(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対向する一対の面間に形成された遊間内において該一対の面に押圧されて押し潰された状態で介在配置し侵入水の止水を図る棒状のゴム製成形止水材であって、軸直交方向の断面形状において、中央部に軟質部を備えると共に該軟質部の外周部を覆う硬質部を備える構造を有し、上記軟質部は独立気孔として形成した多数の気孔と該各気孔を隔てる海綿状の隔壁とを備えると共に該隔壁の外周部を上記硬質部の内周部とシームレスに一体化する構造を有し、且つ上記軟質部の隔壁と上記硬質部とを加硫ゴムで構成し、上記軟質部の独立気孔たる気孔によって上記押圧による押し潰しを許容しつつ当該気孔からの水の浸入を阻止すると共に上記硬質部を上記軟質部の隔壁がバックアップすることによって弾性反発し上記対向する一対の面のそれぞれに対し上記硬質部の外周面を押し付けることを特徴とするゴム製成形止水材。
軸直交方向の断面形状における中央部に軟質部を備えると共に該軟質部の外周部を覆う硬質部を備える構造を有する棒状のゴム製成形止水材の製造方法であって、発泡剤入りの軟質部用ゴム材料と、硬質部用ゴム材料のそれぞれに添加する加硫剤及び加硫促進剤の添加量を調整することにより、上記軟質部用ゴム材料と上記硬質部用ゴム材料を同時に押し出して成形した押出成形物を加熱し加硫する工程において、上記硬質部用ゴム材料の加硫完了を上記軟質部用ゴム材料の加硫完了よりも早めて、上記軟質部用ゴム材料内の発泡剤の発泡にて生じた気孔による上記押出成形物の軸方向への変形を抑止しつつ上記軟質部用ゴム材料と上記硬質部用ゴム材料とを適切に一体化し、上記軟質部の気孔を隔てる隔壁の外周部と上記硬質部の内周部とを一体化することを特徴とするゴム製成形止水材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示の止水材にあっては、止水材を構成するスポンジゴムとブチル系接着剤の双方が軟質であり変形容易であることから、容易に押し潰した状態で遊間内に介在配置することができる。
【0008】
しかしながら、スポンジゴムもブチル系接着剤も弾性に乏しいことから、止水材全体として弾性反発力が弱く、遊間を構成する対向面に止水材の外周面(ブチル系接着剤層の外周面)を適切に押し付けることができない。
【0009】
また、弾性反発力を発揮できるゴムでスポンジゴムを構成するとしても、当該スポンジゴムの外周面を覆うブチル系接着剤の層が同スポンジゴムとは別体であり且つ軟質で弾性に乏しいために上記弾性反発力を減殺してしまい、やはり、遊間を構成する対向面に止水材の外周面を効果的に押し付けることができない。
【0010】
したがって、上記特許文献1の止水材は、自身の外周面と、遊間を構成する一対の対向面の少なくとも一方の面との間に間隙が生ずることを防止できないおそれがあり、止水効果を有効に保持することができない問題点を有している。
【0011】
特に、気温の変化等により隣接配置したコンクリート二次製品が収縮変形し、遊間の幅が広がった(目開きした)場合には、押し潰された状態から再度もとの状態に戻ることが困難であり、上記問題点が顕著となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、遊間を構成する一対の対向面による押し潰しを許容しながらも同一対の対向面に対し弾性反発力を発揮することができるゴム製成形止水材及びその製造方法を提供する。
【0013】
要述すると、本発明に係るゴム製成形止水材は、対向する一対の面間に形成された遊間内において該一対の面に押圧されて押し潰された状態で介在配置し侵入水の止水を図る棒状のゴム製成形止水材であることを前提とし、軸直交方向の断面形状において、中央部に軟質部を備えると共に該軟質部の外周部を覆う硬質部を備える構造を有し、上記軟質部は多数の気孔と該各気孔を隔てる海綿状の隔壁とを備えると共に該隔壁の外周部を上記硬質部の内周部と一体化する構造を有する。加えて、上記軟質部の隔壁と上記硬質部とを加硫ゴムで構成する。
【0014】
上記構造を有する本発明に係るゴム製成形止水材は、上記軟質部の気孔によって上記押圧による押し潰しを許容すると共に上記軟質部の隔壁及び上記硬質部によって弾性反発し上記対向する一対の面のそれぞれに対し上記硬質部の外周面たる止水材の外周面を押し付けることにより、有効に止水を図ることができる。
【0015】
好ましくは、上記軟質部の気孔を独立気孔として形成することにより、上記隔壁を確保して所望の硬度を得ることができると共に、成形止水材を切りっ放しの状態で使用した場合も切断面における当該気孔からの水の浸入を阻止する。
【0016】
また、上記軟質部の隔壁及び上記硬質部を加硫した水膨張ゴムで構成するか、上記軟質部の隔壁を加硫した非膨張ゴムで構成し、上記硬質部を加硫した水膨張ゴムで構成することにより、当該水膨張ゴムが侵入水を吸収し膨張して止水材全体を拡径し、更に確実に止水を図ることができる。
【0017】
また、本発明に係るゴム製成形止水材の製造方法は、既述した構造のゴム製成形止水材、すなわち軸直交方向の断面形状における中央部に軟質部を備えると共に該軟質部の外周部を覆う硬質部を備える構造を有する棒状のゴム製成形止水材の製造方法である。
【0018】
具体的には、硬質部用ゴム材料と発泡剤入りの軟質部用ゴム材料のそれぞれに添加する加硫剤及び加硫促進剤の添加量を調整することにより、上記硬質部用ゴム材料と上記軟質部用ゴム材料を同時に押し出して成形した押出成形物を加熱し加硫する工程において、上記硬質部用ゴム材料の加硫完了を上記軟質部用ゴム材料の加硫完了よりも早めて、上記軟質部用ゴム材料内の発泡剤の
発泡にて生じた気孔による上記押出成形物の軸方向への変形を抑止しつつ上記硬質部用ゴム材料と上記軟質部用ゴム材料とを適切に一体化し、上記硬質部の内周部と上記軟質部の気孔を隔てる隔壁の外周部とを一体化する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るゴム製成形止水材によれば、遊間内で適切に押し潰された状態で介在しつつ、該遊間を構成する一対の対向面に対して自身の外周面を弾性反発力により押し付けて自身の周囲に間隙が生じるのを防止し、侵入水を有効に遮断することができる。
【0020】
また、上記軟質部の隔壁及び該隔壁の外周部を覆う上記硬質部の双方を加硫ゴムで構成することにより高弾性且つ高強度とし、弾性反発力の発揮を確実ならしめる。
【0021】
さらに、上記軟質部の隔壁の外周部と上記硬質部の内周部が一体化していることにより、上記硬質部を上記軟質部の隔壁が内側からバックアップし、弾性反発力を効果的に発揮せしめる。
【0022】
また、本発明に係るゴム製成形止水材の製造方法によれば、簡易な方法で上記本発明に係るゴム製成形止水材を有効に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るゴム製成形止水材及びその製造方法の実施形態を
図1乃至
図13に基づき説明する。
【0025】
≪ゴム製成形止水材の構造≫
図1乃至
図3に示すように、本発明に係るゴム製成形止水材1(以下、単に成形止水材1という。)は、可撓性を有する棒状を呈し、後記するように、対向する一対の面間に形成される遊間内において、押し潰された状態で侵入水の浸入方向に直交するように介在配置して止水に供する。
【0026】
本発明に係る成形止水材1は、具体的構造として、軸直交方向の断面形状において、中央部に軟質部2を備えると共に該軟質部2の外周部2aを覆う硬質部3を備える構造を有し、上記軟質部2は多数の気孔4と該各気孔4を隔てる海綿状の隔壁5とを備えると共に該隔壁5の外周部5a(軟質部2の外周部2a)を上記硬質部3の内周部3bと一体化する構造を有する。なお、上記硬質部3は気孔を備えず、相対的に上記軟質部2よりも硬度の高い構造を有する。
【0027】
換言すると、コア層となる上記軟質部2の隔壁5と表層となる上記硬質部3とがシームレスに繋がった構造を有し、遊間を構成する一対の対向面による押し潰しの許容と該一対の対向面に対する弾性反発力の発揮の両立を図る。
【0028】
また、本発明に係る成形止水材1は、凸曲面形状の上面1Aと平面形状の底面1Bとを備えると共に、該上面1A及び底面1Bを繋ぐ平面形状の右側面1Cと平面形状の左側面1Dとを備え、軸直交方向の断面形状において、全体として蒲鉾の如き形状を有している。なお、本発明において、成形止水材1の軸直交方向の断面形状は、後記のように遊間内に介在配置することができれば特に限定はなく、円形、楕円形、矩形、多角形等又はこれらを組み合わせた形状の断面形状とすることも実施に応じ任意である。
【0029】
また、本発明に係る成形止水材1の高さは、適用箇所の遊間の幅より若干長尺とし、その高さの範囲内で硬質部3の弾性反発力を発揮し得る層厚を確保することは当然である。
【0030】
また、上記軟質部2の隔壁5と上記硬質部3はゴム材料に硫黄等の加硫剤を添加し加熱して加硫処理を施した加硫ゴムで構成する。ゴム材料としては、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、その他高分子材料等を単独又は複合して使用する。
【0031】
また、上記軟質部2の気孔4は上記ゴム材料に発泡剤を添加し、該発泡剤が加熱により発泡することにより形成する。本発明にあっては、当該気孔4が独立気孔となるように上記発泡剤の添加量を調整する。詳細は後記する製造方法の説明にて述べる。
【0032】
加えて、本発明にあっては、上記軟質部2の隔壁5を加硫した非膨張ゴムで構成し上記硬質部3を加硫した水膨張ゴムで構成するか、又は上記軟質部2の隔壁5及び上記硬質部3の双方を加硫した水膨張ゴムで構成することができる。
【0033】
ここで水膨張ゴムとは、上記したゴム材料に吸水性材料を添加した材料から成り、該吸水性材料が吸水して膨張することにより体積を増大するゴムをいう。上記吸水性材料としては、紙おむつや生理用品等に用いられる吸水性ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム)等を使用し、要求性能(膨張率、最大膨張までに要する時間等)に応じて適正量を上記ゴム材料に添加する。また、非膨張ゴムとは上記したゴム材料に上記吸水性材料を添加しないゴム材料をいい、水を吸収しないゴムをいう。
【0034】
以上の構成を有する本発明に係る成形止水材1は、後記するように、遊間を構成する一対の対向面からの押圧により上記軟質部2の気孔4が潰れて止水材全体の押し潰しを許容すると共に、一体となった上記軟質部2の隔壁5及び上記硬質部3が協働して弾性反発力を発揮して上記一対の対向面に自身の外周面1a(硬質部の外周面3a)を押し付けて自身の周囲に間隙が生ずるのを防止し、侵入水を有効に遮断することができる。
【0035】
加えて、上記軟質部2の隔壁5及び上記硬質部3を加硫ゴムで構成することにより高弾性且つ高強度とし、上記弾性反発力の発揮を確実ならしめる。
【0036】
また、上記軟質部2の気孔4を独立気孔として形成することにより、該各気孔4を隔てる隔壁5を確保して所望の硬度を得ることができると共に、成形止水材1を切りっ放しの状態で使用した場合も切断面における当該気孔4からの水の浸入を阻止する。
【0037】
更に、上記硬質部3を加硫した水膨張ゴムで構成する場合、又は上記軟質部2の隔壁5及び上記硬質部3を水膨張ゴムで構成した場合には、後記するように、特に該硬質部3を構成する水膨張ゴムが侵入水を吸収して膨張することにより成形止水材全体を拡径し、上記弾性反発力による止水を補完する。
【0038】
≪隣接する単位壁部材間の遊間への適用例≫
図4・
図5は、本発明に係る成形止水材1を隣接する単位壁部材11・11′間の継手部分に生じる遊間へ適用した例を示している。該単位壁部材11(11′)は、プレキャストコンクリート部材(コンクリート二次製品)であり、複数個を連結して地上に設置することにより防潮堤や擁壁を構築する部材である。
【0039】
図4に示すように、単位壁部材11の端面11aと該単位壁部材11に隣接する単位壁部材11′の端面11′aを突き合せ、すなわち設置済みの単位壁部材11の端面11aと新たに設置する単位壁部材11′の端面11′aを突き合せ、該各端面11a・11′a間に形成される遊間内に適切な長さに切断した成形止水材1を介在配置する。
【0040】
好ましくは、
図4に示すように、成形止水材1は、その中途部を単位壁部材11・11′の上端側で逆U字状に折り曲げると共に、その両端部を該壁部材11・11′の下端側に配して介在配置する。単位壁部材11・11′の上位から下方に向け侵入する侵入水(雨水等)に対し止水を図ると共に、該単位壁部材11・11′の外面11b・11′b側から同内面11c・11′c側方向へと侵入する侵入水(海水・地下水等)に対し二箇所で止水を図るためである。なお、成形止水材1の両端部は切断面となり、当該切断面における軟質部2が雨水や地下水等の水に晒されることとなるが、該軟質部2の気孔4が独立気孔であることにより、成形止水材1の内部に水が浸透することはない。
【0041】
また、成形止水材1は、その底面1Bを隣接する単位壁部材11・11′の一方の端面11aに接着剤を介して接着することにより予め取り付けておき、
図5(A)に示すように、他方の端面11′aにより押し潰すようにして遊間10内に介在させる。本例においては、既設の単位壁部材11の端面11aに予め成形止水材1を取り付ける例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、新たに設置する単位壁部材11′の端面11′aに予め成形止水材1を取り付けることができるのは当然である。
【0042】
又は単位壁部材11・11′の何れかの端面に溝を形成し、該溝を利用して成形止水材1を取り付けておくことも実施に応じ任意である。
【0043】
次に、
図5に基づき、上記の如く遊間内に介在配置された成形止水材1による止水について説明する。なお、
図5は、説明の便宜上、単位壁部材11・11′の外面11b・11′b側における成形止水材1の断面状態のみを示している。
【0044】
図5(A)に示すように、成形止水材1はL1の幅を有する遊間10内において、該遊間10を形成する単位壁部材11・11′の端面11a・11′aに上面1A及び底面1Bを押圧され、左右側面1C・1Dがやや拡開した状態に押し潰されて配置される。
【0045】
この際には、
図5(A)の拡大図に示す如く、成形止水材1が有する上記軟質部2内の多数の気孔4が潰された状態となって、成形止水材1全体が上記押圧により押し潰されることを許容する。同時に一体化した上記軟質部2の隔壁5及び上記硬質部3が協働して弾性反発力を発揮し該硬質部3の外周面3a、つまり成形止水材1の外周面1aを上記端面11a及び上記端面11′aに押し付けて該端面11aと外周面1a間及び該端面11′aと外周面1a間に間隙が生じるのを防止し、図中Wで示す侵入水の進行を阻止して有効に止水を図る。
【0046】
また、
図5(B)に示す如く、気温の変化等により単位壁部材11・11′が収縮変形し、端面11aと端面11′a間の遊間10の幅がL1よりも大きなL2となって該遊間10が目開きした場合には、一体化した上記軟質部2の隔壁5及び上記硬質部3が協働して弾性反発力を発揮し、該弾性反発力により上記軟質部2の気孔4を復元すると共に離間した端面11a及び11′aに追随して外周面1aを押し付けて該端面11aと外周面1a間及び該端面11′aと外周面1a間に間隙が生じるのを防止する。したがって図中Wで示す侵入水の阻止を持続し、もって止水力を保持することができる。
【0047】
加えて本発明にあっては、少なくとも上記硬質部3を加硫した水膨張ゴムで構成すれば、該水膨張ゴムから成る硬質部3が侵入水Wを吸収して膨張して拡径し、したがって成形止水材1全体が拡径して外周面1aを強く対向面11a・11′aに押し付けることができ、更に確実に止水に供することができる。また、上記硬質部3のみならず上記軟質部2の隔壁5をも加硫した水膨張ゴムで構成すれば、該硬質部3と共に該軟質部2も拡径し、より強固に外周面1aを対向面11a・11′aに押し付けて止水に供することができる。
【0048】
上記のとおり、本発明に係る成形止水材1にあっては、上記軟質部2の気孔4が潰れることにより、遊間10を形成する一対の対向する端面11a・11′aからの押圧による押し潰しを許容する。
【0049】
他方、加硫ゴムから成り一体化した上記軟質部2の隔壁5及び上記硬質部3が協働し、具体的には上記硬質部3を上記軟質部2の隔壁5が内側からバックアップして弾性反発力を発揮する。そのため、平時には有効に外周面1aを端面11a・11′aに押し付けて止水を図ることができるのは勿論、遊間10の目開き時にも相互離間した端面11a・11′aに追随して外周面1aを押し付けて止水を図ることができる。
【0050】
≪隣接するボックスカルバート間又は隣接する単位水路部材間の遊間への適用例≫
図6・
図8は、本発明に係る成形止水材1を隣接するボックスカルバート12・12´間の継手部分に生じる遊間へ適用した例を示している。該ボックスカルバート12(12´)は、角筒状に成形したコンクリート二次製品であり、複数個を連結して地中に埋設し、通路、水路、配線路等を形成する部材である。
【0051】
また、
図7・
図8は、本発明に係る成形止水材1を隣接する単位水路部材14・14′間の継手部分に生じる遊間へ適用した例を示している。該単位水路部材14(14′)は、断面U字状に成形したコンクリート二次製品であり、複数個を連結して配設し、水路を形成する部材である。
【0052】
隣接するボックスカルバート12・12′間の遊間に本発明に係る成形止水材1を適用する場合には、
図6に示すように、ボックスカルバート12の端面12aに成形止水材1と略同幅で環状に延びる溝13を形成し、該溝13内に成形止水材1を取り付け、上記端面12aを隣接するボックスカルバート12′の端面12′aと突き合せて、両ボックスカルバート12・12′を連結する。なお、隣接するボックスカルバート12′の端面12′aには溝は形成しない。
【0053】
上記溝13内に成形止水材1を取り付ける場合には、該溝13の環状に沿って適切な長さに切断した成形止水材1を同溝13内に入れ込むか、又は
図6に示すように、適切な長さに切断した成形止水材1を上記溝13の環状に沿うように成形し端部同士を加硫接着して同溝13内に入れ込む。何れにしても、
図8に示すように、成形止水材1の底面1Bが溝13の底面に接するように取り付ける。
【0054】
また、隣接する単位水路部材14・14′間の遊間に本発明に係る成形止水材1を適用する場合には、
図7に示すように、単位水路部材14の断面U字状の端面14aに成形止水材1と略同幅でU字状に延びる溝13を形成し、該溝13内に成形止水材1を取り付け、上記端面14aを隣接する単位水路部材14′の端面14′aと突き合せて、両単位水路部材14・14′を連結する。なお、隣接する単位水路部材14′の端面14′aには溝は形成しない。
【0055】
上記溝13内に成形止水材1を取り付ける場合には、該溝13のU字状に沿って適切な長さに切断した成形止水材1を同溝13内に入れ込み、
図8に示すように、成形止水材1の底面1Bが溝13の底面に接するように取り付ける。
【0056】
したがって、
図8に示すように、成形止水材1は、ボックスカルバート12又は単位水路部材14が有する溝13の底面と、隣接するボックスカルバート12′の端面12′a又は単位水路部材14′の端面14′aとの間に形成される遊間10内で押し潰された状態で介在配置する。
【0057】
そして、ボックスカルバート外面12b・12′b側又は単位水路部材外面14b・14′bから侵入する侵入水(地下水等)を阻止すると共に、ボックスカルバート内面12c・12′c側又は単位水路部材内面14c・14′c側から侵入する侵入水(水路内の水等)を阻止する。
【0058】
なお、上記軟質部2の気孔4による成形止水材1の押し潰しの許容、一体化した上記軟質部2の隔壁5及び上記硬質部3による弾性反発力の発揮及び水膨張ゴムによる拡径についてのメカニズムは、既述した隣接する単位壁部材11・11′間の遊間10に成形止水材1を適用する場合と同様であるので、ここでは説明を割愛する。
【0059】
≪製造方法≫
次に本発明に係るゴム製成形止水材の製造方法について説明する。
【0060】
本発明に係るゴム製成形止水材1の製造方法は、
図9に示すように、既述したゴム材料に加硫剤及び加硫促進剤と共に発泡剤を添加して混練して上記軟質部2用のゴム材料を生成する工程(軟質部用ゴム材料混練工程S1)と、既述したゴム材料に加硫剤及び加硫促進剤を添加し混練して上記硬質部3用のゴム材料を生成する工程(硬質部用ゴム材料混練工程S2)と、上記軟質部用ゴム材料と上記硬質部用ゴム材料とを同時に押出成形する工程(二色押出成形工程S3)と、該押出成形された押出成形物を加熱して上記軟質部用ゴム材料を加硫しつつ同軟質部用ゴム材料内の発泡剤を発泡させると共に上記硬質部用ゴム材料を加硫する工程(加硫及び発泡工程S4)とを有する。
【0061】
<軟質部用ゴム材料混練工程>
まず、軟質部用ゴム材料混練工程S1においては、前記例示したゴム材料に加硫剤及び加硫促進剤と共に発泡剤を添加し、既知の混練機により混練して軟質部用ゴム材料を生成する。
【0062】
上記加硫剤としては、硫黄、有機含硫黄化合物、金属酸化物、金属過酸化物、キノンジオキシム、変性アルキルフェノール樹脂、有機過酸化物、ジイソシアナート、ジアミン等を使用し、既述したゴム材料のゴムの種類に応じて適宜使用する。上記加硫促進剤としては、アンモニア誘導体のアルデヒド・アンモニア類、アルデヒド・アミン類、グアニジン類、二硫化炭素誘導体のチオウレア類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩類等に属する成分から成る加硫促進剤を使用し、所望の促進効果に応じて適宜使用する。なお、後記するように、硬質部用ゴム材料の加硫完了を軟質部用ゴム材料の加硫完了よりも早めるために、上記加硫剤及び加硫促進剤の添加量を調整する。
【0063】
また、上記発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、亜硝酸アンモニア等の無機発泡剤、ニトロソ化合物、アゾ化合物、スルホニルヒドラジド化合物等の有機発泡剤を使用し、該発泡剤により形成する気孔が独立気孔となるように添加量を調整する。
【0064】
上記軟質部2の隔壁5を水膨張ゴムで構成する場合には、更に吸水性ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム)等を添加し混練して軟質部用ゴム材料を生成する。
【0065】
<硬質部用ゴム材料混練工程>
また、硬質部用ゴム材料混練工程S2においては、既述したゴム材料に加硫剤及び加硫促進剤を添加し、既知の混練機により混練し硬質部用ゴム材料を生成する。
【0066】
上記加硫剤及び加硫促進剤は既述した軟質部用ゴム材料と同様のものを使用し、後記するように、硬質部用ゴム材料の加硫完了を軟質部用ゴム材料の加硫完了よりも早めるために、加硫剤及び加硫促進剤の添加量を調整する。
【0067】
なお、本発明にあっては、製造するゴム製成形止水材の要求性能に応じて、硬質部用ゴム材料に使用するゴム材料として軟質部用ゴム材料に使用するゴム材料と種類の異なるゴム材料を使用することを包含する。
【0068】
<二色押出成形工程>
次いで、二色押出成形工程S3においては、
図10乃至
図12に示すように、押出成形装置21により、軟質部用ゴム材料混練工程S1にて生成した軟質部用ゴム材料2′と、硬質部用ゴム材料混練工程S2にて生成した硬質部用ゴム材料3′とを同時に押出成形して押出成形物1′を得る。
【0069】
上記押出成形装置21は、
図10乃至
図12に示すように、軟質部用ゴム材料2′と硬質部用ゴム材料3′を同時に押出成形するヘッド部22を備え、該ヘッド部22は出口22a及び第一入口22bを有する外筒部材22Aと該外筒部材22Aの中途部から同外筒部材22Aの軸直交方向に延び第二入口22cを有する連結筒部材22Bとを備え、上記外筒部材22Aの第一入口22bを後記内筒部材25の入口25cを介して軟質部用ゴム材料2′を移送する第一パイプ23の出口23aに接続すると共に、上記連結筒部材22Bが有する第二入口22cを硬質部用ゴム材料3′を移送する第二パイプ24の出口24aと接続する構造となっている。
【0070】
加えて、上記ヘッド部22は外筒部材22A内に入れ子状に配する内筒部材25と該内筒部材25の出口25aに筒状嵌合部材32を介して取り付けられるダイス部材26を備え、上記内筒部材25は外周面に上記連結筒部材22B側から流入する硬質部用ゴム材料3′を上記ダイス部材26側へ案内する第一案内溝25bを有する構造となっている。
【0071】
また、上記ダイス部材26は円板状の第一ダイス部材26Aと該第一ダイス部材26Aの裏面と嵌合する円板状の第二ダイス部材26Bとから成り、上記第一ダイス部材26Aに第一押出口29を穿設し、上記第二ダイス部材26Bの表面に上記第一案内溝25bと連通する第二案内溝27を刻設すると共に第二押出口30を内部に有する環状凸壁28を立設する構造となっている。したがって上記ダイス部材26は第一押出口29と該第一押出口29内部で開口する第二押出口30の二重の押出口を有している。
【0072】
而して上記構造のヘッド部22内に第一パイプ23を通じて軟質部用ゴム材料2′が流入され、第二パイプ24を通じて硬質部用ゴム材料3′が流入されると、
図12に示すように、軟質部用ゴム材料2′が内筒部材25の内部に流入し該内筒部材25の出口25aを通じてダイス部材26の第二押出口30から押し出され、同時に硬質部用ゴム材料3′が内筒部材25の第一案内溝25b及び第二ダイス部材26Bの第二案内溝27を通じてダイス部材26の第一押出口29から押し出され、軟質部用ゴム材料2′の外周部を硬質部用ゴム材料3′が覆った状態の押出成形物1′が当該ヘッド部22の出口22aを通じて連続的に搬出される。
【0073】
<加硫及び発泡工程>
次いで、既述した二色押出成形工程S3により得た押出成形物1′は加硫及び発泡工程S4にて連続的に処理される。
【0074】
本工程においては、
図10に示すように、上記押出成形装置21から搬出された押出成形物1′が既知のベルトコンベアにより移送されながら該押出成形装置21に続く加熱装置31を通過することにより行う。該加熱装置31は内部で押出成形物1′を熱風にて加熱する。
【0075】
上記加熱装置31による加熱を開始すると、
図9に示すように、軟質部用ゴム材料2′内及び硬質部用ゴム材料3′内の加硫剤及び加硫促進剤が架橋反応を生起し加硫開始される(S41)。
【0076】
次いで、軟質部用ゴム材料2′内の発泡剤が
発泡を開始し(S42)、
図13に示すように、発泡で生じた発泡ガスにより徐々に気孔4を形成しながら、押出成形物1′を軸直交方向に変形、すなわち押出成形物1′の高さをH1からH2へと徐々に高くなるように変形させていく。なお、上記発泡ガスは気孔4内に残存する。
【0077】
そして、既述した混練工程S1・S2にて軟質部用ゴム材料2′及び硬質部用ゴム材料3′にそれぞれ添加する加硫剤及び加硫促進剤の添加量を調整したことにより、硬質部用ゴム材料3′の加硫完了(S43)後に軟質部用ゴム材料2′の加硫が完了する(S44)。また、軟質部用ゴム材料2′内の発泡剤の
発泡は当該軟質部用ゴム材料2′の加硫が完了すると同時に不可能となり当然に完了する(S44)。
【0078】
このように硬質部用ゴム材料3′の加硫完了(S43)を軟質部用ゴム材料2′の加硫完了(S44)より早めることにより、軟質部用ゴム材料2′内の発泡剤の
発泡にて生じた気孔4による押出成形物1′の軸方向への変形を抑止して該押出成形物1′が蛇行した状態で硬化することを防止しつつ、軟質部用ゴム材料2′と硬質部用ゴム材料3′とを適切に一体化し、
図2・
図13(C)に示すように、軟質部2の気孔4を隔てる隔壁5の外周部5aと硬質部3の内周部3bとを一体化した成形止水材1を製造することができる。
【0079】
なお、
図13にて示した、軟質部用ゴム材料2′内の発泡剤の
発泡にて生じた気孔4による押出成形物1′の軸直交方向の変形は同押出成形物1′の軸方向の変形よりも早期に行われ、既述した硬質部用ゴム材料3′の早期加硫完了に影響を受けない。
【0080】
以上述べたように、本発明に係るゴム製成形止水材1によれば、遊間内で適切に押し潰された状態で介在しつつ、該遊間を構成する一対の対向面に対して自身の外周面1aを弾性反発力により押し付けて自身の周囲に間隙が生じるのを防止し、侵入水を有効に遮断することができる。
【0081】
また、コア層たる上記軟質部2の隔壁5及び該隔壁5の外周部5aを覆う表層たる上記硬質部3の双方を加硫ゴムで構成することにより高弾性且つ高強度とし、弾性反発力の発揮を確実ならしめる。
【0082】
さらに、上記軟質部2の隔壁5の外周部5aと該隔壁5の外周部5aを覆う上記硬質部3の内周部3bが一体化していることにより、上記硬質部3を上記軟質部2の隔壁5が内側からバックアップし、弾性反発力を効果的に発揮せしめる。
【0083】
また、本発明に係るゴム製成形止水材の製造方法によれば、簡易な方法で上記本発明に係るゴム製成形止水材1を有効に製造することができる。