(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1蓋部の、前記第1壁部が設けられている面と対向する面は、前記第2筒状部材の長手方向に沿った中心線に対して傾斜している、請求項1に記載の可動式防波堤。
前記第2蓋部の、前記第2壁部が設けられている面と対向する面は、前記第2筒状部材の長手方向に沿った中心線に対して傾斜している、請求項3に記載の可動式防波堤。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。
【0017】
本実施形態に係る可動式防波堤は、海底、川底などの水底に設置されて、例えば、津波や高潮などが発生した場合には、水底から水面上に浮上して、津波や高潮の通過を阻害し、港湾設備又は人家などの防波堤の背後地を保護する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る可動式防波施設1の平面図である。
図2は、
図1のA−A矢視一部断面図である。
図2は、本実施形態に係る可動式防波堤10が浮上した状態を示している。
図3は、
図1のB−B断面図である。
図3は、本実施形態に係る可動式防波堤10が水底にある状態、すなわち浮上前の状態を示している。
図4は、本実施形態に係る可動式防波堤10を備える可動式防波施設1の全体構成図である。
図5−1〜
図5−3は、本実施形態に係る可動式防波堤10の浮上管12が浮上する様子を示す模式図である。
【0019】
図1〜
図3に示すように、可動式防波施設1は、複数の可動式防波堤10と、監視・制御システム施設100とを含む。本実施形態において、複数の可動式防波堤10は、岸壁K1、K2の間に一列に配置されて、港の内側(港内BI)と港の外側(港外BO)とを仕切っている。可動式防波堤10は、第1筒状部材としての外筒管11の内側に第2筒状部材としての浮上管12が配置される。可動式防波堤10は、浮上管12の内部に気体(本実施形態では空気)が供給されることによって浮上管12を浮上(上昇)させる構造である。なお、可動式防波堤10は、岸壁K1、K2の間に限らず、防波堤(固定式、杭式、浮体式を含む)の間にも設置可能である。
【0020】
それぞれの可動式防波堤10は、各送気管3から空気が送られる。複数の送気管3は、水底に配置される送気管ダクト2にまとめられて、一方の岸壁K2上の監視・制御システム施設100内に備えられる気体供給装置に接続される。そして、有事の際、例えば、津波や高潮などの発生時には、前記気体供給装置から送気管3を介して、それぞれの可動式防波堤10の浮上管12内へ気体が供給されて、浮上管12が水底から浮上し、一部が水面から突出する。
【0021】
図2及び
図3に示すように、可動式防波堤10は、外筒管11(可動式防波堤10の固定部分)と、浮上管12(可動式防波堤10の可動部分)とを有する。外筒管11及び浮上管12は、円筒形状の部材であり、本実施形態では鋼管である。外筒管11及び浮上管12は、いずれも防食が施されている。なお、外筒管11及び浮上管12は、円筒形状に限られるものではない。なお、外筒管11及び浮上管12は、鋼管に限らず、炭素繊維で製造されていてもよい。あるいは、外筒管11又は浮上管12の一方が鋼管で、他方が炭素繊維で構成されるような異種材料であってもよい。
【0022】
外筒管11は、上下に延伸する筒状の部材で、水底から水底地盤E内に向かって打ち込まれている。本実施形態において、下とは鉛直方向、すなわち重力が作用する方向側である。上とは鉛直方向の反対方向側である。外筒管11は、水底側の外周の寸法よりも、水底から水底地盤E内に向かって延伸する部分の寸法の方が大きい。外筒管11は、下層部が水底地盤E内に挿入されてから固定されている。外筒管11は、上層部の周囲に捨石5が敷設されている。この捨石5の上面が水底面GLとなる。外筒管11は、水底側である上端に開口部11aを有する。また、外筒管11は、水底地盤Eに挿入された底部から送気管3が差し込まれる。送気管3は、外筒管11の内部に気体出口3aが配置される。
【0023】
浮上管12は筒状の部材である。浮上管12は、第1の端部としての下端部34が、外筒管11の開口部11aから、外筒管11の長手方向(管軸方向)に沿って差し込まれ、外筒管11の内部に挿入される。浮上管12は、その内部に供給される気体によって浮力を発生して、外筒管11の内部から上昇できるようになっている。具体的には、
図3に示すように、浮上管12は、内部に複数の仕切部材(本実施形態では板状の部材)15、16が設けられている。以下において、仕切部材15を第1仕切部材といい、仕切部材16を第2仕切部材という。
【0024】
第1仕切部材15は、浮上管12の上方に配置され、第2仕切部材16は、第1仕切部材15の下方に配置される。また、浮上管12は、第2の端部としての上端部32aが第1蓋部としての蓋17aによって閉塞されている。蓋17aには、第1壁部としての壁19aが取り付けられている。蓋17a及び壁19aの詳細な構造については後述する。浮上管12は、第1仕切部材15、第2仕切部材16及び蓋17aによって、内部が複数の部屋に仕切られる。
【0025】
第1仕切部材15と第2仕切部材16と浮上管12の側壁とで仕切られる空間13は、送気管3から浮上管12の内部に供給された気体を溜めて、浮上管12に浮力を発生させるための空間である。以下、空間13を気室13という。蓋17aと第1仕切部材15と浮上管12の側壁とで仕切られる空間CRは、可動式防波堤10の状態を監視したり、送気管3から気体が供給されなかった場合に浮上管12を浮上させたり、浮上した浮上管12を下降させて外筒管11の内部に戻す動作をさせたりするための制御機器20が配置されている。以下、空間CRを機械室CRという。第2仕切部材16は、孔16aを備える。孔16aは、送気管3から浮上管12の内部に供給される気体を気室13へ導く。
【0026】
浮上管12は、その側壁内面に浮力発生手段14が取り付けられる。浮力発生手段14は、例えば、気泡を有する樹脂、例えば、発泡スチロールなどである。また、浮力発生手段14は、単なる空間に空気などの気体を充填した構造としてもよい。浮力発生手段14を浮上管12に取り付けることにより、浮上管12を浮上させる際には、浮上管12を浮上させるために必要な浮力のうち、浮力発生手段14が発生する浮力で不足する分を気体によってまかなえばよい。このようにすることで、浮上管12の内部に供給する気体の量を低減できるので、浮上管12を迅速に浮上させることができる。
【0027】
浮上管12は、その下端部34に開口部12aが設けられている。そして、開口部12aの下方に、送気管3の気体出口3aが配置される。送気管3の気体入口は、上述した気体供給装置に接続されている。
【0028】
気体供給装置は、
図4に示すように、気体ボトル104と、気体ボトル104と送気管3との間に設けられる開閉弁110と、電動機103で駆動される圧縮機102とを含む。これらは、監視・制御システム施設100に備えられる。送気管3の気体入口は、気体供給装置を構成する開閉弁110に接続されている。気体ボトル104は、圧縮機102によって高圧(20MPa程度)の気体が充填される。そして、浮上管12を浮上させる際には、開閉弁110が開かれて、気体ボトル104内の気体が送気管3を通って浮上管12の内部に供給される。
【0029】
電動機103及び圧縮機102は、監視・制御装置101によって制御される。監視・制御装置101は、例えば、気体ボトル104内に充填されている気体の圧力を気体圧力センサ111によって取得し、規定の圧力よりも低い場合には電動機103を駆動して圧縮機102を作動させ、規定の圧力になるまで圧縮機102から気体ボトル104内へ気体を充填する。
【0030】
さらに、監視・制御装置101は、可動式防波堤10の機械室CR内の制御機器20と通信して、可動式防波堤10の状態を監視したり、浮上管12の動きを制御したりする。例えば、浮上した浮上管12を外筒管11内に戻す場合、監視・制御装置101は、制御機器20を介して、気室13と気室13の外部とを接続する配管の途中に設けられた排気弁18を開く。この操作によって、気室13内の気体が気室13の外部に放出されるとともに、気室13内の気体が水に置換されて浮上管12の浮力が低下するので、浮上管12は沈降して外筒管11内に収まる。
【0031】
有事の際、例えば、監視・制御装置101が津波や高潮などの警報を受信した場合、監視・制御装置101は、開閉弁110を開き、
図5−1に示すように、送気管3を介して気体ボトル104内の気体を浮上管12の内部に供給する。送気管3から浮上管12内へ供給された気体は、
図5−1に示すように、第2仕切部材16の孔16aを通って気室13へ入る。気室13の内部の気体によって発生する浮力と、浮力発生手段14によって発生する浮力との和が水中における浮上管12全体の重量を超えると、
図5−2に示すように、浮上管12は、水面WLに向かって外筒管11から浮上を開始する。そして、
図5−3に示すように、浮上管12の一部が水面WL上に突出する。このとき、気室13内の余分な気体は、気室13に設けられた孔D1から排出される。また、機械室CR内の水は、機械室CRに設けられた孔D2から排水される。このようにして、有事の際には、
図2に示すように複数の浮上管12が一列に水面WLから突出して防波堤の機能を発揮し、津波や高潮などから港湾設備などを保護する。次に、可動式防波施設1に設けられた可動式防波堤10の詳細について図を参照して説明する。
【0032】
図6は、本実施形態に係る可動式防波堤が有する外筒管11と浮上管12の断面図である。
図6に示すように、浮上管12の上端部32aには、円盤形状の蓋17aが取り付けられている。
図1に示すように、蓋17aは、平面視、すなわち蓋17aの板面と直交する方向から見た場合の形状が円形であるが、蓋17aは円形に限られない。また、本実施例では、蓋17aは浮上管12の上端部32a側の上端面44aに取り付けられているが、蓋17aは上端部32aであって、浮上管12の側面35に取り付けられていてもよい。蓋17aの外周部33aは、浮上管12の長手方向Aと直交する方向であって、外筒管11の外周部37よりも外側に延伸する。蓋17aの外周部の位置は、少なくとも外筒管11の内周部38の位置よりも外側にあればよい。
【0033】
図6に示すように、蓋17aの、浮上管12の下端部34側の面(以下、適宜下面39aという)には、壁19aが設けられている。壁19aは、浮上管12の長手方向Aと直交する方向であって、外筒管11の外周37よりも外側に設けられている。より具体的には、壁19aの内壁42aが、外筒管11の外周37よりも外側に設けられている。本実施形態において、壁19aが蓋17aに設けられる位置はこのような位置に限定されない。本実施形態において、壁19aは、少なくとも浮上管12の外周部43よりも外側に設けられていればよく、例えば外筒管11の内周部38よりも内側に設けられていてもよい。
【0034】
壁19aは、蓋17aの下面39aに設けられ、下面39aから離れる方向に向かって延伸している。すなわち、壁19aは、蓋17aの下面39aに設けられ、浮上管12の上端部32aから下端部34に向かって延伸している。本実施形態において、壁19aは浮上管12の周方向の全周にわたって設けられているが、壁19aは浮上管12の周方向において、所定の間隔を空けて設けられていてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、浮上管12が外筒管11に収められている際に、壁19aは外筒管11の開口部11aよりも水底面GL側に延伸しているが、壁19aは外筒管11の開口部11aよりも水底面GL側に延伸していなくてもよい。壁19aは蓋17aの下面39aから離れる方向に向かって、0mm以上ラップしているのが好ましい。また、本実施例では、外筒管11の開口部11aは水底面GLから水面WL方向に突出しているが、鉛直方向における開口部11aの位置は水底面GLと同じ高さであってもよい。
【0036】
外筒管11と浮上管12との間に土砂等が詰まった場合、浮上管12の浮上に時間を要したり、浮上できなくなったりする可能性がある。ここで、蓋17aの外周部33aは外筒管11の内周部38よりも大きいため、浮上管12が沈降して外筒管11の内部に収まっている際には、蓋17aが外筒管11と浮上管12との間を上から覆う状態となっている。そのため、蓋17aは、外筒管11及び浮上管12に向かって上部から沈降してきた海中の土砂等が、外筒管11と浮上管12との間に侵入する事を抑制する。また、壁19aは、浮上管12が沈降して外筒管11の内部に収まっている際に、外筒管11の上端面56と蓋17aとの間から、外筒管11と浮上管12との間へ土砂が侵入する通路を遮断する構造となっている。そのため、壁19aは、外筒管11の上端面56と蓋17aとの間から、外筒管11と浮上管12との間に向かって移動してくる海中の土砂等が、外筒管11と浮上管12との間に侵入する事を抑制する。
【0037】
このように、本実施形態は、蓋17a及び蓋17aに設けられた壁19aによって、土砂が外筒管11と浮上管12との間に侵入することを抑制できる。その結果、より迅速かつ確実に浮上管12を浮上させる事ができる。また、外筒管11は地盤側の端部45を有しているが、外筒管11と浮上管12との間から土砂等が侵入した場合、外筒管11の地盤側の端部45に土砂等が堆積する。この場合、浮上管12を浮上させた後で浮上管12を外筒管11に収める際に、浮上管12が外筒管11に格納できなくなる可能性がある。しかし、本実施形態によると、蓋17a及び壁19aが外筒管11と浮上管12との間に土砂が侵入することを抑制するので、外筒管11の地盤側の端部45に土砂等が堆積される事を抑制できる。その結果、浮上管12は、外筒管11の内部に、より確実に格納される。
【0038】
図7は本実施形態の変形例に係る可動式防波堤10aが有する外筒管11と浮上管12の断面図である。
図7に示すように、蓋17a2には、蓋17a2の一部として、小蓋30が設けられている。小蓋30は蓋17a2に対して着脱可能に設けられている。小蓋30は、通常は、例えばボルト等で蓋17a2に固定されている。浮上管12の内部の空間CRには制御機器20が設けられている。通常時において、空間CRは、蓋17a2によって浮上管12の外部から閉ざされている。
【0039】
例えば、1年に1度など、定期的に制御機器20のメンテナンスが行われる。メンテナンスが行われる際には浮上管12を浮上させ、水上でメンテナンス作業が行われる。このとき、小蓋30が蓋17a2から取り外される事によって、空間CRは浮上管12の外部に対して開かれるので、容易に制御機器20のメンテナンス作業を行う事ができる。メンテナンス作業が終了すれば、小蓋30が蓋17a2に取り付けられて、浮上管12を沈降させて外筒管11に収める。
【0040】
小蓋30は蓋17a2に対して少なくとも着脱可能であればよい。例えば、小蓋30の外周部にねじ部を設けて蓋17a2にねじ込んだり、ヒンジを設けたりして着脱可能としてもよい。また、小蓋30は蓋17a2から上方向に取り外し可能である構造になっているが、小蓋30は蓋17a2に対して少なくとも着脱可能であればよく、例えば左右方向に取り外し可能である構造でもよい。また、小蓋30は設けず、蓋17a2がボルト又はねじ部などによって浮上管12に対して着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0041】
(実施形態2)
図8は、本実施形態に係る可動式防波堤10bが有する外筒管11と浮上管12の断面図である。
図8に示すように、浮上管12の上端部32bには蓋17bが取り付けられている。また、蓋17bの、浮上管12の下端部34側の面(以下、適宜下面39bという)には、壁19bが設けられている。蓋17bの、下面39bとは反対側の面(以下、適宜上面50bという)は、円錐形状である。円錐形状の上面50bの頂点52bは、浮上管12が浮上する方向である水面側に設けられている。
【0042】
蓋17bの上面50bは円錐形状でなくてもよい。例えば、蓋17bの上面50bは、少なくとも浮上管の長手方向Aに沿った中心線CLに対して傾斜していればよい。例えば、蓋17bの上面50bは、半球形状であったり、円柱の長手方向に対して傾斜した平面でこの円柱を切断した形状であったり、三角柱の側面のうち隣接する2面を組み合わせた形状(屋根型の形状)であったりしてもよい。この点で実施形態1の蓋17aと、本実施形態の蓋17bとは構造が異なる。その他の構造は実施形態1と同様である。このため、本実施形態に係る可動式防波堤10bにおいても、実施形態1と同様に土砂侵入防止対策を実現することができる。
【0043】
図9−1は、本実施形態に係る浮上管12が外筒管11の内部に収められている状態の模式図である。
図9−2は、本実施形態に係る浮上管12が水面WL方向へ浮上している状態の模式図である。水中には土砂等が浮遊しているため、
図9−1に示すように、水中の土砂120は蓋17bに堆積することがある。蓋17bに土砂120が堆積した場合、土砂120の重みにより浮上管12の浮上に時間を要したり、浮上できなくなったりする可能性がある。
【0044】
浮上管12が水上に浮上する際、まず蓋17bが水上に浮上し、その後浮上管12が水上に浮上する。ここで、水上では、水中での浮力が働かない。そのため、土砂120が堆積したまま蓋17bが水上に浮上した場合は、土砂に対して浮力が働かなくなる。従って、土砂120が堆積したまま蓋17bが水上に浮上した場合、浮上管12は浮力が働かなくなった土砂120の重量に逆らって浮上する必要が生じる。言い換えれば、土砂120が堆積したまま蓋17bが水上に浮上した場合、土砂120に浮力が働かなくなり、浮上管12の浮上に時間を要したり、浮上できなくなったりする可能性がある。ここで本実施形態において、蓋17bは円錐形状となっている。そのため、
図9−2のように、浮上管12が水面WLの方向に浮上する際に、蓋17bの上面50bに沿って、蓋17bの中心から蓋17bの外周方向に向かって水の流れBが発生する。この水の流れBによって土砂120が蓋17bから除去されやすくなる。蓋17bから土砂120が除去されることにより、土砂120による浮上管12全体の重量増加が抑制されるので、浮上管12を迅速かつ確実に浮上させる事ができる。特に水中で土砂120が蓋17bから除去された場合、蓋17bが水上に浮上した際でも、浮上管12の浮上に時間を要さず、浮上できなくなったりする事がない。このように、本実施形態は、浮上抵抗低減対策を実現することができる。そのため、本実施形態は、土砂侵入対策と浮上抵抗低減対策とを同時に実現することができる。また、蓋17bの上面50bが円錐形状となっているため、浮上管12が浮上する際の流体の抵抗が低減され、土砂120が堆積していない場合においても、浮上管12をより迅速に浮上させる事ができる。蓋17bの上面50bは浮上管12の長手方向に沿った中心線に対して傾斜していれば、浮上抵抗低減対策を実現することができる。
【0045】
(実施形態3)
図10は本実施形態に係る複数の可動式防波堤10cの斜視図である。
図11は本実施形態に係る可動式防波堤10cの平面図である。
図12は本実施形態に係る可動式防波堤10cの、外筒管11及び浮上用側管12bのC−C断面図である。浮上用側管12bと、浮上用本管12aとは、後述する浮力発生手段14の構造以外は、同様の構造となっている。そのため、浮上用側管12bの断面と浮上用本管12aの断面とは同一になっている。次の説明では、浮上用側管12bのみ断面を示し、浮上用本管12aの断面は省略する。
【0046】
図10に示すように、本実施形態に係る複数の可動式防波堤10cは、浮上用本管12aと、その両隣に浮上用側管12bとが、連結部材40によって連結されている。連結部材40は、中央部が浮上用本管12aの第2の端部としての上端部32cに取り付けられ、両端部がそれぞれ浮上用側管12bの第2の端部としての上端部32cに取り付けられる。連結部材40には、蓋17c(請求項に記載の第2蓋部)が取り付けられている。蓋17cには壁19c(請求項に記載の第2壁部)が取り付けられている。蓋17cと壁19cとの詳細な構造については後述する。また、浮上用本管12aには浮力発生手段14が設けられている。
【0047】
浮上用側管12bにも浮力発生手段14が設けられているが、浮力発生手段14の体積を浮上用本管12aの浮力発生手段14よりも大きくして、略中性浮力という構成をとっている。浮上用本管12aと浮上用側管12bとにおいて、他の構成については実施形態1に記載の浮上管12と同様である。また、他の構成についても、本実施形態と実施形態1とは同様である。
【0048】
浮上用本管12aと浮上用側管12bとは連結部材40で連結されているので、浮上用本管12aを昇降させると浮上用側管12bも共に昇降する。次に、浮上用本管12aと浮上用側管12bとの昇降状態について説明する。
【0049】
上述したように、浮上用側管12bは中性浮力という構成をとっている。そのため、中央の浮上用本管12aにのみ送気管3で送気し、浮上用本管12aを浮上させ、同時に連結部材40を介してその両側の浮上用側管12bを吊り上げるように浮上させる事ができる。この構成にすると、1台の気体ボトル104によって2台の浮上用側管12bと1台の浮上用本管12aを浮上させる事ができ、送気管3の数を減少させることが可能になる。また、沈降時においては、浮上用本管12aの気室13内の気体が排出され、浮上用本管12aとその両側の浮上用側管12bとは連結部材40により連結されるため、浮上用側管12bと浮上用本管12aとは同時に沈降する。なお、2台の浮上用側管12bと1台の浮上用本管12aに限られず、1台の気体ボトル104で複数の浮上用側管12bと浮上用本管12aを浮上させるようにしてもよい。
【0050】
図10及び
図12のように、連結部材40の対向する側面であって、浮上用本管12aと浮上用側管12bとが並ぶ方向と平行である2つの対向する側面54a及び54bには、それぞれ蓋17cが取り付けられている。
図10の記載から分かるように、蓋17cは、平面視、すなわち蓋17cの板面と直交する方向から見た場合の形状が長方形であるが、蓋17cは長方形に限られない。また、本実施形態では、蓋17cは連結部材40の側面54a及び54bに取り付けられているが、取り付けられる位置は側面54a及び54bに限らない。蓋17cは少なくとも連結部材40に取り付けられていればよい。また
図11及び12に示すように、蓋17cは、浮上用本管12a及び浮上用側管12bの長手方向Aと直交する方向であって、外筒管11の外周部37よりも外側に延伸している。ここで、蓋17cの外周部33cの位置は、少なくとも複数の外筒管11の内周部38の位置よりも外側であればよい。
【0051】
蓋17cの面であって、壁19cが設けられている面とは反対側の面(以下、適宜上面50cという)は、連結部材40から離れるに従って、浮上用本管12a及び浮上用側管12bの下端部34に向かって傾斜している。蓋17cの上面50cは連結部材40から離れるに従って、浮上用本管12a及び浮上用側管12bの下端部34に向かって傾斜していなくてもよく、例えば、上面50cは、浮上用本管12a及び浮上用側管12bの上端部32c側の上端面44cと平行な面であってもよい。また、蓋17cの上面50cは、少なくとも浮上用本管12a及び浮上用側管12bの長手方向Aに沿った中心線CLに対して傾斜している事が好ましい。
【0052】
図10及び
図12に示すように、蓋17cの面であって、浮上用本管12a及び浮上用側管12bの第1の端部としての下端部34側の面(以下、適宜下面39cという)には、壁19cが設けられている。壁19cは、浮上用本管12a及び浮上用側管12bの長手方向Aと直交する方向であって、複数の外筒管11の外周37よりも外側に設けられている。より具体的には、壁19cの内壁42cが、外筒管11の外周37よりも外側に設けられている。本実施形態において、壁19cが蓋17cに設けられる位置はこのような位置に限定されない。本実施形態において、壁19cは、少なくとも浮上用本管12a及び浮上用側管12bの外周部43よりも外側に設けられていればよく、例えば複数の外筒管11の内周部38よりも内側に設けられていてもよい。
【0053】
壁19cは、蓋17cの下面39cに設けられ、下面39cから離れる方向に向かって延伸している。すなわち、壁19cは、蓋17cの下面39cに設けられ、浮上用本管12a及び浮上用側管12bの上端部32cから下端部34に向かって延伸している。本実施形態において、壁19cは浮上用本管12a及び浮上用側管12bの周方向の全周にわたって設けられているが、壁19cは浮上用本管12a及び浮上用側管12bの周方向において、所定の間隔を空けて設けられていてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、浮上用本管12a及び浮上用側管12bが外筒管11に収められている際に、壁19cは外筒管11の開口部11aよりも水底面GL側に延伸しているが、壁19cは外筒管11の開口部11aよりも水底面GL側に延伸していなくてもよい。壁19cは蓋17cの下面39cから離れる方向に向かって、0mm以上ラップしているのが好ましい。また、本実施形態では、外筒管11の開口部11aは水底面GLから水面WL方向に突出しているが、鉛直方向における開口部11aの位置は水底面GLと同じ高さであってもよい。
【0055】
本実施形態は、蓋17cの外周部33cが少なくとも複数の外筒管11の内周部38よりも大きく設けられており、また壁19cが設けられている。このような構造により、本実施形態は、複数の可動式防波堤10cに対して土砂侵入防止対策を実現することができる。また、本実施形態は、蓋17cが連結部材40から離れるに従って、浮上用本管12a及び浮上用本管12bの下端部34に向かって傾斜している。このため、複数の可動式防波堤10cについて浮上抵抗低減対策を実現することもできる。また、本実施形態は、浮上用本管12a及び浮上用側管12bの浮上抵抗が低減されるので、土砂が堆積していない場合においても、浮上用本管12a及び浮上用側管12bをより迅速に浮上させる事ができる。この場合、蓋17cの上面50cは、少なくとも浮上用本管12a及び浮上用本管12bの長手方向Aに沿った中心線CLに対して傾斜してれば、浮上抵抗低減対策が実現される。
【0056】
また、本実施形態においては、複数の可動式防波堤10cは、
図11のように並列して設置される。本実施形態によると、蓋17cは、浮上用本管12aと浮上用側管12bとが、これらが並ぶ方向と平行な側面54a及び54bに取り付けられており、蓋17cは連結部材40から離れるに従って下方に傾斜している。そのため、蓋17cに堆積した土砂が除去される際、土砂は複数の可動式防波堤10cが並列している方向Cと垂直な方向に除去される。従って、一方の複数の可動式防波堤10cから除去された土砂は、他方の複数の可動式防波堤10cに向かわず、他方の複数の可動式防波堤10cに堆積しない。
【0057】
(実施形態4)
図13は、本実施形態に係る可動式防波堤10dが有する外筒管11と浮上管12の断面図である。
図13に示すように、浮上管12の上端部32dには蓋17dが取り付けられている。また、蓋17dの、浮上管12の下端部34側の面39dとは反対側(以下、適宜上面50dという)は、円錐形状である。円錐形状の上面50dの頂点52dは、浮上管12が浮上する方向である水面WL側に設けられている。
【0058】
蓋17dの上面50dは円錐形状でなくてもよい。例えば、蓋17dの上面50dは、少なくとも浮上管12の長手方向Aに沿った中心線CLに対して傾斜していればよい。例えば、蓋17dの上面50dは、半球形状であったり、円柱の長手方向に対して傾斜した平面でこの円柱を切断した形状であったり、三角柱の側面のうち隣接する2面を組み合わせた形状(屋根型の形状)であったりしてもよい。この点では本実施形態に係る蓋17dの構造と実施形態2に係る蓋17bの構造とは同様である。そのため、本実施形態においても、浮上抵抗低減対策を実現する事ができる。一方、
図13に示すように、蓋17dは、浮上管12の長手方向Aと直交する方向であって、外筒管11の外周部37よりも外側に延伸しておらず、また、壁を有さない。
図13では、蓋17dは、浮上管12の長手方向Aと直交する方向であって、外筒管11の内周部38の位置よりも外側に位置している。そのため、蓋17dは、外筒管11及び浮上管12に向かって上部から沈降してきた海中の土砂等が、外筒管11と浮上管12との間に侵入する事を抑制する。なお、蓋17dは、浮上管12の長手方向Aと直交する方向であって、外筒管11の内周部38の位置よりも内側に位置していてもよい。この点で実施形態2と本実施形態の構造とは異なる。
【0059】
また、本実施形態1から4に係る可動式防波施設1は、前述した可動式防波堤10、10a、10b、10c及び10dのうち少なくとも1つを水底に複数配列したものである。
【0060】
この可動式防波施設1によれば、浮上管12の浮上を迅速かつ確実にする事ができる。
【0061】
以上、実施形態1から実施形態4を説明したが、これらの実施形態を説明した内容によりこれらの実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。更に、実施形態1から実施形態4の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。