(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の発泡成形体は、ポリスチレン系樹脂を基材樹脂としている。この基材樹脂は以下のGPC測定で得られる分子量MについてLogMと微分分布値の曲線(分子量分布曲線)で規定される分子量を有している。
分子量分布
基材樹脂は
図1に示すように、分子量分布曲線において、トップピーク分子量(Mp)を基準として、Mp以上の分子量で規定される面積S1とMp以下の分子量で規定される面積S2とが、S1>S2×1.1の関係を有する樹脂を含んでいる。ここでMpとは分子量MについてLogMと微分分布値の曲線(分子量分布曲線)で規定される最も微分分散値が高い点に対応する分子量を意味する。S1がS2×1.1以下の場合、十分な機械的強度の発泡成形体を得難くなる。好ましい関係は、S1>S2×1.15であり、より好ましい関係はS1>S2×1.17である。
また、全体に占めるS1の割合は、48%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましい。Mpは10万〜18万の範囲内に位置することが好ましい。Mpが10万未満の場合、機械的強度が低下することがある。18万より大きい場合、低圧蒸気での成形性が低下することがある。より好ましいMpは11万〜17万であり、更に好ましいMpは11万〜16万である。
【0014】
Z+1平均分子量(Mz+1)
Mz+1は、Mn、Mw及びMzより高分子量の成分がリッチに存在していることを強調し得る平均分子量である。
Mz+1は100万〜1000万であることが好ましい。Mz+1が100万未満の場合、十分な機械強度が得られないことがある。1000万より大きい場合、低圧蒸気での成形性が低下することがある。より好ましいMz+1は150万〜500万であり、更に好ましいMz+1は150万〜400万である。
【0015】
構成成分
基材樹脂を構成するポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体に由来する成分を90%以上含有する。
スチレン系単量体由来の成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体、もしくは、これらの共重合体が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体由来成分と他の単量体由来成分との共重合体であってもよい。他の単量体由来成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート等のアルキルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート等のアルキルフマレート、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、(メタ)アクリル酸、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(ビニルフェニル)ブタン、ジビニルナフタレン、ジビニルアントラセン、ジビニルビフェニル等の多官能のベンゼン環に直接ビニル基が結合した化合物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。なお、単量体の使用量と、その単量体の由来する樹脂の含有量とはほぼ一致している。
【0016】
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体とアクリル酸エステルとの共重合体であることが好ましい。アクリル酸エステルとの共重合体を使用することで、低圧蒸気での成形性をより向上できる。ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体由来成分を90〜99.5質量%と、アクリル酸エステル由来成分を0.5〜10質量%とを含むことが好ましい。スチレン系単量体由来成分の含有量が90質量%未満の場合、発泡成形体の強度が低下することがある。99.5質量%より多い場合、少蒸気量での発泡成形性が十分得難くなることがある。スチレン系単量体由来成分の含有量は、92〜99.5質量%であることがより好ましく、95〜99.5質量%であることが更に好ましい。
更に基材樹脂には、本発明の効果を損なわない程度に他の樹脂が混合されていてもよい。他の樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体等のジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル等、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これら他の樹脂が占める割合は、基材樹脂全量に対して、10質量%以下であることが好ましい。
【0017】
その他の添加剤
基材樹脂は必要に応じて、樹脂以外に他の添加剤を含んでもよい。他の添加剤としては可塑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、充填剤、着色剤、耐候剤、老化防止剤、滑剤、防曇剤、香料等が挙げられる。
可塑剤としては、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。また、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソブチル等のフタル酸エステル、流動パラフィン、ホワイトオイル等の高沸点化合物も挙げられる。この可塑剤は、機械的強度の低下を防止する為に含有量ができるだけ少ないことが好ましいが、樹脂のZ+1平均分子量が高くなる場合には、可塑剤を添加してもよい。例えば、基材樹脂が100万以上、800万以下のZ+1平均分子量を有する発泡成形体を得る場合、可塑剤の添加量は、樹脂100質量部に対して0〜1.5質量部であってもよい。また、基材樹脂が800万より大きく、1000万以下のZ+1平均分子量を有する発泡成形体を得る場合、可塑剤の添加量は、樹脂100質量部に対して1.5〜2.0質量部であってもよい。
【0018】
難燃剤としてはテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)等のハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤等が挙げられる。難燃剤の添加量としては、樹脂100質量部に対して0.5〜5.0質量部であることが好ましく、0.6〜1.5質量部であることがより好ましい。
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0019】
帯電防止剤としては例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
展着剤としてはポリブテン、ポリエチレングリコール、グリセリン、シリコンオイル等が挙げられる。
気泡調整剤としては、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズ、ポリテトラフルオロエチレン、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等のビスアミド化合物、ステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のアミド化合物、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の高級脂肪酸グリセライド等が挙げられる。
滑剤としてはステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等のビスアミド化合物、ステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のアミド化合物、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の高級脂肪酸グリセライド、ポリエチレンワックス、流動パラフィン、ホワイトオイル等が挙げられる。
【0020】
発泡成形体の製造方法
発泡成形体の製造方法は特に限定されない。例えばスチレン系樹脂からなる種粒子に、スチレン系単量体と任意に他の単量体とを含む単量体混合物を吸収させて重合させることで、樹脂粒子を得、樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得、発泡性粒子を発泡させて予備発泡粒子を得、予備発泡粒子を型内成形することで得ることができる。
種粒子
種粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることができ、例えば、(i)スチレン系樹脂を押出機で溶融混練し、ストランド状に押し出し、ストランドをカットすることにより種粒子を得る押出方法、(ii)水性媒体、スチレン系単量体及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を懸濁重合させて種粒子を製造する懸濁重合法、(iii)水性媒体及びスチレン系樹脂粒子をオートクレーブ内に供給し、スチレン系樹脂粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を連続的にあるいは断続的に供給して、スチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体を吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させて種粒子を製造するシード重合法等が挙げられる。
また、種粒子は一部、又は全部に樹脂回収品を用いることができる。回収品を使用する場合は、押出方法による種粒子の製造が向いている。
【0021】
種粒子の平均粒子径は、樹脂粒子の平均粒子径に応じて適宜調整できる。例えば平均粒子径が1mmの樹脂粒子を得ようとする場合には、平均粒子径が0.7mm〜0.9mm程度の種粒子を用いることが好ましい。更に、種粒子の重量平均分子量は特に限定されないが10万〜70万が好ましく、更に好ましくは15万〜50万である。
【0022】
含浸工程
種粒子を水性媒体中に分散させてなる分散液中に、単量体混合物を供給することで、各単量体を種粒子に吸収させる。
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0023】
使用する各単量体には、重合開始剤を含ませてもよい。重合開始剤としては、従来から単量体の重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これら開始剤の内、残存単量体を低減させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃にある異なった二種以上の重合開始剤を併用することが好ましい。なお、重合開始剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0024】
水性媒体中には単量体の小滴、及び種粒子の分散を安定させるために懸濁安定剤が含まれていてもよい。懸濁安定剤としては、従来から単量体の懸濁重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ハイドロキシアパタイト等の難溶性無機化合物等が挙げられる。そして、前記懸濁安定剤として難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤を併用するのが好ましく、このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩等のスルフォン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩;アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0025】
重合工程
重合工程は、使用する単量体種、重合開始剤種、重合雰囲気等により異なるが、通常、70〜130℃の加熱を、3〜10時間維持することにより行われる。例えば、基材樹脂が100万以上、400万以下のZ+1平均分子量を有する発泡成形体を得る場合、重合工程は、80〜130℃の加熱により行われてもよい。また、基材樹脂が400万より大きく、1000万以下のZ+1平均分子量を有する発泡成形体を得る場合、重合工程は、80〜90℃の加熱により行われてもよい。重合工程は、単量体を含浸させつつ行ってもよい。
重合工程は、使用する単量体全量を1段階で重合させてもよく、2段階以上に分けて重合させてもよい(種粒子の製造時の重合を含む)。更に断続的、連続的に種粒子で継続させて重合させてもよい。
【0026】
発泡性粒子
発泡性粒子(発泡性樹脂粒子)は上記スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させた粒子である。
発泡剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。特に、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内、炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡成形体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭化水素の内、沸点が−45〜40℃の炭化水素がより好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。
【0027】
更に、発泡剤の含有量は、2〜12質量%の範囲であることが好ましい。2質量%より少ないと、発泡性粒子から所望の密度の発泡成形体を得られないことがある。加えて、型内発泡成形時の二次発泡力を高める効果が小さくなるために、発泡成形体の外観が良好とならないことがある。12質量%より多いと、発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなって生産性が低下することがある。より好ましい発泡剤の含有量は3〜10質量%である。
【0028】
発泡性粒子は、ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする。基材樹脂は、上記の発泡成形体を構成するものとほぼ同一の物性を有する。すなわち、基材樹脂は、当該基材樹脂のGPC測定で得られる分子量MについてのLogMと微分分布値の曲線において、トップピーク分子量(Mp)が10万から18万であり、Mp以上の分子量で規定される面積S1とMp以下の分子量で規定される面積S2とが、S1>S2×1.1の関係を有する。
【0029】
発泡性粒子は、上記スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより得ることができる。含浸は、重合途中に湿式で行ってもよく、重合後に湿式又は乾式で行ってもよい。湿式で行う場合は上記重合工程で例示した、懸濁安定剤及び界面活性剤の存在下で行ってもよい。
発泡剤の含浸温度は、60〜120℃が好ましい。60℃より低いと、樹脂粒子に発泡剤を含浸させるのに要する時間が長くなって生産効率が低下することがある。また、120℃より高いと、樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがある。より好ましい含浸温度は、70〜110℃である。
発泡助剤を、発泡剤と併用してもよい。発泡助剤としては、アジピン酸イソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン等が挙げられる。Z+1平均分子量(Mz+1)が400万〜700万であればスチレン系樹脂粒子100質量部に対して0.5〜1.5質量部、700万〜1000万であれば1.5〜2.0質量部のシクロヘキサンを添加することが好ましい。それぞれ添加しない場合や添加量が少ない場合、発泡性粒子から所望の密度の発泡成形体が得られないことや、型内発泡成形時の二次発泡力が低下し発泡成形体の外観を損なうことがある。
【0030】
予備発泡粒子
予備発泡粒子は水蒸気等を用いて所望の嵩密度に発泡性粒子を発泡させることで得られる。
予備発泡粒子の嵩密度は0.01〜0.04g/cm
3の範囲であることが好ましい。予備発泡粒子の嵩密度が0.01g/cm
3より小さい場合、次に得られる発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。加えて発泡成形体の断熱性能及び機械的強度が低下することがある。一方、嵩密度が0.04g/cm
3より大きい場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。
なお、発泡前に、発泡性粒子の表面に、ステアリン酸亜鉛のような粉末状金属石鹸類を塗布しておくことが好ましい。塗布しておくことで、発泡性粒子の発泡工程において予備発泡粒子同士の結合を減少できる。
【0031】
予備発泡粒子は、ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする。基材樹脂は、上記の発泡成形体を構成するものとほぼ同一の物性を有する。すなわち、基材樹脂は、当該基材樹脂のGPC測定で得られる分子量MについてのLogMと微分分布値の曲線において、トップピーク分子量(Mp)が10万から18万であり、Mp以上の分子量で規定される面積S1とMp以下の分子量で規定される面積S2とが、S1>S2×1.1の関係を有する。
【0032】
発泡成形体
発泡成形体は例えば、食品、魚、農産物等の輸送容器、工業製品等の梱包材、床断熱用の断熱材、盛土材、畳の芯材、FJリング等の緩衝材に使用できる。発泡成形体はこれら使用用途に応じた形状、密度をとり得る。発泡成形体の密度は、0.01〜0.04g/cm
3の範囲であることが好ましい。発泡成形体の密度が0.01g/cm
3より小さい場合、発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。加えて発泡成形体の機械的強度が低下することがある。一方、密度が0.04g/cm
3より大きい場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。
【0033】
発泡成形体は例えば、以下の方法により得ることができる。
予備発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で加熱発泡させ、予備発泡粒子間の空隙を埋めると共に、予備発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させることで、発泡成形体を製造できる。その際、発泡成形体の密度は、例えば、金型内への予備発泡粒子の充填量を調整する等して調製できる。
【0034】
加熱発泡は、例えば、110〜150℃の熱媒体で、5〜50秒加熱することにより行うことができる。この条件であれば、粒子相互の良好な融着性を確保できる。より好ましくは、加熱発泡は、成形蒸気圧(ゲージ圧)0.06〜0.08MPa、90〜120℃の熱媒体(例えば、水蒸気)で、10〜50秒加熱することにより行うことができる。
【0035】
予備発泡粒子は、発泡成形体の成形前に、例えば常圧で、熟成させてもよい。予備発泡粒子の熟成温度は、20〜60℃が好ましい。熟成温度が低いと、予備発泡粒子の熟成時間が長くなることがある。一方、高いと、予備発泡粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下することがある。
【実施例】
【0036】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<トップピーク分子量(Mp)及び、Z+1平均分子量>
トップピーク分子量(Mp)及びZ+1重量平均分子量(Mz+1)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン(PS)換算平均分子量を意味する。具体的には、試料(発泡性粒子、予備発泡粒子、発泡成形体)3mgをテトラヒドロフラン(THF)10mLにて72時間静置して溶解させ(完全溶解)、得られた溶液を倉敷紡績社製の非水系0.45μmのクロマトディスク(13N)で濾過して測定する。予め測定し作成しておいた標準ポリスチレンの検量線から試料の平均分子量を求める。またクロマトグラフの条件は下記の通りとする。
(測定条件)
使用装置:高速GPC装置:東ソー社製 HLC−8320GPC EcoSECシステム(RI検出器内蔵)
ガードカラム:東ソー社製 TSKguardcolumn SuperHZ−H(4.6mmID×2cmL)×1本
カラム:東ソー社製 TSKgel SuperHZM−H(4.6mmI.D×15cmL)×2本
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
移動相流量:試料側 0.175mL/分、リファレンス側 0.175mL/分
検出器:RI検出器
試料濃度:0.3g/L
注入量:50μL
測定時間:0−25分
ランタイム:25分
サンプリングピッチ:200msec
(検量線の作成)
検量線用標準ポリスチレン試料としては、東ソー社製 商品名「TSK standard POLYSTYRENE」の重量平均分子量が、5,480,000、3,840,000、355,000、102,000、37,900、9,100、2,630、500のものと、昭和電工社製商品名「Shodex STANDARD」の重量平均分子量が1,030,000である標準ポリスチレン試料を用いる。
【0037】
検量線の作成方法は以下の通りである。上記検量線用標準ポリスチレン試料をグループA(重量平均分子量が1,030,000のもの)、グループB(重量平均分子量が3,840,000、102,000、9,100、500)及びグループC(重量平均分子量が5,480,000、355,000、37,900、2,630)にグループ分けする。グループAを5mg秤量した後にテトラヒドロフラン20mLに溶解し、グループBも各々5mg〜10mg秤量した後にテトラヒドロフラン50mLに溶解し、グループCも各々1mg〜5mg秤量した後にテトラヒドロフラン40mLに溶解した。標準ポリスチレン検量線は作成したA,B及びC溶液を50μLを注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)をHLC−8320GPC専用データ解析プログラムGPCワークステーション(EcoSEC−WS)にて作成することにより得られ、その検量線を用いて測定した。一方、前記GPC測定で得られる分子量MについてのLogMと微分分布値で得られる曲線をJIS規格方眼用紙(1mm方眼、目盛り数:250×180、サイズ:A4、寸法(縦×横)(mm):297×210、坪量70(g/m
2)に印字する。この曲線と微分分布値0のベースラインで形成される形状において、トップピーク分子量Mpより高分子量側S1とMpより低分子量側S2の部分を切りぬいて各重量(g−1、g−2)を測定する。一方、使用したJIS規格の方眼用紙から25cm
2の平方形を切出し重量(g−0)を測定する。これらg−1、g−2、g−0を使用してS1、S2の面積を次式で算出する。
S1=25×(g−1)/(g−0)、S2=25×(g−2)/(g−0)
【0038】
<予備発泡粒子の嵩密度>
予備発泡粒子の嵩倍数は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的は、まず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm
3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm
3を下記式に代入することで、予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm
3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0039】
<発泡成形体の密度>
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×30mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm
3)を求める。
【0040】
<曲げ強度>
発泡体の曲げ強度をJIS K7221−2「硬質発泡プラスチック曲げ試験」に記載の方法に準拠して測定する。具体的には、密度16.7kg/m
3の発泡体から縦75mm×横300mm×厚さ30mmの直方体形状の試験片を切り出す。しかる後、この試験片を曲げ強度測定器(オリエンテック社製商品名「UCT−10T」)を用いて、試験速度10mm/分、支点間距離200mm、加圧くさび10R及び支持台10Rの条件下にて測定する。試験片を5個用意し、試験片ごとに試験片が破壊する最大荷重を測定し、曲げ強度を算出する。
曲げ強度測定条件:荷重(fs%)開始点=0.0、終了点=20.0、ピッチ=0.2(fs%)
【0041】
<成形性>
内寸300mm×400mm×30mmの直方体形状のキャビティを有する成形型を備えた発泡ビーズ自動成形機(積水工機製作所社製 商品名「エース3型」)のキャビティ内にポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を充填し、ゲージ圧0.040Mpaの水蒸気で金型加熱3秒、一方加熱8秒、逆一方加熱7秒、両面加熱12秒間の加熱成形を行う。次に、前記金型のキャビティ内の発泡体を5秒間水冷した後、減圧下にて放冷(冷却工程)して発泡成形体を得る。
【0042】
<総合評価>
成形性評価は前記条件で成形体を得て、目視判断を行い収縮がなく、成形体表面の予備発泡粒子間の隙間が少ないものを○、収縮又は、予備発泡粒子間の隙間が多いものを×とする。
一方、曲げ強度が0.32MPa以上を○(良好)、0.32MPa未満を×(不良)として評価を行う。
【0043】
(実施例1)
内容量100リットルの攪拌機付き重合容器に、水40000質量部、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム100質量部及びアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5.0質量部を供給し攪拌しながらスチレン40000質量部並びに重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド128質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート28.0質量部を添加した上で90℃に昇温して重合した。そしてこの温度で6時間保持し、更に、125℃に昇温してから2時間後に冷却してスチレン系樹脂粒子(a)を得た。前記スチレン系樹脂粒子(a)を篩分けし、種粒子として粒子径0.5〜0.71mmのスチレン系樹脂粒子(平均粒子径0.63mm、重量平均分子量25万;b)を得た。次に、内容積25Lの撹拌機付き重合容器に、種粒子(b)2350g、ピロリン酸マグネシウム30g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10gを供給して撹拌しつつ72℃に加熱して分散液を作製した。続いて、ベンゾイルパーオキサイド34g、t−ブチルパーオキシベンゾエート6.1gをスチレン1000gに溶解させた溶液を全て前記分散液中に撹拌しつつ供給した。そして分散液中に前記溶液を供給し終えてから60分間維持した(第1工程)。その後分散液にスチレン2650gを60分で一定速度で供給しながら、分散液を72℃から60分で90℃に昇温した。更に反応液を90℃に維持しながら、スチレン4000gにジビニルベンゼン1.2gを溶解したものを90分間かけて反応容器に供給した(第2工程)。更に分散液を125℃まで昇温しかつ、30分保持することで未反応の単量体を反応させた。次に分散液を90℃に保持したままで重合容器内にアジピン酸ジイソブチル70g、ノルマルブタン700gを圧入して3時間に亘って保持した後、重合容器内を25℃に冷却して発泡性粒子を得た。得られた発泡性粒子の表面に帯電防止剤としてポリエチレングリコールを塗布した。この後、更に、発泡性粒子の表面にステアリン酸亜鉛及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを塗布した。塗布後、発泡性粒子を13℃の恒温室にて5日間放置した。次に発泡性粒子を加熱して嵩密度0.0166g/cm
3に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。予備発泡粒子を20℃で24時間熟成させた。
次に、予備発泡粒子を金型内に充填して0.04MPaの蒸気圧で加熱発泡させて、縦400mm×横300mm×厚さ30mmの発泡成形体を得た。発泡成形体の成形性は良好であった。得られた発泡成形体を50℃の乾燥室で6時間乾燥した後、密度を測定したところ、0.0166g/cm
3であった。発泡成形体は収縮もなく外観も優れていた。この発泡成形体のGPC測定を行ってMp、Mz+1並びに分子量MについてのLogMと微分分布値の曲線を得て、Mpより高分子量側の面積S1と低分子量側の面積S2を算出した。その結果、Mz+1は107万となり、上記で得られた発泡性粒子及び予備発泡粒子について測定されたものと同じ値であった。そして、算出されたS1及びS2は、それぞれ23.6及び18.4であった。これらは、上記で得られた発泡性粒子及び予備発泡粒子について得られたS1及びS2と同じ値であった。また、成形体の曲げ強度を測定した結果、0.33MPaと良好であった。
【0044】
実施例2
ジビニルベンゼンの使用量を1.6gに変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。この成形体について得られたS1及びS2はそれぞれ26.6及び17.9であり、発泡性粒子及び予備発泡粒子について得られたものと同じ値であった。
実施例3
ジビニルベンゼンの使用量を2.0gに変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。この成形体について得られたS1及びS2はそれぞれ27.9及び18.0であり、発泡性粒子及び予備発泡粒子について得られたものと同じ値であった。
実施例4
ジビニルベンゼンの使用量を1.0gに変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。この成形体について得られたS1及びS2はそれぞれ22.9及び19.6であり、発泡性粒子及び予備発泡粒子について得られたものと同じ値であった。
【0045】
実施例5
第2工程にて分散液を72℃から60分で87℃に昇温し、更に反応液を87℃に維持しながら、スチレン4000gにジビニルベンゼン2.4gを溶解したものを90分間かけて反応容器に供給し、アジピン酸ジイソブチル70gと共にシクロヘキサン110gを加えたこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。この成形体について得られたS1及びS2はそれぞれ24.3及び17.3であり、発泡性粒子及び予備発泡粒子について得られたものと同じ値であった。
【0046】
実施例6
第2工程にて分散液を72℃から60分で84℃に昇温し、更に反応液を84℃に維持しながら、スチレン4000gにジビニルベンゼン2.4gを溶解したものを90分間かけて反応容器に供給し、アジピン酸ジイソブチル70gと共にシクロヘキサン110gを加えたこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。この成形体について得られたS1及びS2はそれぞれ25.3及び16.4であり、発泡性粒子及び予備発泡粒子について得られたものと同じ値であった。
【0047】
実施例7
アジピン酸ジイソブチル70gと共に難燃剤としてテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)90g及び難燃助剤としてジクミルパーオキサイド30gを加えたこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。この成形体について得られたS1及びS2はそれぞれ27.1及び17.9であり、発泡性粒子及び予備発泡粒子について得られたものと同じ値であった。
【0048】
比較例1
ジビニルベンゼンを使用しないこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。得られた成形体の曲げ強度が0.29MPaと劣るものであった。この成形体について得られたS1及びS2はそれぞれ22.0及び21.4であり、発泡性粒子及び予備発泡粒子について得られたものと同じ値であった。
【0049】
比較例2
第2工程にて分散液を72℃から60分で80℃に昇温し、更に反応液を80℃に維持しながら、スチレン4000gにジビニルベンゼン2.4gを溶解したものを90分間かけて反応容器に供給し、アジピン酸ジイソブチル70gと共にシクロヘキサン110gを加えたこと以外は実施例1と同様にして、Mz+1が1200万程度となるよう実施したが、評価できる発泡成形体を得ることができなかった。
【0050】
【表1】
【0051】
上記表1から、特定の分子量分布を有する樹脂含む基材樹脂により構成される発泡成形体は、成形性を十分確保しながら、曲げ強度に優れた発泡成形体を製造できることが分かる。