(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の水素製造システムの第1の例を、
図7を用いて説明する。この水素製造システム50では、風車を用いた風力発電装置51が設置され、この風力発電装置51により発電された発電電力が、水素製造装置52で用いられて水素が製造される。水素製造装置52における水素の製造方法の一例としては水電解方式が挙げられる。この風力発電装置51を備えた水素製造システム50は、例えば離島に設置され、製造された水素を、島内を走行する燃料電池自動車の燃料として利用したり、家庭などに設置された家庭用燃料電池などの燃料として利用したりする案が唱えられている。
【0003】
ところで、風力発電装置51では、風の影響により、高周波数(短周期)の変動が発生する場合がある。このことにより、風力発電装置51を、例えば離島内に設置された小規模グリッドと呼ばれるような弱い配電系統に連系すると、配電系統の安定性に影響が出るという問題がある。よって、風力発電装置51は、このような弱い配電系統における電力の受け入れ基準を満たすことが困難となり、配電系統に連系することができず、風力発電装置51により発電された発電電力の全量が水素製造装置52で使用されることになる。
【0004】
しかしながら、水素を利用する機器の普及率は低いため、水素の需要量は少ない。このため、風力発電装置51の発電電力を水素製造装置52で利用する場合には、発電能力を意図的に抑えるように風力発電装置51を運転するか、あるいは余剰の発電電力を何らかの方法で捨てることになり、風力発電装置51の発電能力の一部あるいは発電電力が無駄になる可能性がある。
【0005】
一方、発電能力を抑えずに風力発電装置51の運転を行い、水素製造装置52で利用されなかった発電電力を大規模な蓄電池に充電して、必要なときに放電して利用することも考えられる。この場合、蓄電池から放電される電力は変動させずに利用することも可能となるが、蓄電池の効率は理想的に高い訳ではなく、依然として多くの発電電力が無駄になる可能性がある。
【0006】
次に、従来の水素製造システムの第2の例(例えば、特許文献1参照)を、
図8を用いて説明する。この水素製造システム60には、風力発電装置61により発電された発電電力の変動を平滑化して配電系統と連系する技術が含まれている。すなわち、
図8に示すように、風力発電装置61により発電された発電電力は、電力平滑化装置62により分離電力と高周波数成分である変動出力を含まない(あるいは変動出力が低減された)平滑化電力とに分離される。電力平滑化装置62は配電系統63に連系されており、電力平滑化装置62において分離された平滑化電力は配電系統63に供給される。このような構成により、配電系統63に供給される電力に高周波数成分である変動出力が含まれることを防止または抑制できる。このため、小規模グリッドと呼ばれるような弱い配電系統63に連系させることができ、離島にも風力発電装置61が導入しやすくなる。
【0007】
ところで、
図8に示す水素製造システム60では、電力平滑化装置62により分離された分離電力は電気ヒータに送られ、太陽熱発電装置で用いられる熱媒体を加熱するために利用される。しかしながら、太陽熱発電装置の設置には、晴天の多い気候地域であるという土地条件と、広大な敷地を確保できるという土地条件とが必要となり、風力発電装置61の導入を検討する離島が、このような太陽熱発電装置を設置するための土地条件を満たすことは一般的に考えにくい。また、電気ヒータにより分離電力を熱エネルギに変換してそのまま利用することは可能だが、風力発電装置61を設置するような場所の近くに、安定した多量の熱需要があることは一般にない。このため、多くの場合、電気ヒータにより温水が製造され、熱エネルギが冷却塔などにより温水から大気に排出されることになり、多くのエネルギが無駄になる可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
まず、
図1乃至
図3を用いて、第1の実施の形態における水素製造システムについて説明する。
【0015】
図1に示すように、水素製造システム1は、風車を用いた風力発電装置2と、風力発電装置2により発電された発電電力P1を、所定の周波数より高い周波数成分(比較的速い出力変動成分)である変動出力を含む分離電力P2と平滑化電力P3とに分離する電力平滑化装置3と、水素製造装置4と、を備えている。このうち電力平滑化装置3は、配電系統30(電力系統)に連系されており、電力平滑化装置3により分離された平滑化電力P3は、配電系統30に供給される。一方、電力平滑化装置3により分離された分離電力P2は水素製造装置4に供給され、水素製造装置4は、供給された分離電力P2を用いて水素を製造する。
【0016】
ここで、電力平滑化装置3についてより具体的に説明する。
【0017】
本実施の形態においては、電力平滑化装置3は、ハイパスフィルタ機能とバイアス付加機能とを有している。すなわち、
図2に示すように、電力平滑化装置3は、風力発電装置2から出力された発電電力P1(交流電力)を計測する計器用変流器10(CT: Current Transformer)と、計器用変流器10により計測された発電電力P1に対応する信号を変換する電力変換制御部11と、電力変換制御部11により変換された信号に基づいて発電電力P1の一部を分離電力P2に変換する電力変換部12と、を有している。
【0018】
計器用変流器10は、風力発電装置2から出力された発電電力P1を計測して、例えば
図3Aに示すような信号S1を出力する。
【0019】
電力変換制御部11は電力変換部12を制御するように構成されている。より具体的には、電力変換制御部11は、
図2に示すように、ハイパスフィルタ13と加算器14とを含んでいる。このうちハイパスフィルタ13は、平滑化フィルタ15(ローパルスフィルタ)と減算器16とにより構成されている。
【0020】
平滑化フィルタ15は、計器用変流器10から出力された信号S1から高周波数成分を除去し、例えば
図3Bに示すような信号S2(低周波数成分)を出力する。減算器16は、計器用変流器10から出力された信号S1から、平滑化フィルタ15から出力された信号S2を減算し、例えば
図3Cに示すような信号S3(差分信号)を出力する。このようにして、ハイパスフィルタ13(より詳細には減算器16)は、計器用変流器10から出力された信号S1の高周波数成分を信号S3として出力する。ここで、ハイパスフィルタ13では、風力発電装置2の発電電力P1のうち高周波数成分を抽出して、例えば離島での小規模グリッドでも受け入れ可能な程度まで高周波数成分が分離されるような時定数(例えば、1分よりも小さい時定数)が設定されることが好適である。
【0021】
加算器14は、減算器16から出力された信号S3に、予め所定の値に設定されたバイアスBを付加し、例えば
図3Dに示すような信号S4を出力する。これにより、信号S3の基準電位(例えば0V)よりも低い負極成分が正極成分に移行し、信号S4の信号値が0よりも大きくなって、電力変換部12の後述するインバータ電源回路18による電力の変換が可能となる。なお、バイアスBの付加量(バイアスBの値)は、一定値であってもよく、あるいは事前に定めた規則などにより設定された値、例えば1分前等1つ以上の過去の発電電力P1に基づいて算出された値であってもよい。
【0022】
電力変換制御部11は、加算器14から出力された信号を変換する関数器17を更に有している。この関数器17は、加算器14から出力された信号S4を変数として、インバータ電源回路18に適合するように変換(例えば信号のレベルなどを変更)し、信号S5(関数)を出力する。この信号S5が分離電力P2に対応する。
【0023】
電力変換部12はインバータ電源回路18を含んでおり、このインバータ電源回路18は、関数器17から出力された信号S5に基づいて、いわゆるパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御を行う。これにより、インバータ電源回路18は、風力発電装置2の発電電力P1から高周波数成分を除去して、この高周波数成分である変動出力を分離電力P2として出力する。
【0024】
一方、風力発電装置2の発電電力P1から高周波数成分が除去された低周波数成分は、平滑化電力P3として電力平滑化装置3から出力される。すなわち、電力平滑化装置3は、発電電力P1を平滑化して高周波数成分である変動出力を含まない平滑化電力P3を出力し、配電系統30に供給する。なお、この平滑化電力P3は、上述したハイパスフィルタ13から出力される信号S2から、上述したバイアスBが減算された信号(図示せず)に対応する。ここで、平滑化電力P3は、変動出力を含まない場合に限られることはなく、配電系統30に供給可能な程度に若干の変動出力が含まれていてもよいが、記載を簡略化するために、以降では「変動出力を含まない」と記載する。
【0025】
このようにして、電力平滑化装置3は、風力発電装置2の発電電力P1を、高周波数成分である変動出力を含む分離電力P2と、当該変動出力を含まない平滑化電力P3とに分離して、それぞれ出力する。
【0026】
水素製造装置4には、電力平滑化装置3のインバータ電源回路18から出力された分離電力P2が供給されて、水素製造装置4は、この供給された分離電力P2を用いて水素を製造する。例えば、水素製造装置4は、分離電力P2により水を電気分解して水素を発生させるように構成され得るが、分離電力P2を用いる方法であれば水素の製造方法は任意である。
【0027】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0028】
図1に示す風力発電装置2が風を受けると発電を行い、発電電力P1が出力される。風力発電装置2から出力された発電電力P1は電力平滑化装置3に供給される。
【0029】
発電電力P1が電力平滑化装置3に供給されると、
図2に示す計器用変流器10が発電電力P1を計測して信号S1(
図3A参照)が出力される。出力された信号S1は、電力変換制御部11のハイパスフィルタ13に入力され、信号S1から高周波数成分が除去されて、信号S2(
図3B参照)が出力される。出力された信号S2は減算器16に入力され、別途入力された信号S1から信号S2が減算されて、信号S3(
図3C参照)が出力される。出力された信号S3は加算器14に入力され、入力された信号S3にバイアスBが付加され、信号S4(
図3D参照)が出力される。出力された信号S4は関数器17に入力され、信号S4が変換されて、インバータ電源回路18に対応する信号S5が出力される。そして、出力された信号S5は電力変換部12のインバータ電源回路18に入力され、PWM制御により、風力発電装置2から出力された発電電力P1の高周波数成分である変動出力が分離電力P2として出力される。
【0030】
一方、風力発電装置2の発電電力P1から高周波数成分が除去された成分は、平滑化電力P3として電力平滑化装置3から出力される。
【0031】
このようにして、風力発電装置2の発電電力P1が、高周波数成分である変動出力を含む分離電力P2と、当該変動出力を含まない平滑化電力P3とに分離される。
【0032】
電力平滑化装置3により分離された分離電力P2は水素製造装置4に供給され、供給された分離電力P2により水素が製造される。水素製造装置4に供給される分離電力P2は、風力発電装置2が受ける風の変動に起因して時間変動し、それだけでなく水素の製造は間欠的になり得る。しかしながら、製造された水素は、一旦タンク(図示しない)などに貯蔵され、貯蔵された水素が、水素利用者に直接的または間接的に提供される。このため、分離電力P2の時間変動による弊害が生じることを防止できる。
【0033】
一方、電力平滑化装置3により分離された平滑化電力P3は配電系統30に供給される。平滑化電力P3は、高周波数成分である変動出力を含んでいないため、例えば離島の小規模グリッドのような弱い配電系統30であっても系統連系され得る。
【0034】
このように本実施の形態によれば、風力発電装置2により発電された発電電力P1が、高周波数成分である変動出力を含む分離電力P2と、当該変動出力を含まない平滑化電力P3とに分離され、この分離電力P2が水素製造装置4に供給されて水素が製造される。このことにより、配電系統30などでは系統連係できずに利用困難で捨てられる分離電力P2を、水素の製造に用いることができる。とりわけ、製造された水素は、離島などでは走行距離という観点で好適に使用され得る燃料電池自動車や、燃料電池などに好適に利用することができ、エネルギの地産地消を図ることもできる。この結果、風力発電装置2の発電電力P1を有効利用して水素を製造することができる。
【0035】
また、本実施の形態によれば、風力発電装置2の発電電力P1から分離された平滑化電力P3は、変動出力を含まないため、配電系統30における電力の受け入れ基準を満たすことができる。このことにより、発電電力P1から分離された平滑化電力P3を配電系統30に系統連係して供給することができ、配電系統30の安定化が損なわれることを防止できる。すなわち、例えば離島に設置された小規模グリッドのような弱い配電系統30では、一般的には風力発電装置2の発電電力P1は、電力の受け入れ基準を満たすことが困難であって配電系統30に系統連係して供給することが困難であったが、本実施の形態により得られる平滑化電力P3は、そのような弱い配電系統30にも系統連係して供給することができる。そして、配電系統30から誰もが容易に受け取ることができる。この結果、風力発電装置2の発電電力P1を有効利用することができる。
【0036】
また、本実施の形態によれば、発電電力P1の一部を配電系統30に供給することができるため、
図7に示すようなシステムと比較すると発電電力P1の全量を水素の製造に用いることを不要とすることができる。また、風力発電装置2の発電能力を意図的に抑えることも不要にでき、風力発電装置2の発電能力を有効に利用することができる。
【0037】
さらに、本実施の形態による水素製造システム1は、
図8に示すようなシステムと比較すると、晴天の多い気候地域であるという土地条件や、広大な敷地を確保できるという土地条件を不要とすることができる。このため、設置場所の条件を緩和することができ、汎用性を向上させることができる。例えば、本実施の形態による水素製造システム1を離島に設置した場合には、離島の周囲には海があり風況が好適であるため、風力発電装置2には好都合である。また、分離電力P2は水素の製造に利用されるため、需要の少ない熱そのもの(例えば温水)に利用されることを不要とすることができ、さらには冷却塔などから大気に排出されることも不要とすることができる。このため、分離電力P2を水素の製造に有効に利用することにより、風力発電装置2の発電電力P1を有効利用することができる。
【0038】
なお、上述した本実施の形態においては、電力平滑化装置3がハイパスフィルタ機能を有している例について説明した。しかしながら、小規模グリッドのような弱い配電系統30に連系させることができる程度までに高周波数成分が除去されることが可能であれば、これに限られることはなく、別の手段を用いてもよい。また、上述した本実施の形態においては、電力平滑化装置3がバイアス付加機能を有している例について説明した。しかしながら、基準電位よりも低い負極成分を正極成分に移行させることが可能であれば、これに限られることはなく、別の手段を用いてもよい。更には、電力平滑化装置3は、風力発電装置2の発電電力P1を分離電力P2と平滑化電力P3とに分離することができれば、上述した構成に限られることはない。
【0039】
また、上述した本実施の形態においては、電力平滑化装置3により分離された平滑化電力P3が配電系統30に供給される例について説明した。しかしながら、配電系統30ではなく、任意の負荷設備に平滑化電力P3を供給して利用するようにしてもよい。
【0040】
(第2の実施の形態)
次に、
図4を用いて、本発明の第2の実施の形態における水素製造システムについて説明する。
【0041】
図4に示す第2の実施の形態においては、風力発電装置を電力平滑化装置に接続する状態と、風力発電装置を電力平滑化装置をバイパスして風力発電装置に接続する状態とを切り替える切替器を更に備えた点が主に異なり、他の構成は、
図1乃至
図3に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図4において、
図1乃至
図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
図4に示すように、本実施の形態においては、風力発電装置2と電力平滑化装置3との間に、切替器20が設けられている。この切替器20は、風力発電装置2を電力平滑化装置3に接続する状態と、風力発電装置2を電力平滑化装置3をバイパスして水素製造装置4に接続する状態とを切り替えるように構成されている。
【0043】
例えば、切替器20が、風力発電装置2を電力平滑化装置3に接続している状態では、発電電力P1の全量が電力平滑化装置3に供給される。この場合、
図1乃至
図3に示す第1の実施の形態と同様にして、発電電力P1が分離電力P2と平滑化電力P3とに分離されて、水素製造装置4には分離電力P2が供給され、配電系統30には平滑化電力P3が供給される。
【0044】
一方、切替器20が、風力発電装置2を電力平滑化装置3をバイパスして水素製造装置4に接続している状態では、発電電力P1が、電力平滑化装置3に供給されることなく、水素製造装置4に供給される。この場合、発電電力P1の全量が水素製造装置4に供給され、水素の製造量を増大させることができる。
【0045】
なお、
図4では、電力平滑化装置3を示す枠の外に切替器20が示されている。この
図4に示す切替器20は、ハードウェア構成として図示の位置に設けられていることを示しているのではなく、発電電力P1に作用を及ぼす機能的な位置を示している。従って、風力発電装置2と電力平滑化装置3との間に切替器20が設けられているということは、機能的に風力発電装置2と電力平滑化装置3との間に存在していればよいことを意味しており、ハードウェア構成としては電力平滑化装置3の外部に設けられていてもよく、電力平滑化装置3の内部に設けられていてもよい。また、切替器は、
図4に示す構成に限られることはなく、例えば、図示しないが、風力発電装置2から電力平滑化装置3への発電電力P1の供給径路から電力平滑化装置3をバイパスするための径路が分岐する分岐点よりも下流側に設けられるようにしてもよい。また、電力平滑化装置3から水素製造装置4への分離電力P2の供給径路に、電力平滑化装置3をバイパスするための径路が合流する合流点よりも上流側に、図示しない切替器が追加的に設けられていてもよい。
【0046】
このように本実施の形態によれば、風力発電装置2により発電された発電電力P1を電力平滑化装置3に供給する運転と、電力平滑化装置3に供給することなく水素製造装置4に供給する運転を選択的に行うことができる。発電電力P1の全量を水素製造装置4に供給する場合には、水素の製造量を増大させることができる。これら2種類の運転時間を調節することで、例えば1日あるいは1週間当たりといった単位で水素の製造量を調節することができ、運転者の意思に応じて水素の製造量を調節することができる。すなわち、本実施の形態による水素製造システム1は、運転者の意思により水素の製造量を調節することができ、水素の製造量を所望の量に調節したいという運転者の意思を実現させることができる。
【0047】
(第3の実施の形態)
次に、
図5を用いて、本発明の第3の実施の形態における水素製造システムについて説明する。
【0048】
図5に示す第3の実施の形態においては、配電系統の電力が余剰であるか否かに基づいて切替器を制御する切替器制御部を更に備えた点が主に異なり、他の構成は、
図4に示す第2の実施の形態と略同一である。なお、
図5において、
図4に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0049】
図5に示すように、本実施の形態における水素製造システム1は、配電系統30の電力が余剰であるか否かに基づいて切替器20を制御する切替器制御部21を更に備えている。この切替器制御部21は、配電系統30の電力が余剰でない場合に、風力発電装置2を電力平滑化装置3に接続するように切替器20を制御する。これにより、発電電力P1の全量が電力平滑化装置3に供給される。一方、切替器制御部21は、配電系統30の電力が余剰である場合に、風力発電装置2を電力平滑化装置3をバイパスして水素製造装置4に接続するように切替器20を制御する。これにより、発電電力P1の全量が水素製造装置4に供給され、水素の製造量を増大させることができる。
【0050】
切替器制御部21は、例えば、配電系統30を統括する会社(例えば電力会社)から、配電系統30の電力が余剰であるか否かの情報を入手し、この入手した情報に基づいて切替器20を制御するように構成することができる。あるいは、切替器制御部21は、例えば、配電系統30を統括する会社が提供する最大供給電力量とその時点での使用電力量の情報を入手し、これらの情報に基づいて、配電系統30の電力が余剰であるか否かを判断して切替器20を制御するように構成してもよい。この場合、配電系統30の電力が余剰であるか否かの判断根拠は予め定めておくことが好適である。
【0051】
また、切替器制御部21は、時間に応じて配電系統30の電力が余剰であるか否かを判断して切替器20を制御するように構成してもよい。この場合、電力が余剰であるか否かの判断根拠、すなわち余剰であるか否かの境目となる時間は予め定めておくことが好適である。例えば、一般に夜間は配電系統30の電力が余剰になる傾向が強いため、昼間と夜間との境界時刻を定めておくことが好適である。このことにより、昼間では、風力発電装置2の発電電力P1の全量が電力平滑化装置3に供給されて、水素製造装置4は分離電力P2を用いて水素を製造することができ、夜間では、発電電力P1の全量が水素製造装置4に供給されて、水素製造装置4は発電電力P1の全量を用いて水素を製造することができる。
【0052】
このように本実施の形態によれば、配電系統30の電力が余剰でない場合には、風力発電装置2の発電電力P1から分離された平滑化電力P3を配電系統30に供給することができる。このことにより、配電系統30の電力の増大に寄与でき、風力発電装置2の発電電力P1を有効に利用することができる。一方、配電系統30の電力が余剰である場合には、風力発電装置2の発電電力P1を、電力平滑化装置3に供給することなく水素製造装置4に供給することができる。このことにより、配電系統30の電力が余剰である場合であっても風力発電装置2の発電能力を意図的に抑えることを不要にでき、また余剰電力として捨てられることもなく、風力発電装置2の発電能力を有効に利用することができる。
【0053】
(第4の実施の形態)
次に、
図6を用いて、本発明の第4の実施の形態における水素製造システムについて説明する。
【0054】
図6に示す第4の実施の形態においては、電力平滑化装置は、バイアスの付加量の調節機能を有している点が主に異なり、他の構成は、
図1乃至
図3に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図6において、
図1乃至
図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0055】
図6に示すように、本実施の形態においては、電力平滑化装置3はバイアスBの付加量の調節機能を更に有している。すなわち、電力平滑化装置3は、加算器14が信号S3に加算するためのバイアスBを加算器14に入力し、入力されるバイアスBの付加量(バイアスBの値)を調節するバイアス付加量調節部22を有している。電力変換部12のインバータ電源回路18による電力の変換を可能とするために、バイアス付加量調節部22は、バイアスBの付加量を基準電位よりも低い負極成分が正極成分に移行する付加量よりも小さい付加量に変化させないことが好適である。なお、バイアスBの付加量は、一定値であってもよく、あるいは事前に定めた規則などにより設定された値、例えば1分前等1つ以上の過去の発電電力P1に基づいて算出された値であってもよい。
【0056】
例えば、バイアス付加量調節部22によりバイアスBの付加量を増加させた場合には、信号S4(
図3D参照)の信号値を大きくすることができ、電力平滑化装置3のインバータ電源回路18から出力される分離電力P2を増大させることができる。このことにより、水素製造装置4における水素の製造量を増大させることができる。この場合、分離電力P2が増大するため、配電系統30に供給される平滑化電力P3は減少する。ところで、自然現象である風の変動による高周波数成分と予め設定されたバイアスBとによって定められる水素の製造量よりも多くの水素を製造したい場合、第1の実施の形態では1日あるいは1週間当たりといった単位で、製造された水素の総量を調節することは可能ではあるが、今すぐに増やしたいといった場合には、上述したバイアス付加量調節部22によってバイアスBの付加量を増加させることにより、水素の製造量を迅速に増大させることができる。
【0057】
このように本実施の形態によれば、バイアスBの付加量を調節することができるため、水素の製造量を容易に、かつ時間的に細かく調節することができる。このため、運転者の意思により水素の製造量を調節することができ、水素の製造量を所望の量に迅速に調節したいという運転者の意思を実現させることができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。