(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0005】
共役ジエンの立体特異性(共)重合は、最も広く利用されているゴムの一つである製品を得るために化学産業において非常に重要なプロセスであることが知られている。
【0006】
また、1,3−ブタジエン(すなわち、1,2ユニットの可変含有量を有する、1,4−シス、1,4−トランス、1,2シンジオタクチック、1,2イソタクチック、1,2アタクチック、混合1,4−シス/1,2構造)の立体特異性重合から得られる種々の重合体の中で、1,4−シスポリブタジエン及びシンジオタクチック1,2ポリブタジエンのみが工業的に生産され市販されていることが知られている。これら重合体の詳細については、例えば、以下に記載されている: Takeuchi Y. et al., “New Industrial Polymers”, “American Chemical Society Symposium Series” (1974), Vol. 4, pp. 15-25;Halasa A. F. et al., “Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology” (1989), 4
th Ed., Kroschwitz J. I. Ed., John Wiley and Sons, New York, Vol. 8, pp. 1031-1045;Tate D. et al., “Encyclopedia of Polymer Science and Engineering (1989), 2
nd Ed., Mark H. F. Ed., John Wiley and Sons, New York, Vol. 2, pp. 537-590;Kerns M. et al., “Butadiene Polymers”, “Encyclopedia of Polymer Science and Technology” (2003), Mark H. F. Ed., Wiley, Vol. 5, pp. 317-356。
【0007】
1,4−シスポリブタジエンは、合成エラストマーであり、一般的に、1,4−シスユニット含有量が96%〜97%、融点(T
m)が約−2℃、結晶化温度(T
C)が約−25℃、ガラス転移点(T
g)が−100℃未満である。その性質は天然ゴムによく似ており、主な用途は自動車及び/又はトラックのタイヤ生産である。特に、タイヤ生産において、1,4−シスユニット含有量が高いポリブタジエンが使用される。
【0008】
一般的に、1,4−シスポリブタジエンは、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ネオジム(Nd)をベースとする触媒を含む種々の触媒系を用いる重合プロセスで生成される。コバルトをベースとする触媒を含む触媒系は、高い触媒活性と立体特異性とを有し、上に列記したものの中で最も汎用性があると考えられる。なぜなら、コバルトをベースとする触媒を含む触媒系は、配合を変えることによって、上記のポリブタジエンの全ての可能な立体異性体を提供することができるからである。例えば、以下を参照のこと:Porri L. et al., “Comprehensive Polymer Science” (1989), Eastmond G.C. et al. Eds., Pergamon Press, Oxford, UK, Vol. 4, Part II, pp. 53-108;Thiele S. K. H. et al., “Macromolecular Science. Part C: Polymer Reviews” (2003), C43, pp. 581-628;Osakada, K. et al., “Advanced Polymer Science” (2004), Vol. 171, pp. 137-194;Ricci G. et al., “Advances in Organometallic Chemistry Research” (2007), Yamamoto K. Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 1-36; Ricci G. et al., “Coordination Chemistry Reviews” (2010), Vol. 254, pp. 661-676;Ricci G. et al., “Cobalt: Characteristics, Compounds, and Applications” (2011), Lucas J. Vidmar Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 39-81。
【0009】
例えば、Racanelli P. et al., “European Polymer Journal” (1970), Vol. 6, pp. 751-761等に記載されているように、触媒系コバルトビス−アセチルアセトネート/ジ−エチルアルミニウムクロライド/水[Co(acac)
2/AlEt
2Cl/H
2O]は、1,4−シスユニット含有量約97%のポリブタジエンを提供し、この重合体の工業生産に通常用いられる。また、Ricci G. et al., “Polymer Communication” (1991), Vol. 32, pp. 514-517等に記載されているように、触媒系コバルトトリス-アセチルアセトネート/メチルアルミノキサン[Co(acac)
3/MAO]も、1,4−シスユニット含有量約97%のポリブタジエンを提供する。
【0010】
一方、Furukawa J. et al., “Polymer Journal” (1971), Vol. 2, pp. 371-378等に記載されているように、触媒系コバルトトリス−アセチルアセトネート/トリ−エチルアルミニウム/水[Co(acac)
3/AlEt
3/H
2O]は、混合1,4−シス/1,2等二成分系構造を有するポリブタジエンを提供する。この触媒系は、二硫化炭素(CS
2)の存在下で、高結晶質の1,2シンジオタクチックポリブタジエンの工業生産プロセスに用いられる。同プロセスの詳細については、例えば、以下に記載されている:Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1853-1860;Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1951-1972;Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1973-1988;Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1989-1995。
【0011】
1,2−シンジオタクチックポリブタジエンの生成のための極めて活性の高い立体特異的な触媒系は、コバルトアリル錯体(η
4−C
4H
6)(η
5−C
8H
13)Co(Natta G. et al., “Chemical Communications” (1967), Issue 24, pp. 1263-1265等に記載)と二硫化炭素(CS
2)(Ricci G. et al., “Polymer Communication” (1988), Vol. 29, pp. 305-307等に記載)との結合によって得られる。この触媒系は、室温で1,3−ブタジエンを二量化することができる(米国特許US 5,879,805等に記載)が、低温(−30℃)では1,2−シンジオタクチック重合体を与えることができるのみである(Ricci G. et al., “Polymer Communication” (1988), Vol. 29, pp. 305-307等に記載)。
【0012】
1,2−シンジオタクチックポリブタジエンは、二塩化コバルト(CoCl
2)又は二臭化コバルト(CoBr
2)とアルミニウム(例:アルキルアルミニウム化合物)、水、及びホスフィン(例:トリフェニルホスフィン)の有機化合物(以下の米国特許等に記載: US 5,879,805、US 4,324,939、US 3,966,697、US 4,285,833、US 3,498,963、US 3,522,332、US 4,182,813、US 5,548,045、US 7,009,013)との結合によって得られる触媒系を用いて生成することもできる。この触媒系で得られるポリブタジエンの位置規則性及び結晶性は、Ricci G. et al., “Polymer Communication” (1988), Vol. 29, pp. 305-307に記載されている上記触媒系で得られるポリブタジエンよりはるかに低い(例えば、1,2ユニット:80%〜90% 、融点(T
m):75℃〜90℃)。
【0013】
種々のホスフィンを有するコバルト錯体を含む触媒系を用いた1,3−ブタジエンの重合の詳細については、例えば、以下を参照のこと: Ricci G. et al., “Macromolecules” (2005), Vol. 38, pp. 1064-1070;Ricci G. et al., “Journal of Organometallic Chemistry” (2005), Vol. 690, pp. 1845-1854;Takeuchi M. et al., “Polymer International” (1992), Vol. 29, pp. 209-212;Takeuchi M. et al., “Polymer International” (1995), Vol. 36, pp. 41-45;Takeuchi M. et al., “MacromolecularChemistry and Physics” (1996), Vol. 197, pp. 729-743;イタリア特許IT 1,349,141、IT 1,349,142、IT 1,349,143。異なるホスフィンの使用は、ホスフィンの立体的及び電子特性がリン原子の置換基の種類にどのように大きく依存するかが知られているという事実に由来する(例えば、以下を参照のこと:Dierkes P. et al., “Journal of Chemical Society, Dalton Transactions” (1999), pp. 1519-1530;van Leeuwen P. et al., “Chemical Reviews” (2000), Vol. 100, pp. 2741-2769;Freixa Z. et al., “Dalton Transactions” (2003), pp. 1890-1901;Tolman C., “Chemical Reviews” (1977), Vol. 77, pp. 313-348)。
【0014】
上記のホスフィンの使用に関する文献では、如何にして、メチルアルミノキサン(MAO)と結合したコバルトホスフィン錯体を使用することによって、コバルト原子と配位結合されるホスフィンの種類に応じて、ポリブタジエンの微細構造を管理することができ、異なる構造のポリブタジエンを得ることができるかが示されている。
【0015】
立体障害型脂肪族ホスフィン(例:P
tBu
3、P
iPr
3、P
tBu
2Me、PCy
3、PCyp
3、ここで、Pはリン、
tBuはtert−ブチル、
iPrはイソプロピル、Cyはシクロヘキシル、Cypはシクロペンチルである)を有するコバルト錯体を含む触媒系を用いた1,3−ブタジエンの重合によって、広く1,4−シス構造を持つポリブタジエンが得られる。一方、立体障害のより低いホスフィン(例:PCy
2H、P
tBu
2H、PEt
3、P
nPr
3、ここで、Pはリン、Cyはシクロヘキシル、
tBuはtert−ブチル、Etはエチル、
nPrはn−プロピルである)を有するコバルト錯体を含む触媒系を用いると、混合1,4−シス/1,2構造のポリブタジエンが得られる(例えば、以下を参照のこと:Ricci G. et al., “Advances in Organometallic Chemistry Research” (2007), Yamamoto K. Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 1-36;Ricci G. et al., “Coordination Chemistry Reviews” (2010), Vol. 254, pp. 661-676;Ricci G. et al., “Journal of Molecular Catalysis A: Chemical” (2005), Vol. 226, pp. 235-241;イタリア特許出願IT 1,349,141)。
【0016】
1,4−シスユニット含有量が高い(約95%)ポリブタジエンは、コバルト原子と配位結合される二座ホスフィンの種類にかかわらず、二座ホスフィン(例:CoCl
2[R
2P(CH
2)
nPR
2]/MAO、ここで、Coはコバルト、Clは塩素、Rはメチル、エチル、フェニル、nは1又は2、Pはリン、MAOはメチルアルミノキサン)を有するコバルト錯体を含む触媒系を用いて得られる(例えば、以下を参照のこと:Ricci G. et al., “Advances in Organometallic Chemistry Research” (2007), Yamamoto K. Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 1-36; Ricci G. et al., “Coordination Chemistry Reviews” (2010), Vol. 254, pp. 661-676;イタリア特許出願IT 1,349,141)。
【0017】
一方、芳香族ホスフィン(例:CoCl
2(PRPh
2)
2/MAO、ここで、Coはコバルト、Clは塩素、Pはリン、Rはメチル、n−プロピル、エチル、イソ−プロピル、シクロヘキシル、Phはフェニル、MAOはメチルアルミノキサンである)から選択される配位子を有するコバルト錯体を含む触媒系は、1,3−ブタジエンの1,2重合に極めて活性の高いことが分かっている(例えば、以下を参照のこと:Ricci G. et al., “Advances in Organometallic Chemistry Research” (2007), Yamamoto K. Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 1-36; Ricci G. et al., “Coordination Chemistry Reviews” (2010), Vol. 254, pp. 661-676;Ricci G. et al., “Macromolecules” (2005), Vol. 38, pp. 1064-1070;Ricci G. et al., “Journal of Organometallic Chemistry” (2005), Vol. 690, pp. 1845-1854;イタリア特許出願IT 1,349,143)。実際、このような触媒系を用いて、錯体及び重合条件の種類に関連して1,2ユニットの可変含有量を有する、本質的に1,2構造であるポリブタジエンが得られる(70%〜88%の範囲内)。また、得られるポリブタジエンの立体規則性が錯体の種類、即ち、コバルト原子に結合するホスフィンの種類に大きく依存すること、及び、
13C−NMRスペクトルによって決定されるシンジオタクチシチーインデックス(シンジオタクチックトライアド「rr」のパーセンテージで表される)がリン原子に結合するアルキル基の立体的条件の増加と共に増加することが観測されている。
【0018】
ホスフィン配位子(例:PMePh
2、PEtPh
2、P
nPrPh
2、ここで、Pはリン、Meはメチル、Phはフェニル、
nPrはn−プロピルである)を有する立体障害のより低いコバルト系で得られる1,2ポリブタジエンは、非結晶質である一方、立体障害のより高いホスフィン配位子(例:P
iPrPh
2、PCyPh
2、ここで、Pはリン、
iPrはイソプロピル、Phはフェニル、Cyはシクロヘキシルである)を用いた触媒系で得られるポリブタジエンは、結晶質で、重合条件に応じて、110℃〜120℃の融点(T
m)を持つことが分かっている。
【0019】
式CoCl
2(PR
2Ph)
2/MAO(ここで、Coはコバルト、Clは塩素、Rはメチル、エチル、シクロヘキシル、Phはフェニル、MAOはメチルアルミノキサンである)を有する芳香族ホスフィンを伴うコバルト錯体を含む触媒系での1,3−ブタジエンの重合も、研究されている(例えば、以下を参照のこと:Ricci G. et al., “Advances in Organometallic Chemistry Research” (2007), Yamamoto K. Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 1-36;Ricci G. et al., “Coordination Chemistry Reviews” (2010), Vol. 254, pp. 661-676;Ricci G. et al., “Journal of Organometallic Chemistry” (2005), Vol. 690, pp. 1845-1854;イタリア特許出願IT 1,349,143)。当該触媒系を用いて、本質的に1,2−ポリブタジエンが得られるが、同じ重合条件における重合体のシンジオタクチシチーインデックスは、上記式CoCl
2(PRPh)
2/MAOを有する芳香族ホスフィンを伴うコバルト錯体を含む触媒系で得られる1,2−ポリブタジエンよりわずかに低いことが分かっている。
【0020】
ごく最近では、コバルトホスフィン錯体を含む上記触媒系を用いることによる成功例に続いて、窒素又は酸素をドナー原子として含有する配位子を有するコバルト錯体を含む異なる触媒系が研究されている。
【0021】
例えば、Kim J. S. et al.,“e-Polymer”(European Polymer Federation) (2006), No. 27は、ビス(イミン)ピリジン及びエチルアルミニウムセスキクロライド[Al
2Et
3Cl
3(EASC)]配位子を有するコバルト錯体を含む触媒系を用いた1,3−ブタジエンの重合について記載している。当該触媒系は、特に活性が高いことが分かっており、96.4%の1,4−シスユニット含有量の高分子量ポリブタジエンを提供する。
【0022】
式(Salen)Co(II)(ここで、Salenは、ビス(サリチルアルデヒド)エチレンジイミナート、Co はコバルトである)を有するコバルト錯体及びメチルアルミノキサン(MAO)を含む触媒系は、高活性及び1,4−シス選択性を特徴とし、例えば、Endo K. et al.,“Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry” (2006), vol. 44, pp. 4088-4094に記載されている。
【0023】
Cariou R. et al.,“Dalton Transactions” (2010), Vol. 39, pp. 9039-9045は、メチルアルミノキサン(MAO)と結合すると1,3−ブタジエンの1,4−シス重合に対して高選択性であることが分かっている、ビス(ベンズイミダゾール)を有する一連のコバルト(II)[Co(II)]錯体の合成及び特性化について記載している。
【0024】
1,3−ブタジエンの重合のために、エチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)と結合される、ジベンズイミダゾ-ル配位子を有する一連のコバルト(II)[Co(II)]錯体の合成及び特性化及びその利用法は、Appukuttan et al.,“Polymer” (2009), Vol. 50, pp. 1150-1158に記載されている。ここで得られる触媒系は、高い触媒活性及び高い1,4−シス選択性(最大97%)を特徴とする。
【0025】
2,6−ビス[1−(イミノフェニル)エチル]ピリジン配位子を有するコバルト錯体は、Gong D. et al.“Polymer” (2009), Vol. 50, pp. 6259-6264により合成及び特性化されている。この錯体は、メチルアルミノキサン(MAO)と結合して、1,3−ブタジエンの重合用にテストされ、MAO/Co比に関して、1,4−シス又は1,4−トランスポリブタジエンを与えることが可能な触媒系を提供する。実際、MAO/Coモル比が50の場合、本質的に1,4トランスポリブタジエンが得られる(約94.4%)一方、MAO/Coモル比が100の場合、広く1,4−シスポリブタジエンが得られる(約79%)。
【0026】
“Journal of Molecular Catalysis A: Chemical”(2010), Vol. 325, pp. 84-90においてAppukuttan V. et al.は、一般式[Py(Bm−R)
2]CoCl
2(ここで、Pyはピリジル、Bmはベンズイミダゾリル、Rは水素、メチル、ベンズイミダゾール、Coはコバルト、Clは塩素である)を有する一連の錯体であり、メチルアルミノキサン(MAO)と結合すると、高分子量1,4−シスポリブタジエンを提供することのできる錯体について記載している。
【0027】
“Journal of Organometallic Chemistry” (2011), Vol. 696, pp. 1584-1590においてGong D. et al.は、コバルト(II)[Co(II)]の一連の2,6−ビス(イミノ)ピリジン錯体であって、共触媒としてメチルアルミノキサン(MAO)と結合すると、1,3−ブタジエンの重合において相対的に優れた活性を示し、分子量と分子量分布との両方を制御して、77.5%〜97%の範囲で1,4−シス微細構造を有するポリブタジエンを得ることができる錯体ついて記載している。
【0028】
最後に、“Dalton Transactions” (2011), Vol. 40, pp. 10975-10982においてJie S. et al.及び“Journal of Organometallic Chemistry” (2012), Vol. 705, pp. 51-58においてAi P. et al.は、それぞれ3−アリールイミノメチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド配位子やNNOタイプ(イミノ− 又はアミノ−ピリジルアルコール)配位子を有するコバルト錯体をベースとする触媒を含む触媒系で1,4−シスユニット高含有量(>96%)のポリブタジエンを得る可能性について最近記載している。
【0029】
既述の通り、共役ジエン(共)重合体として、特に1,4−シスユニット高含有量のポリブタジエン及びポリイソプレンは、工業規模で、とりわけタイヤ生産用に最も広く使われている重合体であり、これら(共)重合体を提供することのできる新たな触媒系の研究はいまだ非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許第5,879,805号明細書
【特許文献2】米国特許第4,324,939号明細書
【特許文献3】米国特許第3,966,697号明細書
【特許文献4】米国特許第4,285,833号明細書
【特許文献5】米国特許第3,498,963号明細書
【特許文献6】米国特許第3,522,332号明細書
【特許文献7】米国特許第4,182,813号明細書
【特許文献8】米国特許第5,548,045号明細書
【特許文献9】米国特許第7,009,013号明細書
【特許文献10】伊国特許第1,349,141号明細書
【特許文献11】伊国特許第1,349,142号明細書
【特許文献12】伊国特許第1,349,143号明細書
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】Ai P. et al. “Journal of Organometallic Chemistry” (2012), Vol. 705, pp. 51-58
【非特許文献2】Appukuttan et al.,“Polymer” (2009), Vol. 50, pp. 1150-1158
【非特許文献3】Appukuttan V. et al. “Journal of Molecular Catalysis A: Chemical”(2010), Vol. 325, pp. 84-90
【非特許文献4】Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1853-1860
【非特許文献5】Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1951-1972
【非特許文献6】Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1973-1988
【非特許文献7】Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1989-1995
【非特許文献8】Cariou R. et al.,“DaltonTransactions” (2010), Vol. 39, pp. 9039-9045
【非特許文献9】Dierkes P. et al., “Journal of Chemical Society, DaltonTransactions” (1999), pp. 1519-1530
【非特許文献10】Endo K. et al.,“Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry” (2006), vol. 44, pp. 4088-4094
【非特許文献11】Freixa Z. et al., “Dalton Transactions” (2003), pp. 1890-1901
【非特許文献12】Furukawa J. et al., “Polymer Journal” (1971), Vol. 2, pp. 371-378
【非特許文献13】Gong D. et al.“Polymer” (2009), Vol. 50, pp. 6259-626
【非特許文献14】Gong D. et al. “Journal of Organometallic Chemistry” (2011), Vol. 696, pp. 1584-1590
【非特許文献15】Halasa A. F. et al., “Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology” (1989), 4th Ed., Kroschwitz J. I. Ed., John Wiley and Sons, New York, Vol. 8, pp. 1031-1045
【非特許文献16】Jie S. et al. “Dalton Transactions” (2011), Vol. 40, pp. 10975-10982
【非特許文献17】Kerns M. et al., “Butadiene Polymers”, “Encyclopedia of Polymer Science and Technology” (2003), Mark H. F. Ed., Wiley, Vol. 5, pp. 317-356
【非特許文献18】K. Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 1-36
【非特許文献19】Lucas J. Vidmar Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 39-81
【非特許文献20】Mark H. F. Ed., John Wiley and Sons, New York, Vol. 2, pp. 537-590
【非特許文献21】Natta G. et al., “Chemical Communications” (1967), Issue 24, pp. 1263-1265
【非特許文献22】Porri L. et al., “Comprehensive Polymer Science” (1989), Eastmond G.C. et al. Eds.,
【非特許文献23】Pergamon Press, Oxford, UK, Vol. 4, Part II, pp. 53-108
【非特許文献24】Racanelli P. et al., “European Polymer Journal” (1970), Vol. 6, pp. 751-761
【非特許文献25】Ricci G. et al., “Advances in Organometallic Chemistry Research” (2007), Yamamoto
【非特許文献26】Ricci G. et al., “Coordination Chemistry Reviews” (2010), Vol. 254, pp. 661-676
【非特許文献27】Ricci G. et al., “Cobalt: Characteristics, Compounds, and Applications” (2011),
【非特許文献28】Ricci G. et al., “Polymer Communication” (1991), Vol. 32, pp. 514-517
【非特許文献29】Ricci G. et al., “Polymer Communication” (1988), Vol. 29, pp. 305-307
【非特許文献30】Ricci G. et al., “Macromolecules” (2005), Vol. 38, pp. 1064-1070
【非特許文献31】Ricci G. et al., “Journal of Organometallic Chemistry” (2005), Vol. 690, pp. 1845-1854
【非特許文献32】Ricci G. et al., “Journal of Molecular Catalysis A: Chemical” (2005), Vol. 226, pp. 235-241
【非特許文献33】Takeuchi Y. et al., “New Industrial Polymers”, “American Chemical Society Symposium Series” (1974), Vol. 4, pp. 15-25
【非特許文献34】Takeuchi M. et al., “Polymer International” (1992), Vol. 29, pp. 209-212
【非特許文献35】Takeuchi M. et al., “Polymer International” (1995), Vol. 36, pp. 41-45
【非特許文献36】Takeuchi M. et al., “Macromolecular Chemistry and Physics” (1996), Vol. 197, pp. 729-743
【非特許文献37】Tate D. et al., “Encyclopedia of Polymer Science and Engineering (1989), 2nd Ed.,
【非特許文献38】Thiele S. K. H. et al., “Macromolecular Science. Part C: Polymer Reviews” (2003), C43, pp. 581-628;Osakada, K. et al., “Advanced Polymer Science” (2004), Vol. 171, pp. 137-194
【非特許文献39】Tolman C., “Chemical Reviews” (1977), Vol. 77, pp. 313-348
【非特許文献40】van Leeuwen P. et al., “Chemical Reviews” (2000), Vol. 100, pp. 2741-2769
【発明を実施するための形態】
【0035】
従って、本発明の目的は、一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体に関する。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、同一又は異なり、水素原子を表すか、又は、任意にハロゲン化されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状C
1−C
20、好ましくはC
1−C
15アルキル基、任意に置換されていてもよいシクロアルキル基、及び任意に置換されていてもよいアリール基から選択される、
R
3は、水素原子を表すか、又は、任意にハロゲン化されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状C
1−C
20、好ましくはC
1−C
15アルキル基、任意に置換されていてもよいシクロアルキル基、及び任意に置換されていてもよいアリール基から選択される、あるいは、R
3は、以下の式を有するケトイミン基を表す:
【化2】
(式中、R’及びR’’は、同一又は異なり、水素原子を表すか、又は、直鎖状又は分岐鎖状C
1−C
20、好ましくはC
1−C
15アルキル基、任意に置換されていてもよいシクロアルキル基、及び任意に置換されていてもよいアリール基から選択される)
X
1及びX
2は、同一又は異なり、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を表すか、又は、直鎖状又は分岐鎖状C
1−C
20、好ましくはC
1−C
15アルキル基、−OCOR
4基、及び−OR
4基から選択される、ここで、R
4は、直鎖状又は分岐鎖状C
1−C
20、好ましくはC
1−C
15アルキル基から選択される)
【0036】
本明細書及び以下の請求項において、特別の定めのない限り、数値幅の定義は常にその極値を含む。
【0037】
本明細書及び以下の請求項において、「含む(comprising)」という語は、「を実質的に含む(which essentially consist of)」又は「からなる(which consist of)」という語も包括する。
【0038】
「C
1−C
20アルキル基」は、炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を指す。C
1−C
20アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、n−ノニル、n−デシル、2−ブチルオクチル、5−メチルヘキシル、4−エチルヘキシル、2−エチルヘプチル、2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0039】
「任意にハロゲン化されていてもよいC
1−C
20アルキル基」は、少なくとも1つの水素原子が、フッ素、塩素、臭素等、好ましくはフッ素又は塩素等の、ハロゲン原子で置換されていてもよい、飽和又は不飽和の、炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を指す。任意にハロゲン化されていてもよいC
1−C
20アルキル基の具体例には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、パーフルオロペンチル、パーフルオロオクチル、パーフルオロデシルが挙げられる。
【0040】
「シクロアルキル基」は、炭素原子数3〜30のシクロアルキル基を指す。当該シクロアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、C
1−C
12アルキル基、C
1−C
12アルコキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基から選択される、1以上の等しい又は異なる基で任意に置換されていてもよい。シクロアルキル基の具体例には、シクロプロピル、2,2−ジフルオロシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ヘキサメチルシクロヘキシル、ペンタメチル−シクロペンチル、2−シクロオクチルエチル、メチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、フルオロシクロヘキシル、フェニルシクロヘキシルが挙げられる。
【0041】
「アリール基」は、芳香族炭素環基を指す。当該芳香族炭素環基は、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、水酸基、C
1−C
12アルキル基、C
1−C
12アルコキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基から選択される、1以上の等しい又は異なる基で任意に置換されていてもよい。アリール基の具体例には、フェニル、メチルフェニル、トリメチルフェニル、メトキシフェニル、ヒドロキシフェニル、フェニルオキシフェニル、フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、ニトロフェニル、ジメチルアミノフェニル、ナフチル、フェニルナフチル、フェナンスレン、アントラセンが挙げられる。
【0042】
本発明の好適な実施態様によれば、一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体において、
R
1及びR
2は、同一で、水素原子である、又は、直鎖状又は分岐鎖状C
1−C
20アルキル基から選択され、好ましくはメチル基である、
R
3は、直鎖状又は分岐鎖状C
1−C
20アルキル基、及び、直鎖状又は分岐鎖状C
1−C
20アルキル基で任意に置換されていてもよい、好ましくは1以上のメチル、エチル、イソ−プロピル基で置換されていてもよいフェニル基から選択される、あるいは、R
3は、以下の式を有するケトイミン基を表す:
【化3】
(式中、R’及びR’’ は、同一で、水素原子を表す)
X
1及びX
2は、同一で、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、好ましくは塩素である。
【0043】
本発明によると、一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体は、任意の物理形態にあると考えられる。任意の物理形態は、例えば、分離精製固体、適切な溶媒での溶媒和、適切な有機又は無機固体上で支持され、好ましくは粒状又は粉状の物理形状を持つ。
【0044】
一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体は、当技術分野で周知の配位子から始めて生成される。
【0045】
本発明に用いることができる配位子の具体例には、以下の式(L1)〜(L6)を有するものが挙げられる。
【化4】
【0046】
式(L1)〜(L6)を有する配位子は、当技術分野で周知のプロセスによって生成することができる。例えば、式(L1)〜(L6)を有する配位子は、第1級アミンとジケトンとの縮合反応によって生成することができる。例えば、以下を参照のこと:国際特許出願WO 2001/10875; Parks J. E. and Holm R. H. “Inorganic Chemistry” (1968), Vol 7(7), pp. 1408-1416; Roberts E. and Turner E. E. “Journal of Chemical Society” (1927), pp. 1832-1857; Dudek G. O. and Holm R. H. “Journal of the American Chemical Society” (1961), Vol. 83, Issue 9, pp. 2099-2104。
【0047】
一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体は、当技術分野で周知のプロセスによって生成することができる。例えば、当該コバルトオキソ窒化錯体は、1〜1.5の範囲の配位子(L)/コバルト(Co)モル比で、例えば塩化溶媒(例:塩化メチレン)、エーテル溶媒(例:テトラヒドロフラン(THF))、アルコール溶媒(例:ブタノール)、炭化水素溶媒(例:トルエン)、これらの混合物から選択される少なくとも1つの溶媒の存在下で、室温以上で、一般式Co(X)
2を有するコバルト化合物(ここで、Xは、塩素、臭素、ヨウ素等、好ましくは塩素であるハロゲン原子自体であるか、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン)と錯体を形成する)と上記式(L1)〜(L6) を有する配位子との反応によって生成することができる。こうして得られたコバルトオキソ窒化錯体は、その後、例えば次のような当技術分野で周知の方法によって回収することができる:非溶媒(例:ペンタン)による析出の後、ろ過又は傾瀉による分離及びその後の適切な溶媒での任意の溶解を行い、続いて低温で結晶化する。
【0048】
本明細書及び以下の請求項において、「室温」は、20℃〜25℃の温度を指す。
【0049】
既述の通り、本発明はまた、一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体を含む、共役ジエンの(共)重合のための触媒系に関する。
【0050】
従って、本発明のさらなる目的は、共役ジエンの(共)重合のための触媒系であって、
(a)一般式(I)を有する少なくとも1つのコバルトオキソ窒化錯体と、
(b)炭素と異なる元素M’の有機化合物から選択される少なくとも1つの共触媒とを含み、
元素M’は、元素周期表の族2、12、13、又は14に属する元素から、好ましくはホウ素、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、ガリウム、スズから、より好ましくはアルミニウム、ホウ素から、選択される。
【0051】
一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体及び共触媒(b)を含む触媒系の形成は、一般的に好ましくは不活性液体媒体で行われ、より好ましくは炭化水素溶媒で行われる。一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体及び共触媒(b)の選択、及び、使用される特定の方法は、当該分野でイミン配位子を有する他の遷移金属錯体について専門家が入手可能な特定の文献における同様の記載に応じて、分子構造及び望ましい結果に関連して変わる。例えば、以下を参照のこと:L. K. Johnson et al. “Journal of the American Chemical Society” (1995), Vol. 117, pp. 6414-6415;G. van Koten et al.“Advances in Organometallic Chemistry” (1982), Vol. 21, pp. 151-239。
【0052】
本発明のさらに好適な実施態様によれば、前記共触媒(b)は、一般式(II)を有するアルキルアルミニウム(b
1)から選択されてもよい:
Al(X’)
n(R
5)
3−n (II)
(式中、X’は、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素等のハロゲン原子であり、R
5は、1以上のケイ素又はゲルマニウム原子で任意に置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状C
1−C
20アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基から選択され、nは、0〜2の整数である。)
【0053】
本発明のさらに好適な実施態様によれば、前記共触媒(b)は、元素周期表の族13又は14に属する炭素と異なる、元素M’の有機含酸素化化合物(b
2)、好ましくはアルミニウム、ガリウム、スズの有機含酸素化化合物から選択されてもよい。当該有機含酸素化化合物(b
2)は、M’の有機化合物として定義できる。ここで、後者は、少なくとも1 つの酸素原子と、炭素原子数1〜6のアルキル基、好ましくはメチル、からなる少なくとも1つの有機基とに結合する。
【0054】
本発明のさらに好適な実施態様によれば、前記共触媒(b)は、一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体と反応し、そこからσ結合置換基X
1又はX
2を抽出して、一方で少なくとも1つの中性化合物を形成し他方で配位子に配位される金属(Co)を含有するカチオンと金属M’を含有する非配位性有機アニオンとからなるイオン化合物を形成することのできる、炭素と異なる元素M’の有機金属化合物又は有機金属化合物混合物(b
3)から選択されてもよい。ここで、負電荷は多中心性構造上で非局在化される。
【0055】
尚、本発明及び以下の請求項において、「元素周期表」は、インターネットウェブサイト
www.iupac.org/fileadmin/user_upload/news/IUPAC_Periodic_Table-1Jun12.pdfにおける2007年6月22日付IUPAC バージョンの「元素周期表」を指す。
【0056】
本発明にとって特に有用である一般式(II)を有するアルキルアルミニウムの具体例には、トリ−メチル−アルミニウム、トリ−(2,3,3−トリ−メチル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2,3−ジ−メチル−ヘキシル)−アルミニウム、トリ−(2,3−ジ−メチル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2,3−ジ−メチル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−(2,3−ジ−メチル−ヘプチル)−アルミニウム、トリ−(2−メチル−3−エチル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−(2−メチル−3−エチル−ヘキシル)−アルミニウム、トリ−(2−メチル−3−エチル−ヘプチル)−アルミニウム、トリ−(2−メチル−3−プロピル−ヘキシル)−アルミニウム、トリ−エチル−アルミニウム、トリ−(2−エチル−3−メチル-ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−エチル−3−メチル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−(2,3−ジ−エチル−ペンチル−アルミニウム)、トリ−n−プロピル−アルミニウム、トリ−イソ−プロピル−アルミニウム、トリ−(2−プロピル−3−メチル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−イソ−プロピル−3−メチル−ブチル)−アルミニウム、トリ−n−ブチル−アルミニウム、トリ−イソ−ブチル−アルミニウム(TIBA)、トリ−tert−ブチル−アルミニウム、トリ−(2−−イソブチル−3−メチル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−(2,3,3−トリ−メチル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−(2,3,3−トリ−メチル−ヘキシル)−アルミニウム、トリ−(2−エチル−3,3−ジ−メチル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−エチル−3,3−ジ−メチル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−(2−イソ−プロピル−3,3−ジメチル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−トリ−メチルシリル−プロピル)−アルミニウム、トリ−2−メチル−3−フェニル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−エチル−3−フェニル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2,3−ジ−メチル-3−フェニル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−フェニル−プロピル)−アルミニウム、トリ−[2−(4−フルオロ−フェニル)−プロピル]−アルミニウム、トリ−[2−(4−クロロ-フェニル)−プロピル]−アルミニウム、トリ−[2−(3−イソ−プロピル−フェニル−トリ-(2−フェニル-ブチル)−アルミニウム、トリ−(3−メチル−2−フェニル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−フェニル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−[2−(ペンタ-フルオロ−フェニル)−プロピル]−アルミニウム、トリ−(2,2−ジフェニル−エチル]−アルミニウム、トリ−(2−フェニル−メチル−プロピル)−アルミニウム、トリ−ペンチル−アルミニウム、トリ−ヘキシル−アルミニウム、トリ−シクロヘキシル−アルミニウム、トリ−オクチル−アルミニウム、ジ−エチル−アルミニウム水素化物、ジ−n−プロピル−アルミニウム水素化物、ジ−n−ブチル−アルミニウム水素化物、ジ−イソ−ブチル−アルミニウム水素化物(DIBAH)、ジ−ヘキシル−アルミニウム水素化物、ジ−イソ−ヘキシル−アルミニウム水素化物、ジ−オクチル−アルミニウム水素化物、ジ−イソ−オクチル−アルミニウム水素化物、エチル−アルミニウム二水素化物、n−プロピル−アルミニウム二水素化物、イソ−ブチル−アルミニウム二水素化物、ジ−エチル−アルミニウムクロライド(DEAC)、モノ−エチル−アルミニウムジクロライド(EADC)、ジ−メチル−アルミニウムクロライド、ジ−イソ−ブチル−アルミニウムクロライド、イソ−ブチル−アルミニウムジクロライド、エチル−アルミニウムセスキクロライド(EASC)、及び、対応する化合物であってその中の炭化水素置換基の1つが水素原子で置換されるものやその中の炭化水素置換基の1つ又は2つがイソ−ブチル基で置換されるものがある。ジ−エチル−アルミニウムクロライド(DEAC)、モノ−エチル−アルミニウムジクロライド(EADC)、エチル−アルミニウムセスキクロライド(EASC)が特に好ましい。
【0057】
本発明に係る触媒(共)重合系の形成に用いる場合、一般式(II)を有するアルキルアルミニウムを、一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体に存在するコバルトと一般式(II)を有するアルキルアルミニウムに存在するアルミニウムとのモル比が5〜5000、好ましくは10〜1000の範囲であるような割合で、一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体と接触させることが好ましい。一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体と一般式(II)を有するアルキルアルミニウムとを接触させる順序は、特に重要ではない。
【0058】
一般式(II)を有するアルキルアルミニウムは、国際特許出願WO 2011/061151に詳細に記載されている。
【0059】
特に好適な実施態様によれば、前記有機含酸素化化合物(b
2)は、一般式(III)を有するアルミノキサンから選択されてもよい:
(R
6)
2−Al−O−[−Al(R
7)−O−]
p−Al−(R
8)
2 (III)
(式中、R
6、R
7、及びR
8は、同一又は異なり、水素原子か、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素等のハロゲン原子を表すか、又は、1以上のケイ素又はゲルマニウム原子で任意に置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状C
1−C
20アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基から選択され、pは、0〜1,000の整数である。)
【0060】
周知のように、アルミノキサンは、可変O/Al比を持つ Al−O−Al結合を含む化合物であり、例えば次のような当技術分野で周知のプロセスによって得られる:制御された状態において、アルキルアルミニウム又はハロゲン化アルキルアルミニウムを、水又はその他の所定量の有効水分を含有する化合物と反応させる。一例として、アルミニウムトリメチルと、硫酸アルミニウム六水和物、硫酸銅五水和物、又は硫酸鉄五水和物との反応がある。
【0061】
当該アルミノキサン、特にメチルアルミノキサン(MAO)は、硫酸アルミニウム水和物のヘキサンにおける懸濁液へのアルミニウムトリメチルの付加等、周知の有機金属化学プロセスによって得られる化合物である。
【0062】
本発明に係る触媒(共)重合系の形成に用いる場合、一般式(III)を有するアルミノキサンを、一般式(III)を有するアルミノキサンに存在するアルミニウム(Al)と一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体に存在するコバルトとのモル比が10〜10,000、好ましくは100〜5,000の範囲であるような割合で、一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体と接触させることが好ましい。一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体と一般式(III)を有するアルミノキサンとを接触させる順序は、特に重要ではない。
【0063】
上記の好適な一般式(III)を有するアルミノキサンに加えて、本発明に係る化合物(b
2)の定義は、以下を含み得る:ガロキサン、ここで、一般式(III)において、アルミニウムの代わりにガリウムが存在する;スタノキサン、ここで、一般式(III)において、アルミニウムの代わりにスズが存在する。メタロセン錯体存在下でのオレフィン重合における共触媒としてのその使用が知られている。ガロキサン及びスタノキサンについては、例えば、米国特許US 5,128,295及びUS 5,258,475に詳細に記載されている。
【0064】
本発明にとって特に有用である一般式(III)を有するアルミノキサンの具体例には、メチルアルミノキサン(MAO)、エチル−アルミノキサン、n−ブチル−アルミノキサン、テトラ−イソ−ブチル−アルミノキサン(TIBAO)、tert−ブチル−アルミノキサン、テトラ−(2,4,4−トリ−メチル−ペンチル) −アルミノキサン(TIOAO)、テトラ−(2,3−ジ−メチル-ブチル)−アルミノキサン(TDMBAO)、テトラ−(2,3,3−トリ−メチル−ブチル) −アルミノキサン(TTMBAO)がある。メチルアルミノキサン(MAO)が特に好ましい。
【0065】
一般式(III)を有するアルミノキサンは、国際特許出願WO 2011/061151に詳細に記載されている。
【0066】
本発明の好適な実施態様によれば、前記化合物又は化合物混合物(b
3)は、以下の一般式で表されるような、アルミニウムや特にホウ素の有機化合物から選択されてもよい:
[(R
C)
WH
4−W]・[B(R
D)
4]
−;B(R
D)
3;Al(R
D)
3;B(R
D)
3P;
[Ph
3C]
+・[B(R
D)
4]
−;[(R
C)
3PH]
+・[B(R
D)
4]
−;
[Li]
+・[B(R
D)
4]
−: [Li]
+・[Al(R
D)
4]
−
wは、0〜3の整数であり、各基R
Cは個別に、炭素原子数1〜10のアルキル基又はアリール基を表し、各基 R
Dは個別に、部分的又は全体的、好ましくは全体的にフッ素化され炭素原子数6〜20のアリール基を表し、Pは、任意に置換されていてもよいピロールラジカルを表す。
【0067】
本発明に係る触媒(共)重合系の形成に用いる場合、化合物又は化合物混合物(b
3)を、化合物又は化合物混合物(b
3)に存在する金属(M’)と一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体に存在するコバルトとのモル比が0.1〜15、好ましくは0.5〜10、より好ましくは1〜6の範囲であるような割合で、一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体と接触させることが好ましい。一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体と化合物又は化合物混合物(b
3)とを接触させる順序は、特に重要ではない。
【0068】
特に一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体におけるX
1及びX
2がアルキルと異なる場合、化合物又は化合物混合物(b
3)は、メチルアルミノキサン(MAO)等の一般式(III)を有するアルミノキサン、好ましくは一般式(II)を有するアルキルアルミニウム、より好ましくはトリ−メチル−アルミニウム、トリ−エチル−アルミニウム、トリ−イソ−ブチルアルミニウム(TIBA)等の各アルキル残基における炭素原子数が1〜8のトリアルキルアルミニウムと組み合わせて用いる必要がある。
【0069】
化合物又は化合物混合物(b
3)を使用する場合に本発明に係る触媒(共)重合系の形成に一般的に用いられる方法の例を以下のリストに定性的に記載するが、本発明の全体的な範囲はこれに限定されない:
(m
1)X
1とX
2とのうちの少なくとも1つがアルキル基である一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体と、少なくとも1つの化合物又は化合物混合物(b
3)との接触、ここで、化合物又は化合物混合物(b
3)のカチオンは、当該アルキル基と反応して中性化合物を形成することができ、アニオンは、大きく、非配位性で、負電荷を非局在化することができる;
(m
2)一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体と、10/1〜300/1のモル過剰で使用される、一般式(II)を有する少なくとも1つのアルキルアルミニウム、好ましくはトリアルキルアルミニウムとの反応、及びそれに続く、コバルト(Co)に関してほぼ化学量論的量又は若干過剰であるトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素[化合物(b
3)]等の強いルイス酸との反応;
(m
3)一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体と、10/1〜1000/1のモル過剰、好ましくは100/1〜500/1のモル過剰の少なくとも1つのトリアルキルアルミニウム又は式AlR’’’
mZ
3−mで表されるハロゲン化アルキルアルミニウムとの接触及び反応、ここで、R’’’は、直鎖状又は分岐鎖状C
1−C
8アルキル基もしくはこれらの混合、Zはハロゲン、好ましくは塩素又は臭素、mは1〜3の10進数である、及びそれに続く、化合物又は化合物混合物(b
3)あるいは化合物又は化合物混合物(b
3)のアルミニウムと一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体のコバルトとの比が0.1〜15、好ましくは1〜6であるような量での、得られた組成物への少なくとも1つの化合物又は化合物混合物(b
3)の付加。
【0070】
本発明に従って一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体との反応によりイオン触媒系を生成することができる化合物又は化合物混合物(b
3)の例は、イオンメタロセン錯体の形成に関連してではあるが、以下の刊行物に記載されており、その内容は参照によりここに組み込まれる:
− W. Beck et al., “Chemical Reviews” (1988), Vol. 88, pp. 1405-1421;
− S. H. Stares, “Chemical Reviews” (1993), Vol. 93, pp. 927-942;
− 欧州特許出願EP 277 003、EP 495 375、EP 520 732、EP 427 697、EP 421 659、EP 418044;
− 国際特許出願公開WO 92/00333、WO 92/05208
【0071】
本発明にとって特に有用である化合物又は化合物混合物(b
3)の具体例には、トリブチルアンモニウム−テトラキス−ペンタフルオロフェニル−ホウ酸塩、トリブチルアンモニウム−テトラキス−ペンタフルオロフェニル−アルミン酸塩、トリブチルアンモニウム−テトラキス−[(3,5−ジ−(トリフルオロフェニル))]−ホウ酸塩、トリブチルアンモニウム−テトラキス−(4−フルオロフェニル))ホウ酸塩、N,N−ジメチルベンジル−アンモニウム−テトラキス−ペンタフルオロフェニル-ホウ酸塩、N,N−ジ−メチル−ヘキシルアンモニウム−テトラキス−ペンタフルオロフェニル−ホウ酸塩、N,N−ジメチルアニリニウム−テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−ホウ酸塩、N,N−ジメチルアニリニウム−テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−アルミン酸塩、ジ−(プロピル)−アンモニウム-テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−ホウ酸塩、ジ−(シクロヘキシル)−アンモニウム-テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−ホウ酸塩、トリ−フェニル−カルベニウム−テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−ホウ酸塩、 トリ−フェニルカルベニウム−テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−アルミン酸塩、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)−アルミニウム、及びこれらの混合物がある。テトラキス−ペンタフルオロフェニル−ホウ酸塩が好ましい。
【0072】
本明細書及び以下の請求項において、用語「モル」や「モル比」は、分子からなる化合物に関連して、また、原子やイオンに関連して、用いられる。後者については、科学的により正しいとしても、グラム原子や原子比率といった用語を省略する。
【0073】
本発明において、特定の実用的要件を満たすように適応させるべく、上記の触媒系に、他の添加剤や成分を任意に加えてもよい。こうして得られる触媒系は、本発明の範囲に含まれるとみなされる。本発明の対象である上記触媒系の生成及び/又は配合において加えることが可能な添加剤及び/又は成分の例には、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素等の不活性溶媒、脂肪族及び/又は芳香族エーテル、非重合性オレフィン等から選択される弱配位性添加剤(ルイス塩基等)、 立体障害型又は電子的に乏しいエーテル、ハロゲン化ケイ素やハロゲン化炭化水素等、好ましくは塩素化のハロゲン化剤、及びこれらの混合物がある。
【0074】
既述の通り、当該触媒系は、当技術分野で周知の方法によって生成することができる。
【0075】
例えば、当該触媒系は、別々に生成して(予め形成して)、その後(共)重合環境に導入してもよい。この点において、任意に上記したものから選択される添加剤又は成分の存在下で、トルエンやヘプタン等の溶媒の存在下で、20℃〜60℃の温度で、10 秒〜10時間、好ましくは 30秒〜5時間、一般式(I)を有する少なくとも1つのコバルトオキソ窒化錯体(a)を少なくとも1つの共触媒(b)と反応させることによって、触媒系を生成することができる。当該触媒系の生成については、以下の実施例でさらに詳細に示される。
【0076】
あるいは、当該触媒系は、その場、即ち、(共)重合環境において直接生成してもよい。この点において、(共)重合が行われる条件下で、一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体(a)と、共触媒(b)と、(共)重合するべく予め選択した共役ジエンとを別々に導入することによって、触媒系を生成することができる。
【0077】
本発明の目的のために、上記触媒系は、不活性固体上に支持されてもよい。不活性固体は、好ましくは、シリカ、アルミナ、シリコアルミン酸等、酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムからなる。触媒系を支持するために利用可能な周知の支持技術は、一般に、適切な不活性液体媒体における、200℃より高く加熱することによって任意に活性化された担体と、本発明の対象である触媒系の成分(a)と(b)とのうちの1つ又は両方、との間の接触を含む。本発明では、両方の成分を支持する必要はない。なぜなら、担体表面上に存在するのは一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体(a)のみ又は共触媒(b)のみの可能性があるからである。後者の場合、後で重合のための活性触媒を形成する際に、表面上にない成分を支持されている成分と接触させる。
【0078】
一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体及びそれに基づく触媒系が後者の機能化や固体と一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体との共有結合の形成によって固体上に支持されることも、本発明の範囲に含まれる。
【0079】
また本発明は、前記触媒系の使用を特徴とする、共役ジエンの(共)重合プロセスに関する。
【0080】
共役ジエンの(共)重合で使用され得る一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体(a)及び共触媒(b)の量は、行われる(共)重合プロセスによって変わる。いずれの場合も、当該量は、一般式(I)を有するコバルトオキソ窒化錯体におけるコバルトと共触媒(b)における金属とのモル比が上記の値の範囲に含まれるような量である。ここで、共触媒(b)における金属は、例えば、共触媒(b)がアルキルアルミニウム(b
1)やアルミノキサン(b
2)から選択される場合はアルミニウム、共触媒(b)が一般式(III)を有する化合物又は化合物混合物(b
3)から選択される場合はホウ素である。
【0081】
本発明の触媒系を用いて(共)重合され得る共役ジエンの具体例には、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、シクロ−1,3−ヘキサジエンがある。好ましい(共)重合可能共役ジエンは、1,3−ブタジエンやイソプレンである。上記の(共)重合可能共役ジエンは、単独で用いても、2つ以上のジエンの混合物として用いてもよい。2つ以上のジエンの混合物を用いる後者の場合、共重合体が得られる。
【0082】
特に好適な実施態様によれば、本発明は、前記触媒系の使用を特徴とする、1,3−ブタジエン又はイソプレンの重合プロセスに関する。
【0083】
前記(共)重合プロセスは、一般的に、例えば次のような不活性有機溶媒から選択される重合溶媒の存在下で行われてもよい:ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、これらの混合物等の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、これらの混合物等の飽和脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテン、これらの混合物等のモノオレフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン、これらの混合物等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン、これらの混合物等のハロゲン化炭化水素。(共)重合溶媒は、好ましくは、飽和脂肪族炭化水素から選択される。
【0084】
あるいは、(共)重合は、「バルク法」として知られる処理によって、(共)重合対象の同じ共役ジエンを(共)重合溶媒として用いて行われてもよい。
【0085】
前記(共)重合溶媒において(共)重合される共役ジエンの濃度は、一般的に共役ジエンと不活性有機溶媒との混合物の総重量の5重量% 〜50重量%であり、好ましくは10重量%〜20重量%である。
【0086】
前記(共)重合プロセスは、一般的に−70℃〜+100℃の温度で行われてもよく、好ましくは−20℃〜+80℃の温度で行われる。
【0087】
圧力に関しては、(共)重合対象の混合物成分の圧力での動作が好ましい。
【0088】
前記(共)重合は、連続又はバッチ式で行われてもよい。
【0089】
上記の通り、当該プロセスによって、1,4−シスユニット高含有量、即ち1,4−シスユニット含有量≧96%の、ポリブタジエンやポリイソプレン等、特に直鎖状又は分岐鎖状ポリブタジエン等の、共役ジエン(共)重合体を得ることができる。
【0090】
本発明及びその具体的な実施形態の理解を助けるため、説明のための非限定実施例を以下に示す。
【実施例】
【0091】
試薬及び物質
次のリストに、以下の発明の実施例で用いられた試薬及び物質を、その任意の前処理及び供給元と共に示す。
− アニリン(Aldrich):減圧で蒸留し、不活性雰囲気で保存した;
− 二塩化コバルト(CoCl
2)(Stream Chemicals):そのまま使用した;
− テトラヒドロフラン(THF)(Carlo Erba, RPE):カリウム/ベンゾフェノン上で還流温度に保ち、その後窒素下で蒸留した;
− メタノール(Carlo Erba, RPE):そのまま使用した;
− p−トルイジン(Aldrich):減圧で蒸留して不活性雰囲気で保存した;
− 2,4−ペンタンジオン(Aldrich):そのまま使用した;
− トルエン(Aldrich):純度≧99.5%、不活性雰囲気でナトリウム(Na)上で蒸留した;
− 1,3−ブタジエン(Air Liquide):純度≧99.5%、各生産前に容器から蒸発し、分子篩充填カラムに通すことで乾燥し、−20℃に予め冷却された反応炉内で凝縮した;
− メチルアルミノキサン(MAO)(10重量%のトルエン溶液) (Aldrich):そのまま使用した;
− ヘプタン(Aldrich):純度≧99.5%、不活性雰囲気でナトリウム(Na)上で蒸留した;
− ペンタン(Aldrich):純度≧99.5%、不活性雰囲気でナトリウム(Na)上で蒸留した;
− ヘキサン(Aldrich):純度≧99.5%、不活性雰囲気でナトリウム(Na)上で蒸留した;
− 重水素化テトラクロロエチレン(C
2D
2Cl
4)(Acros):そのまま使用した;
− 重水素化クロロホルム(CDCl
3)(Acros):そのまま使用した。
− エチレンジアミン(Aldrich):そのまま使用した;
− 37%の水溶液における塩酸(Aldrich):そのまま使用した。
【0092】
以下の分析及び特性化法を用いた。
【0093】
元素分析
a)
Coの決定
本発明に用いられるコバルトオキソ窒化錯体におけるコバルト(Co)の重量を決定するべく、窒素フロー下のドライボックスにおいて、サンプルの約30mg〜50mgの、正確に計量されたアリコートを、40%のフッ化水素酸(HF)1mlと96%の硫酸(H
2SO
4)0.25mlと70%の硝酸(HNO
3)1mlとの混合物と共に、約30mlの白金るつぼ内に置いた。そして、るつぼをプレート上で加熱し、硫黄白煙が生じるまで昇温した(約200℃)。こうして得られた混合物を室温(20℃〜25℃)まで冷却し、70%の硝酸(HNO
3)1mlを添加し、煙が再び生じるまで混合物を加熱した。さらに二回シーケンスを繰り返した後、透明でほとんど無色の溶液が得られた。それから、硝酸(HNO
3)1mlと水約15mlとを熱なしで加え、混合物を80℃まで約30分加熱した。こうして生成されたサンプルを、正確に計量された、約50gまでの重量のミリQ純度を有する水で希釈して、溶液を得た。この溶液に、既知の濃度の溶液との比較により、ICP−OES(optical detection plasma) Thermo Optek IRIS Advantage Duo分光計を用いて分析機器決定を行った。このために、認証液の重量による希釈によって得られる周知の力価を有する溶液を測定し、0ppm〜10ppmの範囲内で、各被分析物用に検量線を作成した。
【0094】
分光光度検出を行う前に、上記の通り生成されたサンプルの溶液を、参照用に近い濃度を得るべく重量で再度希釈した。全サンプルを、2つ生成した。2つにおいて単一のテストデータがそれらの平均値に対して2%以内で異なる場合、結果を許容範囲とみなした。
【0095】
b)塩素の決定
このために、本発明に使用されるコバルトオキソ窒化錯体のサンプル約30mg〜50mgを、窒素気流下で、ドライボックス内の100mlグラスで正確に計量した。ドライボックスの外で、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)2gとミリQ水50mlとを添加した。この混合物を、約30分間、磁気撹拌下で、プレート上で沸点にした。それから放冷し、反応が酸性になるまで希硫酸(H
2SO
4)1/5を添加し、混合物を電位差滴定装置で硝酸銀(AgNO
3)0.1Nと滴定した。
【0096】
c)炭素、水素、窒素、酸素の決定
本発明に使用されるコバルトオキソ窒化錯体における、また本発明に使用される配位子における、炭素、水素、窒素、及び酸素の決定は、Carlo Erba Mod.1106自動分析器により行った。
【0097】
13C−HMR及び1H−HMRスペクトル
ヘキサメチルジシロキサン(HDMS)を内部標準として103℃で重水素化テトラクロロエチレン(C
2D
2Cl
4)を用いて、あるいは、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として25℃で重水素化クロロホルム(CDCl
3)を用いて、
13C−HMR及び
1H−HMRスペクトルを核磁気共鳴分光計mod. Bruker Avance 400によって記録した。このために、重合体溶液総重量に対して10重量%の濃度の重合体溶液を使用した。
【0098】
重合体[即ち、1,4−シスユニット分(%)]の微細構造を、Mochel, V. D., “Journal of Polymer Science Part A-1: Polymer Chemistry” (1972), Vol. 10, Issue 4, pp. 1009-1018の記載に基づいて上記スペクトルの分析により決定した。
【0099】
I.R.スペクトル
I.R.スペクトル(FT−IR)を、Thermo Nicolet Nexus 670及びBruker IFS 48分光光度計によって記録した。
【0100】
本発明に使用される配位子のI.R.スペクトル(FT−IR)は、分析対象の配位子を無水臭化カリウム(KBr)(KBrのディスク)又はヌジョール懸濁液に分散することによって得た。
【0101】
本発明に使用されるコバルトオキソ窒化錯体のI.R.スペクトル(FT−IR)は、分析対象のコバルトオキソ窒化錯体を無水臭化カリウム(KBr)(KBrのディスク)又はヌジョール懸濁液に分散することによって得た。
【0102】
重合体のI.R.スペクトル(FT−IR)は、臭化カリウム(KBr)のタブレット上の重合体フィルムから得た。当該フィルムは、分析対象の重合体の溶液を高温o−ジクロルベンゼンに沈殿させることによって得た。分析された重合体溶液の濃度は、重合体溶液総重量に対して10重量%であった。
【0103】
熱分析(DSC)
得られた重合体の融点(T
m)及び結晶化温度(T
c)を決定するべく、DSC(示差走査熱量計)熱分析を、Perkin Elmer Pyris示差走査熱量計を用いて行った。このために、不活性窒素雰囲気で、1℃/分〜20℃/分の走査速度で、重合体5mgを分析した。
【0104】
得られた重合体のガラス転移温度(T
g)を決定するべく、DSC(示差走査熱量計)熱分析を、上記の熱量計により以下の熱プログラムを用いて行った:+70℃で3分間の等温;10℃/分の速度で+70℃から−90℃まで冷却;−90℃で3分間の等温;10℃/分の速度で−90℃から+70℃まで加熱。
【0105】
分子量の決定
得られた重合体の分子量(MW)の決定を、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により以下の条件下で行った:
− Agilent 1100ポンプ;
− I.R. Agilent 1100検出器;
− PL Mixed−Aカラム;
− 溶媒/溶離液:テトラヒドロフラン(THF);
− 流速:1ml/分;
− 温度:25℃;
− 分子量計算:ユニバーサル較正法。
【0106】
M
w/M
n比(M
n=数平均分子量)に対応する重量平均分子量(M
w)及び多分散指数(PDI)を特定する。
【0107】
分岐の決定
得られた重合体の分岐の決定を、多角度光散乱検出器(MALLS)を従来のSEC/RI溶出と結合したGPC/MALLS技術により以下の条件下で行った:
− Agilent 1050ポンプ;
− I.R. Agilent 1050検出器;
− MALLS Dawn−DSP Wyatt検出器−技術、λ=632.8nm;
− PL GEL Mixed−A (x4)カラム;
− 溶媒/溶離液:テトラヒドロフラン(THF);
− 流速:1ml/分;
− 温度:25℃
【0108】
上記の通り、クロマトグラフシステムによって分離される高分子の分子量と回転半径との絶対測定を同時に行うことができる。ここで、溶液中の高分子種からの散乱光量を、実際に、その分子量を得るために直接利用することができる一方、散乱における角度変動は、その平均次元と直接関係している。使用される基本的関係は、以下の数式(1)で表される:
【数1】
ここで、
− K
*は、使用される光の波長と、重合体の屈折率(dn/dc)と、使用される溶媒とに依存する光学定数;
− M
wは、重量平均分子量;
− cは、高分子溶液の濃度;
− R
θは、角θ(過剰レイリー比)で測定される散乱光度;
− P
θは、0に等しい角θに対して、測定の行われる1に等しい角での散乱光の変動を表す関数;
− A
2は、第2ビリアル係数である。
【0109】
非常に低い濃度(GPCシステムで典型的である)では、上記の数式(1)は、以下の数式(2)に換算される:
【数2】
ここで、K
*、c、R
θ、M
w、P
θは、上記と同じ意味を持ち、いくつかの角で計測することによって、sen
2θ/2に関する関数K
*c/R
θのヌル角での外挿が、インターセプト値の分子量及びスロープの回転半径を直接与える。
【0110】
さらに、この測定をクロマトグラムの全スライスに行うことから、分子量と回転半径との両方の分布を得ることが可能である。
【0111】
溶液中の高分子次元は、その分岐度と直接関連する。同じ分子量では、線形型と比べて高分子次元が小さいほど、分岐度は高くなる。
【0112】
重合体のマクロ構造に関する情報は、パラメータαの値から定性的に推定される。パラメータαは、回転半径と分子量とを互いに関連付ける曲線のスロープを表す。同じ分析条件下でこの値が線形型のマクロ構造に対して低下するとき、分岐型マクロ構造を持つ重合体が存在する。テトラヒドロフラン(THF)において、1,4−シスユニット高含有量の直鎖状ポリブタジエンのパラメータαの典型値は、0.58〜0.60である。
【0113】
実施例1
式(L1)を有する配位子の合成
【化5】
【0114】
2,4−ペンタンジオン5g(50ミリモル)を、ベンゼン75ml、塩酸数滴、及びp−トルイジン5.5g(51ミリモル)と共に、水の共沸除去のためDean−Starkトラップ付き反応フラスコに導入した。得られた混合物を、24時間窒素下で還流温度に加熱した。その後、混合物を、室温に冷却し、多孔隔壁上でろ過して得たろ液を、真空蒸着し、黄橙色オイルを得た。こうして得られたオイルを、エチルエーテル(10ml)に溶解し、24時間冷凍機に入れ、固体生成物を得た。固体生成物を、室温でろ過及び真空乾燥して、式(L1)を有する黄色固体生成物(収率=64.5%)6.1gを得た。
元素分析[検出(計算)]: C: 75.74% (76.16%); H: 7.98% (7.99%); N: 7.31% (7.40%); O: 8.71% (8.45%)。
分子量(M
W):189.25。
FT−IR(ヌジョール):1610cm
−1ν
(C=O);1570cm
−1ν
(C=N)。
【0115】
実施例2
式(L4)を有する配位子の合成
【化6】
【0116】
2,4−ペンタンジオン5g(50ミリモル)を、ベンゼン75ml、塩酸数滴、及びアニリン4.66g(50ミリモル)と共に、水の共沸除去のためDean−Starkトラップ付き反応フラスコに導入した。得られた混合物を、24時間窒素下で還流温度に加熱した。その後、混合物を、室温に冷却し、多孔隔壁上でろ過して得たろ液を、真空蒸着し、橙色オイルを得た。こうして得られたオイルを、エチルエーテル(10ml)に溶解し、24時間冷凍機に入れ、固体生成物を得た。固体生成物を、室温でろ過及び真空乾燥して、式(L4)を有する黄色固体生成物(収率=62%)4.3gを得た。
元素分析[検出(計算)]: C: 75.20% (75.40%); H: 7.50% (7.48%); N: 8.0% (7.99%); O: 9.12% (9.13%)。
分子量(M
W):175.23。
FT−IR(ヌジョール):1620cm
−1ν
(C=O);;1577cm
−1ν
(C=N)。
【0117】
実施例3
式(L6)を有する配位子の合成
【化7】
【0118】
エチレンジアミン6g(100ミリモル)を、2,4−ペンタンジオン20mlと共に反応フラスコに導入した。得られた混合物を、6時間撹拌下で室温に保った。その後、混合物を冷凍機に入れ、白色固体生成物の沈殿物を得て、これを水から再結晶化し、室温で、水洗浄及び真空乾燥して、式(L6)を有する白色固体生成物(収率=98%)22gを得た。
元素分析[検出(計算)]: C: 64.30% (64.26%); H: 8.91% (8.99%); N: 12.60% (12.49%); O: 14.0% (14.27%)。
分子量(MW):224.3。
FT−IR(ヌジョール):1606cm
−1ν
(C=O);1575cm
−1ν
(C=N)。
【0119】
実施例4
CoCl2(L1)の合成[サンプルGL770]
【化8】
【0120】
無水二塩化コバルト(CoCl
2)(0.397g、3.06ミリモル)を、テトラヒドロフラン(THF)(50ml)と共に、100ml反応フラスコに導入した。全体を数分間撹拌下で室温に保った後、実施例1の記載の通りに得られた式(L1)を有する配位子(0.681g、3.6ミリモル、モル比L1/Co=1.2)を添加した。配位子を添加してすぐに濃青色懸濁液が形成され、これを1日間撹拌下で室温に保った。その後、溶媒を真空除去し、得られた残留物を室温で真空乾燥してから、固体用高温抽出器の多孔隔壁上に投入して、非反応配位子を除去するために24時間沸点でペンタンにより連続抽出した。 その後、多孔隔壁に残った残留物を24時間沸点でジクロロメタンにより再び連続抽出し、緑色溶液を得た。ジクロロメタンを真空除去し、多孔隔壁に残った固体残留物を回収して室温で真空乾燥して、投入した二塩化コバルトに対して91.4%変換に等しい、錯体CoCl
2(L1)に対応する濃緑色固体生成物0.89gを得た。
元素分析[検出(計算)]: C: 44.60% (45.17%); H: 4.20% (4.74%); Cl: 21.70% (22.22%); Co: 18.10% (18.47%); N: 4.20% (4.39%); O: 4.90% (5.01%)。
分子量(MW):319.09。
FT−IR(ヌジョール):1591cm
−1ν
(C=O);1555cm
−1ν
(C=N)。
【0121】
実施例5
CoCl2(L4)の合成[サンプルGL924]
【化9】
【0122】
無水二塩化コバルト(CoCl
2)(0.415g、3.2ミリモル)を、テトラヒドロフラン(THF)(70ml)と共に、100ml反応フラスコに導入した。全体を数分間撹拌下で室温に保った後、実施例2の記載の通りに得られた式(L4)を有する配位子(0.615g、3.51ミリモル、モル比L4/Co=1.1)を添加した。配位子を添加してすぐに藍色懸濁液が形成され、これを1日間撹拌下で室温に保った。その後、溶媒を真空除去し、得られた残留物を室温で真空乾燥してから、固体用高温抽出器の多孔隔壁上に投入して、非反応配位子を除去するために24時間沸点でペンタンにより連続抽出した。その後、多孔隔壁に残った残留物を回収して室温で真空乾燥して、投入した二塩化コバルトに対して89.1%変換に等しい、錯体CoCl
2(L4)に対応する藍色固体生成物0.87gを得た。
元素分析[検出(計算)]: C: 42.90% (43.31%); H: 4.20% (4.30%); Cl: 22.90% (23.24%); Co: 18.90% (19.32%); N: 4.20% (4.59%); O: 5.0% (5.24%)。
分子量(MW):305.07。
FT−IR(ヌジョール):1603cm
−1ν
(C=O);1551cm
−1ν
(C=N)。
【0123】
図1に、得られた錯体CoCl
2(L4)のFT−IRスペクトルを示す(ヌジョールバンドを減算)。
【0124】
実施例6
(L6)の合成[サンプルGL927]
【化10】
【0125】
無水二塩化コバルト(CoCl
2)(0.830g、6.39ミリモル)を、テトラヒドロフラン(THF)(70ml)と共に、100ml反応フラスコに導入した。全体を数分間撹拌下で室温に保った後、実施例3の記載の通りに得られた式(L6)を有する配位子(1.57g、7ミリモル、モル比L6/Co=1.1)を添加した。配位子を添加してすぐに薄青色懸濁液が形成され、これを1日間撹拌下で室温に保った。その後、溶媒を真空除去し、得られた残留物を室温で真空乾燥してから、固体用高温抽出器の多孔隔壁上に投入して、非反応配位子を除去するために24時間沸点でペンタンにより連続抽出した。その後、多孔隔壁に残った残留物を回収して室温で真空乾燥して、投入した二塩化コバルトに対して80%変換に等しい、錯体CoCl
2(L6)に対応する薄青色固体生成物1.81gを得た。
元素分析[検出(計算)]: C: 40.40% (40.70%); H: 5.40% (5.69%); Cl: 19.80% (20.02%); Co: 16.40% (16.64%); N: 7.60% (7.91%); O: 8.90% (9.04%)。
分子量(MW):354.14。
FT−IR(ヌジョール):1606cm
−1ν
(C=O);1575cm
−1ν
(C=N)。
【0126】
図2に、得られた錯体CoCl
2(L6)のFT−IRスペクトルを示す(ヌジョールバンドを減算)。
【0127】
実施例7(GL780)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン8.1mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を20℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10
−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例4の記載の通りに得られた錯体CoCl
2(L1)[サンプルGL770](2mg/mlの濃度のトルエン溶液1.6ml、1×10
−5モル、約3.2mgに等しい)を添加した。全体を35分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を終わらせた。得られた重合体を、Irganox
(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量98%のポリブタジエン1.15gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0128】
図3に、得られたポリブタジエンの
1H−NMR及び
13C−NMRスペクトルを示す。
【0129】
実施例8(GL815)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン8.1mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を50℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10
−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例4の記載の通りに得られた錯体CoCl
2(L1)[サンプルGL770](2mg/mlの濃度のトルエン溶液1.6ml、1×10
−5モル、約3.2mgに等しい)を添加した。全体を10分間磁気撹拌下で50℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を終わらせた。得られた重合体を、Irganox
(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量97.3%のポリブタジエン0.94gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0130】
実施例9(GL980/1)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後ヘプタン8.1mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を50℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10
−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例4の記載の通りに得られた錯体CoCl
2(L1)[サンプルGL770](2mg/mlの濃度のトルエン溶液1.6ml、1×10
−5モル、約3.2mgに等しい)を添加した。全体を10分間磁気撹拌下で50℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を終わらせた。得られた重合体を、Irganox
(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量96.7%のポリブタジエン0.98gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0131】
図4に、得られたポリブタジエンのDSCダイアグラムを示す。
【0132】
図5に、得られたポリブタジエンの
1H−NMR及び
13C−NMRスペクトルを示す。
【0133】
実施例10(GL968)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン8.1mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を20℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10
−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例5の記載の通りに得られた錯体CoCl
2(L4)[サンプルGL924](2mg/mlの濃度のトルエン溶液1.56ml、1×10
−5モル、約3.12mgに等しい)を添加した。全体を45分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を終わらせた。得られた重合体を、Irganox
(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量97.2%のポリブタジエン1.4gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0134】
図6に、得られたポリブタジエンのDSCダイアグラムを示す。
【0135】
図7に、得られたポリブタジエンの
1H−NMR及び
13C−NMRスペクトルを示す。
【0136】
実施例11(GL979)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン8.1mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を50℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10
−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例5の記載の通りに得られた錯体CoCl
2(L4)[サンプルGL924](2mg/mlの濃度のトルエン溶液1.56ml、1×10
−5モル、約3.12mgに等しい)を添加した。全体を10分間磁気撹拌下で50℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を終わらせた。得られた重合体を、Irganox
(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量97.2%のポリブタジエン1.34gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0137】
図8に、得られたポリブタジエンのFT−IRスペクトルを示す。
【0138】
図9に、得られたポリブタジエンのDSCダイアグラムを示す。
【0139】
実施例12(GL969)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン7.9mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を20℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10
−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例6の記載の通りに得られた錯体CoCl
2(L6)[サンプルGL927](2mg/mlの濃度のトルエン溶液1.8ml、1×10
−5モル、約3.6mgに等しい)を添加した。全体を90分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を終わらせた。得られた重合体を、Irganox
(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液 40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量97.9%のポリブタジエン1.4gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0140】
図10に、得られたポリブタジエンのDSCダイアグラムを示す。
【0141】
【表1】
【0142】
(
a):1時間当たり、コバルトモル毎の、重合される1,3−ブタジエンのモル数
(
b):融点
(
c):結晶化温度
(
e):ポリブタジエンの線形インデックス