特許第6407069号(P6407069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407069
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2465 20160101AFI20181004BHJP
   H01M 8/2432 20160101ALI20181004BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20181004BHJP
   H01M 8/0265 20160101ALI20181004BHJP
   H01M 8/026 20160101ALI20181004BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20181004BHJP
【FI】
   H01M8/2465
   H01M8/2432
   H01M8/0273
   H01M8/0265
   H01M8/026
   !H01M8/12 101
   !H01M8/12 102A
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-49176(P2015-49176)
(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公開番号】特開2016-170939(P2016-170939A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松野 敏博
(72)【発明者】
【氏名】大川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】上松 秀樹
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/208739(WO,A1)
【文献】 特開2008−84683(JP,A)
【文献】 特開2011−222152(JP,A)
【文献】 特開2008−218279(JP,A)
【文献】 特開2007−280652(JP,A)
【文献】 特開2000−251913(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0193825(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/2465
H01M 8/026
H01M 8/0265
H01M 8/0273
H01M 8/2432
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に並べて配置された複数の発電単位と、前記第1の方向に延びる複数のボルトとを備え、各前記ボルトで締結され、前記複数の発電単位にわたって延びる複数のガス流路が形成された燃料電池スタックにおいて、
各前記発電単位は、
電解質層と前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、
前記燃料極に面する燃料室と前記空気極に面する空気室との一方を構成する第1の貫通孔と、前記ガス流路を構成する第2の貫通孔と、前記燃料室と前記空気室との前記一方と前記ガス流路とを連通する少なくとも1つの連通流路と、が形成されたフレーム部材と、を備え、
1つまたは複数の前記発電単位である基準発電単位が備える前記フレーム部材の熱膨張係数は、前記燃料電池スタックの定格運転時の温度が前記基準発電単位と比べて低い1つまたは複数の前記発電単位である低温部発電単位が備える前記フレーム部材の熱膨張係数より小さいことを特徴とする、燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池スタックにおいて、
常温時における前記連通流路のガス流れ方向に直交する断面の断面積について、前記基準発電単位における各前記連通流路の特定の位置における断面積は、前記低温部発電単位における対応する各前記連通流路の前記特定の位置に対応する位置における断面積より小さいことを特徴とする、燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池スタックにおいて、
常温時における前記連通流路のガス流れ方向に沿った長さについて、前記基準発電単位における各前記連通流路の長さは、前記低温部発電単位における対応する各前記連通流路の長さより長いことを特徴とする、燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記連通流路の特定の位置におけるガス流れ方向に直交する断面の断面積に対する前記連通流路のガス流れ方向に沿った長さの比を断面積長さ比とし、前記基準発電単位の各前記連通流路の前記断面積長さ比と前記低温部発電単位における対応する各前記連通流路の前記断面積長さ比との差の絶対値について、定格運転時における前記差の絶対値は、常温時における前記差の絶対値より小さいことを特徴とする、燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」ともいう)は、一般に、所定の方向(以下、「配列方向」ともいう)に並べて配置された複数の発電単位を備える燃料電池スタックの形態で利用される。発電単位は、発電の最小単位であり、電解質層と、電解質層を挟んで上記配列方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルを備えている。
【0003】
燃料電池スタックは、複数のボルトにより締結されている。また、燃料電池スタックには、複数の発電単位にわたって延びる複数のガス流路(「マニホールド」とも呼ばれる)が形成されている。具体的には、燃料電池スタックには、燃料ガス供給用のガス流路や燃料ガス排出用のガス流路、酸化剤ガス供給用のガス流路、酸化剤ガス排出用のガス流路が形成されている。
【0004】
ここで、各発電単位における燃料極側の構成に注目すると、各発電単位は、燃料極に面する燃料室を構成する第1の貫通孔が形成されたフレーム部材を備える。また、このフレーム部材には、上述した燃料ガス供給用のガス流路の一部を構成する第2の貫通孔と、燃料室と燃料ガス供給用のガス流路とを連通する連通流路とが形成されている。燃料ガスは、燃料ガス供給用のガス流路から、各発電単位のフレーム部材により形成された連通流路を通って燃料室に供給され、各発電単位における発電に利用される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−149931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料電池スタックの定格運転時には、各発電単位の温度が上昇し、各発電単位に含まれるフレーム部材が熱膨張する。燃料電池スタックは複数のボルトで締結されているため、フレーム部材の燃料電池スタック外周方向への膨張が規制されている。そのため、フレーム部材は、フレーム部材に形成された上述の第1の貫通孔や連通流路が縮小するように内側に熱膨張する。フレーム部材に形成された第1の貫通孔が縮小して燃料室の外周の位置が燃料ガス供給用のガス流路から遠ざかると、連通流路のガス流れ方向に沿った長さは長くなる。また、フレーム部材に形成された連通流路が縮小すると、連通流路のガス流れ方向に直交する断面の断面積は小さくなる。連通流路の長さが長くなったり断面積が小さくなったりすると、連通流路の圧損は増加する。
【0007】
燃料電池スタックの定格運転時における各発電単位の温度は互いに異なり得る。例えば、燃料電池スタックの配列方向中央付近に位置する発電単位は、燃料電池スタックの配列方向両端付近に位置する発電単位と比較して、定格運転時の温度が高くなりやすい。燃料電池スタックの定格運転時において、発電単位間に温度差が生ずると、発電単位間でフレーム部材の熱膨張量に差が生じ、連通流路の断面積や長さに差が生ずる。発電単位間で連通流路の断面積や長さに差が生ずると、連通流路の圧損に差が生じ、各発電単位の燃料室に供給される燃料ガスの流量に差が生ずる。その結果、燃料電池スタックの発電性能が低下するおそれがある。
【0008】
なお、定格運転時において各発電単位の連通流路の圧損に差が生ずるという問題は、燃料ガス供給側の連通流路に限らず、酸化剤ガス供給側の連通流路にも共通の問題である。また、このような問題は、SOFCに限らず、他のタイプの燃料電池にも共通の問題である。
【0009】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0011】
(1)本明細書に開示される燃料電池スタックは、第1の方向に並べて配置された複数の発電単位と、前記第1の方向に延びる複数のボルトとを備え、各前記ボルトで締結され、前記複数の発電単位にわたって延びる複数のガス流路が形成された燃料電池スタックにおいて、各前記発電単位は、電解質層と前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、前記燃料極に面する燃料室と前記空気極に面する空気室との一方を構成する第1の貫通孔と、前記ガス流路を構成する第2の貫通孔と、前記燃料室と前記空気室との前記一方と前記ガス流路とを連通する少なくとも1つの連通流路と、が形成されたフレーム部材と、を備え、1つまたは複数の前記発電単位である基準発電単位が備える前記フレーム部材の熱膨張係数は、前記燃料電池スタックの定格運転時の温度が前記基準発電単位と比べて低い1つまたは複数の前記発電単位である低温部発電単位が備える前記フレーム部材の熱膨張係数より小さいことを特徴とする。本燃料電池スタックによれば、基準発電単位と低温部発電単位との間で、定格運転時におけるフレーム部材の熱膨張量の差を低減することができるため、定格運転時における連通流路の断面積や長さの差を低減することができ、連通流路の断面積や長さの差に起因する基準発電単位と低温部発電単位との間のガス流量の差を低減することができ、燃料電池スタックの発電性能の低下を抑制することができる。
【0012】
(2)上記燃料電池スタックにおいて、常温時における前記連通流路のガス流れ方向に直交する断面の断面積について、前記基準発電単位における各前記連通流路の特定の位置における断面積は、前記低温部発電単位における対応する各前記連通流路の前記特定の位置に対応する位置における断面積より小さい構成としてもよい。本燃料電池スタックによれば、定格運転時において、基準発電単位における連通流路の断面積を低温部発電単位における連通流路の断面積に近づけることができるため、連通流路の断面積の差に起因する基準発電単位と低温部発電単位との間のガス流量の差を低減することができ、燃料電池スタックの発電性能の低下を抑制することができる。
【0013】
(3)上記燃料電池スタックにおいて、常温時における前記連通流路のガス流れ方向に沿った長さについて、前記基準発電単位における各前記連通流路の長さは、前記低温部発電単位における対応する各前記連通流路の長さより長い構成としてもよい。本燃料電池スタックによれば、定格運転時において、基準発電単位における連通流路の長さを低温部発電単位における連通流路の長さに近づけることができるため、連通流路の長さの差に起因する基準発電単位と低温部発電単位との間のガス流量の差を低減することができ、燃料電池スタックの発電性能の低下を抑制することができる。
【0014】
(4)上記燃料電池スタックにおいて、前記連通流路の特定の位置におけるガス流れ方向に直交する断面の断面積に対する前記連通流路のガス流れ方向に沿った長さの比を断面積長さ比とし、前記基準発電単位の各前記連通流路の前記断面積長さ比と前記低温部発電単位における対応する各前記連通流路の前記断面積長さ比との差の絶対値について、定格運転時における前記差の絶対値は、常温時における前記差の絶対値より小さいことを特徴とする構成としてもよい。本燃料電池スタックによれば、連通流路の圧損の大きさに相関する指標である連通流路の断面積長さ比に関し、基準発電単位の各連通流路の断面積長さ比と低温部発電単位における対応する各連通流路の断面積長さ比との差の絶対値について、定格運転時における差の絶対値を常温時における差の絶対値より小さくすることができるため、連通流路の圧損の差に起因する基準発電単位と低温部発電単位との間のガス流量の差を低減することができ、燃料電池スタックの発電性能の低下を抑制することができる。
【0015】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池スタック、燃料電池スタックを備える発電モジュール、発電モジュールを備える燃料電池システム等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態における燃料電池スタック100の構成を概略的に示す説明図である。
図2】第1実施形態における燃料電池スタック100の構成を概略的に示す説明図である。
図3】第1実施形態における燃料電池スタック100の構成を概略的に示す説明図である。
図4】第1実施形態における燃料電池スタック100の構成を概略的に示す説明図である。
図5】第1実施形態における燃料電池スタック100の構成を概略的に示す説明図である。
図6】第1実施形態における燃料電池スタック100の構成を概略的に示す説明図である。
図7】発電単位102の詳細構成を示す説明図である。
図8】発電単位102の詳細構成を示す説明図である。
図9】発電単位102の詳細構成を示す説明図である。
図10】発電単位102の詳細構成を示す説明図である。
図11】熱交換部103の上側の平面構成を概略的に示す説明図である。
図12】燃料電池スタック100の定格運転時における温度分布の一例を示す説明図である。
図13】各発電単位102における燃料極側フレーム140の構成を示す説明図である。
図14】各発電単位102における燃料極側フレーム140の構成を示す説明図である。
図15】第2実施形態における燃料電池スタック100aの構成を概略的に示す説明図である。
図16】第2実施形態における燃料電池スタック100aの構成を概略的に示す説明図である。
図17】第2実施形態の燃料電池スタック100aの定格運転時における温度分布の一例を示す説明図である。
図18】第3実施形態の燃料電池スタック100bの定格運転時における温度分布の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1から図6は、第1実施形態における燃料電池スタック100の構成を概略的に示す説明図である。図1には、燃料電池スタック100の外観構成が示されており、図2には、燃料電池スタック100の上側の平面構成が示されており、図3には、燃料電池スタック100の下側の平面構成が示されており、図4には、図1から図3のIV−IVの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されており、図5には、図1から図3のV−Vの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されており、図6には、図1から図3のVI−VIの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されている。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図7以降についても同様である。
【0018】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では6つの)発電単位102と、熱交換部103と、一対のエンドプレート104,106とを備える。6つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。ただし、6つの発電単位102の内、3つの発電単位102は互いに隣接するように配置され、残りの3つの発電単位102も互いに隣接するように配置され、上記3つの発電単位102と上記残りの3つの発電単位102との間に熱交換部103が配置されている。すなわち、熱交換部103は、6つの発電単位102と熱交換部103とから構成される集合体における上下方向の中央付近に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、6つの発電単位102と熱交換部103とから構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は第1の方向に相当する。
【0019】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、熱交換部103、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。
【0020】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図4から図6に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0021】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図2から図4に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの頂点(Y軸負方向側およびX軸負方向側の頂点)付近に位置するボルト22(ボルト22A)により形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入されるガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22C)により形成された空間は、熱交換部103から排出された酸化剤ガスOGを各発電単位102に向けて運ぶガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド163として機能する。また、図2図3および図5に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)により形成された空間は、各発電単位102から排出された未反応の酸化剤ガスOGである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。また、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0022】
また、図2図3および図6に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)により形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)により形成された空間は、各発電単位102から排出された未反応の燃料ガスFGである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。また、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0023】
図4から図6に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通している。また、図5に示すように、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図6に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0024】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102と熱交換部103とが押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0025】
(発電単位102の構成)
図7から図10は、発電単位102の詳細構成を示す説明図である。図7には、図5に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102の断面構成が示されており、図8には、図6に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102の断面構成が示されており、図9には、図7のIX−IXの位置における発電単位102の断面構成が示されており、図10には、図7のX−Xの位置における発電単位102の断面構成が示されている。
【0026】
図7および図8に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0027】
インターコネクタ150は、矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図4から図6参照)。
【0028】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0029】
電解質層112は、矩形の平板形状部材であり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0030】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、セパレータ120が接合された単セル110をセパレータ付き単セルという。
【0031】
空気極側フレーム130は、図7から図9に示すように、中央付近に上下方向に貫通する矩形の貫通孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。空気極側フレーム130の貫通孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。
【0032】
また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド163を構成する貫通孔からY軸正方向およびY軸負方向に延びる第1酸化剤ガス供給連通孔191と、第1酸化剤ガス供給連通孔191と貫通孔131とを連通させるようにX軸方向に延びる複数の第2酸化剤ガス供給連通孔192とが形成されている。第1酸化剤ガス供給連通孔191と第2酸化剤ガス供給連通孔192とにより、酸化剤ガス供給マニホールド163と空気室166とを連通する複数の連通流路が形成される。同様に、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する貫通孔からY軸正方向およびY軸負方向に延びる第1酸化剤ガス排出連通孔193と、193と貫通孔131とを連通させるようにX軸方向に延びる複数の第2酸化剤ガス排出連通孔194とが形成されている。第1酸化剤ガス排出連通孔193と第2酸化剤ガス排出連通孔194とにより、酸化剤ガス排出マニホールド162と空気室166とを連通する複数の連通流路が形成される。
【0033】
燃料極側フレーム140は、図7図8および図10に示すように、中央付近に上下方向に貫通する矩形の貫通孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。なお、本実施形態では、燃料極側フレーム140は、セパレータ120とインターコネクタ150とに溶接されている。燃料極側フレーム140の貫通孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。
【0034】
また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171を構成する貫通孔からX軸正方向およびX軸負方向に延びる第1燃料ガス供給連通孔195と、第1燃料ガス供給連通孔195と貫通孔141とを連通させるようにY軸方向に延びる複数の第2燃料ガス供給連通孔196とが形成されている。第1燃料ガス供給連通孔195と各第2燃料ガス供給連通孔196とにより、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する複数の連通流路が形成される。同様に、燃料極側フレーム140には、燃料ガス排出マニホールド172を構成する貫通孔からX軸正方向およびX軸負方向に延びる第1燃料ガス排出連通孔197と、第1燃料ガス排出連通孔197と貫通孔141とを連通させるようにY軸方向に延びる複数の第2燃料ガス排出連通孔198とが形成されている。第1燃料ガス排出連通孔197と各第2燃料ガス排出連通孔198とにより、燃料ガス排出マニホールド172と燃料室176とを連通する複数の連通流路が形成される。
【0035】
空気極側集電体134は、図7から図9に示すように、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、所定の間隔をあけて並べられた複数の略四角柱状の導電性部材から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触することにより、空気極114とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として形成されていてもよい。
【0036】
燃料極側集電体144は、図7図8および図10に示すように、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、複数の電極対向部145と、各電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。具体的には、燃料極側集電体144は、図10における部分拡大図に示すように、矩形の平板形状部材に切り込みを入れ、複数の矩形部分を曲げ起こすように加工することにより製造される。曲げ起こされた矩形部分が電極対向部145となり、曲げ起こされた部分以外の穴あき状態の平板部分がインターコネクタ対向部146となり、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ部分が連接部147となる。なお、図10における部分拡大図では、燃料極側集電体144の製造方法を示すため、複数の矩形部分の一部の曲げ起こし加工が完了する前の状態を示している。各電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触し、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触する。そのため、燃料極側集電体144は、燃料極116とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150との電気的接続が良好に維持される。
【0037】
(熱交換部103の構成)
図11は、熱交換部103の上側の平面構成を概略的に示す説明図である。図4から図6および図11に示すように、熱交換部103は、矩形の平板形状部材であり、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。上述したように、熱交換部103のZ方向回りの周縁部には、ボルト22が挿入される連通孔108を構成する8つの孔が形成されている。また、熱交換部103の中央付近には、上下方向に貫通する孔182が形成されている。さらに、熱交換部103には、中央の孔182と酸化剤ガス導入マニホールド161を形成する連通孔108とを連通する連通孔184と、中央の孔182と酸化剤ガス供給マニホールド163を形成する連通孔108とを連通する連通孔186とが形成されている。熱交換部103は、熱交換部103の上側に隣接する発電単位102に含まれる下側のインターコネクタ150と、熱交換部103の下側に隣接する発電単位102に含まれる上側のインターコネクタ150とに挟持されている。これらのインターコネクタ150間において、孔182と連通孔184と連通孔186とにより形成される空間は、後述する熱交換のために酸化剤ガスOGを流す熱交換流路188として機能する。
【0038】
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給される。酸化剤ガス導入マニホールド161に供給された酸化剤ガスOGは、図4および図11に示すように、熱交換部103内に形成された熱交換流路188内に流入し、熱交換流路188を通って酸化剤ガス供給マニホールド163へと排出される。なお、酸化剤ガス導入マニホールド161は、各発電単位102の空気室166には連通していないため、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給されることはない。酸化剤ガス供給マニホールド163へと排出された酸化剤ガスOGは、図4図5図7および図9に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド163から各発電単位102の第1酸化剤ガス供給連通孔191および第2酸化剤ガス供給連通孔192を介して、空気室166に供給される。
【0039】
また、図6図8および図10に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の第1燃料ガス供給連通孔195および第2燃料ガス供給連通孔196を介して、燃料室176に供給される。
【0040】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、熱交換部103を介しているものの、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0041】
各発電単位102において発電反応に利用されなかった酸化剤ガスOGである酸化剤オフガスOOGは、図5図7および図9に示すように、空気室166から第2酸化剤ガス排出連通孔194および第1酸化剤ガス排出連通孔193を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102において発電反応に利用されなかった燃料ガスFGである燃料オフガスFOGは、図6図8および図10に示すように、燃料室176から第2燃料ガス排出連通孔198および第1燃料ガス排出連通孔197を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0042】
A−3.燃料極側フレーム140の詳細構成:
燃料電池スタック100の定格運転時において、各発電単位102の温度Trは、燃料電池スタック100における発電単位102の位置に応じて異なり得る。本実施形態の燃料電池スタック100では、定格運転時における各発電単位102の温度に応じて、各発電単位102における燃料極側フレーム140の構成が互いに異なる。
【0043】
図12は、燃料電池スタック100の定格運転時における温度分布の一例を示す説明図である。図12には、燃料電池スタック100の上下方向(Z軸方向)に沿った模式的な構成と、定格運転時における各発電単位102の温度Trの一例とが示されている。発電単位102における発電反応は発熱反応であるため、定格運転時には、発電単位102が高い密度で配置されている箇所では温度Trが高くなりやすく、反対に発電単位102が低い密度で配置されている箇所では温度Trが低くなりやすい。また、上述したように、熱交換部103には、燃料電池スタック100の外部から導入された比較的低温の酸化剤ガスが流入するため、熱交換部103に近い発電単位102では温度Trが低くなりやすい。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100のように、6つの発電単位102の内、3つの発電単位102が互いに隣接するように配置され、残りの3つの発電単位102も互いに隣接するように配置され、上記3つの発電単位102と上記残りの3つの発電単位102との間に熱交換部103が配置された構成では、例えば、それぞれ発電単位102の間に挟まれるように配置された2つの発電単位102(以下、「高温部発電単位102H」という)が最も高温となり、エンドプレート104,106に隣接する2つの発電単位102(以下、「低温部発電単位102L」という)が最も低温となり、熱交換部103に隣接する2つの発電単位102(以下、「中温部発電単位102M」という)が両者の中間程度の温度となる。定格運転時の温度Trは、例えば、高温部発電単位102Hでは750℃であり、中温部発電単位102Mでは680℃であり、低温部発電単位102Lでは620℃である。
【0044】
なお、中温部発電単位102Mが特許請求の範囲における「基準発電単位」に相当するとした場合には、低温部発電単位102Lが特許請求の範囲における「低温部発電単位」に相当する。また、高温部発電単位102Hが特許請求の範囲における「基準発電単位」に相当するとした場合には、中温部発電単位102Mおよび低温部発電単位102Lが特許請求の範囲における「低温部発電単位」に相当する。
【0045】
図13および図14は、各発電単位102における燃料極側フレーム140の構成を示す説明図である。本実施形態では、高温部発電単位102Hに含まれる燃料極側フレーム140の熱膨張係数C(H)と、中温部発電単位102Mに含まれる燃料極側フレーム140の熱膨張係数C(M)と、低温部発電単位102Lに含まれる燃料極側フレーム140の熱膨張係数C(L)との関係は、以下の式(1)に示す関係となっている。
C(H)<C(M)<C(L) ・・・(1)
【0046】
例えば、高温部発電単位102Hに含まれる燃料極側フレーム140をSUS430(熱膨張係数C(H):12.8×10−6(/℃))により形成し、中温部発電単位102Mに含まれる燃料極側フレーム140をSUS310(熱膨張係数C(M):17.5×10−6(/℃))により形成し、低温部発電単位102Lに含まれる燃料極側フレーム140をSUS304(熱膨張係数C(L):18.7×10−6(/℃))により形成すれば、上記式(1)が満たされる。
【0047】
また、図13には、常温(例えば25℃)時および定格運転時のそれぞれにおける、各発電単位102の燃料極側フレーム140に形成された1つの第2燃料ガス供給連通孔196(図10参照)のガス流れ方向に直交する断面(同図のXIII−XIIIの位置の断面)を示している。以下の説明では、第2燃料ガス供給連通孔196のガス流れ方向に直交する断面の断面積Aの内、常温時における断面積Aを常温時断面積Anと表し、定格運転時における断面積Aを定格運転時断面積Arと表わす。図10に示すように、第1燃料ガス供給連通孔195と各第2燃料ガス供給連通孔196とにより、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する複数の連通流路が形成されるため、第2燃料ガス供給連通孔196の断面積Aは、当該連通流路の特定の位置における断面積であると言える。
【0048】
図13に示すように、第2燃料ガス供給連通孔196の常温時断面積Anは、発電単位102毎に異なっている。具体的には、高温部発電単位102Hにおける第2燃料ガス供給連通孔196の常温時断面積An(H)と、中温部発電単位102Mにおける第2燃料ガス供給連通孔196の常温時断面積An(M)と、低温部発電単位102Lにおける第2燃料ガス供給連通孔196の常温時断面積An(L)との関係は、以下の式(2)に示す関係となっている。なお、この式(2)は、高温部発電単位102Hと中温部発電単位102Mと低温部発電単位102Lとのそれぞれにおいて、対応する(同じ位置の)第2燃料ガス供給連通孔196についての関係を示したものである。高温部発電単位102Hと中温部発電単位102Mと低温部発電単位102Lとのそれぞれにおいて、互いに異なる位置の第2燃料ガス供給連通孔196については、必ずしも式(2)の関係を満たしている必要は無い。後述の式(3)についても同様である。
An(H)<An(M)<An(L) ・・・(2)
【0049】
また、図14には、常温時および定格運転時のそれぞれにおける、各発電単位102の燃料極側フレーム140に形成された1つの第2燃料ガス供給連通孔196のガス流れ方向に平行な断面(図10のPx部の拡大図)を示している。以下の説明では、第2燃料ガス供給連通孔196のガス流れ方向に沿った長さL(第1燃料ガス供給連通孔195との接続位置から貫通孔141との接続位置までの距離)の内、常温時における長さLを常温時長さLnと表し、定格運転時における長さLを定格運転時長さLrと表わす。上述したように、第1燃料ガス供給連通孔195と各第2燃料ガス供給連通孔196とにより、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する複数の連通流路が形成されるため、第2燃料ガス供給連通孔196の長さLが長いと、当該連通流路の長さも長くなる。
【0050】
図14に示すように、第2燃料ガス供給連通孔196の常温時長さLnは、発電単位102毎に異なっている。具体的には、高温部発電単位102Hにおける第2燃料ガス供給連通孔196の常温時長さLn(H)と、中温部発電単位102Mにおける第2燃料ガス供給連通孔196の常温時長さLn(M)と、低温部発電単位102Lにおける第2燃料ガス供給連通孔196の常温時長さLn(L)との関係は、以下の式(3)に示す関係となっている。
Ln(H)>Ln(M)>Ln(L) ・・・(3)
【0051】
上述したように、定格運転時には、各発電単位102の温度は常温よりも高くなるため、各発電単位102に含まれる燃料極側フレーム140は常温時の状態と比べて熱膨張した状態となる。燃料電池スタック100はボルト22により締結されているため、燃料電池スタック100を構成する各層が外周方向に膨張することが規制されている。そのため、定格運転時には、燃料極側フレーム140は、燃料極側フレーム140に形成された各種孔(第2燃料ガス供給連通孔196や燃料室176を構成する貫通孔141)が縮小するように内側に熱膨張する。従って、図13および図14に示すように、高温部発電単位102H、中温部発電単位102M、低温部発電単位102Lのいずれについても、第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時断面積Arは常温時断面積Anより小さくなり、定格運転時長さLrは常温時長さLnより長くなる。なお、図13および図14の「常温時」の欄に示す一点鎖線は、定格運転時における第2燃料ガス供給連通孔196の形状を示している。
【0052】
ここで、定格運転時の燃料極側フレーム140の熱膨張量が相対的に大きいと、第2燃料ガス供給連通孔196の断面積Aの縮小量や長さLの伸張量は相対的に大きくなる。本実施形態では、上記式(1)に示すように、定格運転時の温度が高い発電単位102ほど、燃料極側フレーム140の熱膨張係数Cが小さい。そのため、定格運転時における各発電単位102の温度差による燃料極側フレーム140の熱膨張量の差が低減される。その結果、第2燃料ガス供給連通孔196の断面積Aの縮小量の差や長さLの伸張量の差が低減される。
【0053】
なお、各発電単位102の燃料極側フレーム140の熱膨張係数Cは、燃料極側フレーム140の形成に使用する材料に応じて具体的に定まる。また、定格運転時における各発電単位102の温度Trは、燃料電池スタック100の構成や運転方法に応じて具体的に定まる。そのため、高温部発電単位102Hと中温部発電単位102Mと低温部発電単位102Lとの間で、燃料極側フレーム140の熱膨張係数Cの差に起因する熱膨張量の差と、定格運転時の温度Trの差に起因する熱膨張量の差とは、必ずしも同程度となる訳ではない。例えば、本実施形態では、定格運転時の温度Trの差に起因する熱膨張量の差に比べて、燃料極側フレーム140の熱膨張係数Cの差に起因する熱膨張量の差が大きくなっている。そのため、定格運転時の温度が高い発電単位102ほど、燃料極側フレーム140の熱膨張量は小さい。しかし、本実施形態では、上記式(2)に示すように、定格運転時の温度が高い発電単位102ほど、第2燃料ガス供給連通孔196の常温時断面積Anを小さくしているため(図13参照)、結果的に、高温部発電単位102Hにおける第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時断面積Ar(H)と、中温部発電単位102Mにおける第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時断面積Ar(M)と、低温部発電単位102Lにおける第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時断面積Ar(L)とがほぼ等しくなる。同様に、本実施形態では、上記式(3)に示すように、定格運転時の温度が高い発電単位102ほど、第2燃料ガス供給連通孔196の常温時長さLnを長くしているため(図14参照)、結果的に、高温部発電単位102Hにおける第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時長さLr(H)と、中温部発電単位102Mにおける第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時長さLr(M)と、低温部発電単位102Lにおける第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時長さLr(L)とがほぼ等しくなる。
【0054】
発電単位102間で、第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時長さLrや定格運転時断面積Arに差があると、第2燃料ガス供給連通孔196により形成される連通流路(燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する流路)の圧損に差が生じ、各発電単位102に供給される燃料ガスの流量に差が生じて燃料電池スタック100の発電性能が低下するおそれがある。本実施形態の燃料電池スタック100では、高温部発電単位102Hにおける第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時断面積Ar(H)と中温部発電単位102Mにおける第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時断面積Ar(M)と低温部発電単位102Lにおける第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時断面積Ar(L)とがほぼ等しい。また、高温部発電単位102Hにおける第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時長さLr(H)と中温部発電単位102Mにおける第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時長さLr(M)と低温部発電単位102Lにおける第2燃料ガス供給連通孔196の定格運転時長さLr(L)とがほぼ等しい。そのため、発電単位102間で、第2燃料ガス供給連通孔196により形成される連通流路の圧損はほぼ等しくなり、各発電単位102に供給される燃料ガスの流量差が抑制される。その結果、各発電単位102に供給される燃料ガスの流量差に起因する燃料電池スタック100の発電性能の低下が抑制される。
【0055】
なお、第2燃料ガス供給連通孔196により形成される上記連通流路の圧損は、第2燃料ガス供給連通孔196の長さLが長いほど大きくなり、かつ、第2燃料ガス供給連通孔196の断面積Aが大きいほど小さくなる。そのため、本明細書では、連通流路の圧損の大きさに相関する指標として、第2燃料ガス供給連通孔196の断面積Aに対する長さLの比である「断面積長さ比R」を用いる。高温部発電単位102Hと中温部発電単位102Mと低温部発電単位102Lとのそれぞれの間で、断面積長さ比Rの差の絶対値が小さいほど連通流路の圧損の差が小さいと言える。本実施形態の燃料電池スタック100では、上記式(1)−(3)が満たされているため、定格運転時における断面積長さ比Rの差の絶対値は、常温時における断面積長さ比Rの差の絶対値より小さくなり、その結果、連通流路の圧損差に起因する燃料ガスの流量差が抑制され、燃料電池スタック100の発電性能の低下が抑制される。
【0056】
B.第2実施形態:
B−1.構成:
図15および図16は、第2実施形態における燃料電池スタック100aの構成を概略的に示す説明図である。図15には、燃料電池スタック100aの外観構成が示されており、図16には、第1実施形態の図5に示す断面の位置に対応する位置(図15のXVI−XVIの位置)における燃料電池スタック100aの断面構成が示されている。第2実施形態における燃料電池スタック100aの構成の内、上述した第1実施形態の燃料電池スタック100の構成と同一構成については、同一の符号を付すことによって、その説明を省略する。
【0057】
第2実施形態における燃料電池スタック100aは、熱交換部103を備えていない点が、上述した第1実施形態の燃料電池スタック100と異なる。また、この点に関連し、酸化剤ガスOGの流路構成も異なっている。すなわち、第2実施形態では、燃料電池スタック100aのZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)により形成された空間が、燃料電池スタック100aの外部から酸化剤ガスOGが導入されるガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能する。
【0058】
B−2.燃料電池スタック100aの動作:
酸化剤ガスOGは、第1実施形態と同様に、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給される。酸化剤ガス導入マニホールド161に供給された酸化剤ガスOGは、各発電単位102の空気室166に供給される。その後の酸化剤ガスOGの流れは、第1実施形態と同様である。また、燃料ガスFGの流れは、第1実施形態と同様である。第2実施形態の燃料電池スタック100aにおいても、第1実施形態と同様に、各発電単位102において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGを利用した発電が行われ、酸化剤オフガスOOGおよび燃料オフガスFOGが燃料電池スタック100aの外部に排出される。
【0059】
B−3.燃料極側フレーム140の詳細構成:
第2実施形態の燃料電池スタック100aでは、定格運転時における各発電単位102の温度Trが第1実施形態と異なる。図17は、第2実施形態の燃料電池スタック100aの定格運転時における温度分布の一例を示す説明図である。図17に示すように、第2実施形態の燃料電池スタック100aは熱交換部103を備えていないため、例えば、上下方向(Z軸方向)の中央付近の2つの発電単位102(以下、「高温部発電単位102H」という)が最も高温となり、エンドプレート104,106に隣接する2つの発電単位102(以下、「低温部発電単位102L」という)が最も低温となり、残りの2つの発電単位102(以下、「中温部発電単位102M」という)が両者の中間程度の温度となる。
【0060】
第2実施形態の燃料電池スタック100aは、高温部発電単位102H、中温部発電単位102M、低温部発電単位102Lの位置について第1実施形態の燃料電池スタック100とは異なるが、高温部発電単位102H、中温部発電単位102M、低温部発電単位102のそれぞれに含まれる燃料極側フレーム140の熱膨張係数Cの大小関係や、第2燃料ガス供給連通孔196の断面積Aおよび長さLの大小関係は、第1実施形態と同様である。そのため、第2実施形態の燃料電池スタック100aにおいても、発電単位102間で、第2燃料ガス供給連通孔196により形成される連通流路の圧損がほぼ等しくなり、各発電単位102に供給される燃料ガスの流量差が抑制され、各発電単位102に供給される燃料ガスの流量差に起因する燃料電池スタック100aの発電性能の低下が抑制される。
【0061】
C.第3実施形態:
図18は、第3実施形態の燃料電池スタック100bの定格運転時における温度分布の一例を示す説明図である。第3実施形態における燃料電池スタック100bの構成は、上述した第2実施形態の燃料電池スタック100aの構成と同一である。ただし、第3実施形態では、燃料電池スタック100bの定格運転時に、燃料電池スタック100bの下方に配置された熱源HSにより燃料電池スタック100bが加熱される。熱源HSとしては、例えば、ガスバーナーや、燃料電池スタック100bから排出された酸化剤オフガスおよび燃料オフガスを燃焼する燃焼装置が挙げられる。これらの熱源HSの構成は、例えば特開2013−175354号公報に記載されているように公知であるため、ここでは詳述しない。第3実施形態では、燃料電池スタック100bが熱源HSによる加熱されるため、定格運転時における各発電単位102の温度Trが第2実施形態と異なる。図18に示すように、第3実施形態では、例えば、6つの発電単位102の内、下から3つ目および2つ目の発電単位102(以下、「高温部発電単位102H」という)が最も高温となり、上から1つ目および2つ目の発電単位102(以下、「低温部発電単位102L」という)が最も低温となり、残りの2つの発電単位102(以下、「中温部発電単位102M」という)が両者の中間程度の温度となる。
【0062】
第3実施形態の燃料電池スタック100bは、高温部発電単位102H、中温部発電単位102M、低温部発電単位102Lの位置について第2実施形態の燃料電池スタック100aとは異なるが、高温部発電単位102H、中温部発電単位102M、低温部発電単位102のそれぞれに含まれる燃料極側フレーム140の熱膨張係数Cの大小関係や、第2燃料ガス供給連通孔196の断面積Aおよび長さLの大小関係は、第2実施形態と同様である。そのため、第3実施形態の燃料電池スタック100bにおいても、発電単位102間で、第2燃料ガス供給連通孔196により形成される連通流路の圧損がほぼ等しくなり、各発電単位102に供給される燃料ガスの流量差が抑制され、各発電単位102に供給される燃料ガスの流量差に起因する燃料電池スタック100bの発電性能の低下が抑制される。
【0063】
D.変形例:
上記実施形態では、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102の内、定格運転時の温度が高い発電単位102ほど、第2燃料ガス供給連通孔196の常温時断面積Anを小さくしているが、必ずしもこのような構成とする必要はなく、第2燃料ガス供給連通孔196の常温時断面積Anは、定格運転時の温度に関わらず任意に設定できる。このような場合でも、定格運転時の温度が高い発電単位102ほど、燃料極側フレーム140の熱膨張係数Cが小さい構成とすれば、定格運転時における各発電単位102の温度差による燃料極側フレーム140の熱膨張量の差が低減され、その結果、第2燃料ガス供給連通孔196の断面積Aの縮小量の差が低減され、各発電単位102に供給される燃料ガスの流量差が抑制される。
【0064】
同様に、上記実施形態では、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102の内、定格運転時の温度が高い発電単位102ほど、第2燃料ガス供給連通孔196の常温時長さLnを長くしているが、必ずしもこのような構成とする必要はなく、第2燃料ガス供給連通孔196の常温時長さLnは、定格運転時の温度に関わらず任意に設定できる。このような場合でも、定格運転時の温度が高い発電単位102ほど、燃料極側フレーム140の熱膨張係数Cが小さい構成とすれば、定格運転時における各発電単位102の温度差による燃料極側フレーム140の熱膨張量の差が低減され、その結果、第2燃料ガス供給連通孔196の長さLの伸張量の差が低減され、各発電単位102に供給される燃料ガスの流量差が抑制される。
【0065】
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102を、定格運転時の温度Trに応じて3種類(高温部発電単位102H、中温部発電単位102M、低温部発電単位102L)に分類しているが、複数の発電単位102を、2種類または4種類以上に分類してもよい。いずれの場合にも、定格運転時の温度が高い発電単位102ほど、燃料極側フレーム140の熱膨張係数Cが小さい構成とすれば、定格運転時における各発電単位102の温度差による燃料極側フレーム140の熱膨張量の差が低減され、その結果、第2燃料ガス供給連通孔196の断面積Aの縮小量の差や長さLの伸張量の差が低減され、各発電単位102に供給される燃料ガスの流量差が抑制される。
【0066】
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102について、定格運転時の温度が高い発電単位102ほど、燃料極側フレーム140の熱膨張係数Cが小さいとしているが、必ずしもこのような構成とする必要はない。燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102の内、1つまたは複数の発電単位102である基準発電単位が備える燃料極側フレーム140の熱膨張係数Cが、定格運転時の温度Trが基準発電単位と比べて低い1つまたは複数の発電単位102である低温部発電単位が備える燃料極側フレーム140の熱膨張係数Cより小さい構成とすれば、少なくとも基準発電単位と低温部発電単位との間で、定格運転時の温度差による燃料極側フレーム140の熱膨張量の差が低減され、その結果、第2燃料ガス供給連通孔196の断面積Aの縮小量の差や長さLの伸張量の差が低減され、それらの発電単位102に供給される燃料ガスの流量差が抑制される。
【0067】
また、上記実施形態では、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する連通流路が形成された燃料極側フレーム140の特徴的な構成について説明したが、本発明は、酸化剤ガス供給マニホールド163(第2,3実施形態では酸化剤ガス導入マニホールド161)と空気室166とを連通する連通流路が形成された空気極側フレーム130についても、同様に適用可能である。例えば、定格運転時の温度が高い発電単位102ほど、空気極側フレーム130の熱膨張係数Cが小さいとすれば、定格運転時における各発電単位102の温度差による空気極側フレーム130の熱膨張量の差が低減され、その結果、第2酸化剤ガス供給連通孔192の長さLの伸張量の差が低減され、各発電単位102に供給される酸化剤ガスの流量差が抑制される。
【0068】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
【0069】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100の配列方向における熱交換部103の位置はあくまで一例であり、熱交換部103の位置は任意の位置に変更可能である。ただし、熱交換部103の位置は、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102の内、より高温になる発電単位102に隣接する位置であることが、燃料電池スタック100の配列方向における熱分布の緩和のために好ましい。例えば、燃料電池スタック100の配列方向中央付近の発電単位102がより高温になりやすい場合には、上記実施形態のように、燃料電池スタック100の配列方向中央付近に熱交換部103を設けることが好ましい。また、燃料電池スタック100が2つ以上の熱交換部103を備えていてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、熱交換部103が酸化剤ガスOGの温度を上昇させるように構成されているが、熱交換部103が、酸化剤ガスOGに代えて燃料ガスFGの温度を上昇させるように構成されてもよいし、酸化剤ガスOGと共に燃料ガスFGの温度を上昇させるように構成されてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、エンドプレート104,106が出力端子として機能するとしているが、エンドプレート104,106の代わりに、エンドプレート104,106のそれぞれと接続された別部材(例えば、エンドプレート104,106のそれぞれと発電単位102との間に配置された導電板)が出力端子として機能するとしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。いずれの場合であっても、各マニホールドは、各ボルト22により形成されることとなる。
【0073】
また、上記実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合には、1つのインターコネクタ150が隣接する2つの発電単位102に共有されるとしているが、このような場合でも、2つの発電単位102がそれぞれのインターコネクタ150を備えてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ150や、最も下に位置する発電単位102の下側のインターコネクタ150は省略されているが、これらのインターコネクタ150を省略せずに設けてもよい。
【0074】
また、上記実施形態において、燃料極側集電体144は、空気極側集電体134と同様の構成であってもよく、燃料極側集電体144と隣接するインターコネクタ150とが一体部材であってもよい。また、空気極側フレーム130ではなく燃料極側フレーム140が絶縁体であってもよい。また、空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140は、多層構成であってもよい。
【0075】
また、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0076】
また、上記実施形態において、都市ガスを改質して水素リッチな燃料ガスFGを得るとしているが、LPガスや灯油、メタノール、ガソリン等の他の原料から燃料ガスFGを得るとしてもよいし、燃料ガスFGとして純水素を利用してもよい。
【0077】
また、上記実施形態において、電解質層112と空気極114との間に、例えばセリアを含む反応防止層を設け、電解質層112内のジルコニウム等と空気極114内のストロンチウム等とが反応することによる電解質層112と空気極114との間の電気抵抗の増大を抑制するとしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本発明は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池にも適用可能である。なお、本発明は、SOFCやMCFC等の、定格運転時の温度が比較的高温となって燃料極側フレーム140や空気極側フレーム130の熱膨張量が比較的大きくなるタイプの燃料電池において、より好適である。
【符号の説明】
【0079】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 103:熱交換部 104:エンドプレート 106:エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム 131:貫通孔 134:空気極側集電体 140:燃料極側フレーム 141:貫通孔 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 163:酸化剤ガス供給マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 182:孔 184:連通孔 186:連通孔 188:熱交換流路 191:第1酸化剤ガス供給連通孔 192:第2酸化剤ガス供給連通孔 193:第1酸化剤ガス排出連通孔 194:第2酸化剤ガス排出連通孔 195:第1燃料ガス供給連通孔 196:第2燃料ガス供給連通孔 197:第1燃料ガス排出連通孔 198:第2燃料ガス排出連通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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