(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状に形成されたインナーチューブの一端開口が密封された状態となるようにインナーチューブの一端側が一端側固定部に固定されるとともに、筒状に形成されたアウターチューブの他端開口が密封された状態となるようにアウターチューブの他端側が他端側固定部に固定され、インナーチューブの他端側がアウターチューブの一端開口を介してアウターチューブ内に挿入されて、インナーチューブの外周面とアウターチューブの内周面とが気密状態でインナーチューブとアウターチューブとが相対的に移動可能に構成されるとともに、
アウターチューブ及びインナーチューブの内側に配置されたロッドのいずれか一方の端部開口が密封された状態となるようロッドのいずれか一方の端部側が一端側固定部又は他端側固定部に固定されるとともに、アウターチューブ及びインナーチューブの内側に配置されたシリンダのいずれか一方の端部開口が密封された状態となるようにシリンダのいずれか一方の端部側が他端側固定部又は一端側固定部に固定され、ロッドの他方の端部側がシリンダの他方の端部開口に設けられたロッドガイドのロッド貫通孔を介してシリンダ内に挿入されて、かつ、シリンダ内に挿入されたロッドの筒の他方の端部にはピストンを備え、
一端側固定部と他端側固定部とが互いに近づく方向及び互いに離れる方向に移動する場合に、ロッドに設けられたピストンの外周面とシリンダの内周面とが気密状態を維持するとともにロッドの外周面とロッドガイドのロッド貫通孔の内周面とが気密状態を維持した状態で、ピストンとロッドガイドとが互いに離れる方向及び互いに近づく方向に移動可能なように構成され、
アウターチューブ及びインナーチューブの内側には、シリンダの一方の端部側を固定する固定部とピストンとの間のシリンダ内側の空間を形成する第1の気体ばね室と、ロッドの外側でかつインナーチューブ及びアウターチューブの内側の空間を形成する第2の気体ばね室と、ピストンとロッドガイドとの間のシリンダ内側の空間を形成する第3の気体ばね室と、が形成されているとともに、ロッドの内側が第3の気体ばね室内の圧縮比調整用の気体室として第3の気体ばね室と連通しており、
一端側固定部と他端側固定部とが互いに近づく方向に移動する圧縮動作時においては、第1の気体ばね室及び第2の気体ばね室の容積が小さくなって第1の気体ばね室内及び第2の気体ばね室内の気体が圧縮されることにより、一端側固定部と他端側固定部とを互いに離れる方向に付勢する反力を発生させる気体ばねが形成され、
一端側固定部と他端側固定部とが互いに離れる方向に移動する伸長動作時においては、ピストンとロッドガイドとが互いに近づく方向に移動することによって第3の気体ばね室の容積が小さくなって第3の気体ばね室内の気体が圧縮されることにより、一端側固定部と他端側固定部とを互いに近付ける方向に付勢する反力を発生させる気体ばねが形成されるように構成された緩衝器であって、
伸長動作時に圧縮された第3の気体ばね室内の気体及びオイルが第2の気体ばね室に漏れることを抑制するための第3の気体ばね室側ロッド用リップパッキンとして、ロッドの外周面と接触するリップの面が弧面に形成されたリップパッキンを備えるとともに、伸長動作時に圧縮された第3の気体ばね室内の気体及びオイルが第1の気体ばね室に漏れることを抑制するための第3の気体ばね室側ピストン用リップパッキンとして、シリンダの内周面と接触するリップの面が弧面に形成されたリップパッキンを備え、
圧縮動作時に圧縮された第1の気体ばね室内の気体及びオイルが第3の気体ばね室に漏れることを抑制するための第1の気体ばね室側ピストン用リップパッキンとして、シリンダの内周面と接触するリップの面がエッジ状に形成されたリップパッキンを備えるとともに、圧縮動作時に圧縮された第2の気体ばね室内の気体及びオイルが第3の気体ばね室に漏れることを抑制する第2の気体ばね室側ロッド用リップパッキンとして、ロッドの外周面と接触するリップの面がエッジ状に形成されたリップパッキンを備えたことを特徴とする緩衝器。
インナーチューブの一端側とロッドの一方の端部側とが一端側固定部に固定されたとともに、アウターチューブの他端側とシリンダの一方の端部側とが他端側固定部に固定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の緩衝器。
シリンダの内側に、ピストンに形成された連通路を介して第3の気体ばね室と連通する第3の気体ばね室内の圧縮比調整用の気体室を備えたことを特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
一端側固定部に固定されたロッドの一方の端部開口を介してロッドの内側及び第3の気体ばね室と連通する第3の気体ばね室内の圧縮比調整用の気体室を備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の緩衝器。
インナーチューブの一端側とシリンダの一方の端部側とが一端側固定部に固定されたとともに、アウターチューブの他端側とロッドの一方の端部側とが他端側固定部に固定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の緩衝器。
インナーチューブの内周面とシリンダの外周面との間の空間により、第3の気体ばね室と連通する第3の気体ばね室内の圧縮比調整用の気体室が構成されたことを特徴とする請求項6に記載の緩衝器。
一端側固定部が自動二輪車の車軸側に連結されて、他端側固定部が自動二輪車の車体側に連結されたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の緩衝器。
【背景技術】
【0002】
円筒状のインナーチューブの一端側が密封状態となるように一端側固定部に固定されるとともに、円筒状のアウターチューブの他端側が密封状態となるように他端側固定部に固定されて、インナーチューブの他端側が円筒状のアウターチューブの一端開口を介してアウターチューブ内に挿入されて、インナーチューブの外周面とアウターチューブの内周面とが気密状態でインナーチューブとアウターチューブとが筒の中心軸に沿って相対的に移動可能に構成され、アウターチューブ及びインナーチューブの内側には、円筒状のシリンダと円筒状のロッドとを備え、ロッドの一端開口が密封状態となるようロッドの一端側が一端側固定部に固定されるとともに、シリンダの他端開口が密封状態となるようにシリンダの他端側が他端側固定部に固定され、ロッドの他端側がシリンダの一端開口に設けられたロッドガイドのロッド貫通孔を介してシリンダ内に挿入されて、かつ、シリンダ内に挿入されたロッドの他端部にはピストンが設けられて構成された緩衝器が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
当該緩衝器の内部は、他端側固定部と、ピストンと、他端側固定部と、ピストンとの間のシリンダの内周面とで囲まれた密封空間により形成された第1の気体ばね室としてのインナー室とし、ロッドの外周面と、一端側固定部と、インナーチューブ及びアウターチューブの内周面と、他端側固定部と、シリンダの外周面とで囲まれた密封空間により形成された第2の気体ばね室としてのアウター室とし、ピストンと、ロッドガイドと、ピストンとロッドガイドとの間のシリンダの内周面とで囲まれた密封空間により形成された第3の気体ばね室としてのバランス室として、3室に区画されている。
【0004】
そして、当該緩衝器は、互いに隣り合うバランス室とインナー室とを気密状態に維持するためにピストンの外周面とシリンダの内周面との気密状態を維持するように設けられたピストン用リップパッキンと、互いに隣り合うバランス室とアウター室とを気密状態に維持するためにロッドガイドのロッド貫通孔とロッドの外周面との気密状態を維持するように設けられたロッド用リップパッキンとを備えている。
【0005】
当該緩衝器によれば、一端側固定部と他端側固定部とが互いに近づく方向に移動する圧縮動作においては、インナー室及びアウター室の容積が小さくなってインナー室内及びアウター室内の気体が圧縮されることにより、一端側固定部と他端側固定部とを互いに離れる方向に付勢する反力を発生させる気体ばねが形成され、一端側固定部と他端側固定部とが互いに離れる方向に移動する伸長動作においては、ピストンとロッドガイドとが互いに近づく方向に移動することによってバランス室の容積が小さくなってバランス室内の気体が圧縮されることにより、一端側固定部と他端側固定部とを互いに近付ける方向に付勢する反力を発生させる気体ばねが形成される。
【0006】
上述したロッド用リップパッキン及びピストン用リップパッキンは全体の形状が環状に形成されたものであり、その断面形状が
図7、
図8に示すように唇状(あるいはU状)に形成されていることからリップパッキン(あるいはUパッキン)Pと呼ばれている。環の内周側に位置するリップ部分が内周リップIU、環の外周側に位置するリップ部分が外周リップOUと呼ばれている。当該内周リップIUの内周面PFは、環の中心軸に向けて突出する頂上部を備え、当該頂上部を形成する内周部が線状となった最小径の内周縁PEを構成している。また、当該外周リップOUの外周面PGは、環の中心軸より離れる方向に向けて突出する頂上部を備え、当該頂上部を形成する外周部が線状となった最大径の内周縁PDを構成している。
【0007】
ロッド用リップパッキンの場合、
図9に示すように、ロッド用リップパッキンRPがロッドガイドRGの内周面側に設けられたパッキン装着溝PH内に装着されて、ロッドRがロッド用リップパッキンRPの環の内周孔を貫通してロッド用リップパッキンRPの内周リップIUの内周面PF(環の中心軸に近い側の面)がロッドRの外周面RFに接触する。当該内周リップIUの内周面PFは、環の中心軸に向けて突出する頂上部を備え、当該頂上部を形成する内周部が線状となった最小径の内周縁PEを構成している。即ち、最小径の内周縁PEの断面形状は、
図8に示すように、角形状(エッジ形状)となっている。
【0008】
したがって、
図9に示すように、ロッドガイドRGのパッキン装着溝PH内に装着されたロッド用リップパッキンRPの内周リップIUと外周リップOUとの間に流体圧が加わって内周リップIUの内周面PFがロッドRの外周面RFに接触する状態となった場合、内周リップIUの内周面PFの角形状の最小径の内周縁PEとロッドRの外周面RFとの接触面圧PMが最大となってシール性能が維持される。同様に、ピストン用リップパッキンの場合、ピストン用リップパッキンがピストンの外周面側に設けられたパッキン装着部に装着され、ピストン用リップパッキンの外周リップの外周面PG(環の中心軸より遠い側の面)がシリンダの内周面に接触する。当該外周リップOUの外周面PGは、環の中心軸より離れる方向に向けて突出する頂上部を備え、頂上部を形成する外周部が線状となった最大径の外周縁PDを構成している。即ち、最大径の外周縁PDの断面形状は、
図8に示すように、角形状(エッジ形状)となっている。
【0009】
したがって、ピストンのパッキン装着部に装着されたピストン用リップパッキンの外周リップOUと内周リップIUとの間に流体圧が加わって外周リップOUの外周面PGがシリンダの内周面に接触する状態となった場合、外周リップOUの外周面PGの角形状の最大径の外周縁PDとシリンダの内周面との接触面圧が最大となってシール性能が維持される。尚、インナー室内及びアウター室内には圧縮比調整用のオイルが封入されており、また、バランス室内には摺動油膜形成用の少量のオイルが封入されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1乃至
図4に基づいて実施形態1の緩衝器1について説明する。尚、本明細書においては、
図1等において矢印で示した側を一端側及び他端側と定義して説明する。
【0025】
図1に示すように、緩衝器1は、一端側固定部2と、他端側固定部3と、アウターチューブ11と、インナーチューブ12と、シリンダ21と、ロッド22と、ピストン23と、ロッドガイド36と、複数の気体ばね室と、互いに隣り合う気体ばね室と気体ばね室とを気密状態に維持するためのリップパッキンとを備える。
【0026】
緩衝器1は、円筒状に形成されたインナーチューブ12の一端開口が密封された状態となるようにインナーチューブ12の一端側が一端側固定部2に固定されるとともに、円筒状に形成されたアウターチューブ11の他端開口が密封された状態となるようにアウターチューブ11の他端側が他端側固定部3に固定され、インナーチューブ12の他端側がアウターチューブ11の一端開口を介してアウターチューブ11内に挿入されて、インナーチューブ12の外周面とアウターチューブ11の内周面とが気密状態を形成するようにインナーチューブ12とアウターチューブ11とがインナーチューブ12及びアウターチューブ11の中心軸13に沿って相対的に移動可能に構成されたことで、一端側固定部2と他端側固定部3とが、圧縮行程では互いに近づく方向に移動し、伸長行程では互いに離れる方向に移動するように構成されている。
【0027】
また、アウターチューブ11及びインナーチューブ12の内側には、インナーチューブ12の筒の内径よりも小径で円筒状に形成されたシリンダ21と、シリンダ21の筒の内径よりも小径で円筒状に形成されたロッド22と、を備える。
【0028】
ロッド22の一端開口が密封された状態となるようロッド22の一端側が一端側固定部2に固定されるとともに、シリンダ21の他端開口が密封された状態となるようにシリンダ21の他端側が他端側固定部3に固定され、ロッド22の他端側がシリンダ21の一端開口に設けられたロッドガイド36のロッド貫通孔36hを介してシリンダ21内に挿入されて、かつ、シリンダ21内に挿入されたロッド22の他端にはピストン23を備える。
【0029】
尚、シリンダ21は、例えば一端側シリンダ21Lの他端と他端側シリンダ21Uの一端とが連結されて構成され、他端側シリンダ21Uの他端が他端側固定部3に固定され、一端側シリンダ21Lの一端開口にロッドガイド36が設けられている。
【0030】
アウターチューブ11、インナーチューブ12、シリンダ21、ロッド22、ピストン23は、それぞれが中心軸13の同軸状に設けられる。
【0031】
即ち、一端側固定部2と他端側固定部3とが互いに近づく方向及び互いに離れる方向に移動する場合に、ロッド22の他端に設けられたピストン23の外周面23fとシリンダ21の内周面21uとが気密状態を維持するとともに、ロッド22の外周面RFとロッドガイド36のロッド貫通孔36hの内周面とが気密状態を維持した状態で、ピストン23とロッドガイド36とが中心軸13に沿って互いに離れる方向及び互いに近づく方向に移動可能なように構成される。
【0032】
緩衝器1の内側は、第1の気体ばね室としてのインナー室50と、第2の気体ばね室としてのアウター室60と、第3の気体ばね室としてのバランス室70と、に区画形成されている。そして、互いに隣り合うバランス室70とインナー室50とを気密状態に維持するためのリップパッキンと、互いに隣り合うバランス室70とアウター室60とを気密状態に維持するためのリップパッキンとを備える。
【0033】
インナー室50は、他端側固定部3と、ピストン23と、他端側固定部3とピストン23との間のシリンダ21の内周面と、サブタンク38Xの外周面とで囲まれた密封空間により形成される。
【0034】
アウター室60は、ロッド22の外周面RFと、一端側固定部2と、インナーチューブ12及びアウターチューブ11の内周面と、他端側固定部3と、シリンダ21の外周面と、ロッドガイド36の一端とで囲まれた密封空間により形成される。
【0035】
バランス室70は、ピストン23と、ロッドガイド36と、ピストン23とロッドガイド36との間のシリンダ21の内周面とで囲まれた空間により形成される。
【0036】
ロッド22の内側の気体室22Uがピストン23に形成された連通路23Bを介してバランス室70と連通するように構成され、円筒状のロッド22が、バランス室70内の圧縮比調整用の気体室22Uを形成するサブタンク22Xとして機能する。
【0037】
また、ピストン23の他端側には、ピストン23に形成された連通路23Bを介してバランス室70内及びロッド22の気体室22Uに連通するバランス室70内の圧縮比調整用の気体室38Uを形成するシリンダ21内のサブタンク38Xが設けられる。
【0038】
バランス室70におけるピストン23の一端側とロッドガイド36の他端側との間には、ロッド22の外周面RFの外側をロッド22の中心軸13に沿って螺旋状に延長するリバウンドスプリング40が設けられる。
【0039】
実施形態1では、
図2に示すように、バランス室70の一端側に最も近い位置に設けられたロッド用リップパッキン72Bとバランス室70の他端側に最も近い位置に設けられたピストン用リップパッキン71Bとが、互いにリップが向かい合うように配置されて、緩衝器1の伸長動作時に圧縮されたバランス室70内の気体及び摺動用のオイルがアウター室60やインナー室50に漏れることを抑制するためのバランス室70側のロッド用リップパッキン72B及びバランス室70側のピストン用リップパッキン71Bとして機能する。
【0040】
そして、
図3に示すように、バランス室70側のロッド用リップパッキン72B及びバランス室70側のピストン用リップパッキン71Bとして、内周リップ75の最小径の内周縁76の断面形状が弧面に形成されたとともに、外周リップ77の最大径の外周縁78の断面形状が弧面に形成されたリップパッキンを用いる。
【0041】
図4に示すように、バランス室70側のロッド用リップパッキン72Bがロッドガイド36に形成されたパッキン装着溝PH内に装着され、緩衝器1の伸長動作時において、バランス室70内の気体が圧縮され、バランス室70側のロッド用リップパッキン72Bの外周リップ77と内周リップ75との間に油圧が加わった場合、バランス室70側のロッド用リップパッキン72Bの最小径の内周縁76とロッド22の外周面RFとの接触面圧PAは、最小径の内周縁PEがエッジ形状(
図8参照)に形成されている場合の接触面圧PM(
図9参照)と比べて小さくなる。
【0042】
また、
図2に示すように、バランス室70側のピストン用リップパッキン71Bがピストン23に形成されたパッキン装着溝内に装着され、緩衝器1の伸長動作時において、バランス室70内の気体が圧縮され、バランス室70側のピストン用リップパッキン71Bの外周リップ77と内周リップ75との間に流体圧(油圧や気体圧)が加わった場合、バランス室70側のピストン用リップパッキン71Bの最大径の外周縁78とシリンダ21の内周面21uとの接触面圧は、最大径の外周縁PDがエッジ形状(
図8参照)に形成されている場合と比べて小さくなる。
【0043】
従って、緩衝器1の圧縮動作時及び伸長動作時のフリクションが低減し、圧縮動作及び伸長動作がスムーズになる。
【0044】
尚、バランス室70側のロッド用リップパッキン72B及びバランス室70側のピストン用リップパッキン71Bの最小径の内周縁76の弧面は、中心軸13に向けて突出する弧面に形成され、バランス室70側のロッド用リップパッキン72B及びバランス室70側のピストン用リップパッキン71Bの最大径の外周縁78の弧面は、中心軸13より離れる方向に向けて突出する弧面に形成される。
【0045】
バランス室70側のロッド用リップパッキン72B及びバランス室70側のピストン用リップパッキン71Bの最小径の内周縁76の弧面の半径寸法(R寸法)及び最大径の外周縁78の弧面の半径寸法(R寸法)は、0.1mmより大きく、かつ、0.4mmよりも小さい寸法に形成される。好ましくは、当該弧面の半径寸法は、0.2mm〜0.3mmの範囲の寸法に形成されることが望ましい。当該0.2mm〜0.3mmの範囲の寸法の弧面に形成すれば、最小径の内周縁76とロッド22の外周面RFとの間、及び、最大径の外周縁78とシリンダ21の内周面21uとの間での油膜保持性が良好となり、圧縮動作時及び伸長動作時のフリクションが低減して、緩衝器1の圧縮動作及び伸長動作がスムーズになる。
【0046】
尚、当該弧面の半径寸法を、0.1mm以下とした場合、緩衝器1の圧縮動作時及び伸長動作時の起動トルクの値と動フリクションの値との差が大きく、圧縮動作と伸長動作との切り替わり時の荷重が大きくなって、最小径の内周縁76とロッド22の外周面RFとの間、及び、最大径の外周縁78とシリンダ21の内周面21uとの間の油膜切れが生じる可能性があり、動フリクションが増大する要因になりやすいという懸念があり、望ましくない。また、当該弧面の半径寸法を、0.4mm以上とした場合、最小径の内周縁76とロッド22の外周面RFとの間、及び、最大径の外周縁78とシリンダ21の内周面21uとの間のシール性能が損なわれる可能性があり、望ましくない。
【0047】
さらに、バランス室70側のロッド用リップパッキン72Bの最小径の内周縁76とロッド22の外周面RFとの接触面圧、及び、バランス室70側のピストン用リップパッキン71Bの最大径の外周縁78とシリンダ21の内周面21uとの接触面圧が小さくなっているため、バランス室70内の摺動潤滑用のオイルが、バランス室70からアウター室60に移動したり、あるいは、バランス室70からインナー室50に移動する可能性が全く無いとは言えない。しかしながら、仮に万が一、バランス室70内の摺動潤滑用のオイルが、バランス室70からアウター室60に移動する、あるいは、バランス室70からインナー室50に移動するとしても、バランス室70内の封入された摺動潤滑用のオイルは少量であるため、緩衝器1内のあらかじめ設定された各気体ばね室の反力特性に大きな影響を与える可能性は少なく、各気体ばね室の反力特性は安定化する。
【0048】
尚、バランス室70側のロッド用リップパッキン72Bとして、パッキン装着溝の周面と接触する最大径の外周縁78の断面形状がエッジ形状(
図8の参照)に形成されたリップパッキンを使用すれば、外周リップ77と内周リップ75との間に流体圧が加わった場合、パッキン装着溝の周面72Br(
図2参照)と最大径の外周縁78との接触面圧が最大になるので、パッキン装着溝の周面72Brと最大径の外周縁78との間を通過しようとするバランス室70からアウター室60への気体及びオイルの移動が防止され、各気体ばね室の反力特性の安定性が向上する。
【0049】
また、バランス室70側のピストン用リップパッキン71Bとして、パッキン装着溝の周面71Br(
図2参照)と接触する最小径の内周縁76の断面形状がエッジ形状に形成されたリップパッキンを使用すれば、外周リップ77と内周リップ75との間に流体圧が加わった場合、パッキン装着溝の周面71Brと最小径の内周縁76との接触面圧が最大になるので、パッキン装着溝の周面71Brと最小径の内周縁76との間を通過しようとするバランス室70からインナー室50への気体及びオイルの移動が防止され、各気体ばね室の反力特性の安定性が向上する。
【0050】
一方、バランス室70側のロッド用リップパッキン以外のアウター室60側のロッド用リップパッキであってリップが一端側固定部2を向くように設置されるアウター室60側のロッド用リップパッキン72A、72Cとして、ロッド22の外周面RFと接触する内周リップ75の最小径の内周縁76の断面形状がエッジ形状に形成され、かつ、パッキン装着溝の周面72Ar、72Crと接触する外周リップ77の最大径の外周縁78の断面形状がエッジ形状に形成されたリップパッキン、即ち、
図8で示した構成のリップパッキンを使用する。さらに、バランス室70側のピストン用リップパッキン以外のインナー室50側のピストン用リップパッキンであってリップが他端側固定部3を向くように設置されるインナー室50側のピストン用リップパッキン71Aとして、シリンダ21の内周面21uと接触する外周リップ77の最大径の外周縁78の断面形状がエッジ形状に形成され、パッキン装着溝の周面71Arと接触する内周リップ75の最小径の内周縁76の断面形状がエッジ形状に形成されたリップパッキン、即ち、
図8で示した構成のリップパッキンを使用する。
【0051】
この場合、緩衝器1の圧縮動作時において、外周リップ77と内周リップ75との間に流体圧が加わった場合、アウター室60側のロッド用リップパッキン72A、72Cの最小径の内周縁76とロッド22の外周面RFとの接触面圧が最大になるとともに、最大径の外周縁78とパッキン装着溝の周面72Ar、72Crとの接触面圧が最大になる。また、インナー室50側のピストン用リップパッキン71Aの最大径の外周縁78とシリンダ21の内周面21uとの接触面圧が最大になるとともに、最小径の内周縁76とパッキン装着溝の周面71Arとの接触面圧が最大になる。
【0052】
従って、アウター室60からバランス室70への気体及びオイルの移動、及び、インナー室50からバランス室70への気体及びオイルの移動が阻止され、緩衝器1内のあらかじめ設定された各気体ばね室の反力特性が安定する。
【0053】
実施形態1による気体ばね式の緩衝器1によれば、圧縮動作時及び伸長動作時のフリクションを低減できるとともに、インナー室50からバランス室70への圧縮比調整用オイルの移動、及び、アウター室60からバランス室70への圧縮比調整用オイルの移動を防止できて、あらかじめ設定された各気体ばね室の反力特性の安定化が図れる。即ち、圧縮動作時及び伸長動作時のフリクションの低減、及び、各気体ばね室の反力特性の安定化の両立を図ることができる気体ばね式の緩衝器1を提供できる。
【0054】
実施形態1の緩衝器1は、例えば、自動二輪車等のフロントフォークを構成する左右の緩衝器のうちの少なくとも一方の緩衝器として使用されるものである。当該緩衝器1は、例えば、左右のフロントフォークのうちの一方にダンパを有するダンパ脚と他方にばねを有するばね脚とからなる左右で機能が分離されたフロントフォークにおいて、当該ばね脚に使用されるばねが金属ばねを使用せず、気体ばねを使用した構成の緩衝器であっても良い。
【0055】
緩衝器1は、例えば、一端側固定部2が自動二輪車の車軸側に連結されるとともに、他端側固定部3が自動二輪車の車体側であるフレーム等に連結されることによって、ロッド22が下方に位置してシリンダ21が上方に位置される倒立タイプのフロントフォークを構成する。
【0056】
当該フロントフォークは、フロントフォークの下端(インナーチューブ12及びロッド22の一端)とフロントフォークの上端(アウターチューブ11及びシリンダ21の他端)とが互いに近づく方向に動作する圧縮動作、及び、フロントフォークの下端とフロントフォークの上端とが互いに離れる方向に動作する伸長動作を行う。
【0057】
そして、フロントフォークの下端とフロントフォークの上端とが互いに近づく方向に移動する圧縮動作においては、インナー室50及びアウター室60の容積が小さくなってインナー室50内及びアウター室60内の気体が圧縮されることにより、フロントフォークの下端とフロントフォークの上端とを互いに離れる方向に付勢する反力を発生させる気体ばねが形成される。
【0058】
また、フロントフォークの下端とフロントフォークの上端とが互いに離れる方向に移動する伸長動作においては、ピストン23とロッドガイド36とが互いに近づく方向に移動するので、リバウンド気体ばね室70の容積が小さくなってバランス室70内における気体が圧縮される。このとき、バランス室70及びバランス室70と連通しているロッド22によるサブタンク22X内及びシリンダ21内のサブタンク38X内に密封されている気体が気体ばねとして作用し、フロントフォークを圧縮させる方向の反力が発生する。
【0059】
以下、緩衝器1の全体的な構成の詳細を
図1、
図2に基づいて説明する。
【0060】
アウターチューブ11の一端開口側の内周面にはシール部材13C、ダストシール13Dが設けられ、アウターチューブ11の内周面には複数のブッシュ13Z及び13Bが設けられており、当該ブッシュ13Z、13B、シール部材13C、ダストシール13Dを介してインナーチューブ12の外周面とアウターチューブ11の内周面とが気密状態を維持しながら摺動自在に構成されている。尚、インナーチューブ12を保護する図外のダストカバーが、アウターチューブ11に摺接傷を付けない様にストッパーリング13Eがアウターチューブ11の一端開口側の外周面に嵌め込まれている。
【0061】
ロッドガイド36は、蓋部36Aと、一端側パッキン装着用ピース36Bと、他端側パッキン装着用ピース36Cと、ばね座兼パッキン押え36Dとが組み合わされて構成される。
【0062】
蓋部36A、一端側パッキン装着用ピース36B、他端側パッキン装着用ピース36C、ばね座兼パッキン押え36Dは、それぞれ、中央にロッド22を貫通させるためのロッド貫通孔36h、36i、36j、36kを備えた環状に形成された部材である。蓋部36Aは、シリンダ21の一端開口側の内周面に形成されたねじ部36aとねじ嵌合するねじ部36bを外周面に備え、ねじ部36aとねじ部36bとが締結されてシリンダ21の一端開口の内側にねじ嵌合により固定される。蓋部36Aのロッド貫通孔36hの内周面にはブッシュ37が設けられ、ロッド22の外周面RFとブッシュ37の内周面とが摺動可能に構成されている。
【0063】
一端側パッキン装着用ピース36Bは、蓋部36Aの他端に取付けられ、外周面に形成されたOリング装着用溝内にはOリング73Bが装着され、一端面側及び他端面側にはそれぞれロッド貫通孔36iを中心としたパッキン装着用溝が形成される。一端面側に形成されたパッキン装着用溝には上述したアウター室60側のロッド用リップパッキン72Aが装着され、他端面側に形成されたパッキン装着用溝には上述したアウター室60側のロッド用リップパッキン72Cが装着されている。
【0064】
他端側パッキン装着用ピース36Cは、一端側パッキン装着用ピース36Bの他端面側に設置され、外周面に形成されたOリング装着用溝内にはOリング73Cが装着され、他端面側にはロッド貫通孔36jを中心としたパッキン装着用溝が形成され、当該パッキン装着用溝には上述したバランス室70側のロッド用リップパッキン72Bが装着されている。
【0065】
ばね座兼パッキン押え36Dは、他端側パッキン装着用ピース36Cの他端面側に設置され、止輪42Aによってシリンダ21の内周面に固定されていることによって、他端側パッキン装着用ピース36C、及び、他端側パッキン装着用ピース36Cのパッキン装着用溝に装着されたバランス室70側のロッド用リップパッキン72Bが他端側に移動しないように阻止するとともに、リバウンドスプリング40の一端が固定されたばね座として機能する。
【0066】
ロッド22の他端側がロッドガイド36のロッド貫通孔36hを通過してシリンダ21内に挿入され、かつ、シリンダ21内に挿入されたリバウンドスプリング40の螺旋中央孔を通過した後のロッド22の他端にはピストン23が取り付けられている。即ち、柱状のピストン23の一端側の柱中心側には、ロッド22の他端部を挿入するための挿入孔23cが形成されており、挿入孔23cの内周面に形成されたねじ部23aとねじ嵌合するねじ部23bをロッド22の他端部の外周面に備え、ねじ部23aとねじ部23bとが締結されてロッド22の他端部にピストン23の一端開口側がねじ嵌合により固定されている。挿入孔23cの外周面の外径がリバウンドスプリング40の螺旋中央孔の内径よりも小径に形成されて挿入孔23cの外周面がリバウンドスプリング40の螺旋中央孔の他端開口から螺旋中央孔内に入り込むとともに、当該挿入孔23cの外周面の他端側には当該外周面より拡径した面であるばね衝突面23dが形成され、リバウンドスプリング40の他端が当該ばね衝突面23dに衝突することで一定以上の伸長動作が阻止される。
【0067】
ピストン23は、シリンダ21の内周面と対向する外周面の一端側と他端側とにそれぞれピストン23の中心軸13を中心とした円環状のパッキン装着用溝を備えるとともに、外周面の一端側にはピストンの中心軸13を中心とした円環状のピストンリング装着溝が形成されている。そして、ピストンリング装着溝に装着されたピストンリング24とシリンダ21の内周面21uとの接触によりピストン23の摺動性を向上させるとともに、上述したように、外周面の他端側のパッキン装着用溝内にインナー室50側のピストン用リップパッキン71Aが装着され、外周面の一端側のパッキン装着用溝内にバランス室70側のピストン用リップパッキン71Bが装着されている。
【0068】
ピストン23の他端側には、サブタンク連結部を備える。サブタンク連結部は、外周面の径がピストン23の外周面の径よりも小径の筒部に形成されている。サブタンク38Xは一端開口他端閉塞の中空棒状容器により形成される。サブタンク連結部の筒の他端側外周面には、一端開口側の内周面に形成されたねじ部25aとねじ嵌合するねじ部25bを備え、ねじ部25aとねじ部25bとが締結されてピストン23の他端側のサブタンク連結部にサブタンク38Xの一端開口側がねじ嵌合により固定されている。38aはサブタンク連結部のシール部材である。
【0069】
ピストン23の内部には、サブタンク38X内の気体室38Uとロッド22の内側の気体室22Uとをバランス室70に連通させるための連通路23Bが形成されている。即ち、バランス室70と連通するロッド22の内側の気体室22Uを区画するロッド22によるサブタンク22Xを備えているので、バランス室70の容積を拡大でき、高圧力の状況下でも圧縮比を下げることができる。従って、伸長動作時の伸切付近での反力特性が安定化し、操縦安定性を向上させることができる。
【0070】
また、シリンダ21の内側に、ピストン23に形成された連通路23Bを介してバランス室70と連通するバランス室70内の圧縮比調整用の気体室38Uを形成するサブタンク38Xを備えたことによって、バランス室70の容積を拡大でき、高圧力の状況下でも圧縮比を下げることができるので、伸長動作時の伸切付近での反力特性が安定化し、操縦安定性を向上させることができる。そして、サブタンク22X及びサブタンク38Xを備えたことによって、伸長動作時の伸切付近での反力特性が安定化するという効果が向上する。
【0071】
シリンダ21の一端側外周部には、インナーチューブ12の内周面と環状間隙を介する振れ止めカラー21Zが取着されている。
【0072】
図1に示すように、例えば自動二輪車の車軸に連結される一端側固定部2は、ブラケット32と、ボトムピース33と、ボトムボルト34とを備える。
【0073】
ボトムピース33は、インナーチューブ12の一端開口を密封するようにインナーチューブ12の一端開口に取付けられる。
【0074】
ブラケット32は、ボトムピース33が取り付けられたインナーチューブ12の一端を嵌合するための嵌合部32Aと、車軸を連結するための連結孔32Bと、ボトムボルト34が装着されるボトムボルト装着孔32Cとを備える。ロッド22の下端部が、嵌合部32Aに挿入されたボトムピース33の中央孔を通過してボトムボルト装着孔32Cに突出して、ボトムボルト装着孔32Cに装着されるボトムボルト34に螺着されるとともに、ロックナット35で固定されている。一端側固定部2においては、Oリング等のシール部材63A、63B、74等によって、インナーチューブ12内及びロッド22内と外部との気密状態が維持されている。
【0075】
ボトムボルト34にはロッド22の一端開口を介してロッド22の内側に連通する気圧調整部65が設けられ、当該気圧調整部65により、ロッド22の内側空間から外側への気体の流出を阻止するとともに、ロッド22の内側の気体室22Uを介したバランス室70内の気体の圧縮比調整時においてはバランス室70の気体圧を調整することができる。
【0076】
他端側固定部3は、アウターチューブ11の他端部と、アウターチューブ11及びシリンダ21の他端開口を気密状態に塞ぐキャップ30とボルト部31とにより構成される。そして、アウターチューブ11及びシリンダ21の他端開口がキャップ30とボルト部31とで塞がれたアウターチューブ11の他端部が例えば自動二輪車の車体側のフレーム等に連結される。他端側固定部3においては、Oリング等のシール部材52、61A、61B等により、アウターチューブ11内及びシリンダ21内と外部との気密状態が維持されている。
【0077】
ボルト部31には、インナー室50内の封入気体圧を調整するためのインナー室気体圧調整部53Aと、アウター室60内の封入気体圧を調整するためのアウター室気体圧調整部53Bとが設けられている。
【0078】
尚、一端側固定部2に、ロッド22の一端開口を介してロッド22の内側の気体室22Uと連通する図外のサブタンクを設けるようにすれば、バランス室70の容積をさらに拡大でき、高圧力の状況下でも圧縮比を下げることができる。すなわち、一端側固定部2に固定されたロッド22の一方の端部開口を介してロッド22の内側の気体室22U及びバランス室70と連通するバランス室70内の圧縮比調整用の気体室を形成する図外のサブタンクを設けるようにすれば、バランス室70の容積をさらに拡大でき、高圧力の状況下でも圧縮比を下げることができる。
【0079】
サブタンクとしては、少なくとも、バランス室70と連通するロッド22の内側の気体室22Uを形成するサブタンク22Xを備えていればよい。
【0081】
実施形態2による緩衝器1Aを
図5、
図6及び
図3、
図4に基づいて説明する。
【0082】
緩衝器1Aは、円筒状に形成されたインナーチューブ12Aの一端開口が密封された状態となるようにインナーチューブ12Aの一端側が一端側固定部2Aに固定されるとともに、円筒状に形成されたアウターチューブ11Aの他端開口が密封された状態となるようにアウターチューブ11Aの他端側が他端側固定部3Aに固定され、インナーチューブ12Aの他端側がアウターチューブ11Aの一端開口を介してアウターチューブ11A内に挿入されて、インナーチューブ12Aの外周面とアウターチューブ11Aの内周面とが気密状態を形成するようにインナーチューブ12Aとアウターチューブ11Aとがインナーチューブ12A及びアウターチューブ11Aの中心軸13Aに沿って相対的に移動可能に構成されたことで、一端側固定部2Aと他端側固定部3Aとが互いに近づく方向及び互いに離れる方向に移動するように構成されている。
【0083】
また、アウターチューブ11A及びインナーチューブ12Aの内側には、インナーチューブ12Aの筒の内径よりも小径で円筒状に形成されたシリンダ21Aと、シリンダ21Aの筒の内径よりも小径で円筒状に形成されたロッド22Aと、を備える。
【0084】
シリンダ21Aの一端開口が密封された状態となるようにシリンダ21Aの一端側が他端側固定部2Aに固定され、ロッド22Aの他端開口が密封された状態となるようロッド22Aの他端側が他端側固定部3Aに固定されるとともに、ロッド22Aの一端側がシリンダ21Aの他端開口に設けられたロッドガイド360のロッド貫通孔360hを介してシリンダ21A内に挿入されて、かつ、シリンダ21A内に挿入されたロッド22Aの一端部にはピストン230を備える。
【0085】
アウターチューブ11A、インナーチューブ12A、シリンダ21A、ロッド22A、ピストン230、ロッドガイド360は、それぞれが中心軸13Aの同軸状に設けられる。
【0086】
そして、一端側固定部2Aと他端側固定部3Aとが互いに近づく方向及び互いに離れる方向に移動する場合に、ロッド22Aの一端部に設けられたピストン230の外周面230fとシリンダ21Aの内周面210uとが気密状態を維持するとともに、ロッド22Aの外周面RFとロッドガイド360のロッド貫通孔360hの内周面とが気密状態を維持した状態で、ピストン230とロッドガイド360とが中心軸13Aに沿って互いに離れる方向及び互いに近づく方向に移動可能なように構成される。
【0087】
図6に示すように、ピストン230の他端側とロッドガイド360の一端側との間には、ロッド22Aの外周面RFの外側をロッド22Aの中心軸13Aに沿って螺旋状に延長するリバウンドスプリング40Aが設けられる。
【0088】
ロッド22Aの内側の気体室がピストン230に形成された連通路230Bを介して第3の気体ばね室としてのバランス室70Aと連通するように構成され、円筒状のロッド22Aが、バランス室70A内の圧縮比調整用の気体室を形成するサブタンクとして機能する。
【0089】
緩衝器1Aの内側は、第1の気体ばね室としてのインナー室50Aと、第2の気体ばね室としてのアウター室60Aと、第3の気体ばね室としてのバランス室70Aと、に区画形成されている。そして、互いに隣り合うバランス室70Aとインナー室50Aとを気密状態に維持するためのリップパッキンと、互いに隣り合うバランス室70Aとアウター室60Aとを気密状態に維持するためのリップパッキンとを備える。
【0090】
インナー室50Aは、一端側固定部2Aとピストン230と一端側固定部2Aとピストン230との間のシリンダ21Aの内周面とで囲まれた空間により形成される。
【0091】
アウター室60Aは、ロッド22Aの外周面RFと他端側固定部3Aとインナーチューブ12A及びアウターチューブ11Aの内周面とロッドガイド360とで囲まれた密封空間により形成される。
【0092】
バランス室70Aは、ピストン230とロッドガイド360とピストン230とロッドガイド360との間のシリンダ21Aの内周面210uとで囲まれた空間により形成される。
【0093】
実施形態2では、
図6に示すように、バランス室70Aの他端側に最も近い位置に設けられたロッド用リップパッキン720Bとバランス室70Aの一端側に最も近い位置に設けられたピストン用リップパッキン710Bとが、互いにリップが向かい合うように配置されて、緩衝器1の伸長動作時に圧縮されたバランス室70A内の気体及び摺動用のオイルがアウター室60Aやインナー室50Aに漏れることを抑制するバランス室70A側のロッド用リップパッキン720B及びバランス室70A側のピストン用リップパッキン710Bとして機能する。
【0094】
そして、
図3に示すように、バランス室70A側のロッド用リップパッキン720B及びバランス室70A側のピストン用リップパッキン710Bとして、内周リップ75の最小径の内周縁76の断面形状が弧面に形成されたとともに、外周リップ77の最大径の外周縁78の断面形状が弧面に形成されたリップパッキンを用いる。
【0095】
図4に示すように、バランス室70A側のロッド用リップパッキン720Bがロッドガイド360に形成されたパッキン装着溝PH内に装着され、緩衝器1Aの伸長動作時において、バランス室70A内の気体が圧縮され、バランス室70A側のロッド用リップパッキン720Bの外周リップ77と内周リップ75との間に流体圧が加わった場合、バランス室70A側のロッド用リップパッキン720Bの最小径の内周縁76とロッド22Aの外周面RFとの接触面圧PAは、最小径の内周縁76がエッジ形状(
図8参照)に形成されている場合の接触面圧PM(
図9参照)と比べて小さくなる。
【0096】
また、
図6に示すように、バランス室70A側のピストン用リップパッキン710Bがピストン230に形成されたパッキン装着溝内に装着され、緩衝器1Aの伸長動作時において、バランス室70A内の気体が圧縮され、バランス室70A側のピストン用リップパッキン710Bの外周リップ77と内周リップ75との間に流体圧(油圧や気体圧)が加わった場合、バランス室70A側のピストン用リップパッキン710Bの最大径の外周縁78とシリンダ21Aの内周面210uとの接触面圧は、最大径の外周縁78がエッジ形状(
図8参照)に形成されている場合と比べて小さくなる。
【0097】
従って、緩衝器1Aの圧縮動作時及び伸長動作時のフリクションが低減し、圧縮動作及び伸長動作がスムーズになる。
【0098】
尚、バランス室70A側のロッド用リップパッキン720B及びバランス室70A側のピストン用リップパッキン710Bの最小径の内周縁76の弧面は、中心軸13Aの中心に向けて突出する弧面に形成され、バランス室70A側のロッド用リップパッキン720B及びバランス室70A側のピストン用リップパッキン710Bの最大径の外周縁78の弧面は、中心軸13Aの中心より離れる方向に向けて突出する弧面に形成される。
【0099】
バランス室70A側のロッド用リップパッキン720B及びバランス室70A側のピストン用リップパッキン710Bの最小径の内周縁76の弧面の半径寸法(R寸法)及び最大径の外周縁78の弧面の半径寸法(R寸法)は、0.1mmより大きく、かつ、0.4mmよりも小さい寸法に形成される。好ましくは、当該弧面の半径寸法は、0.2mm〜0.3mmの範囲の寸法に形成されることが望ましい。当該0.2mm〜0.3mmの範囲の寸法の弧面に形成すれば、最小径の内周縁76とロッド22Aの外周面RFとの間、及び、最大径の外周縁78とシリンダ21Aの内周面210uとの間での油膜保持性が良好となり、圧縮動作時及び伸長動作時のフリクションが低減して、緩衝器1Aの圧縮動作及び伸長動作がスムーズになる。
【0100】
尚、当該弧面の半径寸法を、0.1mm以下とした場合、緩衝器1Aの圧縮動作時及び伸長動作時の起動トルクの値と動フリクションの値との差が大きく、圧縮動作と伸長動作との切り替わり時の荷重が大きくなって、最小径の内周縁76とロッド22Aの外周面RFとの間、及び、最大径の外周縁78とシリンダ21Aの内周面21uとの間の油膜切れを生じる可能性があり、動フリクションが増大する要因になりやすいという懸念があり、望ましくない。また、当該弧面の半径寸法を、0.4mm以上とした場合、最小径の内周縁76とロッド22Aの外周面RFとの間、及び、最大径の外周縁78とシリンダ21Aの内周面210uとの間のシール性能が損なわれる可能性があり、望ましくない。
【0101】
さらに、バランス室70A側のロッド用リップパッキン720Bの最小径の内周縁76とロッド22Aの外周面RFとの接触面圧、及び、バランス室70A側のピストン用リップパッキン710Bの最大径の外周縁78とシリンダ21Aの内周面210uとの接触面圧が小さくなっているため、バランス室70A内の摺動潤滑用のオイルが、バランス室70Aからアウター室60Aに移動したり、あるいは、バランス室70Aからインナー室50Aに移動する可能性が全く無いとは言えない。しかしながら、仮に万が一、バランス室70A内の摺動潤滑用のオイルが、バランス室70Aからアウター室60Aに移動する、あるいは、バランス室70Aからインナー室50Aに移動するとしても、バランス室70A内の封入された摺動潤滑用のオイルは少量であるため、緩衝器1A内のあらかじめ設定された各気体ばね室の反力特性に大きな影響を与える可能性は少なく、各気体ばね室の反力特性は安定化する。
【0102】
尚、バランス室70A側のロッド用リップパッキン720Bとして、パッキン装着溝の周面と接触する最大径の外周縁78の断面形状がエッジ形状(
図8の参照)に形成されたリップパッキンを使用すれば、外周リップ77と内周リップ75との間に流体圧が加わった場合、パッキン装着溝の周面と最大径の外周縁78との接触面圧が最大になるので、パッキン装着溝の周面と最大径の外周縁78との間を通過しようとするバランス室70Aからアウター室60Aへの気体及びオイルの移動が防止され、各気体ばね室の反力特性の安定性が向上する。
【0103】
また、バランス室70A側のピストン用リップパッキン710Bとして、パッキン装着溝の周面と接触する最小径の内周縁76の断面形状がエッジ形状に形成されたリップパッキンを使用すれば、外周リップ77と内周リップ75との間に流体圧が加わった場合、パッキン装着溝の周面と最小径の内周縁76との接触面圧が最大になるので、パッキン装着溝の周面と最小径の内周縁76との間を通過しようとするバランス室70Aからインナー室50Aへの気体及びオイルの移動が防止され、各気体ばね室の反力特性の安定性が向上する。
【0104】
一方、バランス室70A側のロッド用リップパッキン以外のアウター室側ロッド用リップパッキンであってリップが他端側固定部3Aを向くように設置されるアウター室60側のロッド用リップパッキン720Aとして、ロッド22Aの外周面RFと接触する内周リップ75の最小径の内周縁76の断面形状がエッジ形状に形成され、かつ、パッキン装着溝の周面と接触する外周リップ77の最大径の外周縁78の断面形状がエッジ形状に形成されたリップパッキン、即ち、
図8で示した構成のリップパッキンを使用する。さらに、バランス室70A側のピストン用リップパッキン以外のインナー室50側のピストン用リップパッキンであってリップが他端側固定部3を向くように設置されるインナー室50側のピストン用リップパッキン710Aとして、シリンダ21Aの内周面210uと接触する外周リップ77の最大径の外周縁78の断面形状がエッジ形状に形成され、パッキン装着溝の周面と接触する内周リップ75の最小径の内周縁76の断面形状がエッジ形状に形成されたリップパッキン、即ち、
図8で示した構成のリップパッキンを使用する。
【0105】
この場合、緩衝器1Aの圧縮動作時において、外周リップ77と内周リップ75との間に流体圧が加わった場合、アウター室60側のロッド用リップパッキン720Aの最小径の内周縁76とロッド22Aの外周面RFとの接触面圧が最大になるとともに、最大径の外周縁78とパッキン装着溝の周面との接触面圧が最大になり、かつ、インナー室50側のピストン用リップパッキン710Aの最大径の外周縁78とシリンダ21Aの内周面210uとの接触面圧が最大になるとともに、最小径の内周縁76とパッキン装着溝の周面との接触面圧が最大になる。従って、アウター室60Aからバランス室70Aへの気体及びオイルの移動、及び、インナー室50Aからバランス室70Aへの気体及びオイルの移動が阻止され、緩衝器1A内のあらかじめ設定された各気体ばね室の反力特性が安定する。
【0106】
実施形態2による気体ばね式の緩衝器1Aによれば、圧縮動作時及び伸長動作時のフリクションを低減できるとともに、インナー室50Aからバランス室70Aへの圧縮比調整用オイルの移動、及び、アウター室60Aからバランス室70Aへの圧縮比調整用オイルの移動を防止できて、あらかじめ設定された各気体ばね室の反力特性の安定化が図れる。即ち、圧縮動作時及び伸長動作時のフリクションの低減、及び、各気体ばね室の反力特性の安定化の両立を図ることができる気体ばね式の緩衝器1Aを提供できる。
【0107】
実施形態2の緩衝器1Aは、例えば、自動二輪車等のフロントフォークを構成する左右の緩衝器のうちの少なくとも一方の緩衝器として使用されるものである。当該緩衝器1は、例えば、左右のフロントフォークのうちの一方にダンパを有するダンパ脚と他方にばねを有するばね脚とからなる左右で機能が分離されたフロントフォークにおいて、当該ばね脚に使用されるばねが金属ばねを使用せず、気体ばねを使用した構成の緩衝器であっても良い。
【0108】
緩衝器1Aは、例えば、一端側固定部2が自動二輪車の車軸側に連結されるとともに、他端側固定部3が自動二輪車の車体側であるフレーム等に連結されることによって、ロッド22Aが上方に位置してシリンダ21Aが下方に位置される正立タイプカートリッジ(ダンパー)のフロントフォークを構成する。
【0109】
以下、緩衝器1Aの全体的な構成の詳細を
図5、
図6に基づいて説明する。アウターチューブ11Aの一端開口側の内周面にはシール部材130Cが設けられ、アウターチューブの内周面には複数のブッシュ130A及び130Bが設けられており、当該ブッシュ130A、130B、シール部材130Cを介してインナーチューブ12Aの外周面とアウターチューブ11Aの内周面とが気密状態を維持しながら摺動自在に構成されている。
【0110】
ロッドガイド360は、内周面にブッシュ370が設けられ、かつ、内側の一端側及び他端側にそれぞれロッド貫通孔360hを中心としたパッキン装着用溝が形成され、一端側面に形成されたパッキン装着用溝には上述したバランス室70A側のロッド用リップパッキン720Bが装着され、他端側に形成されたパッキン装着用溝には上述したアウター室60側のロッド用リップパッキン720Aが装着されている。
【0111】
ロッドガイド360の外周面に形成されたOリング装着用溝にはOリング312が装着され、Oリング312とインナーチューブ12Aの内周面とが気密状態となってロッドガイド360とインナーチューブ12Aとが相対的に移動可能に構成されている。Oリング312とインナーチューブ12Aの内周面との気密接触により、バランス室70Aと連通孔362を介して連通するシリンダ21Aの外周面とインナーチューブ12Aの内周面との間の気体室700により形成されたサブタンクが形成される。
【0112】
ロッドガイド360の一端側連結部361の一端側とシリンダ21Aの他端開口とがねじ嵌合により連結されたことにより、シリンダ21Aの他端にロッドガイド360が設けられてシリンダ21Aとロッドガイド360とが一緒に移動するように構成されている。そして、シリンダ21Aの長さを変えることで気体室700の容積を変更できるように構成されている。上記連通孔362は、一端側連結部361に形成されている。
【0113】
ロッド22Aの一端側がロッドガイド360のロッド貫通孔360hを通過してシリンダ21A内に挿入され、かつ、リバウンドスプリング40Aの螺旋中央孔を通過した後のロッド22の他端にはピストン230が取り付けられている。
【0114】
ピストン230の他端側に設けられた連結部兼ばね固定部230Aに形成された筒状のロッド挿入孔部230aにロッド22Aの一端側が挿入されてロッド挿入孔部230aとロッド22Aの一端側とがねじ嵌合により連結される。
【0115】
ロッド挿入孔部230aの外周面の外径がリバウンドスプリング40Aの螺旋中央孔の内径よりも小径に形成されてロッド挿入孔部230aの外周面が螺旋中央孔の一端開口から螺旋中央孔内に入り込むともに、リバウンドスプリング40Aの一端がロッド挿入孔部230aの外周面に形成されたばね固定部に固定され、ロッドガイド360の一端側の面がばね衝突面に形成され、リバウンドスプリング40の他端が当該ばね衝突面に衝突することで一定以上の伸長動作が阻止される。
【0116】
ピストン230の一端側に設けられた円柱状のピストン本体部の外周面の一端側と他端側とにそれぞれピストン230の中心軸13Aを中心とした円環状のパッキン装着用溝を備えるとともに、ピストン本体部の外周面の他端側にピストン230の中心軸13Aを中心とした円環状のピストンリング装着溝が形成されている。ロッド22Aの内側空間とバランス室70Aとを連通させる連通路230Bは、連結部兼ばね固定部230Aにおけるピストン本体部との連結部分に形成されている。
【0117】
そして、ピストンリング装着溝に装着されたピストンリング240とシリンダ21Aの内周面210uとの接触によりピストン本体部の摺動性を向上させるとともに、上述したように、外周面の一端側のパッキン装着用溝内にインナー室50A側のピストン用リップパッキン710Aが装着され、外周面の他端側のパッキン装着用溝内にバランス室70A側のピストン用リップパッキン710Bが装着される。
【0118】
連通路230Bを介してバランス室70Aと連通するロッド22Aの内側の気体室を形成するロッド22Aによるサブタンク、及び、ロッドガイド360の一端側連結部361に形成された連通孔362を介してバランス室70Aと連通する気体室700を形成するサブタンクを備えているので、バランス室70Aの容積を拡大でき、高圧力の状況下でも圧縮比を下げることができる。従って、伸長動作時の伸切付近での反力特性が安定化し、操縦安定性を向上させることができる。
【0119】
尚、気体室700を形成するサブタンクは、一端側固定部2Aとロッドガイド360と一端側固定部2Aとロッドガイド360との間におけるシリンダ21Aの外周面とインナーチューブ12Aの内周面とで区画された気体室700を形成するサブタンクである。
【0120】
即ち、インナーチューブ12Aの内周面とシリンダ21Aの外周面との間の空間により、バランス室70Aと連通するバランス室70A内の圧縮比調整用の気体室700を備えていることによって、バランス室70Aの容積を拡大でき、高圧力の状況下でも圧縮比を下げることができるので、伸長動作時の伸切付近での反力特性が安定化し、操縦安定性を向上させることができる。
【0121】
一端側固定部2Aは、
図5に示すように、一端嵌合部41と、例えば自動二輪車の車軸が連結される車軸連結孔42と、気圧調整部43と、ワンタッチカプラ44Aと、ワンタッチカプラ44Bとを備える。
【0122】
一端嵌合部41は、インナーチューブ12Aの一端開口部の内径よりも小さな外径とシリンダ21Aの一端開口部の外径よりも大きな内径とを有した円筒形状に形成される。そして、一端嵌合部41がインナーチューブ12Aの一端開口を介してインナーチューブ12A内に嵌合され、かつ、シリンダ21Aの一端開口部が一端嵌合部41の内側にはまり込むように嵌合される。一端嵌合部41とインナーチューブ12Aとは、シール部材314Fを介して液密に螺合する。また、ボトムピース314がシリンダ21Aの一端に配置され、一端嵌合部41とシリンダ21Aとが、ボトムピース314、及び、ボトムピース314の外周に設けられたシール部材314S、314Gを介して液密に嵌合されている。
【0123】
気圧調整部43は、サブタンク43Sを介し、インナー室50Aと連通している。よって、気圧調整部43により、インナー室50Aの内側から外側への気体の流出を阻止するとともに、調整時においてはインナー室50A中の封入気体の圧力を調整することができる。
【0124】
ワンタッチカプラ44Aは、インナー室50A内に圧縮比調整用のオイルを注入するためオイル注入口であり、ワンタッチカプラ44Bは、バランス室70A内に摺動油膜形成用の少量のオイルを注入するためオイル注入口である。これにより、インナー室50A内の容積を調整することができ、圧縮比を調整することが容易となるとともに、バランス室70A内の摺動用オイルの量を調整できる。
【0125】
インナー室50Aと気圧調整部43とは、チューブ43Tを介して連通している。チューブ43Tは、一端嵌合部41において支持され、チューブ43Tを介して気圧調整部43から気体をインナー室50A内に注入することが可能となっている。またチューブ43Tのインナー室50A内の端部は、オイルOの液面よりも車体側に突き出るように配される。そのためインナー室50A内の気体圧力の調整時(減圧時)においても、オイルが気圧調整部43から吹き出すことを抑止できる。
【0126】
他端側固定部3Aは、アウターチューブ11Aの他端部と、アウターチューブ11A及びロッド22Aの他端開口を気密状態に塞ぐボルト部30A及びキャップ31Aとを備える。ボルト部30Aとアウターチューブ11Aの他端開口及びボルト部30Aとロッド21Aの他端開口とがねじ嵌合により連結される。キャップ31Aには、ロッド22Aの内側の気体室内の封入気体圧を調整するための気体圧調整部214Aと、アウター室60内の封入気体圧を調整するためのアウター室気体圧調整部214Bとが設けられる。そしてキャップ31Aとボルト部30Aとで塞がれたアウターチューブ11Aの他端部が自動二輪の車体側のフレーム等に連結される。他端側固定部3Aにおいては、Oリング等のシール部材52、61A、61B、216等により、アウターチューブ11A内及びシリンダ21内と外部との気密状態が維持されている。
【0127】
ロッド22Aの外周面RFの中央部にはバンプラバー325が固定されている。バンプラバー325は、緩衝器1Aの圧縮動作により、底付きしたときの衝撃を緩和するとともに、4mm程度撓んだ後、インナーチューブ12Aの他端がボルト部30Aにメタル接触する。
【0128】
尚、実施形態2で説明した正立タイプのカートリッジ(ダンパー)型の緩衝器1Aにおいては、サブタンク43S及び気体室700を形成するサブタンクを備えていない構成であってもよい。