(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407124
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ゴム製成形止水材
(51)【国際特許分類】
E02B 3/10 20060101AFI20181004BHJP
E02D 29/02 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
E02B3/10
E02D29/02 302
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-194563(P2015-194563)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-66777(P2017-66777A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000146582
【氏名又は名称】株式会社信明産業
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】中谷 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】横尾 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲憲
(72)【発明者】
【氏名】岡山 信之
(72)【発明者】
【氏名】榎並 弘
(72)【発明者】
【氏名】松尾 信彦
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−038557(JP,U)
【文献】
実開昭57−075040(JP,U)
【文献】
特開平10−037325(JP,A)
【文献】
特開2010−209646(JP,A)
【文献】
特開2003−253776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/10、 3/16
E02B 7/20〜 8/04
E02D 25/00、31/04
E02D 29/16
E03F 1/00〜 11/00
E21D 11/00〜 23/26
E04B 1/62〜 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の面で構成される遊間内において該遊間内に侵入した侵入水の浸入方向に直交するように介在配置し該侵入水の止水を図る棒状のゴム製成形止水材であって、軸直交方向の断面形状において、平面形状の下面を有する基体を備え、該基体の左右端部からそれぞれ一体に立ち上がり対向する一対の弾性片を備えると共に、該各弾性片の中途部同士を架橋する架橋体を備え、上記遊間を構成する一面に上記基体の下面を圧接すると共に同他面に上記各弾性片の自由端部を圧接しつつ該各弾性片を拡開して止水を図ると共に、侵入水と接した方の上記弾性片の外面が該侵入水の水圧を受圧して同弾性片の自由端部の圧接を補完し、さらに上記架橋体によって上記各弾性片の開き過ぎを防止し、該各弾性片の自由端部の圧接を補完する構成としたことを特徴とするゴム製成形止水材。
【請求項2】
上記弾性片同士の対向間隔は該各弾性片の自由端側に行くにしたがって漸次広くなることを特徴とする請求項1記載のゴム製成形止水材。
【請求項3】
上記各弾性片の自由端部の端面を曲面形状としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のゴム製成形止水材。
【請求項4】
上記基体の上面に金属製の板体を固定し、該板体を介して上記基体の下面を上記遊間を構成する一面に均一に圧接することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のゴム製成形止水材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向する一対の面間に生ずる遊間、例えば防潮堤や擁壁を構成するコンクリート単位壁部材と該単位壁部材の端部を挾持するコンクリート製柱間に生ずる遊間内に介在配置し、同遊間内に侵入してきた侵入水(海水等)を食い止める棒状のゴム製成形止水材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム製成形止水材はゴムの弾性反発力を利用して遊間を構成する一対の面にそれぞれ圧接して止水を図るものであり、中でも弾性片を有し該弾性片の弾性反発力により上記圧接を行うゴム製成形止水材が既知である。
【0003】
下記特許文献1,2には、何れも、遊間に沿って配される芯材の一側部に該遊間を構成する一面に圧接する複数の弾性片を備えると共に、同芯材の他側部に該遊間を構成する他面に圧接する複数の弾性片を備える棒状のゴム製成形止水材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−209646号公報
【特許文献2】特許第5101772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各特許文献に開示の成形止水材は、遊間を構成する一対の面の双方に弾性片の自由端部を圧接し止水を図るものである。そのため、遊間を構成する一面に圧接する弾性片の弾性反発力と同他面に圧接する弾性片の弾性反発力が相殺されてしまう問題点を有しており、強固な圧接が実現できないおそれがある。
【0006】
また、上記各特許文献の成形止水材は、複数の弾性片が何れも遊間の開口側に撓む構成、すなわち全ての弾性片が同方向に撓む構成であり、侵入水の水圧によっては遊間の奥行き方向へ位置ズレしてしまうおそれをも有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記従来の成形止水材の問題点を有効に解決し、遊間を構成する一対の面の双方に強固に圧接するゴム製成形止水材を提供する。
【0008】
要述すると、本発明に係るゴム製成形止水材は、対向する一対の面で構成される遊間内において該遊間内に侵入した侵入水の浸入方向に直交するように介在配置し該侵入水の止水を図る棒状のゴム製成形止水材であって、軸直交方向の断面形状において、平面形状の下面を有する基体を備えると共に、該基体の左右端部からそれぞれ一体に立ち上がり対向する一対の弾性片を備え、上記遊間を構成する一面に上記基体の下面を圧接すると共に同他面に上記各弾性片の自由端部を圧接しつつ該各弾性片を拡開して止水を図ると共に、侵入水と接した方の上記弾性片の外面が該侵入水の水圧を受圧して同弾性片の自由端部の圧接を補完する構成を有する。そのため、遊間を構成する一対の面の双方に強固に圧接できると共に位置ズレを効果的に防止する。
【0009】
好ましくは、上記弾性片同士の対向間隔を該各弾性片の自由端側に行くにしたがって漸次広くなるように構成し、確実に上記一対の弾性片を拡開する。
【0010】
また、上記各弾性片の自由端部の端面を曲面形状とし、該曲面形状の端面を遊間を構成する他面に摺接しつつ上記一対の弾性片を拡開させる。
【0011】
また、上記各弾性片の中途部同士を架橋する架橋体を備え、該架橋体によって上記各弾性片の自由端部の圧接を補完する。
【0012】
好ましくは、上記基体の上面に金属製の板体を固定し、該板体を介して上記基体の下面を上記遊間を構成する一面に均一に圧接する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るゴム製成形止水材によれば、遊間を構成する一面に基体の平面形状を呈する下面を均密に圧接すると共に、同遊間を構成する他面に、強制的に拡開した弾性片の自由端部を強固に圧接して、確実な止水を図ることができる。
【0014】
また、上記拡開する一対の弾性片により効果的に振動を吸収することができ、緩衝材としても機能する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)は本発明に係るゴム製成形止水材の下側斜視図、(B)は同上側斜視図。
【
図2】本発明に係るゴム製成形止水材の取付例を示す概要図。
【
図4】(A)はゴム製成形止水材の取付状態を示す断面図、(B)はゴム製成形止水材の遊間内での状態を示す断面図。
【
図5】ゴム製成形止水材の侵入水圧による変形を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るゴム製成形止水材の実施形態を
図1乃至
図5に基づき説明する。
【0017】
本実施例においては、説明の便宜上、
図2,
図3に示すように、防潮堤を構成する単位壁部材C(コンクリート構造物)と該単位壁部材Cを挾持して支持する軸直交方向断面がH形のコンクリート製の柱P間に生ずる遊間G内に本発明に係るゴム製成形止水材1を取り付ける場合の実施例を示す。しかし、本発明に係るゴム製成形止水材においては、これに限らず、一対の面間に形成される遊間であれば容易に止水に供することができる。特に本実施例のように垂直方向に延びる遊間、例えば土留め壁、擁壁等の壁を構築する際に生ずる遊間における止水に最適である。
【0018】
本発明に係るゴム製成形止水材1は、
図4(B),
図5に示すように、対向する一対の面、すなわち柱Pの挾持面Paと単位壁部材Cの被挾持面Ca(C′a)で構成される遊間G内において該遊間G内に侵入した侵入水(海水等)の浸入方向に直交するように介在配置し該侵入水の止水を図る棒状のゴム製成形止水材である。斯かるゴム製成形止水材1は、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、その他高分子材料等を単独又は複合して基本材料として使用し、既知の押し出し成形又はプレス成形により成形する。
【0019】
基本構成としては、
図1に示すように、軸直交方向の断面形状において、平面形状の下面2aを有する断面矩形状の基体2を備えると共に、該基体2の右端部2cから一体に立ち上がる右側弾性片3と、同基体2の左端部2dから一体に立ち上がる左側弾性片4とを備え、該右側弾性片3と該左側弾性片4とが対向する構成を具備している。なお、
図1(A)中の2eは、後記する取付時にボルト7の軸部を挿入する貫通孔であり、成形止水材1の長手方向に沿って間隔を置いて複数穿設する。
【0020】
好ましくは、右側弾性片3と左側弾性片4との対向間隔は、各弾性片3,4の自由端部3a,4aに行くにしたがって漸次広くなるように設定し、後記するように、該各弾性片3,4が確実に拡開できるようにする。より好ましくは、
図3にも示すように、各弾性片3,4の外面と基体2の左右端面が連続するようにし、後記するように、有効に侵入水の水圧を受圧できるようにする。また、上記各自由端部3a,4aの端面は曲面形状とし、後記するように、該曲面形状の端面を遊間Gを構成する他面(被挾持面Ca,C′a)に摺接しつつ右側弾性片3と左側弾性片4とを確実に拡開、すなわち右側弾性片3の自由端部3aと左側弾性片4の自由端部4aを相互に離間するように各弾性片3,4を変形させる。
【0021】
また、右側弾性片3と左側弾性片4の中途部同士を架橋する架橋体5を備え、該架橋体5によって上記各弾性片3,4の開き過ぎを防止し、該各弾性片3,4の自由端部3a,4aの圧接を補完する。すなわち、架橋体5により右側弾性片3の中途部と左側弾性片4の中途部とを繋ぎ、該各弾性片3,4の自由端部3a,4aの相互離間方向への変形を許容しつつ過度の変形を防止する。なお、
図1(B)中の5aは、後記する取付時にボルト7の軸部及び頭部を挿入する貫通孔であり、成形止水材1の長手方向に沿って間隔を置いて複数穿設する。
【0022】
また、基体2の上面2bに沿い金属製の板体6を配する構成を有する。該板体6は基体2の上面2bの長手方向に沿い連続的又は断続的に配し固定して、後記するように、基体2の下面2aを遊間Gの構成面に均一に圧接する。
【0023】
次に、本発明に係るゴム製成形止水材1(以下、単に「成形止水材」という。)の取付について詳述する。
【0024】
図2,
図3に示すように、間隔を置いて立設された柱Pは垂直に延びるウェブの前後端にそれぞれ垂直に延びるフランジを有する軸直交方向断面H形であり、
図3にも示すように、各フランジの左右端部の内面、すなわち対向する二対の内面を挾持面Paとして単位壁部材Cの左右端部を挾持して該単位壁部材Cを支持する。なお、
図2,
図3中のCaは単位壁部材C端部の被挾持面を示しており、
図3中のC′は上記単位壁部材Cと隣接する単位壁部材を示しており、C′aは該隣接する単位壁部材C′端部の被挾持面を示している。
【0025】
取付において好ましくは、予め上記柱Pの四つの挾持面Paに該挾持面Paの長手方向、つまり垂直方向に沿って本発明に係る成形止水材1を固定して取り付ける。
【0026】
詳述すると、
図4(A)に示すように、柱Pの挾持面Paにアンカー又はインサート8を埋設し、架橋体5に穿設した貫通孔5a、板体6に穿設した受入孔6a及び基体2に穿設した貫通孔2eにボルト7の軸部を貫挿して該軸部を上記アンカー又はインサート8と係合して取付を行う。
【0027】
ボルト7の頭部が板体6の受入孔6aに受け入れられ、該板体6がボルト7によって挾持面Pa側に押し付けられ、これに伴い基体2の下面2aが挾持面Paに均一に圧接する。
【0028】
次いで、上記のように予め成形止水材1が取り付けられた挾持面Paとこれに対向する挾持面Pa間に単位壁部材Cの各端部を差し入れる。この際には単位壁部材Cの各端部と最初に接する成形止水材1上端の右側弾性片3及び左側弾性片4を強制的に拡開しながら単位壁部材Cの各端部を差し入れることが望ましい。右側弾性片3と左側弾性片4とが閉じる方向に変形するのを抑止し、両弾性片3,4を確実に拡開させるためである。
【0029】
そして、各単位壁部材Cの左右端部を対向する挾持面Pa間に完全に差し入れると、
図3,
図4(B)に示すように、挾持面Paと被挾持面Ca(C′a)間に生ずる遊間G内に成形止水材1が介在配置することとなる。
【0030】
特に本発明の成形止水材1にあっては、
図4(B)に示すように、右側弾性片3と左側弾性片4の各自由端部3a,4aが備える曲面形状の端面が被挾持面Ca(C′a)に摺接しながら相互に離間することにより、該各弾性片3,4が拡開する。
【0031】
すなわち、本発明に係る成形止水材1は、遊間Gを構成する一面(挾持面Pa)に既述のように基体2の下面2aを圧接すると共に、同他面(被挾持面Ca(C′a))に
図4(B)に示すように上記各弾性片3,4の自由端部3a,4aを圧接しつつ該各弾性片3,4を拡開して止水を図ることができる。
【0032】
さらに、本発明に係る成形止水材1にあっては、
図5に示すように、侵入水と接した方の弾性片、つまり
図5においては右側弾性片3の外側面3bが該侵入水の水圧を受圧して同弾性片3の自由端部3aの圧接を補完する構成を有する。
【0033】
以上のように、本発明に係る成形止水材1は、遊間を構成する一対の面Pa,Caの双方に強固に圧接できると共に、該強固な圧接に伴い自身の位置ズレをも効果的に防止しながら、確実に止水を図ることができる。
【0034】
また、右側弾性片3と左側弾性片4の中途部同士を架橋する架橋体5によって該各弾性片3,4の開き過ぎを防止し、該各弾性片3,4の自由端部3a,4aの圧接を補完することができ、緩衝材としても機能することができる。
【0035】
なお、本実施例においては、予め柱P側に成形止水材1を固定して取り付ける例を示したが、単位壁部材C(C′)側に成形止水材1を固定して取り付けておいてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1…成形止水材、2…基体、2a…下面、2b…上面、2c…右端部、2d…左端部、2e…貫通孔、3…右側弾性片、3a…自由端部、3b…外側面、4…左側弾性片、4a…自由端部、5…架橋体、5a…貫通孔、6…板体、6a…受入孔、7…ボルト、8…アンカー又はインサート、C,C′…単位壁部材(コンクリート構造物)、Ca,C′a…被挾持面、P…柱、Pa…挾持面、G…遊間。