(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407042
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20181004BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
H01L23/50 U
H01L23/28 C
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-10527(P2015-10527)
(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公開番号】特開2016-134604(P2016-134604A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹沢 真
【審査官】
豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−258348(JP,A)
【文献】
特開平11−220075(JP,A)
【文献】
特開2001−127213(JP,A)
【文献】
特開平07−030049(JP,A)
【文献】
特開2013−069955(JP,A)
【文献】
特開平03−284866(JP,A)
【文献】
特開2008−187054(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/131919(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/28−23/31
23/48
23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、接着剤を介して表面に前記半導体チップを固定するダイパッドと、前記ダイパッドの周辺から延在された複数のリードと、前記半導体チップと前記リードとを接続するボンディングワイヤと、前記半導体チップを封止する封止樹脂と、
を備えた半導体装置において、
前記ダイパッドの裏面は前記封止樹脂に覆われておらず、露出しており、
前記封止樹脂に覆われていない前記裏面の周囲に、複数の円あるいは円の一部である円弧が部分的に重畳するように連続して設けられた円弧溝が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記円弧溝の側端に、ダイパッド裏面の基準面よりも盛り上がっているダムを有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記円弧溝を構成する複数の円あるいは円の一部である円弧が楕円形状であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
リードフレームを成形する工程と、半導体チップをダイパッドに固定するダイボンド工程と、前記半導体チップとリードとをワイヤを介して接続するワイヤボンド工程と、前記半導体チップを封止樹脂により封止する工程とを備える半導体装置の製造方法であって、
前記リードフレームを成形する工程において、前記リードフレームのダイパッドの裏面の周囲に、複数の円あるいは円の一部である円弧が部分的に重畳するように連続して設けられた円弧溝を設け、前記封止する工程において、前記ダイパッドの裏面が前記封止樹脂に覆われず、露出することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記円弧溝を形成するとともに、前記円弧溝の側端にダムを形成することを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記円弧溝はプレス加工またはレーザー加工で形成することを特徴とする請求項4または請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における電子デバイスは、電力消費の削減や環境負荷低減の為の低消費電流動作、又、車載製品に代表される高温環境下での安定した高信頼動作が要求されている。電子デバイスの主たる構成を担う半導体デバイスも一種の抵抗と見なすことができ、電流が流れると、オン抵抗(電気を流したときの内部抵抗)に応じた熱を発生することになる。発生した熱は、半導体デバイスそのものに対してはもちろん、それを組み込んだ電子機器にもさまざまな影響を及ぼすことから、こうした熱による影響を回避するために、半導体パッケージの熱対策が不可欠となっている。
【0003】
半導体デバイスにおける熱は熱源となる半導体チップから最終的な熱の放出先となる空気へ放熱されるが、放熱される熱の大半は外部端子からプリント基板に熱伝導し、空気へと伝達する経路を通っている。従って、半導体デバイスからプリント基板への伝導を促す構造が重要である。放熱性の高い半導体装置として、ダイパッドの裏面を封止樹脂から露出させたものが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−199639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示した半導体装置では、樹脂封止する際にダイパッド裏面と金型との間に樹脂が流れ込み、フラッシュバリと呼ばれる薄いバリが容易に形成されてしまう。
【0006】
図5と
図6は、従来構造の半導体装置の樹脂封止工程を図示している。
図5は樹脂封止後のダイパッド裏面を示す図である。ダイパッド3の底面に溝10bを設けた裏面形状としているが、フラッシュバリ9が封止樹脂8からダイパッド3にかけて形成されたところを示している。
図6(a)はフラッシュバリ9領域の要部拡大平面図、(b)は要部拡大断面図である。フラッシュバリ9はダイパッド3に設けられた溝10bを越えて溝10bの内側のダイパッド領域にもフラッシュバリ9を形成している。
図6(b)からも明らかなように、金型13とダイパッド裏面の基準面11との間の隙間に樹脂が侵入し、溝10bを埋めてしまうため、その内側の領域にも樹脂が入り込んでフラッシュバリ9が形成されることになる。
【0007】
このフラッシュバリが放熱性を低下させることになるが、これを除去するためには電解バリ浮かしやアルカリ無電解浸漬など複雑な工程を付加する必要がある。
本発明は、上記課題に鑑み成されたもので、放熱性の高い半導体装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するための手段は以下の通りである。
まず、半導体チップと、接着剤を介して前記半導体チップを固定するダイパッドと、前記ダイパッドの辺に向かって延在する複数のリードと、前記半導体チップと前記リードとを接続するボンディングワイヤと、前記半導体チップを封止する樹脂とを備えた半導体装置において、前記半導体チップを搭載するダイパッドが前記半導体チップを搭載するダイパッドの裏面に、円弧溝が連続して設けられていることを特徴とする半導体装置とした。
【0009】
また、前記円弧溝の側端に、ダイパッド裏面の基準面よりも盛り上がっているダムを有することを特徴とする半導体装置とした。
また、前記円弧溝が楕円形状であることを特徴とする半導体装置とした。
【0010】
また、リードフレームを成形する工程と、半導体チップをダイパッドに固定するダイボンド工程と、前記半導体チップと前記リードとをワイヤを介して接続するワイヤボンド工程と、前記半導体チップを樹脂封止する工程とを備える半導体装置の製造方法において、前記リードフレームを成形する工程において、リードフレームの裏面に円弧溝を連続して設けることを特徴とする半導体装置の製造方法とした。
【0011】
また、前記円弧溝を形成するとともに、前記円弧溝の側端にダムを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法とした。
また、前記円弧溝はプレス加工またはレーザー加工で形成することを特徴とする半導体装置の製造方法とした。
【発明の効果】
【0012】
上記手段を用いることで、半導体装置のダイパッド裏面にはフラッシュバリが付着せず、良好な放熱性を有する半導体装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明の半導体装置のダイパッド裏面を示す平面図である。
【
図5】従来構造の半導体装置のダイパッド裏面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を、図を用いて説明する。
図1に示すように、樹脂封止型の半導体装置1は、半導体チップ2と、半導体チップ2を固定するダイパッド3と、ダイパッド3の周辺から外側に延在されたリード6とを備えている。半導体チップ2は、例えば、半導体基板と、半導体基板上に設けられた配線層などで構成されるものであり、ダイパッド3に接着固定されている。ダイパッド3及びリード部6は、導電性を有するものであり、例えば、Fe−Ni合金やCu合金等の金属で形成されている。ダイパッドの周囲には複数のリードインナー部6aがあり、本実施形態においては、ダイパッド3の一辺側に4本、対向する他辺側に4本、計8本配置されている。そして、これらのリードインナー部6aが近接する上記2辺と異なる他の2辺には吊りリード基部5aがダイパッド3に固定され、吊りリード基部5aから吊りリードアウター部5bが延伸している。リードインナー部6aが導電性を有するボンディングワイヤ7を介して半導体チップ2上のパッドと電気的に接続されている。なお、ボンディングワイヤ7には、金線や銅線が用いられる。
【0015】
図2は、ダイパッドの裏面構造を示す平面図である。ダイパッド3の裏面は封止樹脂8により覆われてなく、外部へ露出している。樹脂封止による封止時にはフラッシュバリ9がダイパッド3の裏面外周部から中心に向けて流れ込むことがあり、
図2はそのような状態を表している。樹脂封止により覆われていないダイパッド3の裏面の周囲にはフラッシュバリ9を堰き止める円弧溝10aが設けられている。円弧溝10aの溝は円の円弧部分からなる溝であって、複数の円弧溝が部分的に重畳するように少しずつずらして連続形成されている。即ち、円弧溝10aにおいては複数の円あるいは弧からなる溝が部分的に重畳するように連続して形成されている。
図2では個々の溝は円であり、円形の溝が部分的に重畳して連続して形成されている。円弧溝10aは裏面外周部に沿って全体に設けられており、一周している。
【0016】
図3は、本発明の半導体装置の要部拡大図で、
図3(a)は平面図、
図3(b)は
図3(a)のA−A線における断面図である。
図3(a)に示す通り、ダイパッド3の裏面に設けられたフラッシュバリ9を堰き止める円弧溝10aは円弧形状で且つ、連続的に形成されている。又、
図3(b)に示す通り、フラッシュバリ9を堰き止める円弧溝10aはその側端にダイパッド3の裏面における基準面11よりも高く盛り上がったダム12を有している。これにより封止樹脂8が外周部からダイパッド3の中心部へ流れ込んでも、基準面11よりも高いダム12を有するため樹脂を堰き止める。加えて、その形状は円弧状に連続形成されることにより円弧溝10aは封止樹脂8の流入経路上に幾重にも重なりを有し、封入樹脂8が円弧溝10aで確実に堰き止められる。フラッシュバリ9は連続した円弧溝10aが配置されないダイパッドの内側には形成されない。
【0017】
なお、
図3では真円からなる円弧溝10aを図示しているが、楕円形状としても良い。真円あるいは楕円の場合に、かならずしも真円あるいは楕円の全体が形成されなくとも良く、真円あるいは楕円の一部である弧の形状の溝をダイパッドの外周部に沿って重畳して配置することも可能である。レーザー加工で楕円形状を形成するには、レーザーの光軸をリードフレーム面に対し傾ければ良い。
【0018】
図4には、本発明の半導体装置の製造フローを示した。まず、Fe−Ni合金やCu合金からなる平板の金属板を準備し、これを打ち抜き及びプレス加工を施してリードフレームを成形する。なお、円弧溝10aはリードフレームを金型によるプレス加工やレーザー加工することによって形成できる。円弧溝10aの側端のダム12はプレス加工やレーザー加工時に溝の側端が盛り上げることで形成できる。(S1)。次いで、ダイパッド上にダイボンディングペーストを介して半導体チップを載置する(S2)。続くワイヤボンド工程S3は半導体チップ上の電極とリードフレームのリードとをワイヤで接続する工程である。
【0019】
組立検査工程S4にて外観検査をした後、ダイパッド上の半導体チップを樹脂で被覆(S5)する。このとき、
図3(b)に示すように、ダム12の突端は金型13と接触して樹脂の流れ込みを堰き止める役目を果たす。そして、その後、余分な樹脂バリ取りを行う(S6)。従来の半導体装置であれば、この後にフラッシュバリ9を除去する工程になるが、本発明の半導体装置の製造工程においてはその工程は不要であり、リードメッキ工程S7とリード切断工程S8を経て本発明の半導体装置が完成する。
【0020】
上記では、工程S1で円弧溝をリードフレームに設けたが、樹脂封止工程よりも前、すなわちS4工程以前に溝形成されれば良い。
尚、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0021】
1 半導体装置
2 半導体チップ
2a 半導体チップ底面
2b 半導体チップ総厚
3 ダイパッド
3a ダイパッド底面
5 吊りリード
5a 吊りリード基部
5b 吊りリードアウター部
6 リード
6a リードインナー部
6b リードアウター部
7 ボンディングワイヤ
8 封止樹脂
9 フラッシュバリ
10a 円弧溝
10b 溝
11 基準面
12 ダム
13 金型
S1 リードフレーム成形工程
S2 ダイボンド工程
S3 ワイヤボンド工程
S4 組立検査工程
S5 樹脂封止工程
S6 樹脂バリ取り工程
S7 リードメッキ工程
S8 リード切断工程