特許第6407171号(P6407171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6407171分岐側鎖を有するポリカルボキシレートエーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407171
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】分岐側鎖を有するポリカルボキシレートエーテル
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20181004BHJP
   C08G 65/332 20060101ALI20181004BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20181004BHJP
   C04B 28/14 20060101ALI20181004BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C08F290/06
   C08G65/332
   C04B28/02
   C04B28/14
   C04B24/26 B
   C04B24/26 E
   C04B24/26 F
   C04B24/26 H
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-560597(P2015-560597)
(86)(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公表番号】特表2016-510081(P2016-510081A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】EP2014052085
(87)【国際公開番号】WO2014135318
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2017年2月1日
(31)【優先権主張番号】13158019.3
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503343336
【氏名又は名称】コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム デングラー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ラビー アル−ヘラニ
(72)【発明者】
【氏名】アンナ ミュラー−クリスタドーロ
(72)【発明者】
【氏名】ズィルケ フラクス−タウベ
(72)【発明者】
【氏名】ニコレッタ ヅェミニアン
(72)【発明者】
【氏名】イダ ロス
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−124210(JP,A)
【文献】 特公昭59−018338(JP,B1)
【文献】 特開2007−238387(JP,A)
【文献】 特表2012−532975(JP,A)
【文献】 特開2006−306716(JP,A)
【文献】 特開2011−132364(JP,A)
【文献】 特表2012−530160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00−290/14
C04B 24/26
C04B 28/02
C04B 28/14
C08G 65/00−67/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合された形態でコモノマーとして、
(A)少なくとも一つのエチレン性不飽和酸モノマー、
(B)一般式E−Vkk+1
[式中、Eは、少なくとも一つのエーテル構造単位、カルボン酸エステル構造単位又はカルボキサミド構造単位を含む、エチレン性不飽和構造単位であり、
Vは、式−CH(CH2O−)2の分岐構造単位であり、及び
Lは、式−[A1O]l−A2(式中、A1はそれぞれ独立してC2〜C10アルキレン、C6〜C10アリーレン及び/又はC7〜C10アラルキレン、好ましくは−C24−から選択され、A2はそれぞれ独立してC1〜C30アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C30アリール及び/又はC7〜C30アラルキル、好ましくはC1〜C4アルキルから選択され、lはそれぞれ独立して1〜350、好ましくは2〜100、より具体的には5〜70、及び更に好ましくは7〜17の整数である)の直鎖状構造単位であり、
kは〜7、好ましくは〜3の整数である]の少なくとも一つのエチレン性不飽和分岐ポリエーテルマクロモノマー
を含む、コポリマーの無機結合剤を分散させるための使用。
【請求項2】
前記無機結合剤が、セメント、より具体的にはポルトランドセメント及びアルミネートセメント、アルファ硫酸カルシウム半水和物、ベータ硫酸カルシウム半水和物、硬石こう、及び石灰、工業用及び合成スラグ、より具体的には高炉スラグ、スラグ砂、粉砕スラグ砂、電熱リンスラグ及びステンレス鋼スラグ、ポゾラン結合剤、より具体的にはフライアッシュ、好ましくは褐炭フライアッシュ及び鉱物石炭フライアッシュ、マイクロシリカ、メタカオリン、天然ポゾラン、より具体的には凝灰岩、トラス及び火山灰、天然及び合成ゼオライト、焼成オイルシェール、並びにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
少なくとも一つの共重合されたエチレン性不飽和酸モノマー(A)が、以下の構造単位(Ia)〜(Id)のうち一つの形態でコポリマー中に存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【化1】
[式中、R1はそれぞれ独立してH、非分岐及び/又は分岐C1〜C4アルキル基から選択され、
Xはそれぞれ独立して単結合、−NH−(Cm2m)−及び/又は−O−(Cm2m)−(式中、mは1〜4の整数である)から選択され、
2はそれぞれ独立して−OM1/q、−SO31/q、−PO32/q、−O−PO32/q、−C64−SO31/q、−C64−PO32/q及び/又は−C64−OPO32/q(式中、MはH、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム及び/又は第一遷移系列の金属から選択され、及びqはMの電荷数を表す)から選択されるが、ただし、Xが単結合の場合、R2は−OM1/qで表される]、
【化2】
[式中、R3はR1について上記で与えられた意味を有し、
nは0〜4の整数であり、
4はそれぞれ独立して−SO31/q、−PO32/q、−O−PO32/q及び/又は−C64−SO31/q(式中、M及びqは上記の意味を有する)から選択される]、
【化3】
[式中、R5はR1について上記で与えられた意味を有し、
Zはそれぞれ独立して−O−及び/又は−NH−から選択される]、
【化4】
[式中、R6はR1について上記で与えられた意味を有し、
QはXについて上記で与えられた意味を有し、及び
7はR2について上記で与えられた意味を有する]。
【請求項4】
式(Ia)中で、
1はH又はメチルであり、
Xはそれぞれ独立して−NH−(Cm2m)−及び−O−(Cm2m)−、及び好ましくは−O−(C24)−又は−NH−(C(CH32CH2)−から選択され、並びに
2は−O−PO32/q又は−O−SO31/q(式中、m、M及びqは上記で与えられた意味を有する)であることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
一種以上の酸モノマー(A)は、(メタ)アクリル酸及びその塩、マレイン酸、マレイン酸のモノエステル、マレイン酸のモノアミド及びマレイン酸の塩、無水マレイン酸及び/又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸リン酸エステル及びその塩から選択されることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記コポリマーは、追加のコモノマーとして、共重合された形態で、一般式E−L[式中、E及びLは、上記で与えられた意味を有する]の非分岐ポリエーテルマクロモノマーを含むことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記構造単位Eは、それぞれ独立してビニルエーテル単位、アリルエーテル単位、イソプレニルエーテル単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、(メタ)アクリルアミド単位、マレイン酸モノエステル単位及び/又はマレイン酸モノアミド単位から選択されることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記エチレン性不飽和構造単位Eは、E*−S[式中、E*はそれぞれ独立してビニルエーテル単位、アリルエーテル単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、及び/又はマレイン酸モノエステル単位から選択され、並びにSは(ポリ)アルキレングリコール単位−[A3O]m−(式中、A3はそれぞれ独立してC2〜C10アルキレン、C6〜C10アリーレン及び/又はC7〜C10アラルキレンから選択され、A3は−C24−であることが好ましく、並びにmはそれぞれ独立して1〜50、好ましくは2〜40、特に好ましくは5〜25の整数である)である]の形態で存在することを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の使用。
【請求項9】
1はそれぞれ独立して、式−[A1O]lの全ての構造単位を基準にして60モル%を超える程度で−C24−の形態で存在し、
2はそれぞれ独立してC1〜C4アルキルから選択され、
kは〜3の整数であり、及び
lはそれぞれ独立して2〜100の整数であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記酸モノマー(A)のポリエーテルマクロモノマー(B)に対するモル比は20/1〜1/1、好ましくは15/1〜1.5/1、及びより好ましくは10/1〜3/1であることを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記コポリマーが、エチレン性不飽和酸モノマー(A)及びエチレン性不飽和ポリエーテルマクロモノマー(B)の存在下でラジカル重合により得られ、こうして合計でコポリマーの全ての構造単位の少なくとも45モル%、好ましくは少なくとも80モル%が酸モノマー(A)及びポリエーテルマクロモノマー(B)の共重合によって製造されていることを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載の使用。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項で定義されるコポリマーを含む、無機結合剤用の分散剤。
【請求項13】
無機結合剤、好ましくはセメント、及び請求項12に記載の分散剤を含む建築材料混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
共重合された形態でコモノマーとして、
(A)少なくとも一つのエチレン性不飽和酸モノマー、
(B)一般式E−Vkk+1
[式中、Eは、少なくとも一つのエーテル構造単位、カルボン酸エステル構造単位又はカルボキサミド構造単位を含む、エチレン性不飽和構造単位であり、
Vは、式−CH(CH2O−)2の分岐構造単位であり、
Lは、式−[A1O]l−A2(式中、A1はそれぞれ独立してC2〜C10アルキレン、C6〜C10アリーレン及び/又はC7〜C10アラルキレン、好ましくは−C24−から選択され、A2はそれぞれ独立してC1〜C30アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C30アリール及び/又はC7〜C30アラルキル、好ましくはC1〜C4アルキルから選択され、lはそれぞれ独立して1〜350、好ましくは2〜100、より具体的には5〜70、及び更に好ましくは7〜17の整数である)の直鎖状構造単位であり、
kは1〜7、好ましくは1〜3の整数である]の少なくとも一つのエチレン性不飽和分岐ポリエーテルマクロモノマー
を含むコポリマーの無機結合剤を分散させるための使用に関する。
【0002】
粉末形態の有機物質又は無機物質、例えば粘土、粉砕シリケート、チョーク、カーボンブラック、粉砕岩及び水硬性結合剤の水性スラリーは多くの場合、それらの加工性、すなわち混練性、展延性、噴霧性、圧送性又は流動性を向上させる目的のため、分散剤の形態の混和材と混合されることが知られている。このような混和材は、凝集した固形物を分裂させ、形成された粒子を分散させ、及びこのように流動性を向上させることが可能である。また、この作用は、特に目的とする方法で、水硬性結合剤、例えばセメント、石灰、石膏、硫酸カルシウム半水和物(ベイサナイト)又は硫酸カルシウム無水物(硬石こう)又は潜在水硬性結合剤、例えばフライアッシュ、高炉スラグ若しくはポゾランを含む建築材料混合物の製造において利用される。
【0003】
上記の結合剤に基づいてこれらの建築材料混合物をすぐに使用できる加工可能な形態に変えるためには、一般的に、続いて起こる水和及び硬化プロセスに必要となるであろうバッチ水の量よりも実質的に多くのバッチ水の量が必要となる。後に蒸発する過剰の水によって形成された、コンクリート要素内の空洞部分により、著しく機械的強度および耐性の劣化に至る。
【0004】
所定の加工コンシステンシーにおいてこの過剰な水分を減少させるために、及び/又は所定の水/結合剤比において加工性を改善するために、一般に減水剤または高性能AE減水剤として特定される混和材が使用される。より具体的には、実際にそのような混和材として酸モノマーのポリエーテルマクロモノマーとのラジカル共重合により製造されるコポリマーが使用される。一定の水/セメント値での処理を容易にするために、又は低い水/セメント値の場合に塑性粘度を得るために、コンクリート用可塑剤が他の添加剤と一緒にコンクリートに添加される。これにより例えば、コンクリートの圧送性を向上させること、又は圧縮強度及び密度を高めること、及び硬化時間を短縮することができる。現在、使用されるコンクリート用可塑剤は、リグノスルホネート、スルホン化メラミンホルムアルデヒド樹脂、及びナフタレンホルムアルデヒド樹脂であり、及びポリカルボキシレートでもある。ポリカルボキシレートの例は例えば、マレイン酸及び/又はアクリル酸とポリエーテルマクロモノマー(例えば、アルコキシル化されたビニルエーテル又はアルキルポリアルキレングリコールの(メタ)アクリレートエステル)とのコポリマーである。
【0005】
ポリカルボキシレートエーテル(PCEs)に基づく分散剤は、コンクリート産業の要求に個別に適合できる。これは、コポリマーの化学的組成を変更することにより行われる。PCEsは一般に、炭素原子のポリマー主鎖及びポリエーテル構造を含む側鎖を有する。ポリマー主鎖上に位置するのは酸基である。非常に高品質のコンクリートを得るために、側鎖の長さ及び酸基とポリエーテル側鎖のモル比を変更することができる。
【0006】
プレキャスト部材の作業用のコンクリートの場合、高性能AE減水剤を使用して製造されるセメントにおいて、非常に高い可塑化作用、迅速な凝結、良好な初期強度、及び低粘度を可能にする高性能AE減水剤が必要となる。良好な初期強度と組み合わせられる高い可塑化作用は現在でも利用できるが、WO05/075529 A2の実施例に記載のように、比較的長い(3000g/モルより大きい)ポリエーテル側鎖を有する高性能AE減水剤からのみ得られる。しかし、通常これは、明らかに生コンクリートが高粘度を有する原因となる。この結果、生コンクリート、特に低いw/c値の場合の生コンクリートは、設置するのが非常に困難であり、成形が困難である。結果的に、プレキャスト部材の作業中に、型枠は、確実に高コスト及び複雑性を有して充填できるだけである。
【0007】
圧送可能なコンクリート及びレディミックスコンクリートは、コンクリートが同じコンシステンシーおよび加工性を有する、比較的広い時間ウインドウを必要とする。ここでは混合時間は小さな役割しか果たさない傾向がある一方で、スランプ保持(コンシステンシー保持)はここでは非常に重要である。ポンプ圧力は粘度と相関するため(バッキンガム・ライナー方程式)、及び器具類の機械的な摩耗及びコスト及び複雑性を最小化するため、圧送可能なコンクリートの場合でさえ、長時間の間、粘度は極めて低くあるべきである。プレキャスト部材用コンクリートについて上述したように、生コンクリートが高粘度であると、加工性に非常に有害である。
【0008】
しかし、上述の用途の場合、現在、十分な分散性を特に低いコンクリート粘度と共に兼ね備えた、許容可能な解決手段は存在しない。
【0009】
コンクリート部で比較的、低粘度を提供するコンクリート混和材は例えば、Chryso製のOPTIMA(登録商標)100である。しかし、ポリカルボキシレート技術に基づかないこの分散剤(WO2010/112775 A1に対応する、ホスホン化されたポリエーテル)は、特に低いw/c値において多くの場合、好適な可塑作用を示さないため、その使用が制限される。また、前記製品は多くの場合、遅延特性を有しており、一般的にプレキャスト部材用コンクリートにそれ程、適していない。
【0010】
市場は現在、コンクリート中で高い分散作用、低いコンクリート粘度、及び初期強度の効果的な発現を可能にする分散剤を必要としている。
【0011】
従来技術(US2011/0015361 A1)には、共重合された形態で少なくとも一つのエチレン性不飽和モノカルボン酸又はジカルボン酸及び一般式Iの少なくとも一つの構造単位を有するコポリマーが開示されている。一般式Iは、本発明の分岐ポリエーテルマクロモノマー(B)との間で部分的な重なりを示す。しかし、US2011/0015361 A1は、無機結合剤又はコンクリート中の減水剤としての使用を全く示しておらず、代わりに洗濯洗剤及び洗浄剤(繊維製品部門)の分野並びにまた、化粧品分野における増粘剤としての用途を開示している。
【0012】
本特許出願の課題は、十分な分散作用、及びより具体的にはコンクリートのコンクリート部で低粘度を可能にする、無機結合剤を分散させるための分散剤、より具体的にはセメント系、例えば、コンクリート及びモルタル中で使用するための分散剤を提供することである。
【0013】
本課題は、
共重合された形態でコモノマーとして、
(A)少なくとも一つのエチレン性不飽和酸モノマー、
(B)一般式E−Vkk+1
[式中、パラメータE、V、k及びLは、上記のように定義される]
の少なくとも一つのエチレン性不飽和分岐ポリエーテルマクロモノマー
を含むコポリマーの無機結合剤を分散させるための使用によって解決される。
【0014】
無機結合剤が、セメント、セメント、より具体的にはポルトランドセメント及びアルミネートセメント、アルファ硫酸カルシウム半水和物、ベータ硫酸カルシウム半水和物、硬石こう、及び石灰、工業用及び合成スラグ、より具体的には高炉スラグ、スラグ砂、粉砕スラグ砂、電熱リンスラグ及びステンレス鋼スラグ、ポゾラン結合剤、より具体的にはフライアッシュ、好ましくは褐炭フライアッシュ及び鉱物石炭フライアッシュ、マイクロシリカ、メタカオリン、天然ポゾラン、より具体的には凝灰岩、トラス及び火山灰、天然及び合成ゼオライト、焼成オイルシェール、並びにこれらの混合物から選択されることを特徴とする使用が好ましい。好ましい結合剤は、(ポルトランド)セメントである。本発明の高性能AE減水剤は、一種以上の無機結合剤を基準にして、好ましくは0.1〜1質量%、好ましくは0.2〜0.6質量%で計量供給される。
【0015】
本発明のコポリマー(分散剤)
ポリカルボキシレートエーテルの分散メカニズムに関する限り、概念的に、カルシウムイオンが正電荷を有する結果として、ポリカルボキシレートエーテルの負電荷に帯電した酸基がセメント粒の表面に付着すると仮定する。同様に、親水性のポリエーテル側鎖が優先的にセメント粒から離れて、水でバッチ処理されたセメント性結合剤の親水性間隙水溶液中に向かう。
【0016】
先行技術の直鎖状ポリエーテル側鎖とは対照的に、本発明の分散剤は、少なくとも一分岐又は多分岐ポリエーテル側鎖を含む。同じ分子量の場合、本発明のポリエーテルマクロモノマー(B)は、その立体的なかさ高さの点で確実により大きい。より具体的には、本発明のポリエーテルマクロモノマー(B)は分岐のためより短い。それらは(同じ分子量の場合に)その長さが異なり、意想外にも、これらの構造的な相違が生コンクリートの粘度低下をもたらすことが見出された。これは、相対的に高い可塑化作用及び特に低い粘度(より優れた加工性/圧送性)が得られるという利点を有する。
【0017】
本発明者等は、非分岐、より具体的には長いポリエーテル側鎖を有する従来のPCEsの場合に、その作業の過程で、長い直鎖状ポリエーテル側鎖のお互いの相互作用(「引っ掛かり」)が、得られたコンクリートの高粘度の理由と見なすことができるという仮説に到達した。この相互作用の結果として種々のセメント粒に付着したポリエーテル側鎖間の相互作用も存在し、このようにしてコンクリートのより高い粘度を説明できる。無機結合剤粒子、好ましくはセメント粒子は、あまりよく分散されない。側鎖の長さが長くなるにつれてこの作用が増し、分散されたセメント粒の粒子間の(おそらくPCEsにより媒介された)相互作用はより強くなり、その現象は巨視物理学的にコンクリートの粘度増加を示した。
【0018】
以下の文章では、酸モノマー(A)及びポリエーテルマクロモノマー(B)から構成される本発明の分散剤をより詳細に説明する。
【0019】
酸モノマー(A)
エチレン性不飽和酸モノマー(A)の可能な例として、カルボン酸モノマー、特にモノカルボン酸又はジカルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、ホスホン酸モノマー及び/又はリン酸エステルモノマーが挙げられる。リン酸エステルモノマーの中で、リン酸モノエステルモノマーが好ましく、及びリン酸ジエステルモノマーを利用することもできる。カルボン酸モノマー及びリン酸エステルモノマーが好ましい;スルホン酸モノマーは、あまり好ましくない。上記の酸モノマーは、(例えば、アルカリ金属系アルカリ、又はアルカリ土類金属系アルカリ、アンモニア、有機アミン等のアルカリによる)その(部分的な)中和形態及びその酸形態の両方で使用して良い。互いに独立して一種以上のエチレン性不飽和酸モノマーを使用することができる。酸モノマー(A)は、好ましくはモノエチレン性不飽和である。
【0020】
好適なモノエチレン性不飽和ジカルボン酸の例は、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及び上記化合物の二種以上の混合物であり、それぞれの塩を含む。また、無水物形態で使用できるマレイン酸が特に好ましい。
【0021】
好適なモノエチレン性不飽和カルボン酸モノマーは、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、並びに(E)及び(Z)クロトン酸である。(メタ)アクリル酸が好ましい;アクリル酸が特に好ましい。
【0022】
また、一種以上のモノエチレン性不飽和モノカルボン酸及び一種以上のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸の使用が好ましい;マレイン酸及びアクリル酸の使用が特に好ましい。
【0023】
少なくとも一つの共重合したエチレン性不飽和酸モノマー(A)が、下記構造単位(Ia)〜(Id)
【化1】
[式中、R1はそれぞれ独立してH、非分岐及び/又は分岐C1〜C4アルキル基から選択され、
Xはそれぞれ独立して単結合、−NH−(Cm2m)−及び/又は−O−(Cm2m)−(式中、mは1〜4の整数である)から選択され、
2はそれぞれ独立して−OM1/q、−SO31/q、−PO32/q、−O−PO32/q、−C64−SO31/q、−C64−PO32/q及び/又は−C64−OPO32/q(式中、MはH、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム及び/又は第一遷移系列の金属から選択され、並びにqはMの電荷数を表す)から選択され、Xが単結合の場合、R2は−OM1/qで表される]、
【化2】
[式中、R3はR1について上記で与えられた意味を有し、
nは0〜4の整数であり、
4はそれぞれ独立して−SO31/q、−PO32/q、−O−PO32/q及び/又は−C64−SO31/q(式中、M及びqは上記の意味を有する)から選択される]、
【化3】
[式中、R5はR1について上記で与えられた意味を有し、
Zはそれぞれ独立して−O−及び/又は−NH−から選択される]、
【化4】
[式中、R6はR1について上記で与えられた意味を有し、
QはXについて上記で与えられた意味を有し、及び
7はR2について上記で与えられた意味を有する]
のうちの一つの形態でコポリマー中に存在することを特徴とする使用が好ましい。
【0024】
式(Ia)において、
1はH又はメチルであり、
Xはそれぞれ独立して−NH−(Cm2m)−及び−O−(Cm2m)−、並びに好ましくは−O−(C24)−又は−NH−(C(CH32CH2)−から選択され、並びに
2は−O−PO32/q又は−O−SO31/q(式中、m、M及びqは上記で与えられた意味を有する)であることを特徴とする使用が好ましい。
【0025】
また、式(Ia)中の基R2としては−O−PO32/qが好ましく、Xとしては−O−(Cm2m)−が好ましい。リン含有酸モノマー(A)として特に好ましくは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸リン酸エステル(HE(M)A−ホスフェート)及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸リン酸エステル(HP(M)A−ホスフェート)、及びそれぞれの場合におけるそれらの塩である。対応する二リン酸エステルも同様に使用できるが、あまり好ましくない。
【0026】
一種以上の酸モノマー(A)は、(メタ)アクリル酸及びその塩、マレイン酸、マレイン酸のモノエステル、マレイン酸のモノアミド及びマレイン酸の塩、無水マレイン酸及び/又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸リン酸エステル及びその塩から選択され、好ましくはヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸リン酸エステル及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸リン酸エステル、並びにそれぞれの場合におけるそれらの塩であることを特徴とする使用が好ましい。
【0027】
ポリエーテルマクロモノマー(B)
本発明のコポリマーは、共重合された形態でコモノマーとして、一般式(I)E−Vkk+1の少なくとも一つのエチレン性不飽和分岐ポリエーテルマクロモノマー(B)を含む。そのコポリマーにおいて、互いに独立して同一又は異なるポリエーテルマクロモノマー(B)を用いることができる。
【0028】
一般式(I)中の(B)は、少なくとも一つのエーテル構造単位、カルボン酸エステル構造単位又はカルボキサミド構造単位を含む、エチレン性不飽和構造単位(E)、好ましくはモノエチレン性不飽和構造単位(E)を含む。例えば、硫黄エーテル等の硫黄含有の実施形態とは対照的に、前記エーテル構造単位及びカルボン酸エステル構造単位は、好ましくは酸素原子のみを含む。構造単位Eは、好ましくは2〜6個の炭素原子及び少なくとも1個の酸素原子、より好ましくは2〜5個の炭素原子及び少なくとも1個の酸素原子を含む。
【0029】
エーテルを含むEの例は、CH2=CH−O−、CH2=CH−O−(CH24−O−、CH(CH3)=CH−O−、CH2=CH−O−[A3O]m−[式中、A3はそれぞれ独立してC2〜C10アルキレン、C6〜C10アリーレン及び/又はC7〜C10アラルキレンから選択される;好ましくはA3は−C24−である;mはそれぞれ独立して1〜50、好ましくは2〜40、特に好ましくは5〜25の整数である]である。A3についてはそれぞれ互いに独立して、−C24−の形態で、式−[A3O]mの全ての構造単位を基準にして60モル%を超えて存在することが特に好ましい。酸素原子が不飽和構造単位上に直接、位置するため、上記エーテルはビニルエーテルである。ビニルエーテルは相対的に反応性で製造が容易であるため、ビニルエーテルが好ましい。
【0030】
エーテルを含む更なるEの例としては、メタ(アリル)エーテル(CH2=CH−CH2−O−又はCH2=C(Me)−CH2−O−)、及びイソプレノールエーテル(CH2=CMe−(CH22−O−)が挙げられる。
【0031】
エチレン性不飽和カルボン酸エステルの中では、モノカルボン酸誘導体とジカルボン酸誘導体の間に好ましい差異がある。モノカルボン酸誘導体類に由来するモノエチレン性不飽和構造単位Eの例は、(メタ)アクリル酸エステル、例えばCH2=CH−COO−、CH2=CMe−COO−、CH2=CH−COO−[A3O]m−、CH2=CMe−COO−[A3O]m−、並びに(E)−及び(Z)−クロトン酸の対応するエステル、例えばCH(Me)=CH−COO−、CH(Me)=CH−COO−[A3O]m−である。好ましい範囲を含むA3及びmは、上記のように定義される。
【0032】
ジカルボン酸誘導体類に由来するモノエチレン性不飽和構造単位Eの例は、マレイン酸のモノエステル(HOOCH=CH(COO)−)、フマル酸の対応するエステル及びイタコン酸の対応するエステル(CH2=C−C(COOH)(CH2−COO))である。
【0033】
カルボキサミド構造単位を含む構造単位Eの例としては、(メタ)アクリルアミド、例えばCH2=CH−CO−N(R)−、CH2=CMe−CON(R)−、及びマレイン酸モノアミド(HOOCH=CH−CO−N(R))−[式中、Rは互いにそれぞれ独立してH、C1〜C30アルキル、C6〜C30アリール及び/又はC7〜C30アラルキルから選択され、Rは好ましくはH又はC1〜C4アルキルである;C1〜C4アルキルの中ではより具体的に好ましくはメチルである]が挙げられる。
【0034】
構造単位Eはそれぞれ独立してビニルエーテル単位、アリルエーテル単位、イソプレニルエーテル単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、(メタ)アクリルアミド単位、マレイン酸モノエステル単位及び/又はマレイン酸モノアミド単位から選択されることを特徴とするコポリマーの使用が好ましい。ビニルエーテル単位、(メタ)アクリル酸エステル単位及び/又は(メタ)アクリルアミド単位が特に好ましい。
【0035】
コポリマーが、共重合された形態で追加のコモノマーとして、一般式E−L[式中、E及びLは、上記で与えられた意味を有する]の非分岐ポリエーテルマクロモノマーを含むことを特徴とする本発明の使用が好ましい。非分岐ポリエーテルマクロモノマーE−Lにおいて、Lは好ましくは式−[A1O]l−A2[式中、A1はそれぞれ独立してC2〜C10アルキレン、C6〜C10アリーレン及び/又はC7〜C10アラルキレンから選択され、好ましくは−C24−であり、A2はそれぞれ独立してC1〜C30アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C30アリール及び/又はC7〜C30アラルキル、好ましくはC1〜C4アルキルから選択され、及びlはそれぞれ独立して7〜30、好ましくは12〜25、特に好ましくは15〜20の整数である]の直鎖状構造単位である。
【0036】
パラメータlにより定義された側鎖長の好ましい範囲は、適度に長い(好ましくは7〜30個の)側鎖が分散性に重要な寄与をなすことができるという利点を有するが、過剰な長さの結果として依然として適用粘度、より具体的にはコンクリート中の粘度を増大させない。
【0037】
エチレン性不飽和構造単位Eは、E*−S[式中、E*はそれぞれ独立してビニルエーテル単位、アリルエーテル単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、及び/又はマレイン酸モノエステル単位から選択され、及びSは(ポリ)アルキレングリコール単位−[A3O]m−(式中、A3はそれぞれ独立してC2〜C10アルキレン、C6〜C10アリーレン及び/又はC7〜C10アラルキレンから選択され、A3は−C24−であることが好ましく、並びにmはそれぞれ独立して1〜50、好ましくは1〜40、特に好ましくは1〜25の整数である)である]の形態で存在することを特徴とするコポリマーの使用が好ましい。A3についてはそれぞれ互いに独立して−C24−の形態で、式−[A3O]mの全ての構造単位を基準にして60モル%を超える程度まで存在することが特に好ましい。EがE*−Sの形態で存在する場合、E*と、相対的に立体的にかさ高い分岐構造単位Vkk+1との間に「スペーサー」(省略されたS)として存在する少なくとも一つのアルキレンオキシド単位が存在することが好ましい。これは、ポリエーテルマクロモノマー(B)の合成(以下に示されるようにエーテル化又はエステル化)におけるより高い反応性をもたらし、及び(B)の収量が増大する。アミンの場合、カルボキサミドが形成されるため、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリロイルクロリド又は無水マレイン酸との反応性は、いずれの場合もより高い。従って、スペーサーは、このような大きな反応性の利点をもたらさない。
【0038】
一般式(I)において、Vは分岐構造単位−CH(CH2O−)2である。Vは、相対的に親水性のポリエーテル構造単位であるため、(B)の水への溶解度に寄与する。説明のために、実際の分岐部位が1個のH原子及び2個の(CH2O−)で置換される第三級炭素原子であることが再度、記載される。ポリエーテルマクロモノマー(B)は、不飽和構造単位Eから出発し分岐構造単位Vkを介する一般式(I)E−Vkk+1に基づき、分岐構造を有する。ここでの指数kは構造単位Vの数、それ故、分岐部位の数を示す。(本発明によらない)kが0である仮説理論的な場合、先行技術の一つの非分岐側鎖(E−L)である。kが1の場合、二つのポリエーテル側鎖が導入される;kが2の場合、三つのポリエーテル側鎖が導入される;等々。
【0039】
ポリエーテルマクロモノマー(B)の合成におけるVは、グリセロール誘導体、より好ましくはエピクロロヒドリンに由来し、エピクロロヒドリンの反応性はグリセロール誘導体の中で最も大きい。
【0040】
Lは、式−[A1O]l−A2−[式中、パラメータA1、A2及びlは上記の定義を満たす]の直鎖状構造単位である。指数lはアルキレンオキシドの繰り返し単位の数を表し、A1及びA2のように、ポリエーテルマクロモノマー(B)中で互いに独立して同一又は異なっていて良い;すなわち、lは同一のポリエーテルマクロモノマー内で種々の値を採用して良く、並びにA1及びA2は同一又は異なっていて良い。
【0041】
Lは、直鎖状非分岐(ポリ)(シクロ)アルキル構造単位、(ポリ)アリール構造単位、及び/又は(ポリ)アラルキル構造単位、好ましくは(ポリ)アルキレン構造単位を含む。構造単位Lはポリエーテルマクロモノマーをキャップする。分岐構造単位V及びLの数は、パラメータkを介して関連する。ここでの単純なルールは、直鎖状構造単位Lの数は分岐構造単位Vの数よりも1だけ大きいということである。A1がC24−の場合、Lは親水性及び易水溶性の構造単位を表す。この理由のため、A1は好ましくはC24−である。
【0042】
ポリエーテルマクロモノマー(B)の合成では、Lは式HO−[A1O]l−A2のモノアルコールに由来する。
【0043】
ポリエーテルマクロモノマー(B)の合成
ポリエーテルマクロモノマー(B)は、少なくとも二段階の操作で合成される。直鎖状モノアルコールを反応させて分岐モノアルコールを形成するプロセス段階(I)と、得られた分岐モノアルコールからエチレン性不飽和ポリエーテルマクロモノマー(B)を形成する反応(好適なエチレン性不飽和試薬を用いたエーテル化又はエステル化)を含むプロセス段階(II)とは区別される。
【0044】
特定の中間段階において分岐モノアルコールはまた、場合によりアミンに変換されても良く、その場合に引き続き、プロセス段階(II)において好適なエチレン性不飽和カルボン酸又はカルボン酸誘導体との反応中にカルボキサミドが形成される。
【0045】
同様に、場合により一般構造式(II)の分岐モノアルコールはアルコキシル化されて良く、従っていわゆるスペーサーを有する式HO−[A3O]m−Vkk+1のポリエーテルモノアルコールが得られる。次いで、ポリエーテルマクロモノマー(B)中でEはE*−Sの形態で存在する。全てのパラメータE*、A3、m、V、k及びLは、上記の定義を有する。
【0046】
プロセス段階(I)
プロセス段階(I)は、式HO−[A1O]l−A2の直鎖状モノアルコールと、グリセロール誘導体、例えばグリシドール、グリセロールカーボネート又はエピクロロヒドリン、好ましくはエピクロロヒドリンとの反応を構成する。生成物は、一般式(II)
(II)
HO−Vkk+1
[式中、パラメータV、k、L、A1、l及びA2は上記のように定義される]の分岐ポリエーテルモノアルコールである。式HO−[A1O]l−A2の同一又は異なるアルコールを使用できる。
【0047】
前記反応は、特にエピクロロヒドリンが使用されている場合に最良には、塩基の存在下で行われる。反応は、触媒の存在下で行うことができる。好適な触媒の例としては、有機及び無機塩基が挙げられる。エピクロロヒドリンが反応性グリセロール誘導体として使用される場合、塩基が触媒としてだけでなく、得られた塩酸を中和するように働く。好適な無機塩基の例としてはアルカリ金属カーボネート、及び特にアルカリ金属水酸化物、例えばNaOH及びKOHが挙げられる。好適な有機塩基の例としては、第三級アミン、より具体的にはトリエチルアミン及び[2.2.2]ジアザビシクロオクタン(DABCO)、並びにまたピリジン及びパラ−N,N−ジメチルアミノピリジンが挙げられる。
【0048】
本発明の一実施形態では、グリセロール誘導体、例えばグリシドール又はグリセロールカーボネート、好ましくはエピクロロヒドリンの反応は、溶媒中で行うことができる。好適な溶媒の例としては、エーテル、特に1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(「THF」)、及びジ−n−ブチルエーテルが挙げられる。他の好適な溶媒は、n−ブチルアセテート(「酢酸ブチル」)、DMSO、N,N−ジメチルホルムアミド(「DMF」)及びN−メチルピロリドン、及び例えばトルエン等の芳香族溶媒である。
【0049】
式HO−[A1O]l−A2の直鎖状モノアルコールとグリセロール誘導体(例えば、グリセロール)との反応の間に水が脱離される実施形態では、例えば分子ふるい、硫酸ナトリウム若しくは硫酸マグネシウムのような水除去剤を使用でき、又は形成された水を共沸蒸留によって除去できる。
【0050】
これらの反応は、US2011/0015361 A1に詳細に記載される。温度及びモノマー量の目標とする制御により、典型的には混合物の形態で、種々の分岐ポリエーテルマクロモノマーを得ることができる。k(鎖長)の数が多くなるにつれて反応性が低下するため、工程の温度を上昇させることが有利である。比較的、低い反応温度では、エピクロロヒドリンの一部のみを式(II)のモノアルコールと反応させ、次いで更にエピクロロヒドリンを添加し、高められた温度で反応を続けることが特に有利である。US2011/0015361 A1に記載される、副工程(エピクロロヒドリンの添加工程、温度の上昇工程、及び化学的な反応工程)のこのシーケンスは多数回、繰り返すことができる。
【0051】
一般的に言えば、これらの反応は、種々のk値を有するが同じkについての様々な種類の構成も有する、一般式(II)のモノアルコールの混合物をもたらす。多数の可能な構造の例が、以下に記載される。
【0052】
kが1である最も単純な例の場合、例えば、以下の一分岐モノアルコール(IIa)が、式HO−[A1O]l−A2の直鎖状モノアルコールの二当量と、エピクロロヒドリンの一当量との反応から得られる。
(IIa)
HO−CH[CH2O−[A1O]l−A12
【0053】
(IIa)の一当量は更に、エピクロロヒドリンの一当量及び式HO−[A1O]l−A2のモノアルコールの一当量と反応し、例えば以下の非対称生成物(IIb)(k=2)を提供して良い:
(IIb)
【化5】
【0054】
(IIa)の二当量は更に、例えばエピクロロヒドリンの一当量と反応し、以下の非対称モノアルコール(IIc)(k=3)を提供して良い:
(IIc)
【化6】
【0055】
構造(IIb)及び(IIc)は、構造異性体である。
【0056】
(IIb)の一当量は更に、例えばエピクロロヒドリンの一当量及び式HO−[A1O]l−A2のモノアルコールの一当量と反応し、以下の非対称モノアルコール(IId)(k=3)を提供して良い:
(IId)
【化7】
【0057】
(IIc)の一当量は更に、例えばエピクロロヒドリンの一当量及び式HO−[A1O]l−A2のモノアルコールの一当量と反応し、以下の非対称モノアルコール(IIe)(k=4)を提供して良い:
(IIe)
【化8】
【0058】
ポリエーテルマクロモノマー(B)として、式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)中でそれぞれの場合に、OH基は単結合で置換されるという条件で、Vkk+1は式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び/又は(IId)のうちの一つに一致することを特徴とする構造単位E−Vkk+1であることが好ましい。ここではE、V及びLは上記の意味を有し、kは1〜3の整数である。
【0059】
場合による分岐モノアルコール(II)のモノアミンへの変換
上記のように、一般式(II)HO−Vkk+1の分岐モノアルコールはまた、多数の中間段階により、式NH(R)−Vkk+1の分岐モノアミンへ変換されて良い(OH基のアミノ基NH(R)による置換)。この目的のために、一般的にはまず第一に、ケトンを提供するための第二級アルコール基の酸化が存在する。これにはアミンNH2Rによるアミノ化が続き水の脱離を伴って、対応するイミンが得られる。例えば、触媒(例えば、ニッケル等)の存在下における水素によるイミンの還元により、対応する分岐モノアミンに至る。該モノアミンは、構造式NH(R)−Vkk+1[式中、Rは上記の意味を有する]を有する。
【0060】
プロセス段階(II)
第二のプロセス段階(II)では、分岐モノアルコールII(例えば、構造IIa、IIb、IIc、IId、IIe)はエチレン性不飽和構造単位(E)を導入することにより変性されて、例えばアセチレンとの反応によりビニルエーテルを提供するように、ポリエーテルマクロモノマー(B)を提供して良い。(メタ)アリルハライド、好ましくは(メタ)アリルクロライドとの反応は、例えば対応する(メタ)アリルエーテルに至る。(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、又は(メタ)アクリロイルハライドを用いて、対応する(メタ)アクリル酸エステルが得られる。エチレン性不飽和構造単位は、無水マレイン酸との反応によって導入でき、その場合に対応するマレイン酸モノエステルが得られる。
【0061】
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、又は(メタ)アクリロイルハライドとの反応による分岐モノアミンNH(R)−Vkk+1からの類似した方法では、対応するカルボキサミドが得られ、或いは無水マレイン酸の場合にはマレイン酸モノアミドが得られる。
【0062】
それぞれのエステル化反応、アミド化反応及びエーテル化反応は従来技術で周知であり、好ましくは脱水条件下で行われる。アセチレンとの反応の場合、好ましくは塩基性触媒から選択される一種以上の触媒を使用できる。特に好適な触媒は、KOHである。
【0063】
アセチレンとの反応は溶媒を用いて又は用いずに行うことができる。好適な溶媒の例としては、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、トルエン、キシレン、THF、及びジオキサンが挙げられる。アセチレンとの反応は、例えば80〜160℃の範囲の温度、例えば110〜130℃のような約120℃である好ましい温度で行うことができる。アセチル化は、大気圧下、又は好ましくは例えば、2〜30バールのような高められた圧力で行うことができる。
【0064】
本発明の使用は、A1がそれぞれ独立して式−[A1O]lの全ての構造単位を基準にして60モル%を超える程度、より好ましくは80モル%を超える程度まで−C24−の形態で存在し、A2がそれぞれ独立してC1〜C4アルキルから選択され、kが1〜3の整数であり、及びlがそれぞれ独立して2〜100の整数であることを特徴とすることが好ましい。
【0065】
このように選択されるポリエーテルマクロモノマー(B)は、ポリアルキレンオキシド成分のために、それらが高度に水溶性であり、良好な分散作用を示すという利点を有する。
【0066】
本発明の使用は、分岐ポリエーテルマクロモノマー(B)は700〜15000g/モル、好ましくは1500〜10000g/モル、及びより好ましくは3000〜8000g/モルの範囲の分子量を有することを特徴とすることが好ましい。用途内で許容可能な分散作用及び低粘度が得られることが有利である。
【0067】
本発明の使用は、酸モノマー(A)のポリエーテルマクロモノマー(B)に対するモル比が20/1〜1/1、好ましくは15/1〜1.5/1、及びより好ましくは10/1〜3/1であることを特徴とすることが好ましい。特に、ポリエーテルマクロモノマー(B)が相対的に高分子量の場合、セメントの表面、より具体的にはカルシウムイオンと相互作用することができる、より多くの数のアニオン性のいわゆるアンカー基の存在により、ポリエーテルマクロモノマー(B)の高分子量を補償するために、相対的に高い割合の酸モノマー(A)が有利である。ポリエーテルマクロモノマー(B)の分子量は3000〜8000g/モルの範囲であること、及び酸モノマー(A)のポリエーテルマクロモノマー(B)に対するモル比が13/1〜3/1であることが特に好ましく、10/1〜5/1であることが特に好ましい。
【0068】
本発明の使用では、コポリマーが、エチレン性不飽和酸モノマー(A)及びエチレン性不飽和ポリエーテルマクロモノマー(B)の存在下でラジカル重合により得られ、こうして、合計でコポリマーの全ての構造単位の少なくとも45モル%、好ましくは少なくとも80モル%が酸モノマー(A)及びポリエーテルマクロモノマー(B)の共重合で生成されていることを特徴とすることが好ましい。
【0069】
また、さらに、エチレン性不飽和モノマー(C)が共重合されることも可能である。好適なコモノマーは、コモノマー(A)及び(B)とラジカル共重合ができるエチレン性不飽和化合物である。例として以下のものが挙げられる:エチレン性不飽和モノカルボン酸又はエチレン性不飽和ジカルボン酸のC1〜C10アルキルエステル、より具体的には(メタ)アクリル酸のC1〜C10アルキルエステル、ビニルアセテート、ビニル芳香族化合物、例えば特にスチレン及びアルファメチルスチレン、アルファオレフィン、例えば特にC12〜C20アルファオレフィン、更にビニルクロライド、アクリロイルニトリル、及びN−ビニルピロリドンである。エチレン性不飽和モノカルボン酸のC1〜C10アルキルエステルの好ましい例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。特に好ましくは、エチレン性不飽和モノカルボン酸のC1〜C10アルキルエステル又はエチレン性不飽和ジカルボン酸のC1〜C10アルキルエステル、より具体的にはアクリル酸のC1〜C10アルキルエステルである。
【0070】
また、本発明は、前記請求項の何れかで定義されるコポリマーを含む、無機結合剤用の分散剤に関する。本発明のコポリマーの他に、本発明の分散剤はまた、他の配合成分、例えば、レオロジー助剤(例えば、セルロースエーテル又はデンプンエーテル)、及び/又は再分散性ポリマー粉末、脱泡剤、空気連行剤等を含んで良い。配合物中で他のポリカルボキシレートエーテルを使用すること、又は他の高性能AE減水剤、例えばリグノスルホネート又はメラミンスルホネートを使用することもできる。
【0071】
本発明はまた、無機結合剤、好ましくはセメントを含む建築材料混合物、及び本発明のコポリマーを含む無機結合剤用の分散剤に関する。
【0072】
本明細書の一種以上の無機結合剤は好ましくはセメント、より具体的にはポルトランドセメント及びアルミネートセメント、アルファカルシウムサルフェート半水和物、ベータカルシウムサルフェート半水和物、硬石こう及び石灰、スラグ、より具体的には高炉スラグ、スラグ砂、粉砕スラグ砂、電熱リンスラグ及びステンレス鋼スラグ、ポゾラン結合剤、より具体的にはフライアッシュ、好ましくは褐炭フライアッシュ及び鉱物石炭フライアッシュ、マイクロシリカ、メタカオリン、天然ポゾラン、より具体的には凝灰岩、トラス及び火山灰、天然及び合成ゼオライト、焼成オイルシェール及びこれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0073】
例えば、噴霧乾燥などの従来の乾燥方法によって本発明の分散剤を乾燥すること、及び得られた大幅に水が除去された生成物を無機結合剤中に組み込むことができる。このようにして得られる乾燥モルタルは、(高性能AE減水剤の添加無しの)水でバッチ混合されることにより、建築場所でそれ自身使用できる。添加される本発明の分散剤の量は典型的には、一種以上の無機結合剤を基準にして、0.1〜1質量%の範囲にあり、0.2〜0.6質量%の範囲にあることが好ましい。ドライモルタルは多くの場合、レオロジー助剤、例えばセルロースエーテル及び/又は再分散性ポリマー粉末、脱泡剤、空気連行剤等を含む。
【0074】
実施例
1.一般構造式(II)(HO−Vkk+1)の分岐ポリエーテルモノアルコールを製造するための一般的な実験手順:
滴下漏斗、磁気スターラー及び還流冷却器を備えた2リットルフラスコに、1177mlのジオキサン中の対応するメチルポリエチレングリコールの溶液(第1表参照)を充填した。撹拌しながら、KOHペレット40gを添加する。この初期充填物を105℃に加熱し、ジオキサン中の溶液として(第1表に対応する)エピクロロヒドリンの必要量を通例、30分にわたって添加する。続いて、反応溶液を105℃で17時間、撹拌し、次いで室温まで冷却する。形成された塩化カリウムを濾過によって除去し、溶媒を35ミリバールの減圧下で除去する。一般構造式(II)(HO−Vkk+1)の、10の様々な種類の分岐ポリエーテルモノアルコールが得られた。それらは直接反応して、一般構造式(I)(E−Vkk+1)のポリエーテルマクロモノマー(B)を提供するか、又は、サンプル10の場合のように10当量のエチレンオキシド(スペーサー)でアルコキシル化されるか、又は、サンプル4の場合のようにNH2基によるヒドロキシル基の置換によりアミン誘導体(一般式NH(R)−Vkk+1)に変換した。
【0075】
今回の場合、アミノ化(マクロモノマー4のためのアミノ化)が以下のように行われた:
アミノ化を行うために、1モルの分岐モノアルコール及び触媒(25g)を、オートクレーブ容器内に入れた。触媒は、グラファイト上にNi、Co、Cu、Al23及びSnを含む(US2011/0137030)。
【0076】
触媒の酸化を防止するため、オートクレーブ内に窒素をフラッシングした。同様に42.6gのアンモニアをオートクレーブ内に入れ、室温で40バールの所望の水素分圧に設定した。反応は加熱によって開始され、反応の開始は214℃の温度への到達として規定された。その後、反応生成物を撹拌しながら210℃で更に10時間、維持した。加圧濾過によって、実験系からの排出物から微量の触媒を除去した。これにより、28gの分岐アミン4が得られた。
【0077】
エチレンオキシド(マクロモノマー10用のスペーサーで変性されたアルコール)との反応:
分岐モノアルコール(1当量)及びカリウムメトキシド(1当量)を秤量し、約20ミリバールの圧力、90℃で120分間、ロータリーエバポレーター内で撹拌し、この反応で形成されたメタノールを取り出す。
【0078】
この反応溶液を予め乾燥した反応器に移し、反応器を閉じて、5バールまで窒素で3回、不活性化する。その後、撹拌しながらバッチを120℃まで加熱し、3.5バールの予備窒素圧に設定する。その後、0.1当量のエチレンオキシドを20分かけて質量制御下で計量供給する。反応の開始に続いて、更なる9.9当量のエチレンオキシドを、420分かけて質量制御下で計量供給する。
【0079】
計量供給が終了した後、バッチを更に420分間、120℃で撹拌する。バッチを80℃まで冷却し、30分間、オフガスライン中に窒素(約0.5m3/時間)を用いてフラッシングを行い、透明で帯黄色の生成物が反応器から排出される。収率は定量的である。
【0080】
2.一般構造式(I)(E−Vkk+1)のポリエーテルマクロモノマー(B)の製造のための一般的な実験手順:
2.1 分岐ポリエーテルモノアルコールとアセチレンとの反応による、ビニルアルコールへのビニル化
2.5リットルのオートクレーブを、1モルの分岐ポリエーテルモノアルコール及び10gのKOHで充填し、この初期充填物を窒素(2バール)で不活性化し、その後、120℃まで加熱した。次いで、アセチレンを20バールの圧力で注入し、26gのアセチレンが取り込まれるまで、反応混合物を120℃及び20バールで撹拌した。その後、それを室温まで冷却し、放置し、そして攪拌しながら60℃で3時間、加熱後、残留物を脱気し、次いでオートクレーブから取り出した。変換は定量的である。特に、第1表のサンプル5に匹敵し得る。
【0081】
2.2 メタクリル酸エステルに至るメタクリロイルクロライドとの反応:
第1表に記載の、0.01モルの各々の分岐マクロアルコール(各メチルポリエチレングリコール及び各エピクロロヒドリンの生成物)を、80℃で丸底フラスコ中で融解させる。ゆっくりと0.04モルのトリエチルアミン及び600ppmのp−メトキシフェノールを添加する。次いで、0.03モルのトリエチルアミンを滴加し、混合物を80℃で6時間、撹拌する。
【0082】
冷却後、固体物質を50mlのTHF中に溶解させ、沈殿物を濾過により単離する。その後、0.1N HCl溶液30mlを添加し、水相を除去する。
【0083】
有機相から溶媒を除去する。これにより、(HPLC及びNMRにより決定される)97%の選択性で、マクロモノマーが得られる。
【0084】
2.3 メタクリル酸エステルに至るメタクリル酸無水物との反応:
第1表に記載の各0.1モルの分岐アルコール(各メチルポリエチレングリコール及び各エピクロロヒドリンの生成物)を90℃でフラスコ中に計量供給する。0.1モルのNa2CO3及び0.0013モルのブチル化ヒドロキシトルエンを添加後、0.27モルのメタクリル酸無水物を滴加する。混合物を4時間、撹拌する。その後、300mlの水を添加し、60℃で1時間、攪拌する。H3PO3を用いて溶液を6のpHに調整する。過剰量のメタクリル酸を水と共に振とうすることにより抽出し、又は、塩基性酸化アルミニウムを介した濾過により除去する。これにより、96%(HPLC及びNMR)を超える選択性で、所望のマクロモノマーが得られる。
【0085】
第1表:ポリエーテルマクロモノマー(B)のデータ
【表1】
1)エピクロロヒドリンとのメチルポリエチレングリコールの反応後、分岐モノアルコールを10当量のエチレンオキシドでアルコキシル化した。
2)エピクロロヒドリンとのメチルポリエチレングリコールの反応後、分岐モノアルコールをヒドロアミノ化した。
1a及び2〜10:メタクリル酸無水物から製造されたエステル
1b:メタクリロイルクロライドから製造されたエステル
【0086】
ポリエーテルマクロモノマー(B)のメタクリル酸(酸モノマー(A))との重合:
ビュッヒ二重壁ガラス反応器に47gの水を充填し、窒素を充填しながらこの初期充填物を60℃まで加熱する。次いで、4時間かけて、0.01モルの対応するマクロモノマー及び対応する量のメタクリル酸の溶液を滴加する(第2表)。重合性二重結合の量(マクロモノマーの量+メタクリル酸の量)を基準にして3モル%で、7%水溶液として開始剤(過硫酸ナトリウム)を4.5時間にわたって計量供給する。1時間の重合後に続いてポリマー溶液を冷却し、水酸化ナトリウム水溶液で6.5のpHまで中和する。ポリマー溶液を希釈することで、30%の固体含量が得られる。
【0087】
ポリエーテルマクロモノマー(B)のアクリル酸(酸モノマー(A))との重合:
攪拌器、pH電極及び多数の供給装置を備えたガラス製反応器に、40gの脱イオン水及び0.1モルの対応するマクロモノマーを充填し、この初期充填物を15℃の重合開始温度にする。続いて、別の供給容器中でアクリル酸の必要量(第1表参照)を、16gの水と混合する(溶液A)。これと並行して、Brueggolit(登録商標)E 01の6%濃度の溶液を調製する(溶液B)。撹拌及び冷却しながら、最初に0.24gの3−メルカプトプロピオン酸、0.012gのFe2(SO43、及び0.64gの30%濃度のH22水溶液を添加する。これと同時に、溶液A及びBの添加を開始する。溶液中にペルオキシドが存在しなくなるまで、24ml/時間の計量供給速度で溶液Aを添加し、15.2ml/時間の速度で溶液Bを添加する。得られたポリマー溶液は次いで、50%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、6.5のpHまで調整する。30%の固体含量を有するまでポリマー溶液を水で希釈する。共重合の結果を第2表にまとめる。
【0088】
第2表:(A)と(B)のコポリマー
【表2】
*酸モノマー(A)の種類用の略記:
AS:アクリル酸
MAS:メタクリル酸
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
【0089】
モルタル試験
DIN EN 1015−3規格に従ってモルタル試験を行った。ここで使用されるセメントはSchwenk製のカールシュタットセメントだった。実験では、2.2の砂/セメント比を使用した。この場合、70%標準砂(Normensand GmbH、Beckum)及び30%のケイ砂の混合物を使用した。水/セメント比は常に0.43に設定した。高性能AE減水剤の添加は、セメントを基準にして固体の質量%で示される。
【0090】
第3表:カールシュタットセメントを用いたモルタルの結果
【表3】
【0091】
*比較のためGlenium ACE 440は、アクリル酸モノマー、マレイン酸モノマー、及びエトキシ化ヒドロキシブチルビニルエーテルモノマー(直鎖状側鎖)を有するポリカルボキシレートエーテルである。それは、BASF Construction Chemicals Italia Spaから入手可能である。
【0092】
第3表における高性能AE減水剤の添加量は、セメントを基準にして、固体の質量%で示される。
【0093】
これらの結果に基づくと、これらのポリマーを添加することによって、特定のスランプスプレッドまでモルタルを可塑化するのに必要な水の量が劇的に減ることが明らかである。高性能AE減水剤を添加しない場合、23〜25cmのスランプスプレッドを得るためには、0.55の水/セメント比(w/c)が必要である。
【0094】
直線状側鎖(Glenium(登録商標) ACE 440を用いた比較試験)と比較して、分岐している側鎖を有する高性能AE減水剤は、同様の可塑化を達成するためにより高いアクリル酸割合を必要とする。
【0095】
更に、DIN EN 1015−3に記載のコーンを用いて、Monseliceセメントを用いたモルタル試験を行った。結果は、第4表に示されるフローである。
【0096】
使用された材料及びモルタルの処方は以下の通りであった:
セメント:Monselice CEM I 52.5R
w/c=0.42〜0.44
s/c=3(標準砂(Normensand GmbH、Beckum))
ポリマーの全ては、脱泡剤(コポリマーの固形分を基準にして4質量%のトリブチルホスフェート)を用いて調製された20%濃度の溶液として使用した。
【0097】
第4表:Monseliceセメントを用いたモルタルの結果
【表4】
【0098】
*Glenium(登録商標) ACE 440は、アクリル酸モノマー、マレイン酸モノマー、及びエトキシ化ヒドロキシブチルビニルエーテルモノマーを有するポリカルボキシレートエーテルである。それは、BASF Construction Chemicals Italia Spaから入手可能である。
【0099】
塑性粘度の測定を含むコンクリート試験
粘度測定のために使用されるセメントは、Monselice製のCEM I 52.5セメント及び他のCEM I 52.5セメントであった。以下の配合の混合物が使用された。
砂0〜4 1050kg/m3
砂利8〜12 770kg/m3
セメントI型 52.5 400kg/m3
水 180kg/m3
【0100】
周囲温度は20℃であり、及び高性能AE減水剤の固形分を基準にして4質量%の脱泡剤(トリブチルホスフェート)を用いて調製された20%濃度の溶液の形態で、高性能AE減水剤を使用した。
【0101】
匹敵する、同等の結果を得るため、添加剤の量は、生コンクリートの全てがDIN EN 12350に準拠して5分後に22〜24cmのスランプを提供するように計算された。水/セメント比を0.45に設定し、測定を5分後及び20分後に行った。結果を第5a表(Monseliceセメント)及び第5b表にまとめる。
【0102】
可塑化とは別に、規定される使用のためのもう一つの重要な要因は、生コンクリートの粘度である。その粘度は、生コンクリートの圧送性及び加工性の指標である。粘度がより低い値となるとより良い加工性に至り、それ故より良い圧送性に至る(Gleitrohr−Rheometer:Ein Verfahren zur Bestimmung der Fliesseigenschaften von Dickstoffen in Rohrleitungen[Sliding pump rheometer:A method to establish the flow properties of viscous media in pipelines]、Thesis by Dr Kunt Jens Kasten、TU Dresden.Shaker Verlag;1st edn.(July 2010))。生コンクリートの塑性粘度は、IKARレオメーター(参照:E.P.Koehler、D.W.Fowler(2007)。「ICAR Mixture Proportioning Procedure for SCC」、International Center for Aggregates Research、Austin、TX.)中で測定された。
【0103】
第5a表:Monselice CEM I 52.5 Rを用いたスランプフロー及び塑性粘度
【表5】
【0104】
*Glenium(登録商標) ACE 440は、アクリル酸モノマー、マレイン酸モノマー、及びエトキシ化ヒドロキシブチルビニルエーテルモノマーを有するポリカルボキシレートエーテルである。それは、BASF Construction Chemicals Italia Spaから入手可能である。
【0105】
第5b表:CEM I 52.5 Rを用いたスランプフロー及び塑性粘度
【表6】
【0106】
商業的に入手できる高性能AE減水剤は多くの場合、直鎖状ポリエチレングリコール側鎖(PEG側鎖)を有する櫛形ポリマーである。しかし、減水剤として使用される場合、これらの高性能AE減水剤は、生コンクリート部で相対的に高い塑性粘度を導く。これは、生コンクリートを圧送し、それを型に入れるのをより困難にする。
【0107】
本発明の分散剤は、コンクリートを可塑化し、特に低コンクリート粘度を得ることを可能にする。本発明のコポリマーとGlenium(登録商標) ACE 440との比較から明らかなように、本発明のポリマーは、比較的低いw/c値の場合でさえ低粘度を有する生コンクリートを製造する優れた可能性を示す。また、高性能AE減水剤の添加なしのコンクリートの粘度は、可塑性の欠如のために本明細書ではずっと高いw/c値を使用する必要があるため、適当に測定できなかったことが留意される。