(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、この種の配線収納構造を備える機器としては、例えば照明装置があり、特に鉄道車両や航空機等の乗物の客室内に用いる照明装置として、LEDランプを光源に採用し、直接光ないし間接光により客室内を照らすように構成されたものが知られている。例えば特許文献1には、LED等を使用した直管状光源部と、直管状光源部に給電する給電部と、給電部が取り付けられる板状ケーシングの取付部と、給電部を介して直管状光源部に電力を供給する電源回路部と、を有する照明機器が開示されている。
【0003】
かかる照明機器は、取付部の上面側(天井側)に電源回路部を収容する収容部を有し、電源回路部は収容部内に収容され、収容部に設けられたコネクタによって外部電源および給電部と電気的に接続される点に特徴がある。従って、照明機器全体を外すことなく電源回路部の交換を簡単に行うことができ、また、コネクタへの取り付けによって電気的に接続が完了するため、配線の余長をなくしてその振動を抑制することができる。
【0004】
このような照明機器では、収容部内の電源回路部から直管状光源部(給電部)まで配線を引き回す必要がある。かかる配線は、取付部の上面側(天井側)に単純に這わすだけでは(特許文献1の
図1参照)、取付部を天井側に密接に取り付けるような場合に、配線が天井との間で噛み込む虞があった。また、配線を適宜固定しないと、定めた位置に引き回すことができず、固定すべくタイマウント等の専用の固定具を用いると、部品点数が増えてコスト高を招き、また、固定具を実装する余分なスペースも必要になるという問題があった。
【0005】
このような配線の配索に関する従来の技術として、例えば引用文献2には、点灯回路内蔵のLED照明装置において、アルミニウム放熱筒に設けた放熱フィンと共用させた取り付け台を有し、この取り付け台に、配線スペースに使用できる隙間を設けたものが開示されている。ここでの隙間は、その全長に亘って何れの箇所においても閉じられることはない。また、隙間内の配線スペースは、配線のみを収納することができる程度の狭小なものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した特許文献2に開示された従来の技術では、配線スペースに使用できる隙間は、何れの箇所においても塞がれることはなく全長に亘って開放されており、振動等により配線が飛び出す虞があった。よって、隙間内に沿わせた配線であっても専用の固定具によって固定する必要があり、部品点数や組付工数を削減することができず、コスト高を招く虞があった。
【0008】
また、隙間内の配線スペースは、配線のみを収納することができる程度の狭小なものであった。そのため、配線に付随したコネクタを、隙間の途中に局所的に収納するようなことは困難であるという問題もあった。
【0009】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、ケース本体の外形内の溝に配線を収めることで、取付部位と配線が干渉することを防止することができ、また、配線を収めた溝を関連部品で塞ぐことで、専用の固定具を用いることなく、部品点数や組付工数を削減してコストを低減することができ、しかも、配線のみならずコネクタも確実に収納することができる配線収納構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]機器(10)のケース本体(11)を取付部位(1)に設置するに際し、該取付部位(1)に対向する前記ケース本体(11)の外面側に沿わせる各種の配線類(1
5)を収納するための配線収納構造において、
前記ケース本体(11)の外面側に
設けられ、前記各種の配線類(15)を沿わせるブラケット(17,20)と、前記配線類(15
)を配索する方向に沿って延び、該配線類(1
5)から分岐した分岐線(15d)が埋没する
1つ又は複数のガイド溝(30)
とを備え、
前記ガイド溝(30)
は、前記
分岐線(15d)を埋め込ませた箇所の少なくとも一部を前記
ブラケット(17,20)で塞ぐことを特徴とする配線収納構造。
【0011】
[2]前記ガイド溝(30)は、その全長に亘り前記
分岐線(15d)のコネクタも埋没可能な大きさに設けられ、その全長のうち任意の箇所に前記コネクタを配置可能であることを特徴とする前記[1]に記載の配線収納構造。
【0012】
[3]前記ガイド溝(30)は、前記ケース本体(11)の長手方向の全長に亘って直線状に延びるように設けられたことを特徴とする前記[1]または[2]に記載の配線収納構造。
【0013】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の配線収納構造によれば、機器(10)のケース本体(11)の外面側に各種の配線類(1
5)を
ブラケット(17,20)によって沿わせた状態で、該外面側を取付部位(1)に対して設置することになるが、このとき、
分岐線(15d)は、ケース本体(11)の外面側に予め設けてあるガイド溝(30)に埋め込むように配索する。
【0014】
かかるガイド溝(30)は、ケース本体(11)の外面側で配線類(1
5)を配索する方向に沿って延びており、ガイド溝(30)に
分岐線(15d)を埋め込ませることができる。これにより、
分岐線(15d)をケース本体(11)の外面側にてガイド溝(30)に埋め込むだけで容易に位置決めすることができ、配索の作業効率を向上させることができる。
【0015】
しかも、ガイド溝(30)にて
分岐線(15d)を埋め込ませた箇所の少なくとも一部は、配線類(1
5)の関連部品
であるブラケット(17,20)によって塞がれる。従って、
分岐線(15d)を専用の固定具を用いてガイド溝(30)内に特別に固定する必要はなく、
分岐線(15d)の配索に関する部品点数や組立工数を削減することができる。
【0016】
さらに、ケース本体(11)の外形内に
分岐線(15d)が収まるため、
分岐線(15d)がケース本体(11)と取付部位(1)の間に挟み込まれて潰れたり、他の部位との接触により損傷する虞もなく、
分岐線(15d)の保護の強化が図られることで安全性を高めることができる。
【0017】
前記[2]に記載の配線収納構造によれば、前記ガイド溝(30)は、その全長に亘り
分岐線(15d)のコネクタも埋没させる大きさに設けられ、その全長のうち任意の箇所にコネクタを配置することができる。これにより、
分岐線(15d)のみならずコネクタもガイド溝(30)に確実に収納することができ、しかも、コネクタを収納する位置は、ガイド溝(30)の全長に亘って任意に定めることができる。
【0018】
また、前記[3]に記載の配線収納構造によれば、前記ガイド溝(30)は、ケース本体(11)の長手方向の全長に亘って直線状に延びるように設けられている。ここでガイド溝(30)の全長に亘って
分岐線(15d)を収納する必要はなく、ケース本体(11)の外面側にて
分岐線(15d)が配索される範囲で、当該範囲にあるガイド溝(30)の一部を利用すれば良い。これにより、
分岐線(15d)を配索可能な範囲が広がるだけでなく、ケース本体(11)を押し出し成形する場合には、かえって容易にガイド溝(30)を一体成形することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る配線収納構造によれば、配線類をケース本体の外面側にてガイド溝に沿わすだけで容易に位置決めすることができ、配索の作業効率を向上させることができる。また、ガイド溝に配線類を埋め込ませた箇所の少なくとも一部を配線類の関連部品で塞ぐため、配線類を専用の固定具でガイド溝内に固定する必要はなく、配線類の配索に関する部品点数や組立工数を削減することができる。
【0020】
また、ケース本体の外形内に配線類が収まるため、配線類がケース本体と取付部位の間に挟み込まれて潰れたり、他の部位との接触により損傷する虞もなく、保護の強化が図られることで安全性を高めることができる。さらに、配線類のみならずコネクタもガイド溝に確実に収納することができる。しかも、コネクタを収納する位置は、ガイド溝の全長に亘って任意に定めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施の形態を説明する。
図1〜
図7は、本発明の一実施の形態を示している。
本実施の形態に係る配線収納構造は、機器10のケース本体11を取付部位1に設置するに際し、該取付部位1に対向する前記ケース本体11の外面側に沿わせる各種の配線類15を収納するための構造である。以下、機器として、乗物の客室内に用いる照明装置に適用した場合を例に説明する。
【0023】
機器10である照明装置は、図示省略したが乗物の客室内の天井部に配置されるものであり、LEDランプを光源に採用し、直接光ないし間接光により客室内を照らすように構成されている。かかる照明装置は、機器10の外形を成すケース本体11と、該ケース本体11の上面側に配設される電源基板14と、外部から電源基板14に給電する電源ケーブルを含む配線類15の他、図示省略した前記LEDランプ等を備えている。さらに、機器10には、前記配線類15を沿わせるブラケット17,20が配設されている。
【0024】
図1に示すように、ケース本体11は全体的には長尺に延びた形状であり、細長矩形の上面部12と、その下側を囲むように覆うカバー部13とから成る。ケース本体11は、そのカバー部13側を下方に向けた状態で客室内の天井部に設置される。かかる天井部には、上面部12の外面側(天井部側)を対接させた状態に取り付けるクロスメンバ等の取付部位1(
図4参照)が予め設けられている。
【0025】
上面部12は、アルミニウム等の金属や不燃性の樹脂等により容易に押出し成形することができる板状となっている。ただし、単に平らな板状に限ることなく、要所で湾曲ないし屈曲させた断面形状に成形しても良く、その外面ないし内面には、それぞれ必要に応じて凹溝や凸条等を成形時に一体成形しても良い。このような上面部12の外面側(天井部側)に、電源基板14や配線類15、それにブラケット20等が配設されている。また、上面部12の外面側には、後述するが配線類を収納するガイド溝30が予め設けられている。
【0026】
カバー部13は、その内部に配設されたLEDランプから出射された光を直接光または間接光として透過させるものであり、透光性の樹脂材料により成形されている。かかるカバー部13は、前記上面部12の内面側を囲むように取り付けられるものであり、例えば図示したケース状に成形されている。本機器10ではカバー部13の内側に、電源基板14や配線類15等を収納するスペースはなく、これらは前述したように上面部12の外面側(天井部側)に配設される。
【0027】
ケース本体11の上面部12の外面側(天井部側)には、その長手方向の一端側から他端側にかけて配線類15がほぼ直線方向に延ばした状態で配索されている。ここで配線類15は、各種の配線類のうち給電するための電源コードであるが、配線類はこれに限られることなく、例えば点灯制御を行うコントローラ19(
図5参照)を備える場合には、その信号線等も含むものである。さらに、給電用の電源コードや制御用の信号線に限られることなく、様々な電線、コード、ハーネスの類が該当する。
【0028】
ケース本体11の上面部12の外面側には、配線類としてメインの前記配線類15の他にも、この配線類15から分岐して電源基板14に接続する分岐線15c(
図3参照)や、電源基板14とコントローラ19とを接続する分岐線15d(
図5参照)等も配索されている。
また、上面部12の外面側には、その長手方向の一端側から他端側にかけて何れかの配線類を配索する方向に沿って延び、当該配線類を埋没させて収納するためのガイド溝30が予め設けられている。
【0029】
前記電源基板14は、ハウジングに収納された状態で上面部12の外面側の略中央に配設されている。電源基板14は、外部から給電された交流電力をLED点灯用の直流に変換するものであり、配線類15の途中に分岐線15c(
図3参照)を介して接続されている。また、配線類15は、電線(図示せず)を介してLEDランプに接続されている。さらに、
図5以外の各図では図示省略したが、配線類15の傍らには、点灯制御を行うコントローラ(制御基板)19がハウジングに収納された状態で配設されている。このコントローラ19も、電源基板14とは分岐線15dを介して接続されている。
【0030】
本実施の形態では、各種配線類のうち主に分岐線15dを収納するための配線収納構造として、一対のガイド溝30,30が、ケース本体11の上面部12の外面側における幅方向の中央付近にて互いに平行に直線状に延びるように設けられている。かかるガイド溝30は、本実施の形態では2つ設けたことで、配線の設計仕様(配索位置等)に応じて何れかのガイド溝30を適宜選択して使用することができる。ただし、複数のガイド溝30が必要なければ、ガイド溝30は1つだけでも足り、あるいは3つ以上のガイド溝30を所定の位置に延びるように設けても良い。
【0031】
各ガイド溝30は、分岐線15dの少なくとも径全体が埋没する大きさの矩形に凹む断面形状であり、分岐線15dを全体的に埋め込ませた状態に収納することができる。各ガイド溝30には、同様に分岐線15cも全体的に埋め込ませた状態に収納することができるが、メインの配線類15は径が大きく収納することはできない。ただし、各ガイド溝30の大きさ形状は任意の設計事項であり、配索する配線類の径の大きさに応じて設計すれば良い。
【0032】
また、ガイド溝30は、その全長に亘り分岐線15dのコネクタ(図示せず)も埋没可能な大きさに設けられており、その全長のうち任意の箇所にコネクタを配置可能となっている。ここでコネクタは、
図5中でも図示省略したが分岐線15dに設けられており、電源基板14またはコントローラ19に対して接続するものである。もちろん、分岐線15d以外の配線類をガイド溝30に埋没させる場合には、当該配線類の途中や両端に設けたコネクタも埋没させることができる程度の大きさ形状にガイド溝30を予め設計すると良い。
【0033】
さらに、ガイド溝30に、配線類(分岐線15d)を埋め込ませた箇所の少なくとも一部は、配線類の関連部品で塞がれている。ここで関連部品とは、タイマウント等の専用の固定具ではなく、配線類に関連して構造上必須となる部品であり、元々はガイド溝30を塞ぐことは意図していなかったものである。本実施の形態では、関連部品として配線類15を沿わせるブラケット17,20等が該当し、これらの部品の一部分を、ガイド溝30の一部を跨ぐように上面部12の外面側に対接させることになる。
【0034】
図1において、電源基板14より上面部12の一端側には、配線類15を直線方向に延ばした状態で沿わせるブラケット17が配設されている。このブラケット17より延出した配線類15の一端側は、上面部12の一端側に固定されており、その先端に接続用のコネクタ16aが設けられている。このコネクタ16aは、また別のブラケット18を介して上面部12の一端に固定されている。ブラケット17は、細幅状に延びて全長に亘りL字形断面に折曲された金属片から成り、底面壁には上面部12に固定する一対の取付片が延び出るように設けられている。
【0035】
ブラケット17は、その底面壁が上面部12の外面側の一側端縁に沿って固定され、該ブラケット17の底面壁と側面壁の角の内側に沿うように配線類15は配索される。ここでブラケット17の底面壁にある前記一対の取付片の間に、
図1等では図示省略した前記コントローラ19が配設される。このコントローラ19と電源基板14を接続する分岐線15dがガイド溝30に埋め込まれ、当該箇所の一部が、ブラケット17の底面壁にある一の取付片によって塞がれる。なお、
図5中では、配線類15やブラケット17は図示省略している。
【0036】
一方、電源基板14より上面部12の他端側には、配線類15をその余長部分15aを除き直線方向に延ばした状態に沿わせるブラケット20が配設されている。このブラケット20より延出した配線類15の他端側は、固定されておらず機器10(ブラケット20)に対して押し引き可能であり、余長部分15aの変化に応じて長さを調整可能な延出部分15bとなっている。この延出部分15bの先端にも、接続用のコネクタ16bが設けられている。
【0037】
図6、
図1に示すように、前記ブラケット20は、主として細幅状に延びて一部がL字形断面に折曲された2つの金属片20a,20bを上下に組み合わせて成り、全体として直線方向に延びる一部品として構成されている。上方の金属片20aの上面壁と下方の金属片20bの底面壁は互いに上下平行に対向し、また、それぞれの側面壁は互いに左右平行に対向しており、これらの内側が、配線類15(余長部分15aを除く)を直線状に収納する空間となっている。
【0038】
上下の金属片20a,20bは、それぞれを離隔させた状態に固定するためのカラーやカラーに挿通させたボルト等で一体に組み合わされている。また、下方の金属片20bの底面壁には、その両端に前記上面部12に固定する一対の取付片が延び出るように設けられている。ブラケット20も、前記ブラケット17と同様に、上面部12の外面側の一側端縁に沿って固定されている。そして、ブラケット17の底面壁にある一対の取付片も、前記ブラケット17と同様に、ガイド溝30の途中を跨いで上から塞ぐように上面部12の外面側に対接している。
【0039】
図6に示すように、ブラケット20の基端側には、配線類15の余長部分15aを収納するための余長ガイド21が設けられている。ここで余長部分15aは、配線類15を外部と接続する作業時に必要となる遊び分の長さがあり、余長部分15aの湾曲に応じて前記延出部分15bを機器10(ブラケット20)に対して引き出したり押し込めることができる。機器10である照明装置は、複数が客室内の天井部に沿って前後方向に密に並ぶよう直列状に配置されるものであり、詳しくは後述するが、各機器10を順次取り付ける際に、余長部分15aが接続作業上必要となる。
【0040】
余長ガイド21は、配線類15の余長部分15aを、該配線類15全体が延びる直線方向の側方に湾曲させて導き、ブラケット20より延び出る前記延出部分15bの長さを調整可能なものである。詳しく言えば余長ガイド21は、ブラケット20の基端側にて直線方向に相互に離隔して配され、配線類15の途中が屈曲可能に接触する2つの固定軸22,23から成る。ここで固定軸22,23は、前述した各金属片20a,20bを互いに対向する状態に固定するためのカラーないしボルトが相当する。
【0041】
このような余長ガイド21によれば、配線類15の余長部分15aは、2つの固定軸22,23の間を通って側方に湾曲すると共に、前記延出部分15bの押し引きに応じて、2つの固定軸22,23の間にて湾曲方向が規制されつつ湾曲長さが変化する状態に配索される。ここで余長部分15aは、2つの固定軸22,23の間の一方側には湾曲するが、他方側は金属片20aの側面壁によって湾曲が規制される。
【0042】
図6において、一の固定軸22に対しては、余長部分15aの手前側が接触することで、該余長部分15aは直線状の状態から側方に湾曲するように屈曲する。この固定軸22よりブラケット20の手前側に離隔した位置には、配線類15の途中が接触することで、固定軸22に至る配線類15の途中をブラケット20内に留めて直線状に保つための固定軸24が設けられている。なお、固定軸22は、各金属片20a,20b間に溶接したカラーであるが、固定軸24は、各金属片20a,20b間に固定したカラー付きボルトである。
【0043】
他の固定軸23に対しては、余長部分15aの奥側が接触することで、該余長部分15aは湾曲した状態から直線状に戻るように屈曲する。この固定軸23の直ぐ手前には、配線類15が挿通可能な隙間分だけ離れた位置に、配線類15の動きを固定軸23と共に湾曲方向に規制する固定軸25が設けられている。このような固定軸25は、固定軸23による余長部分15aの動きの規制を補助するものであり、各金属片20a,20b間に溶接したカラーである。なお、固定軸23は、各金属片20a,20b間に固定したカラー付きボルトである。
【0044】
前記ブラケット20で余長ガイド21がある部位には、配線類15の湾曲した余長部分15aを上方から覆う状態に配され、該余長部分15aの上方への変形を規制するカバー部21aが設けられている。かかるカバー部21aは、上方の金属片20aにおける上面壁の基端側より、側方に延び出る舌片状に設けられている。なお、カバー部21aは、前述した下方の金属片20bの底面壁にある一方の取付片と上下に対向するように配されている。
【0045】
図7に示すように、ブラケット20の先端側は、配線類15の延出部分15bが押し引きされる際に出没可能に開口している。かかる開口の傍らも、各金属片20a,20bを互いに対向する状態に固定するカラー付きボルト26によって支持されている。なお、配線類15は多少の力を加えた程度では座屈しない硬さを備えており、配線類15の延出部分15bを前記開口より出没するように押し引きすることができる。
【0046】
次に、本実施の形態に係る配線収納構造の作用について説明する。
一般に、この種の機器10の配線類15,15c,15dの配索作業に際しては、その経路を予め図面で指示しておいたり、配線類15等を固定するための専用の固定具を必要としてきたが、本配線収納構造ではガイド溝30を設けることにより、配索の作業効率の向上と配線の保護の強化を両立することができる。
【0047】
特に、ケース本体11の外面側に配線類15等が表出する構造の場合には、取付部位1に対するケース本体11の取り付け時における配線類15等の挟み込みや、配線類15等の他の部位との接触による損傷の虞があるが、本配線収納構造を適用することにより、配線類の保護強化を実現することができ安全性を向上させることができる。
【0048】
本実施の形態では、
図5、
図4に示すように、機器10のケース本体11の外面側に各種の配線類15等を沿わせた状態で、該外面側を取付部位1に対して設置することになる。このとき、ブラケット17等に沿わせない剥き出しの分岐線15dは、ケース本体11の外面側に予め設けてあるガイド溝30に埋め込むように配索する。
【0049】
かかるガイド溝30は、ケース本体11の外面側にて分岐線15dを配索する方向に沿って延びており、ガイド溝30に分岐線15dの径全体を埋め込ませることができる。これにより、分岐線15dはケース本体11の外面側にてガイド溝30に埋め込むだけで容易に位置決めすることができ、配索の作業効率を向上させることができる。
【0050】
しかも、ガイド溝30にて分岐線15dを埋め込ませた箇所の少なくとも一部は、配線類15の関連部品であるブラケット17自体によって塞がれる。従って、分岐線15dを専用の固定具を用いてガイド溝30内に特別に固定する必要はなく、分岐線15dの配索に関する部品点数や組立工数を削減することができる。また、ガイド溝30において関連部品で塞いでいない部位は、天井部側に取り付けたグロメット等の取付部位1に対接させることで塞ぐようにしても良い。
【0051】
このように、ケース本体11の外形内に分岐線15dが収まるため、分岐線15dがケース本体11と取付部位1の間に挟み込まれて潰れたり、他の部位との接触により損傷する虞もなく、分岐線15dの保護の強化が図られることにより、いっそう安全性を高めることができる。なお、
図4に示すように、取付部位1は、ケース本体11の外面側に出っ張る電源基板14等を回避する位置に配置され、天井部からケース本体11の下端までの距離がなるべく短く嵩張らないように工夫されている。
【0052】
また、ガイド溝30は、その全長に亘り分岐線15dにあるコネクタ(図示せず)も埋没させる大きさに設けられており、その全長のうち任意の箇所にコネクタを配置することができる。これにより、分岐線15dのみならずコネクタもガイド溝30に確実に収納することができ、しかも、コネクタを収納する位置は、ガイド溝30の全長に亘って任意に定めることができる。
【0053】
さらに、ガイド溝30は、ケース本体11の長手方向の全長に亘って直線状に延びるように設けられているが、その全長に亘って分岐線15dを収納する必要はなく、ケース本体11の外面側にて分岐線15dが配索される範囲で、当該範囲にあるガイド溝30の一部を利用すれば良い。これにより、分岐線15dを配索可能な範囲が広がるだけでなく、ケース本体11を押し出し成形する場合には、かえって容易にガイド溝30を一体成形することができる。
【0054】
また、
図1に示すように、メインの配線類15は、ブラケット20に対して、余長部分15aを除き直線方向に延ばした状態に沿わせて収納される。かかるブラケット20には余長ガイド21が設けられており、余長部分15aを含めて小スペースに収納することができる。また、配線類15に関しても専用の固定具を用いて固定する必要はなく、配索作業も容易に行うことができる。
【0055】
図7に示すように、ブラケット20の余長ガイド21は、配線類15の余長部分15aを直線方向の側方に湾曲させて導くことにより、ブラケット20の一端側より延び出る配線類15の延出部分15bの長さを調整することができる。すなわち、ブラケット20の開口より配線類15の延出部分15bを外部に引き出すと、余長ガイド21に導かれて湾曲した余長部分15aは短くなる一方、ブラケット20の開口より配線類15の延出部分15bを内部に押し込むと、余長ガイド21に導かれて湾曲する余長部分15aは長くなる。
【0056】
このような配線収納構造によれば、配線類15はブラケット20に沿って直線状に収納されると共に、延出部分15bの引き出し量に応じて湾曲長さが変化する余長部分15aも、余長ガイド21により定位置にとどめることができる。従って、配線に十分な余長部分15aを持たせることが可能となり、機器10を設置する際には、配線の他の機器10ないし外部との接続作業が容易となる。
【0057】
複数の機器10を客室内の天井部に対して直列状に連続して設置する場合、1つずつ機器10を天井部に取り付けながら配線類15を順次接続することになる。すなわち、機器10を、既に天井部に取り付けた機器10に隣接させて取り付ける際、各機器10の配線類15同士を互いに直列に接続するが、この接続作業の便宜上、これから取り付ける機器10より配線類15の余長部分15aの長さ分だけ、延出部分15bをブラケット20の外部に引き出しておく。そして、延出部分15bの先にあるコネクタ16bを、他の機器10の一端側より覗く配線類15のコネクタ16aに容易に接続することができる。
【0058】
隣接する機器10同士の配線類15を互いに接続した後は、延出部分15bを引き出していた機器10を新たに天井部に取り付けつつ、その延出部分15bをブラケット20の先端側の開口より内部に押し込めるようにする。かかる動作に伴って、ブラケット20内で増大する余長部分15aは、余長ガイド21によって側方に大きく湾曲しつつ収納されることになる。
【0059】
このように、機器10の取り付けの際、あるいは取り外しに際しても、余長部分15aないし延出部分15bの伸縮の自由度が大きいため、機器10自体の着脱作業も容易となり、配線類15の接続箇所(コネクタ16a等)に負担がかかることもない。さらに、機器10の設置後においては、余長部分15aが余長ガイド21によって定位置に収められるため、機器10の振動に伴ってバタつくこともなく、異音の発生も防ぐことができる。
【0060】
余長ガイド21は、前述したようにブラケット20にて直線方向に相互に離隔して配した2つの固定軸22,23から構成することができる。余長部分15aは、2つの固定軸22,23の間を通って側方に湾曲すると共に、延出部分15bの押し引きに応じて、2つの固定軸22,23の間にて湾曲方向が規制されつつ湾曲長さが変化する。このような非常に簡易な構成により、配線類15の余長部分15aの動きを所定範囲に規制しつつ湾曲長さを吸収でき、余長部分15aを定位置に収めることができる。
【0061】
また、ブラケット20にて、余長ガイド21がある部位には、余長部分15aを上方から覆う状態に配され、該余長部分15aの上方への変形を規制するカバー部21aが設けられている。これにより、余長部分15aが側方のみならず、上方へ変形することを確実に防止することができ、いっそう余長部分15aの余計な動きによる異音の発生を防止することができる。なお、余長部分15aの下方に関しては、ブラケット20の底面壁や上面部12自体の外表面によって下方への変形を規制できる。
【0062】
さらに、ブラケット20は、前述したように上下の金属片20a,20bを組み合わせた一部品から成り、その内側に、配線類15を湾曲した余長部分15aを除き直線状に収納する空間を備え、先端側に、延出部分15bが押し引きされた際に出没可能な開口が設けられている。このようなブラケット20の構成によれば、部品点数や組立工数も少なく、容易に製作することができ、コストを低減することができる。
【0063】
そして、前述した本実施の形態の構成より、ガイド溝30以外にも以下のような発明概念も導かれる。
機器10に配設されて、配線類15を直線方向に延ばした状態に沿わせるブラケット20を備え、該ブラケット20に、配線類15の余長部分15aを直線方向の側方に湾曲させて導き、該ブラケット20の先端側より延び出る配線類15の延出部分15bの長さを調整可能な余長ガイド21を設けた。
【0064】
前記余長ガイド21は、ブラケット20にて直線方向に相互に離隔して配され、配線類15の途中が屈曲可能に接触する2つの固定軸22,23から成り、配線類15の余長部分15aは、2つの固定軸22,23の間を通って側方に湾曲すると共に、配線類15の延出部分15bの押し引きに応じて、2つの固定軸22,23の間にて湾曲方向が規制されつつ湾曲長さが変化する状態に配索された。
【0065】
前記ブラケット20にて、余長ガイド21がある部位に、配線類15の湾曲した余長部分15aを上方から覆う状態に配され、該余長部分15aの上方への変形を規制するカバー部21aを設けた。
【0066】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述したような実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、機器10として照明装置を例に説明したが、特に照明装置に限定されるものではなく、配線類を備えた様々な装置に適用することができる。
【0067】
また、ケース本体11やガイド溝30の具体的な形状も、図示した例に限定されることはない。もちろん、ガイド溝30は、分岐線15d以外の他の配線類を収納できるように構成しても良い。さらに、ガイド溝30には、配線類以外でも例えば取付部位1に固定するためのボルトの頭部等の他部材に関しても、その少なくとも一部を収納できるように構成しても良い。
【0068】
また、余長ガイド21に関しては、2つの固定軸22,23以外の構造により、同等の作用を発揮し得るように構成しても良い。さらに、2つの固定軸22,23については、その外周が回転する構成として、配線類15が滑らかに摺接して屈曲するように構成しても良い。