(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記腰部シートベルト位置判定手段は、前記荷重分布の腰部シートベルトの前記左右架け渡し方向中央領域を挟んだ左右の腰骨領域にそれぞれ両側よりも高い荷重値を示す高荷重部が存在する場合に前記腰部シートベルトが腰骨位置にあると判定することを特徴とする請求項1に記載のシートベルト装置。
前記荷重分布算出手段により得られた荷重分布の連続性が前記腰部シートベルトの左右架け渡し方向所定領域において途絶えたときに前記腰部シートベルトが捩れたと判定する腰部シートベルト捩れ判定手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のシートベルト装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、シートベルト装置の従来の腰部シートベルトによれば、着座者の腰部が車両用シートに拘束されて保護されるものの、車両衝突時等に腰部シートベルトが腰部位置、すなわち、腰部シートベルトが腰骨に掛け回される腰骨位置より上方にずれていた場合、腰部シートベルトが腰骨に保護されていない腹部を強く圧迫していると腹部傷害が引き起こされるが事後的にはシートベルトが腰部位置にあったか否かが判断できない状況がある。
【0009】
また、特許文献1によれば、エラストマ製誘電層の面方向への伸長及びこの伸長によりもたらされるエラストマ製誘電層の積層方向への収縮から張力センサに生じた静電容量の変化を測定し、着座者の身体に加わる圧迫力を想定している。
【0010】
すなわち、特許文献1の張力センサは実際の着座者の身体方向への荷重を直接測定するものではなく、特許文献1の張力センサにより想定される圧迫力と実際に着座者の身体に加わる圧迫力との間には差異が生じるおそれがある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シートベルトを装着した着座者の身体のシートベルトによる圧迫状態をより正確に把握することができるシートベルト及びこのシートベルトを有するシートベルト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項
1に記載の発明は、車両用シートの着座者の腰部に左右に架け渡される腰部シートベルトを有するシートベルト装置において、前記腰部シートベルトとして、車両用シートの着座者の身体に架け渡して装着されるシートベルトであって前記装着状態における前記着座者から付加される荷重を前記シートベルトの架け渡し方向の所定領域で検知するセンサを有するシートベルトが用いられるとともに、前記センサにより検知された前記荷重の前記腰部シートベルトの左右架け渡し方向の荷重分布を算出する荷重分布算出手段と、該荷重分布算出手段によって得られた荷重分布に基づいて前記腰部シートベルトが着座者の腰骨位置にあるか否かを判定する腰部シートベルト位置判定手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明は、
車両用シートの着座者の身体に架け渡して装着されるシートベルトであって前記装着状態における前記着座者から付加される荷重を前記シートベルトの架け渡し方向の所定領域で検知するセンサを有するシートベルトを腰部シートベルトに利用することによる、シートベルトによる着座者の身体の圧迫状態に関する情報の活用である。
【0016】
この構成によれば、腰部シートベルトが有するセンサによって腰部シートベルトの左右架け渡し方向の所定領域の荷重が検知され、荷重分布算出手段によって当該所定領域の荷重分布が算出され、腰部シートベルト位置判定手段によって腰部シートベルトが着座者の腰骨位置にあるか否かが判定される。
【0017】
したがって、センサが検知した着座者の身体の圧迫状態の情報に基づき、腰部シートベルトが腰骨位置にあるか否かを判定することができる。これにより、例えば、腰部シートベルトが腰骨位置に無い場合にはその情報を着座者に報知することが可能となる。よって、腰部シートベルト位置の是正が期待でき、腰部位置よりも上方にずれていた腰部シートベルトが腹部を強く圧迫することに起因する腹部傷害を未然に防止することができる。
【0018】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載のシートベルト装置において、前記腰部シートベルト位置判定手段は、前記荷重分布の腰部シートベルトの前記左右架け渡し方向中央領域を挟んだ左右の腰骨領域にそれぞれ両側よりも高い荷重値を示す高荷重部が存在する場合に前記腰部シートベルトが腰骨位置にあると判定することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、荷重分布のうち腰部シートベルトの左右の腰骨領域に高荷重部が存在する場合に腰部シートベルトが腰骨位置にあると判定することで、容易かつ確実に判定のためのデータ処理が行うことができる。
【0020】
請求項
3に記載の発明は、請求項
2に記載のシートベルト装置において、前記腰部シートベルト位置判定手段によって腰部シートベルトが腰骨位置にあると判定されている状況下において、前記腰骨領域の高荷重部の荷重値が所定時間内に予め設定された以上の低下をしたときに、前記腰部シートベルトが着座者の腰骨位置からずれたと判定する腰部シートベルトずれ判定手段を有することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、腰部シートベルトずれ判定手段が、荷重分布における腰部領域の高荷重部の荷重値の低下により腰部シートベルトのずれを判定する。したがって、装着当初は腰骨位置にあった腰部シートベルトが腰骨位置からずれた場合にその情報を着座者に報知することが可能となる。これにより、着座者による腰部シートベルトのずれの是正が期待される。さらに、腰部シートベルトずれ判定手段が腰部シートベルト位置判定手段と併用されることで、腰部シートベルトの腰骨位置からのずれをより正確に判定することが可能となる。
【0022】
請求項
4に記載の発明は、請求項
2に記載のシートベルト装置において、前記腰部シートベルトは、該腰部シートベルトの左右架け渡し方向全領域に前記センサを有し、前記腰部シートベルト位置判定手段によって腰部シートベルトが腰骨位置にあると判定されている状況下において、前記腰部シートベルトの左右架け渡し方向中央領域における荷重値が前記腰骨領域の高荷重部の荷重値を超えたときに、前記腰部シートベルトが着座者の腰骨位置からずれたと判定する腰部シートベルトずれ判定手段を有することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、腰部シートベルトずれ判定手段が、腰部シートベルトの左右架け渡し方向中央領域における荷重値が前記腰骨領域の高荷重部の荷重値を超えたときに腰部シートベルトのずれを判定する。したがって、腰部シートベルトが腰骨位置から上方にずれた場合にはその情報を着座者に報知することが可能となる。これにより、腰部シートベルトのずれの是正が期待される。さらに、腰部シートベルトずれ判定手段が腰部シートベルト位置判定手段と併用されることで、腰部シートベルトの腰骨位置からのずれをより正確に判定することが可能となる。
【0024】
請求項
5に記載の発明は、請求項
2に記載のシートベルト装置において、前記腰部シートベルトは、該腰部シートベルトの左右架け渡し方向中央領域を挟んだ左右の領域のみに前記センサを有することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、腰部シートベルトの左右架け渡し方向中央領域を挟んだ左右の領域のみにセンサを配置すればよいので、センサの使用量が削減されてシートベルト装置全体の製造コストが低減される。
【0026】
請求項
6に記載の発明は、請求項
1〜
5の何れか1項に記載のシートベルト装置において、前記荷重分布算出手段により得られた荷重分布の連続性が前記腰部シートベルトの左右架け渡し方向所定領域において途絶えたときに前記腰部シートベルトが捩れたと判定する腰部シートベルト捩れ判定手段を備えたことを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、腰部シートベルトの捩れが判定された場合に、この捩れを着座者に報知することが可能となる。これにより、着座者による腰部シートベルトの捩れの是正が期待できる。さらに、腰部シートベルトの捩れに起因する荷重分布による腰部シートベルト位置判定手段の判定の誤りを防止することができる。
【0028】
請求項
7に記載の発明は、請求項
1に記載のシートベルト装置において、前記腰部シートベルトを含むシートベルトを所定量巻き取るシートベルト巻き取り手段を備え、前記センサが、前記シートベルト巻き取り手段による前記所定量巻き取り状態における前記腰部シートベルトの左右架け渡し方向所定領域で該腰部シートベルトに入力される前記荷重を検知することを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、腰部シートベルトを含むシートベルトが所定量巻き取られて腰部シートベルトに張力が付与されることでセンサが検知する荷重値が増大する。したがって、荷重分布がより明瞭となり、腰部シートベルト位置判定手段による腰部シートベルトが腰骨位置にあるか否かの判定をより的確に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るシートベルト及びこのシートベルトを有するシートベルト装置によれば、シートベルトの架け渡し方向の所定領域内においてシートベルトを装着した着座者の身体のシートベルトによる圧迫状態をより正確に把握することができる。よって、この把握された圧迫状態から、例えば、着座者が適切にシートベルトによって保護されているか否か等の状況を判定することが可能となる。さらに、車両衝突事故の際には事後的に着座者の傷害に関する情報を提供することが可能となり、車両事故時の着座者に対する第3者の対応が的確になる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について
図1〜
図9を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るシートベルト及びこのシートベルトを有するシートベルト装置を説明するための正面図、
図2はセンサを有するシートベルトの構成を示す一部破断要部斜視図、
図3はシートベルト装置の制御回路ブロック図、
図4は
図1のIV−IV線断面図及び対応する荷重分布を示す図、
図5は
図1のV−V線断面図及び対応する荷重分布を示す図、
図6は腰部シートベルトが腰骨位置から上方にずれた場合の荷重分布を説明するための図、
図7はシートベルトが捩れた状態における
図1のIV−IV線断面図に対応する断面図及び対応する荷重分布を示す図、
図8はシートベルト装置の制御を説明するためのフローチャート図、
図9は腰部シートベルト捩れ判定手段によるシートベルト装置の制御を説明するためのフローチャート図である。尚、各図において矢印Fは車体前方方向を示し、矢印Wは車幅方向を示す。
【0033】
図1に示すように、シートベルト装置10は、車両のBピラー11下部に設けられたリトラクタ12と、一端15aがリトラクタ12に取り付けられるとともにBピラー11上部に固定されたスルーリング14を挿通し、他端15bがリトラクタ12下方においてBピラー11に固定されたシートベルト15と、シートベルト15をベルト挿通孔25aに挿通させたタングプレート25と、タングプレート25の先端が挿入固定されるバックル26と、を有する。バックル26は、アンカー28によって車両用シート30の下側縁部に固定されている。尚、タングプレート25はシートベルト15に対して密着固定されているわけではなく、ベルト挿通孔25aにシートベルト15を挿通させた状態でシートベルト15の長手方向に移動可能である。
【0034】
そして、図示のように車両用シート30に着座者Pが着座した状態で身体上にシートベルト15を通過させてタングプレート25をバックル26に挿入固定させることで、着座者Pの上半身に斜めに架け渡された肩部シートベルト16が着座者Pの肩部及び腰部を拘束し、着座者Pの腰部に左右に架け渡された腰部シートベルト17が着座者Pの腰部を車両用シート30に拘束する。
【0035】
リトラクタ12は、そのハウジング内にシートベルト15を巻回保持する図示しないベルトリールと、ベルトリールを常時巻取り方向に付勢する図示しない巻取りばね機構とを有する。
【0036】
シートベルト15は、ポリエステル素材を編み合せてなる等幅帯状の2本のウェビング18及び19を幅方向両端部で縫合してなる構成を有するが、シートベルト15の長手方向所定領域においては、
図2に示すように、装着状態において表側のウェビング18及び着座者Pに接触する裏側のウェビング19の間にウェビング18及び19と等幅帯状の柔軟なシート20を挟み込んでおり、ウェビング18、シート20及びウェビング19を幅方向両端部、すなわち、シートベルト15の幅方向両端部15c及び15dで縫合固定した3層構造を有する。シート20が挟み込まれるシートベルト15の長手方向所定領域は、シートベルト15が着座者Pの腰部に左右に架け渡される領域、すなわち、腰部シートベルト17の領域であれば良く、本実施の形態においては、例えば、シートベルト15の他端15bから300mm〜1300mmの長さ範囲(1000mm)である。
【0037】
シート20におけるウェビング18側の面には、シート20の長手方向に延在する3線の等幅帯状の電極21がシート20の幅方向に互いに平行に並ぶように埋設されており、シート20におけるウェビング19側の面には、電極21に対して略垂直に交差するようにシート20の幅方向に延在する多数の線の等幅帯状の電極22がシート20の長手方向に互いに平行に並ぶように埋設されている。電極21及び22が重なる部位によって平面視略矩形のセンサ23が構成されている。
【0038】
よって、シート20上には、シート20の長手方向(すなわち、シートベルト15の長手方向)に等間隔に並ぶセンサ23列が、シート20の幅方向に等間隔に3列並べて設けられている。センサ23は、電極21及び22間の距離の変化を測定して圧力値に換算するキャパシタ方式を採用する。
【0039】
次に、センサ23による圧力値の測定について説明する。シートベルト15の装着状態において着座者Pの身体からシートベルト15に対して荷重が付加されると、センサ23には表側のウェビング18と裏側のウェビング19との間でシートベルト15の面に対して垂直方向の圧縮力が作用するため、電極21及び22間距離が縮小し、略同方向の圧力変化が測定される。
【0040】
一方で、センサ23が設けられたシート20の幅方向両端部は、シート20の長手方向全長に亘ってウェビング18及び19に固定されているために、センサ23の面方向への伸びが拘束されてセンサ23に作用する面方向への張力は小さくなる。
【0041】
したがって、センサ23は、着座者Pの身体からシートベルト15の面に対して垂直方向に付加される荷重に対して略同方向に作用する応力を検知する面圧センサである。
【0042】
尚、本明細書において、シートベルト15において装着状態における着座者Pから付加される荷重を検知するセンサとは、着座者Pからシートベルト15の面に対して垂直方向に付加される荷重を検知するセンサのみに限らず、センサ23のように、着座者Pからシートベルト15の面に対して体圧で垂直方向に付加される荷重に対して略同方向に作用する応力を検知するセンサを含むものとする。
【0043】
さらに、センサ23は、シート20の長手方向(すなわち、シートベルト15の長手方向)全長に亘って等間隔に並べて配置されているので、その領域において応力分布が測定される。
【0044】
よって、本実施の形態に係るシートベルト15によれば、シートベルト15が有するセンサが、着座者Pからシートベルト15の面に対して付加される荷重を、その荷重に対して略同方向に作用する応力として直接検知し、この検知は、シートベルト15の架け渡し方向の所定領域でなされるので、その領域内においてシートベルト15を装着した着座者Pの身体のシートベルト15による圧迫状態をより正確に把握することができる。
【0045】
尚、センサ23列は、シート20の幅方向(シートベルト15の幅方向)に3列並べて設けられているので、後述する荷重分布を算出する場合には何れか一列のセンサ23列によって検知された荷重を用いればよい。しかし、3列全てのセンサ23列によって検知された荷重データを用いることにより、着座者Pのシートベルト15による圧迫状態をさらに正確に把握することが可能となる。本実施の形態においては、シート20の幅方向中央のセンサ23列のみを用いて荷重を検知している。
【0046】
次に、シートベルト装置10の制御について説明する。
図3に示すように、シートベルト装置10は、報知手段40と、シートベルト15に設けられたセンサ23と、報知手段40の作動を制御する制御部50と、を有する。
【0047】
報知手段40としては、例えば、制御部50からの信号によりモータ42を駆動して駆動力伝達機構43の一部である上記ベルトリールをシートベルト15巻取り方向に回転させ、シートベルト15を所定量巻き取ることでシートベルト15全体に軽い張力を付与するシートベルト巻き取り手段44を用いることができる。
【0048】
尚、シートベルト巻き取り手段44はあくまで報知手段であるから、シートベルト巻き取り手段44によってシートベルト15を巻き取る量は、車両を運転する着座者Pがシートベルト15に付与された張力を感じ取れる程度の量であれば良い。例えば、シートベルト15の弛みが取れる程度に2〜3回に分けてシートベルト15を巻き取る制御とすれば、より着座者Pに注意を促すことが可能となる。
【0049】
センサ23は、上記の通り、シートベルト15に設けられた面圧センサであり、ここではその記載を省略する。
【0050】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータである。制御部50は、ROMに記憶させたプログラムをRAM上に展開して対応する処理をCPUに実行させる。
【0051】
制御部50は、ROMに記憶させた荷重分布算出手段52、腰部シートベルト位置判定手段54、腰部シートベルトずれ判定手段56及び腰部シートベルト捩れ判定手段58のそれぞれに対応するプログラムをRAM上に展開して対応する処理をCPUに実行させる。尚、上記プログラムはROMに記憶されている場合に限らず、NVRAM(Non−Volatile Randam Access Memory)に記憶されていればよい。
【0052】
荷重分布算出手段52は、センサ23が検知した荷重(本実施の形態においては、着座者Pの身体からシートベルト15の面に対して垂直方向に付加される荷重に対して略同方向に作用する応力として検知したもの)の腰部シートベルト17の左右架け渡し方向の荷重分布を算出することを目的とするプログラムである。本プログラムがRAM上に展開された場合、CPUはセンサ23が検知した荷重データと腰部シートベルト左右架け渡し方向位置とに基づき、荷重分布を算出する。
【0053】
以下、荷重分布算出手段52により算出される荷重分布について具体的に説明する。例えば、腰部シートベルトが
図1に示す腰部上に左右に架け渡された正常な位置にある場合、
図4下に示すように、腰部シートベルト17は図示しない右側のタングプレート25側から、図示右側の腰骨Ph前方に掛け回され、背骨Pbの前方に位置する下腹部付近を通過して図示左側の腰骨Ph前方に掛け回されてシートベルト15の他端15b方向へと延在する。センサ23は、シートベルト15の他端15bから300mm〜1300mmの長さ範囲に存在しているので、腰部シートベルト17が腰部上に左右に架け渡される範囲に亘って存在する。
【0054】
この状態において、荷重分布は、
図4上に示すように、腰部シートベルト17の左右架け渡し方向中央領域Rcを挟んだ左右の腰骨領域Rl及びRrに、それぞれ両側より高い荷重値を示す高荷重部Pl及びPrを含む。一方で、左右架け渡し方向中央領域Rcに、上記高荷重部Pl及びPrに挟まれて該部より低い荷重値を示す低荷重部Lを含む。
【0055】
これは、
図4下に示す通り、腰部シートベルト17が正常な位置にある場合、腰部シートベルト17は着座者Pの腰骨Phに掛け回されるため、腰部シートベルト17の左右架け渡し方向中央領域Rcを挟んだ左右の領域ではセンサ23は腰骨Phからの大きい荷重を受けるからである。
【0056】
一方、左右架け渡し方向中央領域Rcにおいては、腰部シートベルト17は腰骨Ph間の柔らかな下腹部と当接しているため、センサ23は腰骨Phよりも小さい荷重を受けるからである。
【0057】
一般に、タングプレート25を起点としてシートベルト15の他端15b方向に向かって200mm〜400mmまでの領域が右側腰骨領域Rr、右側腰骨領域Rrから同方向に向かって100mm〜200mmまでの領域が左右架け渡し方向中央領域Rc、及び左右架け渡し方向中央領域Rcから同方向に向かって200mm〜400mmまでの領域が左側腰骨領域Rlとなる。したがって、これらの領域上に腰部シートベルト17が架け渡される範囲にセンサ23が存在すれば良い。
【0058】
尚、タングプレート25の位置は、シートベルトの装着時に算出される荷重分布において急峻な単独の荷重ピーク(図示せず)が生じる位置として認識される。よって、CPUは、この急峻な荷重ピークの生じる位置よりもシートベルト15の他端15b側における荷重分布を腰部シートベルト17の左右架け渡し方向の領域として認識し、以下に説明する種々の判定において用いる。
【0059】
腰部シートベルト位置判定手段54は、荷重分布算出手段52によって得られた荷重分布に基づいて腰部シートベルト17が着座者Pの腰骨位置にあるか否かを判定することを目的とするプログラムである。本プログラムがRAM上に展開された場合、CPUは荷重分布算出手段52によって得られた荷重分布を予めROMに記憶された荷重分布パターンと対比し、一致する場合には腰部シートベルト17が着座者Pの腰骨位置にあると判定する。
【0060】
具体的には、
図4上に示すように、荷重分布の腰部シートベルト17の左右架け渡し中央領域Rcを挟んだ左右の腰骨領域Rl及びRrに、領域Rl及びRrにおける両側より高い荷重値を示す高荷重部Pl、Prが存在する荷重分布パターンがROMに記憶されており、この荷重分布パターンに荷重分布算出手段52によって得られた荷重分布が一致する場合、腰部シートベルト位置判定手段54は、腰部シートベルト17が着座者Pの腰骨位置にあると判定する。
【0061】
図5下は、腰部シートベルト17が腰骨位置から上方にずれた場合の典型的な荷重分布を示す図である。
図5上に示すように、腰部シートベルト17は腰骨Phではなく腹部に掛け回されているので腹部のうち前方に最も突出する部位である左右架け渡し中央領域Rcにその領域Rcにおける両側より高い荷重値を示す高荷重部Pcが発生し、左右の腰骨領域Rl及びRrには高荷重部Pl、Prが発生しない荷重分布となる。
【0062】
この場合、左右の腰骨領域Rl及びRrにおいては各領域の両側より高い荷重値を示す高荷重部Pl、Prが存在しないので、荷重分布算出手段52によって得られた荷重分布は上記荷重分布パターンとは一致せず、腰部シートベルト位置判定手段54は、腰部シートベルト17が着座者Pの腰骨位置に無いと判定する。
【0063】
腰部シートベルトずれ判定手段56は、腰部シートベルト位置判定手段54によって腰部シートベルト17が腰骨位置にあると判定されている状況下において、腰骨領域の高荷重部の荷重値が所定時間内に予め設定された以上の低下をしたときに、腰部シートベルト17が着座者Pの腰骨位置からずれたと判定することを目的とするプログラムである。
【0064】
腰部シートベルト位置判定手段54によって腰部シートベルト17が腰骨位置にあると判定されている状況下において、CPUは、腰部シートベルト位置判定手段54の判定の基礎となったセンサ23が検知し、荷重分布算出手段52が算出した荷重分布と、その時から所定時間経過後に荷重センサ23が検知し、荷重分布算出手段52が算出した荷重分布とを対比する。
【0065】
対比の結果、後者の荷重分布の領域Rlにおける高荷重部Plの荷重値及び領域Rrにおける高荷重部Prの荷重値のうち、何れか一方又は双方の荷重値が、前者の荷重分布の対応する荷重値と比較して所定時間内に予め設定された以上の低下をしたときに、CPUは、腰部シートベルト17が着座者Pの腰骨位置からずれたと判定する。
【0066】
具体例を、
図6に基づいて説明する。図示のように、荷重分布D1は、腰部シートベルト17が腰骨位置にある場合に算出される典型的な荷重分布であり、荷重分布D2は、腰部シートベルト17が腰骨位置よりも上方にずれている場合に算出される典型的な荷重分布である。
【0067】
この場合、腰部シートベルト17が腰骨位置にある場合には、荷重分布D1は領域Rl及びRrに高荷重部Pl及びRrをそれぞれ有する。ここで、腰部シートベルト17が腰骨位置の上方にずれた場合、左右架け渡し中央領域Rcにその領域Rcにおける両側より高い荷重値を示す高荷重部Pcが発生し左右の腰骨領域Rl及びRrには高荷重部Pl、Prが発生しない荷重分布となる。
【0068】
したがって、この場合、領域Rlにおける高荷重部Plの荷重値及び領域Rrにおける高荷重部Prの荷重値の双方の荷重値が所定時間内に予め設定された以上の低下をしているので、CPUは、腰部シートベルト17が着座者Pの腰骨位置からずれたと判定する。
【0069】
腰部シートベルト捩れ判定手段58は、荷重分布算出手段52によって得られた荷重分布の連続性が腰部シートベルト17の左右架け渡し方向領域Rl、Rc及びRrにおいて途絶えたときに腰部シートベルト17が捩れたと判定することを目的とするプログラムである。
【0070】
具体的には、
図4上に示すように、腰部シートベルト17が腰骨位置にあるときには、荷重分布のうち領域Rl及びRrに高荷重部Pl及びPrがそれぞれ存在する。ここで、
図7下に示すように、領域Rlにおいて捩れが生じると、
図7上に示すように、領域Rlにおいて捩れに起因する高荷重位置が生じるか、あるいは荷重が検出されない位置が生じ、その領域Rlにおいて荷重分布の連続性が途絶えることとなる。このように荷重分布の連続性が途絶えた場合に、CPUは荷重分布の連続性が途絶えた領域Rlにおいて腰部シートベルト17が捩れたと判定する。
【0071】
以下、シートベルト装置10により実行される制御について、腰部シートベルト捩れ判定手段58による制御を除き、
図8のフローチャートに基づいて説明する。まず、車両用シート30に着座した着座者Pの身体上にシートベルト15を通過させてタングプレート25をバックル26に挿入固定させることで制御が開始されると、ステップS101においてセンサ23は腰部シートベルト17の左右架け渡し方向の領域Rl、Rc及びRrで着座者Pから付加される荷重を検知し、制御部50に出力する。
【0072】
次に、ステップS102において、荷重分布算出手段52はセンサ23により検知された荷重値データと腰部シートベルト左右架け渡し方向位置とに基づき、荷重分布を算出する。
【0073】
ステップS103では、腰部シートベルト位置判定手段54は、荷重分布算出手段52によって得られた荷重分布に基づいて腰部シートベルト17が着座者Pの腰骨位置に無いかどうかを判定する。腰部シートベルト17が着座者Pの腰骨位置に無い(YES判定)と判定する場合、ステップS104に移行する。腰部シートベルト17が着座者Pの腰骨位置にある(NO判定)と判定する場合、ステップS105に移行する。
【0074】
ステップS104では、CPUは信号を報知手段40に出力する。具体的には、この信号によってシートベルト巻き取り手段44のモータ42が駆動し、ベルトリール(駆動力伝達機構43)がシートベルト15の巻取り方向に回転し、シートベルト15が所定量巻き取られてシートベルト15全体に軽い張力が付与される。よって、腰部シートベルト17が一瞬だけより腹部に食い込み、これにより着座者Pは腰部シートベルト17が適切な位置に無いことに気づくことができる。
【0075】
ステップS105では、センサ23は腰部シートベルト17の左右架け渡し方向の領域Rl、Rc及びRrで各座者Pから付加される荷重を検知し、制御部50に出力する。
【0076】
次に、ステップS106では、荷重分布算出手段52はセンサ23により検知された荷重値データと腰部シートベルト左右架け渡し方向位置とに基づき、荷重分布を算出する。
【0077】
そして、ステップS107では、腰部シートベルトずれ判定手段54は、ステップS102で算出された荷重分布とステップS106で算出された荷重分布とを対比し、対比の結果、腰部シートベルト17が腰骨位置よりも上方にずれている(YES判定)と判定する場合、ステップS108に移行する。腰部シートベルト17が腰骨位置からずれていない(NO判定)と判定する場合、ステップS105にリターンする。
【0078】
ステップS108では、CPUは信号を報知手段40(シートベルト巻き取り手段44)に出力する。具体的には、この信号によってモータ42が一瞬だけ駆動され、ベルトリールがシートベルト15の巻取り方向に回転する。これによりシートベルト15全体に軽い張力が付与される。
【0079】
よって、本実施の形態に係るシートベルト装置10によれば、腰部シートベルト17が有するセンサ23によって腰部シートベルト17の左右架け渡し方向の領域Rl、Rc及びRrで荷重が検知され、荷重分布算出手段52によって領域Rl、Rc及びRrで荷重分布が算出され、腰部シートベルト位置判定手段54によって腰部シートベルト17が着座者Pの腰骨位置にあるか否かが判定される。
【0080】
したがって、センサ23が検知したシートベルト15を装着した着座者Pの身体の圧迫状態の情報に基づき、腰部シートベルト17が腰骨位置にあるか否かを判定することができる。
【0081】
さらに、腰部シートベルト17が腰骨位置に無い場合には報知手段40(シートベルト巻き取り手段44)によってその情報が着座者Pに報知され、腰部シートベルト位置の是正が期待される。よって、腰部位置よりも上方にずれていた腰部シートベルト17が腹部を強く圧迫することに起因する腹部傷害を未然に防止する効果が期待できる。
【0082】
そのうえ、装着当初は腰骨位置にあった腰部シートベルト17が腰骨位置からずれた場合に、報知手段40(シートベルト巻き取り手段44)によってその情報が着座者Pに報知され、腰部シートベルト17のずれの是正が期待される。また、腰部シートベルトずれ判定手段56が腰部シートベルト位置判定手段54と併用されることで、腰部シートベルト17の腰骨位置からのずれをより正確に判定することが可能となる。
【0083】
尚、ステップS107において、ステップS102で算出された荷重分布とステップS106で算出された荷重分布とを対比した結果、腰部シートベルトずれ判定手段56は、腰骨領域の高荷重部の荷重値が所定時間内に予め設定された以上の低下をしたときに腰部シートベルト17が着座者Pの腰骨位置からずれたと判定しているが、他の指標を採用することも可能である。
【0084】
例えば、ステップS107において、ステップS106で算出された荷重分布の腰部シートベルト17の架け渡し方向中央領域Rcにおける荷重値が左右腰骨領域Rl、Rrの高荷重部Pl、Prの荷重値を超えたときに、腰部シートベルトずれ判定手段56は、腰部シートベルト17が着座者Pの腰骨位置からずれたと判定してもよい。
【0085】
次に、腰部シートベルト捩れ判定手段58による制御について、シートベルト装置10により実行される制御について、
図9のフローチャートに基づいて説明する。まず、シートベルト装置10による制御が開始されると、ステップS111においてセンサ23は腰部シートベルト17の左右架け渡し方向の領域Rl、Rc及びRrで着座者Pから付加される荷重を検知し、制御部50に出力する。そして、ステップS112において、荷重分布算出手段52はセンサ23により検知された荷重値データと腰部シートベルト左右架け渡し方向位置とに基づき、荷重分布を算出する。
【0086】
ステップS113では、腰部シートベルト捩れ判定手段58は、荷重分布算出手段によって得られた荷重分布に基づいて着座者Pに装着された腰部シートベルト17が捩れているか否かを判定する。腰部シートベルト17が捩れていると(YES判定)と判定する場合、S114ステップに移行する。腰部シートベルト17が捩れていないと判定する場合、ステップS111にリターンする。
【0087】
ステップS114では、制御部50は信号を報知手段40に出力する。具体的には、この信号によってモータ42が一瞬だけ駆動され、ベルトリールがシートベルト15の巻取り方向に回転する。これによりシートベルト15全体にテンションが付与される。
【0088】
よって、本実施の形態に係るシートベルト装置10によれば、腰部シートベルト17が捩れている場合には報知手段40(シートベルト巻き取り手段44)によってその情報が着座者Pに報知され、腰部シートベルト17の捩れの是正が期待される。さらに、腰部シートベルト17の捩れた状態で荷重分布が算出されることによる、腰部シートベルト位置判定手段54の判定の誤りを防止することも可能となる。
【0089】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態においては、左右の腰骨領域Rl及びRr並びに中央領域Rcの全領域にセンサ23を設けているが、センサ23を左右の腰骨領域Rl及びRrのみに設ける構成としてもよい。この構成によれば、センサ23に用いる電極の使用量が削減されてシートベルト装置全体の製造コストが低減される。
【0090】
また、上記実施の形態において、センサ23は、着座者Pからシートベルト15の面に対して垂直方向に付加される荷重に対して略同方向に作用する応力を検知するセンサであるが、着座者Pからシートベルト15の面に対して垂直方向に付加される荷重を検知する薄型の荷重計をシート20に貼り付ける構成としても良い。
【0091】
さらに、センサ23による荷重検知を、シートベルト巻き取り手段44によるシートベルト15全体への張力の付与下に行う構成としても良い。この場合、腰部シートベルト17に張力が付与されることでセンサ23が検知する荷重値が増大する。したがって、荷重分布がより明瞭となり、腰部シートベルト位置判定手段56による腰部シートベルト17が腰骨位置にあるか否かの判定をより的確に行うことが可能となる。
【0092】
さらに、上記実施の形態においては、報知手段40としてシートベルト巻き取り手段44を用いているが、報知手段として他の手段を用いることも可能である。例えば、カーナビゲーションシステムの画面にシートベルト位置判定手段56による判定結果を表示したり、インストルメント・パネルの一部にシートベルト位置判定手段56による判定結果を表示したり、アラーム音によってシートベルト位置判定手段56による判定結果を表示することにより報知しても良い。