(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
LNG基地に設けられているLNGタンクに貯えられているLNGを、液化ガス輸送装置に搭載されている輸送用タンクに移送して出荷させる液化ガス出荷設備向け熱量調整システムであって、
前記LNGタンクと、
前記LNGタンクに貯えられているLNGを供給するLNG供給ラインと、
LNGの熱量調整に用いられるLPGを貯えるLPGタンクと、
前記LPGタンクに貯えられているLPGを供給するLPG供給ラインと、
前記LPG供給ラインの途中でLPGを冷却する冷却装置と、
前記LNG供給ラインから供給されるLNGと、前記LPG供給ラインから供給される、前記冷却装置で冷却された後のLPGとを液相同士で混合する混合装置と、
前記混合装置によって熱量調整が行われた後の液化ガスを、前記液化ガス輸送装置の前記輸送用タンクに供給する出荷用ラインとを備える液化ガス出荷設備向け熱量調整システム。
前記出荷用ラインから液化ガスを前記輸送用タンクに充填しているときに前記輸送用タンクの内部に連通されて、前記輸送用タンクの内部に存在する気相成分を抜き出すガス抜出ラインと、
前記ガス抜出ラインの途中に設けられ、前記輸送用タンクの内部から抜き出される気相成分の圧力を調節する輸送圧力調節装置とを備える請求項1に記載の液化ガス出荷設備向け熱量調整システム。
前記冷却装置は、ターボ冷凍機、又は、フロンガスを含む冷媒を循環させるフロン冷凍機、又は、プロピレンを含む冷媒を循環させるプロピレン冷凍機である請求項1又は2に記載の液化ガス出荷設備向け熱量調整システム。
前記冷却装置は、冷媒としてのLNGと、前記LPG供給ラインを流れるLPGとを熱交換させる熱交換器である請求項1又は2に記載の液化ガス出荷設備向け熱量調整システム。
前記LPG供給ラインの途中に、前記冷却装置で冷却された後のLPGを貯えるLPG貯槽を備える請求項1〜4の何れか一項に記載の液化ガス出荷設備向け熱量調整システム。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、LNG基地に設けられているLNGタンクに貯えられているLNGを、LNG運搬船やローリー車などの液化ガス輸送装置に搭載されている輸送用タンクに充填して出荷する液化ガス出荷設備が記載されている。
尚、特許文献1に記載の液化ガス出荷設備では、LNGタンクに貯えられているLNGをそのまま出荷しているが、LNGに熱量調整を行った上で出荷することが求められる場合もある。
【0003】
特許文献2には、低熱量のLNGと、増熱用のLPG(液化石油ガス)とを混合する都市ガスの熱量調整装置が記載されている。従って、特許文献2に記載の装置を用いると、所望の熱量の液化ガスを得ることができる。
尚、特許文献2に記載されている熱量調整装置は、熱量調整を行った後の液化ガスを気化させる気化器(6)を備えており、ガスを液化された状態で出荷することは行っていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の装置において得られる液化ガス(即ち、低熱量のLNGと増熱用のLPGとを混合して得られる液化ガス)を気化させず、液体のままで特許文献1に記載のような液化ガス輸送装置でLNGサテライト基地などに出荷することが求められる場合もある。
ところが、常圧での沸点は、LNG(約−160℃)の方が、LPG(プロパン:約−42℃、ブタン:約−0.5℃)よりも非常に低い。そのため、通常は、LNGに対して、それよりも大幅に高温のLPGが混合されることになる。特許文献2に記載の装置でも、低熱量LNGに対して、それよりも大幅に高温の増熱用のLPGが混合されていると思われる。この場合、混合後の液化ガスに含まれるLNGの温度が上昇して、所謂、BOG(ボイルオフガス)の発生量が増加してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱量調整を行った後での発生BOGを許容範囲に抑制できる液化ガス出荷設備向け熱量調整システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る液化ガス出荷設備の特徴構成は、LNG基地に設けられているLNGタンクに貯えられているLNGを、液化ガス輸送装置に搭載されている輸送用タンクに移送して出荷させる液化ガス出荷設備向け熱量調整システムであって、
前記LNGタンクと、
前記LNGタンクに貯えられているLNGを供給するLNG供給ラインと、
LNGの熱量調整に用いられるLPGを貯えるLPGタンクと、
前記LPGタンクに貯えられているLPGを供給するLPG供給ラインと、
前記LPG供給ラインの途中でLPGを冷却する冷却装置と、
前記LNG供給ラインから供給されるLNGと、前記LPG供給ラインから供給される、前記冷却装置で冷却された後のLPGとを液相同士で混合する混合装置と、
前記混合装置によって熱量調整が行われた後の液化ガスを、前記液化ガス輸送装置の前記輸送用タンクに供給する出荷用ラインとを備える点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、LPGが冷却装置によって冷却された上でLNGと液相同士で混合される。つまり、混合されることによるLNGの温度上昇幅は、冷却していないLPGを混合する場合に比べて小さくなる。その結果、BOGの発生量を少なくしながら、LPGによって熱量調整が行われたLNGを含む液化ガスを出荷することができる。
【0009】
本発明に係る液化ガス出荷設備向け熱量調整システムの別の特徴構成は、前記出荷用ラインから液化ガスを前記輸送用タンクに充填しているときに前記輸送用タンクの内部に連通されて、前記輸送用タンクの内部に存在する気相成分を抜き出すガス抜出ラインと、
前記ガス抜出ラインの途中に設けられ、前記輸送用タンクの内部から抜き出される気相成分の圧力を調節する輸送圧力調節装置とを備える点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、輸送圧力調節装置によって、輸送用タンクの内部から抜き出される気相成分の圧力、即ち、輸送用タンク内の液化ガスに加わる圧力を調節することができる。その結果、輸送用タンク内の液化ガスの温度が高くなる場合でも、輸送圧力調節装置によって圧力を高く保つことで、液化ガスの気化、即ち、BOGの発生を抑制することができる。
【0011】
本発明に係る液化ガス出荷設備向け熱量調整システムの更に別の特徴構成は、前記冷却装置は、ターボ冷凍機、又は、フロンガスを含む冷媒を循環させるフロン冷凍機、又は、プロピレンを含む冷媒を循環させるプロピレン冷凍機である点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、特殊な装置ではなく、ターボ冷凍機、フロン冷凍機、プロピレン冷凍機などの冷凍機を用いてLPGを冷却することができる。
【0013】
本発明に係る液化ガス出荷設備向け熱量調整システムの更に別の特徴構成は、前記冷却装置は、冷媒としてのLNGと、前記LPG供給ラインを流れるLPGとを熱交換させる熱交換器である点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、熱交換器ではLPGとLNGとの熱交換が行われるため、冷却後のLPGの温度をLNGの温度に近付けることができる。その結果、冷却後のLPGとLNGとを混合したときのBOGの発生量を少なくすることができる。例えば、LPGとの熱交換に用いる冷媒としてのLNGは、LNG基地で保冷循環のために用いられているLNGや、都市ガス製造の原料とするガス送出用LNGなどを利用することができる。
【0015】
本発明に係る液化ガス出荷設備向け熱量調整システムの更に別の特徴構成は、前記LPG供給ラインの途中に、前記冷却装置で冷却された後のLPGを貯えるLPG貯槽を備える点にある。
【0016】
LNG運搬船やローリー車などの液化ガス輸送装置で液化ガスを出荷するタイミングは不定期である。また、要求される液化ガスの出荷量も様々である。そのため、液化ガス輸送装置で液化ガスを出荷する度に、冷却装置でのLPGの冷却と、混合装置でのLNG及び冷却後のLPGの混合とを行うようにすると、冷却装置の起動及び停止などをその度に行う必要が生じる。また、液化ガス輸送装置への液化ガスの単位時間当たりの出荷量を大きくするため、及び、様々な出荷タイミングに対応するためには、冷却装置でのLPGの単位時間当たりの冷却能力を大きくする必要、即ち、冷却装置を大型化する必要がある。
ところが上記特徴構成によれば、LPG貯槽を用いて、冷却装置で冷却された後のLPGを予め貯えておくことで、LNG運搬船やローリー車などの液化ガス輸送装置で液化ガスを出荷するタイミングで冷却装置の起動及び停止など行う必要が無くなる。また、冷却後のLPGをLPG貯槽で貯えておくことができるので、冷却装置での単位時間当たりのLPGの冷却量も、要求される液化ガスの出荷量とは別に、平準化して設定することができる。加えて、冷却後のLPGをLPG貯槽に貯えておくことができるので、冷却装置の大きさをコンパクトにしながら、液化ガス輸送装置への液化ガスの単位時間当たりの出荷量を大きくすること、及び、様々な出荷タイミングへの対応も可能になる。
【0017】
本発明に係る液化ガス出荷設備向け熱量調整システムの更に別の特徴構成は、前記LPG貯槽の内部の気相部の圧力を調節する貯槽圧力調節装置を備える点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、貯槽圧力調節装置によって、LPG貯槽の内部の気相部の圧力、即ち、LPG貯槽内のLPGに加わる圧力を調節することができる。その結果、貯槽圧力調節装置によって、LPG貯槽内のLPGを過冷却することも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の第1実施形態の液化ガス出荷設備向け熱量調整システムについて説明する。
図1は、第1実施形態の液化ガス出荷設備向け熱量調整システムの構成を示す図である。図示するように、液化ガス出荷設備向け熱量調整システムは、LNGタンク1と、LNG供給ライン4と、LPGタンク5と、LPG供給ライン6と、冷却装置7と、混合装置11と、出荷用ライン14とを備える。
【0021】
LNG受入基地やLNG出荷基地などのLNG基地に設けられているLNGタンク1は、LNGタンカーなどから受け入れたLNG(液化天然ガス)を貯えている。通常、LNG基地には複数基のLNGタンク1が設けられている。LNGの沸点は常圧で約−160℃である。
【0022】
LNG供給ライン4は、LNGタンク1に貯えられているLNGをタンク外に供給する。LNGタンク1内にはLNGを汲み出してLNG供給ライン4へ送出するためのLNGポンプ16が設置されている。このLNGポンプ16によって、LNG供給ライン4を流れるLNGの単位時間当たりの流量が調節される。
【0023】
LPGタンク5は、LNGの熱量調整に用いられるLPG(液化石油ガス)を貯える。LPGは、プロパン又はブタンを主成分としている。プロパンの場合、常圧での沸点は約−42℃である。ブタンの場合、常圧での沸点は約−0.5℃である。LPG供給ライン6は、LPGタンク5に貯えられているLPGをタンク外に供給する。
LPG供給ライン6の途中には、LPGの単位時間当たりの流量を調節するためのLPGポンプ8が設けられている。そして、LPGポンプ8の下流側に後述する冷却装置7が設けられる。
【0024】
LPGポンプ8と冷却装置7との間のLPG供給ライン6の途中には、LPG供給ライン6を流れるLPGの流量を調節するための流量調節弁9が設けられている。この流量調節弁9の作用により、冷却装置7へと供給されるLPGの流量が調節される。
また、冷却装置7と合流部12との間のLPG供給ライン6の途中には、LPG供給ライン6を流れるLPGの流量を調節するための流量調節弁10が設けられている。この流量調節弁10の作用により、合流部12へと供給されるLPGの流量が調節される。
【0025】
冷却装置7は、LPG供給ライン6の途中でLPGを冷却する。例えば、冷却装置7は、冷媒圧縮用のターボ圧縮機を利用するターボ冷凍機、又は、フロンガスを含む冷媒を循環させるフロン冷凍機、又は、プロピレンを含む冷媒を循環させるプロピレン冷凍機などの冷凍機を用いて実現できる。尚、図中では、LPGと熱交換する冷媒については図示を省略している。また、冷凍機の冷媒によってLPGを直接冷却するのではなく、中間媒体を用いてLPGを冷却してもよい。例えば、中間媒体としてのブライン(エチレングライコール水溶液)を冷凍機で冷却し、冷却された中間媒体によってLPGを冷却するような構成を採用してもよい。
【0026】
混合装置11は、LNG供給ライン4から供給されるLNGと、LPG供給ライン6から供給される、冷却装置7で冷却された後のLPGとを液相同士で混合して、LNGとLPGとを含む液化ガスを得る。例えば、本実施形態では、混合装置11は、LNG供給ライン4とLPG供給ライン6とを合流部12で合流させ、その合流部12で合流されたLNGとLPGとをスタティックミキサー13で混合させる。この場合、LNGへのLPGの混入比率が予め計算した所望の値となるように、即ち、所望の熱量の液化ガスが得られるように、LNGポンプ16及び流量調節弁10などの動作制御が行われる。このように、本実施形態では、LPGが冷却装置7によって冷却された上でLNGと液相同士で混合される。つまり、混合されることによるLNGの温度上昇幅は、冷却していないLPGを混合する場合に比べて小さくなる。その結果、BOGの発生量を設備処理能力等を考慮した上で許容できる範囲に抑えながら、LPGによって熱量調整が行われたLNGを主に含む液化ガスを出荷することができる。
【0027】
出荷用ライン14は、混合装置11によって熱量調整が行われた後の液化ガス(LNGとLPGとを含む液化ガス)を、液化ガス輸送装置2の輸送用タンク3に供給する。出荷用ライン14の途中には開閉弁24が設けられている。そして、出荷用ライン14に液化ガスを流すときには開閉弁24を開放し、出荷用ライン14に液化ガスを流さないときには開閉弁24を閉止する。
【0028】
加えて、本実施形態では、液化ガス出荷設備向け熱量調整システムは、出荷用ライン14から液化ガスを輸送用タンク3に充填しているときに輸送用タンク3の内部に連通されて、輸送用タンク3の内部に存在する気相成分を抜き出すガス抜出ライン15と、ガス抜出ライン15の途中に設けられ、輸送用タンク3の内部から抜き出される気相成分の圧力を調節する輸送圧力調節装置17とを備える。この輸送圧力調節装置17は、開度を調節可能な弁を用いて実現できる。このように、輸送圧力調節装置としての弁17によって、輸送用タンク3の内部から抜き出される気相成分の圧力、即ち、輸送用タンク3内の液化ガスに加わる圧力を調節することができる。その結果、輸送用タンク3内の液化ガスの温度が高くなる場合でも、弁17によって圧力を高く保つことで、液化ガスの気化を抑制することができる。
【0029】
以下の表1は、ターボ冷凍機を冷却装置7として用いた場合の運転例であり、
図1中の部位A〜部位Gの各部位での温度、圧力、流量、密度の例を示す。ガス抜出ライン15の口径は6Bである。また、LPGとしてプロパンを100%含むものを用いた例を示す。
表1に示すように、ターボ冷凍機を用いた場合には、LNGと混合される直前の部位CでのLPGを10℃に冷却することができる。そして、混合装置11によってLNGとLPGとを混合した後の部位Dでの液化ガスの温度は、約−145℃となっている。このように、混合装置11によって熱量調整が行われた後の液化ガスを低い温度に維持することができている。また、ターボ冷凍機を冷却装置7として用いた本例では、弁17を用いて、輸送用タンク3の内部から抜き出される気相成分の圧力を相対的に高くさせている。例えば、輸送用タンク3の内部から抜き出される気相成分の圧力を約0.2MPaGに調節することで、気化するLNGの量を少なくすることができている。例えば、部位Gにおいて、BOGは0.26(t/h)となっている。
【0031】
以下の表2及び表3は、フロン冷凍機又はプロピレン冷凍機を冷却装置7として用いた場合の運転例であり、
図1中の部位A〜部位Gの各部位での温度、圧力、流量、密度の例を示す。何れの場合もガス抜出ライン15の口径は10Bである。
表2及び表3に示すように、フロン冷凍機を用いた場合には、LNGと混合される直前の部位CでのLPGを−55℃に冷却することができ、プロピレン冷凍機を用いた場合には、LNGと混合される直前の部位CでのLPGを−40℃に冷却することができる。
そして、混合装置11によってLPGとLNGとを混合した後の部位Dでの液化ガスの温度は、フロン冷凍機を用いた場合には−151℃となり、プロピレン冷凍機を用いた場合には約−150℃となっている。このように、混合装置11によって熱量調整が行われた後の液化ガスを低い温度に維持することができている。その結果、フロン冷凍機の場合(表2)の場合には、部位Gにおいて、BOGは0.85(t/h)となり、プロピレン冷凍機の場合(表3)の場合には、部位Gにおいて、BOGは1.11(t/h)となっている。
【0034】
上述のように、フロン冷凍機又はプロピレン冷凍機を冷却装置7として用いた場合には、混合装置11によって熱量調整が行われた後の液化ガスの温度を、ターボ冷凍機を用いた場合に比べて更に低くできている。そのため、フロン冷凍機又はプロピレン冷凍機を冷却装置7として用いた場合、輸送圧力調節装置としての弁17を用いて、輸送用タンク3の内部から抜き出される気相成分の圧力を、上述したターボ冷凍機の場合よりも低くさせてもよい。例えば、弁17を用いて、輸送用タンク3の内部から抜き出される気相成分の圧力を約0.06MPaGに調節しても、気化するLNGの量を少なくさせることができる。但し、気化するLNGの量が多くなる場合には、予めガス抜出ライン15の口径を大きくしておき、管内を流れるガスの流速を抑制することが好ましい。
【0035】
<第2実施形態>
第2実施形態の液化ガス出荷設備向け熱量調整システムは、冷却装置7の構成が第1実施形態と異なっている。以下に第2実施形態の液化ガス出荷設備向け熱量調整システムについて説明するが、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0036】
図2は、第2実施形態の液化ガス出荷設備向け熱量調整システムの構成を示す図である。図示するように、冷却装置7は、冷媒としてのLNGと、LPG供給ライン6を流れるLPGとを熱交換させる熱交換器18を用いて構成される。具体的には、冷却装置7には、シェルアンドチューブ式の熱交換器を採用している。そして、シェルアンドチューブ式の熱交換器18において、チューブ側にLNGライン19を介してLNGを流し、シェル側にLPG供給ライン6を介してLPGを流す。また、チューブはLNGの温度変化に対応できるようにUチューブとする。例えば、LNGライン19に流すLNGは、LNG基地で保冷循環のために用いられているLNGや、都市ガス製造の原料とするガス送出用LNGなどを利用することができる。
【0037】
以下の表4は、LNGを冷媒として用いた冷却装置7の運転例であり、
図2中の部位A〜部位Iの各部位での温度、圧力、流量、密度の例を示す。ガス抜出ライン15の口径は6Bである。この構成を採用することで、LNGと混合される直前の部位CでのLPGを−110℃に冷却することができる。このように、熱交換器18ではLPGとLNGとの熱交換が行われるため、冷却後のLPGの温度をLNGの温度に近付けることができている。その結果、冷却後のLPGとLNGとを混合したときのBOGの発生量を少なくすることができる。特に、表4に示す本例では、ガス抜出ライン15(部位F、部位G)でのBOG発生量がゼロになっている。
尚、熱交換器18でのLPGの冷却に用いられた後のLNGは温度が上昇するが、例えば、気化器などに供給して気化させ、都市ガスの生成に利用することができる。或いは、発生したBOGをBOG圧縮機へ送り込んで、再液化などの処理を行ってもよい。
【0039】
<第3実施形態>
第3実施形態の液化ガス出荷設備向け熱量調整システムは、LPGを一時的に貯えることができる貯槽を備える点で上記実施形態と異なっている。以下に第3実施形態の液化ガス出荷設備向け熱量調整システムの構成について説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0040】
図3は、第3実施形態の液化ガス出荷設備向け熱量調整システムの構成を示す図である。図示するように、本実施形態の液化ガス出荷設備向け熱量調整システムは、LPG供給ライン6の途中に、冷却装置7で冷却された後のLPGを貯えるLPG貯槽20を備える。このLPG貯槽20は、一般的にコールドエバポレータ(CE)と呼ばれる設備を利用することができる。LPG貯槽20と合流部12との間のLPG供給ライン6の途中には、LPGの単位時間当たりの流量を調節するためのLPGポンプ21が設けられている。このLPGポンプ21の作用により、LPG貯槽20から合流部12へと供給されるLPGの流量が調節される。
図3では、冷却装置7として、上記第2実施形態で説明した熱交換器18を用いた場合を示しているが、冷却装置7として上記第1実施形態で説明した冷凍機を用いてもよい。
【0041】
通常、LNG運搬船やローリー車などの液化ガス輸送装置2で液化ガスを出荷するタイミングは不定期である。また、要求される液化ガスの出荷量も様々である。そのため、液化ガス輸送装置2で液化ガスを出荷する度に、冷却装置7でのLPGの冷却と、混合装置11でのLNG及び冷却後のLPGの混合とを行うようにすると、冷却装置7の起動(クールダウン操作)及び停止などをその度に行う必要が生じる。
ところが、本実施形態では、LPG貯槽20を用いて、冷却装置7で冷却された後のLPGを予め貯えておくことで、LNG運搬船やローリー車などの液化ガス輸送装置2で液化ガスを出荷するタイミングで冷却装置7の起動及び停止など行う必要が無くなる。また、冷却後のLPGをLPG貯槽20で貯えておくことができるので、冷却装置7での単位時間当たりのLPGの冷却量も、要求される液化ガスの出荷量とは別に、平準化して設定することができる。例えば、冷却装置7において一定流量のLPGを継続的に冷却させてLPG貯槽20へ貯えるといった運用が可能となる。
更に、冷却装置7として、上記第2実施形態で説明した熱交換器18を用いた場合、その熱交換器18で、一定流量のLPGと一定流量のLNGとが継続的に熱交換されることになるため、LNGライン19で発生するBOGの量も時間的にほぼ一定となる。そのため、BOGを利用し易くなる。
【0042】
また、図示は省略しているが、LPG貯槽20には加圧蒸発器を装備しておくことが好ましい。この加圧蒸発器は、LPG貯槽20の内部から取り出したLPGを例えば外気との熱交換によって気化させた上でLPG貯槽20の上部に送り込むことで、LPG貯槽20内の圧力を所望の圧力に維持するために利用できる。
【0043】
以下の表5は、LNGを冷媒として用いた冷却装置7の運転例であり、
図3中の部位A〜部位Jの各部位での温度、圧力、流量、密度の例を示す。ガス抜出ライン15の口径は10Bである。この構成を採用することで、LNGと混合される直前の部位CでのLPGを約−39℃に冷却することができる。その結果、混合後の液化ガスに含まれるLNGのうち、気化するLNGの量を少なくさせることができる。また、冷却装置7によって冷却された後の低温のLPGをLPG貯槽20に予め貯えておくことができる。
【0045】
<第4実施形態>
第4実施形態の液化ガス出荷設備向け熱量調整システムは、貯槽圧力調節装置を備える点で上記第3実施形態と異なっている。以下に第4実施形態の液化ガス出荷設備向け熱量調整システムの構成について説明するが、上記第3実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0046】
図4は、第4実施形態の液化ガス出荷設備向け熱量調整システムの構成を示す図である。図示するように、本実施形態の液化ガス出荷設備向け熱量調整システムは、LPG貯槽20の内部の気相部の圧力を調節する貯槽圧力調節装置を備える。この貯槽圧力調節装置は、不活性ガスを供給する不活性ガス供給ライン22と、その不活性ガス供給ライン22を流れる不活性ガスの流量を調節する圧力調節弁23とを有する。尚、図示は省略しているが、不活性ガス供給ライン22には不活性ガスを貯えている不活性ガス供給源が接続されている。そして、貯槽圧力調節装置22,23は、LPG貯槽20の内部の気相部の圧力を調節するためにLPG貯槽20の内部へ不活性ガスを供給する。この貯槽圧力調節装置22,23によって、LPG貯槽20の内部の気相部の負圧を防止することができる。
図4では、冷却装置7として、上記第2実施形態で説明した熱交換器18を用いた場合を示しているが、冷却装置7として上記第1実施形態で説明した冷凍機を用いてもよい。
【0047】
以下の表6は、LNGを冷媒として用いた冷却装置7の運転例であり、
図4中の部位A〜部位Jの各部位での温度、圧力、流量、密度の例を示す。ガス抜出ライン15の口径は6Bである。この構成を採用することで、LNGと混合される直前の部位CでのLPGを−110℃に冷却することができる。その結果、混合後の液化ガスに含まれるLNGのうち、気化するLNGの量を少なくさせることができる。特に、表6に示す本例では、ガス抜出ライン15(部位F、部位G)でのBOG発生量がゼロになっている。
【0048】
また、冷却装置7によって冷却された後の低温のLPGをLPG貯槽20に予め貯えておくことができる。更に、貯槽圧力調節装置22,23によってLPG貯槽20の内部の気相成分の圧力を調節することで、LPG貯槽20の内部のLPGを過冷却することができる。LPG貯槽20の気相部の圧力を不活性ガス(例えば、窒素など)により、0.1MPaG程度に保圧する。このように、貯槽圧力調節装置22,23によって、LPG貯槽20の内部の気相成分の圧力、即ち、LPG貯槽20内のLPGに加わる圧力を調節することができる。その結果、貯槽圧力調節装置22,23によって、LPG貯槽20内のLPGを過冷却することも可能になる。
【0050】
<別実施形態>
上記実施形態では、液化ガス出荷設備向け熱量調整システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
例えば、LPG供給ライン6の途中からLPGをLPGタンク5へ戻すようなLPG戻し配管を設けてもよい。特に、LPG供給ライン6の途中の、冷却装置7の下流側に上記LPG戻し配管を設けた場合、冷却装置7で冷却したLPGの全量を再びLPGタンク5へ戻すことができるため、冷却装置7の性能が十分に発揮されない起動時などに利用することができる。また、LPG供給ライン6の途中の、冷却装置7の上流側に上記LPG戻し配管を設けた場合、LPGポンプ8から送出されたLPGの一部を上記LPG戻し配管に流してLPGタンク5へ戻し、残りを冷却装置7へ供給することができる。そのため、冷却装置7で冷却するLPGの流量を少なくすることができる。
他にも、上記実施形態では、表1〜表6において具体的な数値を挙げたが、それらは例示目的で記載したものである。