特許第6407024号(P6407024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407024
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】誘導電力伝達用磁界成形
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20181004BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20181004BHJP
【FI】
   H01F38/14
   H02J50/10
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-529639(P2014-529639)
(86)(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公表番号】特表2014-532296(P2014-532296A)
(43)【公表日】2014年12月4日
(86)【国際出願番号】NZ2012000160
(87)【国際公開番号】WO2013036146
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2015年8月28日
(31)【優先権主張番号】595056
(32)【優先日】2011年9月7日
(33)【優先権主張国】NZ
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504448092
【氏名又は名称】オークランド ユニサービシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AUCKLAND UNISERVICES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ジョン タルボット ボーイズ
(72)【発明者】
【氏名】グラント アンソニー コビック
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06407470(US,B1)
【文献】 特表2010−530613(JP,A)
【文献】 特表2007−505480(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/098547(WO,A1)
【文献】 特表2012−519104(JP,A)
【文献】 特開2011−010435(JP,A)
【文献】 特開2010−119187(JP,A)
【文献】 特開2009−106136(JP,A)
【文献】 特開2011−072188(JP,A)
【文献】 特開平08−163792(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/074091(WO,A1)
【文献】 特開2010−098807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透磁性コア手段と、
前記コア手段に磁気結合されて前記コア手段の第1の側に配置される少なくとも2つのコイルと、
結合のために磁束を成形する磁束成形構造であって、前記コア手段の外周の少なくとも一部を越えて延在する外側部分を含み、前記コア手段の前記第1の側の反対の一方の側に配置され、前記外側部分に対して90度を超える角度で前記外側部分から延在するリップを有する磁束成形構造と、を備え、
前記少なくとも2つのコイルは略同一の平面上にある、
他の装置と結合して誘導的に電力伝送するために磁束を生成または受信するIPTシステム磁束装置。
【請求項2】
前記磁束成形構造がシート材を備える、請求項1に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項3】
前記外側部分は前記装置から前記コア手段の略面内に延在する、請求項1または請求項2に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項4】
コア外周と前記リップとの間に間隙がある、請求項3に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項5】
前記間隙が非磁性材料で充填される、あるいは部分的に充填される、請求項に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項6】
前記角度が前記外側部分に対して略90度〜150度である、請求項に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項7】
フランジが前記リップから延在する、請求項ないし請求項のいずれか一項に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項8】
前記フランジは、前記外側部分が存在する平面にほぼ平行な面にある、請求項に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項9】
前記フランジは、前記コア手段の前記第1の側に略隣接して前記リップから延在する、請求項または請求項に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項10】
前記外側部分は、前記コア手段の長手方向端部から延在する、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項11】
前記外側部分が前記コア手段にほぼ外接する、請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項12】
前記磁束成形構造が、前記コイルの少なくとも1つの導体を遮蔽するためのケージをさらに備える、請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項13】
前記フランジは、前記ケージのウォールを含む、請求項12に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項14】
前記磁束成形構造が層として設けられる、請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項15】
前記コア手段が透磁性材料を含む、請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載のIPTシステム磁束装置。
【請求項16】
パッドを備える、請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載のIPTシステム磁束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導電力伝達(IPT)システムにおいて使用される磁束生成または受信装置によって生成または受信される磁界を成形または誘導する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IPTシステムは十分に既知である。国際特許出願WO2010/090539号に記載されるように、電気自動車の充電などの一部のIPT用途において、磁束の送信構造と受信構造との間の大きな空隙で動作可能である疎結合システムを提供する必要がある。
【0003】
電気自動車における静止充電と道路上での動力供給との両方の用途が大規模に導入される見込みから、最小限の材料の使用で効率的に動作する磁束送受信構造への需要が高い。
【0004】
効率性とは別に、疎結合システムのもう1つの課題は、健康上のリスクになり得る浮遊磁界の除去または制御であり、大部分の国で浮遊磁界は特定の上限内に制御されるように法律で定められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、改善された誘導電力伝達装置または方法、または改善されたIPT電力伝達パッドを提供すること、あるいは少なくとも有効な代替策を公共または業界に提供することである。
【0006】
したがって、本発明の1つの側面は、透磁性コア手段と、コア手段に磁気結合される少なくとも1つのコイルと、磁束を跳ね返すシールド手段であって、コア手段の外周の少なくとも一部を越えて延在する外側部分を含むようにコア手段の反対側に配置されるシールド手段と、を備える磁束を生成または受信するIPTシステム磁束装置を提供する。
【0007】
シールド手段はシート材を備える。
【0008】
好ましくは、該装置はパッドを備える。
【0009】
好ましくは、外側部分は周縁を有し、コア外周と周縁との間に間隙がある。一実施形態では、間隙を非磁性材料によって充填する、あるいは部分的に充填することができる。
【0010】
一実施形態では、外側部分はコアのほぼ面内でパッドから延在し、周縁は外側部分に対してある角度で設けられる。一実施形態では、その角度は、周縁がリップを備えるように略90度である。他の実施形態では、周縁は外側部分に対して90度超の角度、たとえば略90度〜150度の角度で配置される。
【0011】
一実施形態では、外側部分はコアにほぼ外接する。
【0012】
好ましくは、外側部分はリップのフランジ周を備える。一実施形態では、前記フランジは第1の部分に略平行な面にある。
【0013】
好ましくは、コイルは略平面状コイルである。
【0014】
好ましくは、コイルはシールドに対向するコアの側に設けられる。
【0015】
別の実施形態では、シールドはケージをさらに備える。ケージは1つまたはそれ以上の巻き線を収容するように構成される。一実施形態では、ケージはボックス部を備える。
【0016】
好ましくは、シート材はプレートを備える。
【0017】
もしくは、シート材はメッシュ材を備える。
【0018】
もしくは、シート材はプレートの1つまたはそれ以上の部分およびメッシュの1つまたはそれ以上の部分を備える。
【0019】
好ましくは、シート材は、コア外周を越えて延在するフランジを含む。
【0020】
好ましくは、コアは長軸とコアの長手方向端部を越えて延在するシールドの外側部分とを有する。
【0021】
好ましくは、シート材はアルミニウムで構成される。
【0022】
本発明の別の側面によると、透磁性コア手段と、コアと磁気結合される少なくとも1つのコイルと、コイルの1つまたはそれ以上の巻き線を収容するように構成されるケージ手段と、を備える磁束を生成または受信するIPTシステム磁束パッドが提供される。
【0023】
好ましくは、ケージは、コアの第1の側のコイルの1つまたはそれ以上の巻きがケージを通過するように、コアの第1の側に設けられる。
【0024】
もしくは、ケージはコアの一端に設けられ、追加のケージ手段がコアの他端に設けられ、追加コイルが設けられることによって、コイルの1つまたはそれ以上の巻きがケージ手段を通過し、追加コイルの1つまたはそれ以上の巻きが追加ケージ手段を通過する。
【0025】
本発明の他の側面は以下の説明から自明になるであろう。
【0026】
本発明の1つまたはそれ以上の実施形態を、添付図面を参照して以下説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】円形誘導電力伝達パッドの平面図。
図2図2aは、コイル径とパッド径との比を変動させた場合の、同一インダクタンスを有する2つの同一連結パッドのPsuの変動を示すグラフ。図2bは、コイル径とパッド径との比を変動させた場合の、同一インダクタンスを有する2つの同一連結パッドの相互インダクタンスの変動を示すグラフ。
図3】外側部分(δAl)、すなわち、コア外周とバッキングプレートまたはシールドによって画定されるパッド外径との間の距離に伴うPsuの変動を示すグラフ。
図4図1のパッドの距離関数であるBを示す図。
図5】ダブルDパッドの斜視図。
図6】パッド構造の一実施形態を示す正面断面図。
図7図6のパッドの斜視図。
図8】パッド構造の別の実施形態を示す正面断面図。
図9図8の構造の斜視図。
図10図8および10に示すパッドの正面断面図であるが、シールド構造に関するサイズを特定する図。
図11】別のパッド構造の斜視図。
図12図11のパッド構造およびパッドが励起されたときの磁界を示す部分断面図。
図13】ダブルDパッドのパッド構造を示す。
図14】コア外周を越えて延在しないバッキングプレートまたはシールドを有する構造と比較した、図13Bおよび13Cのパッド構造に関する距離に伴うBの変動を示す図。
図15】コア外周を越えて延在しないバッキングプレートまたはシールドを有する構造と比較した、図13Bおよび13Cのパッド構造に関する距離に伴うBの変動を示す図。
図16A】様々な異なるパッド実施形態の正面断面図と、各実施形態によって生成される磁界の表示を示す図。
図16B】様々な異なるパッド実施形態の正面断面図と、各実施形態によって生成される磁界の表示を示す図。
図16C】様々な異なるパッド実施形態の正面断面図と、各実施形態によって生成される磁界の表示を示す図。
図16D】様々な異なるパッド実施形態の正面断面図と、各実施形態によって生成される磁界の表示を示す図。
図16E】様々な異なるパッド実施形態の正面断面図と、各実施形態によって生成される磁界の表示を示す図。
図16F】様々な異なるパッド実施形態の正面断面図と、各実施形態によって生成される磁界の表示を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上述したように、IPTシステムの一次回路と二次回路を結合するために磁束を生成または受信するのに使用される磁気構造または装置は、様々な形をとる場合がある。この構造は、三次元よりも二次元に通常は延在するため、パッドと称されることが多い。パッド構造が自動車の反対側、および/または道路、駐車スペース、車庫の床などに組み込むことができるように、普通、三次元は厚みを最小限に抑えることを目的とする。
【0029】
略円形の既知のパッド構造がWO2008/140333号に開示されている。図1は、円形パワーパッドのレイアウトを示す。図から分かるように、コア構造はフェライトなどの透磁性材料製の放射方向に向いたストリップ2を多数備えている。一例では、径(図1ではPd)が700ミリメートルのパッドが、入手し易いI93コア(放射状ストリップにつき3つ)を用いて作製されている。1つまたはそれ以上の略平面状コイル4がコア構造の上に配置される。コア構造の反対側(すなわち、下側)には、シート材、好ましくはアルミニウム製のバッキングプレート6を備えるシールドが設けられ、シールドは外側部分(δAl)の外周にリング8の形状の周縁(すなわち、上方に向いたフランジ)を有する。アルミニウムバッキング6とリング8は頑強性を高め、パッド周囲に存在し得る漏れ磁束を遮断する。図1のパッドと異なり、従来技術の円形パッドのリング8はコアの縁部、すなわち放射状フェライトストリップ2の外端にすぐ隣接して配置される。
【0030】
図1の符号は以下の通りである。
Fe フェライト幅
Fe フェライト長
δA1 延長Rad.
コイル径
パッド径
コイル幅
25巻コイル(Φ4mmのリッツ線)、10mm厚のリング
20kHzで23A
【0031】
バッキング構造6およびリング8は好ましくは、磁束を反発する材料で構成される。さらに、該材料は好ましくは良好な導体でロスが少ない。バッキング6はアルミニウムプレートまたはアルミニウムメッシュなどのプレート材またはメッシュ材を備えることができる。また、バッキング材は、コアを支持するプレートとコア外周の外に延在するメッシュ部など、材料の組み合わせを備えることができる。メッシュ材料の使用に関連する利点は、低コスト、(たとえば道路適用例における)周囲基板への統合し易さ、構造から周囲環境への熱伝達の良さである。
【0032】
我々はリング8をコア外周近傍に配置することで漏れ磁束が減少することを発見したが、結合には悪影響となるために理想的ではない。後述するように、リング8およびバッキングプレート6をコア外周を越えて延在させることによって、所与の漏れ磁界の場合の結合を最適化させることができる。
【0033】
我々のこれまでの研究が示すように、円形パッドの理想的なコイル径は、アルミニウムリングを含むパッド径の57%である。さらに調査を進めるため、700ミリメートル径のパッド上で、アルミニウムリング(R)のある場合とアルミニウムリング(NR)のない場合とで、垂直方向に125mmの間隔を空けてコイル径(C)を変化させながらシミュレーションを行った。
【0034】
その結果を、Psu(開回路電圧×短絡回路電流)および結合係数kを示す図2aおよび2bに示す。送信パッドも受信パッドもいずれも同一で、同一のインダクタンスを有するものとする。図示されるように、リングが取り外された場合、電力が大きく増大する。リングなしのパッドの場合、416mmのコア径(パッド径の約60%)が、伝達される電力と結合係数との間の良好な妥協点である。図2bに示すように、パッド自身のインダクタンスは、コイルがリングに非常に接近する際に急激に低下するが、リングが取り外されている場合は比較的緩やかに低下する。リングは、インダクタンスを低減させる電流からの対向磁束により、コイルからの磁束を有効に相殺する。
【0035】
コイルがリングのあるパッドのほぼ中心に配置されるとき(約0.55<C/P<約0.7)、磁束はフェライトの端部を出入りできるため、インダクタンスが増大する。リングのないパッドの場合、200mmのCで最大インダクタンスとなるが、コイルの外縁上の磁束はフェライトストリップを通過する面積が小さく、フェライトの分布はコイルに対して放射方向に対称ではないと思われる。このことは、パッドがその磁界にどのくらいのエネルギーを貯蔵できるかを決定するインダクタンスの観点から説明がつく。磁束線は、磁気抵抗の最も少ない経路を横断することによってエネルギー貯蔵を最小限にするように自ら並ぶ傾向がある。構造上、パッドの裏には磁束がなく、コイルはアルミニウムシールド層上のフェライト上にある。Cが理想値より小さいと仮定すると、コイル内側での磁束のための体積が少なくなるため(コイルを結合する磁束線の数は一定である)、磁束線はコイルの内側で相互に反発する。Cが最適化されると、コイルの内側の体積が増加して、磁界全体の「反発作用」が最小化されることによって、この特定配置での貯蔵エネルギー、ひいてはインダクタンスが最大となる。
【0036】
図2(b)の結果が示すように、リングが追加されると、磁束相殺効果のためにパッドのインダクタンスが低下する。電力伝達を犠牲にして磁束漏れを低減させるには、高電力システムが磁界漏れ基準を満たすことができるように確保する必要がある。よって、電力伝達に関するリングとバッキングプレートの効果を別々に判定するため、コア外周(δAl)を超えるシート材の外側部分をリングがある場合とない場合とで変動させたシミュレーションを行った。Psuおよびkのプロファイルを図3に示す。ここで、「R」の表示はバッキングプレートとリングの両方が存在する場合を意味し、「P」の表示は延長されたバッキングプレートのみが存在する場合を意味する。Mは送信パッドと受信パッドとの間の相互インダクタンスを表し、L2は受信パッドのインダクタンスを表す。リングをフェライトの端部に配置すると、パフォーマンスは大幅に低下し、リングが取り外されるとPsuは約27%増大する。しかしながら、リングのあるパッドもないパッドも、径が170mmに増大した点ではPsuが3.9kVAに達する。
【0037】
suプロファイルはδAlが100mmを超えるとわずかに異なり、リングがわずかな「磁束捕獲」効果を有することを示す。したがって、パフォーマンスはほとんど上昇せず、小さなパッドの方が好ましいため、最適化パッドにとっては40mmの外側部分δAlが推奨される。
【0038】
シミュレーション結果は実験結果と数パーセントの誤差範囲内で一致したことが分かったので、磁界漏れはシミュレーションによって調査済みである。ここで、送信パッドは20kHzで23Aの正弦波電流によって励起され、開回路受信パッドはその上方125mmに配置されている。磁束密度はパッド間の空隙中心から外方に延在する1mに沿って記録する。磁束密度はアルミニウムバッキングプレートでの遮蔽によって受信パッド(上側パッド)上と送信パッド下でかなり低い。その結果を、各種磁界漏れ曲線を示した図4に示す。最初の表示の「リングなし」はリングなしでδAl=0の出力を示す。これを、リングを適所に配置し、δAlの値を増大させた他の設計と比較する。電力の観点から理想的と指摘されたため「40mmプレート」(リングなしでδAl=40mm)も追加する。リングを取り外すことで、フェライト端部に非常に接近して配置することと略同様、磁束漏れが増大する。大きいバッキングプレートはわずかに漏れを減衰させるが、最大限に低減するにはリングが必要である。δAlの増加と共に磁界漏れは低減するが、ほどよくPsuを増大させる(図3に示す)。受信パッドでは、外側部分δAlの上限は、EVシャーシ上の利用可能な最大スペースと追加のアルミニウムの追加コストに応じて決定される。図2(a)の磁束ベクトルが示すように、リングは磁界を曲げて漏れを低減させることによってより高い磁気抵抗の経路を形成する。この「磁束捕獲」アプローチは結果的に電力伝達を低下させる。したがって、リングなしのプレートは漏れと結合との妥協点を提供する。磁束は端部を通って容易にフェライトストリップに入ることができる結果、電力が増大する。
【0039】
図2、3、4の測定値はパッド近傍の金属物に対するパッドの感度を示す。EVのシャーシは通常スチール製であり、受信パッドまたは送信パッドの線質係数Q(Qはコイルの磁気抵抗を動作周波数での抵抗で割った値)を大幅に低減させる可能性がある。漏れが大きいほど、周囲のEVシャーシで失われるエネルギーが大きくなる。このロスはBに比例するため、磁束密度をわずかに低減させることが非常に有効になり得る。図4に示すように、リングは磁束が通って逃げる面積を低減させるが、逃げる磁束は実際には反対のパッドの方に内側に曲がる傾向がある。したがって、この磁束漏れが周囲シャーシと平行になる可能性は低い。逆に、図2(b)に示すようにリングが取り外されると(バッキングプレートはまだ存在している)、この磁束経路の成形が低減され、磁束は妨害されずにシャーシに向かって移動し、漏れもロスもより大きくなる。
【0040】
よって、用途によっては、コア外周を越えて延在するフランジを備えたシールドプレートを設けるだけで有効であるかもしれない。さらに、フランジ構造がコアとリップとの間に凹部または間隙を提供するようにリップ(例えばリング)を設けることも有効であるかもしれない。
【0041】
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)は、経時変化する磁界に対する人体の被爆限界を定めるガイドラインを作成している。人体の平均限界は3kHz〜10MHzの範囲で27μTである(しかし、100kHz超ではRFの具体的なレベルを検討しなければならない)。スポットの上限はより大きくすることもできるが、その大きさは国毎の標準化団体によって定められなければならない。40mmのδAlでリングが配置された700mmの円形パッドは、パッド中心から500mmよりも離れた地点で27μT未満のスポット値を有する。したがって、人体の平均はずっと低くなる。この27μTのスポット値は、リングが取り外された場合(δAl=40mm)、約540mmの距離で達成され、リングが最初のパッドから取り外された場合(δAl=0mm)、約600mmで達成される。これらの距離は、一般的な自動車の幅では容易に許容し得るが、より大きな空隙に渡ってより高い電力レベルが必要とされる場合、リングのさらなる延長が必要となる場合がある。
【0042】
ダブルD配置
コアを形成するフェライトストリップ2の(周りではなく)上方に2つのコイルを配置することによって不所望の背後の磁束経路を排除する別のパッド配置を図5に示す。フェライトは主磁束をコイル(aおよびb)の背後に運び、磁束をコイルが配置される一方の側に確立させる。したがって、コアの下方に設けられるアルミニウム(図5に示さず)は浮遊磁界を遮蔽するだけでよく、ロスは無視できる程度である。パッドの上方で湾曲する理想的な磁束経路を図5に示す。基本長(h)はパッド長のほぼ2分の1に比例するため、これらの経路は同様に成形された受信パッドとの良好な結合を可能にする。2つの電力パッド間の高結合係数を達成する主要な特徴はパッド間の結合である。パッド間磁束の高さ(Φip)は、コイルaおよびbが相互に隣接する領域において両コイルの幅を調節することによって制御される。この領域は図5で陰を付けられており、コイルaとコイルbとの間の「磁束管」と称する。受信パッドに結合する磁束Φipの一部は相互磁束(Φ)であるため、磁束管を形成するコイルの部分は理想的にはできる限り長くすべきである。逆に、コイルの残りの長さは、銅を節約し、Racを低減するために理想的には最小限にすべきである。そうする結果、コイルは「D」状となり、2つの上記コイルは背中合わせに配置されるため、本文書でそのパッドはダブルD(DD)構造と称する。
【0043】
再度、バッキング構造は、パッドの前方の磁界形状を制御するため、および/またはパッドの側方または後方周囲に偶然発生する磁界を除去するために使用することができる。このようなバッキング構造または磁束成形構造がDDパッドおよび該パッドの変形に及ぼす影響を以下説明する。
【0044】
DDパッド構造の外周にアルミニウムバッキングプレートの単純な平面状外側部分を延長させる効果を、リング(延長フランジの一部として設けられる直立、傾斜、または垂直リップの形状)などの周縁を設けることと共に調査した。図13Aは、バッキングまたはシールドプレート16が50mmの延長フランジ16aを有するDDパッドの設計を示す。図13Bは、5mm厚のリング16bの追加を示す。シミュレート構造のサイズ(mm)を含む平面図を図13Cに示す。DDの送信パッド構造は6個のフェライトスラブの4列を有し、受信パッドは8個のフェライトスラブの4列を有する。送信パッドと受信パッドとの間の空隙はオフセットなしで125mmである。
【0045】
図14および15に示すように、図13Bおよび13Cのパッド構造と、バッキングプレートがリングを含まずコアを超えて延在しない構造(図14および15では「Orig」と表示)とを比較した。我々は、アルミニウムの延長で電力伝達が2.5%向上し、アルミニウムの延長とリングの追加で電力伝達が5%向上することを発見した。どちらの延長も遠距離磁界漏れを促進する。ただし、中心の磁界はさほど変化せず、予測したとおり電力は増大する。
【0046】
DDパッド構造の他の設計変更例を比較するため、2つの主要な量をJMAGシミュレーションで測定した。電力能力(Psu)を定量化するためにIscを測定し、パッド面のパッド中心から1mの地点の漏れ磁界(B_leakage)を取得した。
【0047】
しかしながら、設計が最適化されると、これらの変数は大きく変動する。2つの変数は変動するため、最適化プロセス全体の影響を完全に定量化することが難しい場合が多い。したがって、1回につきこれらの変数の一方のみが変動するように結果が変更される。これは、1mでの漏れ磁界が一定レベルで維持されるようにトラック電流を調整することによって実行される。たとえば、特定の設計パラメータが変更されると、IscおよびB_leakageが取得される。これに続き、漏れ磁界が基準レベルで維持されるようにトラック電流が適切に調整される。この基準レベルは、標準的なダブルDパッドによって生成される漏れ磁界に設定される。その結果、様々な設計案を既存のダブルDパッドと容易に比較することができる。トラック電流の調整の結果として、システムのPsuもそれに応じて調整されることに留意すべきである。次のセクションで、検討した各種設計を示す。
【0048】
ダブルD Coax(開始点)
帰路導体がバッキング/シールドプレート16内に形成されるケージ12を使用して遮蔽されるように、同軸巻き線10をコア2に巻き付けた。プレート16はコアの長さ方向端部でコア2の外周を越えて延在し、フランジまたは端部プレート14を形成する。この設計は、最大磁束経路高さおよび結合が達成できるように略円形磁束経路を有することを目的とする。この設計を図6および7に示す。
【0049】
ダブルD Coaxハイブリッド
引き続き、別の変形を提案し、図8および9に示す。この設計は同軸ケージを通過する同軸巻き線(図7および8のダブルD Coaxと同様)ならびにダブルD巻き線(図5を参照して言及したダブルD構造の巻き線aおよびbと類似)を含む。図8および9に示す設計は、ダブルD巻き線を使用して磁界をさらに成形することによって、結合を高め漏れ磁界を低減することを目的とする。
【0050】
この設計から、最適化プロセスを実行した。最適化プロセスでは、いくつかのパラメータを変動させ、その影響を定量化した。変動させたパラメータを図10に示す。その結果、同軸巻き線10が取り外され、選択された最適値を以下要約する。
【0051】
・ダブルD巻き線の数(最適N=20、すなわち、図5の本ダブルDの巻き線と類似)
・アルミニウム(すなわち、バッキング)長(最適basin 長=75mm、アルミニウム角度=45度、端プレート長=50mm)。
【0052】
最適化プロセスから生じる設計を図11に示す。よって、アルミニウムは、上向きリップを備える外側部分と、リップからの、またはリップから独立したフランジとを提供する。図示されているが、ケージは図11の構造では必要ない。
【0053】
結果
図12は、図11の設計から生じる磁束密度を示す。バッキング構造(アルミニウムシート材)はアルミニウム構造内の渦電流の誘導を通じて磁界を成形する上で重要な役割を果たす。
【0054】
上述のアプローチを使用して、設計案を本ダブルDパッドと比較した。その結果を以下に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
図11の設計では、図5のダブルD構造と同一のB_leakageの場合に空隙を渡って結合可能な電力量が大幅に増大していることが分かる。向上の大部分は図5の6個から図11の8個へとフェライトの数が増大していることが原因であるため、この結果は少々誤解を招くものだが、フランジがあと10〜15%を追加している。
【0057】
次に、図16A〜16Fを参照して、一般的なダブルD構造の場合の別のコイルおよびアルミニウムシールド配置を検討する。これらの図では、2つのコイルはそれぞれ平坦螺旋状に巻き回されているが、ここでは二次元断面として示す。各コイルは20巻きを有するため、中央磁束管には40のワイヤがある。磁束管、すなわち、極間のワイヤはすべて中心から6.6mm離して配置され、コイルの端部巻き線21、22(すなわち、コアの長さ方向端部の巻き線)は中心から4mm離れて(実質上接触)相互に間隔をおいて配置された20巻きである。アルミニウムシールドがなく、コア2の端部を越えて配置される端部巻き線を有するこの構造は、図16Aの磁束パターン(パッド構造を通る断面を中心とした曲線18)を生成する。この磁束パターンは非常に高いが、コイル端部から磁束が漏出する。ここで、高さと漏出はいずれも、端部巻き線下にフェライトを置かないことによって増幅される。実質上、この漏出磁束は本文書で上述した理由により望ましくなく、低減することが非常に困難である。
【0058】
図16Bでは、フェライト23が端部巻き線21、22の上に配置されている。シート材で形成されるアルミニウムセパレータ16が磁気短絡状況を防ぐために追加される。アルミニウムはコア2の背後に配置され、フランジがコアの長さ方向端部でコア外周を越えて延在する。図16Bに示すように、磁束経路はフェライト上方でほぼ理想的であるが、パッドの底部の下方にいくらか重大な望ましくない端部磁束がある。パッド内に8つのフェライトコアがあるとき、アルミニウム16は第3および第4のコア間、そして第6および第7のコア間を移行し、第1および第8のコアの端部を覆う。このように、図16Bの磁束パターンはこれらの端部磁束を別とすれば図16Aのものとほぼ同じである。
【0059】
図16Cでは、フェライト23が取り外され、空気に囲まれる端部巻き線21、22の下方に配置される。結果として生じる磁束パターンが示すとおり、隣接フェライトコアを追加することで不所望の端部磁束を非常に容易に吸収することができる。
【0060】
図16Dでは、フランジ部分が各端に同軸ケージを設けるようにアルミニウムプレート16が変更されている。フェライト23は端部巻き線21、22の上下に分割され、フェライトおよび端部巻き線はケージ領域内に設けられる。ここで、端部巻き線と関連付けられるフェライトは内部に間隙を有する。間隙が存在せず、巻き線を除く全空間にフェライトが充填される場合、端部巻き線のインダクタンスは非常に高くなるが、間隙は小さな間隙から全くフェライトのないものまで変動させて、磁束パターンに及ぼす端部巻き線の効果を制御することができる。図16Dに示すように、不所望の端部磁束はほぼ除去される。
【0061】
図16Eに移ると、端部巻き線21、22がケージ領域内の空気中に配置されるように、フェライト23が取り外されている。生成される磁束パターンは理想的な磁束パターンに非常に近いが、アルミニウム16のロスは大きい。このロスは図16Fに示すようにより長く端部巻き線21、22を広げることによって減少させ、良好な磁束パターンを得ることができる。
【0062】
延長アルミニウムシールドおよびフランジの追加は、WO2011/016737号に記載される双極配置などのその他の送信および受信配置において有効である。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F