特許第6406875号(P6406875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 翠川 裕の特許一覧

<>
  • 特許6406875-抗菌性検査方法 図000002
  • 特許6406875-抗菌性検査方法 図000003
  • 特許6406875-抗菌性検査方法 図000004
  • 特許6406875-抗菌性検査方法 図000005
  • 特許6406875-抗菌性検査方法 図000006
  • 特許6406875-抗菌性検査方法 図000007
  • 特許6406875-抗菌性検査方法 図000008
  • 特許6406875-抗菌性検査方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406875
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】抗菌性検査方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   C12Q1/04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-100700(P2014-100700)
(22)【出願日】2014年5月14日
(65)【公開番号】特開2014-239677(P2014-239677A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2017年4月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-104162(P2013-104162)
(32)【優先日】2013年5月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】711012903
【氏名又は名称】翠川 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】翠川 裕
(72)【発明者】
【氏名】西野 彩水
(72)【発明者】
【氏名】仲井 正昭
(72)【発明者】
【氏名】新家 光雄
【審査官】 市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−192916(JP,A)
【文献】 特表2010−540651(JP,A)
【文献】 特開2002−370910(JP,A)
【文献】 特表2002−540805(JP,A)
【文献】 特開2000−198709(JP,A)
【文献】 特開2002−335994(JP,A)
【文献】 特開平06−062833(JP,A)
【文献】 特開2000−116395(JP,A)
【文献】 “業界初 抗菌加工 ゴムバンド”, [online], 2013.4.14. [2018.2.13 検索], インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20130414183516/http://www.risa-net.com/wa-info/index.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の硫化水素産生菌が接種された、硫黄源と鉄源とを含有する培地上にサンプルを留置し、
前記硫化水素産生菌を所定時間培養後に、前記サンプルの直下における嫌気性条件下での前記硫化水素産生菌の硫化水素の産生を指標として、前記サンプルの前記硫化水素産生菌に対する抗菌性を検査する抗菌性検査方法。
【請求項2】
前記サンプルは、非通気性である請求項1記載の抗菌性検査方法。
【請求項3】
前記硫化水素産生菌は、サルモネラ菌及び/又はシトロバクター菌である請求項1または2に記載の抗菌性検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な物質の抗菌性を検査する技術に関する。より詳しくは、水溶性物質のみならず非水溶性物質の抗菌性も簡便に検査可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全性に対する消費者の意識が高まり、様々な物品に抗菌性が求められている。このニーズに伴い、細菌などの発育や増殖を阻止することが可能な「抗菌性」を謳った製品が、市場には多く流通している。
【0003】
ところで、抗菌性を調べる方法は、従来から非常に多く存在する。例えば、特許文献1では、繊維状素材及び/又は製品の菌体を捕捉する能力、及び捕捉した菌体の増殖を抑制する能力を定量的に判定できる抗菌性試験方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、評価のバラツキを従来以上により正確に見定めることのできるシリコンウエハからなる抗菌効果評価用標準試験片および該試験片を用いた抗菌性試験方法が開示されている。
【0005】
更に、特許文献3には、微生物を直接的に測定することで、信頼性が高く且つ速やかに結果が得られる、抗菌薬の微生物に対する有効性を簡便に検査する方法が開示されている。
【0006】
その他、従来から用いられている簡単な抗菌性試験方法の一つに、ハローテスト(定性試験、JIS L1902)が挙げられる。ハローテストは、試験片(直径28mm等)を、菌を接種した混釈平板培地の中央に置き、37±2℃で24〜48時間培養し、培養後、試験片の周囲にできたハローの幅を測定し、ハローの有無を判定する試験である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−116992号公報
【特許文献2】特開2007−312688号公報
【特許文献3】特開2010−213598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、抗菌性を調べる方法は、非常に多く存在するが、そのほとんどが非常に複雑な工程を経る煩雑な方法であり、多くの時間やコストが必要であるという問題があった。一方、比較的簡便なハローテストなどの試験も存在するが、抗菌性を検査する対象物質が、水溶性の場合にしか適用できないという問題があった。また、ハローが形成されない場合には、抗菌性を確認することができないという問題もあった。
【0009】
そこで、本発明では、抗菌性を検査する対象物の性質が限定されず、迅速且つ高精度に抗菌性を検査することが可能な技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、水溶性物質のみならず非水溶性物質の抗菌性を検査することが可能な技術について鋭意研究を行った結果、培地上に留置したサンプルの直下の嫌気性条件においてのみ生じる現象に、一定の傾向を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明では、まず、対象の硫化水素産生菌が接種された、硫黄源と鉄源とを含有する培地上にサンプルを留置し、
前記硫化水素産生菌を所定時間培養後に、前記サンプルの直下における嫌気性条件下での前記硫化水素産生菌の硫化水素の産生を指標として、前記サンプルの前記硫化水素産生菌に対する抗菌性を検査する抗菌性検査方法を提供する。
本発明に係る抗菌性検査方法で抗菌性を検査することが可能なサンプルとしては、非通気性のサンプルが挙げられる。
本発明に係る抗菌性検査方法では、サルモネラ菌及び/又はシトロバクター菌などの硫化水素産生菌に対する抗菌性を検査することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水溶性物質のみならず非水溶性物質の抗菌性を、迅速且つ高精度に検査することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1における培地の様子を撮影した図面代用写真である。
図2】実施例2における培地の様子を撮影した図面代用写真である。
図3】実施例3における培地の様子を撮影した図面代用写真である。
図4】実施例4における培地の様子を撮影した図面代用写真である。
図5】実施例5における培地の様子を撮影した図面代用写真である。
図6】実施例6における培地の様子を撮影した図面代用写真である。
図7】実施例7における培地の様子を撮影した図面代用写真である。
図8】実施例8における培地の様子を撮影した図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0015】
本発明に係る抗菌性検査方法は、対象の菌が接種された培地上にサンプルを留置し、前記菌を所定時間培養後に、前記サンプルの直下における嫌気性条件下での前記菌の増殖状態を検出することにより、サンプルの抗菌性を検査する方法である。
【0016】
本発明に係る抗菌性検査方法は、サンプルの直下における嫌気性条件下での菌の増殖状態を検出することを特徴とする。例えばハローテストなどの従来の方法では、サンプルの周囲にできた阻止円(ハロー)などを検出することが一般的であった。しかし、本発明では従来技術から発想を転換し、サンプルの直下における菌の増殖状態を検出する方法である。このように、サンプルの周囲ではなく、サンプル直下における菌の増殖状態を検出する方法であるため、水溶性物質のみならず非水溶性物質の抗菌性をも検査することが可能である。
【0017】
以下、本発明に係る抗菌性検査方法で抗菌性を検査することが可能なサンプル、用いることができる培地、培養方法、対象とすることができる菌、菌の増殖状態の検出方法、などについて、詳細に説明する。
【0018】
(1)サンプル
本発明に係る抗菌性検査方法で抗菌性を検査することが可能なサンプルは特に限定されず、本発明では、固体状のサンプル、液体状のサンプルなど、様々な状態のサンプルの抗菌性を検査することができる。また、前述のとおり、本発明に係る抗菌性検査方法では、水溶性物質のみならず非水溶性物質の抗菌性をも検査することが可能である。
【0019】
本発明に係る抗菌性検査方法は、サンプル直下における嫌気性条件下での菌の増殖状態を検出する方法であるため、非通気性のサンプルの抗菌性を、より好適に検査することができる。ただし、通気性のサンプルであっても、サンプル直下における菌の培養を、嫌気性条件で行うことができれば、本発明のサンプルとして用いることは可能である。
【0020】
本発明に係る抗菌性検査方法で抗菌性を検査することが可能なサンプルの具体例としては、イオン結晶、共有結晶、金属(合金を含む)、半導体、重合体、合成材料およびガラス材料から選ばれる一種以上の材料からなるサンプルを挙げることができる。
【0021】
(2)培地
本発明に係る抗菌性検査方法において用いることができる培地は特に限定されず、公地の固体培地を自由に選択して用いることができる。また、用いることができる栄養源なども特に限定されず、培養する菌の性質などに応じて、自由に選択して用いることができる。例えば、グルコース、フルクトース、ショ糖、乳糖、澱粉、グリセリン、デキストリン、レシチン、などの炭素源:硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸‐アンモニウム、リン酸二アンモニウム、塩化アンモニウムなどの無機窒素源:アミノ酸、ペプトンなどの有機窒素源、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、鉄、亜鉛、カルシウム、マンガンなどの無機栄養源、その他ビタミンなどから1種または2種以上の栄養源を自由に選択して用いることができる。
【0022】
より具体的な培地の例としては、例えば、DHL寒天培地(Desoxycholate-hydrogen sulfide-lactose)、SS寒天培地(Salmonella-Shigella)、SS−SB寒天培地(Salmonella-Shigella Sucrose Bromcresolpurple)、TSI寒天培地(Triple Sugar Iron)などの寒天培地を挙げることができる。硫黄源や鉄源を含有するこれらの培地を用いることで、例えば、硫化水素産生菌に対する抗菌性を調べることができる。
【0023】
(3)培養条件
本発明に係る抗菌性検査方法において行う培養の培養条件も特に限定されず、培養する菌の性質などに応じて、培養温度、pH、培養時間など、自由に設定することができる。
【0024】
(4)対象となる菌
本発明に係る抗菌性検査方法で対象となる菌も、嫌気性条件下での増殖が可能な菌であれば特に限定されず、あらゆる菌を対象とすることができる。例えば、前述のように、硫黄源や鉄源を含有する培地を用いる場合には、本発明に係る抗菌性検査方法を用いて、サルモネラ属菌、シトロバクター属菌、プロテウス属菌、エドワージエラ属菌などの硫化水素産生菌に対する抗菌性を検査することができる。
【0025】
(5)菌の増殖状態の検出方法
本発明に係る抗菌性検査方法では、サンプル直下における菌の増殖状態を検出する。本発明において、菌の増殖様態の具体的な検出方法は特に限定されないが、例えば、サンプル直下の培地の色調変化を解析することで、菌の増殖状態を検出することが可能である。
【0026】
より具体的な一例を挙げると、硫黄源や鉄源を含有する培地にサルモネラ菌などの硫化水素産生菌を接種し、該培地上に抗菌性を有さないサンプルを留置して所定時間培養を行うと、サンプルの直下の培地のみ黒色に変色する。そのため、サンプル直下の培地の黒色変色の有無を解析することで、サンプルの硫化水素産生菌に対する抗菌性を調べることができる。
【実施例1】
【0027】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0028】
実施例1では、本発明に係る抗菌性検査方法を用いて、金属の抗菌性を調べた。菌の一例としてサルモネラ菌を、金属の一例として、1円(アルミニウム100%)、5円(銅60〜70%、亜鉛40〜30%)、10円(銅95%、亜鉛4〜3%、スズ1〜2%)、50円(銅75%、ニッケル25%)、100円(銅75%、ニッケル25%)、500円(銅72%、ニッケル20%、亜鉛8%)硬貨を用いた。
【0029】
具体的には、サルモネラ菌を含む病原性腸内細菌類を、DHL寒天培地に接種し、該DHL寒天培地上に、各硬貨を留置し、37℃で24時間培養した(図1A参照)。培養後、各硬貨直下の寒天培地上に顕在する現象を目視にて観察した(図1B参照)。
【0030】
図1Bの図面代用写真に示す通り、1円硬貨の直下の培地にのみ、硫化鉄の黒色変化が出現した。一方、5、10、50、100、500円硬貨の直下の培地においては、黒色変化の現象が認められなかった。1円硬貨直下の培地では、サルモネラ菌が嫌気条件下で硫化水素を産生し、硫化水素とDHL寒天培地に含有される鉄源とが反応して硫化鉄の黒色変化が認められたと考えられる。
【0031】
以上の結果から、1円硬貨は抗菌性を有さず、5、10、50、100、500円硬貨には抗菌性があることが判明した。また、この結果から、アルミニウムは、サルモネラに対する抗菌性を有さず、銅、亜鉛、ニッケルのいずれかにサルモネラに対する抗菌性があると結論付けることができた。
【実施例2】
【0032】
実施例2では、本発明に係る抗菌性検査方法を用いて、各種抗生物質の抗菌性を調べた。抗生物質としては、スルファジメトキシン(図2A〜F)、ナリジクス酸(図2G)、エリスロマイシン(図2H)、アミノベンジルペニシリン(図2I)を用いた。
【0033】
具体的には、サルモネラ菌を含む病原性腸内細菌類を、DHL寒天培地に接種し、該DHL寒天培地上に、各抗生物質を含浸させたろ紙を留置し、37℃で24時間培養した。培養後、各ろ紙直下の寒天培地上に顕在する現象を目視にて観察した(図2A〜I参照)。
【0034】
図2A〜Iの図面代用写真に示す通り、サルモネラ菌に対する抗菌性を示さない、図2Iのアミノベンジルペニシリンを含浸させたろ紙直下の培地には、黒色変化が出現した。一方、サルモネラ菌に対する抗菌性を示す図2Gのナリジクス酸を含浸させたろ紙直下の培地には、黒色変化の現象が認められなかった。また、ハローが出現しない場合でも、抗菌性を有する場合は、黒色変化が認められないことも確認できた(図2C、D、Hの一部参照)。
【実施例3】
【0035】
実施例3では、本発明に係る抗菌性検査方法を用いて、家庭用洗剤などの抗菌性を調べた。家庭用洗剤の一例として、抗菌性が謳われているクレンザ(図3A)、消毒用洗剤ジェル(図3B)、アルボース(登録商標)石鹸(図3C)を用いた。
【0036】
具体的には、サルモネラ菌を含む病原性腸内細菌類を、DHL寒天培地に接種し、該DHL寒天培地上に、消毒用洗剤ジェル、クレンザ、アルボース(登録商標)石鹸をそれぞれ0.1mLずつ滴下し、37℃で24時間培養した。培養後、各家庭用洗剤直下の寒天培地上に顕在する現象を目視にて観察した(図3A〜C参照)。
【0037】
図3A〜Cの図面代用写真に示す通り、クレンザーの直下の寒天培地には、黒色変化が出現した(図3A参照)。一方、消毒用洗剤ジェルおよびアルボース(登録商標)石鹸の直下の寒天培地には、黒色変化が認められなかった。また、消毒用洗剤ジェルおよびアルボース(登録商標)石鹸のいずれにもハローが認められたが、アルボース(登録商標)石鹸の場合にのみ、ハローとのボーダーラインに黒色硫化鉄帯が認められた。
【0038】
以上の結果から、クレンザーにはサルモネラ菌に対する抗菌性がないが、消毒用洗剤ジェルおよびアルボース(登録商標)石鹸にはサルモネラ菌に対する抗菌性があることが判明した。また、アルボース(登録商標)石鹸はサルモネラ菌に対する抗菌性があるものの、サルモネラ菌の増殖を活発にする一面があることが示唆された。
【実施例4】
【0039】
実施例4では、本発明に係る抗菌性検査方法を用いて、ボタン電池の抗菌性を調べた。
【0040】
具体的には、サルモネラ菌を含む病原性腸内細菌類を、DHL寒天培地に接種し、該DHL寒天培地上に、ボタン電池の表面および裏面を下にして、それぞれ留置し、37℃で24時間培養した。培養後、ボタン電池直下の寒天培地上に顕在する現象を目視にて観察した(図4参照)。
【0041】
図4の図面代用写真に示す通り、ボタン電池直下の寒天培地には、どちらも黒色変化が出現した。即ち、ボタン電池は表面および裏面とも、サルモネラ菌に対する抗菌性はないことが判明した。
【実施例5】
【0042】
実施例5では、本発明に係る抗菌性検査方法を用いて、プラスチックの抗菌性を調べた。
【0043】
具体的には、サルモネラ菌を含む病原性腸内細菌類を、DHL寒天培地に接種し、該DHL寒天培地上に、正方形のプラスチックを留置し、真ん中のプラスチックの下面にのみ0.1gクエン酸を仕込み、37℃で24時間培養した(図5A参照)。培養後、各プラスチック直下の寒天培地上に顕在する現象を目視にて観察した(図5B参照)。
【0044】
図5Bの図面代用写真に示す通り、クエン酸を仕込んだ真ん中のプラスチック以外のプラスチック直下の培地には、硫化鉄の黒色変化が出現した。即ち、プラスチックにはサルモネラ菌に対する抗菌性がないこと、クエン酸にはサルモネラ菌に対する抗菌性があることが判明した。
【実施例6】
【0045】
実施例6では、本発明に係る抗菌性検査方法を用いて、各種金属化合物水溶液の抗菌性を調べた。金属化合物としては、1円硬貨を構成しているアルミニウムの化合物であるAlCl3および1円硬貨以外の硬貨に含まれている銅の化合物であるCuClを用いた。
【0046】
具体的には、サルモネラ菌を、DHL寒天培地に接種し、該DHL寒天培地上に、AlCl3およびCuClそれぞれ1gを100mL水溶液としたものを25μL滴下し、滴下した部分の上に、一辺20mm正方形の透明プラスチックを留置し、37℃で24時間培養した。培養後、各プラスチック直下の寒天培地上に顕在する現象を目視にて観察した(図6参照)。図6Aは、シャーレ底部より撮影した写真であり、図6Bは、シャーレ上部より撮影した写真である。
【0047】
図6に示す通り、AlCl3水溶液を仕込んだプラスチック直下の培地にのみ、硫化鉄の黒色変化が出現した。即ち、AlCl3水溶液にはサルモネラ菌に対する抗菌性がないこと、CuCl水溶液にはサルモネラ菌に対する抗菌性があることが判明した。
【実施例7】
【0048】
実施例7では、本発明に係る抗菌性検査方法を用いて、各菌における抗菌性確認に要する時間を調べた。菌の一例として、サルモネラ菌及びシトロバクター菌を用いた。
【0049】
具体的には、サルモネラ菌及びシトロバクター菌を、それぞれDHL寒天培地に接種し、該DHL寒天培地上に、一辺20mm正方形の透明プラスチックを留置し、37℃で培養した。培養前、培養2時間後、培養3時間後及び培養4時間後の各プラスチック直下の寒天培地上に顕在する現象を目視にて観察した(図7参照)。
【0050】
図7に示す通り、サルモネラ菌を接種した培地では、4時間以内には黒色変化が認められなかったのに対し、シトロバクター菌を接種した培地では、培養2時間後に硫化鉄の黒色変化が出現し、培養3〜4時間後には黒色変化の明瞭化が確認できた。前述の実施例5に示す通り、プラスチックにはサルモネラ菌に対する抗菌性を示さないことが分かっている。即ち、シトロバクター菌を用いれば、サルモネラ菌より早く抗菌性を調べることができ、その日のうちに結果を出すことが可能であることが分かった。
【実施例8】
【0051】
実施例8では、菌の一例としてシトロバクター菌を用いて、実施例1と同様の方法で各硬貨の抗菌性を調べた。
【0052】
具体的には、菌としてサルモネラ菌の代わりにシトロバクター菌を用いた以外は、実施例1と同様の方法により実験を行った。培養後、各硬貨直下の寒天培地上に顕在する現象を目視にて観察した(図8参照)。
【0053】
図8の図面代用写真に示す通り、硬貨を置いたまま撮影したため見難いが、1円硬貨の直下の培地にのみ、硫化鉄の黒色変化が出現した。一方、5、10、50、100、500円硬貨の直下の培地においては、黒色変化の現象が認められなかった。1円硬貨直下の培地では、シトロバクター菌が嫌気条件下で硫化水素を産生し、硫化水素とDHL寒天培地に含有される鉄源とが反応して硫化鉄の黒色変化が認められたと考えられる。
【0054】
以上の結果から、1円硬貨は抗菌性を有さず、5、10、50、100、500円硬貨には抗菌性があることが判明した。また、この結果から、アルミニウムは、シトロバクターに対する抗菌性を有さず、銅、亜鉛、ニッケルのいずれかにシトロバクターに対する抗菌性があると結論付けることができた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る抗菌性検査方法を用いれば、水溶性物質のみならず、金属や樹脂などの非水溶性物質の抗菌性を検査することも可能である。そのため、まな板や包丁など食品に接触する器具に用いる材料の抗菌性検査、壁、風呂場のタイルなどの建築材料、食品製造工場に用いられる各種部品などの抗菌性検査などを、簡便、迅速且つ高精度に行うことができる。
【0056】
また、抗菌性が謳われている製品(例えば、石鹸、洗剤、抗菌剤など)の抗菌性検査も、簡便、迅速且つ高精度に行うことも可能である。
【0057】
更に、各種物質の菌増殖への影響力についても検査することができる。
【0058】
加えて、実施例3のように、本発明に係る抗菌性検査方法とハローとの境界線に生じる黒色硫化鉄帯との観察を併用することで、抗菌性と共に、菌の活性化作用の可能性を調べることも可能である。具体的には、例えば、有効濃度以下での使用によって、菌の活性化を引き起こす物質の検定なども可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8