(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
GaNに代表されるIII 族窒化物半導体では、その組成を変化させることにより、バンドギャップが0.6eVから6eVまで変化する。そのため、III 族窒化物半導体は、近赤外から深紫外までの広い範囲の波長に相当する発光素子や、レーザーダイオード、受光素子等に応用されている。
【0003】
また、III 族窒化物半導体では、破壊電界強度が高く、かつ融点が高い。そのため、III 族窒化物半導体は、GaAs系半導体に代わる、高出力、高周波、高温用の半導体デバイスの材料として期待されている。そのため、HEMT素子などが研究開発されている。
【0004】
III 族窒化物半導体をエピタキシャル成長させる方法として、例えば、有機金属化学気相成長法(MOCVD法)がある。MOCVD法では、大量のアンモニアガスを用いる。そのため、MOCVD炉にアンモニアを除外する除害装置を設ける必要がある。また、アンモニアのランニングコストも高い。そして、有機金属ガスとアンモニアとの反応により半導体層を形成する。この反応を起こすために、基板温度を高温にする必要がある。基板温度が高いと、In濃度の高いInGaN層を高品質に成長させることは難しい。また、成長基板と半導体層との熱膨張差の違いにより、そりが発生しやすい。
【0005】
また、III 族窒化物半導体をエピタキシャル成長させる方法として、例えば、分子線エピタキシー法(MBE法)が挙げられる。MBE法では、低い成長温度でIII 族窒化物半導体を成長させることができる。しかし、ラジカルソースを用いるRF−MBE法では、成長速度が遅い。すなわち、RF−MBE法は、量産に向かない。アンモニアガスを用いるMBE法では、大量のアンモニアガスを使用するため、製造コストが高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、プラズマを用いるプラズマMOCVD装置も研究されている。例えば、特許文献1には、プラズマMOCVD装置が記載されている。特許文献1では、酸化マグネシウム膜を形成できるとしている(特許文献1の段落[0020]−[0021])。しかし、プラズマMOCVD法によりIII 族窒化物半導体を成長させる場合には、良質な結晶は得られていない。
【0008】
本発明は、前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。その課題とは、量産に適しているとともに、従来と比較して低温下でIII 族窒化物半導体を成長させることを図ったIII 族窒化物半導体装置の製造装置および製造方法ならびに半導体ウエハの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様におけるIII 族窒化物半導体装置の製造装置は、III 族窒化物半導体をエピタキシャル成長させるIII 族窒化物半導体装置の製造装置である。この製造装置は、第1の電極と、成長基板を支持するための基板支持部と、基板支持部に第1のガスを供給する第1のガス供給管と、基板支持部に第2のガスを供給する第2のガス供給管と、第1の電極と第1のガス供給管との間の位置に配置された金属メッシュ部材と、
炉本体と、を有する。第1のガス供給管は、少なくとも1以上の第1のガス噴出口を有するとともに、III 族金属を含む有機金属ガスを第1のガスとして供給するものである。第2のガス供給管は、窒素ガスを含むガスを第2のガスとして供給するものである。第1の電極は、基板支持部からみて第1のガス供給管の第1のガス噴出口よりも遠い位置に配置されている。金属メッシュ部材は、接地されている。
炉本体は、接地されている。炉本体と第1の電極との間に放電を生じさせてプラズマ発生領域にプラズマを発生させる。プラズマ発生領域は、第1の電極と第1のガス供給管との間の領域のうち第1の電極の直下であって第1のガス供給管から離れた位置に位置している。
【0010】
このIII 族窒化物半導体装置の製造装置は、成長基板の上にIII 族窒化物半導体をエピタキシャル成長させる。第2のガスをプラズマ化するとともに、有機金属ガスを成長基板に供給する。少なくとも窒素ガスをプラズマ化しているため、基板温度を高くすることなく、III 族窒化物半導体をエピタキシャル成長させることができる。成長させたIII 族窒化物半導体の結晶性は十分である。
また、金属メッシュ部材は、第1のガス供給管と第1の電極との間の位置に配置されている。このため、電子やその他のイオンが成長基板に供給されることを抑制することができる。
【0011】
第2の態様におけるIII 族窒化物半導体装置の製造装置
においては、第2のガス供給管は、窒素ガスと
水素ガスとの混合ガスを第2のガスとして供給するものである。
また、プラズマ発生領域において、NHとNH2 とこれらの励起状態を発生させる。そのため、アンモニアガスを用いる必要がない。そして、アンモニアガスを回収する除害装置を設ける必要がない。
【0012】
【0013】
第
3の態様におけるIII 族窒化物半導体装置の製造装置では、第1の電極は、第1面から第2面に貫通する複数の貫通孔を設けられた平板電極である。第2のガス供給管は、第1の電極の複数の貫通孔と連通している。このため、第2のガスを効率よくプラズマ化することができる。
【0014】
第
4の態様におけるIII 族窒化物半導体装置の製造装置では、第1の電極と第1のガス噴出口との間の距離が、30mm以上である。このため、プラズマ発生領域が、第1のガス噴出口にまで及びにくい。
【0015】
第
5の態様におけるIII 族窒化物半導体装置の製造装置では、第1の電極と基板支持部との間の距離が、40mm以上である。このため、電子やその他のイオンが成長基板に供給されることを抑制することができる。
【0016】
第
6の態様におけるIII 族窒化物半導体装置の製造装置
では、第1のガス供給管は、リング形状のリング部を有する。第1のガス噴出口は、リング部の内側に向けて設けられている。
【0017】
第
7の態様におけるIII 族窒化物半導体装置の製造装置は、第1の電極に30MHz以上300MHz以下の周波数の電位を付与するRF電源を有する。
【0018】
【0019】
【発明の効果】
【0020】
本発明では、量産に適しているとともに、従来と比較して低温下でIII 族窒化物半導体を成長させることを図ったIII 族窒化物半導体装置の製造装置および製造方法ならびに半導体ウエハの製造方法が提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、具体的な実施形態について、量産に適した方法で、比較的低温下でIII 族窒化物半導体を成長させることを図ったIII 族窒化物半導体装置の製造装置および製造方法ならびに半導体ウエハの製造方法を例に挙げて図を参照しつつ説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
1.III 族窒化物半導体装置の製造装置
図1は、本実施形態におけるIII 族窒化物半導体装置の製造装置1000の概略構成図である。製造装置1000は、窒素ガスと水素ガスとを含む混合ガスをプラズマ化して、そのプラズマ化したプラズマ生成物を成長基板に供給するとともに、III 族金属を含む有機金属ガスをプラズマ化しないで成長基板に供給する装置である。
【0024】
製造装置1000は、炉本体1001と、シャワーヘッド電極1100と、サセプター1200と、加熱器1210と、第1のガス供給管1300と、ガス導入室1410と、第2のガス供給管1420と、金属メッシュ1500と、RF電源1600と、マッチングボックス1610と、第1のガス供給部1710と、第2のガス供給部1810と、ガス容器1910、1920、1930と、恒温槽1911、1921、1931と、マスフローコントローラー1720、1820、1830、1840と、を有している。また、製造装置1000は、排気口(図示せず)を有している。
【0025】
シャワーヘッド電極1100は、周期的な電位を付与される第1の電極である。シャワーヘッド電極1100は、例えば、ステンレス製である。もちろん、これ以外の金属であってもよい。シャワーヘッド電極1100は、平板形状の電極である。そして、シャワーヘッド電極1100には、表面から裏面に貫通する複数の貫通孔(図示せず)が設けられている。そして、これらの複数の貫通孔は、ガス導入室1410および第2のガス供給管1420と連通している。このため、ガス導入室1410から炉本体1001の内部に供給される第2のガスは、好適にプラズマ化される。RF電源1600は、シャワーヘッド電極1100に高周波電位を付与する電位付与部である。
【0026】
サセプター1200は、基板Sa1を支持するための基板支持部である。サセプター1200の材質は、例えば、グラファイトである。また、これ以外の導電体であってもよい。ここで、基板Sa1は、III 族窒化物半導体を成長させるための成長基板である。
【0027】
第1のガス供給管1300は、サセプター1200に第1のガスを供給するためのものである。実際には、サセプター1200に支持された基板Sa1に第1のガスを供給することとなる。ここで、第1のガスとは、III 族金属を含む有機金属ガスである。また、その他のキャリアガスを含んでいてもよい。第1のガス供給管1300は、リング状のリング部1310を有している。そして、第1のガス供給管1300のリング部1310には、12個の貫通孔(図示せず)がリング部1310の内側に設けられている。これらの貫通孔は、第1のガスが噴出する噴出口である。そのため、第1のガスは、リング部1310の内側に向けて、噴出することとなる。第1のガス供給管1300は、後述するように、プラズマ発生領域から離れた位置に位置している。
【0028】
第2のガス供給管1420は、サセプター1200に第2のガスを供給するためのものである。実際には、第2のガスをガス導入室1410および炉本体1001の内部に導入するとともに、サセプター1200に支持された基板Sa1に第2のガスを供給することとなる。そして、第2のガス供給管1420は、第2のガスを炉本体1001の内部に供給する。ここで、第2のガス供給管1420が供給する第2のガスは、少なくとも窒素ガスを含むガスである。第2のガス供給管1420は、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを第2のガスとして供給するとよい。ガス導入室1410は、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを一旦収容するとともに、シャワーヘッド電極1100の貫通孔にこの混合ガスを供給するためのものである。
【0029】
金属メッシュ1500は、荷電粒子を捕獲するためのものである。金属メッシュ1500は、例えば、ステンレス製である。もちろん、これ以外の金属であってもよい。金属メッシュ1500は、シャワーヘッド電極1100とサセプター1200との間の位置に配置されている。そのため、後述するようにプラズマ発生領域で発生した荷電粒子が、サセプター1200に支持されている成長基板Sa1に向かうのを抑制することができる。また、金属メッシュ1500は、シャワーヘッド電極と第1のガス供給管1300のリング部1310との間の位置に配置されている。そのため、荷電粒子が、第1のガス供給管1300から噴出されるIII 族金属を含む有機金属分子に衝突するのを抑制することができる。
【0030】
炉本体1001は、少なくとも、シャワーヘッド電極1100と、サセプター1200と、第1のガス供給管1300のリング部1310と、金属メッシュ1500と、を内部に収容している。炉本体1001は、例えば、ステンレス製である。炉本体1001は、上記以外の導電体であってもよい。
【0031】
炉本体1001と、金属メッシュ1500と、第1のガス供給管1300とは、導電性の部材であり、いずれも接地されている。そのため、シャワーヘッド電極1100に電位が付与されると、シャワーヘッド電極1100と、炉本体1001および金属メッシュ1500および第1のガス供給管1300と、の間に電圧が印加されることとなる。そして、炉本体1001および金属メッシュ1500および第1のガス供給管1300の少なくとも1つ以上と、シャワーヘッド電極1100と、の間に放電が生じると考えられる。シャワーヘッド電極1100の直下では、高周波かつ高強度の電界が形成される。そのため、シャワーヘッド電極1100の直下の位置は、プラズマ発生領域である。
【0032】
ここで、第2のガス、すなわち、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスは、このプラズマ発生領域においてプラズマ化されることとなる。そして、プラズマ発生領域でプラズマ生成物が発生する。この場合におけるプラズマ生成物とは、窒素ラジカルと、水素ラジカルと、窒化水素系の化合物と、電子と、その他のイオン等である。ここで、窒化水素系の化合物とは、NHと、NH
2 と、NH
3 と、これらの励起状態と、その他のものとを含む。
【0033】
また、シャワーヘッド電極1100と、サセプター1200とは、十分に離れている。シャワーヘッド電極1100と、サセプター1200との間の距離は、40mm以上200mm以下である。より好ましくは、40mm以上150mm以下である。シャワーヘッド電極1100とサセプター1200との間の距離が短いと、プラズマ発生領域がサセプター1200の箇所にまで広がるおそれがある。シャワーヘッド電極1100とサセプター1200との間の距離が40mm以上であれば、プラズマ発生領域がサセプター1200の箇所にまで広がるおそれがほとんどない。そのため、荷電粒子が基板Sa1に到達することを抑制できる。また、シャワーヘッド電極1100とサセプター1200との間の距離が大きいと、窒素ラジカルや、窒化水素系の化合物等が、サセプター1200の保持する基板Sa1に到達しにくくなるからである。なお、これらの距離は、プラズマ発生領域の大きさと、その他のプラズマ条件にも依存する。
【0034】
シャワーヘッド電極1100は、サセプター1200からみて第1のガス供給管1300のリング部1310の貫通孔よりも遠い位置に配置されている。シャワーヘッド電極1100と、第1のガス供給管1300のリング部1310の貫通孔との間の距離は、30mm以上190mm以下である。より好ましくは、30mm以上140mm以下である。荷電粒子が、第1のガスに混入することを抑制するとともに、窒素ラジカルや、窒化水素系の化合物等が、基板Sa1に到達しやすくするためである。このため、プラズマ化された第2のガスと、プラズマ化されない第1のガスとにより、基板Sa1に半導体層が積層されることとなる。なお、これらの距離は、プラズマ発生領域の大きさと、その他のプラズマ条件にも依存する。
【0035】
加熱器1210は、サセプター1200を介して、サセプター1200に支持される基板Sa1を加熱するためのものである。
【0036】
マスフローコントローラー1720、1820、1830、1840は、各々のガスの流量を制御するためのものである。恒温槽1911、1921、1931には、不凍液1912、1922、1932が満たされている。また、ガス容器1910、1920、1930は、III 族金属を含む有機金属ガスを収容するための容器である。ガス容器1910、1920、1930には、それぞれ、トリメチルガリウムと、トリメチルインジウムと、トリメチルアルミニウムとが、収容されている。もちろん、トリエチルガリウム等、その他のIII 族金属を含む有機金属ガスであってもよい。
【0037】
2.製造装置の製造条件
製造装置1000における製造条件を表1に示す。表1で挙げた数値範囲は、あくまで目安であり、必ずしもこの数値範囲である必要はない。RFパワーは、100W以上1000W以下の範囲内である。RF電源1600がシャワーヘッド電極1100に付与する周期的な電位の周波数は、30MHz以上300MHz以下の範囲内である。基板温度は、400℃以上900℃以下の範囲内である。また、基板温度は、室温以上であってもよい。製造装置1000の内圧は、1Pa以上10000Pa以下の範囲内である。
【0038】
[表1]
RFパワー 100W以上 1000W以下
周波数 30MHz以上 300MHz以下
基板温度 400℃以上 900℃以下
内圧 1Pa以上 10000Pa以下
【0039】
3.半導体ウエハの製造方法
3−1.基板のクリーニング
ここで、本実施形態の製造装置1000を用いた半導体ウエハの製造方法について説明する。まず、基板Sa1を準備する。基板Sa1として、例えば、c面サファイア基板を用いることができる。また、その他の基板を用いてもよい。基板Sa1を、製造装置1000の内部に配置し、水素ガスを供給しながら基板温度を400℃程度まで上昇させる。これにより、基板Sa1の表面を還元するとともに、基板Sa1の表面をクリーニングする。基板温度をこれ以上の温度にしてもよい。
【0040】
3−2.半導体層形成工程
次に、RF電源1610をONにする。そして、第2のガス供給管1420から、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを供給する。そして、シャワーヘッド電極1100の貫通孔から炉本体1001の内部に供給された混合ガスは、シャワーヘッド電極1100の直下でプラズマ化する。そのため、シャワーヘッド電極1100の直下にプラズマ発生領域が生成される。この際に、窒素ラジカルと水素ラジカルとが生成される。そして、窒素ラジカルと水素ラジカルとが反応して、窒化水素系の化合物が生成されると考えられる。また、電子やその他の荷電粒子も生成される。
【0041】
そして、これらの窒素ラジカルと水素ラジカルと窒化水素系の化合物と電子とその他の荷電粒子を含んだラジカル混合気体は、基板Sa1に向けて送出される。このラジカル混合ガスの発生箇所は、シャワーヘッド電極1100の直下である。シャワーヘッド電極1100から基板Sa1までの距離は十分に広いため、ラジカル混合気体のうち、電子やイオン等の荷電粒子は、基板Sa1まで到達しにくい。また、荷電粒子は、金属メッシュ1500に捕獲されやすい。そのため、基板Sa1に向けて供給されるのは、窒素ラジカルと水素ラジカルの他、窒化水素系の化合物であると考えられる。通常のアンモニアに比べて、これらの窒素ラジカルや窒化水素系の化合物の反応性は高い。そのため、従来に比べて低い温度で半導体層をエピタキシャル成長させることができる。
【0042】
一方、第1のガス供給管1300のリング部1310から、III 族金属の有機金属ガスを供給する。例えば、トリメチルガリウムと、トリメチルインジウムと、トリメチルアルミニウムとが、挙げられる。これらのガスは、基板Sa1に向かうラジカル混合気体に巻き込まれて、基板Sa1に供給されることとなる。III 族金属の有機金属ガスは、プラズマ化されないで、基板Sa1に供給される。
【0043】
このように、本実施形態の半導体ウエハの製造方法では、窒素ガスと水素ガスとを含む混合ガスをプラズマ化して、そのプラズマ化したプラズマ生成物を成長基板に供給するとともに、III 族金属を含む有機金属ガスをプラズマ化しないで成長基板に供給する。
【0044】
3−3.半導体ウエハ
こうして、基板Sa1の主面にIII 族窒化物半導体をエピタキシャル成長させる。これにより、半導体ウエハが製造される。この半導体ウエハにおけるIII 族窒化物半導体の結晶性はよい。
【0045】
4.従来のMOCVD炉との違い
このように、基板温度を高い温度とすることなく、III 族窒化物半導体を成長させることができる。そのため、基板温度が高いと結晶成長が困難な高In濃度のInGaN層等を成長させるのに好適である。また、大量のアンモニアガスを流す必要がない。そのため、アンモニアガスを除去する除害装置を設ける必要はない。そのため、製造装置そのもののコストが低い。また、ランニングコストを抑制することもできる。
【0046】
5.変形例
5−1.リング部の貫通孔
本実施形態では、第1のガス供給管1300は、リング部1310の内側に貫通孔を有することとした。しかし、この貫通孔の位置を、リングの内側でかつ下向きにしてもよい。リング部1310を含む面と、貫通孔の開口部の方向とのなす角の角度は、例えば45°である。この角の角度は、例えば、0°以上60°以下の範囲内で変えてもよい。この角度は、もちろん、リング部1310の径や、リング部1310とサセプター1200との間の距離にも依存する。また、貫通孔の数は、1以上であればよい。もちろん、リング部1310に、等間隔で貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0047】
6.本実施形態のまとめ
本実施形態の製造装置1000は、成長基板の上にIII 族窒化物半導体をエピタキシャル成長させる。窒素ガスと水素ガスとの混合気体をプラズマ化するとともに、III 族金属ガスを含む有機金属ガスをプラズマ化しないで成長基板に供給する。窒素ガスを水素ガスと混合させつつプラズマ化しているため、基板温度を高くすることなく、III 族窒化物半導体をエピタキシャル成長させることができる。成長させたIII 族窒化物半導体の結晶性は十分である。また、アンモニアガスを用いる必要がない。そのため、本実施形態の製造装置には、アンモニアを除去するための除害装置を設ける必要がない。
【0048】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態の半導体デバイスは、III 族窒化物半導体層を有する半導体発光素子である。
【0049】
1.半導体発光素子
本実施形態の発光素子100を
図2に示す。発光素子100は、III 族窒化物半導体層を有する。発光素子100は、基板110と、バッファ層120と、n−GaN層130と、発光層140と、p−AlGaN層150と、p−GaN層160と、p電極P1と、n電極N1と、を有する。発光層140は、井戸層と障壁層とを有する。井戸層は、例えば、InGaN層を有している。障壁層は、例えば、AlGaN層を有している。これらの積層構造は、例示であり、上記以外の積層構造であってもよい。
【0050】
2.半導体発光素子の製造方法
2−1.半導体層形成工程
本実施形態の製造装置1000を用いて、基板110の上にIII 族窒化物半導体層を形成する。ここで用いる条件は、第1の実施形態で説明した半導体ウエハの製造方法とほぼ同様である。基板110の上に、バッファ層120と、n−GaN層130と、発光層140と、p−AlGaN層150と、p−GaN層160と、を形成する。上記の各半導体層を形成するために、適宜原料ガスを切り替えればよい。
【0051】
2−2.凹部形成工程
次に、ICP等のエッチングにより、p−GaN層160からn−GaN層130の途中まで達する凹部を形成する。これより、n−GaN層130の露出部131が露出する。
【0052】
2−3.電極形成工程
次に、n−GaN層130の露出部の上にn電極N1を形成する。また、p−GaN層160の上にp電極P1を形成する。
【0053】
2−4.その他の工程
アニール工程や、絶縁膜を形成する工程等、その他の工程を実施してもよい。
【0054】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本実施形態の半導体デバイスは、III 族窒化物半導体層を有するMIS型半導体素子である。
【0055】
1.MIS型半導体素子
図3に示すように、MIS型半導体素子200は、基板210と、バッファ層220と、GaN層230と、AlGaN層240と、絶縁膜250と、ソース電極S1と、ゲート電極G1と、ドレイン電極D1と、を有している。ソース電極S1およびドレイン電極D1は、AlGaN層240の上に形成されている。ゲート電極G1と、AlGaN層240の溝241との間には、絶縁膜250がある。
【0056】
2.MIS型半導体素子の製造方法
2−1.半導体層形成工程
本実施形態の製造装置1000を用いて、基板210の上にIII 族窒化物半導体層を形成する。ここで用いる条件は、第1の実施形態で説明した半導体ウエハの製造方法とほぼ同様である。基板210の上に、バッファ層220と、GaN層230と、AlGaN層240と、を形成する。上記の各半導体層を形成するために、適宜原料ガスを切り替えればよい。
【0057】
2−2.凹部形成工程
次に、ICP等のエッチングにより、AlGaN層240に溝241を形成する。
【0058】
2−3.絶縁膜形成工程
次に、溝241に、絶縁膜250を形成する。
【0059】
2−4.電極形成工程
次に、AlGaN層240の上にソース電極S1およびドレイン電極D1を形成する。また、溝241の箇所に、絶縁膜250を介してゲート電極G1を形成する。なお、ソース電極S1およびドレイン電極D1については、絶縁膜250を形成する前に形成してもよい。以上により、MIS型半導体素子200が製造される。
【実施例】
【0060】
A.実施例
本実験では、
図1に示す製造装置1000を用いて実験を行った。RFパワーは、400Wであった。プラズマガスとして、窒素ガス750sccmと、水素ガス250sccmと、を混合した混合ガスを供給した。III 族金属の有機金属ガスについては、0.025sccmから2.0sccmの間に設定して供給した。製造装置1000の内圧は、100Paであった。
【0061】
成長基板として、直径50mm、厚さ600μmのc面サファイア基板を用いた。サファイア基板を400℃まで昇温した後に、10分間保持した。その後、AlNから成るバッファ層を形成した。次に、基板温度を800℃として、バッファ層の上にGaN層を形成した。GaN層の厚みは、2.0μmであった。成膜速度は、約2μm/hrであった。
【0062】
成膜後のGaN層をX線回折により評価した。その結果、サファイア基板の上にGaN層がエピタキシャル成長したところを観測できた。回折角は、理論値の34.5°に非常に近い値であった。また、フォトルミネセンスを測定した。そして、強いバンド端発光を検出した。
【0063】
B.比較例
本実験では、通常のMOCVD炉を用いて実験を行った。III 族金属の有機金属ガスのキャリアガスとして、水素ガスを流速3.5m/secで流した。MOCVD炉の内圧は、25Torrであった。
【0064】
成長基板として、直径50mm、厚さ600μmのc面サファイア基板を用いた。サファイア基板を1210℃まで昇温した後に、10分間保持した。その後、バッファ層を形成した。次に、基板温度を1000℃として、バッファ層の上にGaN層を形成した。GaN層の厚みは、3.0μmであった。成膜速度は、約2μm/hrであった。
【0065】
成膜後のGaN層をX線回折により評価した。その結果、サファイア基板の上にGaN層がエピタキシャル成長したところを観測できた。回折角は、理論値の34.5°に非常に近い値であった。また、フォトルミネセンスを測定した。そして、強いバンド端発光を検出した。その光の強度は、実施例の場合とほぼ同じであった。
【0066】
C.実験のまとめ
上記のように、実施例では、一様で厚みの十分なGaN結晶を、十分な成膜速度で成長させることができた。このGaN結晶の結晶性は、十分なものであった。また、基板温度も、比較例に比べて低い。このため、製造装置1000は、III 族窒化物半導体装置を量産するのに適している。また、アンモニアガスを用いる必要はない。
【0067】
なお、GaN層を成膜後の製造装置1000の排気口の内側には、アンモニアを成分として含む被膜が形成されていた。実施例では、アンモニアガスを製造装置1000の内部に供給していない。そのため、プラズマ領域で生成された窒素ラジカルと水素ラジカルとが反応して、アンモニアガスを生成した可能性がある。