(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るラッチ装置では、ラッチ片が水平方向に動作してラッチ孔に対してラッチ爪が係脱される。従って、操作片とラッチ片はラッチ軸周りに90度ずれた形態となるため、ラッチ本体は大型な部材となってしまう。
【0006】
そして、ラッチ軸を支持するラッチ軸抱持部を備えるラッチ取付具は、ラッチ本体の操作片及びこの操作片と当接する前化粧板の当接部分を覆うことはできるが、ラッチ爪とラッチ孔との係止部を覆うことは難しい。ラッチ爪とラッチ孔との係止部を覆うようにカバー部材を形成すると、水平方向に張り出した形態となってしまい、ラッチ装置や引き出しが大型化してしまう。
【0007】
また、ラッチ爪とラッチ孔との係止部が覆われていない場合には、この係止部にゴミや机の中のものがラッチ孔に入り込んでしまうと、このラッチ装置は正常に動作しない場合がある。また、引き出しを引いた場合にラッチ爪の周辺部分が外に現れているため、見栄えが良いものとは言い難いものであった。
【0008】
本発明の目的は、小型化を実現し、ゴミ等の侵入による動作不良を低減させて、見栄えの良いラッチ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るラッチ装置は、それぞれ板状に形成される底面部と、左側面部と、右側面部と、前面部と、後面部と、を有するトレー本体と、前記左側面部及び前記右側面部のそれぞれに対向する机等の家具側に、平坦面が外方向に向くようにして固定され、被係止部が下端部に形成される固定プレートと、前記左側面部及び前記右側面部の外側にそれぞれ設けられ、下方が前後方向に搖動されるよう回動自在に支持されて、各前記被係止部と係脱される係止部が形成されるラッチ本体と、各前記被係止部に各前記係止部が係止される状態となるよう各前記ラッチ本体を付勢する付勢部材と、前記トレー本体の前記前面部前方に設けられ、下端が前後方向に搖動されるよう回動自在に支持されて、左右長尺状に形成されて両端部で各前記ラッチ本体と係合して各前記ラッチ本体を搖動動作させる操作部材と、前記ラッチ本体と前記操作部材とを回動可能に軸支する支持軸が形成されるとともに、各前記ラッチ本体を外側からカバーするカバー部材と、を有する。
【0010】
また、前記被係止部は、前記固定プレートの前記下端部から下方に突出し、前側縁の下方を上方よりも後方側に位置させるように傾斜して形成され、前記ラッチ本体は、前記支持軸により軸支される軸孔を備えて前記被係止部に向けて傾斜して形成される傾斜部と、前記傾斜部から水平後方に延設されて前記被係止部が遊嵌される孔部が備えられる水平部と、からなる。
【0011】
また、前記操作部材は、縦断面視において前側板部と後側板部がそれぞれの上端部で円弧状部を介して接続されてなり、前記前側板部の下端部は、縦断面視において前方に向けて水平に折り曲げられて、端縁を下方に向けて縦断面視円形状に折り曲げて形成され、前記後側板部の下端部は、前方側に向けて縦断面視円形状に折り曲げて形成され、前記後側板部は、その両端部において各前記ラッチ本体と係合される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るラッチ装置は、机等の家具側に固定される固定プレート下端部の被係止部と、操作部材により前後方向に揺動されるラッチ本体の係止部とが係止される。従って、水平方向に揺動されるラッチ本体と比べて、ラッチ本体を小型化させることができるので、ラッチ装置全体、ひいては机等の家具全体も小型に形成することができる。
【0013】
また、前後方向に揺動するラッチ本体に係止部を設け、固定プレートに被係止部を設けて、ラッチ本体を外側からカバーするカバー部材を設けた。これにより、係止部と被係止部が係止される係止部分を容易に覆い隠すことができるので、ゴミ等の侵入を防ぎ、動作不良を低減させることができるとともに、見栄えを良くすることができる。
【0014】
また、被係止部は固定プレート下端部から下方に突出して前側縁が傾斜される。そして、係止部とされる孔はラッチ本体の水平部に形成した。従って、引き出しを引き出す際には、操作部材によりラッチ本体の水平部を前下方に移動させて係止を解除し、引き出しをしまう際には水平部先端が被係止部の傾斜する前側縁に当接し、この前側縁に倣って下方に移動して係止部と被係止部が係止されるので、自動的に係止部と被係止部を係止させることができる。
【0015】
また、操作部材は、前側板部と後側板部がそれぞれ上端部で円弧状部を介して接続して形成される。そして、前側板部と後側板部それぞれの下端部は、縦断面視円弧形状に折り曲げられている。従って、操作部材の操作は、前側板部と後側板部との間に指を入れて操作することができるとともに、前側板部及び後側板部における他端部の縦断面視円形状により感触良く操作部材を操作することができる。さらに、後側板部の両端でラッチ本体と係合されるので、構造簡単に操作部材からラッチ本体に揺動運動を伝達する機構を形成することができるとともに、左右のラッチ本体の揺動動作に位相ずれが発生することがない。従って、確実にラッチ装置を動作させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に基づいて本発明の実施形態を説明する。本発明に係るラッチ装置30A,30Bは、
図1(a),(b)に示す事務用机1等に取り付けて、地震等の際に意図せず引き出し100,200が引き出されてしまうことを防ぐものである。なお、以下の説明においては、事務用机1の人が座る側を前、その反対側を後とし、人が座った場合の左手側を左、右手側を右として説明する。
【0018】
左側のラッチ装置30Aは引き出し100の左側に設けられ、右側のラッチ装置30Bは引き出し100の右側に設けられる。引き出し100よりも横幅の狭い引き出し200にも同様に、ラッチ装置30A,30Bが左右にそれぞれ設けられている。
【0019】
図2は引き出し100及びトレーレール2を前方左上上方から見た斜視図である。トレーレール2は、
図1の事務用机1に固定されて引き出し100を案内する。トレーレール2は、左右2箇所に設けられ、それぞれ水平板2aと、外側の垂直板2bからなる。各垂直板2bの下端からは、後述の後ローラ16を案内する後ローラレール2b1が凹溝状に形成されている。そして、左右それぞれの垂直板2bの前端には、後述の固定プレート40とともに、回転軸を左右方向に向けて配置される前ローラ3が設けられている。
【0020】
引き出し100のトレー本体18は、底面部11と、後面部12と、左側面部13と、右側面部14と、前面部15とにより構成される。本実施形態においては、底面部11と後面部12,前面部15は、一枚の板金材料からプレス成形により一体的に形成されている。前面部15は、底面部11の前端から上方に立ち上がる断面円弧状の膨出部15aと、膨出部15aの前端から前方側に延びる平坦部15bと、平坦部15bから前上方に向けて傾斜される傾斜部15c(
図3参照)からなる。この前面部15に膨出部15aと平坦部15bが形成されることにより、引き出し100の使用の際、平坦部15bに筆記具等を載置してもトレー本体18の奥に移動してしまうことがない。
【0021】
後面部12は、垂直に立ち上げられた垂直板12aの上端を前方に折り曲げられる水平板12bが形成されている。これにより、トレー本体18に収納した物がトレー本体18の後側から落ちてしまうことが低減される。
【0022】
左側面部13及び右側面部14は、
図2の引き出し100においては右側後方に一部が見えるように、それぞれ前後に長い水平板13a,14aを備える。水平板13a,14aは、後端が後面部12よりも後方側に位置され、前端は、図示されないが、底面部11の前端近傍まで延在する。水平板13a,14aは、底面部11の下面にスポット溶接やカシメ加工されることにより接合される。
【0023】
さらに、左側面部13及び右側面部14は、水平板13a,14aの外側端から立ち上がり、後端を水平板13a,14aと同じくして前端は前面部15まで延在される垂直板13b,14bを備える。このようにして、左側面部13及び右側面部14は、水平板13a,14aと垂直板13b,14bから形成されている。垂直板13b,14bの後端外側には、それぞれ後ローラ16が回転軸を左右方向に向けて設けられている。
【0024】
左側面部13及び右側面部14は、それぞれ垂直板13b,14bの上端を外側方向へ折り曲げて、開口を下方に向けた凹溝状の前ローラレール13b1,14b1が形成されている。この前ローラレール13b1,14b1は、前ローラ3により支持されるとともに前ローラ3上を移動する。
【0025】
図3及び
図4に示すように、トレー本体18の前面部15における傾斜部15cの上端は、下側に開口される縦断面コ字状にされる折り曲げ部15c1が形成されている。一方、前面部15の前側に取り付けられるトレー前板20は、多数の横溝が施された化粧板面20aの上端に、折り曲げ部15c1の外形に倣う形状とされる取着部20bが形成される。トレー前板20は、取着部20bが折り曲げ部15c1に取着して、トレー本体18の前面部15に取り付けられる。
【0026】
そして、トレー前板20の取着部20bの下方には、後述のラッチレバー21の円弧状部21bの外形に倣う縦断面視半円弧状のラッチレバーガイド部20cが形成されている。このラッチレバーガイド部20cにより、ラッチレバー21の搖動運動が案内されている。さらに、ラッチレバーガイド部20cの基部下側には、縦断面視において一部が切り欠かれた円形状の取着孔部20dが形成されている。
【0027】
トレー本体18の前面部15の前方には、操作部材とされるラッチレバー21が設けられる。ラッチレバー21は、左右に長い長尺状に形成されている。そして、
図3のP部拡大図に示すように、ラッチレバー21は、縦断面視において前側板部21aと後側板部21cがそれぞれの上端部で円弧状部21bを介して接続されてなる。
【0028】
前側板部21aの下端部は、前方側に向けて縦断面視において水平に折り曲げられ、その前端は端縁を下方に向けて縦断面視円形状に折り曲げられる前縁部21a1が形成されている。同様に、後側板部21cの下端部も、前方側に向けて縦断面視円形状に折り曲げられる後縁部21c1が形成されている。さらに、後側板部21cは、その両端に張り出し形成される張出係合部21c2が形成されている。
【0029】
トレー本体18の左側面部13及び右側面部14の外側には、それぞれラッチ本体31が設けられている。各ラッチ本体31は、後下方に向けて傾斜して延設される傾斜部31aと、この傾斜部31aの下端から後方に向けて水平に延設される水平部31bにより形成されている。傾斜部31aには軸孔31a1が設けられている。水平部31bには、上面視長方形の孔部31b1が開けられている。さらに、孔部31b1の前方内側縁であって水平部31bの前後方向における略中間位置に、上方側に向けて板状に立設する揺動ガイド部31b2が形成されている。
【0030】
また、この左右のラッチ本体31の外側には、それぞれカバー部材33が設けられている。各カバー部材33は、外表面を構成する外面板33fが設けられている。外面板33fは、外側の面となる側面板と、上面板と、上面板前縁と接続されて前面に位置して多数の横溝が施された化粧面板と、化粧面板の下縁と接続される段部下面板と、段部下面板と接続される傾斜板と、傾斜板と接続される下面板と、により構成される。
【0031】
そして、各カバー部材33は、外面板33fの側面板に対して内側(換言すれば、ラッチ本体31側)方向に対向して間隔S(
図3における右側のカバー部材33参照)を有して設けられる基部板33d1を備える。各カバー部材33は、それぞれ左右の各ラッチ本体31における軸孔31a1を含む傾斜部31a,孔部31b1を含めた水平部31bをカバーするように形成されている。
【0032】
そして、各カバー部材33には、外面板33fの側面板の内面から内側に向けて支持軸33aが立設される。この支持軸33aは、軸孔31a1及びラッチレバー21の円弧状部21bの内側に挿通され、ラッチ本体31及びラッチレバー21の両者をともに回動自在に軸支する。
【0033】
そして、各カバー部材33と各ラッチ本体31との間には、各ラッチ本体31を後方向に付勢する付勢部材である、ねじりコイルばね32が設けられている。ねじりコイルばね32の腕部32a,32bのうち、一方の腕部32aは、各カバー部材33の内面に設けられるばね保持部33bにより保持される。ばね保持部33bは、カバー部材33の内面から立設する2枚の平板により形成され、この2枚の平板間に腕部32aが保持される。また、ねじりコイルばね32の他方の腕部32bは、ラッチ本体31の傾斜部31aの前面に当接する(
図4参照)。
【0034】
なお、各カバー部材33の側面板の内面に立設する突起33cは、トレー前板20の取着孔部20dと嵌合する。同様に、各カバー部材33の外面板33fの側面板の内面に立設する突起33dは左側面部13及び右側面部14の前端部近傍に開けられる孔13c,14cと嵌合する。そして、各カバー部材33の外面板33fの側面板の内面に設けられるねじ孔33eに、左側面部13及び右側面部14における前端部上方の孔を介してねじ部材13d,14dが螺合される。
【0035】
そして、ラッチ本体31の水平部31bは、各カバー部材33の突起33dの基部板33d1と、外面板33fとの間に形成される間隔Sに位置するように各カバー部材33は取り付けられる(
図4参照)。このようにして、各カバー部材33は、各ラッチ本体31の外側からトレー本体18に対して相対的に固定される。従って、ラッチ本体31の揺動ガイド部31b2は、カバー部材33の基部板33d1よりも外側に位置している(
図4参照)。すなわち、揺動ガイド部31b2は、基部板33d1と近接又は摺接し、ラッチ本体31の支持軸33a周りの揺動運動をガイドする。
【0036】
左側面部13及び右側面部14それぞれに対向する事務用机1側に設けられる各トレーレール2の垂直板2bの前端に、平坦面40aが外方向に向くように固定プレート40が固定されている。固定プレート40の下端部は内側に向けて水平に折り曲げられ、その端部には下方に突出する突起部40bが形成されている(
図5、
図6参照)。突起部40bは、突起部40bの前側縁の下方が上方よりも後方側に位置するように傾斜している。突起部40bの下縁は、前側縁と接続されて水平な下側縁とされ、この下側縁の後端は、上方に垂直に延びる後側縁と接続されている。突起部40bは、ラッチ本体31の孔部31b1に遊嵌される。ここで、突起部40bはラッチ装置30A,30Bにおける被係止部とされ、孔部31b1は係止部とされ、両者は係脱自在に形成される。
【0037】
このように形成されるラッチ装置30A,30Bは、引き出し100が事務用机1にしまわれている状態においては、左側のカバー部材33を省略してねじりコイルばね32は腕部32a,32bのみ示した側面図である
図5に示すように、突起部40bが孔部31b1に遊嵌され、ラッチ装置30A,30Bは係合状態とされる。このとき、ラッチ本体31は、付勢部材である、ねじりコイルばね32により後方向(換言すれば、
図5において時計回り)に付勢される。ラッチ本体31は、突起部40bの傾斜する前側縁と孔部31b1の前縁が当接して、回動が規制される。そして、ラッチレバー21両端の張出係合部21c2は、各ラッチ本体31の傾斜部31aの上側に当接する。このようにして、ラッチレバー21は、その両端部において各ラッチ本体31と係合している。
【0038】
従って、
図5に示すラッチ装置30A,30Bの係合状態において、地震等の振動が事務用机1に生じたとしても、ラッチ装置30A,30Bが係合状態とされているので、意図せず引き出し100が引き出されてしまうことがない。
【0039】
次に、この引き出し100を引き出す場合には、
図5と同様に左側のカバー部材33とねじりコイルばね32の本体部分が省略された
図6に示すように、ラッチレバー21の前側板部21aの後側に指を挿入してラッチレバー21を手前に引いて、ラッチレバー21を前上方に向けて(換言すれば、
図6において反時計回りに)支持軸33a周りに回動させる。すると、ラッチレバー21の両端の張出係合部21c2を介して、ねじりコイルばね32の付勢力に抗してラッチ本体31が前下方に向けて支持軸33a周りに回動する。このとき、左右のラッチ本体31は、左右長尺状のラッチレバー21により、位相ずれなく回動される。
【0040】
ラッチ本体31が回動されると、被係合部とされる突起部40bが係合部とされる孔部31b1から脱して、係合状態が解除される。なお、ラッチ本体31の前下方に向けた回動は、水平部31bの先端部の下面が、水平部31bの下面と対向して設けられるカバー部材33の下面板の内面と当接するまで回動される。
【0041】
このようにして、ラッチ装置30A,30Bの係合状態が解除されると、引き出し100を事務用机1から引き出すことができる。このとき、左側面部13及び右側面部14の前ローラレール13b1,14b1は、各前ローラ3上を移動する。各後ローラ16は、各後ローラレール2b1上を転動して、トレー本体18とともに前進する。
【0042】
そして、引き出し100を閉じる場合には、引き出し100をそのまま押し込めば、ラッチ本体31の水平部31bの先端部が、突起部40bの傾斜する前側縁に当接するので、ラッチ本体31の水平部31bは突起部40bの前側縁の傾斜に倣って下方に移動する。そして、さらに引き出し100を押し込めば、突起部40bが孔部31b1に遊嵌され、
図5に示す係合状態となる。
【0043】
以上説明した本実施形態に係るラッチ装置30A,30Bは、左右それぞれのラッチ本体31,カバー部材33及び固定プレート40が互いに対称な部品となる。また、幅の狭い引き出し200(
図1参照)についても、トレー前板20及びラッチレバー21の左右方向の長さを変更するだけでラッチ装置30A,30Bを取り付けることができる。
【0044】
さらに、トレー本体18の深さがさらに深い引き出しである場合であっても、本発明に係るラッチ装置30A,30Bを取り付けることができる。従って、異なる幅や深さの引き出しが取り付けられる事務用机等の家具であっても、ラッチ装置を構成する部品を共通化することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は本実施形態に限られず、種々変更して実施することができる。例えば、被係止部とされる固定プレート40の突起部40bを変更して、固定プレート40から内側に折り曲げられた水平部に孔を設けて被係止部を形成する。一方、係止部とされるラッチ本体31の水平部31bの孔部31b1は、爪状の突起として係止部を形成する。このように、本実施形態における被係止部と係止部について、孔と突起の関係を逆にした構成としてもよい。また、本実施形態におけるねじりコイルばね32は、他の付勢部材として、コイルばね等の他の形態のばねやゴム等の弾性体を用いることもできる。