(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筆記具本体後部にインクタンクに充填したインクの直流を抑制する抑制機構を備えた筆記具であって、筆記具本体前部には、ペン先と、該ペン先をシールするキャップ体とを装着すると共に、筆記具本体後部には、キャップ体の開放に伴いインクタンク内を減圧する可撓性を有する減圧部材を備えたことを特徴とする筆記具。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ディスプレイ性に優れ、インク残量が分かりやすい、インク容器などの筆記具本体にインクと該インクの後端部に充填したフォロワ(追従体)という形態となる筆記具は、インクの直流を防ぐために、ボールペンチップや微小に可動するバルブ方式を付与している構造となるものが数多く採用されている。
【0003】
前者のようなボールペンチップを用いてインクの直流を防いでいる筆記具は、落下等によりチップが破壊されたことを想定して、チップが破壊した時でも直流しにく
いようにインクを設計している場合が多く、インク設計の幅が狭いものである。
また、後者で採用するバルブ方式の筆記具では、筆記時にガタがあるため、書き味が悪く、バルブを開いている時間によって、インク流量が変わってしまうため、文字書きと直線書きでの描線濃度に差が出やすいという問題があった。
【0004】
このような問題の解決を試みようとした筆記具として、例えば、
1) バルブ式の筆記具において、ポンピング感等の違和感を生じることなくスムーズな開弁操作を可能して、かつ、閉弁のためのスプリング力が十分でインキの漏れやボタオチを確実に防止できる筆記具を提供するために、ペン芯が一定のストロ−ク以上後退動作しかつ特定の抵抗荷重以上の押圧力が加わったときに開弁してインク収容部内のインクをペン芯に向けて流通させる弁機構を有するバルブ式の筆記具であって、バルブが開弁するまでのストロークの間、ペン芯の後退動作に応じてペン芯の押圧に対する抵抗荷重を増加させていく弾性部材からなるダミーポンピング部を軸筒先端部に設けた構造の筆記具(例えば、特許文献1参照)、
2) 内部に液体を収容し、該液体を吐出する吐出手段と接続され、吐出手段を通じて内容液体が消費されるに伴って消費された内容液体の体積に見合う空気を内部に取り込む空気流通手段を設けた液体吐出具の液体貯蔵容器において、前記空気流通手段として、常温で固体のオルガノポリシロキサンからなる空気交換壁を配置すると共に、前記容器の内外の連通に要する最小距離が1.0μm以上0.2mm以下であることを特徴とする液体吐出具の液体貯蔵容器(例えば、特許文献2参照)、
【0005】
3) 自由状態でインキを収容するインキタンク内と連通する、インキ消費に伴うインキタンク内のインキの体積変化に応じてインキタンク内圧を維持すべく外気を取り込むための空気流通路を形成してなる筆記具において、前記空気流通路に、接触する壁部材との接触角θが0<θ≦90°で、且つ表面張力αが10dyn/cm≦α≦73dyn/cm(20℃)である粘性流体による粘性流体層を配置し、前記インキの体積変化に係るインキタンク内圧の減少に伴って一時的に前記粘性流体層に空気流通孔を形成することを特徴とした筆記具(例えば、特許文献3参照)、
4) インキを流動的に直接収容し且つ後端を開口させた内筒と、この内筒との間に空気交換手段を介して外部と流通する所要の断面積の空間が確保されるように該内筒を同軸遊嵌状に内設し且つ後端を閉鎖させた外筒と、この外筒と前記内筒との前端開口に備えるペン先とを有し、内筒内空間のインキの界面から連ねた状態で該内筒内空間の後端開口を介して連絡する外筒内の前記空間の後部側に、ペン先に掛かるインキの流動圧を一定圧に制御するバランス液体を流動的に収容してなる事を特徴とする筆記具(例えば、特許文献4参照)、
5) インキ収容室に生インキ状態で収容したインキをペン先に供給するようにした筆記具であって、インキ収容室がインキの消費につれて容積減少するように、インキ収容室を形成する壁部に可動壁部を設けたものにおいて、前記可動壁部を前記インキ収容室との区画壁部に有するとともに弾性壁部と毛細管力による液膜形成壁部とを外界との区画壁部に有する空気室を設けたことを特徴とする筆記具(例えば、特許文献5参照)、などが知られている。
【0006】
これらの特許文献1〜5に記載の各筆記具は、従来の構造のものよりは改良されて、その性能は向上しているが、未だインク直流現象・逆流現象に対して不十分であり、特に、筆記具保管時に筆記具本体となるインクタンク内の圧力が高くなった場合に、使用時(キャップ体を筆記具本体から取り外した際)に、ペン先からのインクの漏れ出し(インクのドバ落ち)に対しては不十分なものであった。
特に、本発明の近接技術を開示している上記特許文献5では、内圧変化対応のための弾性膜体を付与しているが、この弾性膜体に反力(戻る力)が無い場合、透過による加圧分を抑えることが出来なく、また、外気圧が大気圧分よりも低くなった場合、内圧は加圧状態になり、外気圧の低下が大気圧以内であっても、その後加温されると、内圧は加圧状態となってしまうものであり、更に、弾性膜体に反力を付与すると、温度変化により、体積が増加した場合、反力分加圧状態になってしまい、当該弾性膜体では、内圧変化には未だ十分に対応してないため、使用時にインクの漏れ出しを生じる場合があるなどの課題がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して詳しく説明する。
図1〜
図4は、本発明の実施形態の一例(第1実施形態)を示す筆記具の各図面である。
本実施形態の筆記具Aは、
図1及び
図3に示すように、軸部となる該筆記具本体10の前部には、ペン先20と、該ペン先20をシールするキャップ体30とを装着すると共に、筆記具本体10内に備えたインクタンクとなるリフィール11に充填したインク25を有し、上記筆記具本体10の後部にインクの直流を抑制する抑制機構40と、インクを充填した状態で、キャップ体30の開放に伴いインクタンクとなるリフィール11内を減圧する可撓性を有する減圧部材50とを備えたものである。
【0014】
筆記具本体10は、軸部となるものであり、樹脂や、金属などを用いて構成することができ、本実施形態では、筆記具本体10は、アクリロニトリルスチレン(AS)を使用して円筒状に成形されている。
この筆記具本体10内には、インク25を収容するリフィール11を備え、後述するように、キャップ体30の開放に伴い、筆記具本体10内でリフィール11が前方に可動する構造となっている。
リフィール11としては、収容するインクに含有される原材料の経時的な悪影響を受けないものが好ましく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)などの樹脂や、アルミニウム等の金属などの視認性、または、非視認性の材料を用いて構成することができる。本実施形態では、インクタンクとなるリフィール11は、ポリプロピレン(PP)を使用して円筒状に成形されている。
【0015】
ペン先20は、各種のプラスチック材の軸方向にインキ溝を形成したプラスチック芯から構成される筆記部となるペン芯から構成されている。
このペン芯20は、リフィール11の先端開口部11a内に取り付けられた筒状の継手部材15で固着される構造となっている。継手部材15は、リフィール11の先端開口部11aに嵌合等により固着される筒状の固着部15aと、蓋部となるフランジ部15bと、ペン芯20を保持する段部15cを有する保持部15dとから構成され、上記筒状の固着部15a内に多孔体からなる中継芯16が保持されており、インクタンクとなるリフィール11に充填したインク25を上記多孔体からなる中継芯16を介してプラスチック芯から構成される筆記部となるペン芯20へ供給する構成となっている。
【0016】
この継手部材15によりペン芯20を先端に固着したリフィール11は、筆記具本体10内に摺動できるように収容されている。このリフィール11の継手部材15は、筆記具本体10の先端開口部に嵌合等により取り付けられた筒状の先軸17に保持される。
先軸17は、筆記具本体10の先端開口部に嵌合等により取り付けられる取付部17aと、内部に、後述するように、キャップ体30の開放に伴い筆記具本体10内でリフィール11が前方に可動した際に継手部材15が前方へ可動できる可動空間部17bが形成されており、この可動空間部17bを有する先軸17の内周面には、リフィール11が前方へ可動した際に可動終点となる段部17c、17dが設けられている。この先軸17に設けた段部17c、17dで、前記継手部材15のフランジ部15bと段部15cが当接してリフィール11の前方への可動が停止するものとなる。
【0017】
インクタンクとなるリフィール11に収容するインク25としては、水性インク、油性インク、ゲルインクなど特に限定されるものでない。用いるインク組成としては、その用途(水性インク、油性インク、ゲルインク等)、筆記具種(マーキングペン、ボールペン等)に応じて顔料(樹脂顔料含む)、染料などの着色剤、主溶剤、樹脂、増粘剤及び筆記具用のインクに含有される任意成分などを用いることができる。
任意成分としては、例えば、インクに悪影響を及ぼさず相溶することができる防錆剤、防黴剤、界面活性剤、潤滑剤及び湿潤剤等を含有することができる。ボールペン用のインクでは、脂肪酸などは潤滑剤として好適に使用できる。また、乾燥抑制用添加剤として製品特性上、悪影響を及ぼさない範囲で主溶剤に相溶する不揮発性溶剤等も含有することができる。
本実施形態では、インク25は、水性サインペン用インクにより構成されている。
【0018】
リフィール11に充填したインク25の後部には、筆記時にインクの消費に伴って追従するフォロワ(追従体)26が設けられ、その後方側は空気室となる空間部27となっている。
フォロワ(追従体)26としては、インクに使用する溶剤に対して低透過性、低拡散性となるものが好ましく、そのベースとしては不揮発性や難揮発性の流動体、具体的には、ポリブテンや流動パラフィン、鉱油、プロセスオイルなどを使用することができる。
これらの物質の粘度が低い場合には、増粘剤やゲル化剤を用いることが好ましい。具体的には、金属セッケン類、ベントナイト類、脂肪酸アマイド類、水添ヒマシ油類、酸化チタンやシリカやアルミナ等を含む金属微粒子類、セルロース類、エラストマー類等が挙げられる。本実施形態では、フォロワ(追従体)26は鉱油と増粘剤により構成されている。
【0019】
キャップ体30は、筆記具本体(軸部)10の前端側に着脱自在に装着される取付部となる筒状の本体部31と、該本体部31の開口部31aに取り付けた天冠部32と、該天冠部32内部にペン先20の突出部分全体をシールするニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のゴム、熱可塑性エラストマー、軟質樹脂などで構成されたシール部材33を装着する凹状の装着部34と、前記天冠部32に一体に有するクリップ部35とを有している。
このキャップ体30を筆記具本体10の前端側に装着することにより、継手部材15を保持した先軸16から突出したペン芯20の先端全体がシール部材33によりシールされて、インクタンク11の内圧変化の際に、ペン先20からの直流現象を防止するものとなる。本実施形態のシール部材は、ブチルゴム(IIR)から構成されている。
【0020】
この筆記具Aでは、筆記具本体10の後部にインクの直流を抑制する抑制機構40と、インクを充填した状態で、キャップ体30の開放、すなわち、筆記具本体10からのキャップ体30の取り外しに伴い、インクタンク11内を減圧する可撓性を有する減圧部材50を備えている。
また、筆記具本体10の後端側の開口部10bには、尾栓60が固着されている。尾栓60は、筆記具本体外となる大気と連通する連通孔61を有する蓋部62と、筆記具本体10の開口部10bに嵌合により固着される筒状の固着部63と、インクタンク側に伸びる棒状部材64とを有している。
【0021】
上記インクの直流を抑制する抑制機構40は、インクの直流を抑制する毛管力を付与した毛管多孔体41を備えている。この毛管多孔体41は、本実施形態では、減圧機構50内に収容される構造となっている。
毛管多孔体41は、毛管力が付与された多孔体から構成されるものであれば、特に限定されず、例えば、繊維束、焼結体、フェルト等の繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、スポンジ等の発泡材などから選択される多孔体に、鉱油、プロセスオイル、シリコンオイル、イオン性液体などの液体を含浸させたものを挙げることができる。
好ましくは、揮発防止の点から、蒸気圧の低いプロセスオイルなどから構成されるものが望ましい。
この毛管多孔体41により、インクが排出されると空気を取り込む為、筆記は可能であり、筆記を止めた場合は、空間部27の減圧状態を保持することが可能となり、インクの直流を防止するものとなる。
【0022】
本実施形態の可撓性を有する減圧部材50は、フォロワ(追従体)26の後端側に空間部27を有するインクタンク11の後端開口部11bに固着される本体部51と、毛管多孔体41を収容する筒状の収容部材52と、上記本体部51と収容部材52とを連結する連結部53と、上記収容部材52の上部に形成した連通孔54とを有するものであり、ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質樹脂などを用いて一体成形等で構成することができる。
この可撓性を有する減圧部材50を固着したリフィール11をペン先20側へ附勢させるコイル状のスプリングからなる弾性部材55を上記尾栓60の固着部63と本体部51との間で介装させて、キャップ体30の開放に伴いインクタンクとなるリフィール11内を減圧する構成とするものである。
【0023】
上記減圧機構50内に収容した弾性部材55の弾性力は、筆記時に筆圧でリフィール11が後退しないようにする必要がある為、筆記圧以上の荷重にする必要があり、さらにキャップON時にはキャップ体30が外れないようにする必要があることから、ペン芯20の座屈荷重以上、キャップ体引抜力以下となっている。
本実施形態では、筆記荷重は、通常、2N程度であり、キャップ体引抜力は本実施形態では25N、ペン芯20の座屈荷重は7Nとなっている。
【0024】
このように構成される本第1実施形態の筆記具Aでは、筆記具保管時に筆記具本体10内の圧力が高くなったとしても、キャップ開放時にインクタンクとなるリフィール内を減圧にすることができ、使用時にペン先からのインクの漏れ出しを防止することができるものとなる。すなわち、取り付けたキャップ体30を取り外(開放)した際に、リフィール11の後端部は固定したまま、リフィール11全体がシールしながら前進することで、インクタンクとなるリフィール11の空間部27を体積膨張(空間部の体積を増加)させる。一方、キャップ取り付け時は体積収縮するが、リフィール11の後端部に設けた毛管多孔体41により、加圧分を逃がす構造とした。詳述すると、
図2及び
図4に示すように、キャップ体30を差し込むと、ペン先20がシール部材33にあたりシールし、さらにキャップ体30を差し込むと、リフィール11が後退し、可撓性の減圧部材50がリフィール11内に押し込まれることで、リフィール11内は加圧状態となる。ただし、毛管体以上の加圧量は保持出来ない為、圧が抜けていく。一方、キャップ体30を外した場合は、リフィール11が前進し、可撓性の減圧部材50が初期状態に戻る為、リフィール11内は体積膨張することで、減圧状態となる。このようにすることで、筆記具保管時に筆記具本体10内のインクタンクとなるリフィール11内の圧力が高くなったとしても、キャップ開放時にはリフィール11内を強制的に減圧にすることができ、使用時にペン先からのインクの漏れ出しを防止することができる。
また、通常の筆記の際や、筆記を終了の際には、リフィール11の後端部に設けたインクの直流を抑制する上述の毛管多孔体41の抑制機構のサイクルにより、ペン先に掛かるインクの流動圧を一定圧に制御して、インク直流現象・逆流現象を防止したものとなる。すなわち、リフィール11の後端部に毛管多孔体41を備えているので、筆記の際はインク排出により、フォロワ30と毛管多孔体40の間の空間部27が減圧状態となり、減圧が毛管多孔体41の毛管力以上になると、毛管多孔体41の毛管力が破れて、空気(気泡)が侵入し、通常通り、筆記が可能となる。一方、筆記を終えると、上記で発生した気泡は、破泡し、毛管多孔体41に液体が染み込み毛管力が復元し、インクの自重を支えることができる。
更に、本第1実施形態の筆記具Aでは、キャップ体30の装着時には、ペン芯20の突出部分全体がシール部材33によりシールされているので、インクタンクの加温等の内圧変化の際にも、ペン先20からの直流現象を防止するものとなる。
【0025】
次に、
図5〜
図17は、本発明の筆記具の他例(第2実施形態〜第7実施形態)を示すものである。なお、
図5〜
図17において、上記第1実施形態(
図1〜
図4)と同様の構造は、同一の図示符号を示して、その説明を省略する。
【0026】
図5は、本発明の第2実施形態を示す筆記具であり、(a)はキャップ体を取り付けた状態を示す縦断面図、(b)は、キャップ体を取り外した状態を示す縦断面図である。
この第2実施形態となる筆記具Bは、上記第1実施形態の筆記具Aにおいて、ペン先を各種のプラスチック材の軸方向にインキ溝を形成したプラスチック芯20に代えて、繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、または、各種のプラスチック粉末などを焼結した焼結芯(ポーラス体)などから構成される筆記部となるペン芯、本実施形態ではポリエチレンテレフタレート(PET)繊維からなる繊維束芯から構成されるペン芯に代えた点、中継芯16を省略した点、リフィール11が前方へ可動した際に可動終点となる先軸17に形成した段部を傾斜状段部17eに代えた点、キャップ体30を、筆記具本体(軸部)10の前端側に着脱自在に装着される取付部となる有底筒状の本体部36とし、該本体部36の内部にペン芯20の突出部分全体をシールするBR、SBR等のゴム、熱可塑性エラストマー、軟質樹脂などで構成されたシール部材33を装着する凹状の装着部34と簡単な構成とした点で、上記実施形態の筆記具Aと相違するものである。
本実施形態の筆記具Bによれば、上記実施形態の筆記具Aと同様に作用するものであり、キャップ体30を開放した際に、リフィール11の後端部は固定したまま、リフィール11全体がシールしながら前進することで、インクタンクとなるリフィール11の空間部27を体積膨張させ、キャップ体30の取り付け時は体積収縮するが、リフィール11の後端部に設けたヘッドバルブとなる毛管多孔体41により、加圧分を逃がす構造としたので、キャップ体30の開放時にインクタンク11内を減圧にすることができ、使用時にペン先20からのインクの漏れ出しを防止することができ、しかも、通常の筆記では毛管多孔体41の作用により、ペン先に掛かるインクの流動圧を一定圧に制御して、インク直流現象・逆流現象を防止したものとなる。
【0027】
図6は、本発明の第3実施形態を示す筆記具である。
この第3実施形態となる筆記具Cは、
図6(a)及び(b)に示すように、上記第1実施形態の筆記具Aにおいて、ペン先を各種のプラスチック材の軸方向にインキ溝を形成したプラスチック芯20に代えて、繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、または、各種のプラスチック粉末などを焼結した焼結芯(ポーラス体)などから構成される筆記部となるペン芯である。本実施形態ではポリエチレンテレフタレート(PET)繊維からなる繊維束芯から構成されるペン芯とした。リフィール11からペン芯20へのインク25の供給機構が中継芯16を省略してバルブ体70により行う点、リフィール11が前方へ可動した際に可動終点となる先軸17に形成した段部を傾斜状段部17eに代えた点、筆記時にインクの消費に伴って追従するフォロワ(追従体)26を省略した点、キャップ体30を、上記第2実施形態のキャップ体に代えた点で、上記実施形態の筆記具Aと相違するものである。
上記バルブ体70は、上記ペン芯20の後端部に当接し、該ペン芯の後退に連動して後退可能な弁棒71と、該弁棒71を上記ペン芯20の方向に付勢するスプリング部材72と、これらの弁棒71、スプリング部材72を収容する本体部73と、リフィール11からペン芯20へのインク流路を閉鎖・開放する弁座体74とを備え、上記ペン芯20を押圧することにより弁棒71が後退して弁棒71に形成した弁体71aが弁座体74の弁座74aから離れ、リフィール11内のインク25をペン芯20に供給せしめるものである。また、図示符号75は、ペン芯20の後端側に設けたスポンジ等の多孔質体で構成される一時貯留部である。
本実施形態の筆記具Cによれば、上記実施形態の筆記具A、Bと同様に、本発明の効果を発揮できるものである。
【0028】
図7は、本発明の第4実施形態を示す筆記具である。
この第4実施形態となる筆記具Dは、
図7(a)及び(b)に示すように、上記第1実施形態の筆記具Cにおいて、インクの直流を抑制する抑制機構となる毛管力を付与した毛管多孔体41を該毛管多孔体41と同様の作用を行う逆止弁80で構成した点で、上記第3実施形態の筆記具Cと相違するものである。
この逆止弁80は、上記可撓性の減圧部材50と共に一体に設けたものであり、キャップをし、リフィール11が後退した時に内圧を逃がし、キャップ体60を外した時に内圧を減らすことが出来る。
本実施形態の筆記具Dによれば、上記実施形態の筆記具A〜Cと同様に、本発明の効果を発揮できるものである。
【0029】
図8は、本発明の第5実施形態を示すボールペンに適用した筆記具である。
この第5実施形態となる筆記具Eは、
図8(a)及び(b)に示すように、上記第1実施形態の筆記具Aにおいて、ペン先を各種のプラスチック材の軸方向にインキ溝を形成したプラスチック芯20に代えて、筆記ボールを有するボールペンチップから構成される筆記部となるペン芯、リフィール11が前方へ可動した際に可動終点となる先軸17に形成した段部を傾斜状段部17eに代えた点で、上記実施形態の筆記具Aと相違するものである。
本実施形態のボールペンに適用した筆記具Eによれば、上記実施形態の筆記具A〜Dと同様に、本発明の効果を発揮できるものである。
【0030】
図9〜
図12は、本発明の第6実施形態を示す筆記具である。
この第6実施形態となる筆記具Fは、
図9〜
図12に示すように、上記第1実施形態の筆記具Aにおいて、ペン先を各種のプラスチック材の軸方向にインキ溝を形成したプラスチック芯20に代えて、繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、または、各種のプラスチック粉末などを焼結した焼結芯(ポーラス体)などから構成される筆記部となるペン芯、本実施形態では繊維束を樹脂加工した繊維芯となるペン芯に代えた点、中継芯16を省略した点、筆記具本体10の外周面に熱可塑性エラストマー等の軟質の樹脂材等からなる把持部12を有する点で異なると共に、可撓性の減圧部材50及び尾栓60の構造を下記のように若干変更した点で上記実施形態の筆記具Aと相違するものである。
この実施形態の可撓性を有する減圧部材50は、
図11(a)〜(e)に示すように、本体部51と、底部に毛管多孔体41を収容する収容段部52aを有する筒状の収容部材52と、上記本体部51と収容部材52とを連結する伸縮自在となる連結部53とが筒状に一体に構成されている。この減圧部材50は、本形態ではゴム系材料(ブチルゴム)から構成されており、連結部53が伸縮自在となっている。
尾栓60は、
図12(a)〜(f)に示すように、蓋部62と、筆記具本体10の開口部10bに嵌合により固着される筒状の固着部63と、インクタンク側に伸びる拡径部64aと縮径部64bからなる棒状部材64とを有し、蓋部62、筒状の固着部63及び棒状部材64内には筆記具本体外となる大気と連通する連通孔61が形成されている。上記減圧部材50の本体部51及び連結部53内の内空間部51a及び53aに尾栓60の棒状部材64が挿入される構造となっており、棒状部材64の縮径部64bの先端部が筒状の収容部材52の収容段部52a面に当接する構造となっている。
【0031】
本実施形態では、
図9及び
図10に示すように、減圧機構である減圧部材50の連結部53が伸縮することによって、空間部27の減圧を調整することができ、上述の各実施形態の筆記具A〜Eと同様に作用し、キャップ体30を開放した際に、リフィール11の後端部は固定したまま、リフィール11全体がシールしながら前進することで、インクタンクとなるリフィール11の空間部27を体積膨張させ、キャップ体30の取り付け時は体積収縮するが、リフィール11の後端部に設けたヘッドバルブとなる毛管多孔体41により、加圧分を逃がす構造としたので、キャップ体30の開放時にインクタンク11内を減圧にすることができ、使用時にペン先20からのインクの漏れ出しを防止することができ、しかも、通常の筆記では毛管多孔体41の作用により、ペン先に掛かるインクの流動圧を一定圧に制御して、インク直流現象・逆流現象を防止したものとなる。
【0032】
図13〜
図17は、本発明の第7実施形態を示すノック式のボールペンに適用した筆記具である。
この第7実施形態となる筆記具Gは、キャップ体がないノック式のボールペンタイプの筆記具であり、ノック式とするために、ノック機構70、押圧部材56などの各部材を取り付けると共に、尾栓60の構造を若干変更した点以外で、上記第6の実施形態の筆記具と同様である。本形態の減圧機構である減圧部材50は、
図15に示すように、上記第6の実施形態と同様に、連結部53が伸縮することによって、空間部27の減圧を調整することができるものである。
押圧部材56は、
図17(a)〜(d)に示すように、略筒状体に形成されており、長さ方向に切り欠き部56a,56aが形成されて、押圧部材は二分割された分割押圧部材56b,56bとなっている。この押圧部材56の後方側はノック機構の前端と当接する当接部56cを有し、上記分割押圧部材56b,56bの先端で減圧部材50の後端面を押圧する構成となっている。
尾栓60は、
図16(a)〜(f)に示すように、筒状体に形成されており、該筒状体60a内の中央部に更に連通孔61を有する筒状の棒状部材64を押圧部材側の開口部に形成した連結体65で連結すると共に、該連結体65により尾栓60内を2分割して上記押圧部材56の分割押圧部材56b,56bが挿入される挿入孔66,66となっている。
【0033】
ノック機構70は、
図13及び
図14に示すように、クリップ部35を有する筆記具本体10の後端開口部10bに取り付けられる内筒71内に前後方向に移動可能に配置された回転子72と、内筒71内に後端から突出して且つ前後方向に移動可能な操作部であるノック体73とを有する公知の機構である。ノック機構70は、リフィール11と共に、継手部材15と先軸17の間に保持されるスプリング部材13によって後方へ付勢されている。ノック操作は、ノック体73を前方に向かって押圧することによって行われる。
ノック操作を行うと、ノック体73の移動によって回転子72が前方へ押圧され、回転子72と内筒のカム部74の前端面とが係止し、筆記状態を維持する。再びノック操作を行うと、ノック体73の移動によって回転子72が前方へ押圧され、回転子72と内筒のカム部74の前端面との係止が解除される。このため、スプリング部材13の付勢力によってノック機構70が後方へ移動し、筆記具は非筆記状態となる。
【0034】
本実施形態では、減圧機構である減圧部材50の連結部53が伸縮することによって、空間部27の減圧を調整することができ、非筆記状態では尾栓60が毛管体41を介して減圧部材50を伸ばした状態にしているが、筆記時に、ペン先を出すためにノック操作をすることにより、リフィール11に固定された毛管体41を含む減圧部材50は前進するが、その際に軸に固定された尾栓60と毛管体41とが、離れることによって、伸縮部材50の連結部53が縮み、空間部27は体積膨張することで、空間部27は減圧状態となる。また、非筆記時はペン先をしまうために再度ノック操作をすることで、毛管体41と減圧部材50を含むリフィール11が後退するため、軸に固定された尾栓60と当接し、減圧部材50が伸びることになり、空間部27が体積収縮することで加圧状態となるが、毛管体41から加圧分を逃す構造としたので、ノック操作による筆記時にインクタンク11内を減圧にすることができ、使用時にペン先となるボールペン体20からのインクの漏れ出しを防止することができ、しかも、通常の筆記では毛管多孔体41の作用により、ペン先に掛かるインクの流動圧を一定圧に制御して、インク直流現象・逆流現象を防止したものとなる。
【0035】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の形態に変更することができる。
【実施例】
【0036】
次に、実施例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0037】
〔実施例1:
図1〜
図4準拠〕
(筆記具本体、リフィール、先軸の各構成)
筆記具本体10:AS製、肉厚(厚さ)1.5mm、長さ120mm、直径φ10mm
リフィール(インクタンク)11:PP製、肉厚(厚さ)0.8mm、長さ100mm、直径φ5.6mm
先軸:SUS製
(ペン先の構成)
筆記部ペン芯:POM製、長さ10mm、直径φ1.0mm
(毛管多孔体41の構成)
毛管多孔体:アクリル製繊維芯、気孔率60%、長さ5mm、直径φ2.0mm
液体:松村石油株式会社製:バーレルプロセス油 P−26
(尾栓の構成)
PP製、連通孔:直径φ0.8mm
(キャップ体の構成)
本体:PP製、シール部材:IIR製
(減圧部材等)
弾性部材:SUS製コイル状スプリング、弾性(バネ)荷重:10N、キャップ体引抜力:25N、ペン芯20の座屈荷重:7N
可撓性の減圧部材50の構成:NBR製
【0038】
(インク25、フォロア26の組成)
インクとして、下記組成の蛍光桃インクを使用した。
色材 :VCトナー桃(御国色素社製) 30質量部
湿潤剤:グリセリン 25質量部
防腐剤:バイオエース(ケイアイ化成社製) 0.7質量部
イオン交換水 44.3質量部
フォロアとして、松村石油株式会社製:バーレルプロセス油 P−26を使用した。
【0039】
このように構成される実施例1の筆記具を用いて、筆記の際は、通常通り、筆記が可能となり、また、筆記を終えても、インクの直流もなく、ペン先に掛かるインクの流動圧が一定圧に制御でき、インク直流現象・逆流現象を防止した筆記具が得られることが判った。
また、キャップ体を開放した際にも、インクタンクとなるリフィールの空間部が体積膨張するが、液体を含浸させた毛管多孔体により、加圧分を逃がす構造となっているので、キャップ体の開放時にインクタンク内を減圧にすることができ、使用時にペン先からのインクの漏れ出しがないことが確認された。
また、
図5〜7、
図9〜14の各筆記具B〜D、Fについても、上記実施例1の構成部品、インクに準拠して、各筆記具B〜D、F(4本)を作製して、評価を行ったところ、筆記の際は、通常通り、筆記が可能となり、また、筆記を終えても、インクの直流もなく、ペン先に掛かるインクの流動圧が一定圧に制御でき、インク直流現象・逆流現象を防止した各筆記具B〜D、Fが得られ、また、キャップ体を開放した際にも、インクタンクとなるリフィールの空間部が体積膨張するが、液体を含浸させた毛管多孔体により、加圧分を逃がす構造となっているので、キャップ体の開放時にインクタンク内を減圧にすることができ、使用時にペン先からのインクの漏れ出しがないことが確認された。
【0040】
〔実施例2:ボールペン、
図8準拠〕
(実施例1と異なる筆記具部材の構成)
下記ペン先、インク以外の構成(筆記具本体、先軸、部材、毛管多孔体、キャップ体)は上記実施例1の構成と同様。
ペン先(ボールペンチップ):ステンレス製チップ(超硬合金ボール、ボール径0.5mm
インクとして、下記組成のボールペン用インク(全量100質量部)を使用した。
色材:カーボンブラック 8.0質量部
分散剤:スチレンマレイン酸樹脂アンモニウム塩 3.0質量部
潤滑剤:カリ石鹸 0.5質量部
液体媒体:プロピレングリコール 20.0質量部
防腐剤:1、2−ベンズイソチアゾロン塩 0.3質量部
pH調整剤:アミノメチルプロパノール 0.3質量部
防錆剤:ベンゾトリアゾール 0.2質量部
粘度調整剤:架橋型アクリル酸重合体 0.4質量部
イオン交換水 残 部
このように構成される実施例2のボールペンタイプの筆記具を用いて、筆記の際は、通常通り、筆記が可能となり、また、筆記を終えても、インクの直流もなく、ペン先に掛かるインクの流動圧が一定圧に制御でき、インク直流現象・逆流現象を防止したボールペンが得られることが分かった。また、上記実施例1と同様に、キャップ体の開放時にインクタンク内を減圧にすることができ、使用時にペン先からのインクの漏れ出しがないことが確認された。
【0041】
〔実施例3:ノック式のボールペン、
図13〜
図17準拠〕
三菱鉛筆社製のノック式ボールペン(型番:SXN−150−05)のノック機構、外軸およびインク収容管(リフィールチューブ、内径4mm)に、実施例2のインク、押圧部材としてポリアセタール製を用いると共に、その他の構成部品は実施例1に準拠して
図13〜
図17に準拠したノック式のボールペンを作製した。
このように構成される実施例3のノック式のボールペンタイプの筆記具を用いて、筆記の際は、通常通り、筆記が可能となり、また、筆記を終えても、インクの直流もなく、ペン先に掛かるインクの流動圧が一定圧に制御でき、インク直流現象・逆流現象を防止したノック式ボールペンが得られることが判った。また、ノック操作時にインクタンク内を減圧にすることができ、使用時にペン先からのインクの漏れ出しがないことが確認された。