特許第6406965号(P6406965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6406965
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】取水装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20181004BHJP
   E02B 9/04 20060101ALI20181004BHJP
   E02B 7/20 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   E02B5/08 101Z
   E02B9/04 E
   E02B7/20 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-206267(P2014-206267)
(22)【出願日】2014年10月7日
(65)【公開番号】特開2016-75084(P2016-75084A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】514254593
【氏名又は名称】四国水道工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】宮地 清
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5593543(JP,B2)
【文献】 特開平08−074232(JP,A)
【文献】 特開2013−151836(JP,A)
【文献】 特開2003−034923(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/084303(WO,A1)
【文献】 特開2009−068244(JP,A)
【文献】 特開2010−150830(JP,A)
【文献】 実開昭56−116423(JP,U)
【文献】 米国特許第04297219(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04
E02B 5/08
E02B 7/20
E02B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の取水装置本体と、該取水装置本体の上方から前面にかけて形成された開口部を覆って配設される取水スクリーンとを含んで構成される表流水の取水装置であって、
前記取水スクリーンのスクリーン部は上方にわん曲した側面視略弓形形状をなし、
前記取水装置本体の上部に、背面側から前方に張り出した表流水の流入板を備え、
前記スクリーン部の上端側が、前記流入板の下方に配置されると共に、前記スクリーン部のわん曲面の最高部が、前記流入板の表面高さと同一又は僅かに上方に位置することを特徴とする取水装置。
【請求項2】
前記スクリーン部の上端側におけるスクリーン表面と、前記流入板の表面との高低差が8〜20mmであることを特徴とする請求項1に記載の取水装置。
【請求項3】
前記スクリーン部のわん曲面の最高部と、前記流入板の表面との高低差が0〜10mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の取水装置。
【請求項4】
前記取水スクリーンが前記取水装置本体に対して着脱自在であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の取水装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山間地における谷川での表流水の取水に好適な取水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表流水の取水装置が種々開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に開示された表流水の背面取水装置は、取水器本体の上面開口部に取水スクリーンを斜め後ろ下がりに支持し、当該取水スクリーンの上方部に臨ませた表流水の流入受け板を、当該表流水の流入側へ張り出し形成し、当該流入受け板から流入する表流水を、取水器背面の取水スクリーンから取水するように構成したことを特徴としている。また、当該流入受け板の左右両側位置に跳水防止ガイドを配設し、流入受け板から流入する表流水の跳水を跳水防止ガイドで防止しつつ、取水器背面の取水スクリーンから表流水を取水するように構成したことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3075928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された表流水の背面取水装置によると、河川表流水の流れの前面側からではなく、河川表流水の流れの背面側から取水できることになり、その際、落ち葉や流木等を流出させながら取水スクリーンから表流水を背面取水することができるので、水源の維持管理作業の煩わしさを大幅に解消できる旨、記載されている。
【0005】
また、特許文献1に開示された表流水の背面取水装置において、当該流入受け板の左右両側位置に跳水防止ガイドを配設することによって、河川表流水の跳水現象を防止しつつ取水スクリーンへ向かう水流を形成すべく機能し、これにて河川表流水の流速変化による取水能力の低下を防止し、所期の取水性能がコンスタントに発揮できる等の諸効果をもたらす旨、記載されている。
【0006】
確かに、特許文献1に開示された表流水の背面取水装置のように、取水スクリーンを斜め後ろ下がりに支持した場合、取水スクリーンに落ち葉等が引っ掛かる虞は殆どなく、仮に取水スクリーンの表面に落ち葉等が堆積しても、表流水の流量が増加すればその水圧によって押し流すことが出来るため、取水装置の維持管理作業は大幅に軽減できるものと思料する。
【0007】
しかしながら、流入受け板と略同一の傾斜勾配にて取水スクリーンを斜め後ろ下がりに支持した場合、流入受け板上を流れる表流水の大半が取水スクリーンの表面を流下してしまい、安定した表流水の取水は困難である。
【0008】
また、流入受け板の左右両側位置に跳水防止ガイドを配設すると、流入受け板と跳水防止ガイドとの間に枯れ葉や流木等が堆積し易くなる虞もある。特に、流入受け板と跳水防止ガイドとの間に枯れ葉や流木等が挟まってしまうと表流水の水圧で押し流すことが困難となり、枯れ葉等が更に堆積して最終的には表流水の取水が困難となるため、定期的な維持管理作業が必要となる。
【0009】
そこで本願発明者は、上記の問題点に鑑み、表流水の取水効率が高く、且つ維持管理作業を大幅に軽減できる取水装置を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、箱状の取水装置本体と、該取水装置本体の上方から前面にかけて形成された開口部を覆って配設される取水スクリーンとを含んで構成される表流水の取水装置であって、前記取水スクリーンのスクリーン部は上方にわん曲した側面視略弓形形状をなし、前記取水装置本体の上部に、背面側から前方に張り出した表流水の流入板を備え、前記スクリーン部の上端側が、前記流入板の下方に配置されると共に、前記スクリーン部のわん曲面の最高部が、前記流入板の表面高さと同一又は僅かに上方に位置することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の取水装置において、前記スクリーン部の上端側におけるスクリーン表面と、前記流入板の表面との高低差が8〜20mmであることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の取水装置において、前記スクリーン部のわん曲面の最高部と、前記流入板の表面との高低差が0〜10mmであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の取水装置において、前記取水スクリーンが前記取水装置本体に対して着脱自在であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の取水装置によると、表流水の流量に拘わらず、安定的に取水することが出来る。また、取水スクリーンに枯れ葉や流木等が堆積しても上流側からの表流水の水流によって下流側へ押し流されるため、取水装置の維持管理作業を大幅に軽減することができる。
【0015】
また、本発明の取水装置に係る取水スクリーンを取水装置本体に対して着脱自在に構成することによって、取水スクリーンが毀損した場合等に容易に取り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る取水装置の正面図である。
図2図1に示した取水装置の平面図である。
図3図1におけるA−A線断面図である。
図4図1に示した取水装置において、(a)はスクリーン部のわん曲面の最高部が流入板の表面高さと同一の場合、(b)はスクリーン部のわん曲面の最高部が流入板の表面高さより僅かに上方に位置する場合を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る取水装置10を示す正面図、図2は当該取水装置10の平面図、図3図1に示した取水装置10に係るA−A線断面図である。これら図1から図3に示すように、本実施形態に係る取水装置10は、箱状の取水装置本体12と、取水装置本体12の上方から前面にかけて形成された開口部14を覆って配設される取水スクリーン16とを含んで構成されている。
【0018】
本実施形態の取水装置10に係る取水装置本体12は、左右の側面板21,22と、両側面板21,22間の前方下部に配設された前面板23と、両側面板21,22間の後方に配設された背面板24と、両側面板21,22間の下方に配設された底板25と、両側面板21,22間の上部において、背面板24の上端部から前方に張り出した表流水の流入板26とによって、箱状に形成されている。そして、両側面板21,22間において、前面板23の上端縁23aと流入板26の前端縁26aとの間に開口部14が形成されることとなる。
【0019】
本実施形態の取水装置10に係る取水スクリーン16は、取水装置本体12に形成された開口部14を覆って配設される。図3に示すように、取水スクリーン16は、表流水を取水するためのスクリーン部17と、スクリーン部17の上縁側から延設された挿入部18と、スクリーン部17の下縁側から延設された取り付け部19とを含んで構成されている。
【0020】
取水スクリーン16に係るスクリーン部17は上方にわん曲した側面視略弓形形状をなしている。そして、このスクリーン部17の上端17a側が流入板26の下方に配置されることによって、取水スクリーン16に係るスクリーン部17の上端17a側のスクリーン表面が、流入板26に係る表流水の流入面(流入板26の表面)より下方に位置することとなる。つまり、スクリーン部17の上端17a側のスクリーン表面と流入板26の表面とに高低差hが形成されることとなり、この高低差hによって表流水に抵抗を生じさせ、強制的に取水装置本体12内へ表流水を流入させる。
【0021】
更に、本実施形態の取水装置10において、取水スクリーン16に係るスクリーン部17のわん曲したスクリーン表面(=わん曲面)の最高部Tは、流入板26の表面と同一の高さに設定されている。つまり、スクリーン部17は、その上端17a側から最高部Tにかけて徐々に上方に向かってわん曲し、最高部Hから下方に向かってわん曲し、スクリーン部17全体として側面視略弓形形状をなしている。
【0022】
以上の構成を備える本実施形態の取水装置10は、谷川等の水源に設けた堰堤等の凹部に設置され、堰堤の上流側に貯留された表流水を取水装置10へ導水することによって取水スクリーン16から取水装置本体12内へ取水される。より具体的には、取水装置10の設置箇所の上流側から流れてきた表流水は、取水装置10に係る取水装置本体12を構成する両側面板21,22と流入板26とによって形成された表流水流入経路Rへ流れ込み、流入板26から取水スクリーン16へ到達した表流水は、スクリーン部17から取水装置本体12内へと流入する。
【0023】
ここで、本実施形態の取水装置10では、スクリーン部17の上端17a側のスクリーン表面と流入板26の表面との間に高低差hが形成されており、更に、スクリーン部17のわん曲したスクリーン表面(=わん曲面)の最高部Tが流入板26の表面と同一の高さに設定されているため、流入板26から流入し、スクリーン部17へ到達した表流水に抵抗が生じ、表流水の流量が多い場合は勿論であるが、流量が少ない場合であっても積極的にスクリーン部17から取水装置本体12内へ安定的に取水することができる。
【0024】
また、取水装置本体12に係る両側面板21,22と流入板26とによって形成された表流水流入経路Rから取水スクリーン16にかけて、そもそも枯れ葉等が堆積し難い構造となっているが、表流水の流量が少なく、枯れ葉等がスクリーン部17の上端17a付近に堆積した場合であっても、表流水の流量が多くなればその水圧によって容易に押し流すことができるため、本実施形態の取水装置10によると、枯れ葉等の除去作業のような維持管理作業が殆ど不要となり、メンテナンスコストの大幅な削減が図られる。
【0025】
なお、図1及び図3において符号32で示すのは排泥口であって、この排泥口32には不図示のプラグが螺着されている。取水装置本体12内に流入した表流水に含まれる砂や泥は、当該プラグ(不図示)を外すことによって、排泥口32から取水装置本体12外へ排出することができる。
【0026】
また、図1から図3において符号34で示すのは取水管であり、この取水管34から取水装置本体12内に流入した表流水を目的の場所へ導水することができる。なお、本実施形態では取水管34が側面板21側に接続されているが、この取水管34が接続される場所は特に限定されず、取水装置10の設置場所に応じて、側面板22側や前面板23側等に接続されてもよい。
【0027】
以上、本発明の一実施形態に係る取水装置10について詳述したが、取水装置10に係る取水スクリーン16は取水装置本体12に対して着脱自在であることが好ましい。図3に示すように、取水装置本体12に係る両側面板21,22間における流入板26の下方に、背面板24から前方に張り出した取水スクリーン受板31を設け、更にこの取水スクリーン受板31の両端部から前方に向かって斜め下方にわん曲したガイド板30,30を両側面板21,22にそれぞれ設ける。
【0028】
取水スクリーン16を取水装置本体12に係る開口部14に取り付ける場合は、取水スクリーン16に係る挿入部18をガイド板30,30に当接させた状態で上方へスライドさせていくことによって、挿入部18が流入板26と取水スクリーン受板31との間に挿入される。そして、取水スクリーン16に係る取り付け部19を、取水装置本体12に係る前面板23に設けられた係止部にボルトとナットで固定することによって容易に取り付けることができる。
【0029】
このように、取水スクリーン16を取水装置本体12に対して着脱自在に構成することによって、取水スクリーン16が毀損した場合等に容易に交換が可能である。また、取水装置本体12内の清掃を行う場合も、取水スクリーン16を取り外すことによって作業効率を大幅に向上することができる。更に、両側面板21,22にガイド板30,30を設けることによって、取水スクリーン16の着脱を容易に行うことができる。
【0030】
以上、本発明の取水装置の実施形態について詳述したが、本発明の技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。例えば、本実施形態の取水装置10において、スクリーン部17の上端17a側におけるスクリーン表面と、取水装置本体12に係る流入板26の表面との高低差hについて、高低差が設けられればその値は特に限定されないが、取水効率及び落ち葉等の堆積防止を考慮して、高低差hは8〜20mmとすることが好ましく、10〜15mmとすることが特に好ましい。高低差hが8mm未満であると表流水に発生する抵抗が少ないために取水効率が低下し、安定的な表流水の取水が困難となる虞がある。また、高低差hが20mmを超えると、スクリーン部17の上端17a付近に落ち葉等が堆積し易くなり、取水効率の低下及び維持管理作業の負担が増えることとなる。
【0031】
また、上記実施形態の取水装置10において、取水スクリーン16に係るスクリーン部17のわん曲したスクリーン表面(=わん曲面)の最高部Tは、図4(a)に示すように、流入板26の表面と同一の高さに設定されているが、同図(b)に示すように、最高部Tが流入板26の表面高より僅かに上方に位置していることがより好ましい。具体的には、スクリーン部17のスクリーン表面(=わん曲面)の最高部Tと、流入板26の表面との高低差Hは0〜10mmとすることが好ましく、3〜7mmとすることが特に好ましい。高低差Hが0mm未満、即ち流入板26の表面高より下方にスクリーン部17のスクリーン表面(=わん曲面)の最高部Tが位置すると、流入板26から流入した表流水に抵抗が殆ど生じないため、表流水がスクリーン部17のスクリーン表面を流下してしまい、取水効率が大幅に低下する。一方、高低差Hが10mmを超えると、取水効率は向上するが枯れ葉等が堆積し易くなったり、表流水に含まれている砂利等によってスクリーン部17のスクリーン表面が摩耗してスクリーン部17の断面が薄くなったりするため、維持管理作業の負担を軽減することが困難となる。
【0032】
以上、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。
【符号の説明】
【0033】
10:取水装置
12:取水装置本体
14:開口部
16:取水スクリーン
17:スクリーン部
18:挿入部
19:取り付け部
21,22:側面板
23:前面板
24:背面板
25:底板
26:流入板
30:ガイド板
31:取水スクリーン受板
32:排泥口
34:取水管
h:スクリーン部の上端側におけるスクリーン表面と流入板表面との高低差
H:スクリーン部のスクリーン表面の最高部と流入板表面との高低差

図1
図2
図3
図4