係がない。
【0038】
図1及び図3に示すように、ハンドル3は略棒状を呈している。図2及び図4に示すように、ハンドル3の内部には、電源部4及び制御部7が配置されている。電源部4には、電力源として用いられる電池42が装着される。電池42は、接点金具41を介して制御部7に電気的に接続されている。
【0039】
制御部7は、電源部4のオン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチ部71と、オン状態が所定時間継続した場合にオン状態からオフ状態への切り替えを行うタイマー部(図示略)とを有している。制御部7は、接点金具41と電気的に接続されており、電源部4からの電力供給を常に受けている。そのため、使用者は、スイッチ部71を操作することによりオン状態とオフ状態との切り替えを所望のタイミングで行うことができる。
【0040】
スイッチ部71によるオン状態とオフ状態との切り替えは、図3及び図4に示す、ハンドル3の上方に突出した電源ボタン72を押下することにより行われる。また、タイマー部は、オフ状態からオン状態に切り替わった時点からの経過時間を計測し、経過時間が所定時間を超えた時点でオン状態からオフ状態への切り替えを自動的に行うように構成されている。なお、本例においては、上記所定時間は10分に設定されている。
【0041】
図1及び図3に示すように、ハンドル3の前方端部には、一対のローラー受け部31が立設されている。一対のローラー受け部31は、側方方向において互いに対面している。また、図1及び図2に示すように、一対のローラー受け部31は、ハンドル3の長手方向に対して斜め下方に向けて立設されている。そして、図4に示すように、側壁部21の少なくとも一部がハンドル3の側周面32よりも下方まで膨出している。
【0042】
図2及び図5に示すように、一対のローラー受け部31は、互いに対面する側の壁面の中央部に、周囲よりも陥没した軸受凹部311を有している。軸受凹部311は、ローラー2の回転軸23上に配された中心凸部221(後述)を収容可能に構成されている。そして、軸受凹部311にローラー2の中心凸部221が収容されることにより、ローラー2が一対のローラー受け部31の間に回転可能に支持される。
【0043】
図2及び図5に示すように、それぞれのローラー受け部31における軸受凹部311には、ハンドル側電極33が配設されている。ハンドル側電極33は、制御部7に接続される後方端部331(図2参照)を基端として、各々のローラー受け部31における軸受凹部311まで延設されている。そして、ハンドル側電極33は、中心凸部221上に配されたローラー側電極222(後述)に接触している。
【0044】
図2及び図5に示すように、一対のローラー受け部31の間に支持されるローラー2は、略円筒状を呈する側壁部21と、側壁部21の両端に配置された端板部22とを有している。そして、ローラー2は、端板部22がローラー受け部31と対面するようにして配置されている。
【0045】
図5に示すように、側壁部21の外表面211は、側方方向の両端から中央に向けて徐々に拡径しており、側方方向の中央が両端よりも外方に膨出している。側壁部21の内表面212は、側方方向の全体にわたって一定の内径を有している。また、側壁部21は透明なポリカーボネート樹脂より形成されており、発光体51からの光を透過するように構成されている。
【0046】
図2及び図5に示すように、端板部22は略円板状を呈しており、側壁部21の側方方向の両端に圧入されている。また、端板部22は、ローラー2の内部空間20側に立設された発熱体規制部223と、ローラー受け部31側に立設された中心凸部221とを有している。
【0047】
発熱体規制部223は、端板部22の外径よりも直径の小さい円筒状を呈している。図4及び図5に示すように、発熱体規制部223は、ローラー2の径方向において側壁部21から離間している。そして、側壁部21と発熱体規制部223との間には、筒状に巻き回された発熱フィルム6の開口端部61が配されている。すなわち、端板部22はローラー2の内部空間20側に立設された発熱体規制部223を有しており、発熱体規制部223と側壁部21との間に発熱フィルム6の端部(開口端部61)が配されている。
【0048】
また、図5に示すように、発熱体規制部223の筒内には、後述する発光体ユニット5が収容されている。発熱体規制部223の先端には、筒内方向に向けて突出形成された2箇所の爪部224が形成されており、2箇所の爪部224は、発光体ユニット5と係合している。これにより、発光体ユニット5が発熱体規制部223の筒内に保持されている。
【0049】
図2及び図5に示すように、中心凸部221は、端板部22の中央に配置されており、ローラー受け部31側に向けて立設された略円筒状を呈している。また、中心凸部221はローラー受け部31の軸受凹部311に収容されており、中心凸部221と軸受凹部311との間に、ローラー2ががたつかない程度のクリアランスが形成されている。これにより、一対の中心凸部221を結ぶ中心線がローラー2の回転軸23となり、ローラー2がハンドル3受け部の間に回転可能に支持される。
【0050】
中心凸部221の筒内には、真鍮製のネジよりなるローラー側電極222が固定されている。図5に示すように、ローラー側電極222はローラー受け部31上に設けられたハンドル側電極33と接触している。これにより、ローラー側電極222とハンドル側電極33とが導通している。そして、ローラー側電極222は、ローラー2の内部空間20に配置された発熱フィルム6及び発光体51の両方に電気的に接続されている(図示略)。
【0051】
すなわち、端板部22は発熱フィルム6及び発光体51の両方と電気的に接続されたローラー側電極222をローラー2の外側に有している。そして、ローラー受け部31は、電源部4と電気的に接続されたハンドル側電極33を有しており、ハンドル側電極33とローラー側電極222とが互いに接触している。
【0052】
図2及び図5に示すように、側壁部21及び一対の端板部22により区画されたローラー2の内部空間20には、発光体51を有する一対の発光体ユニット5、発熱フィルム6及び発光体51からの光を拡散する光拡散部材11が配置されている。
【0053】
発光体ユニット5は、発光体51としてのLED素子511と、LED素子511が実装された回路基板52とを有している。図4及び図5に示すように、回路基板52は、それぞれ、端板部22における発熱体規制部223の筒内に保持されている。そして、一対の回路基板52は、図5に示すリン青銅製の2本の金属棒53により互いに電気的に接続されている。また、図には示さないが、同一の端板部22に配された回路基板52とローラー側電極222とが電気的に接続されている。
【0054】
LED素子511には、回路基板52を介して電源部4から電力が供給される。なお、本例のLED素子511は、オン状態において赤色に発光する。
【0055】
図5に示すように、LED素子511の周囲には、LED素子511からの光を拡散する光拡散部材11が設けられている。そして、光拡散部材11により拡散された光が側壁部21の全面を透過するよう構成されている。本例においては、光拡散部材11として、筒状に巻き回された光拡散フィルムが用いられている。また、光拡散部材11は、自身の弾性力により側壁部21の内表面212に向けて付勢されており、内表面212の略全面に面接触している。
【0056】
発熱フィルム6は、図6に示すように、平面視において略長方形状を呈する発熱部62と、発熱部62を電源部4と接続する端子部63とを有している。発熱部62は、一対の透明樹脂フィルム64と、一対の透明樹脂フィルム64に挟まれた、酸化インジウムスズよりなる透明抵抗膜65とを有している。透明抵抗膜65は、その一対の長辺に延設された電極膜66を介して端子部63と接続されている。
【0057】
発熱フィルム6は、発熱部62の長辺が開口端となるようにして筒状に巻き回された状態で光拡散部材11の内側に配置されている。そして、発熱フィルム6は、自身の弾性力により側壁部21の内表面212に向けて付勢されており、光拡散部材11の略全面と面接触している。これにより、発熱フィルム6は、光拡散部材11を介して側壁部21の内表面212における略全面と熱的に接触している。
【0058】
また、発熱フィルム6がローラー2の内部空間20に配置された状態において、端子部63は、ローラー2の内部空間20に配された2本の金属棒53と接続されている(図示略)。これにより、透明抵抗膜65に電源部4からの電力が供給される。
【0059】
本例の発熱フィルム6は、3Vの電圧を印加した場合に、表面温度が約55℃となる。また、発熱フィルム6により加温された状態の側壁部21の表面温度は、40〜45℃程度となる。
【0060】
次に、本例の作用効果を説明する。美容器具1は、側壁部21に熱的に接触し、オン状態において発熱するシート状発熱体としての発熱フィルム6を有している。そのため、美容器具1は、消費電力を容易に小さくすることができる。
【0061】
また、美容器具1は、オン状態において、発熱フィルム6を発熱させると共に、発光体51を発光させるよう構成されている。そのため、使用者が美容器具1を誤ってオン状態にすることを防止でき、電力の浪費を抑制することができる。
【0062】
このように、美容器具1は、小型軽量にしやすい。また、電力源として電池42を使用する場合には、連続使用時間の長時間化が容易である。それ故、美容器具1は、優れた携帯性を有するものとなりやすい。
【0063】
また、美容器具1は、光を透過可能に構成された側壁部21及び発熱フィルム6を有している。そして、発光体51が発光している状態において、発熱フィルム6及び側壁部21を透過する透過光が暖色を呈するよう構成されている。そのため、美容器具1は、暖色の透過光を視認することによる心理的な作用により、体感できる美容効果を高めることができる。
【0064】
また、発熱フィルム6は、筒状に巻き回された状態でローラー2の内部空間20に配置されると共に、発熱フィルム6自身の弾性力により側壁部21の内表面212に向けて付勢されている。そして、発熱フィルム6は側壁部21の内表面212における略全面と熱的に接触している。そのため、側壁部21をより小さな消費電力で十分に加温することができる。それ故、美容器具1は、より優れた携帯性を有するものとなりやすい。
【0065】
また、この場合には、発熱フィルム6を側壁部21側へ押し付けるための構造をローラー2内に設ける必要がない。そのため、ローラー2がより簡素な構造になりやすく、美容器具1全体の生産性を容易に向上させることができる。
【0066】
また、端板部22はローラー2の内部空間20側に立設された発熱体規制部223を有しており、発熱体規制部223と側壁部21との間に発熱フィルム6の開口端部61が配されている。そのため、発熱フィルム6と側壁部21との間に生じる隙間が過度に大きくなることを抑制し、ひいては側壁部21の加温が不十分となることを抑制できる。その結果、美容器具1は、優れた美容効果を安定して使用者に体感させることができる。
【0067】
また、端板部22は発熱フィルム6及び発光体51の両方と電気的に接続されたローラー側電極222をローラー2の外側に有しており、ローラー受け部31は、電源部4と電気的に接続されたハンドル側電極33を有しており、ハンドル側電極33とローラー側電極222とが互いに接触している。そのため、ローラー2は、配線のねじれ等により回転を規制されることなく、自由に回転することができる。
【0068】
また、ハンドル3は略棒状を呈しており、一対のローラー受け部31はハンドル3の端部に立設されており、ローラー2は、その回転軸23をハンドル3の長手方向に直交する方向に向けた状態で一対のローラー受け部31に支持されている。そのため、美容器具1は、ローラー2を回転させることが容易である。
【0069】
また、一対のローラー受け部31に支持されたローラー2の回転軸23がハンドル3の長手方向に直交する側方方向を向いているため、側壁部21における肌と接触可能な部分の面積を相対的に広くすることができる。そのため、使用者は、ローラー2を肌に接触させる際の美容器具1の姿勢をより自由に選択することができる。
【0070】
また、一対のローラー受け部31は、ハンドル3の長手方向に対して斜め下方に向かって立設されており、ローラー2の側壁部21の少なくとも一部がハンドル3の側周面32よりも下方まで膨出している。そのため、使用者は、側壁部21におけるハンドル3よりも外方まで膨出した側を肌に向けることにより、より容易にローラー2を肌に押し当てることができる。
【0071】
また、発光体51の周囲には、発光体51からの光を拡散する光拡散部材11が設けられており、光拡散部材11により拡散された光が側壁部21の全面を透過するよう構成されている。そのため、透過光がより視認され易くなる。
【0072】
これらの結果、美容器具1は、使用者にとってより扱い易いものとなる。
【0073】
また、発熱フィルム6は、一対の透明樹脂フィルム64と、一対の透明樹脂フィルム64に挟まれた透明抵抗膜65とを有しており、透明抵抗膜65は酸化インジウムスズより構成されている。そのため、透過光の光量が十分に大きくなり、透過光がより視認され易くなる。また、発熱フィルム6は通電時の温度が変動しにくいため、美容器具1は、側壁部21の加温特性が変動しにくく、安定して優れた性能を示す。
【0074】
また、ハンドル3は、オン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチ部71と、オン状態が所定時間継続した場合にオン状態からオフ状態への切り替えを行うタイマー部とを有する制御部7を有している。そのため、美容器具1は誤動作等による電力の浪費を低減でき、より長期にわたって使用可能なものとなる。
【0075】
以上のように、美容器具1は、携帯性に優れると共に、より優れた美容効果を示す可能性を有する。
【0076】
なお、上記の実施例においては、図1図3に示すように、側壁部21の外表面211が比較的平坦な形状を有するローラー2の例を示したが、外表面211は凹凸形状を有していてもよい。例えば、側壁部21の外表面211には、多数の柱状突起部が外方に向けて立設されていてもよい。また、外表面211には、複数の溝部が互いに平行な向きに延設されていてもよい。上記溝部の延設方向としては、例えば、ローラー2の周方向や軸方向等が考えられる。また、外表面211は、凹状部と凸状部とが交互に配置され、両者が滑らかな曲面により接続された波状形状を有していてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6