(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407166
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】テンサイ褐斑病を防除するための殺真菌性組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 43/40 20060101AFI20181004BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20181004BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
A01N43/40 101E
A01P3/00
A01N25/00 102
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-550864(P2015-550864)
(86)(22)【出願日】2013年12月31日
(65)【公表番号】特表2016-507513(P2016-507513A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】US2013078505
(87)【国際公開番号】WO2014106251
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】61/747,496
(32)【優先日】2012年12月31日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501035309
【氏名又は名称】ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ウィメット,デービッド,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】マシソン,ジョン,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ケミット,グレッグ
【審査官】
斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−507921(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/044213(WO,A1)
【文献】
国際公開第99/011127(WO,A1)
【文献】
特表2016−501912(JP,A)
【文献】
特表2015−517499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 43/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺真菌的有効量の式Iの化合物を施用することを含む、テンサイ植物においてセルコスポラ・ベチコラ(Cercospora beticola)(CERCBE)により起きるテンサイ褐斑病の防除および予防のための方法であって、
施用する前記化合物は追加の殺真菌剤を含まず、
式Iの化合物が100g/haから300g/haの間の比率で施用され、
前記有効量が、テンサイ植物、テンサイ植物に隣接する領域、テンサイ植物の成長を支援するように適合された土壌、テンサイ植物の根、テンサイ植物の葉、および、テンサイ植物を生み出すように適合された種子のうちの少なくとも1つに施用される、方法。
【化4】
【請求項2】
式Iの化合物が農学的に許容される補助剤または担体と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式Iの化合物が、エトキシ化ノニルフェノール、エトキシ化合成または天然アルコール、スルホコハク酸の塩またはエステル、エトキシ化オルガノシリコーン、エトキシ化脂肪族アミン、およびそれらの混合物からなる群より選択される農学的に許容される補助剤界面活性剤と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
農学的に許容される補助剤界面活性剤が、鉱物油、植物油、またはそれらの混合物とさらにブレンドされる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式Iの化合物が、0.01パーセントv/vから1.0パーセントv/vまでの農学的に許容される補助剤界面活性剤と混合される、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンサイ褐斑病を殺真菌的有効量の式Iの化合物によって防除するための新たな方法に関する。
【0002】
【化1】
【背景技術】
【0003】
テンサイは、糖の生産を含む多様な目的のために商業的に栽培されている。褐斑病は、真菌(セルコスポラ・ベチコラ(Cercospora beticola))により起きるものであり、テンサイ作物をしばしば攻撃する病害の一種である。真菌は通常、分生子殻を含む黒色の同心円を特徴とする。真菌は、最終的に葉の組織の壊死につながることがよくある。テンサイ褐斑病が流行すると、あらゆるテンサイ作物で不作が直接起きてきた。褐斑病の病原体により起きる損傷からテンサイを含む植物を保護するための追加用のかつ/またはより有効な作用物質が必要とされている。
【0004】
殺真菌剤は、真菌により起きる損害から植物を保護するように作用する天然または合成由来の化合物である。現行の農業方法は、殺真菌剤の使用に非常に依存している。実際、いくつかの作物は、殺真菌剤の使用なしでは有用に成長することができない。殺真菌剤を使用すると、栽培者は、作物の収量および品質を向上し、その結果、作物の価値を向上することができるようになる。大抵の状況では、作物の価値の向上は、殺真菌剤の使用のコストの少なくとも3倍の価値がある。
【0005】
テンサイ褐斑病を防除するために使用されるいくつかの殺真菌剤がある。これらの殺真菌剤は、アゾキシストロビンとジフェノコナゾールの両方を含む。アゾキシストロビンは、メチル(αE)−2−[[6−(2−シアノフェノキシ)−4−ピリミジニル]オキシ]−α−(メトキシメチレン)ベンゼンアセテートの一般名である。ジフェノコナゾールは、1H−1,2,4−トリアゾール,1−((2−(2−クロロ−4−(4−クロロフェノキシ)フェニル)−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)メチル)−の一般名である。それらの殺真菌活性は、The Pesticide Manual, Fourteenth Edition, 2006で記述されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
残念ながら、場合によっては公知の褐斑病用殺真菌剤が十分に有効ではないこともあるし、またはその他の有害な効果を及ぼす恐れもある。したがって、テンサイ作物における褐斑病を防除する新たな方法を発見することが有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
有利なことに、新たな方法が発見された。一実施形態において、本発明は、テンサイ植物においてセルコスポラ・ベチコラ(Cercospora beticola)(CERCBE)により起きるテンサイ褐斑病の防除および予防のための新たな方法に関する。本方法は、殺真菌的有効量の式Iの化合物を施用することを含む。
【0008】
【化2】
【0009】
上記有効量は、植物、植物に隣接する領域、植物の成長を支援するように適合された土壌、植物の根、植物の葉、および、植物を生み出すように適合された種子のうちの少なくとも1つに施用される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、殺真菌的有効量の式Iの化合物を施用することに関する。
【0012】
上記有効量は、植物、植物に隣接する領域、植物の成長を支援するように適合された土壌、植物の根、植物の葉、および、植物を生み出すように適合された種子のうちの少なくとも1つに施用される。
【0013】
本明細書において使用されるとき、「殺真菌的有効量」という用語は、「真菌を防除または低減するのに有効な量」という語句と同義であり、真菌の成長、増殖、分裂、生殖、または蔓延を消滅または著しく阻害する量の殺真菌性組成物との関連で使用される。
【0014】
式Iの化合物を施用する比率は、特定の組成物、防除しようとする特定種類の真菌、必要とされる防除の程度、ならびに施用のタイミングおよび/または方法に依存する。一般に、式Iの化合物の殺真菌的有効量には、式Iを含む組成物、すなわち式I型組成物をテンサイ作物に、少なくとも約50グラム毎ヘクタール(g/ha)、または少なくとも約60グラム毎ヘクタール、または少なくとも約75グラム毎ヘクタール、または少なくとも約90グラム毎ヘクタール、または少なくとも約100グラム毎ヘクタールの施用比率で施用することが含まれ得る。一方、式Iの化合物の殺真菌的有効量には、本組成物中の活性成分の総量に基づいて、最大で約2300g/haにもなる、または約800g/haにもなる、または約300g/haにもなる、または約250g/haにもなる、または約200g/haにもなる施用比率で式Iの化合物を施用することが含まれ得る。しばしば、式Iの化合物は、約100g/haから約300g/haの間の比率で施用され得る。
【0015】
本発明の式I型組成物は、単独で施用することもできるし、または、多成分殺真菌系(multipart fungicidal system)の一部として施用することもできる。多成分系の一部になっている場合、式I型組成物は、1つまたは複数のその他の殺真菌剤と一緒に施用して、より多様な望ましくない病害を防除することができる。その他の殺真菌剤(単数または複数)と一緒に使用された場合、式Iは、その他の殺真菌剤(単数または複数)と調合することもできるし、その他の殺真菌剤(単数または複数)とタンク混合することもできるし、またはその他の殺真菌剤(単数または複数)と順次施用することもできる。このようなその他の殺真菌剤は、2−(チオシアナトメチルチオ)−ベンゾチアゾール、2−フェニルフェノール、8−ヒドロキシキノリンスルフェート、アメトクトラジン、アミスルブロム、アンチマイシン、アンペロミセス・キスクアリス(Ampelomyces quisqualis)、アザコナゾール、アゾキシストロビン、枯草菌(Bacillus subtilis)、枯草菌(Bacillus subtilis)株QST713、ベナラキシル、ベノミル、ベンチアバリカルブ−イソプロピル、ベンジルアミノベンゼン−スルホネート(BABS)塩、ビカルボネート、ビフェニル、ビスメルチアゾール、ビテルタノール、ビキサフェン、ブラスチシジン−S、ホウ砂、ボルドー混合物(Bordeaux mixture)、ボスカリド、ブロムコナゾール、ブピリメート、カルシウムポリスルフィド、カプタホール、カプタン、カルベンダジム、カルボキシン、カルプロパミド、カルボン、クラザフェノン、クロロネブ、クロロタロニル、クロゾリネート、コニオチリウム・ミニタンス(Coniothyrium minitans)、水酸化銅、オクタン酸銅、酸塩化銅、硫酸銅、硫酸銅(三塩基性)、亜酸化銅、シアゾファミド、シフルフェナミド、シモキサニル、シプロコナゾール、シプロジニル、ダゾメット、デバカルブ、ジアンモニウムエチレンビス−(ジチオカルバメート)、ジクロフルアニド、ジクロロフェン、ジクロシメット、ジクロメジン、ジクロラン、ジエトフェンカルブ、ジフェノコナゾール、ジフェンゾコートイオン、ジフルメトリム、ジメトモルフ、ジモキシストロビン、ジニコナゾール、ジニコナゾール−M、ジノブトン、ジノカップ、ジフェニルアミン、ジチアノン、ドデモルフ、ドデモルフアセテート、ドジン、ドジン遊離塩基、エジフェンホス、エネストロビン、エネストロブリン、エポキシコナゾール、エタボキサム、エトキシキン、エトリジアゾール、ファモキサドン、フェナミドン、フェナリモール、フェンブコナゾール、フェンフラム、フェンヘキサミド、フェノキサニル、フェンピクロニル、フェンプロピジン、フェンプロピモルフ、フェンピラザミン、フェンチン、フェンチンアセテート、フェンチンヒドロキシド、フェルバム、フェリムゾン、フルアジナム、フルジオキソニル、フルモルフ、フルオピコリド、フルオピラム、フルオロイミド、フルオキサストロビン、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルスルファミド、フルチアニル、フルトラニル、フルトリアホール、フルキサピロキサド、ホルペット、ホルムアルデヒド、ホセチル、ホセチル−アルミニウム、フベリダゾール、フララキシル、フラメトピル、グアザチン、グアザチンアセテート、GY−81、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサコナゾール、ヒメキサゾール、イマザリル、イマザリルスルフェート、イミベンコナゾール、イミノクタジン、イミノクタジントリアセテート、イミノクタジントリス(アルベシレート)、ヨードカルブ、イプコナゾール、イプフェンピラゾロン、イプロベンホス、イプロジオン、イプロバリカルブ、イソプロチオラン、イソピラザム、イソチアニル、カスガマイシン、カスガマイシンヒドロクロリド水和物、クレソキシム−メチル、ラミナリン、マンコッパー(mancopper)、マンコゼブ、マンジプロパミド、マネブ、メフェノキサム、メパニピリム、メプロニル、メプチル−ジノカップ、塩化水銀(II)、酸化水銀(II)、塩化水銀(I)、メタラキシル、メタラキシル−M、メタム、メタム−アンモニウム、メタム−カリウム、メタム−ナトリウム、メトコナゾール、メタスルホカルブ、ヨウ化メチル、メチルイソチオシアネート、メチラム、メトミノストロビン、メトラフェノン、ミルジオマイシン、ミクロブタニル、ナバム、ニトロタール−イソプロピル、ヌアリモール、オクチリノン、オフラセ、オレイン酸(脂肪酸)、オリサストロビン、オキサジキシル、オキシン−銅、オキスポコナゾールフマレート、オキシカルボキシン、ペフラゾエート、ペンコナゾール、ペンシクロン、ペンフルフェン、ペンタクロロフェノール、ペンタクロロフェニルラウレート、ペンチオピラド、酢酸フェニル水銀、ホスホン酸、フタリド、ピコキシストロビン、ポリオキシンB、ポリオキシン類、ポリオキソリム、重炭酸カリウム、カリウムヒドロキシキノリンスルフェート、プロベナゾール、プロクロラズ、プロシミドン、プロパモカルブ、塩酸プロパモカルブ、プロピコナゾール、プロピネブ、プロキナジド、プロチオコナゾール、ピラクロストロビン、ピラメトストロビン、ピラオキシストロビン、ピラゾホス、ピリベンカルブ、ピリブチカルブ、ピリフェノックス、ピリメタニル、ピリオフェノン、ピロキロン、キノクラミン、キノキシフェン、キントゼン、オオイタドリ抽出物(Reynoutria sachalinensis extract)、セダキサン、シルチオファム、シメコナゾール、ナトリウム2−フェニルフェノキシド、重炭酸ナトリウム、ナトリウムペンタクロロフェノキシド、スピロキサミン、硫黄、SYP−Z048、タール油、テブコナゾール、テブフロキン、テクナゼン、テトラコナゾール、チアベンダゾール、チフルザミド、チオファネート−メチル、チウラム、チアジニル、トルクロホス−メチル、トリルフルアニド、トリアジメホン、トリアジメノール、トリアゾキシド、トリシクラゾール、トリデモルフ、トリフロキシストロビン、トリフルミゾール、トリホリン、トリチコナゾール、バリダマイシン、バリフェナレート、バリフェナール、ビンクロゾリン、ジネブ、ジラム、ゾキサミド、カンジダ・オレオフィラ(Candida oleophila)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、グリオクラジウム属種(Gliocladium spp.)、フレビオプシス・ギガンテア(Phlebiopsis gigantea)、ストレプトミセス・グリセオビリジス(Streptomyces griseoviridis)、トリコデルマ属種(Trichoderma spp.)、(RS)−N−(3,5−ジクロロフェニル)−2−(メトキシメチル)−スクシンイミド、1,2−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロアセトン水和物、1−クロロ−2,4−ジニトロナフタレン、1−クロロ−2−ニトロプロパン、2−(2−ヘプタデシル−2−イミダゾリン−1−イル)エタノール、2,3−ジヒドロ−5−フェニル−1,4−ジチ−イン1,1,4,4−テトラオキシド、2−メトキシエチル水銀アセテート、2−メトキシエチル水銀クロリド、2−メトキシエチル水銀シリケート、3−(4−クロロフェニル)−5−メチルローダニン、4−(2−ニトロプロパ−1−エニル)フェニルチオシアナテーム、アンプロピルホス、アニラジン、アジチラム、バリウムポリスルフィド、バイエル32394(Bayer 32394)、ベノダニル、ベンキノックス、ベンタルロン、ベンザマクリル、ベンザマクリル−イソブチル、ベンザモルフ、ビナパクリル、ビス(メチル水銀)スルフェート、ビス(トリブチルスズ)オキシド、ブチオベート、クロム酸硫酸亜鉛銅カルシウムカドミウム、カルバモルフ、CECA、クロベンチアゾン、クロラニホルメタン、クロルフェナゾール、クロルキノックス、クリンバゾール、銅ビス(3−フェニルサリチレート)、クロム酸銅亜鉛、クフラネブ、硫酸ヒドラジニウム銅(II)、クプロバム、シクラフラミド、シペンダゾール、シプロフラム、デカフェンチン、ジクロン、ジクロゾリン、ジクロブトラゾール、ジメチリモール、ジノクトン、ジノスルホン、ジノテルボン、ジピリチオン、ジタリムホス、ドジシン、ドラゾキソロン、EBP、ESBP、エタコナゾール、エテム、エチリム、フェナミノスルフ、フェナパニル、フェニトロパン、フルオトリマゾール、フルカルバニル、フルコナゾール、フルコナゾール−シス、フルメシクロックス、フロファネート、グリオジン、グリセオフルビン、ハラクリネート、ハーキュリーズ3944(Hercules 3944)、ヘキシルチオホス、ICIA0858、イソパムホス、イソバレジオン、メベニル、メカルビンジド、メタゾキソロン、メトフロキサム、メチル水銀ジシアンジアミド、メトスルホバックス、ミルネブ、ムコクロル酸無水物、ミクロゾリン、N−3,5−ジクロロフェニル−スクシンイミド、N−3−ニトロフェニルイタコンイミド、ナタマイシン、N−エチルメルクリオ−4−トルエンスルホンアニリド、ニッケルビス(ジメチルジチオカルバメート)、OCH、フェニル水銀ジメチルジチオカルバメート、フェニル水銀ニトレート、ホスジフェン、プロチオカルブ、塩酸プロチオカルブ、ピラカルボリド、ピリジニトリル、ピロキシクロル、ピロキシフル、キナセトール、硫酸キナセトール、キナザミド、キンコナゾール、ラベンザゾール、サリチルアニリド、SSF−109、スルトロペン、テコラム、チアジフルオール、チシオフェン、チオクロルフェンヒム、チオファネート、チオキノックス、チオキシミド、トリアミホス、トリアリモール、トリアズブチル、トリクラミド、ウルバシド、ザリラミド、およびそれらの任意の組合せを含み得る。
【0016】
式Iの化合物は、所望ならば植物学的に許容される担体と一緒にした形態で施用することもできる。
【0017】
濃縮された配合物を施用のために水もしくはその他の液体に分散させることもできるし、または、配合物を粉末状もしくは粒状にすることもでき、その後は、さらなる処理なしでも施用することができる。配合物は、農芸化学分野において慣例となっている手法に従って調製されるが、該配合物は、その内部の抗真菌組成物の存在のため新規かつ重要である。
【0018】
最も頻繁に施用される配合物は、水性懸濁液またはエマルションである。このような水溶性、水懸濁性、または乳化性のいずれかの配合物は、水和剤として一般的に知られている固体であり、または、乳剤、水性懸濁液、もしくは懸濁製剤として一般的に知られている液体である。本発明は、それにより本方法における殺真菌剤としての送達および使用のために式Iの化合物を配合できるようになるすべての媒体を企図している。
【0019】
容易に理解されることではあろうが、式Iを含む組成物を添加し得る任意の材料を、それらが抗真菌剤としての活性を顕著に妨害することなく所望の効用をもたらすことを条件に用いることができる。
【0020】
水和剤は、圧縮すると顆粒水和剤を形成できるものであり、式Iの組成物と、担体と、農学的に許容される界面活性剤との均一混合物を含む。水和剤中における組成物の濃度は通常、配合物の総重量に基づいて、約10重量%から約90重量%までであり、より好ましくは約25重量%から約75重量%までである。水和剤配合物の調製において、組成物は、プロフィライト(prophyllite)、タルク、チョーク、石膏、フラー土、ベントナイト、アタパルジャイト、デンプン、カゼイン、グルテン、モンモリロナイト粘土、珪藻土、精製シリケート等のような、微細に分割された任意の固体とコンパウンドすることができる。このような操作中、微細に分割された担体が粉砕され、または、揮発性有機溶媒中の組成物と混合される。有効な界面活性剤は、水和剤のうち約0.5重量%から約10重量%を占めており、スルホン化リグニン、ナフタレンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルフェート、および、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0021】
式I型組成物の乳剤は、乳剤配合物の総重量に基づいて、適切な液体中において約10重量%から約50重量%まで等の好都合な濃度を占める。組成物の諸成分は、一緒または別々にして、水混和性溶媒、または非水混和性有機溶媒と乳化剤との混合物のいずれかである担体中に溶解される。製剤は、水および油で希釈して、水中油型エマルションの形態のスプレー用混合物を形成することもできる。有用な有機溶媒は、芳香族化合物、特に重質芳香族ナフサ等の石油の高沸点なナフタレン部分およびオレフィン部分を含む。たとえばロジン誘導体を含むテルペン系溶媒、シクロヘキサノン等の脂肪族ケトン、および2−エトキシエタノール等の複合アルコールのようなその他の有機溶媒を用いることもやはり可能である。
【0022】
本明細書において有利に用いられ得る乳化剤は、当業者ならば容易に決定することができ、様々な非イオン性、アニオン性、カチオン性および両性の乳化剤、または2種以上の乳化剤のブレンドを含む。乳剤の調製に有用な非イオン性乳化剤の例は、ポリアルキレングリコールエーテル、ならびに、アルキルおよびアリールフェノール、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、または脂肪酸と、エチレンオキシド、プロピレンオキシドとの縮合生成物、たとえばエトキシ化アルキルフェノール、およびポリオールまたはポリオキシアルキレンで可溶化されたカルボン酸エステルを含む。カチオン性乳化剤は、第四級アンモニウム化合物および脂肪族アミンの塩を含む。アニオン性乳化剤は、アルキルアリールスルホン酸の油溶性塩(たとえばカルシウム)、硫酸化ポリグリコールエーテルの油溶性塩、およびリン酸化ポリグリコールエーテルの適切な塩を含む。
【0023】
本発明の乳剤の調製に用いることができる代表的な有機液体は、キシレン、プロピルベンゼン画分、または混合されたナフタレン画分等の芳香族液体、鉱物油、フタル酸ジオクチル等の置換された芳香族有機液体、ケロシン、様々な脂肪酸のジアルキルアミド、特に、脂肪族グリコールおよびジエチレングリコールのn−ブチルエーテル、エチルエーテルまたはメチルエーテル等のグリコール誘導体のジメチルアミド、ならびにトリエチレングリコールのメチルエーテルである。2種以上の有機液体の混合物もまた、しばしば乳剤の調製に適切に用いられる。好ましい有機液体は、キシレン、およびプロピルベンゼン画分であり、キシレンが最も好ましい。界面活性分散剤は通常、分散剤と式I型組成物とを合わせた重量のうちの0.1重量パーセントから20重量パーセントまでの量で液体配合物中に用いられる。この配合物はまた、その他の適合する添加剤、たとえば、植物成長調節剤および農業に用いられるその他の生物学的に活性な化合物も含み得る。
【0024】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤配合物の総重量に基づいて約5重量%から約70重量%までの範囲の濃度で水性媒体中に分散された、1つまたは複数の非水溶性化合物の懸濁液を含む。懸濁液は、式I型組成物を微細に粉砕し、粉砕した材料を、水および上述したのと同じ種類から選択される界面活性剤からなる媒体中に激しく混合することにより調製される。無機塩および合成または天然のゴム等のその他の成分を加えて、水性媒体の密度および粘度を増大させることもまた可能である。しばしば、水性混合物を調製してそれをサンドミル、ボールミル、またはピストン型ホモジナイザー等の器具中で均質化することにより、同時に粉砕および混合することが最も有効である。
【0025】
式I型組成物はまた、土壌への施用に特に有用な粒状配合物としても施用することができる。粒状配合物は通常、粗く分割されたアタパルジャイト、ベントナイト、珪藻土、粘土または高価でない同様の物質から全体または大部分がなる担体中に分散された、粒状配合物の総重量に基づいて約0.5重量%から約10重量%までの上記化合物を含有する。このような配合物は通常、式I型組成物を適切な溶媒中に溶解させて、それを、約0.5mmから約3mmまでの範囲の適切な粒径に予め成形された粒状担体に施用することにより調製される。このような配合物はまた、担体と式I型組成物とのドウ(dough)またはペーストを作製し、破砕して乾燥させて所望の粒状粒子を得ることにより調製することもできる。
【0026】
式I型組成物を含有する粉剤は、粉末化された形態の式I型組成物と、たとえばカオリン粘土、粉砕された火山岩等のような適切な粉剤状農学的担体とを均一に混合することにより簡便に調製される。粉剤は、適切には、約1重量%から約10重量%までの式I型組成物/担体の組合せを含有し得る。
【0027】
上記配合物は、標的の作物および有機体への式I型組成物の沈着、湿潤および浸透を増強するため、農学的に許容される補助剤界面活性剤を含有していてもよい。これらの補助剤界面活性剤は、場合により、配合物の成分またはタンクミックスとして用いることもできる。補助剤界面活性剤の量は、水の散布量に基づいて0.01パーセントv/vから1.0パーセントv/vまで変動し、好ましくは0.05パーセントから0.5パーセントまで変動する。適切な補助剤界面活性剤は、エトキシ化ノニルフェノール、エトキシ化合成または天然アルコール、スルホコハク酸の塩またはエステル、エトキシ化オルガノシリコーン、エトキシ化脂肪族アミン、および界面活性剤と鉱物油または植物性油とのブレンドを含む。
【0028】
上記配合物は、場合により、少なくとも1重量%の式I型組成物の1つまたは複数を別の殺有害生物性化合物とともに含み得る組合せを含んでいてもよい。このような追加用の殺有害生物性化合物は、施用のために選択された媒質中の本発明の式I型組成物と適合し、かつ本化合物の活性に対して拮抗性でない殺真菌剤、殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、殺節足動物剤、殺細菌剤またはそれらの組合せであってよい。したがって、このような実施形態では、その他の殺有害生物性化合物が、同じまたは異なる殺有害生物的な使用のための補強用有毒物質として用いられる。殺有害生物性化合物および式I型組成物は通常、1:100から100:1までの重量比で一緒に混ぜ合わせることができる。
【0029】
本発明は、その範囲内に、真菌による攻撃の防除または予防のための方法を含む。これらの方法は、殺真菌的有効量の式I型組成物を、真菌の場所または蔓延を予防しようとする場所に施用すること(たとえばテンサイへの施用)を含む。式I型組成物は、低い植物毒性を示しながらも、殺真菌的レベルでの様々な植物の処理に適している。式I型組成物は、防除剤または根絶剤(eradicant)として有用である。式I型組成物は、種々の公知の技術のうちのいずれかにより、式I型組成物または式I型組成物を含む配合物のいずれかとして施用され得る。たとえば、式I型組成物は、植物の商業的価値を損なうことなく、様々な真菌の防除のために植物の根、種子または葉に施用することができる。式I型組成物は、一般的に使用される配合物の種類のうちのいずれかの形態で施用され得、たとえば、溶液、粉剤、水和剤、フロアブル製剤または、乳剤として施用され得る。これらの材料は、様々な公知の方式で好都合に施用される。
【0030】
式I型組成物は、特に農業的な使用に関して顕著な殺真菌作用を有することが見出された。式I型組成物は、農業作物および園芸植物への使用に特に有効である。特に、式I型組成物は、たとえばセルコスポラ・ベチコラ(Cercospora beticola)により起きるテンサイ褐斑病の予防もしくは治療またはその両方を行うことができる。同様に、式I型組成物は時には、たとえば担子菌綱(Basidiomycetes)および/または子嚢菌綱(Ascomycetes)を含む広範な範囲の真菌により起きるその他の病害の予防もしくは治療またはその両方を行うことができる。
【0031】
式I型組成物は、殺真菌剤として広範な範囲の効力を有する。施用される式I型組成物の正確な量は、諸成分の相対量だけでなく、所望される特定の作用、防除しようとする特定の真菌、およびそれらの成長の段階、ならびに式I型組成物と接触させる植物またはその他の製品の部分にも依存する。したがって、式I型組成物を含有する配合物は、同様の濃度においてまたは同じ真菌種に対して、同等に有効ではないこともあり得る。
【0032】
式I型組成物は、病害を阻害しかつ植物学的に許容される量にしての植物への使用に有効である。「病害を阻害しかつ植物学的に許容される量」という用語は、防除が所望されている植物病害を消滅または阻害するが植物に対して顕著に有毒ではない式I型組成物の量を指す。この量は通常、約1から約1000ppmまでであり、約2ppmから約500ppmまでが好ましい。必要とされる式I型組成物の正確な濃度は、防除しようとする真菌病、用いる配合物の種類、施用の方法、特定の植物種、気候条件等に伴って変動する。式I型組成物の適切な施用比率は、典型的には、約0.10から約4ポンド/エーカー(約0.1から0.45グラム/平方メートルg/m
2)に相当する。
【0033】
本組成物は、従来の地面用散布器(ground sprayer)、散粒器の使用、および当業者に公知なその他の従来手段により、真菌またはそれらの場所に施用することができる。
【0034】
下記の例は、本発明をさらに例示するために提供されている。これらは、本発明を限定していると解釈されることは意図していない。
【実施例】
【0035】
セルコスポラ・ベチコラ(Cercospora beticola)(CERCBE)により起きるテンサイ褐斑病に対しての殺真菌剤混合物の防除剤活性の評価。テンサイ植物(品種「HH88」)を無土壌型Metro mix中で成長させ、試験前には、定期的に切り整えて一様な植物のサイズを維持した。播種物を調製するために、乾燥した発病済みテンサイ葉を湿箱(moist chamber)に終夜入れておいて、胞子形成を促進した。蒸留水で葉をすすぎ洗いして胞子を除き、チーズクロスでろ過して植物の残骸を除去し、次いで胞子4×10
4個/mlに調整した。Tween20を100ml当たり3滴加えた。テンサイ実生には、殺真菌剤処理の3日前または殺真菌剤処理の4から5日後に播種した。播種済み植物を22℃の露箱(dew chamber)内に48hr保持しておき、次いで、病害の症状が完全に発現するまで、24℃に設定した温室内にて透明なプラスチック製フードの下でインキュベートした。病害重症度を、処理済み植物と未処理植物の両方について評価した。
【0036】
効力の例に関しては下記の殺真菌剤を使用した:
【0037】
【表1】
【0038】
様々な配合物の効力を下記の表に示しており、ここで、値は、病害重症度のパーセントである。すべての比率および反復試行にわたる因子分析の結果。同じ文字の値同士には有意な差異がない(P=0.05)。
【0039】
【表2】
【0040】
上記の記述は、どのように本発明を実践するかを当業者に教示するという目的のためのものであり、当業者ならば上記の記述を読めば明らかになるすべての明白な本発明の修正および変形を詳述するように意図されてはいない。しかしながら、すべてのこのような明白な修正および変形は、下記の特許請求の範囲により規定されている本発明の範囲内に含まれることが意図されている。特許請求の範囲は、文脈から逆の事柄が特に指し示されていない限り、特許請求の範囲で意図されている目的を満たすのに有効な任意の順序になっている特許請求の範囲に記載の成分およびステップを包摂するように意図されている。