(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術文献のような断熱サッシにおいては、樹脂枠を金属枠に固定するに際しては、樹脂枠の室内側からビス等の固定手段により固定することが行われていた。
しかし、樹脂枠を固定するための固定手段が室内側に露出していたりすると、金属枠側から固定手段を介して熱が室内側に伝達されるなど、断熱性が損なわれる可能性があった。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑み、金属枠の室内側に樹脂枠を設けた断熱サッシにおいて、断熱性能のさらなる向上をはかることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属枠の室内側に樹脂枠を設けてなる窓枠と、窓枠に開閉自在に設けられる障子とを備え、樹脂枠は、金属枠に対して内周側から連結手段により取付けられる主樹脂枠と、主樹脂枠の室内側に係止される副樹脂枠とからなり、副樹脂枠は、中空部を備えており、金属枠に取付けられた主樹脂枠に対して副樹脂枠
が係止
されることにより、副樹脂枠の中空部の見付け方向外周側に主樹脂枠の金属枠に対する取付部位を収容する中空部
が形成
されるとともに、副樹脂枠の中空部の見込み方向室外側に
主樹脂枠と副樹脂枠とによって中空部
が形成
されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
金属枠に取付けられた主樹脂枠に対して副樹脂枠を係止することにより、主樹脂枠と副樹脂枠とによる複数層の中空部を形成することができ、また、主樹脂枠の金属枠に対する取付部位を収容する中空部が形成されて、金属枠から固定手段を伝わる熱が室内に伝達することを有効に阻止して断熱性能を向上させることができる。
また、主樹脂枠が金属枠に対して内周側から連結手段により取付けられるので、金属枠と主樹脂枠とを一緒に建物開口部に固定して施工することができ、金属枠と主樹脂枠とを建物開口部に固定したあとに、副樹脂枠を主樹脂枠に係止して固定することができるので、組立て施工性及びメンテナンス性がよい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
−勝手口ドア−
本発明の実施形態の断熱サッシについて、
図1、2に示す勝手口ドアを用いて説明する。
(全体の構成)
図1、2に示すように、本発明の実施形態の勝手口ドアは、建物開口部に設置される、上枠11、下枠12及び左、右縦枠13,14により構成される枠体1と、上框21、下框22、及び左、右縦框23,24を四周に組んでその内周にガラス等のパネル体25が嵌め込まれて構成されるドア本体2とからなる。
ドア本体2はヒンジ部71により枠体1に開閉自在に取り付けられており、枠体1の上枠11とドア本体2の上框21との間には、ドアクローザ72が配置されている。
【0010】
(窓枠の構成)
枠体1を構成する上枠11、下枠12及び左、右縦枠13,14は、金属枠の室内側に合成樹脂により形成された樹脂枠を設けて形成されている。
上枠11は、断面中空の上枠本体部の室内側に室内側部分が延設されて構成され、その内周面には嵌合溝111aが形成される金属上枠111と、断面中空の樹脂枠本体部の室内側にアングル部115aが延設されて構成され、樹脂枠本体部の室外側に嵌合部115bが形成される樹脂上枠115とから構成されている。
【0011】
樹脂上枠115は、その嵌合部115bを金属上枠111の嵌合溝111aに嵌合するとともに、樹脂枠本体部の内周側から金属上枠111に対してビス等の連結手段(図示は無し。)により取付けられている。そして、樹脂上枠115が取付けられ上枠11をネジ等の固定手段n(図示は無し。)により、建物開口部に固定している。
樹脂枠本体部の内周側には上枠11を固定する連結手段bや固定手段nの頭部が収容できるように溝部115cが形成されており、溝部115cの開口部には、樹脂蓋116が嵌め込まれ、連結手段bや固定手段nの頭部が室内側に露出することを防止している。また、樹脂上枠115の樹脂枠本体部の室外側面には、気密材保持溝が形成され、ドア本体2の上框21の室内側面に当接して枠体1とドア本体2との間を気密する気密材sが保持されている。
【0012】
下枠12は、断面中空の下枠本体部の室外側に水切りが延設される金属下枠121と、断面中空の樹脂枠本体部の室内側にアングル部125aが延設されてなる樹脂下枠125とから構成されている。
金属下枠121は、建物躯体に配置されたアンカー部材73に固定されており、室内側上面には樹脂下枠125の係止部125bを係止するための被係止部121aが形成されている。樹脂下枠125の断面中空の樹脂枠本体部の下方に形成された係止部125bを金属下枠121の被係止部121aに係止され、樹脂下枠125のアングル部125aが建物躯体の開口部下面の木製等の額部に載置され、木ねじ等により固定される。
樹脂枠本体部の室外側面は、金属下枠121の被係止部121a上方で室外側に露出して気密材保持溝が形成され、ドア本体2の下框22の室内側面に当接して枠体1とドア本体2との間を気密する気密材sが保持されている。
【0013】
左、右縦枠13、14は、アルミ等の金属材料からなり断面中空の本体部131a,141aと本体部131a,141aの室内側に延設する樹脂枠取付部131d、141dとを備えた左、右金属縦枠131,141と、樹脂枠取付部131d,141dに取付けられる左、右主樹脂縦枠132、142と、左、右主樹脂縦枠132、142に係止される左、右副樹脂縦枠133,143とから構成されている。
左、右主樹脂縦枠132、142を、左、右金属縦枠131,141の樹脂枠取付部131d,141dに取付けたのち、左、右金属縦枠131,141の外周に設けられた取付片131f,141fを建物開口部にネジ等の固定手段により固定するとともに、建物開口部の内周側からネジ等の固定手段nにより固定することで、左、右縦枠13,14が建物開口部に固定される。
なお、金属縦枠に取付けられた主樹脂縦枠にネジ等の固定手段nが貫通する孔部を設けて、ネジ等の固定手段nによって金属縦枠のみを建物開口部に固定することが、施工後のメンテナンス性の点から好ましいが、金属縦枠と主樹脂縦枠とを一緒に建物開口部に固定するようにすることも可能である。
【0014】
そして、左、右主樹脂縦枠132、142の室外側面には気密材sが設けられ、ドア本体2の左、右縦框23,24の室内側面に当接して枠体1とドア本体2との間を気密している。
【0015】
(ドア本体の構成)
ドア本体2を構成する上框21、下框22及び左、右縦框23,24は、中空の矩形形状をなす金属框と、金属框の室内側面に配置される樹脂框とから構成され、樹脂枠はいずれも複数の中空部を備えている。
【0016】
金属上框211(金属下框221)の室外側部分は外周方向に延設され、その室内側面が上枠11(下枠12)の室外側に設けられた気密材に当接して枠体1とドア本体2との間の室外側における気密を行っている。一方、上枠11及び下枠12の樹脂枠に設けた気密材sがドア本体2の樹脂框の室内側面に当接して枠体1とドア本体2との間の室内側における気密を行っている。
【0017】
左縦框23の左金属縦框231は、ヒンジ部71によって左縦枠13の左金属縦枠131に対して回動自在に取り付けられ、左縦框23の左樹脂縦框232の室内側面が、左縦枠13の左主樹脂縦枠132の室外側面に設けられた気密材sに当接している。
右縦框24の右金属縦框241の内部には、ハンドル74により操作されるラッチ機構75が配置されており、ハンドル74の操作によりドアの開閉を可能にしている。そして、右縦框24の右樹脂縦框242の室内側面が、右縦枠14の右主樹脂縦枠142の室外側面に設けられた気密材sに当接している。
【0018】
樹脂框に形成された中空部は、隔壁wにより複数に分割され、中空部内での空気の対流が隔壁wにより妨げられている。また、樹脂框の中空部を分割している隔壁wは、中空部の室外側面から突出して形成されて、その室外側端部が金属框の室内側面に当接することにより、金属框の室内側面と樹脂框の室外側面の間に複数の中空部hが形成されており、金属框の室内側面が直接樹脂框に当接せずに断熱空気層を介しているので、断熱性を向上させることができる。
【0019】
(樹脂枠の取付、及び、断熱構造)
本発明の実施形態に係る勝手口ドアにおいて、枠体1を構成する各枠のうち、特に縦枠については、樹脂枠を、金属枠に対して取付けられる主樹脂縦枠と、主樹脂縦枠の室内側に係止される副樹脂縦枠とから構成している。
以下、主樹脂縦枠と副樹脂縦枠の構成について、
図3、4を示す左縦枠13を参照しながら、さらに詳細に説明する。
【0020】
図3は、
図1、2に示す実施形態に係る勝手口ドアの左縦枠13及び左縦框23の拡大平面図である。
左縦枠13の左金属縦枠131は、中空の本体部131aと、本体部131aの外周壁が室内方向に延設されてなる外周壁部131bと、外周壁部131bの室内側端部を外周方向に屈曲してなる室内壁部131cとを備えており、外周壁部131bと本体部131aの室内側壁とにより樹脂枠取付部131dを構成している。
樹脂枠取付部131dを構成する本体部131aの室内側壁の室内側内周端には、左主樹脂縦枠132の室外側を係止するための被係止部131eがその先端が外周方向に向くようにL字状に形成されており、樹脂枠取付部131dの内周面は略平坦な面として形成されている
【0021】
左金属縦枠131の樹脂枠取付部131dに取付けられる左主樹脂縦枠132は、中空の本体部132aと、本体部132aの室外面に形成され、左金属縦枠131の被係止部131eに係止する係止片132bと、本体部132aの外周壁が室内方向に延設されて形成される固定面部132cと、固定面部132cの室内側端部を内周方向に屈曲してなる室内壁部132dと、本体部132aの本体部132aの室外側内周面より内周に延びる室外壁部132eとにより構成されており、室外壁部132eの室外側面には、気密材sを取付けるための取付溝が形成され、その内周端部には、被係止部132fが形成されている。
本体部132aの室内側面と室内壁部132dとにより、左副樹脂縦枠133の係止爪133bを係止するための係止溝132gが形成されている。
【0022】
一方、左主樹脂縦枠132に係止される左副樹脂縦枠133は、中空の本体部133aと、本体部133aの外周に形成される係止爪133bと、本体部133aの室内側に延設されるアングル部133cと、本体部133aの内周に延設される係止部133dにより構成されている。
【0023】
建物開口部に左縦枠13を施工するに際しては、左金属縦枠131の樹脂枠取付部131dの被係止部131eに対して左主樹脂縦枠132の係止片132bを係止するとともに、本体部132a及び固定面部132cの外周面を樹脂枠取付部131dの内周面に当接させ、係止溝132gの底部からビス等の連結手段bで、左金属縦枠131に対して左主樹脂縦枠132を取付ける。そして、左金属縦枠131の取付片131fを建物開口部に固定すると共に、係止溝132gの底部からネジ等の固定手段nにより、左縦枠13を建物開口部に対して固定する。
【0024】
左金属縦枠131に左主樹脂縦枠132を取付けるに際して、左金属縦枠131の樹脂枠取付部131dの内周面に内周方向に突出する部材が存在しないので、左主樹脂縦枠132の係止片132bを樹脂枠取付部131dの被係止部131eに係止させた状態で時計方向に回動させることによって、左金属縦枠131の室内壁部131cと左主樹脂縦枠132の室内壁部132dとを面一に位置決めすることができ、両室内壁部131c、132dの室内側面に対して額部材をがたつき無く取付けることができる。また、樹脂枠取付部131dの内周面が平坦に形成されているので、左主樹脂縦枠132の平坦な外周面が良好に当接して、ビス等の連結手段bの締め付けによって、係止爪133bに対して戸当りとして機能する左主樹脂縦枠132の安定した固定ができる。
【0025】
さらに、左主樹脂縦枠132の被係止部132fに左副樹脂縦枠133の係止部133dを係止させるとともに、係止溝132gに対して係止爪133bを係止することによって、左副樹脂縦枠133を左主樹脂縦枠132に係止することができる。左副樹脂縦枠133のアングル部133cは、木ねじ等により建物開口部の木製等の縁部材に固定している。
【0026】
左主樹脂縦枠132に左副樹脂縦枠133を係止することによって、係止溝132gと本体部133aの外周面とにより中空部h1が形成されるとともに、室外壁部132eと本体部133aの室外面とにより中空部h2が形成されるので、副樹脂枠の中空の本体部133aの見付け方向及び見込み方向にそれぞれ一つずつの中空部が形成されることとなる。それによって、見付け方向及び見込み方向に複数層の中空部が形成されるので、対流を分断して断熱性能を向上させることができる。
このとき、左副樹脂縦枠133の係止を、左主樹脂縦枠132の内周面の係止溝132gに対する係止のみではなく、左主樹脂縦枠132の内周に延びる室外壁部132eの先端における係止(被係止部132fに対する係止部133dによる係止)により行っているので、中空部による安定した複数層構造をつくることができる。
さらに、係止溝132gと本体部133aの外周面とにより形成される中空部h1内には左縦枠13を固定するためのネジ等の固定手段nの頭部を収容することができるので、固定手段nを伝達する熱が室内側に伝達されることを防止することができ、断熱性の向上が望めるとともに、意匠性を向上させることができる。
【0027】
図4(a)は、
図3に示す実施形態の左縦枠13の変形例を示し、室外壁部132eの室外側面に取付けられる気密材sが、左主樹脂縦枠132に一体的に設けられている点で、異なっている。
気密材sは、左主樹脂縦枠132の本体部132a等の樹脂に比較して柔らかい樹脂によって一体的に成形されており、気密材sを取り付けるための取付溝を省略することでき、
図3に示す実施形態の左縦枠13において取付溝が設けられていた部位には、中空部が形成されている。
図4(b)は、
図4(a)と同様に気密材sを左主樹脂縦枠132に一体的に設けるとともに、室外壁部132eを中空壁により形成している。
それにより、室外壁部132eの剛性及び断熱性をさらに向上させることができる。
【0028】
以上のように、本発明の実施形態の断熱サッシは、金属枠の内周側に中空部を備える主樹脂枠を取付けるとともに、主樹脂枠を取付けた金属枠をネジ等の固定手段により建物開口部に固定することにより、主樹脂枠の施工も行うことができるので施工性に優れており、施工後に主樹脂枠が破損した場合などには、金属枠に対する主樹脂枠のビス等の連結手段による取付けを解消すれば主樹脂枠の交換等を簡単に行うことができ、メンテナンス性に優れている。
また、主樹脂枠に対して副樹脂枠を係止することにより枠体を建物開口部に固定するための固定手段を収容する中空部を形成することができ、また、主樹脂枠に係止される副樹脂枠は、アングル部により建物開口部の木製等の額部に固定されるので、金属部材に接触することがなく、金属部材から固定手段等を介して熱等の伝達がされることなく、断熱サッシの断熱性を向上させることができる。
【0029】
なお、本発明の樹脂サッシは、勝手口ドア等の開き障子を有する建具に限られるものではなく、引戸障子を備える樹脂サッシでもよく、また、主樹脂枠と副樹脂枠とによる断熱構造は、縦枠のみならず、必要に応じて上枠や下枠の構成として採用することも可能である。