(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407089
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
F03G 6/00 20060101AFI20181004BHJP
F02C 1/05 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
F03G6/00 531
F02C1/05
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-77346(P2015-77346)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-196860(P2016-196860A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】514293341
【氏名又は名称】廣瀬 健児
(74)【代理人】
【識別番号】100178102
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 晃
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 健児
【審査官】
小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−343961(JP,A)
【文献】
特開2003−126681(JP,A)
【文献】
特開2015−178827(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101251093(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00−11/24
F01K 23/00−27/02
F02C 1/00− 9/58
F03G 1/00− 7/10
F23R 3/00− 7/00
F24S 10/00−90/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光熱とドライアイスとを利用する発電装置であって、
軸方向に対して一定の角度を持って周面に設置された複数のフィンを備える回転板を有する円筒形の熱交換部と、
前記円筒形の熱交換部の上半部に位置し太陽光熱を採取する入熱部と、
前記円筒形の熱交換部の下半部を収容し水及びドライアイスを受け入れる冷却室と、
前記熱交換部の前記回転板に従動する回転子を有する発電部と、
から成り、
上記入熱部を通して採取された太陽光熱により加熱される前記熱交換部内上部の空気と上記冷却室内の水及びドライアイスによって冷却される前記熱交換部内下部の空気の膨張・収縮によって生ずる前記空気の移動が前記複数のフィンを備える前記回転板を回転させ、
前記複数のフィンを備える前記回転板の回転により前記熱交換部内の前記空気の移動及び熱交換が行われ、
前記熱交換及び前記空気の移動が繰り返されることにより前記熱交換部内の空気が一定の方向に回転を続けることにより前記回転板が回転を持続し、
前記回転板に従動して前記発電部の前記回転子が回転することにより前記発電部が電力を生成することを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記冷却室は密閉されており、前記冷却室内に収容されている前記熱交換部の前記下半部には二酸化炭素受入口と二酸化炭素放出口とが互いに離隔して設置され、前記密閉された冷却室内に投入された前記ドライアイスが気化することにより発生する二酸化炭素が前記二酸化炭素受入口より前記熱交換部内に膨入し前記二酸化炭素放出口より排出される過程において、前記複数のフィンを備える前記回転板を回転させることを特徴とする、請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記熱交換部はその内壁に、前記回転板の表面に設置された各々の前記フィンに対応する複数の固定フィンを有し、前記回転板の前記複数のフィンと前記熱交換部内壁の前記複数の固定フィンとが協応して前記熱交換部内に生ずる空気の流動方向を決定することを特徴とする請求項1又は2記載の発電装置。
【請求項4】
前記発電部は前記熱交換部上半部の前記入熱部と熱伝達部を介して互いに接続しており、前記熱伝達部は発電によって前記発電部に生じた廃熱を前記入熱部に伝達し熱源として利用することが可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の発電装置。
【請求項5】
前記発電装置は前記熱交換部の前記二酸化炭素放出口の延長上にドライアイスの再精製加工機を有し、前記発電装置から排出される二酸化炭素からドライアイスを製造し再利用することができることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スターリングエンジンの原理を利用した再生可能エネルギーの発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化現象や原子力発電に対する警戒感から、太陽光発電、風力発電、地熱発電等の再生可能エネルギー関係の発電が注目されている。
【0003】
一方で、19世紀前半に発明されたスターリングエンジンは、ガソリンエンジン等その後開発された手軽な内燃機関の普及に押され、動力としての利用は進んでいないが、近年、外燃機関として熱源を選ばないクリーンな発電装置として見直されつつあり、研究が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−332672号公報
【特許文献1】特開2014−206120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、日本のエネルギー自給率は4パーセントで他国に比べて極端に低い(資源エネルギー庁 エネルギー白書2011)。また、火力発電等化石燃料を使用した発電の割合については、震災前の2010年12月で61パーセント、震災後の2012年12月で90パーセントである(資源エネルギー庁「我が国のエネルギー情勢1」)。このままでは、化石燃料の輸入がストップした場合、日本の経済活動、日常生活に悪影響が発生するばかりか、地球温暖化問題の解決にも逆行する。
【0006】
上述の現状を踏まえ、現在、火力発電等に頼っている電力源を、水力、風力、太陽光、地熱発電等の再生可能エネルギーに分散すべく、種々の研究がおこなわれている。その一つとして、熱源を選ばないクリーンな発電装置として、太陽熱、排熱等を利用したスターリングエンジンによる発電装置の開発・研究が行われている。
【0007】
しかしながら、温度差から生ずる閉鎖空間における気体体積の変化を運動エネルギーに変換するスターリングエンジンにおいては、以下の問題があった。第一に、発電機を効果的に作動させるためには空気の熱冷を迅速に素早く行う必要があるところ、太陽熱等による気体の膨脹だけでは十分な出力を得ることが難しく、また、内部気体の熱交換サイクルのスピードもそれほど速くすることはできない。第二に、熱源とする太陽熱や廃熱は天候や工場の稼働により供給が一定しない場合が多く、発電機を安定的に稼働させることが難しい。
【0008】
これらの問題を踏まえて、特許文献1には、太陽光熱を集光熱するフレネルレンズと、集光熱した熱源を所定の場所に導く石英ガラス製の光導ファイバーを備えるスターリングエンジン発電装置が提案されている。しかし、この装置は太陽光からの集光熱力を高めることにより上述第一の問題には対処しているが、天候によって稼働が制約されるという第二の問題は全く解決されていない。
【0009】
特許文献2には、エンジン内の作動ガスとして高圧のヘリウムガスを使用した太陽熱スターリングエンジンにおいて、エンジン回転軸に設置され、始動用と発電用を兼務した回転子の慣性質量を軽くすることにより、太陽の入射熱が変化した場合に、エンジン回転数を迅速に変化させて発電量を調整するスターリングエンジン発電機の発明が開示されている。しかしながら、この種のスターリングエンジン発電機においては、エンジン内の作動気体に高圧の特殊なガスを封入して使用するため、ガスの圧力やピストンのストロークを制御するための機構が必要となるほか、太陽光熱量が変化したときには自ら発電した電力をエンジンの回転のために再使用することになるので、全体の発電量の減少をカバーすることはできない。
【0010】
本発明は上記課題を解決し、作動気体として特殊なガスを使用したり、そのための複雑な機構を必要とせず、太陽光熱が減少したときでも安定した発電量を確保できる太陽熱スターリングエンジン発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の発電装置は、太陽光熱とドライアイスとを利用する再生可能エネルギーの発電装置であって、軸方向に対して一定の角度を持って周面に設置された複数のフィンを備える回転板を有する円筒形の熱交換部と、該熱交換部の上半部に位置し太陽光熱を採取する入熱部と、熱交換部の下半部を収容し水及びドライアイスを受け入れる冷却室と、熱交換部の前記回転板に従動する回転子を有する発電部と、から成り、入熱部を通して採取された太陽光熱により加熱される熱交換部内上部の空気と冷却室内の水及びドライアイスによって冷却される熱交換部内下部の空気の膨張・収縮によって生ずる空気の移動がフィンを備える回転板を回転させ、さらに、フィンを備える前記回転板の回転により熱交換部内の空気の移動及び熱交換が行われる。このように空気の移動及び熱交換が繰り返されることにより熱交換部内の空気が一定の方向に回転を続け、前記回転板が回転を持続し、回転板に従動して発電部の回転子が回転することにより発電部が電力を生成することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発電装置は、前記冷却室は密閉されており、冷却室内に収容されている熱交換部の下半部には二酸化炭素受入口と二酸化炭素放出口とが互いに離隔して設置され、冷却室内に投入されたドライアイスが気化することにより発生する二酸化炭素が二酸化炭素受入口より熱交換部内に膨入し二酸化炭素放出口より排出される過程において、複数のフィンを備える前記回転板を回転させることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発電装置は、前記熱交換部はその内壁に、回転板の周面に設置された各々のフィンに対応する複数の固定フィンを有し、回転板の複数のフィンと熱交換部内壁の複数の固定フィンとが協応して前記熱交換部内に生ずる空気の流動方向を決定することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発電装置は、発電部が熱交換部上半部の入熱部と熱伝達部を介して互いに接続しており、熱伝達部は発電によって生じた廃熱を入熱部に伝達し熱源として利用することが可能であることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発電装置は、前記熱交換部の二酸化炭素放出口の延長上にドライアイスの再精製加工機を有し、発電装置から排出される二酸化炭素からドライアイスを製造し再利用することができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
低温熱源としてドライアイスを用いるため、太陽光熱のみ利用のスターリングエンジン発電と比較して、安定した発電を行うことができる。また、請求項4の発電装置では、発電部の廃熱も再利用することができるため、運転の安定度はさらに高まる。
【0017】
太陽光熱とドライアイスという高低差の大きい両熱源を利用するため、高温部と低温部の温度差が大きくなり、これが素早い空気移動を起こし、スムースな回転運動を得ることができる。また、回転板のフィンの動きが更なる空気移動と熱交換を促し、切れ目のない再生エネルギー発電を行うことができる。
【0018】
多くのスターリングエンジンが採用しているピストン運動から回転運動への変換ではなく、熱交換部内で直接回転運動を得ることができるため、発電に至るまでのエネルギーロスが少ない。
【0019】
請求項2の発電装置においては、熱交換部内に膨入する二酸化炭素の流れにより、強制的な回転力を得ることができる。また、当該強制的な回転が熱交換部内の空気移動と熱交換の効率をさらに高め、これが回転板の回転力を高めるという好循環を生む。
【0020】
ドライアイスの再精製加工機を有する請求項5の発電装置においては、運転の過程で発生する二酸化炭素を再利用できるため、環境に優しく、また、省コスト性の高い発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態の発電装置の正面右方向からの斜視図である(熱交換部と発電部の前蓋は省略)。
【
図2】本実施形態の発電装置の正面左方向からの斜視図である(熱交換部と発電部の前蓋は省略)。
【
図3】本実施形態の発電装置の正面縦断面図である。
【
図4】本実施形態の発電装置の側面縦断面図である(発電部内の構造は省略)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について図を用いて説明する。
まず、本実施形態の構成について説明する。
本実施形態の発電装置は熱交換によって動力を得るスターリングエンジンの原理を利用した発電装置であって、
図1〜
図4に示すように、装置の鉛直方向中央に配設された円筒形の熱交換部1と、熱交換部1の上半部15に位置し太陽光熱を採取・保存する入熱部2と、熱交換部1の下半部16を収容し水33及びドライアイス32を受け入れる冷却室3と、入熱部2に上接して配設された発電部4によって構成される。
【0023】
熱交換部1は内部に軸回転する円筒形の回転板12を有し、回転板12の周面には軸方向に対して一定の角度を持って複数のフィン13が設置されている。また、熱交換部1はその内壁に、回転板12の表面に設置された各々のフィン13に対応する複数の固定フィン11を有し、軸方向に対して一定の共通角度を有するフィン13と固定フィン11とが協応して熱交換部1内の空気の流動方向を決定する構造となっている。
【0024】
図3に示すように、冷却室3内に収容されている熱交換部1の下半部16には二酸化炭素受入口17と二酸化炭素放出口18とが互いに離隔して設置され、冷却室3から膨入する二酸化炭素(炭酸ガス)34を一方から受け入れ、他方から放出する(
図3矢印)。
【0025】
冷却室3は膨張する二酸化炭素34が熱交換部1内に膨入するように密閉されており、側面に設置されたドライアイス投入口31は気密性を保つ観点から二重口となっている(不図示)。
【0026】
熱交換部1の上半部15に位置する入熱部2は、熱交換部1の上半部15を構成する円弧壁と壁内部に設置されたオイルパン21によって構成され、外表面は太陽熱を吸収しやすい艶消し黒塗装が施され、オイルパン21には保温油22が注入されている。また、入熱部2と発電部4とは熱伝達部43を介して接続され、発電部4に生じた廃熱が入熱部2に伝導する構成となっている。また、熱交換部1の下半部16を収容する冷却室3の外側塗装は、太陽光熱を反射しやすいように白色系の塗装とする。
【0027】
発電部4の外側軸先には歯車42が軸付けされており、回転ベルト5によって回転板12の軸回転運動が歯車42に伝動される。
【0028】
次に、本実施形態の機能について説明する。
本実施形態の発電装置は、熱交換部1内の回転板12の回転が発電部4の回転子41を従動させることにより発電機能を発揮するものであるが、回転子41の回転は熱交換部1内の空気の流れによって生じる。すなわち、入熱部2において採取された太陽光熱によって上半部(高温部)15内の空気が固定フィン11に導かれて一定方向に膨張、移動し、一定の角度を持って設置されたフィンに当たり回転子41を動かすことによって回転が生じる。さらに、下半部(低温部)16に流入した高温の空気がドライアイス32及び水33によって冷却され、回転板14のフィン11によって再び上半部(高温部)15に運ばれることにより、熱交換と空気移動のサイクルが生まれる。また、運転中においては、発電装置によって生じる廃熱も熱伝達部43を通して入熱部2に伝えられ、熱源として再利用され上半部(高温部)15の熱交換を補助する構造となっている。
【0029】
上述したように、本発電装置は、太陽光熱、発電装置の廃熱及びドライアイスを熱源として十分稼働可能であるが、本発明においては、ドライアイスが熱源だけではなく、物理的な動力を生じさせる源材となっていることに大きな特徴がある。すなわち、密閉された冷却室3に投入されたドライアイス32は水に接して気化し、固体時の約800倍の体積に膨張しつつ熱交換器1の二酸化炭素受入口17から下半部(低温部)16に膨入し、二酸化炭素放出口18から放出される。この過程で、熱交換部1内に強力な空気の流れが発生し回転板12の回転を補助する。また、回転板の回転力の強化は低温部16・高温部15間の空気及び熱の交換を促し、これが更に回転板の回転力を高めるという好循環を生み出す。
【0030】
運転開始時に十分な太陽光熱を得ることができない環境下では、ドライアイスの投入が直ちに始動力となりうることも本発明の特徴である。
【0031】
また、本発電装置は、ピストン運動から回転運動への変換ではなく、ロータリーエンジンのように直接回転運動を得ることができるため、発電に至るまでのエネルギーロスが少ないことも特徴である。
【0032】
さらに、本発電装置は、二酸化炭素放出口18の延長上にドライアイスの再精製加工機(不図示)を有し、排出される二酸化炭素からドライアイスを製造し再利用することができるほか、二酸化炭素を消火器メーカーや野菜工場等に安価に提供することも大きな特徴である。
【符号の説明】
【0033】
1 熱交換部
11 固定フィン
12 回転板
13 回転板フィン
14 回転軸
15 上半部(高温部)
16 下半部(低温部)
17 二酸化炭素受入口
18 二酸化炭素放出口
2 入熱部
21 オイルパン
22 保温油
3 冷却室
31 ドライアイス投入口
32 ドライアイス
33 水
4 発電部
41 回転子
42 歯車
43 熱伝達部
44 電線
5 回転ベルト