【0017】
そして、前記合成樹脂層5としては、分子内に結晶部を有する結晶性の熱可塑性樹脂であり、その厚みは0.2〜1.0mmとすることが好ましい。前記熱可塑性樹脂は、密度が0.9〜0.92g/cm
3の低密度ポリエチレン(LDPE)あるいは直鎖状のリニアLDPE(LLDPE)、エチレン鎖を持つランダムコポリマーポリプロピレン(ランダムPP)、密度が1.0〜1.2g/cm
3のポリエチレンアクリル共重合体(EMMAやEMA等)、密度が0.92〜0.95g/cm
3の酢酸ビニル含有量が3〜40%のエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)といった非晶性部分を分子内に持ち柔軟性のある結晶性樹脂又は柔軟性を有する低密度の結晶性樹脂を使用するのが好ましい。前記合成樹脂層5を設けることで、チェアマットの耐荷重性が向上し、長期間の使用が可能になるとともに、周縁部における反り返りも抑制することができる。前記合成樹脂層5として非結晶性の樹脂を用いた場合、合成樹脂層5の剛性が低下し、チェアマットとした際、周縁部の反り返りの抑制が不十分となるばかりか、キャスターの沈み込むことで走行性が悪くなり、キャスターが沈み込んだまま移動するため表面の摩耗が大きくなり、破損し易くなる虞がある。また、結晶性樹脂であっても、ポリプロピレン等の結晶性の高い樹脂では、合成樹脂層5の剛性が高くなりすぎ、使用時に畳等の耐久性の低い床面に設置した場合、床面を傷付ける虞や、チェアマットの製造過程における結晶化促進時に、内側への反りを設けた場合、該反り状態が頑なになってしまい、使用時にチェアマットに浮きが生じ、扱い難くなる虞がある。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0024】
但し、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1〜4、比較例1,2]
ガラス繊維含有の繊維質基材層上に、発泡後に発泡倍率が3倍となるよう発泡剤を含有した塩化ビニル樹脂ペーストを塗布及び発泡温度未満の温度にて加熱固化し、その上にグラビア印刷にて印刷層を形成し、その上に塩化ビニル樹脂からなる表面層を塗布形成し、加熱処理にて発泡層を発泡させて比較例1を得た。
【0025】
更に、基材層の裏面に表1に記載の熱可塑性樹脂を押出ラミネートで厚み0.4mmとなるよう積層した後、該熱可塑性樹脂が内側となるよう巻取り、25℃、12時間で冷却し、チェアマットを得た。
[実施例5]
合成樹脂層の裏面にポリエステル繊維からなる不織布を、目付け量が100g/m
2で積層させたこと以外は実施例1と同様の方法で製造したチェアマット。
[実施例6]
合成樹脂層の裏面にポリエステル繊維からなる不織布を、目付け量が50g/m
2で積層させ、更に最下層に発泡アクリル粘着剤からなる粘着層を2mm間隔のドット状に設けたこと以外は実施例5と同様の方法で製造したチェアマット。
[参考例1]
従来のカーペットタイプのチェアマット。
[参考例2]
従来の剛性の高いプラスチックタイプ(硬質ビニールシート製)のチェアマット。
【0026】
表1における実施例及び比較例で用いた試料
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂A:密度が0.92、MFRが5g/10minの低密度ポリエチレン(LDPE)
熱可塑性樹脂B:密度が0.94、酢酸ビニル含有量が10%のエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)
熱可塑性樹脂C:密度が0.92、MFRが8g/10minの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
熱可塑性樹脂D:ランダム共重合ポリプロピレン(ランダムPP)
熱可塑性樹脂E:スチレン系エラストマー樹脂
各実施例及び比較例について、(a)走行性、(b)耐久性、(c)静音性、(d)反り返り、(e)冷温感、(f)清掃性の評価をおこなった。結果を併せて表に示す。
【0027】
前記(a)〜(e)の評価について以下のように検討した。
(a)走行性
キャスター走行性について、チェアマット上でキャスター付き椅子に座り1分経過後、座ったまま移動し、以下の基準で評価した。
◎:楽に移動できる。
○:移動初めに軽い抵抗を感じる。
△:座っている間に沈みこみが生じ、移動初めが重く感じる。
×:沈み込みが大きく、移動がし難い(重く感じる)。
(b)耐久性
JIS A 1454(キャスター性試験B法)に準じ、厚さ5mm、半径80cmの円形の合板上にチェアマットを設置し、曲率半径5mmで幅が100mmφの鉄製キャスターを荷重120kgで押し当て、チェアマットを回転させ、表面の破損状況を確認し、以下の基準で評価した。
◎:2000回転以上でも表面に目立った変化なし。
○:1000回転以上2000回転未満で表面に変形による膨れが生じた。
△:500以上1000回転未満で表面に変形による膨れ、シワ、或いは層剥離が生じた。
×:500回転未満で表面に変形による膨れ、シワ、或いは層剥離が生じた。
(c)静音性(発生音試験)
床材を置敷きして上面で実際にキャスター付きの椅子を動かし、発生音を確認した。
◎:静かである。
○:やや音が発生するが、気にならない程度であり使用には問題ない。
△:発生音がやや気になる。
×:発生音が大きい。
【0028】
(d)反り試験(サーマルサイクルテスト)
70℃×95%RH条件化で1時間加熱促進し、20℃で1時間冷却することを1サイクルとし、該サイクルを10回繰返し、反り状態を確認した。
○:反りが無く、平滑で変化が無い。
△:やや下反りが生じたが、使用には問題ない。
×:上反りが生じた。
(e)冷温感
室温5℃の部屋の中で各々の表面上に素足で立ち、以下の基準にて評価した。
◎:冷たく感じない
○:あまり冷たく感じない
△:やや冷たく感じる
×:冷たく感じる
(f)清掃性
サラダ油に食紅を加えて調整した着色油を資料上に乗せ、24時間放置した後に水拭きし表面状態を目視にて確認し、以下の基準にて評価した。
◎:汚れが拭き取れ、特に表面状態に変化は無かった。
○:汚れは拭き取れたが(着色なし)、わずかに艶が変化した。
△:汚れは拭き取れたが(着色なし)、艶が変化した。
×:汚れが残った(着色あり)
【0029】
【表1】