特許第6407145号(P6407145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6407145-網脈絡膜障害の抑制剤 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407145
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】網脈絡膜障害の抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/415 20060101AFI20181004BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20181004BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   A61K31/415
   A61P27/02
   A61P43/00 111
   A61K9/08
   A61K9/06
   A61K9/20
   A61K9/16
   A61K9/14
   A61K9/48
【請求項の数】25
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-518078(P2015-518078)
(86)(22)【出願日】2014年5月21日
(86)【国際出願番号】JP2014002667
(87)【国際公開番号】WO2014188716
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2017年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-107706(P2013-107706)
(32)【優先日】2013年5月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】木村 和博
【審査官】 吉田 佳代子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−503998(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/028810(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/057930(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/037188(WO,A1)
【文献】 上順子 他,38.レチノイン酸受容体特異的アゴニストによるマウス脈絡膜新生血管モデルの抑制効果,網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究 平成15年度 総括・分担研究報告書,2004年 3月31日,p.209−211
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00−9/72
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パロバロテン((E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸)、そのエステル又はそれらの塩を、網脈絡膜障害における瘢痕の形成又は収縮を予防又は処置するのに有効な量で含有する、対象における網脈絡膜障害における瘢痕の形成又は収縮を予防又は処置するための組成物。
【請求項2】
前記網脈絡膜障害における瘢痕形成を予防又は低減するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記瘢痕が、網膜上、網膜内、及び/又は網膜下部位における結合組織である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記瘢痕が、網膜色素上皮組織、線維芽細胞組織、グリア組織、視細胞、及び/又は神経節細胞を含む、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記網脈絡膜障害における網膜及び/又は脈絡膜組織損傷を予防又は低減するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記網脈絡膜障害におけるコラーゲン収縮を抑制するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記コラーゲン収縮が、網膜上、網膜内、及び/又は網膜下部位におけるものである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記コラーゲン収縮が、網膜色素上皮組織、線維芽細胞組織、グリア組織、視細胞、及び/又は神経節細胞におけるものである、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
前記網脈絡膜障害が網膜硝子体疾患である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記網膜硝子体疾患が、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性症、網膜剥離、増殖硝子体網膜症、ぶどう膜炎、眼感染症、未熟児網膜症、新生血管黄斑症又は網脈絡膜炎である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
パロバロテン((E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸)、そのエステル又はそれらの塩を、瘢痕形成を予防又は低減するのに有効な量で含有する、対象における網膜及び/又は脈絡膜上での瘢痕形成を予防又は低減するための組成物。
【請求項12】
前記網膜及び/又は脈絡膜上での瘢痕形成が、眼組織での炎症、出血、感染又は手術によって生じるものである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記網膜及び/又は脈絡膜上での瘢痕形成が手術によって生じるものである、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
点眼剤の形態にあることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記パロバロテンが、軟膏剤、注射剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、経皮吸収剤、又は点眼剤の形態にある、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記軟膏剤が眼軟膏である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記眼軟膏における前記パロバロテンの濃度が、0.05%(W/W)、0.1%(W/W)、0.5%(W/W)又は1%(W/W)である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記眼軟膏における前記パロバロテンの濃度が、0.0001〜3%(W/W)である、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記パロバロテンが点眼剤の形態にある、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
前記点眼剤における前記パロバロテンの濃度が、0.05%(W/V)、0.3%(W/V)、0.5%(W/V)又は1%(W/V)である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記点眼剤における前記パロバロテンの濃度が、0.00001〜3%(W/V)である、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記パロバロテンが、前記対象に1日1回又は数回投与される、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
可溶化剤を含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記可溶化剤が、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、及びマクロゴール4000からなる群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記可溶化剤がポリソルベート80である、請求項24に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸、そのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する網脈絡膜障害の抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会を迎えた我が国において、糖尿病網膜症、網膜剥離、加齢黄斑変性等の網膜硝子体疾患は、今後も失明原因としてその割合が上昇すると考えられる。網膜硝子体手術の発展や抗VERF眼内注射製剤等の生物製剤の導入によって、以前は失明していたこれらの疾患の予後が改善されつつある。しかし、初期症例はともかく、長期間放置・反復する等の重症例の視機能予後は未だ芳しくない。たとえ手術によって網膜復位が得られても、また薬剤によって眼内新生血管の消退をはかることができたとしても、網膜細胞がすでに不可逆的な二次的ダメージを受けていれば、視細胞機能が低下する。眼はたとえ傷が治っても、視細胞機能が失われては全く意味をなさない器官である。したがって、網膜機能を正常に維持するためには、如何に少ないダメージで眼炎症とそれに引き続く二次的反応を制御できるかが重要である。
【0003】
眼炎症の沈静化あるいは進行に伴い、しばしば網膜上、網膜内又は網膜下のいずれかの組織において、網脈絡膜線維性瘢痕が形成され、視細胞機能に障害をもたらすことがある。網脈絡膜線維性瘢痕を構成する代表的な細胞成分として網膜色素上皮細胞並びに基質成分の一つであるコラーゲン、特にタイプIコラーゲンが知られており、網脈絡膜線維性瘢痕の形成及び収縮によって網脈絡膜機能障害が生じる。そこで網膜色素上皮細胞等のコラーゲン、特にタイプIコラーゲンの収縮を抑制し、組織構造の変形や崩壊を防ぐことは網脈絡膜障害に対して有効であると考えられる。
【0004】
これまでに、レチノイン酸受容体(以下、「RAR」ともいう)のアゴニストであるオールトランス−レチノイン酸又は4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸を有効成分とする糖尿病性網膜症又は加齢黄斑変性の予防及び/又は治療のための医薬が開示されているが(例えば、特許文献1参照)、RARのサブタイプであるRARα、RARβに対する選択性を持たないため、網膜機能改善に対する各RARサブタイプの寄与も不明である。一方で、RARは、炎症、免疫及び構造細胞といった多くの細胞で、増殖、形態形成及び分化等の多様な作用に関与しており、また、RARサブタイプの分布は、哺乳動物の組織及び器官によって差があることが確認されている。RARの作用には、RARαによるトリグリセリド上昇等の好ましくない作用もあるため、RARのアゴニスト活性を有する化合物がサブタイプに対する特異性又は選択性を有することは、副作用リスクの低減につながることが期待される。以上より、強力な網脈絡膜障害抑制作用を有し、サブタイプ選択性に基づく高い安全性を持つRARアゴニストが求められている。
【0005】
RARγ選択的なアゴニストとしては(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸が、肺気腫、癌、及び皮膚疾患に有用であること(例えば、特許文献2参照)や、神経性疼痛に有用であること(例えば、特許文献3参照)が開示されている。しかしながら、(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸、そのエステル又はそれらの塩に関して網脈絡膜障害、特に網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮に対する薬理作用について検討した報告はなく、示唆する文献もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再表2007/037188号公報
【特許文献2】国際公開第2002/028810号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2008/057930号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、網脈絡膜障害の抑制剤、特に網膜上、網膜内、網膜下のいずれかの組織における網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮の抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
眼疾患、特に網膜硝子体疾患における網脈絡膜障害に有効な薬物を探索することは、眼分野において重要且つ興味深い課題である。本発明者は網脈絡膜障害、特に網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮の抑制に有効な薬物を探索すべく鋭意研究を行ったところ、RARγ選択的なアゴニストである(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸が、マウス網膜色素上皮細胞を用いた薬理試験において、コラーゲン収縮抑制作用を示し、さらに、マウスにおいて網膜下瘢痕形成及び収縮の抑制作用を示したことから、上記安息香酸は網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮の抑制に対して優れた改善効果を発揮することを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、[1](E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸、そのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する網脈絡膜障害の抑制剤や、[2](E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸、そのエステル又はそれらの塩が、(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸又はその塩である、上記[1]記載の網脈絡膜障害の抑制剤や、[3]網脈絡膜障害が、網膜上、網膜内、又は網膜下のいずれかの組織における網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮である、上記[1]又は[2]記載の網脈絡膜障害の抑制剤や、[4]投与形態が点眼投与又は経口投与である、上記[1]〜[3]のいずれか記載の網脈絡膜障害の抑制剤や、[5]剤型が、点眼剤、眼軟膏、注射剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤又はカプセル剤である、上記[1]〜[4]のいずれか記載の網脈絡膜障害の抑制剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の網脈絡膜障害の抑制剤の有効成分である(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸、そのエステル又はそれらの塩は、網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、グリア細胞等のコラーゲン収縮を抑制することにより、網脈絡膜障害の抑制剤、特に網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮の抑制剤として有用である。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸、そのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する網脈絡膜障害の抑制剤。
(項目2)
(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸、そのエステル又はそれらの塩が、(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸又はその塩である、項目1記載の網脈絡膜障害の抑制剤。
(項目3)
網脈絡膜障害が、網膜上、網膜内、又は網膜下のいずれかの組織における網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮である、項目1又は2記載の網脈絡膜障害の抑制剤。
(項目4)
投与形態が点眼投与又は経口投与である、項目1〜3のいずれか記載の網脈絡膜障害の抑制剤。
(項目5)
剤型が、点眼剤、眼軟膏、注射剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤又はカプセル剤である、項目1〜4のいずれか記載の網脈絡膜障害の抑制剤。
本発明の実施形態において、例えば、以下の項目も提供される。
(項目1)
(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8
−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香
酸、そのエステル又はそれらの塩を有効成分として含有する、網膜上、網膜内、又は網膜
下のいずれかの組織における網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮の抑制剤。
(項目2)
(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8
−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香
酸、そのエステル又はそれらの塩が、(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−
1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナ
フタレン−2−イル}ビニル)安息香酸又はその塩である、項目1記載の網脈絡膜瘢痕
の形成及び収縮の抑制剤。
(項目4)
投与形態が点眼投与又は経口投与である、項目1又は2記載の網脈絡膜瘢痕の形成及び
収縮の抑制剤。
(項目5)
剤型が、点眼剤、眼軟膏、注射剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤又はカプセル剤である、
項目1、2又は4記載の網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮の抑制剤。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】マウス網膜色素上皮細胞を用いた場合の(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸(以下、「本件安息香酸」という場合がある。)の濃度(μM)とコラーゲン収縮(ディッシュ中のコラーゲンゲルの直径(mm))の関係を示すグラフである。図中、「*」は、統計的に有意差(p<0.05)があることを示す。
図2】マウスの網膜下瘢痕モデル作製において、本件安息香酸を注入した場合の網膜下瘢痕形成の抑制効果を調べた結果を示す図である。図2Aは、マクロファージ及び本件安息香酸50μgの注入から7日後に網膜下を観察した結果を示し、図2Bは、マクロファージ及び本件安息香酸1μg、5μg、50μgを注入した場合における、注入から7日後に網膜下の瘢痕領域を測定した結果を示す。図中、「*」は、統計的に有意差(p<0.05)があることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の網脈絡膜障害の抑制剤としては、以下の式(I)で表わされる本件安息香酸、そのエステル又はそれらの塩を有効成分とするものであれば特に制限されないが、本件安息香酸又はその塩を有効成分とすることが好ましく、また、本発明の他の態様としては、本件安息香酸、そのエステル又はそれらの塩を対象に投与することを特徴とする網脈絡膜障害の治療方法や、網脈絡膜障害の抑制剤として使用するための本件安息香酸、そのエステル又はそれらの塩や、本件安息香酸、そのエステル又はそれらの塩の、網脈絡膜障害の抑制剤の調製における使用を挙げることができる。
【0013】
【化1】
【0014】
本発明において、網脈絡膜障害とは、網膜や脈絡膜における視細胞、神経節細胞、網膜色素上皮細胞及び上記各細胞から構成された組織に損傷が生じ、最終的には細胞死や組織機能障害をきたし、視力や視野などの視機能に異常をきたした状態にあるものをいい、例えば、網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮や、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性症、網膜剥離、増殖硝子体網膜症、ぶどう膜炎、眼感染症、未熟児網膜症、新生血管黄斑症、網脈絡膜炎等の網膜硝子体疾患を好適に例示することができ、網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮を特に好適に例示することができる。
【0015】
本発明において、網脈絡膜瘢痕とは、眼炎症の沈静化あるいは進行に伴い、網膜上、網膜内並びに網膜下の損傷部位で生じた線維性結合組織、好ましくは網膜下の損傷部位で生じた線維性結合組織であり、主に網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、グリア細胞等とコラーゲンを始めとする細胞外マトリックスから構成された組織である。なお、上記網膜上とは網膜面の上をいい、網膜下とは、網膜と脈絡膜との間、脈絡膜内及び脈絡膜下をいう。また、網脈絡膜瘢痕の形成とは、眼炎症の沈静化あるいは進行に伴い、網膜上、網膜内並びに網膜下の損傷部位で線維性結合組織が形成されることをいい、網脈絡膜瘢痕の収縮とは、形成された網脈絡膜瘢痕が治癒する際に、網脈絡膜瘢痕の周辺の組織を引きつけて収縮することをいう。かかる網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮は一連に生じ、この網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮を抑制することにより、網脈絡膜瘢痕の黄斑部並びに周辺の組織の変形が生じて網脈絡膜機能に障害が生じることを防ぐことができる。
【0016】
本発明の網脈絡膜障害の治療剤の有効成分である本件安息香酸、そのエステル又はそれらの塩は、上記特許文献2に記載された方法に準じて製造することができるほか、市販品を購入することもできる。かかる市販品として、Shanghai Haoyuan Chemexpress社製 商品名:パロバロテンを例示することができる。
【0017】
本発明の網脈絡膜障害の治療剤の有効成分である本件安息香酸、そのエステル又はそれらの塩におけるエステルとしては、生体内における生理条件下で酵素等による反応により本件安息香酸に変換されるエステルであれば特に制限はなく、そのようなエステルとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサノール若しくはドデカノール等の一級アルコールとのエステル;イソプロパノール、s−ブタノール若しくは1−エチルプロパノール等の二級アルコールとのエステル;t−ブタノール若しくは1−メチル−1−エチルプロパノール等の三級アルコールとのエステル;又は2−アミノエタノール等のアミノアルコールとのエステル等を好適に挙げることができる。
【0018】
上記のエステルは、公知の方法によって本件安息香酸又はその合成中間体から製造することができる。
【0019】
本発明の網脈絡膜障害の抑制剤の有効成分である本件安息香酸、そのエステル又はそれらの塩における塩としては、医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、こうした塩には、(1)酸付加塩として、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩若しくはリン酸塩等の無機酸塩;又は酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、グルタミン酸塩若しくはアスパラギン酸塩等の有機酸塩、或いは(2)塩基性塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩若しくはマグネシウム塩等の金属塩;アンモニウム塩等の無機塩;又はトリエチルアミン塩若しくはグアニジン塩等の有機アミン塩等を好適に挙げることができる。
【0020】
本発明の網脈絡膜障害の抑制剤は、適宜の薬理学的に許容される添加剤と混合して製造される、軟膏剤(好ましくは、眼軟膏)、注射剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、吸入剤、シロップ剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、経皮吸収剤、坐剤、ローション等の形態で、経口、又は非経口(静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経皮投与、経気道投与、皮内投与又は皮下投与)で投与することができる。これらの製剤は、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、矯味矯臭剤又は希釈剤等の添加剤を使用して、周知の方法で製造される。
【0021】
賦形剤は、例えば、有機系賦形剤又は無機系賦形剤が挙げられる。有機系賦形剤は、例えば、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール若しくはソルビトール等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン若しくはデキストリン等のデンプン誘導体;結晶セルロース等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;又はプルラン等が挙げられる。無機系賦形剤は、例えば、軽質無水珪酸;又は硫酸カルシウム等の硫酸塩等が挙げられる。
【0022】
滑沢剤は、例えば、ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム若しくはステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス若しくはゲイロウ等のワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウム等の硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;D,L−ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム;無水珪酸若しくは珪酸水和物等の珪酸類;又は上記の賦形剤におけるデンプン誘導体等が挙げられる。
【0023】
結合剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール又は上記の賦形剤で示された化合物等が挙げられる。
【0024】
崩壊剤は、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム若しくは内部架橋カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;架橋ポリビニルピロリドン;又はカルボキシメチルスターチ若しくはカルボキシメチルスターチナトリウム等の化学修飾されたデンプン若しくはセルロース誘導体等が挙げられる。
【0025】
乳化剤は、例えば、ベントナイト若しくはビーガム等のコロイド性粘土;ラウリル硫酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウム等の陽イオン界面活性剤;又はポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル若しくはショ糖脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0026】
安定剤は、例えば、メチルパラベン若しくはプロピルパラベン等のパラヒドロキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール若しくはフェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール若しくはクレゾール等のフェノール類;チメロサール;無水酢酸;又はソルビン酸が挙げられる。
【0027】
矯味矯臭剤は、例えば、サッカリンナトリウム若しくはアスパルテーム等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸若しくは酒石酸等の酸味料;又はメントール、レモンエキス若しくはオレンジエキス等の香料等が挙げられる。
【0028】
希釈剤は、通常希釈剤として使用される化合物であり、例えば、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ショ糖、硫酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、デンプン、ポリビニルピロリドン又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0029】
軟膏剤(好ましくは、眼軟膏)の場合は、白色ワセリン若しくは流動パラフィン等の汎用される基剤を用いて調製することができる。
【0030】
本発明の網脈絡膜障害の抑制剤は、上記の投与剤型に加えて、点眼剤も挙げられ、上記点眼剤は点眼投与することができる。添加剤として、等張化剤、緩衝剤、pH調節剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、保存剤(防腐剤)等を適宜配合することにより、周知の方法で製剤化することができる。また、pH調節剤、増粘剤、分散剤等を添加し、薬物を懸濁化させることによって、安定な点眼剤を得ることもできる。
【0031】
等張化剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ソルビトール若しくはマンニトール等を挙げることができる。
【0032】
緩衝剤としては、例えば、リン酸、リン酸塩、クエン酸、酢酸若しくはε-アミノカプロン酸等を挙げることができる。
【0033】
pH調節剤としては、例えば、塩酸、クエン酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウム若しくは炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0034】
可溶化剤としては、例えば、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、マクロゴール4000等を挙げることができる。
【0035】
増粘剤及び分散剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子;ポリビニルアルコール;又はポリビニルピロリドン等を、また、安定化剤としては、例えば、エデト酸若しくはエデト酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0036】
保存剤(防腐剤)としては、例えば、汎用のソルビン酸、ソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル若しくはクロロブタノール等が挙げられ、これらの保存剤を組み合わせて使用することもできる。
【0037】
点眼剤のpHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、4.0〜8.5に設定することが望ましい。
【0038】
本発明の網脈絡膜障害の抑制剤の投与量は、剤型、投与すべき患者の症状の軽重、年齢、体重、医師の判断等に応じて適宜変えることができるが、経口剤の場合、一般には、成人に対し1日あたり0.01〜5000mg、好ましくは0.1〜2500mg、より好ましくは0.5〜1000mgを1回又は数回に分けて投与することができる。また、点眼剤の場合には、0.000001〜10%(W/V)、好ましくは0.00001〜3%(W/V)、より好ましくは0.0001〜1%(W/V)の有効成分濃度のものを1日1回又は数回投与することができ、眼軟膏の場合には、0.00001〜10%(W/W)、好ましくは0.0001〜3%(W/W)、より好ましくは0.001〜1%(W/W)の有効成分濃度のものを1日1回又は数回投与することができる。
【0039】
以下、実施例(試験例及び処方例)を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
(マウス網膜色素上皮細胞の3次元コラーゲンゲル収縮抑制試験)
マウス網膜色素上皮細胞を用い、Nishidaらの方法(Investigative Ophthalmology & Visual Science, 42, 1247-1253(2001))に準じて、3次元コラーゲンゲル収縮に対する被験化合物の抑制効果を評価した。マウス眼球より網膜色素上皮細胞を含む、網膜下のシート状の色素上皮細胞を採取し、初期培養した。培養した細胞を0.05%トリプシン−EDTAにより培養スライドから剥離して回収し、血清無し培地(MEM:製品番号11095;Gibco社製)で2回洗浄後、血清無し培地を加えて細胞懸濁液を作製した。タイプIコラーゲン(3mg/ml:製品番号637−00653;新田ゼラチン社製)、10×MEM、reconstitution buffer(製品番号635−00791;新田ゼラチン社製)、細胞懸濁液(1.1×10cells/ml in MEM)と水を、容量比7:1:1:0.2:1.8にて氷上で混合した。この混合液(0.5ml)を1%BSAでコートした培養ディッシュに播種し、37℃で1時間インキュベーションしてコラーゲンゲルを作製した。次いで、TGF−β2(R&D社製)1ng/ml及び本件安息香酸を0、0.01、0.1、1μM添加した血清無し培地をコラーゲンゲル上にそれぞれ0.5ml加えて37℃でインキュベートし、ゲルの直径を24時間後に測定した。コントロールとして血清無し培地のみを0.5ml加えて同様にインキュベートした。結果を図1に示す。
【0041】
(結果)
図1より、本件安息香酸は、マウス網膜色素上皮細胞を用いた、TGFによるコラーゲンゲル収縮を抑制することがわかる。このことは、本件安息香酸がコラーゲンのターンオーバーに寄与し、網脈絡膜障害の抑制に有効であり、眼組織での炎症、出血、感染、手術、外傷等の後に起こる組織リモデリング、つまり、網膜組織線維化、網脈絡膜瘢痕形成及び収縮を抑制する作用があるということを示している。
【実施例2】
【0042】
(マウスの網膜下瘢痕形成の抑制試験)
マウスの網膜下瘢痕モデルを作製することにより、本件安息香酸が網膜下瘢痕形成の抑制効果を有するかを調べた。マウスにおける網膜下瘢痕モデルは、Young-joonらの方法(Investigative Ophthalmology & Visual Science, 52, 6089-6095(2001))に準じて以下に示す方法で作製した。
【0043】
(マウスにおける網膜下瘢痕モデルの作製)
まず、マウスC57BL/6(SLC社より購入)の眼底後ろ極部に、1箇所レーザー照射(0.05秒、200mW、532nm)を行い、ブルッフ膜を破壊した。これにより、脈絡膜からの炎症細胞浸潤を可能にすると同時に、網膜下にエアバブルを生じさせた。
【0044】
次に、毛様体扁平部から33G針を刺入し、網膜下に4×107mlのチオグリコレート誘導腹腔マクロファージ0.5μl、及び、本件安息香酸1μg、5μg、又は50μgを注入した。コントロールとしては本件安息香酸注入なし(0μg)とした。
【0045】
上記マクロファージ及び本件安息香酸の注入から7日後に網膜下を観察すると共に、網膜下瘢痕領域を測定した。結果を図2に示す。
【0046】
(結果)
図2Aに示すように、本件安息香酸を50μg注入した場合には、コントロールと比較して瘢痕の形成が抑制されていた。また、図2Bに示すように、本件安息香酸の注入量が増加するにつれて、瘢痕領域(線維化領域)が狭くなっており、本件安息香酸により網膜下瘢痕の形成及び収縮を抑制可能であることが明らかとなった。
【実施例3】
【0047】
[処方例]
(処方例1)点眼剤
100ml中
本件安息香酸 100mg
塩化ナトリウム 800mg
ポリソルベート80 適量
リン酸水素二ナトリウム 適量
リン酸二水素ナトリウム 適量
滅菌精製水 適量
滅菌精製水に本件安息香酸及びそれ以外の上記成分を加え、これらを十分に混合して点眼液を調製する。本件安息香酸等の添加量を変えることにより、濃度が0.05%(W/V)、0.3%(W/V)、0.5%(W/V)又は1%(W/V)の点眼剤を調製できる。
【0048】
(処方例2)眼軟膏
100g中
本件安息香酸 0.3g
流動パラフィン 10.0g
白色ワセリン 適量
均一に溶融した白色ワセリン及び流動パラフィンに、本件安息香酸を加え、これらを十分に混合して後に徐々に冷却することで眼軟膏を調製する。本件安息香酸等の添加量を変えることにより、濃度が0.05%(W/W)、0.1%(W/W)、0.5%(W/W)又は1%(W/W)の眼軟膏を調製できる。
【0049】
(処方例3)錠剤
100mg中
本件安息香酸 1mg
乳糖 66.4mg
トウモロコシデンプン 20mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 6mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
本件安息香酸、トウモロコシデンプン及び乳糖を混合機中で混合し、その混合物にカルボキシメチルセルロースカルシウム及びヒドロキシプロピルセルロースを加えて造粒し、得られた顆粒を乾燥後整粒し、その整粒顆粒にステアリン酸マグネシウムを加えて混合し、打錠機で打錠する。また、本件安息香酸等の添加量を変えることにより、100mg中の含有量が0.1mg、10mg又は50mgの錠剤を調製できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の網脈絡膜障害の抑制剤の有効成分である(E)−4−(2−{3−[(1H−ピラゾール−1−イル)メチル]−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}ビニル)安息香酸、そのエステル又はそれらの塩は、網脈絡膜における網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、グリア細胞等におけるコラーゲン収縮を強力に抑制することにより、網脈絡膜障害の抑制剤、特に網脈絡膜瘢痕の形成及び収縮の抑制剤として有用である。
図1
図2