(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態による電子回路パッケージ11Aの構成を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態による電子回路パッケージ11Aは、基板20と、基板20に搭載された複数の電子部品31,32と、電子部品31,32を埋め込むよう基板20の表面21を覆うモールド樹脂40と、モールド樹脂40を覆う磁性膜50と、磁性膜50及びモールド樹脂40を覆う金属膜60とを備えている。
【0021】
本実施形態による電子回路パッケージ11Aの種類については特に限定されないが、例えば、高周波信号を取り扱う高周波モジュールや、電源制御を行う電源モジュール、2.5D構造や3D構造をもったシステムインパッケージ(SIP)、無線通信用またはデジタル回路用半導体パッケージなどが挙げられる。
図1においては、2つの電子部品31,32のみを図示しているが、実際にはより多くの電子部品が内蔵されている。
【0022】
基板20は、内部に多数の配線が埋め込まれた両面および多層配線構造を有しており、FR−4、FR−5、BT、シアネートエステル、フェノール、イミドなど熱硬化性樹脂ベースの有機基板、液晶ポリマーなど熱可塑性樹脂ベースの有機基板、LTCC基板、HTCC基板、フレキシブル基板など種類は問わない。本実施形態では基板20が4層構造であり、基板20の表面21及び裏面22に形成された配線層と、内部に埋め込まれた2層の配線層を有している。基板20の表面21には、複数のランドパターン23が形成されている。ランドパターン23は、電子部品31,32と接続するための内部電極であり、両者はハンダ24(或いは導電性ペースト)を介して電気的且つ機械的に接続される。一例として、電子回路31はコントローラなどの半導体チップであり、電子回路32はキャパシタやコイルなどの受動部品である。電子部品の一部(例えば薄型化された半導体チップなど)は、基板20に埋め込まれていても構わない。
【0023】
ランドパターン23は、基板20の内部に形成された内部配線25を介して、基板20の裏面22に形成された外部端子26に接続される。実使用時においては、電子回路パッケージ11Aが図示しないマザーボードなどに実装され、マザーボード上のランドパターンと電子回路パッケージ11Aの外部端子26が電気的に接続される。ランドパターン23、内部配線25及び外部端子26を構成する導体の材料としては、銅、銀、金、ニッケル、クロム、アルミニウム、パラジウム、インジウムなどの金属もしくはその金属合金であっても構わないし、樹脂やガラスをバインダーとした導電材料であっても構わないが、基板20が有機基板またはフレキシブル基板である場合は、コストや導電率などの観点より銅、銀を用いることが好ましい。これら導電材料の形成方法としては、印刷、メッキ、箔ラミネート、スパッタ、蒸着、インクジェットなどの方法を用いることができる。
【0024】
尚、
図1において、符号の末尾にGが付された内部配線25は、電源パターンであることを意味する。電源パターン25Gは、典型的には、接地電位が与えられるグランドパターンであるが、固定電位が与えられるパターンであればグランドパターンに限定されるものではない。
【0025】
モールド樹脂40は、電子部品31,32を埋め込むよう基板20の表面21を覆って設けられている。本実施形態においては、モールド樹脂40の側面42と基板20の側面27が同一平面を構成している。モールド樹脂40の材料としては、熱硬化性もしくは熱可塑性材料をベースとし、熱膨張係数を合わせるためのフィラーを配合した材料を用いることができる。
【0026】
モールド樹脂40の上面41は磁性膜50で覆われており、特に限定されるものではないが、両者は接着剤などを介在することなく直接接触していることが好ましい。磁性膜50は、熱硬化性樹脂材料に磁性フィラーが分散された複合磁性材料からなる膜、軟磁性材料やフェライトからなる薄膜、或いは、箔またはバルクシートからなり、磁気シールドとして機能する。
【0027】
磁性膜50として複合磁性材料からなる膜を選択する場合、熱硬化性樹脂材料としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができ、印刷法、成型法、スリットノズル塗布法、スプレー法、ディスペンス法、インジェクション法、トランスファー法、コンプレッション成型法、未硬化のシート状樹脂を用いたラミネート法などの厚膜工法を用いて形成することができる。熱硬化性材料を使用することで、耐熱性、絶縁性、耐衝撃性、落下強度など、電子回路パッケージに要求される信頼性が高められる。
【0028】
また、磁性フィラーとしては、フェライト又は軟磁性金属を用いることが好ましく、バルクでの透磁率が高い軟磁性金属を用いることが特に好ましい。フェライト又は軟磁性金属としては、Fe,Ni,Zn,Mn,Co,Cr,Mg,Al,Siからなる群から選ばれた1又は2以上の金属、或いはその酸化物が挙げられる。具体例としては、Ni−Zn系、Mn−Zn、Ni−Cu−Zn系などのフェライト、パーマロイ(Fe−Ni合金)、スーパーパーマロイ(Fe−Ni−Mo合金)、センダスト(Fe−Si−Al合金)、Fe−Si合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金、Fe−Cr−Si合金、Fe等を挙げることができる。磁性フィラーの形状については特に限定されないが、高充填化するためには球状とし、最密充填となるように複数の粒度分布のフィラーをブレンド、配合してもよい。透磁率実数成分の遮蔽効果と透磁率虚数成分のロスの熱変換効果を最大限に引き出すためには、アスペクト5以上の扁平粉を配向させて形成することがさらに好ましい。
【0029】
磁性フィラーの表面は、流動性、密着性、絶縁性向上のために、Si,Al,Ti,Mgなどの金属の酸化物、或いは、有機材料によって絶縁コートされていることが好ましい。絶縁コートは、磁性フィラーの表面に熱硬化性材料をコート処理、もしくは、金属アルコキシドの脱水反応によって酸化膜を形成してもよく、酸化ケイ素のコート被膜形成が最も好ましい。さらにその上に有機官能性カップリング処理を施すとさらに好適である。
【0030】
複合磁性材料は、印刷法、成型法、スリットノズル塗布法、スプレー法、ディスペンス法、未硬化のシート状樹脂を用いたラミネート法などの公知の方法を用いてモールド樹脂40の上面41に形成することができる。
【0031】
また、磁性膜50として軟磁性材料もしくはフェライトからなる薄膜を選択する場合、その材料としては、Fe,Ni,Zn,Mn,Co,Cr,Mg,Al,Siからなる群から選ばれた1又は2以上の金属、或いはその酸化物を用いることができ、スパッタリング法、蒸着法などの薄膜工法の他、メッキ法、スプレー法、AD法、溶射法などを用いてモールド樹脂40の上面41に形成することができる。この場合、磁性膜50の材料は、必要とされる透磁率と周波数から適時選択すればよいが、低周波(kHz〜100MHz)側のシールド効果を上げるためには、Fe−Co、Fe−Ni、Fe−Al、Fe−Si系の合金が最も好ましい。一方、高周波(50〜数百MHz)のシールド効果を上げるためには、NiZn、MnZn、NiCuZnなどのフェライト膜もしくはFeが最も好ましい。
【0032】
さらに、磁性膜50として箔またはバルクシートを用いる場合には、モールド樹脂40を形成する際の金型にあらかじめ箔またはバルクシートを設置しておけば、モールド樹脂40の上面41に箔またはバルクシートからなる磁性膜50を直接形成することができる。
【0033】
磁性膜50の上面51及び側面52、モールド樹脂40の側面42、並びに、基板20の側面27は、金属膜60で覆われている。金属膜60は電磁気シールドであり、Au、Ag、Cu及びAlからなる群から選ばれた少なくとも1つの金属を主成分とすることが好ましい。金属膜60はできるだけ低抵抗であることが好ましく、コストなどを鑑みるとCuを用いることが最も好ましい。また、金属膜60の外側表面は、SUS,Ni,Cr,Ti,黄銅などの防食性の金属、或いは、エポキシ、フェノール、イミド、ウレタン、シリコーンなどの樹脂からなる酸化防止被覆で覆われていることが好ましい。これは、金属膜60は熱、湿度などの外部環境で酸化劣化するため、これを抑制及び防止するために上記処理を施すことが好ましい。金属膜60の形成方法は、スパッタリング法、蒸着法、無電解メッキ法、電解メッキ法など公知の方法より適時選択すればよく、金属膜60を形成する前に密着性向上前処理であるプラズマ処理、カップリング処理、ブラスト処理、エッチング処理などを施しても良い。さらに、金属膜60の下地として、チタンやクロム、SUSなどの高密着性金属膜を事前に薄く形成しても構わない。
【0034】
図1に示すように、基板20の側面27には電源パターン25Gが露出しており、金属膜60は基板20の側面27を覆うことによって電源パターン25Gと接続されている。
【0035】
金属膜60と磁性膜50の界面における抵抗値は、10
6Ω以上である。このため、電磁波ノイズが金属膜60に入射されることにより生じる渦電流がほとんど磁性膜50に流れ込まないことから、渦電流の流入による磁性膜50の磁気特性の低下を防止することが可能となる。金属膜60と磁性膜50の界面における抵抗値とは、両者が直接接している場合には磁性膜50の表面抵抗を指し、両者間に絶縁膜が存在する場合には、絶縁膜の表面抵抗を指す。尚、金属膜60と磁性膜50の界面における抵抗値は、全面に亘って10
6Ω以上であることが好ましいが、部分的に抵抗値が10
6Ω未満である領域が存在しても構わない。
【0036】
金属膜60と磁性膜50の界面における抵抗値を10
6Ω以上とする方法としては、磁性膜50の材料として十分に表面抵抗の高い材料を用いるか、或いは、磁性膜50の上面51に薄い絶縁材料を形成する方法が挙げられる。
図2は、変形例による電子回路パッケージ11Bの構成を示す断面図であり、磁性膜50と金属膜60の間に薄い絶縁膜70が介在している点において、
図1に示した電子回路パッケージ11Aと相違している。このような絶縁膜70を介在させれば、磁性膜50の材料として比較的抵抗値の低い材料を用いた場合であっても、金属膜60と磁性膜50の界面における抵抗値を10
6Ω以上とすることが可能となり、渦電流による磁気特性の低下を防止することが可能となる。
【0037】
このように、本実施形態による電子回路パッケージ11A(及び11B)は、モールド樹脂40の上面41に磁性膜50及び金属膜60がこの順に積層されている。これにより、磁性膜50と金属膜60の形成位置が逆である場合と比べ、電子部品31,32から放射される電磁波ノイズがより効果的に遮蔽される。これは、電子部品31,32から発生した電磁波ノイズが磁性膜50を通過する際にその一部が吸収され、吸収されなかった電磁波ノイズの一部が金属膜60で反射し、磁性膜50を再び通過するからである。このように、磁性膜50は入射した電磁波ノイズに対して2度作用するので、電子部品31,32から放射される電磁波ノイズを効果的に遮蔽することができる。
【0038】
さらに、本実施形態による電子回路パッケージ11A(及び11B)は、金属膜60と磁性膜50の界面における抵抗値が10
6Ω以上であることから、電磁波ノイズが金属膜60に入射されることにより生じる渦電流がほとんど磁性膜50に流れ込まない。これにより、渦電流の流入による磁性膜50の磁気特性の低下を防止することが可能となる。
【0039】
また、磁性膜50をモールド樹脂40の上面41に直接形成すれば、両者間に接着剤などが介在しないことから、製品の低背化に有利である。しかも、本実施形態においては、磁性膜50がモールド樹脂40の上面41にのみ形成されていることから、金属膜60を電源パターン25Gに容易に接続することが可能となる。
【0040】
次に、本実施形態による電子回路パッケージ11Aの製造方法について説明する。
【0041】
図3〜
図6は、電子回路パッケージ11Aの製造方法を説明するための工程図である。
【0042】
まず、
図3に示すように、多層配線構造を有する集合基板20Aを用意する。集合基板20Aの表面21には複数のランドパターン23が形成されており、集合基板20Aの裏面22には複数の外部端子26が形成されている。また、集合基板20Aの内層には、電源パターン25Gを含む複数の内部配線25が形成されている。なお、
図3に示す破線aは、その後のダイシング工程において切断されるべき部分を指している。
図3に示すように、電源パターン25Gは、平面視で破線aと重なる位置に設けられている。
【0043】
次に、
図3に示すように、ランドパターン23に接続されるよう、集合基板20Aの表面21に複数の電子部品31,32を搭載する。具体的には、ランドパターン23上にハンダ24を供給した後、電子部品31,32を搭載し、リフローを行うことによって電子部品31,32をランドパターン23に接続すればよい。
【0044】
次に、
図4に示すように、電子部品31,32を埋め込むよう、集合基板20Aの表面21をモールド樹脂40で覆う。モールド樹脂40の形成方法としては、コンプレッション、インジェクション、印刷、ディスペンス、ノズル塗付プロセスなどを用いることができる。
【0045】
次に、
図5に示すように、モールド樹脂40の上面41に、表面抵抗値が10
6Ω以上の材料からなる磁性膜50を形成する。この場合、モールド樹脂40と磁性膜50の密着性を向上させるために、モールド樹脂40の上面41をブラスト、エッチングなどの手法で物理的な凹凸を形成したり、プラズマや短波長UVなどで表面改質したり、有機官能性カップリング処理などを施しても構わない。或いは、磁性膜50の材料として、表面抵抗値が10
6Ω未満である材料を用いる場合には、磁性膜50を形成した後、その上面51に熱硬化性材料や耐熱性熱可塑性材料、Siの酸化物、低融点ガラスなどの絶縁材料からなる絶縁膜70を薄く形成する必要がある。
【0046】
ここで、磁性膜50として複合磁性材料からなる膜を用いる場合は、印刷法、成型法、スリットノズル塗布法、スプレー法、ディスペンス法、インジェクション法、トランスファー法、コンプレッション成型法、未硬化のシート状樹脂を用いたラミネート法などの厚膜工法を用いることができる。印刷法、スリットノズル塗付法、スプレー法、ディスペンス法などによる形成時においては、必要に応じて複合磁性材料の粘度を調整することが好ましい。粘度の調整は、沸点が50〜300℃である1又は2種類以上の溶剤を用いて希釈すればよい。熱硬化性材料は、主剤、硬化剤、硬化促進剤を基本とするが、主剤、硬化剤は2種以上を要求特性に応じてブレンドしてもよい。また、必要に応じ、溶剤を混合してもよく、密着性、流動性向上のためのカップリング剤、難燃化のための難燃剤、着色のための染料、顔料、可とう性付与などの非反応性樹脂材料、熱膨張係数調整などの目的で非磁性のフィラーをブレンド、配合してもよい。材料はニーダーやミキサー、真空脱泡撹拌装置、3本ロールなどの既知の方法で混錬、分散すればよい。
【0047】
また、磁性膜50として軟磁性材料やフェライトからなる薄膜を用いる場合は、スパッタリング法、蒸着法などの薄膜工法の他、メッキ法、スプレー法、AD法、溶射法などを用いることができる。さらに、磁性膜50として箔またはバルクシートを用いる場合には、モールド樹脂40を形成する際の金型にあらかじめ箔またはバルクシートを設置しておけば、モールド樹脂40の上面41に箔またはバルクシートからなる磁性膜50を直接形成することができる。
【0048】
次に、
図6に示すように、破線aに沿って集合基板20Aを切断することにより基板20を個片化する。本実施形態においては、電源パターン25Gがダイシング位置である破線aを横切っているため、破線aに沿って集合基板20Aを切断すると、基板20の側面27からは電源パターン25Gが露出する。
【0049】
そして、磁性膜50の上面51及び側面52、モールド樹脂40の側面42、並びに、基板20の側面27を覆うよう、金属膜60を形成すれば、本実施形態による電子回路パッケージ11Aが完成する。金属膜60の形成方法としては、スパッタリング法、蒸着法、無電解メッキ法、電解メッキ法などを用いることができる。また、金属膜60を形成する前に、密着性向上前処理であるプラズマ処理、カップリング処理、ブラスト処理、エッチング処理などを施しても良い。さらに、金属膜60の下地として、チタンやクロムなどの高密着性金属膜を事前に薄く形成しても構わない。
【0050】
このように、本実施形態による電子回路パッケージ11Aの製造方法によれば、表面抵抗値が10
6Ω以上の材料からなる磁性膜50を形成するか、或いは、磁性膜50の上面51に絶縁膜70を薄く形成していることから、金属膜60と磁性膜50の界面における抵抗値を10
6Ω以上とすることができる。しかも、集合基板20Aを切断することによって電源パターン25Gを露出させていることから、金属膜60を電源パターン25Gに容易かつ確実に接続することが可能となる。
【0051】
図7は、第1の実施形態の変形例による電子回路パッケージ11Cの構成を示す断面図である。
図7に示す電子回路パッケージ11Cは、磁性膜50が金属膜60の上面61に形成されている点において、
図1に示した電子回路パッケージ11Aと相違している。つまり、磁性膜50と金属膜60からなる積層膜の位置関係が逆である。その他の点は、
図1に示した電子回路パッケージ11Aと同じである。このような構成であっても、電磁波ノイズが金属膜60に入射されることにより生じる渦電流がほとんど磁性膜50に流れ込まないことから、渦電流の流入による磁性膜50の磁気特性の低下を防止することが可能となる。また、磁性膜50の材料として比較的抵抗値の低い材料を用いる場合には、
図8に示す電子回路パッケージ11Dのように、金属膜60と磁性膜50との間に薄い絶縁膜70を介在させればよい。尚、磁性膜50が金属膜60の酸化防止被覆として機能する場合には、金属膜60の上面61に酸化防止被覆を施す必要はないが、このような場合であっても、信頼性を高める観点からは金属膜60の上面61に酸化防止被覆を施すことが望ましい。
【0052】
図9及び
図10は、電子回路パッケージ11Cの製造方法を説明するための工程図である。
【0053】
まず、
図3及び
図4を用いて説明した方法により、モールド樹脂40を形成した後、
図9に示すように、ダイシング位置を示す破線aに沿って集合基板20Aを切断することにより基板20を個片化する。
【0054】
次に、
図10に示すように、モールド樹脂40の上面41及び側面42、並びに、基板20の側面27を覆うよう、金属膜60を形成する。これにより、基板20の側面27に露出する電源パターン25Gに金属膜60が接続される。そして、金属膜60の上面61に表面抵抗値が10
6Ω以上の材料からなる磁性膜50を形成すれば、
図7に示した電子回路パッケージ11Cが完成する。尚、磁性膜50の材料として比較的抵抗値の低い材料を用いる場合には、金属膜60を形成した後、磁性膜50を形成する前に、熱硬化性材料やSiの酸化物、低融点ガラスなどの絶縁材料からなる絶縁膜70を薄く形成すれば、
図8に示した電子回路パッケージ11Dが得られる。
【0055】
<第2の実施形態>
図11は、本発明の第2の実施形態による電子回路パッケージ12Aの構成を示す断面図である。
【0056】
図11に示すように、本実施形態による電子回路パッケージ12Aは、基板20及び金属膜60の形状が相違する点を除き、
図1に示した第1の実施形態による電子回路パッケージ11Aと同一である。このため、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0057】
本実施形態においては、基板20の側面27が階段状となっている。具体的には、側面上部27aよりも側面下部27bが突出した形状を有している。そして、金属膜60は、基板20の側面全体に形成されているのではなく、側面上部27aと段差部分27cを覆うように設けられており、側面下部27bは金属膜60で覆われていない。本実施形態においても、基板20の側面上部27aにて電源パターン25Gが露出していることから、この部分を介して金属膜60が電源パターン25Gに接続される。尚、磁性膜50の材料として比較的抵抗値の低い材料を用いる場合には、
図12に示す変形例による電子回路パッケージ12Bのように、磁性膜50と金属膜60の間に薄い絶縁膜70を介在させる必要がある。
【0058】
図13及び
図14は、電子回路パッケージ12Aの製造方法を説明するための工程図である。
【0059】
まず、
図3〜
図5を用いて説明した方法により、モールド樹脂40の上面41に磁性膜50を形成した後、
図13に示すように、ダイシング位置を示す破線aに沿って溝43を形成する。溝43は、モールド樹脂40を完全に切断し、且つ、基板20を完全には切断しない深さとする。これにより、溝43の内部にモールド樹脂40の側面42と、基板20の側面上部27a及び段差部分27cが露出することになる。ここで、側面上部27aの深さとしては、少なくとも電源パターン25Gが露出する深さに設定する必要がある。また、
図12に示した変形例のように、磁性膜50と金属膜60との間に絶縁膜70を介在させる必要がある場合には、溝43を形成する前に、磁性膜50の上面51に熱硬化性材料や耐熱性熱可塑性材料、Siの酸化物、低融点ガラスなどの絶縁材料を薄く形成すればよい。
【0060】
次に、
図14に示すように、スパッタリング法、蒸着法、無電解メッキ法、電解メッキ法などを用いて金属膜60を形成する。これにより、磁性膜50の上面51及び溝43の内部が金属膜60によって覆われる。この時、基板20の側面上部27aに露出する電源パターン25Gは、金属膜60に接続されることになる。
【0061】
そして、破線aに沿って集合基板20Aを切断することにより基板20を個片化すれば、本実施形態による電子回路パッケージ12Aが完成する。
【0062】
このように、本実施形態による電子回路パッケージ12Aの製造方法によれば、溝43を形成していることから、集合基板20Aを個片化する前に金属膜60を形成することができ、金属膜60の形成が容易かつ確実となる。
【0063】
図15は、第2の実施形態の変形例による電子回路パッケージ12Cの構成を示す断面図である。
図15に示す電子回路パッケージ12Cは、磁性膜50が金属膜60の上面61に形成されている点において、
図11に示した電子回路パッケージ12Aと相違している。つまり、磁性膜50と金属膜60からなる積層膜の位置関係が逆である。その他の点は、
図11に示した電子回路パッケージ12Aと同じである。このような構成であっても、電磁波ノイズが金属膜60に入射されることにより生じる渦電流がほとんど磁性膜50に流れ込まないことから、渦電流の流入による磁性膜50の磁気特性の低下を防止することが可能となる。また、磁性膜50の材料として比較的抵抗値の低い材料を用いる場合には、
図16に示す電子回路パッケージ12Dのように、金属膜60と磁性膜50との間に薄い絶縁膜70を介在させればよい。
【0064】
<第3の実施形態>
図17は、本発明の第3の実施形態による電子回路パッケージ13Aの構成を示す断面図である。
【0065】
図17に示すように、本実施形態による電子回路パッケージ13Aは、磁性膜50がモールド樹脂40の上面41だけでなく、側面42を覆っている点において、
図1に示した第1の実施形態による電子回路パッケージ11Aと相違している。その他の構成は、第1の実施形態による電子回路パッケージ11Aと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0066】
本実施形態においては、モールド樹脂40の側面42が磁性膜50によって完全に覆われており、したがって、モールド樹脂40と金属膜60が接する部分は実質的に存在しない。このような構成によれば、モールド樹脂40の側面における複合シールド効果が高められる。特に、モールド樹脂40の側面方向に放射される電磁波ノイズが効果的にシールドされる。
【0067】
また、磁性膜50の材料として比較的抵抗値の低い材料を用いる場合には、
図18に示す変形例による電子回路パッケージ13Bのように、磁性膜50の上面51と金属膜60の間に薄い絶縁膜70を介在させる必要があり、
図19に示す別の変形例による電子回路パッケージ13Cのように、磁性膜50の上面51及び側面52と金属膜60の間に薄い絶縁膜70を介在させることがより好ましい。
【0068】
図20〜
図22は、電子回路パッケージ13Aの製造方法を説明するための工程図である。
【0069】
まず、
図3及び
図4を用いて説明した方法によりモールド樹脂40を形成した後、
図20に示すように、ダイシング位置を示す破線aに沿って幅W1の溝44を形成する。溝44は、モールド樹脂40をほぼ完全に切断し、且つ、基板20に形成された内部配線25に達しない深さとする。これにより、溝44の内部には、モールド樹脂40の側面42と、基板20の表面21が露出することになる。
【0070】
次に、
図21に示すように、溝44の内部を埋めるよう磁性膜50を形成する。この時、溝44の内部を磁性膜50で完全に埋めることは必須でないが、溝44の内部を磁性膜50で埋める場合には、磁性膜50にある程度の膜厚が必要となることから、磁性膜50としては複合磁性材料を用いる必要がある。これにより、モールド樹脂40の上面41及び側面42に磁性膜50が直接形成されるとともに、溝44の底部に露出する基板20の表面21も磁性膜50で覆われることになる。また、
図18に示した変形例のように、磁性膜50の上面51と金属膜60との間に絶縁膜70を介在させる必要がある場合には、磁性膜50を形成した後、その上面51に熱硬化性材料や耐熱性熱可塑性材料、Siの酸化物、低融点ガラスなどの絶縁材料を薄く形成すればよい。
【0071】
次に、
図22に示すように、破線aに沿って幅W2の溝45を形成することによって集合基板20Aを切断し、複数の基板20に個片化する。この時、溝45の幅W2は、溝44の幅W1よりも細くする必要がある。これにより、溝44の内部に形成された磁性膜50を残存させたまま、基板20が個片化される。また、
図19に示した変形例のように、磁性膜50の上面51及び側面52と金属膜60との間に絶縁膜70を介在させる場合には、溝45によって基板20を個片化することなく磁性膜50の側面52を露出させた後、磁性膜50の上面51及び側面52に熱硬化性材料や耐熱性熱可塑性材料、Siの酸化物、低融点ガラスなどの絶縁材料を薄く形成し、その後、基板20を切断すればよい。
【0072】
そして、磁性膜50の上面51及び側面52、並びに、基板20の側面27を覆うよう、金属膜60を形成すれば、本実施形態による電子回路パッケージ13Aが完成する。
【0073】
このように、本実施形態による電子回路パッケージ13Aの製造方法は、幅の異なる2つの溝43,44を順次形成していることから、複雑な工程を用いることなく、モールド樹脂40の側面42を磁性膜50で覆うことが可能となる。
【0074】
図23は、第3の実施形態の変形例による電子回路パッケージ13Dの構成を示す断面図である。
図23に示す電子回路パッケージ13Dは、磁性膜50が金属膜60の上面61及び側面62に形成されている点において、
図17に示した電子回路パッケージ13Aと相違している。つまり、磁性膜50と金属膜60からなる積層膜の位置関係が逆である。その他の点は、
図17に示した電子回路パッケージ13Aと同じである。このような構成であっても、電磁波ノイズが金属膜60に入射されることにより生じる渦電流がほとんど磁性膜50に流れ込まないことから、渦電流の流入による磁性膜50の磁気特性の低下を防止することが可能となる。また、磁性膜50の材料として比較的抵抗値の低い材料を用いる場合には、
図24に示す電子回路パッケージ13Eのように、金属膜60の上面61と磁性膜50との間に薄い絶縁膜70を介在させればよく、
図25に示す電子回路パッケージ13Fのように、金属膜60の上面61及び側面62と磁性膜50との間に薄い絶縁膜70を介在させることがより好ましい。
【0075】
<第4の実施形態>
図26は、本発明の第4の実施形態による電子回路パッケージ14Aの構成を示す断面図である。
【0076】
図26に示すように、本実施形態による電子回路パッケージ14Aは、基板20及び金属膜60の形状が相違する点を除き、
図17に示した第3の実施形態による電子回路パッケージ13Aと同一である。このため、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0077】
本実施形態は、第2の実施形態と同様、基板20の側面上部27aよりも側面下部27bが突出した形状を有しており、金属膜60が側面上部27aと段差部分27cを覆うように設けられている。本実施形態においても、基板20の側面上部27aに電源パターン25Gが露出していることから、この部分を介して金属膜60が電源パターン25Gに接続される。尚、磁性膜50の材料として比較的抵抗値の低い材料を用いる場合には、
図27に示す変形例による電子回路パッケージ14Bのように、磁性膜50の上面51(及び側面52)と金属膜60の間に薄い絶縁膜70を介在させる必要がある。
【0078】
図28及び
図29は、電子回路パッケージ14Aの製造方法を説明するための工程図である。
【0079】
まず、
図3、
図4、
図20及び
図21を用いて説明した方法により、モールド樹脂40の上面41及び溝44の内部に磁性膜50を形成した後、
図28に示すように、ダイシング位置を示す破線aに沿って幅W3の溝46を形成する。溝46は、モールド樹脂40を完全に切断し、且つ、基板20を完全には切断しない深さとするとともに、幅W3を
図20に示した溝44の幅W1よりも細くする。これにより、溝46の内部に磁性膜50の側面52と、基板20の側面上部27a及び段差部分27cが露出することになる。ここで、側面上部27aの深さとしては、少なくとも電源パターン25Gが露出する深さに設定する必要がある。
【0080】
次に、
図29に示すように、スパッタリング法、蒸着法、無電解メッキ法、電解メッキ法などを用いて金属膜60を形成する。これにより、金属膜60は、磁性膜50の上面51及び溝46の内部が金属膜60によって覆われる。この時、基板20の側面上部27aに露出する電源パターン25Gは、金属膜60に接続されることになる。
【0081】
そして、破線aに沿って集合基板20Aを切断することにより基板20を個片化すれば、本実施形態による電子回路パッケージ14Aが完成する。
【0082】
このように、本実施形態による電子回路パッケージ14Aの製造方法によれば、第2の実施形態と同様、個片化する前に金属膜60を形成することができることから、金属膜60の形成が容易となる。
【0083】
図30は、第4の実施形態の変形例による電子回路パッケージ14Cの構成を示す断面図である。
図30に示す電子回路パッケージ14Cは、磁性膜50が金属膜60の上面61及び側面62に形成されている点において、
図26に示した電子回路パッケージ14Aと相違している。つまり、磁性膜50と金属膜60からなる積層膜の位置関係が逆である。その他の点は、
図26に示した電子回路パッケージ14Aと同じである。このような構成であっても、電磁波ノイズが金属膜60に入射されることにより生じる渦電流がほとんど磁性膜50に流れ込まないことから、渦電流の流入による磁性膜50の磁気特性の低下を防止することが可能となる。また、磁性膜50の材料として比較的抵抗値の低い材料を用いる場合には、
図31に示す電子回路パッケージ14Dのように、金属膜60の上面61と磁性膜50との間に薄い絶縁膜70を介在させればよく、
図32に示す電子回路パッケージ14Eのように、金属膜60の上面61及び側面62と磁性膜50との間に薄い絶縁膜70を介在させることがより好ましい。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【実施例】
【0085】
<複合磁性ペーストの作成>
以下の方法によって、複合磁性ペーストA(比較例)及び複合磁性ペーストB(実施例)を作成した。
【0086】
まず、磁性粉としてメイト社製Fe−Si−Al系偏平軟磁性金属SP−3A(D50=45μm)を70wt%、エポキシ樹脂としてDIC社製830S(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を30wt%となるよう計量し、硬化促進剤として四国化成工業社製キュアゾールC11Z−CN、粘度調整用溶剤としてブチルカルビトールアセテートを配合し、混錬脱泡装置にて混錬、撹拌することにより、液状の複合磁性ペーストA(比較例)を作成した。
【0087】
一方、上記磁性粉に金属アルコキシドを加水分解することにより、表面にSiO
2被膜を40nm(FE−SEMにて断面サンプルで確認)形成した他は、上記と同じ方法で複合磁性ペーストB(実施例)を作成した。
【0088】
<複合磁性ペーストの物性評価>
(1)透磁率の測定
複合磁性ペーストA,Bを用いて、外径φ=8mm、内径φ=3.1mm、厚み2mmのリング形状のサンプルを作製し、アジレント社製インピーダンスアナライザーE4991のマテリアルアナライザー機能を用いて10MHzでの透磁率μ'を測定した。測定の結果、複合磁性ペーストA(比較例)を用いて作製したサンプルの透磁率はμ'=35、複合磁性ペーストB(実施例)を用いて作製したサンプルの透磁率はμ'=34であり、有意の差は認められなかった。
【0089】
(2)表面抵抗値の測定
次に、30mm×30mmの基板の全面に複合磁性ペーストA,Bをスクリーン印刷により厚み50μm塗布した後、溶剤を乾燥させ、180℃60分で硬化させることによって磁性膜を形成した。そして、磁性膜の表面に平面サイズが10mm×5mmの測定用電極を5mm間隔で2つ形成し、所定の硬化条件にて硬化することによって、表面抵抗値測定サンプルA1,B1を得た。表面抵抗値測定サンプルA1は複合磁性ペーストA(比較例)を使用したサンプルであり、表面抵抗値測定サンプルB1は複合磁性ペーストB(実施例)を使用したサンプルである。
【0090】
さらに、磁性膜を硬化させた後、測定用電極を形成する前に、磁性膜の表面を研磨する工程を追加することによって表面抵抗値測定サンプルA2,B2を作製した。表面抵抗値測定サンプルA2は複合磁性ペーストA(比較例)を使用したサンプルであり、表面抵抗値測定サンプルB2は複合磁性ペーストB(実施例)を使用したサンプルである。
【0091】
そして、アジレント社製ハイレジスタンスメータ4339Bを用い、2つの測定用電極間に10Vの電圧を1分間印加することによって表面抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示すように、表面抵抗値測定サンプルA1,A2については表面抵抗が10
6Ω未満であり、表面抵抗値測定サンプルB1,B2については表面抵抗が10
6Ω以上であった。また、磁性膜の表面を研磨することにより、表面抵抗が低下することも確認された。
【0094】
(3)ノイズ減衰量の測定
次に、基板に50Ωの抵抗が実装され、封止成形されたシールド評価用パッケージの上面にスクリーン印刷にて複合磁性ペーストA(比較例)を厚み50μmで形成し、硬化させて磁性膜とした後、ダイサーで個品化処理を行うことによって、基板の側面にグランドパターンを露出させた。そして、無電解メッキを施すことにより、グランドパターンと接するよう、磁性膜の上面及び側面、並びに、基板の側面にCu(膜厚1μm)とNi(膜厚2μm)の積層膜からなる金属膜を形成し、ノイズ減衰量測定サンプルA3を得た。
【0095】
一方、複合磁性ペーストB(実施例)を使用した他は、ノイズ減衰量測定サンプルA3と同様の方法でノイズ減衰量測定サンプルB3を作製した。
【0096】
さらに、金属膜を形成する前に、磁性膜の表面を研磨する工程を追加した他は、ノイズ減衰量測定サンプルA3,B3と同様の方法で、それぞれノイズ減衰量測定サンプルA4,B4を作製した。磁性膜の表面を研磨する際の条件は、上述した表面抵抗値測定サンプルA2,B2と同一である。
【0097】
そして、ノイズ減衰量測定サンプルA3,A4,B3,B4をシグナルジェネレータに接続して任意周波数の信号を50Ωの抵抗に送信し、各サンプルから放射されるノイズ量を近傍磁界測定装置によって測定した。この際、事前に磁性膜及び金属膜をもたない基準サンプルを作製し、基準サンプルから放射されるノイズ量を測定しておくことで、基準サンプルにおけるノイズ量とノイズ減衰量測定サンプルA3,A4,B3,B4におけるノイズ量の差を算出し、得られた値をノイズ減衰量とした。結果を表2に示す。数値の単位はdBuVである。
【0098】
【表2】
【0099】
表2に示すように、複合磁性ペーストA(比較例)を使用したノイズ減衰量測定サンプルA3,A4よりも、複合磁性ペーストB(実施例)を使用したノイズ減衰量測定サンプルB3,B4の方が、いずれの周波数帯域においてもノイズ減衰量が大きかった。ここで、複合磁性ペーストA(比較例)を使用したノイズ減衰量測定サンプルA3,A4は表面抵抗が10
6Ω未満であり、複合磁性ペーストB(実施例)を使用したノイズ減衰量測定サンプルB3,B4は表面抵抗が10
6Ω以上であるから、磁性膜の表面抵抗を10
6Ω以上とすることにより、高いシールド特性が得られることが確認された。