特許第6407051号(P6407051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407051
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】樹脂サッシ
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/28 20060101AFI20181004BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   E06B1/28
   E06B5/16
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-18027(P2015-18027)
(22)【出願日】2015年1月31日
(65)【公開番号】特開2016-142027(P2016-142027A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垣 博範
(72)【発明者】
【氏名】松田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太
(72)【発明者】
【氏名】今井 裕一
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−063930(JP,A)
【文献】 特開2006−307572(JP,A)
【文献】 特開2014−122471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00−1/70
E06B 5/00−5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口部に取付けられる樹脂製の枠体、もしくは、窓枠に開閉自在に設けられる樹脂製の障子を備え、
樹脂製の枠体もしくは障子を構成する樹脂製の框体は中空部を備え、中空部は隔壁により分割される複数の区画を備えており、
少なくとも隣接する2つの区画内に金属製の2つの補強部材が長手方向全長にわたってそれぞれ配置され、補強部材は、それぞれ隔壁に対向する対向面を有し、一方の補強部材の対向面に熱により膨張する耐火材が設けてあり、
2つの補強部材は、耐火材および隔壁を挟んで配置されるとともに、連結手段により連結されている、
ことを特徴とする樹脂サッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の窓枠もしくは障子を備える樹脂サッシに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、枠体及び障子の框を樹脂により中空に形成してなる樹脂サッシが周知となっているが、樹脂サッシにおいても、防火性能を高めることは必須の事項となっている。
そして、樹脂サッシにおいて、樹脂製の枠体や框の中空内部に補強部材や熱膨張耐火材を配置するなどして、火災時に樹脂製の枠体や框が溶融した場合であっても、枠体と框との間から火炎が浸入することを防止する樹脂サッシが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5290034号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
断熱性を向上させるための樹脂サッシでは、窓枠や障子に中空部を形成して断熱性を向上させることが行われるが、中空部を複数の区画に分割して断熱性のさらなる向上、及び、強度の確保が行われることが常套手段となっている。
しかしながら、樹脂框の中空部を複数の区画に分割すると、中空部の内部に配置する補強部材も分割されてしまい、火災時に中空部を区画する壁体が溶融した場合には、補強部材間に隙間が生じて、火炎の浸入を防止することが難しかった。
補強部材を分割しないで配置しようとすると、中空部内への配置は難しく、結局、樹脂框や樹脂枠の表面に補強部材が露出してしまい、意匠的に好ましくなく、腐食や結露の原因になっていた。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑み、樹脂枠や樹脂框の中空部を複数の区画に分割し、複数に区画された中空部内に補強部材を配置した場合に、火災時に樹脂枠や樹脂框が溶融しても、補強部材間に隙間が生じることがなく、火炎の浸入を防止できる樹脂サッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物開口部に取付けられる樹脂製の枠体、もしくは、窓枠に開閉自在に設けられる樹脂製の障子を備え、樹脂製の枠体もしくは障子を構成する樹脂製の框体は中空部を備え、中空部は隔壁により分割される複数の区画を備えており、少なくとも隣接する2つの区画内に金属製の2つの補強部材が長手方向全長にわたってそれぞれ配置され、補強部材は、それぞれ隔壁に対向する対向面を有し、一方の補強部材の対向面に熱により膨張する耐火材が設けてあり、2つの補強部材は、耐火材および隔壁を挟んで配置されるとともに、連結手段により連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
火災時に、樹脂枠や樹脂框が溶融しても、補強部材間の溶融した樹脂部分を膨張した耐火材が塞ぐので、補強部材間から火炎の浸入を防止することができ、樹脂框や樹脂枠の延焼を遅延させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るすべり出し樹脂サッシの内観図である。
図2】本発明の実施形態に係る樹脂サッシの縦断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る樹脂サッシの横断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る樹脂サッシの左側の縦枠の拡大横断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る樹脂サッシの左側の縦框の拡大横断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る樹脂サッシの左側の縦枠と縦框の拡大横断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る樹脂サッシの樹脂枠の立上り壁の構造を説明する図であり、左側の縦枠の拡大横断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る樹脂サッシの左側の縦框の拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態の樹脂サッシについて、図面を参考に説明する。
(全体の構成)
図1に示すように、本発明の実施形態の樹脂サッシは、建物開口部に設置され、上枠11、下枠12及び左、右縦枠13,14を四周に組んでなる枠体1と、上框21、下框22、及び左、右縦框23,24を四周に組んでその内周にガラス等のパネル体25が嵌め込まれてなる障子2とからなる。
そして、枠体1の左、右縦枠13,14と障子2の左、右縦框23,24と間に配置されたアーム部材3,3により、枠体1に対して障子2がすべり出し開閉自在に支持されたすべり出し窓として構成されている。
下框22の室内側には、障子2の開閉時に操作者が握ることができ、また、障子2を閉鎖状態にロック操作するためのハンドル93が配置されている。
以下に、本発明の実施形態の樹脂サッシを構成する各部材について、図面を参考に詳細に説明する。
【0010】
(窓枠の構成)
枠体1を構成する上枠11、下枠12及び左、右縦枠13,14は、合成樹脂により形成されており、図2、3に示すように、各枠の断面形状はほぼ同一に形成されている。
各枠の構成について、図4を参照しながら、左縦枠を用いて説明する。
【0011】
左縦枠13は、中空の矩形形状をなす枠本体部131と、枠本体部131の室外側に連続する室外側中空部132と、枠本体部131の室内側に連続する中空の立上り壁133とから構成されている。
左縦枠13の外周面の見込み方向中間付近には、外周方向に向けて取付片部131aが延設されており、建物開口部の躯体に対して、金属製の釘ヒレアングル材51を挟んでネジ等の固定手段nにより固定されている。
また、左縦枠13の外周面の室内側からは室内方向に向けて室内側取付片部131bが延設されており、ネジ等の固定手段nにより建物開口部の内周面に固定されている。
【0012】
枠本体部131の中空内部には、外周片53a、内周片53b及び見付け片53cとにより略U字形状をなす金属製の主補強部材53が長さ方向全長に渡って挿入されており、その外周片53aが左縦枠13の枠本体部131の外周壁を挟んで釘ヒレアングル材51に対してビス等の連結手段bにより固定され、内周片53bがビス等の連結手段bにより、枠本体部131の内周面部に固定されている。
【0013】
枠本体部131の室内側に連続する立上り壁133は、枠本体部131よりも内周方向に突出しており、突出した部分の室外側面には、障子2の室内側面が当接するシール材sが配置されて、立上り壁133が戸当たりとして構成されている。
立上り壁133の中空内部の左右方向中間位置付近(枠本体部131の内周面付近)には、中間壁133bが形成されており、立上り壁133内部が外周側中空部133aと内周側中空部133cに分割され、立上り壁133の強度を向上させている。
【0014】
分割された外周側中空部133a及び内周側中空部133cには金属製の外周側補強部材54及び内周側補強部材55が長さ方向全長に渡って挿入されている。
外周側補強部材54,内周側補強部材55は、見付け面部54a,55a、及び、少なくとも一つの見込み面部54b,55bを有しており、見込み面部54b,55b同士が中間壁133bを挟んで対向するように配置されている。
【0015】
外周側補強部材54の見込み面部54bには、長ビスbが挿入される孔が設けられており、見込み面部54bの内周側面には、熱により膨張する耐火材(熱膨張耐火材f)が配置されている。また、内周側補強部材55の見込み面部55bには、長ビスbが螺合されるネジ孔が設けられており、左縦枠13の立上り壁133の外周側面から挿入される長ビスbにより、外周側補強部材54及び内周側補強部材55が中間壁133b及び熱膨張耐火材fを挟んで連結され、立上り壁133と外周側補強部材54及び内周側補強部材55が一体的に構成されている。
【0016】
以上、左縦枠13の構成を説明したが、上,下枠11,12及び右縦枠14についても同様の構造を備えている。そして、各枠に挿入された主補強部材53はその端部において隣接する他の主補強部材53と図示しない金属製のアングル材等により連結され、枠体の四周に亘って金属製の部材により補強されている。
【0017】
(障子の構成)
障子2を構成する上框21、下框22及び左、右縦框23,24は、合成樹脂により形成され、図2、3に示すように、各框の断面形状はほぼ同一に形成されている。
各框の構成について、図5を参照しながら、左縦框23を用いて説明する。
【0018】
左縦框23は、中空の矩形形状をなす框本体部231と、框本体部231の室外側に連続し、外周側に突出する立上り部を備える室外側壁部232と、框本体部231の室内側に連続し、ガラス間口の室内側を構成する室内側壁部233と、室外側壁部232の内周に係合されてガラス間口の室外側を構成する押縁部材234とから構成されており、框本体部231の外周面には、外周に向けて開口する溝状のレール部231aが設けられている。
【0019】
左縦框23の外周面には、金属製の框カバー部材61が配置されている。框カバー部材61は見付け面部61a及び見込み面部61bを備え、見付け面部61aにより、室外側壁部232の立上り部の室内側面を覆うとともに、見込み面部61bにより框本体部231の外周面を覆いながら、レール部231aにおいて框本体部231及び後述する主框補強部材62にビス等の連結手段bにより連結されている。
【0020】
左縦框23を構成する框本体部231と、室外側壁部232と、室内側壁部233の中空部内には、それぞれ金属製の主框補強部材62,室外側框補強部材63,室内側框補強部材64が長さ方向全長に渡って挿入されている。
框本体部231の中空部内に挿入される主框補強部材62は、少なくとも外周片62a、内周片62b及び見付け片62cを有し、その外周片62aは、左縦框23の框本体部231及び框カバー部材61の見込み面部61bに対してビス等の連結手段bにより連結固定されているとともに、その内周片62bには、熱膨張耐火材fが配置されている。
【0021】
室外側壁部232は、その中空部内の左右方向中間位置付近(框本体部231の外周面位置付近)に、中間壁232bが設けられており、框本体部231の室外側に位置し、その内周側に押縁部材234を係合する係合部を有する室内側框中空部232aと、框本体部231よりも外周側に突出して立上り部を構成し、室内側面にシール材sが取り付けられる外周側框中空部232cとが形成されている。
【0022】
室外側壁部232に挿入される室外側框補強部材63は、外周側框中空部232cの中空部内に挿入されており、図6に示すように、室外側框補強部材63の外周端は、障子2の閉鎖状態において、左縦枠13の主補強部材53の内周端よりも外周側に位置し、且つ、内周端は、框カバー部材61の外周端よりも内周側に位置することにより、左縦枠13の主補強部材53と框カバー部材61との間の室外側を塞ぐように配置されている。
【0023】
そして、室外側框補強部材63の見付け面部が框カバー部材61の見付け面部61aに対してビス等の連結手段bにより連結されることにより、主框補強部材62と室外側框補強部材63と框カバー部材61との一体化をはかっている。
室外側框補強部材63の室外側には、熱膨張耐火材fが配置されており、室外側の火災に対して速やかに膨張して、室外側框補強部材63の室外側(火災が発生した側)に断熱層を形成して、枠と框の溶融を遅らせて、火炎等の浸入を遅延させることができる。
【0024】
室内側壁部233の中空部内に挿入される室内側框補強部材64は、左縦框23の間口から框本体部231にかけて、その室内側を覆う見付け面部64aを備えており、見付け面部64aの内周端及び外周端からそれぞれ室内側に見込み面部64b,64cが形成されている。
そして、内周側の見込み面部64bの外周側面、及び、外周側の見込み面部64cの外周側面には熱膨張耐火材fが配置されており、室内側壁部233の中空部内において外周側の見込み面部64cを室内側壁部233の外周面に対して熱膨張耐火材fを挟んでビス等の連結手段bにより連結固定している。
【0025】
左縦框23の内周には、室内側壁部233及び押縁部材234により間口が形成されており、間口には、ガラス等のパネル体25の外周面及び室内側面を覆う断面L字状のガラス受け65、及び、ガラス受け65に対して係合され、ガラス等パネルの外周面及び室外側面を覆う断面L字状のガラス押さえ66が配置されている。
【0026】
ガラス受け65の外周面は、框本体部231の中空部内に挿入された主框補強部材62の内周片62bに対してビス等の連結手段bにより連結されるとともに、ガラス受け65の室内側面は室内側壁部233の中空部内に配置された室内側框補強部材64の見付け面部64aに対してビス等の連結手段bにより連結されている。
【0027】
従って、左縦框23を構成する各中空部内に配置される主框補強部材62,室外側框補強部材63,室内側框補強部材64、及び框カバー部材61,ガラス受け65,ガラス押さえ66等の金属製の部材がビス等の連結手段bにより一体的に連結されることとなり、火災時に樹脂製の框が溶融しても、金属製の部材が分解してパネル体25が脱落することを防止できる。
なお、図示はしていないが、室内側框補強部材64の外周側の見込み面部64cと主框補強部材62とを金属製の連結部材等により連結することもでき、火災時に主框補強部材62と室内側框補強部材64とが分離して広がることを防止できる。
【0028】
また、ガラス受け65とガラス押さえ66との重合部分の間には、熱膨張耐火材fが配置されるとともに、ガラス受け65の室外側面、及び、ガラス押さえ66の室内側面には、パネル体25に対向するように熱膨張耐火材fが配置され、火災時に、熱膨張耐火材fが膨張してガラス間口に充満し、ガラス受け65及びガラス押さえ66とガラス等パネル体25との間から火炎や煙等が浸入することを防止している。
【0029】
以上、左縦框23の構成を説明したが、上、下框21,22及び右縦框24についても同様の構造を備えており、各框に挿入された主框補強部材62はその端部において隣接する他の主框補強部材62と図示しない金属製のアングル材等により連結されることにより、障子の四周に亘って金属製の部材により補強されている。
【0030】
(枠体と障子との連結構造)
次に、枠体1に対する障子2の取付けについて説明する。
図1,3,6に示すように、障子2の左、右縦框23,24が枠体1の左右縦枠13,14に対して、左右のアーム部材3,3により支持されている。アーム部材3,3の一端は、左、右縦枠13,14の内周面に連結され、他端は、障子2の左、右縦框23,24の外周面に連結され、リンク機構を形成することにより、障子2が枠体1に対してすべり出し開放自在に支持されている。
【0031】
また、図2に示すように、上枠11の内周面には、枠側反り防止金具81が固着されるとともに、上框21の外周面には、框側反り防止金具82が固着されており、火災時に熱により障子2が沿って枠体1と障子2との間に隙間が開くことを防止している。
【0032】
一方、下框22の外周のレール部231aにはロックピン91が摺動自在に配置されるとともに、下枠12の内周面には、ロックピン91が係止するロックピン受け92が固着されており、下框22の室内面に配置されたハンドル93のロック操作によって、ロックピン91がロックピン受け92に係止して障子2の閉鎖状態をロックすることができる。
【0033】
(枠体中空部の分割構造)
本発明の実施形態において、枠本体部131の室内側に連続する立上り壁133に採用されている中空部の分割構造について、図4,7を示しながら、さらに詳しく説明する。
図4,7に示されるように、枠本体部131の室内側に連続する立上り壁133は見付け方向に幅広に構成されており、また、合成樹脂により形成されていることから、十分な剛性を保つことができず、例えば室内側面から外力が加わると変形する可能性がある。窓枠等が変形すると高級感が損なわれ、商品価値が低下するばかりでなく、窓枠が破損する可能性があった。
【0034】
そこで、立上り壁133の中空部内の左右方向中間位置付近(枠本体部131の内周面付近)に中間壁133bを形成することにより、立上り壁133の室内側からの外力に対する剛性を向上させており、また、中空部を分割することにより、断熱性での向上をはかっている。
【0035】
しかし、立上り壁133の中空部内に中間壁133bが形成されること、即ち、隔壁が形成されることにより、中空部が外周側中空部133aと内周側中空部113cに分割されて、本来、立上り壁133の中空部全体に配置することができた補強部材を配置することができない。そのため、隔壁である中間壁133bにより分割された区画(外周側中空部133aと内周側中空部113c)にそれぞれ金属製の外周側補強部材54及び内周側補強部材55を挿入して配置している。
【0036】
そして、それぞれ金属製の外周側補強部材54及び内周側補強部材55を隔壁である中間壁133bを挟んで長ビス等の連結手段bにより連結することにより、火災時に立上り壁133の強度を向上させるとともに、火炎や煙等の浸入を防止している。
【0037】
ここで、本実施形態における2つの区画(外周側中空部133aと内周側中空部113c)に配置される金属製の補強部材である、外周側補強部材54、内周側補強部材55は、それぞれ見付け面部54a,55a、及び、見込み面部54b,55bを有しており、見込み面部54b,55b同士を中間壁133bを挟んで対向するようにして配置されている。
【0038】
外周側補強部材54の見込み面部54bには、長ビスbが自由に挿入される挿通孔h1が設けられており、見込み面部54bの内周側面には、熱膨張耐火材fが配置されている。一方、内周側補強部材55の見込み面部55bには、長ビスbが螺合されるネジ孔h2が設けられており、左縦枠13の立上り壁133の外周側面から挿入される長ビスbにより、外周側補強部材54及び内周側補強部材55が中間壁133b及び熱膨張耐火材fを挟んで連結され、立上り壁133と外周側補強部材54及び内周側補強部材55が一体的に構成されている。
【0039】
従って、火災時に立上り壁133が溶融しても、外周側補強部材54と内周側補強部材55とは、連結状態を保ち、且つ、外周側補強部材54と内周側補強部材55との間に生じる隙間を熱膨張耐火材fで塞ぐことができるので、火炎や煙等の浸入を防止することができる。
なお、外周側補強部材54と内周側補強部材55との連結構造は、特に上記連結構造に限定されるものではなく、外周側補強部材54の見込み面部54bにも長ビスbが螺号されるネジ孔を設けるなど、外周側補強部材54及び内周側補強部材55を中間壁133b及び熱膨張耐火材fを挟んで連結することができれば、どのような連結構造を採用しても良い。
また、外周側補強部材54、内周側補強部材55、中間壁133b、熱膨張耐火材fは、接触していても、離間していてもよく、熱膨張耐火材fは、何れかの補強部材に取付けられていても、中間壁に取り付けられていてもよい。
【0040】
図8に、本発明の実施形態に採用されている補強材間に耐火材を配置する構成を框の中空部に採用した例を示す。
図8の左縦框73は、中空の略矩形形状をなす框本体部731と、框本体部731の室外側外周面から外周方向に延設される室外側壁部732と、框本体部731の室内側に連続し、ガラス間口の室内側を構成する室内側壁部733と、框本体部731の室外側内周面に係合されてガラス間口の室外側を構成する押縁部材734とから構成されており、框本体部731の外周面には、外周に向けて開口する溝状のレール部731aが設けられている。
【0041】
左縦框73の外周面には、金属製の框カバー部材61が配置されている。框カバー部材61は見付け面部61a及び見込み面部61bを備え、見付け面部61aにより、室外側壁部732の立上り部の室内側面を覆うとともに、見込み面部61bにより框本体部731の外周面を覆いながら、レール部731aにおいて框本体部731及び後述する主框補強部材62にビス等の連結手段bにより連結されている。
【0042】
左縦框73を構成する框本体部731と、室外側壁部732と、室内側壁部733の中空部内には、それぞれ金属製の主框補強部材62,室外側框補強部材63,室内側框補強部材64が長さ方向全長に渡って挿入されている。
框本体部731の中空部内に挿入される主框補強部材62は、外周片62b、内周片62a及び見付け片62cを有し、内周片62aの室外側端部より逆L字状の室外片62dが連設されている。
そして、外周片62bが、左縦框23の框本体部231及び框カバー部材61の見込み面部61bに対してビス等の連結手段bにより連結固定されており、その内周片62aの外周側面、及び、室外片62dの下端の外周側面には、熱膨張耐火材fが配置されている。
【0043】
室外側壁部732には、見付け面部及び見込み面部63bを有する室外側框補強部材63が挿入されており、室外側框補強部材63の見込み面部63bが框本体部731内に挿入された主框補強部材62の室外片62dの外周側面に対して樹脂框及び熱膨張耐火材fを挟んで対向するように配置されている。
そして、室外側框補強部材63の見付け面部が框カバー部材61の見付け面部61aに対してビス等の連結手段bにより連結されることにより、主框補強部材62と室外側框補強部材63とは、樹脂框及び熱膨張耐火材fを挟んだ状態で框カバー部材61及びビス等の連結手段bによって一体化されている。
【0044】
また、室外側框補強部材63の室外側には、熱膨張耐火材fが配置されている。
したがって、室外側の火災によって主框補強部材62と室外側框補強部材63との間に存在する樹脂框が溶融しても、両補強部材は框カバー部材61及びビス等の連結手段によって連結されているので、分離することはなく、両補強部材の間に挟まれる熱膨張耐火材fが膨張して補強部材同士の間に隙間を生じることを防止できる。また、室外側框補強部材63の室外側に配置した熱膨張耐火材fが速やかに膨張して断熱層を形成して、枠と框の溶融を遅らせることができる。
【0045】
以上のように、本発明の実施形態の樹脂サッシにおいては、枠の立上り壁の中空部を隔壁により複数の区画に分割して強度や断熱性能を向上させながら、隔壁により分割されたそれぞれの区画内には金属製の補強部材が配置して、両補強部材を長ビス等の連結手段により隔壁を挟んで連結されている。
そして、火災時には、合成樹脂により形成された立上り壁が溶融しても、立上り壁の中空部内に配置され、連結された2つの金属製の補強部材により室内外方向の連通を防ぐことができ、枠と障子との間から火炎等の浸入を防止することができる。
【0046】
さらに、分割された区画内に配置された金属製の補強部材同士の連結面には熱膨張耐火材が配置されているので、補強部材間の隔壁が溶融しても、熱膨張耐火材が隔壁の溶融により生じる補強部材間の隙間を塞ぐことができ、補強部材が分割して配置された場合にも、十分に枠と障子との間から火炎等が浸入することを防止することができる。
【0047】
なお、本発明が採用される中空部内における補強部材と耐火材とによる構造は、枠体の立上り壁に限るものではなく、例えば図8に示すような框であってもよく、合成樹脂により形成されるいずれの中空部位に採用してもよい。
また、前述の実施形態は、すべり出し窓であるが、本発明は、特に、すべり出し窓に限られるものではなく、開閉する各種の窓用の樹脂サッシに対して採用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 :枠体
11 :上枠
12 :下枠
13 :左縦枠
131 :枠本体部
131a :取付片部
131b :室内側取付片部
132 :室外側中空部
133 :立上り壁
133a :外周側中空部
133b :中間壁
133c :内周側中空部
14 :右縦枠
2 :障子
21 :上框
22 :下框
23 :左縦框
231 :框本体部
231a :レール部
232 :室外側壁部
232a :室内側框中空部
232b :中間壁
232c :外周側框中空部
233 :室内側壁部
234 :押縁部材
24 :右縦框
25 :パネル体
3 :アーム部材
51 :釘ヒレアングル材
53 :主補強部材
53a :外周片
53b :内周片
53c :見付け片
54 :外周側補強部材
55 :内周側補強部材
61 :框カバー部材
62 :主框補強部材
63 :室外側框補強部材
64 :室内側框補強部材
65 :ガラス受け
66 :ガラス押さえ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8