(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記(A)成分を含み、下記(B)成分を含まないα粒子と、下記(B)成分を含み、下記(A)成分を含まないβ粒子とを併有する薬物層を備え、前記薬物層の水分量が5質量%以下である、錠剤。
(A)成分:ロキソプロフェンおよびその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種。
(B)成分:乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイトからなる群より選ばれる少なくとも1種。
前記薬物層の水分量が5質量%以下になるように、前記α粒子および前記β粒子の調製時に各粒子の水分量を調整する、請求項4〜8のいずれか一項に記載の錠剤の製造方法。
前記薬物層の水分量が5質量%以下になるように、前記α粒子と前記β粒子との混合物の水分量を調整した後に打錠する、請求項4〜8のいずれか一項に記載の錠剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[錠剤]
本発明の錠剤は薬物層を備える。錠剤は、薬物層のみで構成された単層構造(単層錠)であってもよいし、薬物層と薬物層以外の層(任意層)とで構成された積層構造(積層錠)であってもよい。
薬物層は以下に示すα粒子と、β粒子とを併有する。また、薬物層は以下に示す(C)成分を含有することが好ましい。
【0012】
<α粒子>
α粒子は、(A)成分として、ロキソプロフェンおよびその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。また、α粒子は、後述する(B)成分を含まない。
(A)成分は、解熱鎮痛成分である。
ロキソプロフェンの塩としては、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩であれば特に制限されず、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
また、ロキソプロフェンおよびその塩は、水和物の状態で存在していてもよい。水和物の状態であるものの好適例としては、ロキソプロフェンナトリウム二水和物が挙げられる。
(A)成分としては、ロキソプロフェンの塩が好ましく、ロキソプロフェンナトリウムがより好ましい。
(A)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0013】
α粒子には、後述の(C)成分が含まれていることが好ましい。α粒子が(C)成分を含んでいれば、錠剤の変色をより防止でき、錠剤の強度も高められる。
また、α粒子には、本発明による効果を損なわない範囲で、(A)成分または(C)成分以外の生理活性成分及び添加剤等の任意成分を配合してもよい。
生理活性成分としては、例えば、(A)成分以外の解熱鎮痛成分(例えば、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、セロコキシブ、ロフェコキシブ、チアラミド、アセトアミノフェン、エテンザミド、スルピリン等)、鎮静催眠成分(例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等)、抗ヒスタミン成分(例えば、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロール等)、中枢興奮成分(例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等)、鎮咳去痰成分(例えば、コデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、dl−メチルエフェドリン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、アミノフィリン等)、ビタミン成分(例えば、ビタミンB1及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB2及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩類、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等)等が挙げられる。これらの生理活性成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
添加剤としては、例えば、(C)成分以外の、結合剤(デンプン、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、プルラン、デキストリン等)、賦形剤(乳糖造粒物、結晶セルロース、コーンスターチ、粉糖、マンニトール、L−システイン等)、崩壊剤(クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、部分α化デンプン等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル酸、軽質無水ケイ酸等)、香料(メントール、リモネン、植物精油(例えば、ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等))、甘味剤(サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース)、酸味料(クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、氷酢酸、リン酸)、及びコーティング剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0014】
α粒子の粒子群の平均粒子径は、50〜400μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。
本明細書において、粒子群の平均粒子径とは、体積平均粒子径を意味し、レーザー回折・散乱法により測定される値を示す。例えば、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LS−13 320」(BECKMAN COURTER社製)を用いて測定される。
【0015】
<β粒子>
β粒子は、(B)成分として、乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイトからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。また、β粒子は、前記(A)成分を含まない。
(B)成分は、制酸剤の役割を果たす。
乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイトには、結合水等の水が保持されていてもよい。
(B)成分としては、錠剤の変色を抑制する効果が高いことから、乾燥水酸化アルミニウムゲルが好ましい。
なお、乾燥水酸化アルミニウムゲルとしては、「第十六改正 日本薬局方」に所載の乾燥水酸化アルミニウムゲルが挙げられる。
(B)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0016】
β粒子には、後述の(C)成分が含まれていてもよい。
また、β粒子には、本発明による効果を損なわない範囲で、生理活性成分および添加剤等の任意成分を配合してもよい。
生理活性成分および添加剤としては、α粒子の説明において先に例示した生理活性成分および添加剤などが挙げられる。
【0017】
β粒子の粒子群の平均粒子径は、50〜500μmが好ましく、100〜400μmがより好ましい。
【0018】
<(C)成分>
(C)成分は、ポリビニルアルコール、カルメロース、乳糖(ただし、乳糖造粒物を除く。)、ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
(C)成分は、賦形剤の役割を果たす。
(C)成分としては、錠剤の変色を抑制する効果が高いことから、ポリビニルアルコールが好ましい。
なお、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとは、セルロースのヒドロキシ基がヒドロキシプロピル基で置換されたヒドロキシプロピルセルロースのうち、低置換のものをいう。具体的には、ヒドロキシプロポキシ基の置換度(含有量)が7〜16質量%のものをいう。
(C)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0019】
<錠剤の形態>
錠剤の大きさは特に限定されないが、錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の観点から、錠剤の直径は6〜13mmφが好ましく、7〜10mmφがより好ましく、7〜9mmφがさらに好ましい。
【0020】
錠剤は、α粒子とβ粒子とを併有する薬物層を備える。すなわち、α粒子とβ粒子とが同一層に存在する。α粒子とβ粒子とを同一層に存在させるには、α粒子とβ粒子とを一緒に打錠して、1つの層(薬物層)を形成すればよい。
また、上述したように、α粒子は(A)成分を含み、(B)成分を含まず、β粒子は(B)成分を含み、(A)成分を含まない。すなわち、(A)成分の原末と(B)成分の原末とを一緒には造粒しないので、α粒子とβ粒子とは同一顆粒中に存在しない。
【0021】
α粒子とβ粒子とが同一顆粒中に存在していると、錠剤の強度が低下し、摩損が生じやすくなる。これは、α粒子とβ粒子とが同一顆粒中に存在していると顆粒が硬くなる傾向にあり、打錠しても顆粒が潰れず、顆粒同士の結合力が十分に得られにくくなるためと考えられる。また、α粒子とβ粒子とが同一顆粒中に存在していると、錠剤が変色しやすくもなる。
【0022】
薬物層中のα粒子とβ粒子の割合は特に制限されないが、薬物層における(A)成分、(B)成分の含有量がそれぞれ下記範囲内となる量が好ましい。
薬物層における(A)成分の含有量は、薬物層の総質量100質量%中、15〜35質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が、15質量%以上であれば一回当たりの服用錠剤数を減らすことができ、十分な解熱、鎮痛効果が得られ、35質量%以下であれば(B)成分を十分に含有させることができ、本発明の効果がより得られやすくなる。
薬物層における(B)成分の含有量は、薬物層の総質量100質量%中、15〜70質量%が好ましく、25〜55質量%がより好ましい。(B)成分の含有量が、15質量%以上であれば一回当たりの服用錠剤数を減らすことができ、十分な制酸効果が得られ、70質量%以下であれば(A)成分を十分に含有させることができ、錠剤の変色がより生じにくくなる。
なお、(A)成分および(B)成分の質量は、純分換算量(無水物換算量)とする。
【0023】
(C)成分は、α粒子に含まれていてもよいし、β粒子に含まれていてもよいし、α粒子およびβ粒子に含まれていなくてもよい。錠剤の変色をより防止できる観点から、(C)成分はα粒子およびβ粒子の少なくとも一方に含まれていることが好ましく、錠剤の強度も高められる観点からα粒子に含まれていることがより好ましい。
【0024】
薬物層における(C)成分の含有量は、薬物層の総質量100質量%中、0.5〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。(C)成分の含有量が、0.5質量%以上であれば錠剤の強度が十分に高まり、5質量%以下であれば造粒時に缶体付着等のトラブルを生じにくい。
【0025】
また、錠剤中の(A)成分の含有量は、45〜85mgが好ましく、50〜70mgがより好ましい。
錠剤中の(B)成分の含有量は、20〜170mgが好ましく、40〜130mgがより好ましい。
錠剤中の(C)成分の含有量は、0.5〜10mgが好ましく、1〜6mgがより好ましい。
なお、1錠あたりの錠剤質量は、150〜550mgが好ましい。
また、(A)成分および(B)成分の質量は、純分換算量(無水物換算量)とする。
【0026】
<錠剤の物性>
薬物層の水分量は、薬物層100質量%中、5質量%以下であり、1〜4質量%が好ましく、1〜3.5質量%がより好ましい。薬物層の水分量が5質量%以下であれば、錠剤の変色を抑制できる。
錠剤が単層錠の場合、薬物層の水分量が錠剤の水分量となる。すなわち、錠剤の水分量は、錠剤100質量%中、5質量%以下であり、1〜4質量%が好ましく、1〜3.5質量%がより好ましい。
一方、錠剤が積層錠の場合、少なくとも薬物層の水分量が5質量%以下であれば、任意層の水分量は特に制限されず、5質量%以下であってもよいし、5質量%超であってもよいが、錠剤全体としての水分量が5質量%以下となることが好ましい。
【0027】
水分量は、以下のようにして求められる。
錠剤が単層錠の場合は、まず、錠剤を乳鉢で粗粉砕する。次いで、粉砕した錠剤を電子水分計にて120℃で10分間加熱したときの乾燥減量から錠剤の水分量を算出し、これを薬物層の水分量とする。
一方、錠剤が積層錠の場合、例えば、薬物層に任意層が含まれないように、薬物層と任意層との界面で積層錠を切断し、薬物層のみを乳鉢で粗粉砕した後に、電子水分計にて120℃で10分間加熱したときの乾燥減量から水分量を算出し、これを薬物層の水分量とする。また、積層錠の全体の水分量は、単層錠の場合と同様にして測定すればよい。
【0028】
錠剤の摩損度は、0.3%以下が好ましく、0.2%以下がより好ましく、0.1%以下が特に好ましい。錠剤の摩損度が0.3%以下であれば十分な強度が得られ、欠け・割れ等の摩損が生じにくい。
錠剤の摩損度は、「第十六改正 日本薬局方」に準じて測定される。
【0029】
<任意成分>
錠剤は、α粒子、β粒子、(C)成分以外の成分(任意成分)を含有していてもよい。
任意成分は、錠剤が単層錠の場合は薬物層に含まれ、錠剤が積層錠の場合は薬物層に含まれていてもよいし、任意層に含まれていてもよいが、一回の打錠工程で製造できる観点から薬物層に含まれていることが好ましい。
任意成分が薬物層に含まれている場合、任意成分はα粒子に含まれていてもよいし、β粒子に含まれていてもよいし、α粒子およびβ粒子に含まれていなくてもよい。
なお、錠剤が積層錠の場合、任意層には上述した(C)成分と同様の成分が含まれていてもよい。
【0030】
任意成分としては、生理活性成分、添加剤などが挙げられる。
生理活性成分および添加剤としては、α粒子の説明において先に例示した生理活性成分および添加剤などが挙げられる。
また、添加剤として、着色料を用いてもよい。
着色料としては、食用着色料、無機顔料(例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、金箔、薬用炭等)、有機顔料(例えば、銅クロロフイリンナトリウム、銅クロロフィル、リボフラビン等)、動植物抽出物(カンゾウエキス、アセンヤクタンニン末、ウコン抽出液、緑茶末等)などが挙げられる。
【0031】
生理活性成分や添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に制限されない。ただし、上述した添加剤のうち、酸味料は(A)成分と組み合わせて用いると(A)成分の効果を低下させることがある。そのため、錠剤は酸味料を実質的に含まないことが好ましい。ここで、「実質的に含まない」とは、錠剤100質量%中、0.1質量%未満のことをいう。α粒子、β粒子が任意成分として酸味料を含む場合も同様である。
【0032】
<製造方法>
本発明の錠剤は、α粒子とβ粒子とを混合して打錠することで得られる。以下、本発明の錠剤の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の錠剤の製造方法は、(A)成分でα粒子を調製する調製工程Aと、(B)成分でβ粒子を調製する調製工程Bと、α粒子とβ粒子とを混合し、打錠して薬物層を形成する打錠工程とを有する。
【0033】
(調製工程A)
調製工程Aは、(A)成分でα粒子を調製する工程である。
(A)成分は、造粒せずに原末のまま用いてα粒子としてもよいし、(A)成分の原末を造粒してα粒子としてもよいが、強度の高い錠剤が得られる観点で、(A)成分の原末を造粒してα粒子とすることが好ましい。
造粒方法としては、流動層造粒、攪拌造粒、押し出し造粒、転動造粒などが挙げられる。中でも、錠剤の変色をより抑制でき、しかも高強度の錠剤が得られやすい点で、流動層造粒が好ましく、乾燥処理を有する流動層造粒が特に好ましい。ここで、「乾燥処理を有する流動層造粒」とは、結合剤の噴霧を停止した後も熱風を給気して乾燥を行う造粒法のことである。
【0034】
α粒子が(C)成分を含有する場合、α粒子の調製時に(C)成分を添加することが好ましい。具体的には、(A)成分の原末および(C)成分の原末を造粒してα粒子を調製することが好ましく、(A)成分の原末および(C)成分の原末を流動層造粒してα粒子を調製することがより好ましく、(A)成分の原末およびポリビニルアルコールの原末を流動層造粒してα粒子を調製することが特に好ましい。
【0035】
(調製工程B)
調製工程Bは、(B)成分でβ粒子を調製する工程である。
(B)成分は、造粒せずに原末のまま用いてβ粒子としてもよいし、(B)成分の原末を造粒してβ粒子としてもよいが、強度の高い錠剤が得られる観点で、(B)成分を造粒せずに原末のまま用いてβ粒子とすることが好ましい。
(B)成分の原末を造粒する場合、造粒方法としては、調製工程Aの説明において先に例示した造粒方法が挙げられ、錠剤の変色をより抑制できる点で、流動層造粒が好ましく、乾燥処理を有する流動層造粒が特に好ましい。
【0036】
β粒子が(C)成分を含有する場合、β粒子の調製時に(C)成分を添加することが好ましい。具体的には、(B)成分の原末および(C)成分の原末を造粒してβ粒子を調製することが好ましく、(B)成分の原末および(C)成分の原末を流動層造粒してα粒子を調製することがより好ましく、(B)成分の原末およびポリビニルアルコールの原末を流動層造粒してα粒子を調製することが特に好ましい。
【0037】
(打錠工程)
打錠工程は、α粒子とβ粒子とを混合し、打錠して薬物層を形成する工程である。
薬物層が(C)成分を含む場合、調製工程Aおよび調製工程Bの少なくとも一方で(C)成分を添加してもよいし、α粒子とβ粒子を打錠する際に、α粒子とβ粒子との混合物に(C)成分の原末を添加してもよいし、その両方であってもよい。また、α粒子とβ粒子との混合物に任意成分を添加してもよい。以下、α粒子とβ粒子との混合物を含み、必要に応じて(C)成分や任意成分をさらに含む打錠前の粉体を「混合粉体」ともいう。
打錠方法としては特に制限されず、例えば、臼と杵とを有する打錠機を用いた方法などが挙げられる。
打錠の際に用いる打錠機としては、例えば、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所製:リブラ3L)等が挙げられる。
打錠圧、回転盤の回転速度等の打錠条件は適宜設定される。
【0038】
なお、錠剤が積層錠である場合、薬物層を構成する混合粉体は、臼に最初に充填されてもよく、任意層を構成する成分よりも後に充填されてもよい。
【0039】
混合粉体の嵩密度は、0.25〜0.6g/cm
3が好ましく、0.3〜0.5g/cm
3がより好ましい。混合粉体の嵩密度が、0.25g/cm
3以上であれば打錠時に臼への充填が容易となり充填不良等のトラブルを生じにくくなり、0.6g/cm
3以下であれば打錠時に有効成分が偏析しにくくなる。
混合粉体の嵩密度は、JIS K 3362に準拠して測定することで求められる。
【0040】
また、混合粉体の安息角は、60°以下が好ましく、45°以下がより好ましい。混合粉体の安息角が60°以下であれば、打錠時に臼への充填が容易となり充填不良等のトラブルを生じにくくなる。なお、混合粉体の安息角の下限は実質的に30°以上である。
なお、「安息角」とは、容器に満たした粒子が流出するときに形成されるすべり面と、水平面とのなす角のことである。混合粉体の安息角は、いわゆる排出法による安息角測定法で測定される。具体的には以下のようにして求められる。
角度の目盛りが記入されたアクリル樹脂製測定器(高さ10cm×奥行き10cm×幅3cm)を水平な場所に置き、測定の横蓋を閉じた状態で、測定器の1〜2cm上部より混合粉体を流し入れる。混合粉体が測定器上部を0〜1cm程度超え、山盛りの状態になった後、横蓋を静かに開け、混合粉体を自然排出させる。排出終了後に、測定器内に残った混合粉体の水平面との角度(°)を測定器側面の目盛りから読み取る。この操作を3回行い、値を平均して、安息角を求める。
【0041】
(水分量の調整)
錠剤を製造する際には、薬物層の水分量が5質量%以下となるように水分量を調整する。
水分量を調整する方法としては、以下の方法(1)〜(3)が挙げられる。
(1)薬物層の水分量が5質量%以下になるように、α粒子およびβ粒子の調製時に各粒子の水分量を調整する。
(2)薬物層の水分量が5質量%以下になるように、α粒子とβ粒子との混合物の水分量を調整した後に打錠する。
(3)水分量が5質量%超の薬物層を形成し、この薬物層の水分量が5質量%以下になるまで乾燥する。
【0042】
方法(1)では、α粒子およびβ粒子の調製時に各粒子の水分量を調整する。
(A)成分を造粒せずに原末のまま用いてα粒子とする場合、(A)成分の原末を乾燥させてα粒子の水分量を調整する。(A)成分の原末を乾燥する方法としては棚乾燥が挙げられ、例えば箱式通気型式乾燥機で、乾燥温度40〜80℃、乾燥時間5〜120分の条件で(A)成分の原末を乾燥することが好ましい。
【0043】
(A)成分の原末を造粒してα粒子とする場合、造粒しながら乾燥してもよいし、造粒した後に乾燥を行ってもよい。
造粒しながら乾燥する場合は流動層造粒が好適であり、例えば給気温度90℃未満で流動層造粒しながら水分量を調整してα粒子を調製する。さらに、結合剤の噴霧を停止した後も給気温度90℃未満で10〜30分程度、熱風を供給して乾燥を行うことが好ましい。
造粒した後に乾燥を行う場合は、例えば攪拌造粒によりα粒子を造粒した後、上述した棚乾燥を行うことが好ましい。
【0044】
(B)成分を造粒せずに原末のまま用いてβ粒子とする場合、(B)成分の原末を乾燥させてβ粒子の水分量を調整する。乾燥方法としては上述した棚乾燥が挙げられる。
(B)成分の原末を造粒してβ粒子とする場合、α粒子と同様、造粒しながら乾燥してもよいし、造粒した後に乾燥を行ってもよい。
【0045】
α粒子およびβ粒子の水分量は、打錠されて錠剤となったときに、薬物層の水分量5質量%以下となれば特に制限されないが、α粒子の水分量は2〜4質量%が好ましく、β粒子の水分量は3〜10質量%が好ましい。各粒子の水分量が上記範囲内であれば、水分量が5質量%以下の薬物層を容易に形成できる。
α粒子およびβ粒子の水分量は、各粒子を電子水分計にて120℃で10分間加熱したときの乾燥減量から算出する。
【0046】
方法(2)では、薬物層の水分量が5質量%以下になるように、α粒子とβ粒子との混合物の水分量を調整した後に打錠する。
方法(2)は、α粒子およびβ粒子を造粒せずに調製する場合に特に好適であり、例えば、(A)成分の原末と(B)成分の原末とを混合し、乾燥させて混合物の水分量を調整する。薬物層が(C)成分や任意成分を含む場合は、α粒子とβ粒子との混合物を乾燥した後に、乾燥した混合物に(C)成分や任意成分の原末を添加してもよいし、α粒子とβ粒子との混合物に(C)成分や任意成分の原末を添加した後に乾燥してもよい。
混合物の乾燥方法としては、上述した棚乾燥が挙げられる。
混合物の水分量は、打錠されて錠剤となったときに、薬物層の水分量が5質量%以下となれば特に制限されないが、5質量%以下が好ましい。混合物の水分量が上記範囲内であれば、水分量が5質量%以下の薬物層を容易に形成できる。
混合物の水分量は、混合物を電子水分計にて120℃で10分間加熱したときの乾燥減量から算出する。
【0047】
方法(3)では、水分量が5質量%超の薬物層を形成し、この薬物層の水分量が5質量%以下になるまで乾燥する。
乾燥方法としては、上述した棚乾燥やコーティング工程にて乾燥する方法が挙げられる。
【0048】
薬物層の水分量の調整方法としては、変色がより抑制され、より高い強度の錠剤が得られる点で、方法(1)が好ましく、α粒子を流動層造粒により造粒しながら乾燥することがより好ましい。
【0049】
(その他の工程)
得られた錠剤は、必要に応じてコーティング剤によりコーティング処理(コーティング工程)を施してもよい。
コーティング剤としては、水溶性高分子化合物、可塑剤などが挙げられる。また、上述した(C)成分と同じ成分をコーティング剤として用いてもよい。
水溶性高分子化合物としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、クロスポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、単糖類、二糖類以上の多糖類(砂糖(グラニュー糖など)、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖等)、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、還元澱粉糖化物、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、オリゴ糖、スクロース、トレハロース、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物)などが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、クエン酸トリエチル、トリアセチン等の日本薬局方(広川書店)および医薬品添加物規格(株式会社薬事日報社)等の公定書に記載されているものが挙げられる。
これら水溶性高分子化合物や可塑剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
コーティング剤の被覆量は、本発明による効果や錠剤の崩壊性等の特性を損なわない範囲で適宜設定される。
【0050】
<作用効果>
本発明の錠剤は、上述したα粒子とβ粒子とが同一顆粒中に存在せず、薬物層の水分量が5質量%以下であるため、変色しにくい。また、α粒子とβ粒子とが同一顆粒中に存在していないことで、錠剤の強度も高い。
しかも、α粒子とβ粒子とが同一層に存在しているので、非ステロイド性抗炎症剤と制酸剤とをそれぞれ異なる層に含ませる場合に比べて、打錠工程の回数を減らすことができ、錠剤を容易に製造できる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
各実施例および比較例で使用した原料、打錠条件、測定・評価方法は、以下の通りである。
【0052】
[使用原料]
・ロキソプロフェンナトリウム水和物:大和薬品工業株式会社製
・ポリビニルアルコール:日本合成化学工業株式会社製
・カルメロース:ニチリン化学工業株式会社製
・乳糖水和物:DSP五協フード&ケミカルズ株式会社製
・ポリビニルピロリドン:BASF社製
・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース:信越化学工業株式会社製、製品名:LH−31
・トウモロコシデンプン:松谷化学工業株式会社製
・メチルセルロース:信越化学工業株式会社製
・ヒドロキシプロピルセルロース:日本曹達株式会社製
・乾燥水酸化アルミニウムゲル:協和化学工業株式会社製
・アルミニウムグリシネート:協和化学工業株式会社製
・メタケイ酸アルミン酸マグネシウム:富士化学工業株式会社製
・酸化マグネシウム:富田製薬株式会社製
・炭酸マグネシウム:富田製薬株式会社製
・合成ヒドロタルサイト:協和化学工業株式会社製
・乳糖造粒物:フロイント産業株式会社製
・結晶セルロース:旭化成ケミカルズ株式会社製、製品名:PH−302
・ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業株式会社製
・三二酸化鉄:癸巳化成株式会社製
【0053】
[打錠条件]
・打錠機:ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所製、「リブラ3L」)
・盤回転速度:20rpm
・臼杵:直径8.5mm(2段R)×6本立て、刻印無し(キャップ高さ0.1mm、R1=10、R2=3.4)
・本圧:10kN(約100MPa、約1000kg/cm
2)
【0054】
[測定・評価方法]
<水分量の測定>
α粒子、β粒子、α粒子とβ粒子との混合物、混合粉体の水分量は、電子水分計(株式会社島津製作所製、「MOISTURE BALANCE MOC−120H」)にて120℃で10分間加熱したときの乾燥減量から算出した。具体的には、加熱前の質量をa、加熱後の質量をbとし、下記式より求めた。
水分量(質量%)=(a−b)/a×100
【0055】
薬物層の水分量は、以下のようにして求めた。
まず、薬物層からなる錠剤を乳鉢で粗粉砕した。次いで、粉砕した錠剤を電子水分計(株式会社島津製作所製、「MOISTURE BALANCE MOC−120H」)にて120℃で10分間加熱したときの乾燥減量から、錠剤の水分量を算出し、これを薬物層の水分量とした。
【0056】
<変色の評価>
製造直後の錠剤を60℃で2週間保存した。製造直後の錠剤、および保存後の錠剤について、色差計(コニカミノルタ株式会社製)を用いてb
*値を測定し、下記式より保存前後のb
*値の差(Δb
*)を求めた。
Δb
*=(保存後の錠剤のb
*値)−(製造直後の錠剤のb
*値)
【0057】
5個の錠剤についてΔb
*を求めて平均値を算出し、下記評価基準にて評価した。Δb
*の平均値が低いほど錠剤の色調が変化していないことを意味する。2点以上を合格とした。
5点:0.0<Δb
*の平均値≦1.0
4点:1.0<Δb
*の平均値≦2.0
3点:2.0<Δb
*の平均値≦3.0
2点:3.0<Δb
*の平均値≦4.0
1点:4.0<Δb
*の平均値≦5.0
0点:5.0<Δb
*の平均値
【0058】
<強度の評価>
錠剤について、「第十六改正 日本薬局方」に準じて摩損試験を行い、摩損度を測定し、下記評価基準にて評価した。摩損度が低いほど錠剤の強度が高いことを意味する。2点以上を合格とした。
4点:0.0%<摩損度≦0.1%
3点:0.1%<摩損度≦0.2%
2点:0.2%<摩損度≦0.3%
1点:0.3%<摩損度≦0.4%
0点:0.4%<摩損度
【0059】
[実施例1〜3、比較例1〜2]
ロキソプロフェンナトリウム水和物68.1mgを流動層造粒機に投入し、80℃の空気を供給しつつロキソプロフェンナトリウム水和物を流動させた。このロキソプロフェンナトリウム水和物に、6質量%のポリビニルアルコール水溶液をロキソプロフェンナトリウム水和物に対し純分換算で3mgとなるよう噴霧した。噴霧終了後、引き続き80℃の空気を20分供給して乾燥し、α粒子を得た。α粒子の水分量を表1に示す。
別途、乾燥水酸化アルミニウムゲル120mgを、得られるβ粒子の水分量が表1に示す値になるまで80℃で棚乾燥し、β粒子を得た。β粒子は、乾燥時間の調整により調湿した。具体的には、実施例1〜3では5〜10分間乾燥させ、比較例1では2分間乾燥させ、比較例2では乾燥させなかった。
上記で得られたα粒子と、β粒子と、(C)成分として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース30mgと、表1に示す組成の任意成分(添加剤)とを混合して混合粉体とし、これを打錠して、薬物層からなる錠剤を得た。
得られた錠剤(薬物層)の水分量を測定し、変色および強度の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1から明らかなように、各実施例で得られた錠剤は、変色が抑制され、強度も高かった。
一方、各比較例で得られた錠剤は水分量が高く、変色しやすかった。
これらの結果から、β粒子の水分量を低くすることで、錠剤の水分量も低くなり、高い変色抑制効果が得られることが示された。
【0062】
[実施例4〜9、比較例3〜8]
ロキソプロフェンナトリウム水和物68.1mgを流動層造粒機に投入し、80℃の空気を供給しつつロキソプロフェンナトリウム水和物を流動させた。このロキソプロフェンナトリウム水和物に、6質量%のポリビニルアルコール水溶液をロキソプロフェンナトリウム水和物に対し純分換算で4mgとなるよう噴霧した。噴霧終了後、引き続き80℃の空気を20分供給して乾燥し、α粒子を得た。α粒子の水分量を表2、3に示す。
別途、表2、3に示す種類の(B)成分120mgを、得られるβ粒子の水分量が表2、3に示す値になるまで80℃で棚乾燥し、β粒子を得た。β粒子は、乾燥時間の調整により調湿した。具体的には、実施例4〜9では約8分間乾燥させ、比較例3〜8では0〜1分間乾燥させた。
上記で得られたα粒子と、β粒子と、(C)成分として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース27mgと、表2、3に示す組成の任意成分(添加剤)とを混合して混合粉体とし、これを打錠して、薬物層からなる錠剤を得た。
得られた錠剤(薬物層)の水分量を測定し、変色および強度の評価を行った。これらの結果を表2、3に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
表2、3から明らかなように、各実施例で得られた錠剤は、変色が抑制され、強度も高かった。
一方、各比較例で得られた錠剤は水分量が高く、変色しやすかった。
これらの結果から、β粒子の水分量を約5質量%とした場合では、(B)成分として乾燥水酸化アルミニウムゲルを用いたケースが最も優れた変色抑制効果を発揮し、次いでアルミニウムグリシネート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを用いたケースが良好な変色抑制効果を発揮することが示された。
【0066】
[実施例10〜17]
ロキソプロフェンナトリウム水和物68.1mgを流動層造粒機に投入し、80℃の空気を供給しつつロキソプロフェンナトリウム水和物を流動させた。このロキソプロフェンナトリウム水和物に、表4に示す種類の(C)成分の濃度が6質量%となるように水に溶解させ、得られた水溶液をそれぞれロキソプロフェンナトリウム水和物に対し純分換算で5mgとなるよう噴霧した。噴霧終了後、引き続き80℃の空気を20分供給して乾燥し、α粒子を得た。α粒子の水分量を表4に示す。
別途、乾燥水酸化アルミニウムゲル120mgを、80℃で約8分間、棚乾燥し、β粒子を得た。β粒子の水分量を表4に示す。
上記で得られたα粒子と、β粒子と、(C)成分として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース27mgと、表4に示す組成の任意成分(添加剤)とを混合して混合粉体とし、これを打錠して、薬物層からなる錠剤を得た。
得られた錠剤(薬物層)の水分量を測定し、変色および強度の評価を行った。これらの結果を表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
表4から明らかなように、各実施例で得られた錠剤は、変色が抑制され、強度も高かった。
これらの結果から、錠剤の水分量がほぼ同一の場合では、(C)成分としてポリビニルアルコールを用いたケースが最も優れた変色抑制効果を発揮することが示された。
【0069】
[実施例18]
ロキソプロフェンナトリウム水和物68.1mgを流動層造粒機に投入し、80℃の空気を供給しつつロキソプロフェンナトリウム水和物を流動させた。このロキソプロフェンナトリウム水和物に、6質量%のポリビニルアルコール水溶液をロキソプロフェンナトリウム水和物に対し純分換算で3mgとなるよう噴霧した。噴霧終了後、引き続き80℃の空気を20分供給して乾燥し、α粒子を得た。α粒子の水分量を表5に示す。
別途、乾燥水酸化アルミニウムゲル120mgを、80℃で約5分間、棚乾燥し、β粒子を得た。β粒子の水分量を表5に示す。
上記で得られたα粒子と、β粒子と、(C)成分として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース27mgと、表5に示す組成の任意成分(添加剤)とを混合して混合粉体とし、これを打錠して、薬物層からなる錠剤を得た。
得られた錠剤(薬物層)の水分量を測定し、変色および強度の評価を行った。これらの結果を表5に示す。
【0070】
[実施例19]
ロキソプロフェンナトリウム水和物68.1mg、およびポリビニルアルコール3mgを攪拌造粒し、得られた造粒物を60℃で約10分間、棚乾燥し、α粒子を得た。α粒子の水分量を表5に示す。
上記で得られたα粒子を用いた以外は、実施例18と同様にして錠剤を製造した。
得られた錠剤(薬物層)の水分量を測定し、変色および強度の評価を行った。これらの結果を表5に示す。
【0071】
[実施例20]
ロキソプロフェンナトリウム水和物68.1mgを100℃で約15分間、棚乾燥し、α粒子を得た。α粒子の水分量を表5に示す。
別途、乾燥水酸化アルミニウムゲル120mgを流動層造粒機に投入し、80℃の空気を供給しつつ乾燥水酸化アルミニウムゲルを流動させた。この乾燥水酸化アルミニウムゲルに、6質量%のポリビニルアルコール水溶液を乾燥水酸化アルミニウムゲルに対し純分換算で3mgとなるよう噴霧した。噴霧終了後、引き続き80℃の空気を20分供給して乾燥し、β粒子を得た。β粒子の水分量を表5に示す。
上記で得られたα粒子およびβ粒子を用いた以外は、実施例18と同様にして錠剤を製造した。
得られた錠剤(薬物層)の水分量を測定し、変色および強度の評価を行った。これらの結果を表5に示す。
【0072】
[実施例21]
ロキソプロフェンナトリウム水和物68.1mgと、ポリビニルアルコール3mgと、乾燥水酸化アルミニウムゲル120mgとを混合し、得られた混合物を80℃で約15分間、棚乾燥した。乾燥後の混合物の水分量は3.5質量%であった。
乾燥後の混合物をα粒子およびβ粒子の代わりに用いた以外は、実施例18と同様にして錠剤を製造した。
得られた錠剤(薬物層)の水分量を測定し、変色および強度の評価を行った。これらの結果を表5に示す。
【0073】
[比較例9]
ロキソプロフェンナトリウム水和物68.1mgと乾燥水酸化アルミニウムゲル120mgとを混合し、流動層造粒機に投入し、80℃の空気を供給し混合物を流動させた。この混合物に、6質量%のポリビニルアルコール水溶液をロキソプロフェンナトリウム水和物に対し純分換算で3mgとなるよう噴霧した。噴霧終了後、引き続き80℃の空気を15分供給して乾燥し、α粒子およびβ粒子が同一顆粒に存在する造粒物(顆粒)を得た。この顆粒の水分量は3.5質量%であった。
上記で得られた顆粒をα粒子およびβ粒子の代わりに用いた以外は、実施例18と同様にして錠剤を製造した。
得られた錠剤(薬物層)の水分量を測定し、変色および強度の評価を行った。これらの結果を表5に示す。
【0074】
【表5】
【0075】
表5から明らかなように、各実施例で得られた錠剤は、変色が抑制され、強度も高かった。
一方、α粒子とβ粒子が同一顆粒に存在する比較例9の錠剤は、変色しやすく、強度も低かった。
これらの結果から、変色抑制効果の観点では、α粒子を流動層造粒により調製した場合が最も優れ、次いで、α粒子を攪拌造粒により調製した場合またはβ粒子を流動層造粒により調製した場合である。強度の観点では、α粒子を流動層造粒により調製した場合が最も優れ、次いで、α粒子を攪拌造粒により調製した場合である。
【0076】
[実施例22、23]
ロキソプロフェンナトリウム水和物68.1mgを流動層造粒機に投入し、80℃の空気を供給しつつロキソプロフェンナトリウム水和物を流動させた。このロキソプロフェンナトリウム水和物に、6質量%のポリビニルアルコール水溶液をロキソプロフェンナトリウム水和物に対し純分換算で3mgとなるよう噴霧した。噴霧終了後、引き続き80℃の空気を20分供給して乾燥し、α粒子を得た。α粒子の水分量を表6に示す。
別途、表6に示す量の乾燥水酸化アルミニウムゲルを、80℃で約15分間、棚乾燥し、β粒子を得た。β粒子の水分量を表6に示す。
上記で得られたα粒子と、β粒子と、(C)成分として表6に示す量の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと、表6に示す組成の任意成分(添加剤)とを混合して混合粉体とし、これを打錠して、薬物層からなる錠剤を得た。
得られた錠剤(薬物層)の水分量を測定し、変色および強度の評価を行った。これらの結果を表6に示す。
【0077】
【表6】
【0078】
表6から明らかなように、各実施例で得られた錠剤は、変色が抑制され、強度も高かった。
【0079】
[実施例24〜26]
ロキソプロフェンナトリウム水和物68.1mgと、ポリビニルアルコール3mgと、乾燥水酸化アルミニウムゲル120mgと、表7に示す組成の(C)成分と、表7に示す組成の任意成分(添加剤)とを混合して混合粉体とし、これを打錠して、薬物層を形成した。
薬物層の水分量が表7に示す値になるまで80℃で棚乾燥し、錠剤を得た。薬物層は、乾燥時間の調整により調湿した。具体的には、実施例24では30分間乾燥させた。
得られた錠剤(薬物層)の水分量を測定し、変色および強度の評価を行った。これらの結果を表7に示す。
【0080】
【表7】
【0081】
表7から明らかなように、各実施例で得られた錠剤は、変色が抑制され、強度も高かった。