特許第6407153号(P6407153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407153
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ポリエン−ポリチオール系組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20181004BHJP
   C08G 75/04 20160101ALI20181004BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20181004BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20181004BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20181004BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20181004BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20181004BHJP
   C08K 5/32 20060101ALI20181004BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20181004BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20181004BHJP
   C09D 183/07 20060101ALI20181004BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08G75/04
   C08K5/524
   C08K5/37
   C08K5/10
   C08K5/00
   C08K5/54
   C08K5/32
   C09J11/06
   C09J183/07
   C09D183/07
   G02B1/04
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-534285(P2015-534285)
(86)(22)【出願日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】JP2014072579
(87)【国際公開番号】WO2015030116
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-179062(P2013-179062)
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】星野 貴子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慶次
【審査官】 楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−202128(JP,A)
【文献】 特開2008−184514(JP,A)
【文献】 特開2003−292887(JP,A)
【文献】 特開2008−298880(JP,A)
【文献】 特開2008−266585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/07
C08G 75/04
C08K 5/524
C08K 5/37
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子当たり2個以上の炭素−炭素不飽和結合を有し、かつ、ランダム型構造を有するシルセスキオキサン誘導体、(B)ポリチオール、(C)光ラジカル重合開始剤、(D)亜リン酸ジアルキルを含有する組成物。
【請求項2】
前記シルセスキオキサン誘導体が、下記一般式〔1〕で表される請求項1に記載の組成物。
一般式〔1〕
【化1】
(式中、Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基及びアリルエーテル基から選ばれる1種以上の官能基を有する。Rは、同一でも異なっても良い。(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基及びアリルエーテル基は、一部が、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、フェニル基、ハロゲンで置換されても良い。mは重合度を表す。)
【請求項3】
(D)が、下記一般式〔3〕で表される亜リン酸ジアルキルである請求項1〜2のうちの1項に記載の組成物。
一般式〔3〕
【化2】
(式中、R、Rは、それぞれアルキル基である。R、Rは、同一の基であっても異なる基であってもよい。)
【請求項4】
(D)が、1〜18個の炭素原子を有する分岐又は直鎖構成のアルキル基を有する亜リン酸ジアルキルである請求項1〜3のうちの1項に記載の組成物。
【請求項5】
(D)が、亜リン酸ジメチル及び亜リン酸ジエチルからなる群のうちの1種以上である請求項1〜4のうちの1項に記載の組成物。
【請求項6】
更に、(E)シルセスキオキサン誘導体以外の、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を含有する請求項1〜5のうちの1項に記載の組成物。
【請求項7】
(E)が、アリル化合物である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
更に、(F)酸化防止剤を含有する請求項1〜7のうちの1項に記載の組成物。
【請求項9】
更に、(G)密着性付与剤を含有する請求項1〜8のうちの1項に記載の組成物。
【請求項10】
更に、(H)ニトロソ化合物を含有する請求項1〜9のうちの1項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のうちの1項に記載の組成物からなる接着剤。
【請求項12】
請求項11に記載の接着剤を用いて接着してなる接着体。
【請求項13】
請求項1〜10のうちの1項に記載の組成物からなる被覆剤。
【請求項14】
請求項13に記載の被覆剤を用いて被覆してなる被覆体。
【請求項15】
請求項13に記載の被覆剤による皮膜が基材の片面又は両面に形成された積層体。
【請求項16】
前記基材がガラス材料である請求項15の積層体。
【請求項17】
請求項1〜10のうちの1項に記載の組成物からなる硬化体。
【請求項18】
請求項17に記載の硬化体からなる層と、この層より高い屈折率を有する層とを積層してなる光導波路。
【請求項19】
請求項1〜10のうちの1項に記載の組成物を含む光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエン−ポリチオール系組成物、例えば、ポリエン−ポリチオール系樹脂組成物に関する。本発明は、例えば、ポリエン−ポリチオール系組成物からなる接着剤、被覆剤(コーティング剤)、成形材料に関する。本発明は、該組成物を用いて接着した接着体、該組成物を用いて被覆した被覆体、硬化体、光学部品に関する。ここで、「ポリ」とは二官能性以上の多官能性を示す。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線等の活性光線の照射や熱によって硬化する樹脂組成物が、接着剤、コーティング剤等の各種の分野で用いられるようになってきている。このような樹脂組成物のひとつとして、ポリエンとポリチオールを主成分とする樹脂組成物が知られている(特許文献1)。
【0003】
ポリエン−ポリチオール系樹脂組成物は、可視光域(380〜780nm)での優れた透明性、接着性、空気下での表面の硬化性(以下、表面硬化性という)を有することから、ガラス及び透明プラスチック用等の接着剤や成形材料として、光学部品や電子部品等の各種分野で用いられている。
【0004】
しかしながら、従来のポリエン−ポリチオール系樹脂は、ハンダリフロー等の200℃を越える高温暴露等において、樹脂組成物が黄変し、透明性が低下してしまうという課題があった。そこで、優れた耐熱性を満たす樹脂組成物が望まれていた。
【0005】
シルセスキオキサン誘導体は、優れた耐熱性や耐光性をもつ樹脂組成物として、近年、注目される材料の一つである。光や熱により反応するラジカル反応型や付加反応型のシルセスキオキサン誘導体、共重合体、樹脂及びそれらの製造方法が開示されている(特許文献2)。上述の特性を利用した樹脂組成物、ワニス、成形体、接着剤、接着シート、封止材、ナノインプリント用組成物等が開示されている(特許文献3)。
【0006】
特許文献3は、シルセスキオキサン誘導体を用いたポリエン−ポリチオール系樹脂組組成物が透明性、接着性、耐熱性を有することが示されている。上記の特性を利用した接着剤、液晶封止用のシール剤や硬化膜等が開示されている。
【0007】
特許文献4は、(A)(メタ)アクリロイル基含有シリコーン化合物、(B)チオール化合物、(C)光重合性モノマー、及び(D)光ラジカル重合開始剤を含有し、(A)〜(D)成分の合計に対して、(A)成分は10重量%以上80重量%以下、(B)成分は1重量%以上80重量%以下、(C)成分は10重量%以上80重量%以下、及び(D)成分は0.1重量%以上5重量%以下であることを特徴とするポリエン/ポリチオール系感光性樹脂組成物が開示されている。
【0008】
特許文献5は、炭素‐炭素二重結合を有するアルコキシシラン類を含有するアルコキシシラン類を加水分解及び縮合して得られる縮合物、並びに二級チオール基を有する化合物を含有することを特徴とする紫外線硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0009】
特許文献6は、トリアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから導かれる繰り返し単位を含有し、かつアルカリ可溶性の共重合体に、分子中にエチレン性炭素−炭素二重結合を有してもよいトリアルコキシシラン化合物を共縮合してなるシルセスキオキサン含有化合物、金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子、並びに、光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平03−243626号公報
【特許文献2】特開2004−143449号公報
【特許文献3】特開2010−168452号公報
【特許文献4】特開2011−202128号公報
【特許文献5】特開2008−184514号公報
【特許文献6】特開2008−298880号公報
【0011】
しかしながら、特許文献2は、接着剤といった用途について記載がない。また、特許文献2〜4のシルセスキオキサン誘導体は、かご型である。かご型のシルセスキオキサン誘導体を用いた樹脂組成物は、ポリエン−ポリチオール系樹脂組成物に溶解しない課題があった。特許文献5は、リン系化合物として、トリフェニルホスフィンや亜リン酸トリフェニルを例示しているものの、亜リン酸ジアルキルについて記載はない。特許文献6は、リン酸化合物として、亜リン酸エチル、亜リン酸ジフェニルを例示しているものの、亜リン酸ジアルキルについて記載はない。特許文献6は、ポリチオールについて記載はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、(A)1分子当たり2個以上の炭素−炭素不飽和結合を有し、かつ、ランダム型構造を有するシルセスキオキサン誘導体、(B)ポリチオール、(C)光ラジカル重合開始剤、(D)亜リン酸ジアルキルを含有する組成物である。
【0013】
また、本発明によれば、(A)が、下記一般式〔1〕で表されるシルセスキオキサン誘導体である組成物が提供される。
一般式〔1〕
【化3】
(式中、Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基及びアリルエーテル基から選ばれる1種以上の官能基を有する。Rは、同一でも異なっても良い。(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基及びアリルエーテル基は、一部が、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、フェニル基、ハロゲンで置換されても良い。mは重合度を表す。)
【0014】
また、本発明によれば、(D)が、下記一般式〔3〕で表される亜リン酸ジアルキルである組成物が提供される。
一般式〔3〕
【化4】
(式中、R、Rは、それぞれアルキル基である。R、Rは、同一の基であっても異なる基であってもよい。)
【0015】
また、本発明によれば、(D)が、1〜18個の炭素原子を有する分岐又は直鎖構成のアルキル基を有する亜リン酸ジアルキルである組成物が提供される。また、本発明によれば、(D)が、亜リン酸ジメチル及び亜リン酸ジエチルからなる群のうちの1種以上である組成物が提供される。また、本発明によれば、上記組成物に、更に、(E)シルセスキオキサン誘導体以外の、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を含有する組成物が提供される。また、本発明によれば、(E)が、アリル化合物である組成物が提供される。また、本発明によれば、上記組成物に、更に、(F)酸化防止剤を含有する組成物が提供される。また、本発明によれば、上記組成物に、更に、(G)密着性付与剤を含有する組成物が提供される。また、本発明によれば、上記組成物に、更に、(H)ニトロソ化合物を含有する組成物が提供される。また、本発明によれば、上記組成物からなる接着剤が提供される。また、本発明によれば、上記接着剤を用いて接着してなる接着体が提供される。また、本発明によれば、上記組成物からなる被覆剤が提供される。また、本発明によれば、上記被覆剤を用いて被覆してなる被覆体が提供される。また、本発明によれば、上記被覆剤による皮膜が基材の片面又は両面に形成された積層体が提供される。また、本発明によれば、上記基材がガラス材料である積層体が提供される。また、本発明によれば、上記組成物からなる硬化体が提供される。また、本発明によれば、上記硬化体からなる層と、この層より高い屈折率を有する層とを積層してなる光導波路が提供される。また、本発明によれば、上記組成物を含む光学部品が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、貯蔵安定性を有する。本発明は他にも、例えば、耐熱性、耐光性、透明性、速硬化性または接着性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書においてA〜Bとは、A以上B以下を意味するものとする。本実施形態の組成物として樹脂組成物を例示し、説明する。
【0018】
(A)ポリエンについて
本実施形態の(A)ポリエンは、(A)1分子当たり2個以上の炭素−炭素不飽和結合を有し、かつ、ランダム型構造を有するシルセスキオキサン誘導体である。本実施形態の(A)ポリエンとしては、下記一般式〔1〕で表されるシルセスキオキサン誘導体が好ましい。本実施形態の(A)ポリエンは、後述のポリチオールと共に主成分として用いられる。
【0019】
一般式〔1〕
【化5】
(式中、Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基及びアリルエーテル基から選ばれる1種以上の官能基を有する。Rは、同一でも異なっても良い。(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基及びアリルエーテル基は、一部が、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、フェニル基、ハロゲンで置換されても良い。mは重合度を表す。)
【0020】
本実施形態において、好ましく用いられるシルセスキオキサン誘導体は、分子内に(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基及びアリルエーテル基といった、炭素−炭素不飽和結合を持つ官能基を有するシルセスキオキサン化合物である。炭素−炭素不飽和結合としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。1分子内における官能基の平均数は、2〜50が好ましく、3〜10がより好ましい。なお、1分子内における官能基の平均数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50のうちいずれかの値または任意の2つの値の範囲内であってもよい。
【0021】
本実施形態のシルセスキオキサン誘導体は、アルコキシシランの共加水分解、共縮合の条件によりラダー型又はランダム型構造のものを得ることができることが知られており、ラダー型構造のシルセスキオキサン誘導体は、例えば、下記一般式〔2〕のような構造を有する。
【0022】
一般式〔2〕
【化6】
(式中Rは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基及びアリルエーテル基から選ばれる1種以上の官能基を有する。Rは、同一でも異なっても良い。(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基及びアリルエーテル基は、一部が、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、フェニル基、ハロゲンで置換されても良い。)
【0023】
本実施形態のシルセスキオキサン誘導体は、ランダム型構造のシルセスキオキサン誘導体を主成分とするものであるが、本実施形態の目的を阻害しない範囲でケージ型(かご型)構造のシルセスキオキサン誘導体又はラダー型構造のシルセスキオキサン誘導体を含有してもよい。具体的には、本実施形態のシルセスキオキサン誘導体は、ランダム型構造を10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことが特に好ましい。ランダム型構造を100質量%含んでもよい。このランダム型構造が10質量%以上であれば、接着性に優れる。別の観点から表現すれば、本実施形態のシルセスキオキサン誘導体は、ケージ型(かご型)構造またはラダー型構造を90%質量以下だけ含むことが好ましく、80%質量以下だけであればさらに好ましい。本実施形態のシルセスキオキサン誘導体は、ケージ型(かご型)構造またはラダー型構造のシルセスキオキサン誘導体を0%以上50質量%未満、45質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下含んでもよい。本実施形態のシルセスキオキサン誘導体のランダム型構造、ケージ型(かご型)構造またはラダー型構造の含有率の測定方法としては、例えば、GPCの測定結果と液体クロマトグラフィー分離後の質量分析(LC−MS)の測定結果とH−NMRの測定結果とを比較して算出する方法が挙げられる。なお、本実施形態のシルセスキオキサン誘導体のランダム型構造の含有率は、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%、90質量%、100質量%のうちいずれかの値以上であってもよく、任意の2つの値の範囲内であってもよい。
【0024】
シルセスキオキサン誘導体の分子量は、100〜100,000が好ましく、500〜60,000がより好ましい。分子量が100以上であれば、優れた耐熱性を得ることができ、100,000以下であれば、接着剤の粘度が高くなりすぎたりせず、作業性や成形性を損ねたりせず、保存安定性に問題が生じたりしない。なお、シルセスキオキサン誘導体の分子量は、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000のうちいずれかの値または任意の2つの値の範囲内であってもよい。
【0025】
オリゴマーの分子量は、分子1個あたりの平均の分子量として算出される重量平均分子量を指す。本実施形態の実施例では、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した、ポリスチレン換算の重量平均分子量を使用する。
【0026】
本実施形態のシルセスキオキサン誘導体において、エチレン性不飽和基1当量あたりのシルセスキオキサン誘導体のグラム数(例えば、エチレン性不飽和基が、(メタ)アクリル基の場合は、(メタ)アクリル基当量が該当)は、50〜300g/eqが好ましく、100〜200g/eqがより好ましい。エチレン性不飽和基とは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基及びアリルエーテル基から選ばれる1種以上の官能基をいう。なお、エチレン性不飽和基1当量あたりのシルセスキオキサン誘導体のグラム数は、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300g/eqのうちいずれかの値または任意の2つの値の範囲内であってもよい。
【0027】
(B)ポリチオールについて
本実施形態の(B)ポリチオールは、1分子当たり2個以上のチオール基を有する。
【0028】
本実施形態のポリチオールの平均分子量は、50〜15,000が好ましい。本実施形態のポリチオールは、前述のポリエンと共に主成分として用いられる。好ましいポリチオールとしては、ジメルカプトブタンやトリメルカプトヘキサン等のメルカプト基置換アルキル化合物、ジメルカプトベンゼン等のメルカプト基置換アリル化合物、チオグリコール酸やチオプロピオン酸等の多価アルコールエステル及び多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と硫化水素の反応生成物等が挙げられる。
【0029】
本実施形態のポリチオールとしては、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパン−トリス−(β−チオプロピネート)、トリス−2−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート、トリス−β−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,8−ジメルカプト−3,6−ジスルフィドオクタン、トリアジンチオール、更にはシルセスキオキサン誘導体のポリチオール等が挙げられる。本実施形態のポリチオールは、特に限定されず、単独であっても構わないし、2種以上の混合物であっても構わない。これらの中では、トリメチロールプロパン−トリス−(β−チオプロピオネート)とトリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレートからなる群のうちの1種以上が好ましく、トリメチロールプロパン−トリス−(β−チオプロピオネート)がより好ましい。
【0030】
本実施形態の(A)のシルセスキオキサン誘導体と(B)のポリチオールの質量比は、(A)と(B)の合計を100とした場合、5〜95:95〜5が好ましく、15〜90:85〜10がより好ましく、35〜85:65〜15が最も好ましい。なお、この質量比は、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、95:5のうちいずれかの値または任意の2つの値の範囲内であってもよい。
【0031】
(C)光ラジカル重合開始剤について
更に、本実施形態の樹脂組成物は(C)光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
【0032】
本実施形態の(C)光ラジカル重合開始剤としては、光を吸収して重合開始能のあるラジカルを発生する化合物であれば特に制限はない。本実施形態の光ラジカル重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾイン安息香酸、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアルキルアセトフェノン誘導体、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアセトフェノン誘導体、ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン−1−オン等のα−アミノアルキルアセトフェノン誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド誘導体等が挙げられる。本実施形態の光ラジカル重合開始剤は、特に限定されず、単独であっても構わないし、2種以上の混合物であっても構わない。これらの中では、アルキルアセトフェノン誘導体とα−ヒドロキシアセトフェノン誘導体からなる群のうちの1種以上が好ましく、アルキルアセトフェノン誘導体がより好ましい。アルキルアセトフェノン誘導体の中では、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが好ましい。α−ヒドロキシアセトフェノン誘導体の中では、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンが好ましい。
【0033】
本実施形態の光ラジカル重合開始剤は、予め、ポリエン又はポリチオールに混合させておくことも可能である。
【0034】
本実施形態の(C)光ラジカル重合開始剤の使用量は、成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて使用する成分(E)の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。0.01質量部以上であれば、充分な硬化性を得ることができ、10質量部以下であれば、可視光透明性を損なうこともない。なお、この使用量は、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10質量部のうちいずれかの値または任意の2つの値の範囲内であってもよい。
【0035】
(D)亜リン酸ジアルキルについて
更に、本実施形態の樹脂組成物は(D)亜リン酸ジアルキルを含有することが好ましい。
【0036】
本実施形態の(D)亜リン酸ジアルキルは、1分子当たり2個のアルキル基を有する。亜リン酸ジアルキルは、例えば、下記一般式〔3〕のような構造を有する。
【0037】
一般式〔3〕
【化7】
(式中、R、Rは、それぞれアルキル基である。R、Rは、同一の基であっても異なる基であってもよい。)
【0038】
アルキル基は、1〜18個の炭素原子を有する分岐又は直鎖構成のアルキル基が好ましく、1〜12個の炭素原子を有する分岐又は直鎖構成のアルキル基がより好ましく、1〜8個の炭素原子を有する分岐又は直鎖構成のアルキル基が最も好ましく、1〜6個の炭素原子を有する分岐又は直鎖構成のアルキル基が尚更好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基やn−オクチル基を含むオクチル基、ラウリル基、オレイル基等が挙げられる。アルキル基としては、炭化水素基が好ましい。亜リン酸ジアルキルの中では、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジ(2−エチルヘキシル)、亜リン酸ジラウリル及び亜リン酸ジオレイルからなる群のうちの1種以上が好ましく、亜リン酸ジメチルと亜リン酸ジエチルからなる群のうちの1種以上がより好ましく、亜リン酸ジエチルが最も好ましい。
本実施形態の(D)亜リン酸ジアルキルの使用量は、成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて使用する成分(E)の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。0.01質量部以上であれば、充分な貯蔵安定性を得ることができ、10質量部以下であれば、硬化性を損なうこともない。なお、この使用量は、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10質量部のうちいずれかの値または任意の2つの値の範囲内であってもよい。
【0039】
(E)他の炭素−炭素不飽和結合を有する化合物について
本実施形態の樹脂組成物は、更に、(E)シルセスキオキサン誘導体以外の、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を含有することができる。
【0040】
(E)シルセスキオキサン誘導体以外の、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物としては、特に定めるものではないが、炭素−炭素不飽和結合を1つ有する1官能の化合物であっても、炭素−炭素不飽和結合を2つ以上有する2官能以上の化合物であってもよい。
【0041】
本実施形態の、(E)シルセスキオキサン誘導体以外の、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物の粘度は、組成物の粘度の調製の点で、1000mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましく、100mPa・s以下が最も好ましい。
【0042】
本実施形態の(E)シルセスキオキサン誘導体以外の、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物の分子量は、組成物の粘度の調製の点で、1000以下が好ましく、100〜800がより好ましく、100〜500が最も好ましい。炭素−炭素不飽和結合とは、特に炭素−炭素の二重結合をいう。
【0043】
本実施形態の(E)シルセスキオキサン誘導体以外の、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物としては、特に限定されないが、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリロキシエタン、トリメチロールプロパンジアリル、トリメチロールプロパントリアリル等が挙げられる。これらの中では、アリル基を有するアリル化合物が好ましい。アリル化合物としては、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリロキシエタン、トリメチロールプロパンジアリル、トリメチロールプロパントリアリル等が挙げられる。アリル基化合物の中では、トリアリルイソシアヌレートとジアリルマレエートからなる群のうちの1種以上が好ましい。本実施形態の(E)シルセスキオキサン誘導体以外の、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物は、後述する(G)密着性付与剤を除くことが好ましい。
【0044】
本実施形態の(E)シルセスキオキサン誘導体以外の、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物の使用量は、低粘度になるので作業性が良くなり、接着性が向上する点で、成分(A)、成分(B)、及び成分(E)の合計100質量部中、60質量部以下が好ましく、2〜50質量部がより好ましく、5〜30質量部が最も好ましく、7〜15質量部が尚更好ましい。
【0045】
(F)酸化防止剤について
本実施形態の樹脂組成物は、更に、(E)酸化防止剤を含有することが、優れた耐熱性、保存安定性が得られる点で、好ましい。
【0046】
(F)酸化防止剤は、製品中の成分の酸化を抑制するために添加される抗酸化物質である。酸化防止剤としては、特に限定されないが、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等のフェノール系、2,2,4,4−テトラメチル−21−オキソ−7−オキサ−3.20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]−ヘンイコサン−20−プロピオン酸ドデシルエステル及び2,2,4,4−テトラメチル−21−オキソ−7−オキサ−3.20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]−ヘンイコサン−20−プロピオン酸テトラデシルエステルの混合物、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダートアミン系、6−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンズ〔d、f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェピン等のリン系化合物、ジラウリル3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル・テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2−メルカプトベンズイミダゾール等のイオウ系化合物が挙げられる。これらの中では、フェノール系化合物及び/又はヒンダートアミン化合物が好ましく、フェノール系化合物がより好ましい。
フェノール系化合物の中では、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートと2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)からなる群のうちの1種以上が好ましく、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートと2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)を併用することがより好ましい。イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートと2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)を併用する場合、その混合割合は、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートと2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)の合計100質量部中、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート:2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)=1:99〜99:1が好ましく、5:95〜97:3がより好ましく、85:15〜95:5が最も好ましい。
【0047】
本実施形態の(F)酸化防止剤の使用量は、成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて使用する成分(E)の合計100質量部に対して、0.001〜3質量部が好ましく、0.01〜2質量部がより好ましい。0.001質量部以上であれば耐久性及び貯蔵安定性が充分であるし、3質量部以下であれば確実な接着性が得られ、未硬化になるおそれもない。
【0048】
本実施形態のポリエンとポリチオールの質量比は、良好な耐熱性、接着性を得られる点で、ポリエンとポリチオールの合計を100とした場合、98:2〜2:98が好ましく、90:10〜10:90がより好ましい。特にポリエン中の二重結合とポリチオール中のチオール基が化学当量であるときが、最も好ましい。ここで言う化学当量とは、(ポリエンのモル数/ポリエン分子が有する二重結合の数)と、(ポリチオールのモル数/ポリチオール分子が有するSH基の数)が等しいことを意味している。ここでポリエンは、成分(A)と成分(E)をいい、ポリチオールは、成分(B)をいう。
【0049】
(G)密着性付与剤について
本実施形態は、接着性向上のために、(F)密着性付与剤を使用しても良い。密着性付与剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートリン酸エステル、(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアシッドフォスフェート、(メタ)アクリロキシオキシエチルアシッドフォスフェート、(メタ)アクリロキシオキシエチルアシッドフォスフェートモノエチルアミンハーフソルト等が挙げられる。これらの中では、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランからなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0050】
(G)密着性付与剤の使用量は、成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて使用する成分(E)の合計100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。0.001質量部以上であれば接着性が充分であるし、10質量部以下であれば確実な接着性が得られる。
【0051】
(H)ニトロソ化合物について
本実施形態は、貯蔵安定性向上のために、(H)ニトロソ化合物を使用しても良い。
【0052】
ニトロソ化合物としては、N−ニトロソアリールヒドロキシルアミン塩が好ましい。N−ニトロソアリールヒドロキシルアミン塩としては、N−ニトロソフェニル・ヒドロキシルアミンのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩、アルミニウム塩、銅塩、亜鉛塩、セリウム塩、鉄塩、ニッケル塩、コバルト塩等が挙げられる。これらの中では、N−ニトロソフェニル・ヒドロキシルアミンアルミニウム塩及びN−ニトロソフェニル・ヒドロキシルアミンアンモニウム塩からなる群のうちの1種以上が好ましく、N−ニトロソフェニル・ヒドロキシルアミンアルミニウム塩がより好ましい。
【0053】
(H)ニトロソ化合物の使用量は、成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて使用する成分(E)の合計100質量部に対して、0.0001〜1質量部が好ましく、0.001〜0.1質量部がより好ましい。0.0001質量部以上であれば貯蔵安定性が向上するし、1質量部以下であれば硬化性を損なうこともない。
【0054】
本実施形態の樹脂組成物は、目的の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、熱ラジカル重合開始剤、硬化促進剤、充填剤、着色剤、チキソトロピー付与剤、可塑剤、界面活性剤、滑剤、帯電防止剤等の添加剤を加えることができる。
【0055】
本実施形態の樹脂組成物は、接着剤や被覆剤として使用できる。本実施形態の接着剤又は被覆剤により接着又は被覆する基材や本発明の接着剤や被覆剤により成形体を形成する基材としては、ガラス材料、臭素化カリウム、フッ化カルシウム等のハロゲン化鉱物、サファイア等の単結晶セラミックス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、セルロース樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、シリコン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、(メタ)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、ガラスファイバー又はカーボンファイバーで強化された樹脂等の樹脂材料、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の半導体材料、金属層、樹脂層、セラミックス層が蒸着、メッキ、スパッタされた前記の半導体材料、更には鉄、ステンレス、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、銅、真鍮、リン青銅、銀、金、白金等の金属材料等が挙げられる。基材の全部又は一部が、これらの材料から構成される。基材としてガラス材料を使用した場合、本実施形態の樹脂組成物は、大きな効果を有する。ガラス材料としては、ソーダ石灰ガラス等のソーダガラス、石英ガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラス、無アルカリガラスから選ばれることが好ましく、硼珪酸ガラスがより好ましい。
本実施形態では、接着剤や被覆剤による皮膜が、基材の片面又は両面に形成された積層体であっても良い。
本実施形態の樹脂組成物は、光学部品として使用できる。光学部品としては、レンズやプリズム等が挙げられる。
【0056】
本実施形態の樹脂組成物は光や紫外線等の活性エネルギー線により硬化できる。本実施形態の樹脂組成物を用いた光学部材も活性エネルギー線によって接着できる。
【0057】
活性エネルギー線による硬化、被覆又は接着には、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ等を光源とした照射装置が適用でき、更には、レーザー光や電子線(EUV)等も適用可能である。
【0058】
上記装置は、直接照射、反射鏡等により、集光照射、ファイバー等による集光照射をすることができ、低波長カットフィルター、熱線カットフィルター、コールドミラー等も用いることもできる。
【0059】
本実施形態は、例えば、耐熱性、耐光性、透明性、速硬化性、接着性、保存安定性に優れるといった効果を有する。本発明は、接着体、硬化体、成形体、光学部品、光導波路を提供することができる。
【0060】
光導波路とは、基板の表面又は基板表面直下に周囲よりわずかに屈折率の高い部分を作ることにより光を閉じこめ、光の伝搬、分岐、反射、屈折、増幅、減衰等を制御し、光の合波・分波やスイッチングを行う電子部品である。本発明は、本発明の樹脂組成物の硬化体からなる層と、この層より高い屈折率を有する層とを積層することにより、光導波路を提供できる。
【0061】
光導波路の具体的部品の一般的な例としては、通信や光情報処理の分野で用いられる光合波回路、周波数フィルター、光スイッチ、光インターコネクション部品等が挙げられる。
【0062】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0063】
以下に実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0064】
〈実施例1〜16、及び比較例1〜3〉
表1〜2に示す種類の各成分を表中に示す組成で混合して樹脂組成物を調製した。表1〜2に記載の各成分には以下の化合物を選択した。
【0065】
(A)1分子当たり2個以上の炭素−炭素不飽和結合を有し、かつ、ランダム型構造のシルセスキオキサン誘導体
(a−1)東亞合成社製:ポリアクリロイロキシプロピルポリオルガノシルセスキオキサン(AC−SQ TA−100)(GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量1,200〜4,000、アクリル基当量165g/eq
(a−2)東亞合成社製:ポリメタクリロイロキシプロピルポリオルガノシルセスキオキサン(MAC−SQ TM−100)(GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量1,000〜2,500、メタクリル基当量179g/eq
(B)ポリチオール
(b−1)淀化学社製:トリメチロールプロパン−トリス−(β−チオプロピオネート)(TP)
(b−2)SC有機化学社:トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレート(TEMPIC)
(E)シルセスキオキサン誘導体以外の、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物
(e−1)日本化成社製:トリアリルイソシアヌレート(TAIC)
(e−2)黒金化成社製:ジアリルマレエート(DAM)
(C)光ラジカル重合開始剤
(c−1)BASF社製:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(IRGACURE651)
(c−2)BASF社製:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(DAROCUR1173)
(D)亜リン酸ジアルキル
(d−1)和光純薬社製:亜リン酸ジエチル
(d−2)東京化成工業社製:亜リン酸ジメチル
(d−3)城北化学工業社製:亜リン酸ジ(2−エチルヘキシル)(JPE−208)
(d−4)城北化学工業社製:亜リン酸ジラウリル(JP−212)
(d−5)城北化学工業社製:亜リン酸ジオレイル(JP−260)
(F)酸化防止剤
(f−1)BASF社製:イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(IRGANOX1135)
(f−2)住友化学社製:2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(スミライザーMDP−S)
(G)密着性付与剤
(g−1)モメンティブ社製:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A−174)
(g−2)信越化学社製:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403)
(H)ニトロソ化合物
(h−1)和光純薬社製:N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(Q−1301)
(h−2)和光純薬社製:N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩(Q−1300)
(I)かご型構造のシルセスキオキサン誘導体ポリエン
(i−1)東亞合成社製:オクタ[(3−メタクリロキシプロピル)ジメチルシロキシ]シルセスキオキサン](Q−8)(分子量 2027)
(J)リン系化合物
(j−1)市販品:亜リン酸トリフェニル
【0066】
上記実施例及び比較例で得られた組成物につき、下記の性能評価を行い、その結果を表1〜2に示す。
【0067】
(接着剤の硬化条件)
評価には下記に記す手順により接着試験体を作製した。
【0068】
硬化方法
超高圧水銀ランプを使用したHOYA社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量3000mJ/cmの条件にて硬化させた。
【0069】
(1)粘度
組成物の粘度はE型粘度計を用い、温度25℃、回転数20rpmの条件下で測定した。
【0070】
(2)光線透過率(透明性評価、UV硬化後)
試験片としてBK7ガラス(硼珪酸ガラス、30mmφ×3mmt)基板上に、形状20mmφ×200μmtの樹脂組成物を前記に述べる硬化条件にて硬化した試験片を作製した。光線透過率は、分光光度計(島津製作所(株)製、UV−2550)を用い、波長400nmと600nmの透過率を測定し、90%以上のものを評価良好とした。評価結果を表1〜2に示す。
【0071】
(3)耐熱試験(光線透過率、耐熱試験後)
試験片としてBK7ガラス(30mmφ×3mmt)基板上に、形状20mmφ×200μmtの樹脂組成物を前記に述べる硬化条件にて硬化した試験片を作製した。この試験片を260℃の雰囲気に40秒暴露した。暴露後の試験片の光線透過率を分光光度計(島津製作所(株)製、UV−2550)を用い、波長400nmと600nmの透過率を測定し、90%以上のものを評価良好とした。評価結果を表1〜2に示す。
【0072】
(4)耐光試験(光線透過率、耐光試験後)
試験片としてBK7ガラス(30mmφ×3mmt)基板上に、形状20mmφ×200μmtの樹脂組成物を前記に述べる硬化条件にて硬化した試験片を作製した。この試験片を高圧水銀ランプ(東芝社製、トスキュアー400 HC−0411型)を用いて、365nm光の照度7mW/cmの光の下、80時間暴露した。暴露後の試験片の光線透過率を分光光度計(島津製作所(株)製、UV−2550)を用い、波長400nmと600nmの透過率を測定し、90%以上のものを評価良好とした。評価結果を表1〜2に示す。
【0073】
(5)引張剪断接着強さ(接着性)
JIS K 6850に従い測定した。具体的には被着体としたテンパックス(商標)ガラス(25mm×25mm×2.0mm)を用いて、接着部位を直径8mmとして、作製した樹脂組成物にて、2枚のテンパックスガラスを貼り合わせ、前記の樹脂組成物を、前記に述べる硬化条件にて硬化させ、引張剪断接着強さ試験片を作製した。作製した試験片は、引張試験機を使用して、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度10mm/minで引張剪断接着強さを測定した。評価結果を表1〜2に示す。
【0074】
(6)保存安定性試験(貯蔵安定性評価)
組成物の初期粘度(V)を測定した後、容器に入れて蓋をした状態(密閉系)で、40℃の高温環境下における養生促進試験を行い、4週間後の組成物の粘度(V)を測定した。そして、式:V/Vに従って粘度変化率を求めた。粘度変化率が2以下のものを貯蔵安定性(保存安定性)良好と判断した。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表1〜2より以下が確認された。本実施例の樹脂組成物は、貯蔵安定性、耐熱性、耐光性、透明性、接着性が優れる。但し、実施例1、実施例9〜10は、(H)ニトロソ化合物を使用しなかったため、貯蔵安定性が若干小さかった。
亜リン酸ジアルキルのアルキル基の炭素原子数は、接着性と貯蔵安定性の点で、1〜18個のアルキル基が好ましく、1〜12個のアルキル基がより好ましく、1〜8個のアルキル基が最も好ましく、1〜2個のアルキル基が尚更好ましく、エチル基が更に好ましかった(実施例2と、実施例13〜実施例16との比較)。
但し、実施例11〜12は、(G)密着性付与剤を使用したため、接着性が大きかった。本実施例の(D)亜リン酸ジアルキルを使用しない場合、貯蔵安定性が得られない(比較例1)。亜リン酸トリフェニルを使用した場合、貯蔵安定性と接着性が得られない(比較例2)。かご型構造のシルセスキオキサン誘導体を使用した場合、樹脂組成物に溶解せず、本実施例の効果が得られない(比較例3)。本実施例の(B)ポリチオールを使用しない場合、耐熱性、接着性が得られない(比較例4)。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、貯蔵安定性に優れたポリエン−ポリチオール系組成物を提供する。本発明は他にも、例えば、耐熱性、耐光性、透明性、速硬化性、接着性、保存安定性に優れたポリエン−ポリチオール系組成物を提供する。本発明の接着剤、被覆剤、成形材料は、光導波路の層、光学部品、電子部品等の各種分野において顕著な効果を示す。