(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可動部材の受圧部は、平型導体の被係止部から受けた当接力により可動部材を回動中心まわりに閉位置へ向け回動させるモーメントを生ずる位置に設けられていることとする請求項1に記載の平型導体用電気コネクタ。
可動部材は、ハウジングの一部で形成されもしくはハウジングに取り付けられた付勢部材と係合して付勢力を受ける被付勢部を有し、可動部材が開位置から所定角の回動範囲にあるときには該可動部材を開位置に維持する付勢力を、上記所定角の回動範囲を超えたときには閉位置に向けた付勢力を付勢部材から受けることとする請求項1又は請求項2に記載の平型導体用電気コネクタ。
前方へ向けた平型導体の挿入過程で、該平型導体の被係止部が可動部材の通過許容空間を通り係止部の位置を通過した後に、上記可動部材は、付勢部材からの付勢力を受けて閉位置へ向け回動して、上記係止部が平型導体の抜出方向で上記被係止部に対して係止可能に位置することとする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の平型導体用電気コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る平型導体用電気コネクタ1(以下「コネクタ1」という)を平型導体Cとともに示した斜視図である。また、
図2は、
図1のコネクタ1を分解した状態を示した斜視図である。
図3は、平型導体Cの挿入前にて
図1のコネクタ1の端子配列方向に対して直角な面での断面図であり、(A)は信号端子の位置での断面(
図1のA線参照)、(B)はグランド端子の位置での断面(
図1のB線参照)、(C)は通過許容空間の位置での断面(
図1のC線参照)、(D)は付勢金具の位置での断面(
図1のD線参照)を示している。また、
図3(C)では、平型導体Cの後述する切欠部C1の位置での該平型導体Cの上面及び下面の位置が二点鎖線で示されている。
【0026】
コネクタ1は、回路基板(図示せず)の実装面上に配され、平型導体Cが接続されることにより、上記回路基板と平型導体Cとを電気的に導通させる。ここで、「回路基板」とは、コネクタの端子に接続される回路部が形成された板状の実装部材を意味し、剛性が高い板状の部材だけでなく、平型導体Cと同様に剛性が低い柔軟なシート状の部材も含まれる。
【0027】
また、本実施形態において、「端子配列範囲」とは、複数の端子が間隔をもって連続的に配列された範囲をいう。本実施形態に係るコネクタ1では、
図1,2によく見られるように、後述の信号端子20及びグランド端子30が間隔をもって配列されており、一つの端子配列範囲が形成されている。以下、信号端子20及びグランド端子30について、両者を特に区別する必要がないときには、説明の便宜上、これらを「端子20,30」と総称する。
【0028】
図1に見られるように、平型導体Cは、前後方向に延びる帯状をなし、前後方向に延びる複数の回路部(図示せず)が幅方向(前後方向に対して直角な方向)に配列され形成されている。該回路部は、平型導体Cの絶縁層内で埋設されて前後方向に延びており、平型導体Cの前端位置まで達している。また、上記複数の回路部は、信号回路部とグランド回路部とが混在している。信号回路部は、その前端側部分が平型導体Cの下面に露呈しており、信号端子20と接触可能となっている。グランド回路部は、その前端側部分が平型導体Cの上面に露呈しており、グランド端子30と接触可能となっている。また、平型導体Cは、上記前端側部分の両側縁に切欠部C1が形成されており、該切欠部C1の前方に位置する耳部C2の後端縁は、後述するコネクタ1の可動部材50の係止部56Bと係止する被係止部C2Aとして機能する(
図5(C)参照)。
【0029】
コネクタ1は、略直方体外形をなす電気絶縁材製のハウジング10と、該ハウジング10の長手方向を端子配列方向として該ハウジング10に配列保持される金属製の複数の信号端子20及びグランド端子30と、端子20,30の配列範囲の両外側位置でハウジング10に保持される付勢金具40と、後述する閉位置と開位置との間で切換移動(回動)可能にハウジング10に支持される電気絶縁材製の可動部材50とを備えている。該コネクタ1は、
図1にて、平型導体Cが後方(
図1にて左下方)から挿入接続されるようになっている。
【0030】
コネクタ1の詳細な構成の説明に先立って、まず、コネクタ1に対する平型導体Cの挿入および抜出の動作の概要について説明しておく。コネクタ1への平型導体Cの挿入前においては、コネクタ1の可動部材50は、
図1に示される姿勢をなす閉位置で、平型導体Cの挿入を許容する。また、平型導体Cが挿入接続された後においても、コネクタ1の使用状態では、可動部材50は閉位置に維持されており、後述するように、可動部材50の係止部56Bと平型導体Cの被係止部C2Aとが係止可能に位置することにより、平型導体Cの後方への抜出が阻止される(
図5(C)参照)。
【0031】
また、コネクタ1の不使用時となる平型導体Cの抜出時には、可動部材50が回動して開位置に切り換えられることにより、平型導体Cの被係止部C2Aに対する可動部材50の係止部56Bの係止状態が解除される(
図6(C)参照)。そして、平型導体Cが後方へ引かれると、可動部材50が平型導体Cの被係止部C2Aからの当接力を後述の受圧部56Cで受けることにより、閉位置へ向けて回動し、その回動過程にて可動部材50の後述の貫通溝部56Aが上記被係止部C2Aの通過経路上に位置したときに、平型導体Cの後方への抜出が許容される。平型導体Cの抜出後も可動部材50は引き続き回動し自動的に閉位置へ至る。このように、平型導体Cの抜出と、可動部材50の閉位置へ回動は一連の動作としてなされる。
【0032】
コネクタ1の構成の説明に戻る。ハウジング10は、
図1,2に見られるように、回路基板(図示せず)の実装面に対して平行な一方向を長手方向として延びており、平型導体Cを受け入れるための受入部11が、後方へ向けて開放された空間として形成されている。該ハウジング10は、上記実装面に対向して平行に延びる底壁12と、該底壁12に対向して上記長手方向、すなわち端子配列方向で端子配列範囲を含む範囲にわたって延びる上壁13と、端子配列方向での底壁12及び上壁13の両端側に位置する側壁14と、端子配列方向での端子配列範囲を含む範囲にわたって延び底壁12と上壁13の前端同士を連結する前壁15(
図3(A),(B)参照)とを有している。
【0033】
既述した受入部11は、
図1,2に見られるように、底壁12、上壁13および二つの側壁14で囲まれて後方に開口する開口部を有し、前後方向で該開口部から前壁15の後面にまでわたる空間で、平型導体C(
図1参照)の前部を受け入れるようになっている(
図5(A),(B)をも参照)。
【0034】
また、ハウジング10には、
図1,2に見られるように、複数の信号端子20をそれぞれ収容して保持するための信号端子収容部17及び複数のグランド端子30をそれぞれ収容して保持するためのグランド端子収容部18がそれぞれ所定間隔をもって端子配列方向で配列形成されている。
図2によく見られるように、複数の信号端子収容部17は等間隔で配列形成されており、また、グランド端子収容部18は、信号端子収容部17の配列範囲内で信号端子収容部17同士間に形成されている。
【0035】
信号端子収容部17は、
図3(A)に見られるように、端子配列方向に対して直角に拡がるスリット状をなし、該信号端子20の後述の被保持部21を圧入保持する前溝部17Aと、信号端子20の後述の下腕部22、上腕部23を収容する下溝部17Bとを有している。前溝部17Aは前壁15の下部を貫通して形成されている。上記下溝部17Bは、底壁12の上面から没入して前溝部17Aから後方に延びている。
【0036】
また、グランド端子収容部18は、
図3(B)に見られるように、端子配列方向に対して直角に拡がるスリット状をなし、後述するグランド端子30の下腕部31、上腕部32、連結部33及び被保持部34をそれぞれ収容する下溝部18A、上溝部18B、前溝部18C及び後溝部18Dを有している。下溝部18Aは底壁12の上面から没入して前後方向に延び、上溝部18Bは上壁13の下面から没入して前後方向に延び、前溝部18Cは、前壁15を前後方向に貫通するとともに上下方向に延びている。また、後溝部18Dは、底壁12の後端部が前方へ没することにより、上下方向に貫通するとともに後方へ開放されている。
【0037】
底壁12は、端子配列方向での端子配列範囲の両外側にて、
図3(C)に見られるように、閉位置にある可動部材50の受圧部56Cを受け入れて収容するための下方収容部12Aが、該底壁12の後端寄りの範囲で上下方向に貫通して形成されている。
【0038】
また、上壁13は、
図3(C)に見られるように、端子配列方向での端子配列範囲の両外側で上述の下方収容部12Aと対応する位置にて、前後方向でのほぼ全域が切り欠かれて空間が形成されている。該空間は、閉位置にある可動部材50を受け入れて収容するための上方収容部13Aとして形成されている。該上方収容部13Aは受入部11の上方に形成されており、また、既述の下方収容部12Aは受入部11の下方に形成されており、該上方収容部13A、受入部11及び下方収容部12Aは互いに連通している。
【0039】
側壁14は、
図2及び
図3(D)によく見られるように、可動部材50の後述の回動軸部54及び被付勢部55を収容するとともに付勢金具40をも収容する側方収容部14Aが後半部に形成されている。該側方収容部14Aは、
図3(D)に見られるように、上下方向での側壁14のほぼ全域にわたる範囲(上端部を除いた範囲)で後方に開放されており、後方からの付勢金具40の取付けが可能となっている。また、該側方収容部14Aは、
図3(D)に見られるように、後部が上方に開放されており、上方からの可動部材50の回動軸部54及び被付勢部55を受け入れるようになっている。さらに、該側方収容部14Aは、
図3(D)に見られるように、後部が下方にも開放されており、後述する付勢金具40の付勢片44の下方への弾性変位を許容している(
図4(D)参照)。
【0040】
また、側方収容部14Aは、
図3(D)によく見られるように、後部側で上下方向に延びる縦部分、該縦部の上端から前方へ延びる上方横部分そして上記縦部の下端から前方へ延びる下方横部分から形成される空間で、付勢金具40を収容保持している。また、上方横部分と下方横部分との間に形成されている空間は、可動部材50の後述の回動軸部54及び被付勢部55の回動を許容している。
【0041】
端子配列方向で互いに対向して側方収容部14Aを形成する対向内壁面には、可動部材50の回動軸部54を回動可能に支持する回動支持部14Bが、回動支持面をなす凹湾曲面をもって形成されている。
【0042】
信号端子20は、
図2によく見られるように、金属板部材の平坦な板面を維持して打ち抜いて作られており、ハウジング10の信号端子収容部17にそれぞれ収容されることにより、全ての信号端子20の板面が端子配列方向に対して直角をなすようにしてハウジング10に配列保持されている。
【0043】
図3(A)に見られるように、信号端子20は、ハウジング10の前溝部17Aで圧入保持される被保持部21と、該被保持部21の後縁から下溝部17B内を後方へ向けて延びる下腕部22及び上腕部23と、被保持部21の前縁から前方へ延びてから下方へ向けて延びてハウジング10外へ延出する脚部24とを有している。
【0044】
被保持部21は、上縁から上方へ向けて突出する圧入突部21Aが形成されており、該圧入突部21Aが前壁15の前溝部17Aに圧入されて該前溝部17Aの上側内壁面に喰い込むようになっている。
【0045】
下腕部22及び上腕部23は、上下方向で弾性変位可能であり、平型導体Cの下面に露呈した信号回路部(図示せず)と後端部で接圧をもって接触するようになっている(
図5(A)参照)。
【0046】
下腕部22は、被保持部21の下部の後縁から下溝部17Bの後端位置まで延びている。該下腕部22は、
図3(A)に見られるように、下溝部17Bの溝底面に接しながら被保持部21の後縁から後方へ延びてから、後方へ向かうにつれて若干上方へ傾斜するように延びている。該下腕部22の後端には、平型導体Cの信号回路部と接触するための後方接触部22Aが上方へ向けて突出して形成されている。該後方接触部22Aは、下腕部22の自由状態にて、下溝部17B外へ突出して、受入部11内に位置している。
【0047】
上腕部23は、下腕部22の上方に設けられており、被保持部21の上下方向中間位置で該被保持部21の後縁から下溝部17Bの後端寄り位置まで、すなわち、下腕部22の後端部よりも前方位置まで、後方へ向かうにつれて若干上方へ傾斜するように延びている。該上腕部23の後端には、平型導体Cの信号回路部と接触するための前方接触部23Aが上方へ向けて突出して形成されている。該前方接触部23Aは、上腕部23の自由状態にて、下腕部22の後方接触部22Aよりも前方位置で下溝部17B外へ突出しており、受入部11内で後方接触部22Aとほぼ同じ高さに位置している。
【0048】
脚部24は、その下端部が回路基板(図示せず)との接続のための接続部24Aとして形成されている。該接続部24Aは、その下縁がハウジング10の底壁12の下面とほぼ同じ高さに位置しており、回路基板(図示せず)の対応信号回路部と半田接続されるようになっている。
【0049】
このような構成の信号端子20は、ハウジング10の信号端子収容部17内へ前方から圧入されて該ハウジング10に取り付けられる。信号端子20の取付けの際には、被保持部21が前溝部17A内に圧入されて、被保持部21の圧入突部21Aが前溝部17Aの上側内壁面に喰い込むとともに、該被保持部21の下縁が前溝部17Aの溝底にそして下腕部21の下縁が下溝部17Bの溝底(下側内壁面)に接圧をもって当接することにより、信号端子20が信号端子収容部17内で保持される。
【0050】
グランド端子30は、既述の信号端子20と同様に、
図2によく見られるように、金属板部材の平坦な板面を維持して打ち抜いて作られており、ハウジング10のグランド端子収容部18にそれぞれ収容されることにより、全てのグランド端子30の板面が端子配列方向に対して直角をなすようにしてハウジング10に配列保持されている。
【0051】
図3(B)に見られるように、グランド端子30は、ハウジング10のグランド端子収容部18の下溝部18A内で前後方向に延びる下腕部31と、上溝部18B内で前後方向に延びる上腕部32と、前溝部18C内で上下方向に延び下腕部31と上腕部32の前端同士を連結する連結部33と、下腕部31の後端から後溝部18D内で下方へ延びる被保持部34とを有している。
【0052】
下腕部31は、下溝部18Aの溝底に沿って前後方向で該下溝部18Aのほぼ全域にわたって直状に延びている。上腕部32は、連結部33の上部の後縁から、後方へ向かうにつれて下方へ傾斜するようにして、前後方向での信号端子20の後方接触部22Aと前方接触部23Aとの中間位置まで延びている。該上腕部32の後端には、平型導体Cの上面のグランド回路部(図示せず)と接触するためのグランド接触部32Aが下方へ向けて突出して形成されている。該グランド接触部32Aは、上腕部32の自由状態にて、上溝部18B外へ突出して、受入部11内に位置している。
【0053】
連結部33は、上縁から上方へ向けて突出する圧入突部33Aが形成されており、該圧入突部33Aが前壁15の前溝部18Cに圧入されて該前溝部18Cの上側内壁面に喰い込むようになっている。また、被保持部34は、前縁から没した圧入凹部34Aが形成されており、該圧入凹部34Aに底壁12の後端部が圧入されるようになっている。また、該被保持部34は、その下端部が回路基板(図示せず)との接続のための接続部34Bとして形成されている。該接続部34Bは、その下縁がハウジング10の底壁12の下面とほぼ同じ高さに位置しており、回路基板(図示せず)の対応グランド回路部と半田接続されるようになっている。
【0054】
このような構成のグランド端子30は、ハウジング10のグランド端子収容部18内へ後方から圧入されて該ハウジング10に取り付けられる。グランド端子30の取付けの際には、連結部33が前溝部18C内に圧入されて、連結部33の圧入突部33Aが前溝部18Cの上側内壁面に喰い込むとともに、該連結部33の下縁が前溝部18Cの溝底にそして下腕部31の下縁が下溝部18Aの溝底(下側内壁面)に接圧をもって当接する。また、被保持部34の圧入凹部34A内に底壁12の後端部が圧入される。この結果、グランド端子30がグランド端子収容部18内で保持される。
【0055】
付勢金具40は、
図2及び
図3(D)に見られるように、略帯状の金属板部材を、該金属板部材の長手方向での中間位置で板厚方向に屈曲して作られている。以下、付勢金具40については、上記金属板部材の短手方向、すなわち端子配列方向と一致する方向を「幅方向」という。該付勢金具40は、回路基板の実装面に対面する下板部41と、該下板部41の後端で屈曲されて上方へ延びる後板部42と、該後板部42の上端で屈曲されて前方へ延びる上板部43と、下板部41の前端で折り返されて該下板部41の上方で後方へ向けて延びる可撓な付勢片44と、後板部42の下端で屈曲されて後方へ延びる固定部45とを有している。
【0056】
下板部41は、
図3(D)に見られるように、側方収容部14Aの下壁14A−1に沿って前後方向に延びている。該下板部41は、付勢金具40がハウジング10へ後方から取り付けられた際に、該下板部41の側縁で側方収容部14Aの対向内壁面(端子配列方向で対向する一対の内壁面)に対して圧接することで、圧入保持される。また、該下板部41の後部には、端子配列方向での中間位置で切欠部41Aが形成されており、該切欠部41Aで付勢片44の自由端の下方への弾性変位を許容している(
図4(D)参照)。
【0057】
後板部42は、
図2に見られるように、下板部41の後端の幅方向両端位置で屈曲されて上方へ延びている。
【0058】
上板部43は、
図2に見られるように、後板部42の上端の幅方向中間位置で屈曲されて前方へ延びている。該上板部43は、
図3(D)に見られるように、側方収容部14Aの上壁14A−2に沿って前後方向に延びている。また、該上板部43は、付勢金具40がハウジング10へ後方から取り付けられた際に、該上板部43の側縁で側方収容部14Aの対向内壁面(端子配列方向で対向する一対の内壁面)に対して圧接することで、圧入保持される。
【0059】
付勢片44は、
図3(D)によく見られるように、後方へ向けて下板部41の後端近傍まで延びる片持ち梁状をなしており、その板厚方向(
図3(D)での上下方向)で弾性変位可能となっている。該付勢片44の後端側部分には、可動部材50の被付勢部55を付勢するための付勢部44Aが形成されている。該付勢部44Aは、前後方向での中間位置で上方に突出する屈曲部44A−1を有するように屈曲されていて、全体として山状をなしている。
【0060】
付勢部44Aは、屈曲部44A−1の後方に位置する部分、すなわち、後方へ向かうにつれて下方へ傾斜する部分の上面が、可動部材50の後述の第一被付勢面55Aを閉位置へ向けて付勢するための第一付勢面44A−2として形成されている。また、該付勢部44Aは、屈曲部44A−1の前方に位置する部分、すなわち、後方へ向かうにつれて上方へ傾斜する部分の上面が、可動部材50の後述の第二被付勢面55Bを開位置へ向けて付勢するための第二付勢面44A−3として形成されている(
図6(D)参照)。
【0061】
固定部45は、
図2に見られるように、後板部42の幅方向中間位置で該後板部42の下端で屈曲されて後方へ延びている。該固定部45は、
図3(D)に見られるように、その下面がハウジング10の底壁12の下面とほぼ同じ高さに位置しており、回路基板(図示せず)の対応部に半田接続されて該回路基板に固定されるようになっている。
【0062】
次に、可動部材50の構成について、主に、閉位置にあるときの状態が示されている
図2を参照しながら説明する。また、可動部材50の回動する方向について、説明の便宜上、必要に応じて、開位置から閉位置へ向かう方向(
図3(C),(D)での時計回り方向)を「閉方向」、閉位置から開位置へ向かう方向(
図3(C),(D)での反時計回り方向)を「開方向」という。
【0063】
可動部材50は、
図2に見られるように、端子配列方向を長手方向として延びる板状をなす本体部51と、端子配列方向での本体部51の両端側に位置する後述の端板部52、連繋部53、回動軸部54、被付勢部55及び延出部56とを有している。本実施形態では、可動部材50は、閉位置にあるとき(
図3(A)〜(D)参照)、ハウジング10の上壁13と干渉しており、閉方向への回動が阻止されている。
【0064】
本体部51は、閉位置と開位置との間での可動部材50の回動操作を受ける。該本体部51は、閉位置における本体部51の前端部(
図3(A)での右端部)が、閉位置にある可動部材50を開位置へ回動させる際の操作を受ける解除操作部51Aとして形成されている。
図3(A)に見られるように、ハウジング10の上面との間に形成された隙間の存在により、解除操作部51Aに指を引っ掛けて可動部材50を開方向に回動させることにより、後述する係止部56Bと平型導体Cの被係止部C2Aとの係止状態を解除できるようになっている。
【0065】
端板部52は、
図2に見られるように、端子配列方向での本体部51の両端位置で端子配列方向に対して直角な板面をもって設けられており、その後端部が、本体部51の後縁よりも後方へ延びている。連繋部53は、端子配列方向での端板部52よりも内側位置で、端子配列方向に対して直角な板面をもって本体部51の後端から後方へ向けて延びており、端板部52の後端部と対面している。
【0066】
回動軸部54は、端子配列方向でハウジング10の側方収容部14Aに対応する位置にて、端板部52の後端部と連繋部53との対向板面同士を連結するようにして端子配列方向に延びている。このように、回動軸部54は端板部52の後端部と連繋部53とによって本体部51に連繋されている。該回動軸部54は、その軸線まわりの周面に凸湾曲面を有しており、端子配列方向での両端部の凸湾曲面が、ハウジング10の側壁14に設けられた回動支持部14Bで回動可能に支持される(
図3(D)参照)。また、
図3(C)及び
図3(D)には、回動軸部54の回動中心54Aが十字印で示されている。
【0067】
被付勢部55は、付勢金具40の付勢片44と係合して該付勢片44から閉位置または開位置へ向けた付勢力を受けるようになっている。該被付勢部55は、
図2に見られるように、端子配列方向での回動軸部54の中央位置から下方へ向けて延びている。また、該被付勢部55は、
図3(D)に見られるように、下部の前面(
図3(D)での右面)と後面(
図3(D)での左面)が、下方へ向かうにつれて互いに近づくような傾斜面をなしており、端子配列方向に見て上記下部が先細り形状となっている。
【0068】
図3(D)に見られるように、被付勢部55の下端面は、付勢金具40の付勢片44の第一付勢面44A−2からの閉位置へ向けた付勢力を受ける第一被付勢面55Aとして形成されている(
図4(D),
図5(D)をも参照)。また、被付勢部55の下部の後面は、付勢金具40の付勢片44の第二付勢面44A−3からの開位置へ向けた付勢力を受ける第二被付勢面55Bとして形成されている(
図6(D)参照)。
【0069】
延出部56は、
図2及び
図3(C)に見られるように、端子配列方向で連繋部53に隣接する内側位置で、該可動部材50の本体部51の後部から下方へ向けて延びて形成されている。延出部56は、端子配列方向に見たとき、該延出部56の上部の後端寄り位置が、回動軸部54の回動中心54Aの位置と一致している。
【0070】
延出部56は、可動部材50が閉位置にあるときに、上下方向中間位置で、前後方向に延びて貫通する貫通溝部56Aが、端子配列方向での該延出部56の内側面から没して形成されている。後述するように、該貫通溝部56Aは、可動部材50が所定の角度位置にもたらされたときに、平型導体Cの被係止部C2Aの通過を許容する通過許容空間を形成する(
図4(C)参照)。
【0071】
貫通溝部56Aは、
図3(C)に見られるように、可動部材50が閉位置にある状態にて、前方へ向かうにつれて下方へ若干傾斜するような溝部として形成されている。該貫通溝部56Aの上側内壁面56A−1は、前方へ向かうにつれて徐々に受入部11の下側内壁面11Aに近づくように傾斜しており、上記上側内壁面56A−1の前半部と上記下側内壁面11Aとの上下方向での間隔が平型導体Cの厚み寸法よりも小さくなっている。したがって、平型導体Cの挿入過程にて、貫通溝部56A内へ進入した平型導体Cの耳部C2は、上側内壁面56A−1と当接して、その当接力によって、可動部材50を開方向に回動させるようになっている(
図4(C)参照)。
【0072】
また、延出部56の貫通溝部56Aの直上に位置する部分は、可動部材50が閉位置にあるときに後方への抜出力を受けた平型導体Cの被係止部C2Aに対して係止可能な係止部56Bとして形成されている。係止部56Aは、
図3(C)に見られるように、可動部材50が閉位置にあるとき回動軸部54よりも下方に位置しており、係止部56Bが被係止部C2Aから後方へ向けた抜出力を受けたときに、可動部材50を回動軸部54の回動中心54Aまわりで閉方向に回動させるモーメントを生ずるようになっている。
【0073】
係止部56Bの前面、すなわち、被係止部C2Aと係止可能な係止面56B−1は、可動部材50が閉位置にあるとき、
図3(C)に見られるように、下方に向かうにつれて前方へ傾斜するような傾斜面として形成されており、上記上側内壁面56A−1の前半部と上記下側内壁面11Aとの上下方向での間隔が平型導体Cの厚み寸法よりも小さくなっている。本実施形態では、係止部56Bは、係止面56B−1に対して被係止部C2Aが係止した状態で、係止面56B−1よりも後方側かつ被係止部C2Aの通過経路(
図5(C)にて一点鎖線で図示)に対して貫通溝部56Aとは反対側で、該係止面56B−1と平型導体Cの抜出方向とのなす角度が鋭角となっている。
【0074】
また、延出部56の貫通溝部56Aの下方に位置する部分は、可動部材50が開位置にあるときに後方への抜出力を受けた平型導体Cの被係止部C2Aに対して当接可能な受圧部56Cとして形成されている。受圧部56Cは、可動部材50の角度位置にかかわらず、常に回動軸部54よりも下方に位置しており、被係止部C2Aからの当接力を受けたときに可動部材50を回動軸部54の回動中心54Aまわりで閉方向に回動させるモーメントを生ずるようになっている。
【0075】
受圧部56Cの前面、すなわち、被係止部C2Aと当接可能な受圧面56C−1は、可動部材50が閉位置にあるとき、
図3(C)に見られるように、上方に向かうにつれて前方へ傾斜するような傾斜面として形成されている。本実施形態では、
図6(C)に見られるように、可動部材50が開位置にあるとき、受圧部56Cは、受圧面56C−1に対して被係止部C2Aが当接した状態で、受圧面56C−1よりも後方側かつ被係止部C2Aの通過経路(
図6(C)にて一点鎖線で図示)に対して貫通溝部56Aとは反対側で、該受圧面56C−1と平型導体Cの抜出方向とのなす角が鈍角となっている。
【0076】
このような構成のコネクタ1は、以下の要領で組み立てられる。まず、ハウジング10の信号端子収容部17へ信号端子20を前方から圧入して取り付けるとともに、ハウジング10のグランド端子収容部18へグランド端子30を後方から圧入して取り付ける。また、ハウジング10の側方収容部14A内に可動部材50の回動軸部54を上方から収容し、該可動部材50をハウジング10に取り付ける。この結果、回動軸部54は回動支持部14Bにて回動可能に支持される(
図3(D)参照)。また、延出部56の上部がハウジング10の上方収容部13A内に収容され、延出部56の係止部56Bがハウジング10の受入部11内に収容され、受圧部56Cがハウジング10の下方収容部12Aに収容される(
図3(C)参照)。上述した信号端子20の取付工程、グランド端子30の取付工程及び可動部材50の取付工程は、いずれが先に行われてもよく、また、同時に行われてもよい。
【0077】
次に、付勢金具40の下板部41及び上板部43をそれぞれハウジング10の側方収容部14Aに後方から圧入することにより、付勢金具40をハウジング10に取り付ける。付勢金具40がハウジング10に取り付けられる結果、該付勢金具40の上板部43は、端子配列方向では可動部材50の端板部52と連繋部53との間、そして上下方向では、上壁14A−2の直下に位置する。また、上板部43は、回動軸部54の上方に位置しており、該上板部43によって、ハウジング10からの可動部材50の不用意な抜けが防止される(
図3(D)参照)。
【0078】
次に、コネクタ1と平型導体Cとの接続動作を
図3〜5に基づいて説明する。まず、コネクタ1の信号端子20の接続部24A及びグランド端子30の接続部34Bを回路基板の対応回路部に半田接続するとともに、付勢金具40の固定部45を回路基板の対応部に半田接続して固定する。
【0079】
次に、
図3(A)〜(D)に見られるように、コネクタ1の後方に平型導体Cを回路基板(図示せず)の実装面に沿って前後方向に延びるように位置させる。次に、平型導体Cを前方へ向けてコネクタ1の受入部11に挿入する。受入部11への平型導体Cの挿入過程において、平型導体Cは、端子配列方向に見て、グランド端子30の上腕部32のグランド接触部32Aと信号端子20の下腕部22の後方接触部22A及び上腕部23の前方接触部23Aとの間を押し広げるようにして前方へ進行する。この結果、
図4(A),(B)に見られるように、グランド端子30の上腕部32が上方へそして信号端子20の下腕部22及び上腕部23が下方へ弾性変位する。
【0080】
本実施形態では、平型導体Cの挿入過程にて、信号端子20の下腕部22及び上腕部23からの反力が平型導体Cに対して下方から作用することとなり、グランド端子30の上腕部32が平型導体Cを介して上記反力を受けることとなる。このように上記反力をグランド端子30の上腕部32で受けることにより、ハウジング10の上壁13の変形や破損を防止することができる。
【0081】
また、平型導体Cの両側端寄りに位置する耳部C2が、可動部材50の貫通溝部56A内へ進入した後、該耳部C2の前端が貫通溝部56Aの上側内壁面56A−1と当接して、その当接力によって、可動部材50を開方向へ回動させる。その結果、
図4(C)に見られるように、耳部C2が上側内壁面56A−1を下方から支持した状態となり、平型導体Cの挿入過程における可動部材50の回動角度が最大となる。また、この時点で、貫通溝部56Aが平型導体Cの抜出方向での全域にわたり通過経路(
図4(C)にて一点鎖線で図示)上に位置することとなり、耳部C2ひいては平型導体Cの前方へのさらなる進行が許容される。
【0082】
可動部材50の上述の回動により、該可動部材50の被付勢部55も開方向へ回動することとなり、
図4(D)に見られるように、該被付勢部55がその下端で付勢金具40の第一付勢面44A−2を押圧して、付勢片44を下方へ弾性変位させる。この結果、付勢片44の復元力により、第一付勢面44A−2が被付勢部55の下端面、すなわち第一被付勢面55Aを開方向に付勢する。また、
図4(D)に示されているのは可動部材50の回動角度が最大となった状態であり、被付勢部55の下端が付勢片44の屈曲部44A−1を乗り越えることはない。したがって、平型導体Cの挿入過程において、被付勢部55が開位置へ向けた付勢力を受けることはない。
【0083】
平型導体Cがさらに前方へ挿入されると、
図5(A)〜(C)に見られるように、該平型導体Cの耳部C2が通過して、挿入完了位置にもたらされる。
図5(A)に見られるように、平型導体Cの挿入完了状態では、信号端子20の下腕部22及び上腕部23の弾性変位状態が維持されており、平型導体Cの下面の信号回路部(図示せず)と後方接触部22Aと前方接触部23Aとが接圧をもって接触し電気的に導通した状態が維持される。また、
図5(B)に見られるように、グランド端子30の上腕部32の弾性変位状態が維持されており、平型導体Cの上面のグランド回路部(図示せず)とグランド接触部32Aとが接圧をもって接触し電気的に導通した状態が維持される。このようにして平型導体Cの接続動作が完了する。
【0084】
また、平型導体Cが挿入完了位置にもたらされると、
図5(C)に見られるように、平型導体Cの耳部C2が係止部56Bの位置を通過して該係止部56Bよりも前方にもたらされる。この結果、可動部材50が付勢金具40の付勢片44からの付勢力を受けて閉位置へ復帰し、
図5(C)に見られるように、係止部56Bが、平型導体Cの切欠部C1内に上方から突入する。そして、平型導体Cの被係止部C2Aが係止部56Bの係止面56B−1に対して係止可能に位置することとなり、平型導体Cの後方への抜出が阻止される。
【0085】
可動部材50が閉位置へ戻されると、
図5(D)に見られるように、付勢片44の第一付勢面44A−2が被付勢部55の第一被付勢面55Aに付勢力をもって接面して係合するので、可動部材50は常に閉位置に維持される。したがって、仮に、コネクタ1と平型導体Cとの接続状態において、可動部材50が不用意な外力を受けて開方向へ若干もち上がってしまっても、該可動部材50は第一付勢面44A−2からの付勢力により閉位置へ押し戻されるので、可動部材50が不用意に開位置に回動することはない。
【0086】
コネクタ1との接続状態にある平型導体Cに対して、後方へ向けた抜出力が不用意に作用した場合、平型導体Cの被係止部C2Aが可動部材50の係止部56Bの係止面56B−1に前方から係止する。可動部材50の回動軸の位置と係止面56Bとは可動部材50を閉方向の力を生じさせるような位置関係となっているので確実に係止状態を維持する。また、本実施形態では、閉位置にある可動部材50はハウジング10の上壁13と干渉しており、閉方向への回動が阻止されているので、係止面56Bが被係止部C2Aから上述の力を受けても、可動部材50が閉方向へ回動することはない。
【0087】
さらに本実施形態では、既述したように、閉位置における係止部56Bの係止面56B−1は、下方に向かうにつれて前方へ傾斜するような傾斜面として形成されている。したがって、被係止部C2Aには、係止面56B−1に沿って上方、すなわち貫通溝部56Aから離れる方向の力が作用する。つまり、被係止部C2Aは、係止部56Bから外れる方向とは逆方向に向けた力を受けることとなり、係止部56Bに対してより強固に係止する。
【0088】
次に、コネクタ1からの平型導体Cの抜出動作を
図5ないし
図7に基づいて説明する。まず、
図5(A)〜(D)に見られるような平型導体Cとの接続状態にて、コネクタ1の可動部材50の解除操作部51Aに指を引っ掛けてもち上げて、上述した付勢金具40の付勢片44からの閉位置へ向けた付勢力に抗して、可動部材50を、
図6(A)〜(D)に示される開位置へ向けて回動させる。このとき、係止部56Bは、上方へ、すなわち平型導体Cの切欠部C1から脱出する方向へ移動する。
【0089】
可動部材50が開位置へ向けて回動する過程にて、可動部材50の被付勢部55の下端部は付勢金具40の付勢片44を下方へ向けて弾性変位させる。上記下端部が付勢片44の屈曲部44A−1の位置に達するまでの間は、該付勢片44の第一付勢面44A−2が可動部材50を閉位置へ向けて付勢している。さらに可動部材50を回動させて、上記下端部が付勢片44の屈曲部44A−1の位置を乗り越えて第二付勢面44A−3の領域に達すると、付勢片44が弾性変位量を減ずる方向(上方)に戻るとともに、被付勢部55を開位置へ向けて付勢する。このようにして可動部材50が開位置に切り換えられると、
図6(D)に見られるように、付勢片44の第二付勢面44A−3が被付勢部55の第二被付勢面55Bに付勢力をもって接面して係合する。したがって、可動部材50は多少の外力を受けても上記付勢力により開位置に戻って安定して開位置を維持する。
【0090】
また、可動部材50が開位置に切り換えられると、
図6(C)に見られるように、係止部56Bは、平型導体Cの切欠部C1から完全に脱出し、該平型導体Cの被係止部C2Aとの係止状態が解除される。そして、
図6(C)に見られるように、可動部材50の受圧部56Cが切欠部C1内に下方から進入し、該受圧部56Cの受圧面56C−1が被係止部C2Aに対して平型導体Cの抜出方向で当接可能に位置する。
【0091】
次に、平型導体Cが後方へ引かれると、
図6(C)に見られるように、該平型導体Cの被係止部C2Aが可動部材50の受圧部56Cの受圧面56C−1に当接する。この時点において、可動部材50は、開位置にあるので、閉位置にあるときとは異なり、閉方向への回動がハウジング10の上壁13によって阻止されることはない。したがって、可動部材50は受圧面56C−1で被係止部C2Aから受けた当接力により、付勢金具40の付勢片44からの開位置へ向けた付勢力に抗して、すなわち、被付勢部55の下端部が付勢片44を押し下げることにより(
図7(D)参照)、閉方向に回動する(
図7(A)〜(D)参照)。
【0092】
本実施形態では、既述したように、受圧面56C−1に対して被係止部C2Aが当接した状態(
図6(C)参照)で、受圧面56C−1よりも後方側かつ被係止部C2Aの通過経路(
図6(C)にて一点鎖線で図示)に対して貫通溝部56Aとは反対側で、該受圧面56C−1と平型導体Cの抜出方向とのなす角が鈍角となっている。したがって、被係止部C2Aには、受圧面56C−1に沿って上方、すなわち通過許容空間へ向かう方向(受入部11の底面やハウジング10の下方収容部12Aから離れる方向)の力が作用する。つまり、被係止部C2Aは、可動部材50が閉方向に回動しても、受圧部56Cによって下方へ引きずられることがないので、貫通溝部56Aを確実に被係止部C2Aの位置にもたらして、貫通溝部56Aで該被係止部C2Aを上記抜出方向へ向けて通過させることにより、平型導体Cを容易に抜出することができる。また、可動部材50の回動過程にて受圧部56Cと下方収容部12Aの前壁面との間の形成される隙間に、被係止部C2Aが入り込んでしまうことを防止できる。
【0093】
可動部材50が閉位置へ向けて回動すると、その回動過程で可動部材50の貫通溝部56Aが上記抜出方向での全域にわたり被係止部C2Aの通過経路上の位置にもたらされ、後方へ向けた耳部C2の通過が許容される。そして、被係止部C2Aが貫通溝部56A内を後方へ向けて通過することにより(被係止部C2Aが貫通溝部56A内を通過している状態については
図4(B)参照)、平型導体Cが後方へ向けて難なく抜出され、抜出動作が完了する。
【0094】
また、貫通溝部56Aが被係止部C2Aの通過経路上の位置にもたらされた時点において、被付勢部55の下端部は、付勢金具40の付勢片44の屈曲部44A−1をすでに乗り越えており、被付勢部55の第一被付勢面55Aが付勢片44の第一付勢面44A−2から閉位置へ向けた付勢力を受けている。したがって、平型導体Cの被係止部C2Aが貫通溝部56Aを通過した後も、可動部材50は引き続き回動し自動的に閉位置へ至ることとなる。このようにして、平型導体Cの抜出と及び可動部材50の閉位置への回動は、短時間で一連の動作としてなされる。したがって、本実施形態によれば、平型導体Cの抜出後、次の挿入時に作業者が可動部材50を開位置から閉位置へ戻す操作を行う必要がなくなり、作業効率の向上を図ることができる。コネクタ1の可動部材50が不用意に開位置に留まっていることを回避できるので、コネクタ1が実装されている回路基板上にて、可動部材50が他の電子部品の接続時に邪魔になることがない。
【0095】
本実施形態では、付勢金具によって可動部材を付勢することとしたが、該付勢金具を設けることは必須ではない。付勢金具が設けられない場合、例えば、可動部材が開位置にもたらされたときには、該可動部材がハウジングや端子等によって支持されることにより開位置に維持され、開位置以外では可動部材がその自重により閉位置へ自動的にもたらされるようにすることができる。
【0096】
本実施形態では、可動部材はハウジングによって回動可能に支持されることとしたが、これに代えて、可動部材は、例えば信号端子及びグランド端子の少なくとも一方によって回動可能に支持されていてもよい。
【0097】
本実施形態では、付勢片が付勢金具に設けられていた付勢片で可動部材を付勢することとしたが、これに代えて、例えば、樹脂製の付勢部材をハウジングに取り付けて、該付勢部材に形成された付勢片で可動部材を付勢することとしてもよい。また、ハウジングの一部、あるいは可動部材50に付勢片を形成し、該付勢片で可動部材を付勢することとしてもよい。