(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1種類以上の結合されたアジュバントが、Pluronic(登録商標)ブロックコポリマー、特異的に修飾または調製されたペプチド、ムラミルジペプチド、アミノアルキルグルコサミニド4−ホスフェート、RC529、細菌トキソイド、毒素フラグメント、Toll様受容体2、3、4、5、7、8、9および/またはこれらの組み合わせのアゴニスト;アデニン誘導体;免疫刺激性DNA;免疫刺激性RNA;イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン;イミキモド;レシキモド;I型インターフェロン;poly I:C;細菌のリポ多糖(LPS);VSV−G;HMGB−1;フラジェリンまたはその一部または誘導体;またはCpGを含む免疫刺激性DNA分子を含み、任意に、前記1種類以上の結合されたアジュバントが、(a)Toll様受容体2、3、4、7、8もしくは9のアゴニスト;および/または(b)イミダゾキノリンまたはオキソアデニンを含み、任意に前記イミダゾキノリンがレシキモドまたはイミキモドを含む、請求項2に記載の組成物。
前記1種類以上の第1の抗原が、(a)前記1種類以上の第2の抗原と同一である;および/または(b)B細胞抗原もしくはT細胞抗原を含み、任意に前記T細胞抗原がヘルパーT細胞抗原である;または(c)B細胞抗原またはT細胞抗原およびヘルパーT細胞抗原を含み、任意に前記ヘルパーT細胞抗原が、オボアルブミンから得られるか、もしくは誘導されるペプチドを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
1種類以上の第3の抗原を有する第2の集合の合成ナノキャリアをさらに含み、ここで、前記第3の抗原は前記第2の集合の合成ナノキャリアに結合しており、前記第1および第3の抗原が同一ではない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
1種類以上の第1の抗原がペプチドを含み、および/または1種類以上の第2の抗原が、ハプテン−キャリアコンジュゲート、ウイルス様粒子、合成ナノキャリアワクチン、サブユニットタンパク質ワクチン、表面抗原または弱毒化ウイルスを含む、請求項10に記載の組成物。
(a)前記1種類以上の第1の抗原および/または1種類以上の第2の抗原が、VI、VII、E1A、E3−19K、52K、VP1、表面抗原、3Aタンパク質、カプシドタンパク質、ヌクレオカプシド、表面突起、膜貫通タンパク質、UL6、UL18、UL35、UL38、UL19、初期抗原、カプシド抗原、Pp65、gB、p52、潜伏性核抗原−1、NS3、エンベロープタンパク質、エンベロープタンパク質E2ドメイン、gp120、p24、リポペプチドGag(17−35)、Gag(253−284)、Nef(66−97)、Nef(116−145)、Pol(325−355)、ノイラミニダーゼ、ヌクレオカプシドタンパク質、マトリックスタンパク質、リン酸化タンパク質、融合タンパク質、ヘマグルチニン、ヘマグルチニン−ノイラミニダーゼ、糖タンパク質、E6、E7、エンベロープのリポタンパク質または非構造タンパク質(NS)から得られるか、または誘導される;
(b)百日咳毒素(PT)、繊維状ヘマグルチニン(FHA)、パータクチン(PRN)、線毛(FIM 2/3)、VlsE;DbpA、OspA、Hia、PrpA、MltA、L7/L12、D15、0187、VirJ、Mdh、AfuA、L7/L12、外膜タンパク質、LPS、A抗原、B抗原、C抗原、D抗原、E抗原、FliC、FliD、Cwp84、アルファトキシン、シータトキシン、フルクトース1,6−二リン酸アルドラーゼ(FBA)、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GPD)、ピルビン酸フェレドキシン酸化還元酵素(PFOR)、伸長因子−G(EF−G)、機能が未知であるタンパク質(HP)、Tトキシン、トキソイド抗原、莢膜多糖、プロテインD、Mip、核タンパク質(NP)、RD1、PE35、PPE68、EsxA、EsxB、RD9、EsxV、Hsp70、リポ多糖、表面抗原、Sp1、Sp2、Sp3、グリセロホスホジエステルホスホジエステラーゼ、外膜タンパク質、シャペロン・アッシャータンパク質、莢膜タンパク質(F1)またはVタンパク質から得られるか、または誘導される;
(c)表面抗原、莢膜糖タンパク質、Yps3P、Hsp60、主要表面タンパク質、MsgC1、MsgC3、MsgC8、MsgC9またはSchS34から得られるか、または誘導される;あるいは
(e)前記HBsAgが、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で産生されるayw株由来である、請求項13に記載の組成物。
(a)前記1種類以上の第1の抗原がB型肝炎ウイルスから得られるか、または誘導される場合、前記1種類以上の第2の抗原は、ヒトパピローマウイルスの1種類以上のタンパク質から得られるか、または誘導される;あるいは
(b)前記1種類以上の第2の抗原が、B型肝炎ウイルスから得られるか、または誘導される場合、前記1種類以上の第1の抗原は、ヒトパピローマウイルスの1種類以上のタンパク質から得られるか、または誘導され、任意に、ヒトパピローマウイルスの前記1種類以上のタンパク質が、ヒトパピローマウイルスの前記L1および/またはL2タンパク質である、請求項13または14に記載の組成物。
(a)前記1種類以上の第1の抗原が、インフルエンザA型ウイルスのM2タンパク質から得られるか、または誘導され、前記1種類以上の第2の抗原が、H5N1トリインフルエンザウイルスのヘマグルチニンから得られるか、または誘導される;
(b)前記1種類以上の第1の抗原が、H5N1トリインフルエンザウイルスのヘマグルチニンから得られるか、または誘導され、前記1種類以上の第2の抗原が、インフルエンザA型ウイルスのM2タンパク質から得られるか、または誘導される;
(c)前記1種類以上の第1の抗原が、インフルエンザA型ウイルスM2タンパク質から得られるか、または誘導され、前記1種類以上の第2の抗原が、βプロピオラクトン不活化インフルエンザA型ウイルスH1N1から得られるか、または誘導される;あるいは
(d)前記1種類以上の第1の抗原が、βプロピオラクトン不活化インフルエンザA型ウイルスH1N1から得られるか、または誘導され、前記1種類以上の第2の抗原が、インフルエンザA型ウイルスのM2タンパク質から得られるか、または誘導される、
請求項13または14に記載の組成物。
(a)前記ポリエステルが、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)またはポリカプロラクトンを含む;および/または(b)前記親水性ポリマーがポリエーテルを含む、請求項19または20に記載の組成物。
方法に用いるための請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物であって、該方法が、(a)がん、感染症もしくは感染性の疾患を治療もしくは予防する方法である;および/または(b)経口、皮下、経肺、鼻腔内、皮内もしくは筋肉内投与による前記組成物の投与を含む、前記組成物。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】NC−M2eと、H5N1トリインフルエンザ株(Vietnam)由来の遊離ヘマグルチニンとの組み合わせで免疫したマウスにおける抗体価を示す。
【
図2】80μgのミョウバンと混合した、NC−M2eと、H5N1トリインフルエンザ株(Vietnam)由来の遊離ヘマグルチニンとの組み合わせで免疫したマウスにおける抗体価を示す。
【
図3】80μgのミョウバンと混合した、NC−M2eと、βプロピオラクトン不活化インフルエンザA型ウイルスH1N1(H1N1 New Caledonia/20/99/ IVR 116)との組み合わせで免疫したマウスにおける抗体価を示す。
【
図4】80μgのミョウバンと混合した、NC−L2−ペプチドと、酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で産生されるHBsAg株aywとの組み合わせで免疫したマウスにおける抗体価。
【0021】
本発明について詳細に説明する前に、本発明が、ここに特に例示した、それ自体が言うまでもなく変わり得る材料またはプロセスパラメータに限定されるものではないことを、理解されたい。また、本明細書で使用する技術用語は、本発明の特定の実施形態を説明するだけのためのものであり、本発明を説明するのに別の技術用語を使用するのを制限する意図はない旨も理解されたい。
【0022】
本明細書で引用する刊行物、特許および特許出願についてはいずれも、前述であるか後述するものであるかを問わず、あらゆる目的で、その全体を本明細書に援用する。
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、文脈から明らかにそうでないことがわかる場合を除いて、単数形「a」「an」「the」は、同じ名詞の複数形も含む。たとえば、「ポリマー」といえばそのような分子2つ以上の混合物を含み「溶媒」といえば2種類または3種類以上のそのような溶媒の混合物を含み、「接着剤」といえば2種類または3種類以上のそのような材料の混合物を含むといった具合である。
【0024】
緒言
本願発明者らは、想定外かつ驚くべきことに、本明細書に開示の本発明を実施することで、上述した課題および制約を回避できることを見出した。特に、本願発明者らは、1種類以上の第1の抗原が結合した第1の集合の合成ナノキャリアと、合成ナノキャリアに結合していない1種類以上の第2の抗原と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む剤形を含む組成物および関連の方法を提供できることを想定外に発見した。
【0025】
複数の実施形態では、複数集合の合成ナノキャリアが、1種類以上の第2の抗原(多岐にわたる方法で取り込みできる)との組み合わせで、本発明による剤形を形成するものであってもよい。1種類以上の第2の抗原が、溶液形態、懸濁液形態、粉末形態などで提供されるものであってもよく、ワクチン製剤として提供されるものであってもよい。たとえば、一実施形態では、1種類以上の第2の抗原が、ハプテン−キャリアタンパク質または弱毒化ウイルス生ワクチン製剤の形態で提供されるものであってもよく、ハプテン−キャリアタンパク質または弱毒化ウイルス生ワクチン製剤と混合された合成ナノキャリアの集合が多価ワクチン剤形を形成(またはハプテン−キャリアタンパク質または弱毒化ウイルス生ワクチン製剤の価数を増加させる)。もうひとつの実施形態では、合成ナノキャリアの集合が、本発明による多価ワクチン剤形を形成するための感染性の生物由来のタンパク質との組み合わせであってもよい。もうひとつの実施形態では、合成ナノキャリアの集合を、1種類以上の第2の抗原を含む合成ナノキャリアの別の集合に加えて、多価合成ナノキャリアワクチン剤形を形成してもよい。他の複数の実施形態では、合成ナノキャリアの集合を、ウイルス様粒子形態のタンパク質抗原と組み合わせ、本発明による多価ワクチン剤形を形成してもよい。他の複数の実施形態では、1種類以上の第1および/または第2の抗原以外の別の抗原を(混合および本明細書で開示され、あるいは従来から知られている他の技術によって)剤形に取り込むことも可能である。
【0026】
一実施形態では、1種類以上の第1の抗原および任意に普遍的T細胞抗原またはTヘルパー抗原および/またはアジュバントを含む合成ナノキャリアを、1種類以上の第2の抗原(既存のワクチンなど)に加え、カバーする抗原の範囲が広がった混合ワクチンを形成してもよい。
【0027】
たとえば、HPVから守るためのワクチンGardasil(登録商標)およびCervarix(登録商標)は、4組および2組のHPV株からそれぞれ誘導される主要な構造タンパク質であるL1タンパク質からのタンパク質抗原エピトープを含む。9種類ものHPV株からのL1ペプチド抗原を有するワクチンが知られている。ペプチド抗原を複数持つこのようなワクチンは、すべてではないがほとんどのHPV株から個人を潜在的に保護することになる。別のHPV構造的タンパク質であるL2由来の1種類以上のペプチドエピトープを含む合成ナノキャリアの集合を既存のL1タンパク質ベースのワクチンに加えると、HPVへの曝露に対してさらに広い保護が得られ、「普遍的HPVワクチン」が作製される可能性がある。この水分散L2ペプチド合成ナノキャリアの集合は、賦形剤や希釈剤を製剤に加えるのと同じように単に既存の水性ワクチン製剤と混合可能である。カバーする範囲を広げるためのこの単純な方法によって、従来なされているようにL2ペプチドを操作して組換えタンパク質抗原形態にする必要がなくなる。これを以下の実施例1および2に示すが、これらの実施例を合わせると、L2タンパク質から誘導されるペプチドを含む合成ナノキャリアで増強した従来のGardasil(登録商標)含む混合HPVワクチンの形成を示すものとなる。
【0028】
発明性のある合成ナノキャリアの混合ワクチン手法を汎用化して、感染因子のさまざまな株に対する100%未満の保護で他の感染性の疾患の予防または治療用ワクチンにすることが可能である。また、がんまたは小分子因子などの非感染性の疾患標的に向けた予防および/または治療用ワクチンに使用可能である。複数の実施形態では、発明性のある組成物が、高濃度でのタンパク質抗原の可溶性の制限なく容易に処方可能な既存の「従来の」ワクチンと合成ナノキャリアとの組み合わせを提供する。これによって、多価ワクチンの容量を減らし、処方しやすさを増すことが可能である。
【0029】
実施例3〜6および8〜11は、本発明の異なる実施形態を示す。実施例3および4は、表面吸着ヘパリンを第1の抗原として有する、従来のB型肝炎ワクチンを合成ナノキャリアで増強した混合ワクチンを示す。実施例5および6は、HPVのL2タンパク質から誘導されるペプチドを含む合成ナノ粒子で増強した、従来の抗ロタウイルスワクチンの経口混合ワクチンを示す。実施例8および9は、H5N1トリインフルエンザ株(Vietnam)由来の遊離ヘマグルチニンを、混合アジュバントありまたはなしで、M2e、OP−II TヘルパーペプチドおよびR848を含む合成ナノキャリアで増強した混合ワクチンを示す。実施例10は、不活化インフルエンザA型ウイルスH1N1ワクチンを、ミョウバンを混合したM2e、OP−II TヘルパーペプチドおよびR848アジュバントを含む合成ナノキャリアで増強した組み合わせを示す。実施例11は、組換えB型肝炎表面抗原を、ミョウバンを混合したL2ペプチド、OP−II TヘルパーペプチドおよびR848を含む合成ナノキャリアで増強した組み合わせを示す。実施例に例示する組成物も、それを被検体に投与する方法と同様に本明細書にて提供される。
【0030】
以下、本発明について一層詳細に説明する。
【0031】
定義
「アジュバント」とは、特定の抗原を構成しないが、同時投与された抗原、好ましくは抗原と一緒に剤形に存在する抗原、より好ましくは同時に投与される抗原に対する免疫反応の強度と、もちとをブーストする因子を意味する。このようなアジュバントは、Toll様受容体、RIG−1およびNOD様受容体(NLR)などのパターン認識受容体の刺激物質、ミョウバンなどの鉱物塩、エシェリキア・コリ(Escherihia coli)、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)またはシゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)などの腸内細菌のモノホスホリルリピド(MPL)Aと組み合わせたミョウバン、あるいは特にMPL(登録商標)(AS04)すなわち上述した細菌のMPL Aと別々に組み合わせたミョウバン、QS−21、Quil−A、ISCOMs、ISCOMATRIX(商標)などのサポニン、MF59(商標)、Montanide(登録商標) ISA 51およびISA 720などのエマルション、AS02(QS21+スクワレン+MPL(登録商標))、AS15、AS01などのリポソームおよびリポソーム製剤、ナイセリア・ゴノレー(N. gonorrheae)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)といった細菌由来の外膜小胞(OMV)などの合成または特異的に調製した微粒子およびマイクロキャリア、あるいはキトサン粒子、Pluronic(登録商標)ブロックコポリマーなどのデポを形成する作用剤、ムラミルジペプチドなどの特異的に修飾または調製されたペプチド、RC529などのアミノアルキルグルコサミニド4−ホスフェート、あるいは細菌トキソイドまたは毒素フラグメントなどのタンパク質を含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
複数の実施形態では、アジュバントが、Toll様受容体(TLR)、特にTLR 2、3、4、5、7、8、9および/またはこれらの組み合わせを含むがこれに限定されるものではないパターン認識受容体(PRR)のアゴニストを含む。他の複数の実施形態では、アジュバントが、Toll様受容体3のアゴニスト、Toll様受容体7および8のアゴニスト、またはToll様受容体9のアゴニストを含み、好ましくは、標記のアジュバントが、R848(レシキモド)などのイミダゾキノリン、米国特許第6,329,381号明細書(Sumitomo Pharmaceutical Company)、Biggadikeらの米国特許出願公開第2010/0075995号明細書またはCamposらの国際公開第2010/018132号パンフレットに開示されているものなどのアデニン誘導体、免疫刺激性DNAまたは免疫刺激性RNAを含む。特定の実施形態では、複数の合成ナノキャリアが、toll様受容体(TLR)7&8のアゴニスト(「TLR 7/8アゴニスト」)である化合物を、アジュバントとして取り込む。有用なのは、Tomaiらに付与された米国特許第6,696,076号明細書に開示されたTLR 7/8アゴニスト化合物であり、一例として、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミンがあげられるが、これに限定されるものではない。好ましいアジュバントは、イミキモドおよびレシキモドを含む。特定の実施形態では、アジュバントが、DC表面分子CD40のアゴニストであってもよい。特定の実施形態では、耐性ではなく免疫を刺激するために、合成ナノキャリアが、DCの成熟(T細胞を刺激するのに必要)および抗体の免疫反応を刺激する、I型インターフェロンなどのサイトカインの産生を促進するアジュバントを取り込む。複数の実施形態では、アジュバントが、dsRNAまたはpoly I:poly C12U(Ampligen(登録商標)として入手可能、poly I:Cおよびpoly I:polyC12UはともにTLR3刺激剤として知られる)および/またはF. Heil et al., “Species−Specific Recognition of Single−Stranded RNA via Toll−like Receptor 7 and 8” Science 303(5663), 1526〜1529 (2004);J. Vollmer et al., “Immune modulation by chemically modified ribonucleosides and oligoribonucleotides” 国際公開第2008033432A2号パンフレット;A. Forsbach et al., “Immunostimulatory oligoribonucleotides containing specific sequence motif(s) and targeting the Toll−like receptor 8 pathway” 国際公開第2007062107A2号パンフレット;E. Uhlmann et al., “Modified oligcoribonucleotide analogs with enhanced immunostimulatory activity” 米国特許出願公開第2006241076号明細書;G. Lipford et al., “Immunostimulatory viral RNA oligonucleotides and use for treating cancer and infections” 国際公開第2005097993A2号パンフレット;G. Lipford et al., “Immunostimulatory G,U−containing oligoribonucleotides, compositions, and screening methods” 国際公開第2003086280A2号パンフレットに開示されているものなどであるがこれに限定されるものではない、免疫刺激性RNA分子を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、アジュバントが、細菌のリポ多糖(LPS)、VSV−Gおよび/またはHMGB−1などのTLR−4アゴニストであってもよい。いくつかの実施形態では、アジュバントが、米国特許第6,130,082号明細書、同第6,585,980号明細書、同第7,192,725号明細書に開示されているものを含むがこれに限定されるものではない、フラジェリンまたはその一部または誘導体などのTLR−5アゴニストを含むものであってもよい。特定の実施形態では、合成ナノキャリアは、I型インターフェロンの分泌を誘導し、T細胞およびB細胞の活性化を刺激して抗体の産生量および細胞傷害性T細胞の応答を増す、CpGを含む免疫刺激性DNA分子などのtoll様受容体(TLR)−9のリガンドを取り込む(Krieg et al., CpG motifs in bacterial DNA trigger direct B cell activation. Nature. 1995. 374:546〜549;Chu et al. CpG oligodeoxynucleotides act as adjuvants that switch on T helper 1 (Th1) immunity. J. Exp. Med. 1997. 186:1623〜1631;Lipford et al. CpG−containing synthetic oligonucleotides promote B and cytotoxic T cell responses to protein antigen: a new class of vaccine adjuvants. Eur. J. Immunol. 1997. 27:2340〜2344;Roman et al. Immunostimulatory DNA sequences function as T helper−1−promoting adjuvants. Nat. Med. 1997. 3:849〜854;Davis et al. CpG DNA is a potent enhancer of specific immunity in mice immunized with recombinant hepatitis B surface antigen. J. Immunol. 1998. 160:870〜876;Lipford et al., Bacterial DNA as immune cell activator. Trends Microbiol. 1998. 6:496〜500;Kriegらに付与された米国特許第6,207,646号明細書;Tuckらに付与された米国特許第7,223,398号明細書;Van Nestらに付与された米国特許第7,250,403号明細書;またはKriegらに付与された米国特許第7,566,703号明細書)。
【0033】
いくつかの実施形態では、アジュバントが、ネクローシス細胞から放出される炎症誘発性刺激物質(尿酸結晶など)であってもよい。いくつかの実施形態では、アジュバントが、補体カスケードの活性成分(たとえば、CD21、CD35など)であってもよい。いくつかの実施形態では、アジュバントが、免疫複合体の活性成分であってもよい。アジュバントは、CD21またはCD35に結合する分子などの補体受容体アゴニストも含む。いくつかの実施形態では、補体受容体アゴニストが、合成ナノキャリアの内在性の補体オプソニン化を誘発する。いくつかの実施形態では、アジュバントがサイトカインであるが、これは細胞によって放出され、細胞間相互作用、他の細胞のコミュニケーションおよび挙動に対して特定の効果を持つ小さなタンパク質または生物学的因子(5kD〜20kDの範囲)である。いくつかの実施形態では、サイトカイン受容体アゴニストが、小分子、抗体、融合タンパク質またはアプタマーである。
【0034】
複数の実施形態では、投与量の少なくとも一部に相当するアジュバントを合成ナノキャリアと結合させてもよく、好ましくは、投与量の全部に相当するアジュバントが合成ナノキャリアに結合される。他の複数の実施形態では、投与量の少なくとも一部に相当するアジュバントが合成ナノキャリアに結合されない。複数の実施形態では、一投与量に相当するアジュバントが、2以上のタイプのアジュバントを含む。たとえば、限定されることなく、異なるTLR受容体に作用する複数のアジュバントを組み合わせてもよい。一例として、一実施形態では、TLR 7/8アゴニストを、TLR 9アゴニストと組み合わせてもよい。もうひとつの実施形態では、TLR 7/8アゴニストを、TLR 4アゴニストと組み合わせてもよい。さらにもうひとつの実施形態では、TLR 9アゴニストを、TLR 3アゴニストと組み合わせてもよい。
【0035】
「投与する」または「投与」とは、薬理学的に有用な方法で被検体に剤形を与えることを意味する。
【0036】
「有効な量」とは、1種類以上の所望の免疫反応を生む組成物の量のことである。この量は、in vitro目的であってもin vivo目的であっても構わない。in vivo目的の場合、この量は、健康に関する専門医が、1種類以上の抗原に特異的な抗体反応の必要な被検体にとって臨床的に利益があると思うであろう量であればよい。したがって、複数の実施形態では、有効な量とは、健康に関する専門医が、本明細書にて提供する発明性のある組成物の抗原に対する抗体反応を生じさせることができると思う量である。有効量については、常法で監視可能である。1種類以上の所望の免疫反応を生じさせるのに有効な量は、所望の治療エンドポイントまたは所望の治療結果を生み出す、本明細書にて提供する組成物の量であっても構わない。したがって、他の実施形態では、有効な量とは、本明細書にて提供する被検体で治療効果(予防効果を含む)が得られると臨床医が信じる量である。このような被検体は、がん、感染症または感染性の疾患に羅患しているまたは羅患するリスクのある被検体を含む。
【0037】
もちろん、有効な量は、治療対象となる特定の被検体;症状、疾患または機能障害の重篤度;年齢、健康状態、体格、体重をはじめとする個々の患者のパラメータ;治療期間;同時に行う治療(ある場合)の性質;健康に関する専門医の知識および専門性の範囲内である特定の投与経路および同様の要因に左右されることになる。これらの要因は当業者間で周知であり、常法の実験だけで対処可能である。通常は、「最大投与量」すなわち、信頼できる医学的判断で安全だとされる最高投与量を使用するのが好ましい。しかしながら、医療上の理由、心理的な理由または事実上他の何らかの理由から、患者がそれよりも少ない投与量または許容可能な投与量を主張することもある旨は、当業者であれば理解できよう。本明細書にて提供する発明性のある組成物のいずれかの抗原が、実施形態において、有効な量であっても構わない。
【0038】
「抗原」は、B細胞抗原またはT細胞抗原を意味する。複数の実施形態では、抗原が、合成ナノキャリアに結合される。複数の実施形態では、本発明による剤形が、1種類以上の抗原、たとえば、1種類以上の第1の抗原、1種類以上の第2の抗原、1種類以上の第3の抗原、1種類以上の第4の抗原、1種類以上の別の抗原を含む。複数の実施形態では、抗原が、合成ナノキャリアに結合されない。複数の実施形態で、抗原を合成ナノキャリアと同時投与する。他の実施形態では、抗原を合成ナノキャリアと同時投与しない。「抗原のタイプ」は、抗原的な特徴が同一または実質的に同一の分子を意味する。
【0039】
「投与量の少なくとも一部に相当する」は、最大で投与量全部を含む範囲での投与量の少なくとも一部を意味する。
【0040】
「リスクのある」被検体とは、健康に関する専門医が、感染、感染性の疾患、またはがんを含むがこれに限定されるものではない、本明細書にて提供する疾患または症状に羅患する可能性があると思う被検体のことである。
【0041】
「B細胞抗原」は、B細胞における免疫反応である、あるいはB細胞における免疫反応によって認識され、これを惹起する抗原を意味する(たとえば、B細胞のB細胞受容体によって特異的に認識される抗原)。いくつかの実施形態では、T細胞抗原である抗原が、B細胞抗原でもある。他の複数の実施形態では、T細胞抗原が、B細胞抗原ではない。B細胞抗原は、タンパク質、ペプチド、小分子、および炭水化物を含むがこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、B細胞抗原が非タンパク質抗原を含む(すなわち、タンパク質またはペプチド抗原ではない)。いくつかの実施形態では、B細胞抗原が、感染因子に関連する炭水化物を含む。いくつかの実施形態では、B細胞抗原が、感染因子に関連する糖タンパク質または糖ペプチドを含む。感染因子は、細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫またはプリオンであり得る。いくつかの実施形態では、B細胞抗原が、免疫原性の低い抗原を含む。いくつかの実施形態では、B細胞抗原が乱用物質またはその一部を含む。いくつかの実施形態では、B細胞抗原が嗜癖性物質またはその一部を含む。嗜癖性物質としては、ニコチン、麻薬、鎮咳剤、精神安定剤、鎮静剤があげられるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、B細胞抗原が、化学兵器または天然起源由来の毒素、または汚染物質などの毒素を含む。B細胞抗原は、危険な環境因子を含むこともある。いくつかの実施形態では、B細胞抗原が、自己抗原を含む。他の複数の実施形態では、B細胞抗原同種抗原、アレルゲン、接触感作性物質、変性疾患の抗原、ハプテン、感染性の疾患の抗原、がん抗原、アトピー性疾患の抗原、自己免疫疾患の抗原、嗜癖性物質、異種抗原または代謝疾患酵素またはその酵素産物を含む。
【0042】
「結合」または「結合した」または「結合する」(など)は、1つの実体(部分など)が別の実体と化学的に関連することを意味する。いくつかの実施形態では、カップリングが共有結合であり、カップリングが、2つの実体間に共有結合が存在する文脈で起こることを意味する。非共有結合の実施形態では、非共有結合のカップリングが、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理的吸着、ホストゲスト相互作用、疎水性相互作用、チミン同士のスタッキングによる相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子−双極子相互作用および/またはこれらの組み合わせを含むがこれに限定されるものではない、非共有結合の相互作用によってなされる。複数の実施形態では、カプセル化が、カップリングの一形態である。複数の実施形態では、複数集合の合成ナノキャリアが、これに結合した1種類以上の抗原および/またはアジュバントを含み、これは、集合内の複数、好ましくは多数の合成ナノキャリアが、互いに似通った1種類以上の抗原および/またはアジュバントと結合していることを意味する。他の複数の実施形態では、発明性のある剤形が、合成ナノキャリアの集合内で合成ナノキャリアに結合していない抗原および/またはアジュバントを含むものであってもよい。
【0043】
「誘導される」とは、起源から取得され、実質的な修飾がなされることを意味する。たとえば、天然のペプチドまたは核酸、好ましくは天然のコンセンサスペプチドまたは核酸との配列の相同性がわずか50%であるペプチドまたは核酸は、天然のペプチドまたは核酸から誘導されると言われる。実質的な修飾とは、対象となる材料の化学的または免疫学的特性に有意に影響する修飾のことである。誘導されるペプチドおよび核酸は、前記誘導されるペプチドおよび核酸の化学的または免疫学的特性が、天然のペプチドまたは核酸と比較して変化している場合に、天然のペプチドまたは核酸配列との同一性が50%を超える配列を有するものを含み得る。これらの化学的または免疫学的特性は、親水性、安定性、親和性、合成ナノキャリアなどのキャリアと結合する機能を含む。
【0044】
「剤形」は、被検体への投与に適した媒質、キャリア、賦形剤またはデバイス内の薬理学的および/または免疫学的に活性な材料を意味する。
【0045】
「カプセル化する」は、合成ナノキャリア内に封入すること、好ましくは合成ナノキャリア内に完全に封入することを意味する。カプセル化された物質の大半またはすべてが、合成ナノキャリア外の局地環境に曝露されることがない。カプセル化は、物質の大半またはすべてを合成ナノキャリアの表面上において、その物質を合成ナノキャリア外の局地環境に曝露したままにする吸着とは区別される。
【0046】
「同一」とは、物質が別の物質との間で1種類以上の共通の化学的および/または免疫学的特徴を有することを意味する。たとえば、1種類以上の抗原は、両方の抗原の組が1種類以上の共通の化学的および/または免疫学的特徴を有する場合に、1種類以上の他の抗原と同一である。抗原などの物質は、同一である基準を満たさない場合に同一ではない。特定の生物学的に活性なマクロ分子が、従来技術において知られているように、それぞれの配列を整合させて測定可能な同一率を互いに持つものとして説明できる。このような生物学的に活性なマクロ分子は、互いに同一性が20%を超える場合、好ましくは同一性が30%を超える場合、好ましくは同一性が40%を超える場合、好ましくは同一性が50%を超える場合、好ましくは同一性が60%を超える場合、好ましくは同一性が70%を超える場合、好ましくは同一性が80%を超える場合、または好ましくは同一性が90%を超える場合に、本発明の範囲内で同一である。
【0047】
「感染症」または「感染性の疾患」とは、微生物、病原体あるいは、細菌、真菌、プリオンまたはウイルスなどの他の因子によって生じる症状または疾患である。
【0048】
「単離された核酸」は、その自然な環境から分離され、それを同定または使用できるだけの十分な量で存在する核酸を意味する。単離された核酸は、(i)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などによってin vitroにて増幅されたもの;(ii)クローニングによって組換え的に作られたもの;(iii)切断およびゲル分離時に精製されたもの;または(iv)化学合成などによって合成されたものであってもよい。単離された核酸は、従来技術において周知の組換えDNA技術によって容易に操作されるものである。よって、5’および3’制限部位が既知であるか、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプライマー配列が開示されているベクターに含まれる塩基配列は単離されているとみなされるが、その自然な状態で天然の宿主に存在する核酸配列は単離されたものではない。単離された核酸は、実質的に精製されたものであってもよいが、そうでなくても構わない。たとえば、クローニングまたは発現ベクター内で単離された核酸は、それが存在する細胞でわずかな割合の材料しか含み得ないという点で、純粋ではない。しかしながら、このような核酸は、当業者らに知られた標準的な技術で容易に操作可能であるため、その表現が本明細書で用いられる形で単離されている。本明細書にて提供するどの核酸を単離してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書にて提供する組成物の抗原が、抗原ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする単離された核酸など、単離された核酸の形で存在する。
【0049】
「単離されたペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質」は、ポリペプチド(またはペプチドまたはタンパク質)が、その本来の環境から分離され、同定または使用できるだけの十分な量で存在することを意味する。これは、たとえば、ポリペプチド(またはペプチドまたはタンパク質)またはタンパク質を、(i)発現クローニングによって選択的に作製または(ii)クロマトグラフィまたは電気泳動で精製してもよいことを意味する。単離されたペプチド、タンパク質またはポリペプチドは、実質的に純粋であってもよいが、そうでなくても構わない。単離されたペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を、製剤調製物中にて薬学的に許容可能なキャリアと混合してもよいため、ポリペプチド(またはペプチドまたはタンパク質)が、重量比で調製物をわずかな割合しか含まないものであってもよい。それにもかかわらず、このポリペプチド(またはペプチドまたはタンパク質)は、生物系でこれが関連することのある物質から分離されているという意味で単離されている、すなわち、他のタンパク質(またはペプチドまたはポリペプチド)から単離されている。本明細書にて提供するどのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を単離してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書にて提供する組成物の抗原が、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である。
【0050】
「合成ナノキャリアの最大寸法」は、合成ナノキャリアのいずれかの軸に沿って測定したナノキャリアの最も大きな寸法を意味する。「合成ナノキャリアの最小寸法」は、合成ナノキャリアのいずれかの軸に沿って測定した合成ナノキャリアの最も小さな寸法を意味する。たとえば、回転楕円形の合成ナノキャリアの場合、合成ナノキャリアの最大寸法および最小寸法は実質的に等しく、その直径の大きさであろう。同様に、直方体形の合成ナノキャリアの場合、合成ナノキャリアの最小寸法は、高さ、幅または長さが最小であろうが、かたや合成ナノキャリアの最大寸法は、その高さ、幅または長さが最大であろう。一実施形態では、試料中の合成ナノキャリアの総数に対して、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法が、100nmを上回る。一実施形態では、試料中の合成ナノキャリアの総数に対して試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法が、5μm以下である。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの総数に対して試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法が、110nm超、より好ましくは120nm超、より好ましくは130nm超、なお一層好ましくは150nm超である。発明性のある合成ナノキャリアの最大寸法と最小寸法とのアスペクト比は、実施形態ごとに変わる場合がある。たとえば、合成ナノキャリアの最大寸法対最小寸法のアスペクト比は、1:1〜1,000,000:1、好ましくは1:1〜100,000:1、より好ましくは1:1〜1000:1、一層好ましくは1:1〜100:1、なお一層好ましくは1:1〜10:1で変わる場合がある。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの総数に対して試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法が、3μm以下、より好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、より好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、なお一層好ましくは500nm以下である。好ましい実施形態では、試料中の合成ナノキャリアの総数に対して試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法が、100nm以上、より好ましくは120nm以上、より好ましくは130nm以上、より好ましくは140nm以上、なお一層好ましくは150nm以上である。合成ナノキャリアの大きさの測定値は、合成ナノキャリアを液体(通常は水性)の媒質に分散させ、動的光散乱を用いる(Brookhaven ZetaPALS機器を使用するなど)ことで、得られる。
【0051】
「得られる」は、実質的な修飾なしで起源から取得されることを意味する。実質的な修飾とは、対象となる材料の化学的または免疫学的特性に有意に影響する修飾のことである。たとえば、非限定的な例として、天然のペプチドまたは塩基配列、好ましくは天然のコンセンサスペプチドまたは塩基配列との配列の同一性が90%を超える、好ましくは95%を超える、好ましくは97%を超える、好ましくは98%を超える、好ましくは99%を超える、好ましくは100%であって、天然のペプチドまたは核酸と比較して化学的および/または免疫学的特性が有意に異ならないペプチドまたは核酸が、天然のペプチドまたは塩基配列から得られると言える。これらの化学的または免疫学的特性は、親水性、安定性、親和性、合成ナノキャリアなどのキャリアと結合する機能を含む。
【0052】
「薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤」は、剤形内に含有されるが、剤形の主要な薬理学的活性には実質的に寄与しない材料を意味する。複数の実施形態では、材料が薬理学的に不活性である。複数の実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤が、保存剤、緩衝液、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水、着色剤または安定剤を含む。薬学的に許容可能な賦形剤は、糖(グルコース、ラクトースなど)、抗菌剤などの保存剤、再構成助剤、着色剤、生理食塩水(リン酸緩衝生理食塩水など)、緩衝液などであるが、これに限定されるものではない、従来技術において知られている多岐にわたる材料を含む。
【0053】
「集合」は、1種類以上の共通の物理的特徴または化学的特徴を有する合成ナノキャリアの規定の群を意味する。共通の物理的特徴または化学的特徴は、共通の結合した抗原、結合した共通のアジュバント、バルクナノキャリアを構成する共通の材料、共通の形状、共通の粒度などを有することを含むものであってもよい。複数集合の合成ナノキャリアを同定してもよく、たとえば、第1の集合、第2の集合、第3の集合、第4の集合といった具合である。
【0054】
「被検体」は、ヒトおよび霊長類などの温血哺乳動物;鳥類;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタなどの飼育動物または家畜;マウス、ラット、モルモットなどの実験動物;魚;爬虫類;動物園の動物および野生動物などを含む動物を意味する。
【0055】
「合成ナノキャリア」は、天然には見られず、大きさが5ミクロン以下の少なくとも1つの寸法を有する離散的な物体を意味する。通常、合成ナノキャリアとしてはアルブミンのナノ粒子が含まれるが、特定の実施形態では、合成ナノキャリアがアルブミンのナノ粒子を含まない。複数の実施形態では、発明性のある合成ナノキャリアが、キトサンを含まない。
【0056】
合成ナノキャリアは、脂質ベースのナノ粒子(たとえばリポソーム)(本明細書では脂質ナノ粒子、すなわち、その構造をなす材料の大部分が脂質であるナノ粒子とも呼ばれる)、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウイルス様粒子(すなわち、主にウイルスの構造タンパク質で構成されるが、感染性ではないか、感染力が低い粒子)、ペプチドまたはタンパク質ベースの粒子(本明細書ではタンパク質粒子、すなわち、その構造をなす材料の大部分がペプチドまたはタンパク質である粒子とも呼ばれる)(アルブミンナノ粒子など)および/または脂質−ポリマーナノ粒子などのナノ材料の組み合わせを用いて開発されるナノ粒子の1つまたは複数であればよいが、これに限定されるものではない。合成ナノキャリアは、回転楕円形、直方体形、錐形、長円形、円柱形、ドーナツ形などを含むがこれに限定されるものではない、多岐にわたる異なる形状であってもよい。合成ナノキャリアは、回転楕円形、直方体形、錐形、長円形、円柱形、ドーナツ形などを含むがこれに限定されるものではない、多岐にわたる異なる形状であってもよい。本発明による合成ナノキャリアは、内面(一般に合成ナノキャリアの内側を向いている表面)および外面(一般に合成ナノキャリアの外部環境に向いている表面)をはじめとするこれに限定されるものではない、1種類以上の表面を含む。本発明を実施する上で使用できるよう適合させることが可能な合成ナノキャリアの例として、(1)Grefらに付与された米国特許第5,543,158号明細書に開示された生分解性ナノ粒子、(2)Saltzmanらの米国特許出願公開第20060002852号明細書のポリマーナノ粒子、(3)DeSimoneらの米国特許出願公開第20090028910号明細書のリソグラフィ的に構成したナノ粒子、(4)von Andrianらの国際公開第2009/051837号パンフレットの開示、(5)Penadesらの米国特許公開第2008/0145441号明細書に開示されたナノ粒子、(6)de los Riosらの米国特許出願公開第20090226525号明細書に開示されたタンパク質ナノ粒子、(7)Sebbelらの米国特許出願公開第20060222652号明細書に開示されたウイルス様粒子、(8)Bachmannらの米国特許出願公開第20060251677に開示された核酸結合ウイルス様粒子、(9)国際公開第2010047839A1号パンフレットまたは国際公開第2009106999A2号パンフレットに開示されたウイルス様粒子または(10)P. Paolicelli et al., “Surface−modified PLGA−based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus−like Particles” Nanomedicine. 5(6):843〜853 (2010)に開示されたナノ沈殿させたナノ粒子があげられる。複数の実施形態では、合成ナノキャリアのアスペクト比が、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7を超える、あるいは1:10を超えるものであってもよい。
【0057】
最小寸法が約100nm以下、好ましくは100nm以下の本発明による合成ナノキャリアは、補体を活性化するヒドロキシル基のある表面を含まないか、本質的に補体を活性化するヒドロキシル基ではない部分からなる表面を含む。好ましい実施形態では、最小寸法が約100nm以下、好ましくは100nm以下の本発明による合成ナノキャリアが、補体を実質的に活性化する表面を含まないか、本質的に補体を実質的に活性化する部分からなる表面を含む。一層好ましい実施形態では、最小寸法が約100nm以下、好ましくは100nm以下の本発明による合成ナノキャリアが、補体を活性化する表面を含まないか、本質的に補体を活性化しない部分からなる表面を含む。複数の実施形態では、合成ナノキャリアが、ウイルス様粒子を除外する。複数の実施形態では、合成ナノキャリアがウイルス様粒子を含む場合、ウイルス様粒子が非天然のアジュバントを含む(VLPが、VLPの産生時に生成される天然にj発生するRNA以外のアジュバントを含むことを意味する)。複数の実施形態では、合成ナノキャリアのアスペクト比が、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7を超える、あるいは1:10を超えるものであってもよい。
【0058】
「T細胞抗原」は、T細胞において認識され、免疫反応を惹起する抗原を意味する(たとえば、クラスIまたはクラスIIの主要組織適合性抗原遺伝子複合体分子(MHC)に結合した、あるいはCD1複合体に結合した、抗原またはその一部の提示によってNKT細胞またはT細胞上のT細胞受容体に特異的に認識される抗原)。いくつかの実施形態では、T細胞抗原である抗原が、B細胞抗原でもある。他の複数の実施形態では、T細胞抗原が、B細胞抗原ではない。T細胞抗原は通常、タンパク質またはペプチドである。T細胞抗原は、CD8+ T細胞応答、CD4+ T細胞応答またはその両方を刺激する抗原であってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、ナノキャリアが両方のタイプの応答を効果的に刺激する。
【0059】
いくつかの実施形態では、T細胞抗原が「普遍的」T細胞抗原またはT細胞メモリー抗原である(すなわち、被検体がこれに対してあらかじめ存在するメモリーを有し、無関係のB細胞抗原などの無関係の抗原に対するT細胞の助けをブーストする)。普遍的T細胞抗原は、破傷風トキソイドならびに、破傷風トキソイド、エプスタイン・バーウイルスまたはインフルエンザウイルスから誘導される1種類以上のペプチドを含む。また、普遍的T細胞抗原は、ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼまたは核タンパク質などのインフルエンザウイルスの成分またはそこから誘導される1種類以上のペプチドも含む。いくつかの実施形態では、普遍的T細胞抗原が、MHC分子との複合体で提示されるものではない。いくつかの実施形態では、普遍的T細胞抗原が、ヘルパーT細胞への提示用にMHC分子との間で複合体化されることがない。したがって、いくつかの実施形態では、普遍的T細胞抗原がヘルパーT細胞抗原ではない。しかしながら、他の実施形態では、普遍的T細胞抗原がヘルパーT細胞抗原である。
【0060】
複数の実施形態では、ヘルパーT細胞抗原が、破傷風トキソイド、エプスタイン・バーウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、アデノウイルス、ジフテリアトキソイドまたはPADREペプチド(Setteらの米国特許第7,202,351号明細書の研究から知られている)から得られるまたは誘導される1種類以上のペプチドを含むものであってもよい。他の複数の実施形態では、ヘルパーT細胞抗原が、オボアルブミンまたはそこから得られるまたは誘導されるペプチドを含むものであってもよい。好ましくは、オボアルブミンが、受託番号AAB59956、NP_990483.1、AAA48998またはCAA2371のアミノ酸配列を含む。他の複数の実施形態では、オボアルブミンから得られるまたは誘導されるペプチドが、以下のアミノ酸配列を含む: H−Ile−Ser−Gln−Ala−Val−His−Ala−Ala−His−Ala−Glu−Ile−Asn−Glu−Ala−Gly−Arg−OH(配列番号1)。他の複数の実施形態では、ヘルパーT細胞抗原が、α−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)、α結合スフィンゴ糖脂質(スフィンゴモナス(Sphingomonas)spp.由来)、ガラクトシルジアシルグリセロール(ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)由来)、リポホスホグリカン(ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)由来)、ホスファチジルイノシトールテトラマンノシド(PIM4)(マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)由来)を含むがこれに限定されるものではない、1種類以上の脂質または糖脂質を含むものであってもよい。ヘルパーT細胞抗原として有用な別の脂質および/または糖脂質については、V. Cerundolo et al., “Harnessing invariant NKT cells in vaccination strategies.” Nature Rev Immun, 9:28〜38 (2009)を参照のこと。
【0061】
複数の実施形態では、CD4+ T細胞抗原が、天然の起源などの起源から得られるCD4+ T細胞抗原の誘導体であってもよい。このような実施形態では、その起源から得られる抗原に対して、MHC IIに結合するペプチドなどのCD4+ T細胞抗原の配列の同一性が、少なくとも70%、80%、90%または95%であってもよい。複数の実施形態では、T細胞抗原、好ましくは普遍的T細胞抗原またはヘルパーT細胞抗原が、合成ナノキャリアと結合してもよいし、合成ナノキャリアからの結合が解除されてもよい。いくつかの実施形態では、普遍的T細胞抗原またはヘルパーT細胞抗原が、発明性のある組成物の合成ナノキャリアにカプセル化される。
【0062】
「ワクチン」は、特定の病原体または疾患に対する免疫反応を改善する物質の組成物を意味する。ワクチンは一般に、被検体の免疫系を刺激して特定の抗原を異物として認識し、これを被検体の体内から排除する因子を含有する。また、ワクチンは、それを受ける人が抗原に再曝露された際に、これをすみやかに認識して応答するように免疫「メモリー」を構築する。ワクチンは、予防的(病原体による将来の感染を防止するためなど)であってもよいし、治療的(がん治療用の腫瘍特異的抗原に対するワクチンなど)であっても構わない。複数の実施形態では、ワクチンが、本発明による剤形を含むものであってもよい。他の複数の実施形態では、発明性のある剤形が、合成ナノキャリアに結合されない第2の抗原を含むワクチンを含むものであってもよい。本発明によるワクチンは、ハプテン−キャリアコンジュゲート、ウイルス様粒子、合成ナノキャリアワクチン、サブユニットタンパク質ワクチンまたは弱毒化ウイルスを含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、ワクチンが、本明細書に記載の市販のワクチンをはじめとする任意のワクチンを含む。
【0063】
発明性のある組成物
多岐にわたる合成ナノキャリアを、本発明に従って使用可能である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、球形または回転楕円形である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、平坦または板状である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが立方体形または直方体形である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、卵形または長円形である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、円柱形、錐形または角錐形である。
【0064】
いくつかの実施形態では、各合成ナノキャリアの特性が、合成ナノキャリアの総数に対して、たとえば合成ナノキャリアの少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の範囲で類似し、最小寸法または最大寸法が、合成ナノキャリアの平均直径または平均寸法の5%、10%または20%に入り得るように、大きさ、形状および/または組成が比較的均一な合成ナノキャリアの集合を用いることが望ましい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアの集合が、大きさ、形状および/または組成の点で、異種であってもよい。
【0065】
合成ナノキャリアは、中実であっても中空であっても構わない。また、1種類以上の層を含むことも可能である。いくつかの実施形態では、各層が、他の層と比較して、組成が一意で特性も一意である。ひとつではない例をあげると、合成ナノキャリアは、コア/シェル構造を持つものであってもよく、この場合、コアが一方の層(ポリマーコアなど)で、シェルが第2の層(脂質の二重膜または単分子膜など)である。合成ナノキャリアは、複数の異なる層を含むものであってもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、任意に1種類以上の脂質を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、リポソームを含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、脂質の二重膜を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、脂質の単分子膜を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、ミセルを含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、脂質層に囲まれたポリマーマトリクスを含むコアを含むものであってもよい(たとえば、脂質の二重膜、脂質の単分子膜など)。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、脂質層(たとえば、脂質の二重膜、脂質の単分子膜など)に囲まれた非ポリマーコア(たとえば、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス粒子、タンパク質、核酸、炭水化物など)を含むものであってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、1種類以上のポリマーを含むことも可能である。いくつかの実施形態では、このようなポリマーを、コーティング層(たとえば、リポソーム、脂質の単分子膜、ミセルなど)で囲むことが可能である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアのさまざまな要素をポリマーと結合させることが可能である。
【0068】
いくつかの実施形態では、免疫的な特徴のある表面、標的部分、抗原、アジュバントおよび/またはオリゴヌクレオチドを、共有結合的に、ポリマーマトリクスと関連させることが可能である。いくつかの実施形態では、共有結合での関連付けが、リンカーを介在してなされる。いくつかの実施形態では、免疫的な特徴のある表面、標的部分、抗原、アジュバントおよび/またはオリゴヌクレオチドを、非共有結合的に、ポリマーマトリクスと関連させることが可能である。たとえば、いくつかの実施形態では、免疫的な特徴のある表面、標的部分、抗原、アジュバントおよび/またはオリゴヌクレオチドを、ポリマーマトリクス内に吸着、カプセル化、ポリマーマトリクスで囲むおよび/またはポリマーマトリクス全体に分散させることが可能である。上記に代えてまたは上記に加えて、免疫的な特徴のある表面、標的部分、抗原、アジュバントおよび/またはヌクレオチドを、疎水性相互作用、電荷相互作用、ファンデルワールス力などによって、ポリマーマトリクスと関連させることが可能である。
【0069】
多岐にわたるポリマーならびに、そこからポリマーマトリクスを形成するための方法が、従来技術において知られている。通常、ポリマーマトリクスは、1種類以上のポリマーを含む。ポリマーは、天然ポリマーであっても非天然の(合成の)ポリマーであってもよい。ポリマーは、ホモポリマーであっても、2種類以上のモノマーを含むコポリマーであってもよい。配列に関しては、コポリマーは、ランダムであってもブロックであってもよく、ランダム配列とブロック配列の組み合わせを含むものであってもよい。通常、本発明によるポリマーは、有機ポリマーである。
【0070】
本発明で使用するのに適したポリマーの例として、ポリエチレン、ポリカーボネート(ポリ(1,3−ジオキサン−2オン)など)、ポリ酸無水物(ポリ(セバシン酸無水物)など)、ポリプロピルフマラート、ポリアミド(ポリカプロラクタムなど)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリラクチド−co−グリコライド、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(ポリ(β−ヒドロキシアルカノアート)など)など)、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリラート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリウレア、ポリスチレン、ポリアミン、ポリリジン、ポリリジン−PEGコポリマー、ポリ(エチレンイミン)、およびポリ(エチレンイミン)−PEGコポリマーがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明によるポリマーが、米国食品医薬品局(FDA)によって、連邦規則集第21巻177条2600項に準拠して人間での使用が承認されたポリマーを含み、一例として、ポリエステル(ポリ乳酸、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン(例えば、ポリ(1,3−ジオキサン−2オン)など);ポリバレロラクトン;ポリ酸無水物(ポリ(セバシン酸無水物)など);ポリエーテル(ポリエチレングリコールなど);ポリウレタン;ポリメタクリラート;ポリアクリラート;ポリシアノアクリラートがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0072】
いくつかの実施形態では、ポリマーが親水性であり得る。たとえば、ポリマーは、アニオン基(リン酸基、硫酸基、カルボン酸基など);カチオン基(四級アミン基など);または極性基(ヒドロキシル基、チオール基、アミン基など)を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーマトリクスを含む合成ナノキャリアが、合成ナノキャリア内で親水性の環境を作り出す。いくつかの実施形態では、ポリマーが疎水性であっても構わない。いくつかの実施形態では、疎水性のポリマーマトリクスを含む合成ナノキャリアが、合成ナノキャリア内で疎水性の環境を作り出す。ポリマーに親水性を選択するか疎水性を選択するかで、合成ナノキャリア内に取り込まれる(たとえば結合される)材料の性質に影響することがある。
【0073】
いくつかの実施形態では、1種類以上の部分および/または官能基でポリマーを修飾してもよい。本発明に従って、多岐にわたる部分または官能基を用いることが可能である。いくつかの実施形態では、多糖から誘導される、ポリエチレングリコール(PEG)、炭水化物および/または非環式ポリアセタールでポリマーを修飾してもよい(Papisov, 2001, ACS Symposium Series, 786:301)。Grefらに付与された米国特許第5543158号明細書またはVon Andrianらの国際公開第2009/051837号パンフレットに記載された概略的な教示内容を使用して、特定の実施形態を形成してもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、脂質または脂肪酸基でポリマーを修飾してもよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸またはリグノセリン酸のうちの1種類以上であってもよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基が、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノール酸、γ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸またはエルカ酸のうちの1種類以上であってもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、ポリマーが、本明細書では「PLGA」と総称するポリ(乳酸−co−グリコール酸)およびポリ(ラクチド−co−グリコライド)などの乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー;本明細書では「PGA」と呼ぶグリコール酸単位ならびに、本明細書では「PLA」と総称するポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、ポリ−D,L−ラクチドなどの乳酸単位を含むホモポリマーをはじめとするポリエステルであってもよい。いくつかの実施形態では、例としてのポリエステルが、たとえば、ポリヒドロキシ酸;PEGコポリマーならびに、ラクチドおよびグリコライドのコポリマー(たとえば、PLA−PEGコポリマー、PGA−PEGコポリマー、PLGA−PEGコポリマー、これらの誘導体があげられる。いくつかの実施形態では、ポリエステルが、たとえば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)−PEGコポリマー、ポリ(L−ラクチド−co−L−リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、ポリ[α−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸]、これらの誘導体を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、ポリマーがPLGAであってもよい。PLGAは、乳酸とグリコール酸の生体適合性かつ生分解性のコポリマーであり、さまざまな形態のPLGAが、乳酸:グリコール酸の比で特徴付けられる。乳酸には、L−乳酸、D−乳酸またはD,L−乳酸が可能である。この乳酸:グリコール酸比を変えることで、PLGAの分解率を変化させることが可能である。いくつかの実施形態では、本発明に基づいて使用されるPLGAが、乳酸:グリコール酸比約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75または約15:85であることを特徴とする。
【0077】
いくつかの実施形態では、ポリマーが、1種類以上のアクリルポリマーであってもよい。特定の実施形態では、アクリルポリマーが、たとえば、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メタクリル酸メチル、ポリメタクリラート、ポリ(メタクリル酸メチル)コポリマー、ポリアクリルアミド、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、メタクリル酸グリシジルコポリマー、アクリル酸ポリシアノ、上記のポリマー1種類以上を含む組み合わせを含む。アクリルポリマーは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルと低含有量の四級アンモニウム基との完全に重合化されたコポリマーを含むものであってもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、カチオンポリマーであっても構わない。通常、カチオンポリマーは、核酸の負に荷電した鎖(DNAまたはその誘導体など)を凝縮させるおよび/または保護する。ポリ(リジン)などのアミン含有ポリマー(Zauner et al., 1998, Adv. Drug Del. Rev., 30:97;およびKabanov et al., 1995, Bioconjugate Chem., 6:7)、ポリ(エチレンイミン)(PEI;Boussif et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 1995, 92:7297)、およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska−Latallo et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 93:4897;Tang et al., 1996, Bioconjugate Chem., 7:703;およびHaensler et al., 1993, Bioconjugate Chem., 4:372)は、生理学的pHで正に荷電し、核酸との間でイオン対を形成し、多岐にわたる細胞系でのトランスフェクションを媒介する。複数の実施形態では、発明性のある合成ナノキャリアが、カチオンポリマーを含まないものであってもよい(または除外するものであってもよい)。
【0079】
いくつかの実施形態では、ポリマーが、カチオン側鎖を持つ分解可能なポリエステルであっても構わない(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658;Barrera et al., 1993, J. Am. Chem. Soc., 115:11010;Kwon et al., 1989, Macromolecules, 22:3250;Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633;およびZhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)。これらのポリエステルの例として、ポリ(L−ラクチド−co−L−リジン)(Barrera et al., 1993, J. Am. Chem. Soc., 115:11010)、ポリ(セリンエステル)(Zhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658;およびLim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658;およびLim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)があげられる。
【0080】
これらのポリマーおよび他のポリマーの特性ならびに、その調製方法は、従来技術において周知である(米国特許第6,123,727号明細書;同第5,804,178号明細書;同第5,770,417号明細書;同第5,736,372号明細書;同第5,716,404号明細書;同第6,095,148号明細書;同第5,837,752号明細書;同第5,902,599号明細書;同第5,696,175号明細書;同第5,514,378号明細書;同第5,512,600号明細書;同第5,399,665号明細書;同第5,019,379号明細書;同第5,010,167号明細書;同第4,806,621号明細書;同第4,638,045号明細書;同第4,946,929号明細書;Wang et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:9480;Lim et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:2460;Langer, 2000, Acc. Chem. Res., 33:94; Langer, 1999, J. Control. Release, 62:7;およびUhrich et al., 1999, Chem. Rev., 99:3181などを参照のこと)。さらに一般的には、特定の好適なポリマーを合成するための多岐にわたる方法が、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts, Ed. by Goethals, Pergamon Press, 1980; Principles of Polymerization by Odian, John Wiley & Sons, Fourth Edition, 2004;Contemporary Polymer Chemistry by Allcock et al., Prentice−Hall, 1981;Deming et al., 1997, Nature, 390:386;および米国特許第6,506,577号明細書、同第6,632,922号明細書、同第6,686,446号明細書、同第6,818,732号明細書に記載されている。
【0081】
いくつかの実施形態では、ポリマーが、直鎖状ポリマーであっても分枝状ポリマーであっても構わない。いくつかの実施形態では、ポリマーがデンドリマーであっても構わない。いくつかの実施形態では、ポリマーが、互いに実質的に架橋されていても構わない。いくつかの実施形態では、ポリマーが、実質的に架橋を含まないものであって構わない。いくつかの実施形態では、ポリマーを、架橋ステップを通すことなく本発明に基づいて使用可能である。また、発明性のある合成ナノキャリアが、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、上記のいずれかおよび他のポリマーのブレンド、混合物および/またはアダクトを含むものであってもよいことは、理解できよう。本明細書に列挙したポリマーが、一例であって包括的ではない、本発明に従って使用可能なポリマーのリストを示すものであることは、当業者であれば認識するであろう。
【0082】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、1種類以上のポリマーを含む。したがって、ポリマー合成ナノキャリアは、1種類以上の親水性成分を有するものを含むがこれに限定されるものではない、Von Andrianらによる国際公開第2009/051837号パンフレットに記載されたものも含み得る。好ましくは、1種類以上のポリマーが、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)またはポリカプロラクトンなどのポリエステルを含む。より好ましくは、1種類以上のポリマーが、ポリエーテルなど、親水性ポリマーに結合したポリエステルを含むまたはさらに含む。複数の実施形態では、ポリエーテルが、ポリエチレングリコールを含む。なお一層好ましくは、1種類以上のポリマーが、ポリエステルならびに、ポリエーテルなどの親水性ポリマーに結合したポリエステルを含む。他の複数の実施形態では、1種類以上のポリマーが、1種類以上の抗原および/または1種類以上のアジュバントと結合されている。複数の実施形態では、少なくともいくつかのポリマーが抗原と結合されているおよび/または少なくともいくつかのポリマーがアジュバントと結合されている。好ましくは、2つ以上のタイプのポリマーがある場合、そのうち1つのタイプのポリマーが、抗原に結合される。複数の実施形態では、他のタイプのうちの1タイプのポリマーが、アジュバントに結合される。たとえば、複数の実施形態で、ナノキャリアが、ポリエステルと、ポリエーテルなどの親水性ポリマーに結合されたポリエステルを含む場合、ポリエステルがアジュバントに結合され、かたやポリエーテルなどの親水性ポリマーに結合されたポリエステルが、抗原に結合される。複数の実施形態では、ナノキャリアがヘルパーT細胞抗原を含む場合、T細胞抗原をナノキャリアにカプセル化することが可能である。
【0083】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、ポリマー成分を含まない。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子などを含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、非ポリマーの合成ナノキャリアが、金属原子(金原子など)の凝集体など、非ポリマー成分の凝集体である。
【0084】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、任意に、1種類以上の両親媒体を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、両親媒体が、安定性が増した合成ナノキャリア、均一性が増した合成ナノキャリアまたは粘度が増した合成ナノキャリアの生成を促進可能である。いくつかの実施形態では、両親媒体が、脂質膜の内面(脂質の二重膜、脂質の単分子膜など)と関連したものであっても構わない。従来技術において知られている多くの両親媒体が、本発明による合成ナノキャリアの作製に用いるのに適している。このような両親媒体としては、ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレオイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;ジアシルグリセロールスクシナート;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪アルコール;ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの表面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;トリオレイン酸ソルビタン(Span(登録商標)85)グリココーラート;モノラウリン酸ソルビタン(Span(登録商標)20);ポリソルベート20(Tween(登録商標)20);ポリソルベート60(Tween(登録商標)60);ポリソルベート65(Tween(登録商標)65);ポリソルベート80(Tween(登録商標)80);ポリソルベート85(Tween(登録商標)85);モノステアリン酸ポリオキシエチレン;サーファクチン;ポロキサマー;トリオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(セファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;ジセチルホスファート;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシル−アミン;パルミチン酸アセチル;リシノール酸グリセロール;ステアリン酸ヘキサデシル;ミリスチン酸イソプロピル;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000−ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400−モノステアラート;リン脂質;界面活性剤特性の高い合成および/または天然の洗剤;デオキシコーラート;シクロデキストリン;カオトロピック塩;イオンペア試薬;これらの組み合わせがあげられるが、これに限定されるものではない。両親媒体成分は、異なる両親媒体の混合物であってもよい。これが界面活性剤活性を有する物質の一例であって包括的ではないリストであることは、当業者であれば認識するであろう。本発明に従って用いる合成ナノキャリアの製造時には、どのような両親媒体を用いてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアが、任意に、1種類以上の炭水化物を含むものであってもよい。炭水化物は、天然であっても合成であってもよい。炭水化物は、誘導体化した天然の炭水化物であってもよい。特定の実施形態では、炭水化物が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、ノイラミン酸などであるがこれに限定されるものではない、単糖または二糖を含む。特定の実施形態では、炭水化物が、プルラン、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、スターチ、ヒドロキシエチルスターチ、カラギーナン、グリコン、アミロース、キトサン、N,O−カルボキシルメチルキトサン、アルギンおよびアルギン酸、スターチ、キチン、イヌリン、コンニャク、グルコマンナン、プスツラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードラン、キサンタンなどであるがこれに限定されるものではない、多糖である。複数の実施形態では、発明性のある合成ナノキャリアが、多糖などの炭水化物を含まない(または特異的に排除する)。特定の実施形態では、炭水化物が、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトールを含むがこれに限定されるものではない、糖アルコールなどの炭水化物誘導体を含むものであってもよい。
【0086】
本発明による組成物は、発明性のある合成ナノキャリアを、保存剤、緩衝液、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水などの薬学的に許容可能な賦形剤との組み合わせで含む。この組成物を、従来の製薬・配合技術で製造して、有用な剤形を得るようにしてもよい。一般的な発明性のある組成物は、無機または有機緩衝液(リン酸エステル、炭酸エステル、酢酸エステルまたはクエン酸エステルのナトリウム塩またはカリウム塩など)およびpH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、クエン酸塩または酢酸塩、アミノ酸およびその塩など)酸化防止剤(アスコルビン酸、α−トコフェロールなど)、界面活性剤(ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン9−10ノニルフェノール、デゾキシコール酸ナトリウムなど)、溶液および/または凍結/凍結乾燥用安定化剤(スクロース、ラクトース、マンニトール、トレハロースなど)、浸透圧調整剤(塩または糖など)、抗菌剤(安息香酸、フェノール、ゲンタマイシンなど)、消泡剤(ポリジメチルシロゾン(polydimethylsilozone)など)、保存剤(チメロサール、2−フェノキシエタノール、EDTAなど)、ポリマー安定剤および粘度調整剤(ポリビニルピロリドン、ポロキサマー488、カルボキシメチルセルロースなど)、共溶媒(グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノールなど)を含むものであってもよい。一実施形態では、発明性のある合成ナノキャリアを、保存剤と一緒に注射用の滅菌生理食塩水溶液に懸濁させる。
【0087】
複数の実施形態では、合成ナノキャリアを、ワクチンで使用する抗原またはアジュバント用のキャリアとして調製する場合、抗原またはアジュバントを合成ナノキャリアにカップリングする方法が有用な場合がある。抗原またはアジュバントが小分子であれば、合成ナノキャリアを構築する前にこの抗原またはアジュバントをポリマーに結合させると有利な場合がある。複数の実施形態では、抗原またはアジュバントをポリマーに結合した上で、このポリマーコンジュゲートを合成ナノキャリアの作製に用いるのではなく、表面基を用いて抗原またはアジュバントを合成ナノキャリアに結合するのに用いられる表面基を有する合成ナノキャリアを調製すると有利な場合がある。
【0088】
特定の実施形態では、カップリングを、共有結合リンカーとすることが可能である。複数の実施形態では、本発明による抗原またはアジュバントを、外面に、アルキン基を有する抗原またはアジュバントを有するナノキャリア表面のアジド基の1,3−双極子付加環化反応によって、あるいは、アジド基を含有する抗原またはアジュバントを有するナノキャリア表面のアルキンの1,3−双極子付加環化反応によって形成される1,2,3−トリアゾールリンカーを介して共有結合的に結合させることが可能である。このような環化付加反応は、好ましくは、好適なCu(I)−リガンドならびに、Cu(II)化合物を触媒活性Cu(I)化合物に還元するための還元剤とともに、Cu(I)触媒の存在下で実施される。このCu(I)触媒アジド−アルキン環化付加(CuAAC)も、クリック反応と呼ばれる。
【0089】
また、共有結合のカップリングは、アミドリンカー、ジスルフィドリンカー、チオエーテルリンカー、ヒドラゾンリンカー、ヒドラジドリンカー、イミンまたはオキシムリンカー、尿素またはチオ尿素リンカー、アミジンリンカー、アミンリンカー、スルホンアミドリンカーを含む共有結合リンカーを含むものであってもよい。
【0090】
アミドリンカーは、抗原またはアジュバントなどの一方の成分のアミンと、ナノキャリアなどの第2の成分のカルボン酸基とのアミド結合によって形成される。リンカーのアミド結合については、好適に保護したアミノ酸または抗原またはアジュバントとN−ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルなどの活性化カルボン酸とを用いる、従来のアミド結合形成反応のいずれかを用いて形成可能である。
【0091】
ジスルフィドリンカーは、たとえばR
1−S−S−R
2形の2つの硫黄原子間にジスルフィド(S−S)結合が作られることによって形成される。ジスルフィド結合は、チオール/メルカプタン基(−SH)を含有する抗原またはアジュバントと、ポリマーまたはナノキャリア上の別の活性化チオール基とのチオール交換、あるいは、チオール/メルカプタン基を含有するナノキャリアと活性化チオール基を含有する抗原またはアジュバントとのチオール交換によって形成可能である。
【0092】
トリアゾールリンカー、特に
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、どのような化学的実体であってもよい)形態の1,2,3−トリアゾールは、ナノキャリアなどの第1の成分に結合したアジドとペプチドなどの第2の成分に結合した末端アルキンとの1,3−双極子付加環化反応によって形成される。1,3−双極子付加環化反応は、触媒を用いてまたは用いずに、好ましくは、1,2,3−トリアゾール官能基によって2つの成分を結合するCu(I)触媒を用いて実施される。この化学については、Sharpless et al., Angew. Chem. Int. Ed. 41(14), 2596, (2002)およびMeldal, et al, Chem. Rev., 2008, 108(8), 2952〜3015に詳細に記載され、「クリック」反応またはCuAACと呼ばれることも多い。
【0093】
複数の実施形態では、ポリマー鎖の末端にアジドまたはアルキン基を含有するポリマーを調製する。その上で、このポリマーを用いて、複数のアルキンまたはアジド基が、ナノキャリアの表面に位置するように合成ナノキャリアを調製する。あるいは、別の経路で合成ナノキャリアを調製した後、アルキンまたはアジド基で官能化することも可能である。アルキン(ポリマーがアジドを含有する場合)またはアジド(ポリマーがアルキンを含有する場合)基の存在下で、抗原またはアジュバントを調製する。次に、抗原またはアジュバントを1,4−二置換1,2,3−トリアゾールリンカーによって粒子に共有結合的に結合する触媒を使用するか使用せずに、1,3−双極子付加環化反応によって抗原またはアジュバントをナノキャリアと反応させる。
【0094】
たとえばR
1−S−R
2の形態の硫黄−炭素(チオエーテル)結合を形成することで、チオエーテルリンカーが形成される。チオエーテルについては、抗原またはアジュバントなど一成分上のチオール/メルカプタン(−SH)基とナノキャリアなどの第2の成分上のエポキシドまたはハロゲン化物などのアルキル化基とのいずれかのアルキル化によって形成可能である。チオエーテルリンカーは、抗原またはアジュバントなどの一成分上のチオール/メルカプタン基を、マイケル付加反応のアクセプターとしてマレイミド基またはビニルスルホン基を含有するポリマーなどの第2の成分上の電子欠損アルケン基にマイケル付加することによっても形成可能なものである。もうひとつの方法では、チオエーテルリンカーを、抗原またはアジュバントなどの一成分上のチオール/メルカプタン基とポリマーまたはナノキャリアなどの第2の成分上のアルケン基とのラジカルチオール−エン反応によって調製することも可能である。
【0095】
ヒドラゾンリンカーは、抗原および/またはアジュバントなどの一成分上のヒドラジド基とナノキャリアなどの第2の成分上のアルデヒド/ケトン化学基との反応によって形成される。
【0096】
ヒドラジドリンカーは、抗原またはアジュバントなどの一成分上のヒドラジン基とナノキャリアなどの第2の成分上のカルボン酸基との反応によって形成される。このような反応は通常、活性化用試薬でカルボン酸を活性化させるアミド結合の形成に似た化学を用いてなされる。
【0097】
イミンまたはオキシムリンカーは、抗原またはアジュバントなどの一成分上のアミンまたはN−アルコキシアミン(またはアミノオキシ)基とナノキャリアなどの第2の成分上のアルデヒドまたはケトン基との反応によって形成される。
【0098】
尿素またはチオ尿素リンカーは、抗原またはアジュバントなどの一成分とナノキャリアなどの第2の成分上のイソシアナートまたはチオイソシアナート基との反応によって調製される。
【0099】
アミジンリンカーは、抗原またはアジュバントなどの一成分とナノキャリアなどの第2の成分上のイミドエステル基との反応によって調製される。
【0100】
アミンリンカーは、抗原またはアジュバントなどの一成分とナノキャリアなどの第2の成分上のハロゲン化物、エポキシドまたはスルホン酸エステル基などのアルキル化基とのアルキル化反応によって形成される。あるいは、アミンリンカーは、抗原またはアジュバントなどの一成分とナノキャリアなどの第2の成分上のアルデヒドまたはケトン基とを、シアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの好適な還元試薬を用いて還元アミノ化することによっても形成可能である。
【0101】
スルホンアミドリンカーは、抗原またはアジュバントなどの一成分とナノキャリアなどの第2の成分上のハロゲン化スルホニル(塩化スルホニルなど)基との反応によって形成される。
【0102】
スルホンリンカーは、求核剤をビニルスルホンにマイケル付加することで形成される。ビニルスルホンまたは求核剤のいずれかが、ナノ粒子の表面にあるか、抗原またはアジュバントに結合されていてもよい。
【0103】
抗原またはアジュバントを、非共有結合コンジュゲーション法によってナノキャリアにコンジュゲートすることも可能である。たとえば、負に荷電した抗原またはアジュバントを、静電吸着によって正に荷電したナノキャリアにコンジュゲートすることが可能である。金属リガンドを含有する抗原またはアジュバントを、金属−リガンド複合体によって、金属複合体を含有するナノキャリアにコンジュゲートすることも可能である。
【0104】
複数の実施形態では、抗原またはアジュバントを、合成ナノキャリアの構築前にポリ乳酸−ブロック−ポリエチレングリコールなどのポリマーに結合することが可能であり、あるいは、その表面上の反応性基または活性化可能な基を用いて、合成ナノキャリアを形成することも可能である。後者の場合、合成ナノキャリアの表面によって提示される結合化学と適合する基を用いて、抗原またはアジュバントを調製してもよい。他の複数の実施形態では、好適なリンカーを用いて、ペプチド抗原をVLPまたはリポソームに結合可能である。リンカーとは、2つの分子を結合することが可能な化合物または試薬である。一実施形態では、リンカーが、Hermanson 2008に記載されているようなホモ二官能性であってもヘテロ二官能性試薬であっても構わない。たとえば、表面にカルボキシル基を含有するVLPまたはリポソーム合成ナノキャリアを、EDCの存在下にてホモ二官能性リンカーであるアジピン酸ジヒドラジド(ADH)で処理し、ADHリンカーを有する対応する合成ナノキャリアを形成することが可能である。こうして得られたADH結合合成ナノキャリアを、NC上のADHリンカーの他端を介して酸基を含有するペプチド抗原とコンジュゲートし、対応するVLPまたはリポソームペプチドコンジュゲートを形成する。
【0105】
利用可能なコンジュゲーション法の詳細な説明については、Hermanson G T “Bioconjugate Techniques,” 第2版、Academic Press, Inc.出版、2008を参照のこと。共有結合での結合に加えて、予め形成した合成ナノキャリアに吸着させることで抗原またはアジュバントを結合することが可能であり、あるいは、合成ナノキャリア形成時のカプセル化によってこれを結合することも可能である。
【0106】
発明性のある剤形を作製および使用する方法ならびに関連の方法
合成ナノキャリアについては、従来技術において知られている多岐にわたる方法で調製すればよい。たとえば、合成ナノキャリアは、ナノ沈殿、流体用の流路を用いるフローフォーカシング、噴霧乾燥、シングルおよびダブルエマルション溶媒蒸発、溶媒抽出、相分離、ミリング、マイクロエマルション法、マイクロファブリケーション、ナノファブリケーション、犠牲層、単純コアセルベーションおよび複合コアセルベーション、当業者間で周知の他の方法などの方法で形成可能なものである。上記に代えてまたは上記に加えて、単分散半導体、導電性ナノ材料、磁性ナノ材料、有機ナノ材料、その他のナノ材料用の水性溶媒および有機溶媒の合成について、記載されている(Pellegrino et al., 2005, Small, 1:48; Murray et al., 2000, Ann. Rev. Mat. Sci., 30:545;およびTrindade et al., 2001, Chem. Mat., 13:3843)。別の方法が、文献に記載されている(たとえば、Doubrow, Ed., “Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy,” CRC Press, Boca Raton, 1992;Mathiowitz et al., 1987, J. Control. Release, 5:13;Mathiowitz et al., 1987, Reactive Polymers, 6:275;およびMathiowitz et al., 1988, J. Appl. Polymer Sci., 35:755、米国特許第5578325号明細書および同第6007845号明細書;P. Paolicelli et al., “Surface−modified PLGA−based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus−like Particles” Nanomedicine. 5(6):843〜853 (2010)を参照のこと)。
【0107】
C. Astete et al., “Synthesis and characterization of PLGA nanoparticles” J. Biomater. Sci. Polymer Edn, Vol. 17, No. 3, pp.247〜289 (2006);K. Avgoustakis “Pegylated Poly(Lactide) and Poly(Lactide−Co−Glycolide) Nanoparticles: Preparation, Properties and Possible Applications in Drug Delivery” Current Drug Delivery 1:321〜333 (2004);C. Reis et al., “Nanoencapsulation I. Methods for preparation of drug−loaded polymeric nanoparticles” Nanomedicine 2:8〜21 (2006);P. Paolicelli et al., “Surface−modified PLGA−based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus−like Particles” Nanomedicine. 5(6):843〜853 (2010)を含むがこれに限定されるものではない多岐にわたる方法を使用して、さまざまな材料を、必要に応じて合成ナノキャリアにカプセル化すればよい。オリゴヌクレオチドなどの材料を合成ナノキャリアにカプセル化するのに適した他の方法を使用してもよく、限定することなく、Ungerに付与された米国特許第6,632,671号明細書(2003年10月14日)に開示された方法があげられる。
【0108】
特定の実施形態では、ナノ沈殿プロセスまたは噴霧乾燥によって、合成ナノキャリアを調製する。合成ナノキャリアの調製に用いる条件については、所望の大きさまたは特性(たとえば、疎水性、親水性、外側の形態、「貼り付き度」、形状など)の粒子が得られるように変えてもよい。合成ナノキャリアを調製する方法および使用する条件(たとえば、溶媒、温度、濃度、空気流量など)は、合成ナノキャリアに結合させる材料および/またはポリマーマトリクスの組成に左右されることがある。
【0109】
上記の方法のいずれかを使って調製する粒子の大きさの範囲が、所望の範囲から外れる場合、ふるいを利用して、粒子をサイズ分けすることが可能である。
【0110】
(免疫的な特徴のある表面を構成する部分、標的部分、ポリマーマトリクス、抗原、アジュバントなど)発明性のある合成ナノキャリアの要素を、たとえば1種類以上の共有結合によって合成ナノキャリア全体に結合してもよいし、1種類以上のリンカーによって結合してもよい。合成ナノキャリアを官能化するための別の方法を、Saltzmanらの米国特許出願公開第2006/0002852、DeSimoneらの米国特許出願公開第2009/0028910またはMurthyらの国際公開第/2008/127532A1号パンフレットから採用してもよい。
【0111】
上記に代えてまたは上記に加えて、合成ナノキャリアを、免疫的な特徴のある表面、標的部分、アジュバント、さまざまな抗原および/または他の要素に対して、非共有結合の相互作用によって直接または間接的に結合させることが可能である。非共有結合の実施形態では、非共有結合のカップリングが、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理的吸着、ホストゲスト相互作用、疎水性相互作用、チミン同士のスタッキングによる相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子−双極子相互作用および/またはこれらの組み合わせを含むがこれに限定されるものではない、非共有結合の相互作用によってなされる。このようなカップリングを、発明性のある合成ナノキャリアの外面または内面に配置してもよい。複数の実施形態では、カプセル化および/または吸収が、カップリングの一形態である。
【0112】
多岐にわたる1種類以上の第2の抗原(または合成ナノキャリアの集合に結合されていない別の抗原)を剤形に取り込んでもよいし、多岐にわたる方法で取り込むことができる。本発明で用いるのに適した1種類以上の第2の抗原(または合成ナノキャリアの集合に結合されていない別の抗原)のタイプについては、本明細書で説明する。
【0113】
1種類以上の第2の抗原(または合成ナノキャリアの集合に結合されていない別の抗原)を発明性のある剤形に取り込む方法は、多くある。一実施形態では、1種類以上の第2の抗原を、合成ナノキャリアの集合と一緒に剤形に混合してもよい。たとえば、一実施形態では、1種類以上の第2の抗原を含むワクチンを合成ナノキャリアの集合と混合し、発明性のある剤形を形成してもよい。複数の実施形態では、発明性のある合成ナノキャリアを、アジュバントを使用するか使用せずに、別の送達用賦形剤も用いるか用いないかして、異なる時点および/または異なる身体位置および/または異なる免疫経路で別々に投与することを含むがこれに限定されるものではない多岐にわたる方法で、1種類以上の第2の抗原と異なる、同様のまたは同一の1種類以上の第1の抗原と一緒に発明性のある剤形に取り込んでもよい。
【0114】
複数の実施形態では、複数集合の合成ナノキャリアを、1種類以上の第2の抗原(多岐にわたる方法で取り込める)と組み合わせて、本発明による剤形を形成してもよい。1種類以上の第2の抗原については、溶液形態で提供してもよいし、懸濁液形態、粉末形態などで提供してもよく、ワクチン製剤として提供してもよい。たとえば、一実施形態では、1種類以上の第2の抗原を、ハプテン−キャリアタンパク質、オリゴ糖、オリゴ糖複合体、オリゴ糖−キャリアタンパク質融合物、弱毒化生ワクチン製剤または組換えウイルスワクチン製剤、ハプテン−キャリアタンパク質と混合した合成ナノキャリアの集合、オリゴ糖、オリゴ糖複合体、オリゴ糖−キャリアタンパク質融合物、弱毒化生ワクチン製剤または組換えウイルスワクチン製剤の形態で提供し、多価ワクチン剤形を形成してもよい(またはハプテン−キャリアタンパク質または弱毒化ウイルス生ワクチン製剤の価数を増してもよい)。複数の実施形態では、1種類以上の第2の抗原が、炭疽;ジフテリア、破傷風および/または百日咳(Pertussis);ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)B型;B型肝炎;A型肝炎;C型肝炎;帯状疱疹(shingles);ヒトパピローマウイルス(HPV);インフルエンザ;日本脳炎;ダニ媒介脳炎;麻疹、流行性耳下腺炎および/または風疹;髄膜炎菌性疾患;肺炎球菌疾患;ポリオ;狂犬病;ロタウイルス;腸チフス;水痘;ワクチニア(天然痘);または黄熱に対するワクチンに構成可能なものである。他の複数の実施形態では、1種類以上の第2の抗原が、BIOTHRAX、DAPTACEL、INFANRIX、TRIPEDIA、TRIHIBIT、KINRIX、PEDIARIX、PENTACEL、PEDVAXHIB、ACTHIB、HIBERIX、COMVAX、HAVRIX、VAQTA、ENGERIX−B、RECOMBIVAX HB、TWINRIX、ZOSTAVAX、GARDASIL、CERVARIX、FLUARIX、FLUVIRIN、FLUZONE、FLULAVAL、AFLURIA、AGRIFLU、FLUMIST、JE−VAX、IXIARO、M−M−R II、PROQUAD、MENOMUNE、MENACTRA、MENVEO、PNEUMOVAX 23、PREVNAR、PCV13、IPOL、IMOVAX RABIES、RABAVERT、ROTATEQ、ROTARIX、DECAVAC、BOOSTRIX、ADACEL、TYPHIM VI、VIVOTIF BERNA、VARIVAX、ACAM2000またはYF−VAXを含むがこれに限定されるものではない、市販のワクチンで構成される。
【0115】
もうひとつの実施形態では、合成ナノキャリアの集合が、タンパク質形態またはウイルス様粒子状のヒトインフルエンザA型ウイルスHAタンパク質などの感染性の生物由来のタンパク質との組み合わせで、本発明による多価ワクチン剤形を形成するものであってもよい。もうひとつの実施形態では、合成ナノキャリアの集合を、1種類以上の第2の抗原を含む合成ナノキャリアのもうひとつの集合に加え、多価合成ナノキャリアワクチン剤形を形成してもよい。他の複数の実施形態では、1種類以上の第1および/または第2の抗原以外の別の抗原を(混合および本明細書で開示され、あるいは従来から知られている他の技術によって)剤形に取り込むことも可能である。複数の実施形態では、本明細書にて提供する発明性のある組成物が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15またはそれより多くの異なる抗原を含む。
【0116】
複数の実施形態では、1種類以上の第1の抗原および/または1種類以上の第2の抗原が、以下の表1に示すウイルス科のウイルスを含むまたはこれから得られるまたは誘導される。もうひとつの実施形態では、1種類以上の第1の抗原および/または1種類以上の第2の抗原が、表1に示す種のウイルスを含むまたはこれから得られるまたは誘導される。さらにもうひとつの実施形態では、1種類以上の第1の抗原および/または1種類以上の第2の抗原が、表1に示す抗原を含むまたはこれから得られるまたは誘導される。
【0117】
【表1-1】
【0118】
【表1-2】
【0119】
【表1-3】
【0120】
複数の実施形態では、1種類以上の第1の抗原および/または1種類以上の第2の抗原が、以下の表2に示す細菌属の細菌を含むまたはこれから得られるまたは誘導される。もうひとつの実施形態では、1種類以上の第1の抗原および/または1種類以上の第2の抗原が、表2に示す細菌種を含むまたはこれから得られるまたは誘導される。さらにもうひとつの実施形態では、1種類以上の第1の抗原および/または1種類以上の第2の抗原が、表2に示す抗原を含むまたはこれから得られるまたは誘導される。
【0121】
【表2-1】
【0122】
【表2-2】
【0123】
【表2-3】
【0124】
他の複数の実施形態では、1種類以上の第1の抗原および/または1種類以上の第2の抗原が、以下の表3に示す真菌属の真菌を含むまたはこれから得られるまたは誘導される。もうひとつの実施形態では、1種類以上の第1の抗原および/または1種類以上の第2の抗原が、表3に示す真菌種を含むまたはこれから得られるまたは誘導される。さらにもうひとつの実施形態では、1種類以上の第1の抗原および/または1種類以上の第2の抗原が、表3に示す抗原を含むまたはこれから得られるまたは誘導される。
【0125】
【表3】
【0126】
合成ナノキャリアと1種類以上の第2の抗原との集合の組み合わせを、従来の製剤混合方法で達成できる。これには、合成ナノキャリアの集合または1種類以上の第2の抗原を含有する2種類以上の懸濁液を直接組み合わせるか、希釈剤の入った1つ以上の容器で一緒にする、液体同士の混合を含む。合成ナノキャリアを粉末形態で製造または保管してもよいため、共通媒質中の2種類以上の粉末の再懸濁液同様に、1種類以上の第2の抗原を粉末で得られるのであれば、乾燥粉末同士を混合してもよい。合成ナノキャリアおよび1種類以上の第2の抗原の特性とその相互作用の可能性に応じて、一方または他方の混合経路に利点がある場合がある。一方または他方の混合経路に利点がある場合がある。本発明を実施するにあたって用いるのに適した技術を、Handbook of Industrial Mixing: Science and Practice, Edited by Edward L. Paul, Victor A. Atiemo−Obeng, and Suzanne M. Kresta, 2004 John Wiley & Sons, Inc.;およびPharmaceutics: The Science of Dosage Form Design, 2nd Ed. Edited by M. E. Auten, 2001, Churchill Livingstoneに見出すことができる。一実施形態では、発明性のある合成ナノキャリアを、保存剤と一緒に注射用の滅菌生理食塩水溶液に懸濁させる。
【0127】
剤形の投与量には、さまざまな量の複数集合の合成ナノキャリアならびに、さまざまな量の本発明による1種類以上の第2の抗原が含まれる。発明性のある剤形中に存在する合成ナノキャリアおよび/または1種類以上の第2の抗原の量は、抗原の性質、達成される治療効果、このような他のパラメータに応じて可変である。複数の実施形態では、投与量決定試験を実施して、剤形中に存在させる合成ナノキャリアの集合の最適な治療量および1種類以上の第2の抗原の量を打ち出すことが可能である。複数の実施形態では、合成ナノキャリアの集合および1種類以上の第2の抗原が、被検体への投与時に1種類以上の第1の抗原および1種類以上の第2の抗原に対する免疫反応を生じさせるのに有効な量で剤形中に存在する。被検体にて従来の投与量決定試験および技術を用いて、免疫反応を生じさせるのに効果的な、第1、第2および/またはそれ以降の抗原の量を判断できる場合がある。
【0128】
複数の実施形態では、結合されていないアジュバントを合成ナノキャリアの集合および1種類以上の第2の抗原と同一の賦形剤または送達系で混合して、発明性のある剤形を処方可能である。このようなアジュバントとしては、ミョウバンなどの鉱物塩、エシェリキア・コリ(Escherihia coli)、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)またはシゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)などの腸内細菌のモノホスホリルリピド(MPL)A、あるいは特にMPL(登録商標)(AS04)、上述した細菌のMPL Aと別々に組み合わせたミョウバン、QS−21、Quil−A、ISCOMs、ISCOMATRIX(商標)などのサポニン、MF59(商標)、Montanide(登録商標) ISA 51およびISA 720などのエマルション、AS02(QS21+スクワレン+MPL(登録商標))、AS15、AS01などのリポソームおよびリポソーム配合物、ナイセリア・ゴノレー(N. gonorrheae)、クラミジアトラコマチス(Chlamydia trachomatis)および他の細菌の細菌由来の外膜小胞(OMV)などの合成または特異的に調製した微粒子およびマイクロキャリアまたはキトサン粒子、Pluronic(登録商標)ブロックコポリマーなどのデポを形成する作用剤、ムラミルジペプチドなどの特異的に修飾または調製されたペプチド、RC529などのアミノアルキルグルコサミニド4−ホスフェートまたは細菌トキソイドまたは毒素フラグメントなどのタンパク質があげられるが、これに限定されるものではない。このような他のアジュバントの投与量については、従来の投与量決定試験を用いて決定可能である。複数の実施形態では、標記の集合合成ナノキャリアに結合していないアジュバントは、合成ナノキャリアに結合されたアジュバントと同一であっても異なっていてもよい。
【0129】
合成ナノキャリアを含む一般的な発明性のある組成物は、無機または有機緩衝液(リン酸エステル、炭酸エステル、酢酸エステルまたはクエン酸エステルのナトリウム塩またはカリウム塩など)およびpH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、クエン酸塩または酢酸塩、アミノ酸およびその塩など)酸化防止剤(アスコルビン酸、α−トコフェロールなど)、界面活性剤(ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン9−10ノニルフェノール、デゾキシコール酸ナトリウムなど)、溶液および/または凍結/凍結乾燥用安定化剤(スクロース、ラクトース、マンニトール、トレハロースなど)、浸透圧調整剤(塩または糖など)、抗菌剤(安息香酸、フェノール、ゲンタマイシンなど)、消泡剤(ポリジメチルシロゾン(polydimethylsilozone)など)、保存剤(チメロサール、2−フェノキシエタノール、EDTAなど)、ポリマー安定剤および粘度調整剤(ポリビニルピロリドン、ポロキサマー488、カルボキシメチルセルロースなど)、共溶媒(グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノールなど)を含むものであってもよい。
【0130】
本発明による組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤との組み合わせで、発明性のある合成ナノキャリアを含む。この組成物を、従来の製薬・配合技術で製造して、有用な剤形を得るようにしてもよい。本発明を実施するにあたって用いるのに適した技術を、Handbook of Industrial Mixing: Science and Practice、Edward L. Paul、Victor A. Atiemo−Obeng、Suzanne M. Kresta編l、2004 John Wiley & Sons, Inc.;およびPharmaceutics: The Science of Dosage Form Design、第2版、M. E. Auten, 2001、Churchill Livingstone編に見出すことができる。一実施形態では、発明性のある合成ナノキャリアを、保存剤と一緒に注射用の滅菌生理食塩水溶液に懸濁させる。
【0131】
本発明の組成物については、どのような好適な方法で形成しても構わず、本発明は本明細書に記載の方法で形成可能な組成物に何ら限定されるものではない旨を理解されたい。適切な方法を選択するには、関連させる特定の部分の特性に注意しなければならない場合がある。
【0132】
いくつかの実施形態では、発明性のある合成ナノキャリアを、滅菌条件下で製造するか、定期的に滅菌する。こうすることで、得られる組成物が滅菌されて非感染性となるため、非滅菌組成物よりも安全性の高いものとすることができる。これは、特に合成ナノキャリアを投与される被検体に免疫不全がある、感染しているおよび/または感染の疑いがある場合に、価値のある安全面での対策となる。いくつかの実施形態では、活性を失うことなく長期間にわたる配合戦略に応じて、発明性のある合成ナノキャリアを、凍結乾燥させて懸濁液に入れて保管するか、凍結乾燥粉末として保管してもよい。
【0133】
発明性のある組成物については、皮下、筋肉内、皮内、経口、鼻腔内、経粘膜的、舌下、直腸、点眼、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)またはこれらの経路の組み合わせを含むがこれに限定されるものではない、多岐にわたる投与経路で投与することができる。
【0134】
剤形の投与量には、本発明による、さまざまな量の合成ナノキャリアまたはその集合と、さまざまな量の抗原および/またはアジュバントが含まれる。発明性のある剤形に存在する合成ナノキャリアおよび/または抗原および/またはアジュバントの量は、抗原の性質、達成される治療効果、このような他のパラメータに応じて可変である。複数の実施形態では、投与量決定試験を実施して、剤形中に存在させる合成ナノキャリアまたはその集合の最適な治療量および抗原および/またはアジュバントの量を打ち出すことが可能である。複数の実施形態では、合成ナノキャリアおよび抗原および/またはアジュバントが、被検体への投与時に抗原に対する免疫反応を生じさせるのに有効な量で剤形中に存在する。被検体にて従来の投与量決定試験および技術を用いて、免疫反応を生じさせるのに効果的な抗原および/またはアジュバントの量を判断できる場合がある。発明性のある剤形を、さまざまな頻度で投与してもよい。好ましい実施形態では、薬理学的に関係する応答を生じさせるのに、剤形を少なくとも1回投与するだけで十分である。一層好ましい実施形態では、剤形を少なくとも2回投与、少なくとも3回投与または少なくとも4回投与して、薬理学的に関連する応答を確実に得るようにする。
【0135】
本明細書に記載の組成物および方法を使用して、免疫反応を誘発、増強、抑制、調整、指向(direct)または再指向(redirect)することが可能である。本明細書に記載の組成物および方法を、がんなどの症状、感染性の疾患、代謝疾患、変性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫疾患または他の機能障害および/または症状の診断、予防および/または治療に使用することが可能である。また、本明細書に記載の組成物および方法を、ニコチンまたは麻薬に対する嗜癖などの嗜癖の予防または治療に用いることも可能である。さらに、本明細書に記載の組成物および方法を、毒素、危険物質、環境毒素または他の有害な作用剤への曝露に起因する症状の予防および/または治療に用いることも可能である。
【0136】
本明細書にて提供する被検体は、がんに羅患し得るまたはがんに羅患するリスクのあり得る被検体であっても構わない。がんとしては、乳がん;胆道がん;膀胱がん;膠芽腫および髄芽腫を含む脳がん;子宮頸がん;絨毛がん;大腸がん;子宮内膜がん;食道がん;胃がん;急性リンパ性白血病および骨髄性白血病を含む血液腫瘍、たとえば、B細胞CLL;T細胞性急性リンパ性白血病/リンパ腫;ヘアリーセル白血病;慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫;エイズ関連白血病および成人T細胞性白血病/リンパ腫;ボーエン病およびパジェット病を含む上皮内腫瘍;肝臓がん;肺がん;ホジキン病およびリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽腫;扁平上皮がんを含む口腔がん;上皮細胞、ストローマ細胞、生殖細胞および間葉系細胞から生じるものを含む卵巣がん;膵がん;前立腺がん;直腸がん;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、骨肉腫を含む肉腫;黒色腫、メルケル細胞がん、カポジ肉腫、基底細胞がん、扁平上皮がんを含む皮膚がん;セミノーマ、非セミノーマ(奇形腫、絨毛がん)、間質腫瘍、胚細胞性腫瘍などの胚腫瘍を含む精巣がん;甲状腺腺がんおよび髄様がんを含む甲状腺がん;腺がんおよびウイルムス腫瘍を含む腎臓がんがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0137】
本明細書にて提供する被検体は、感染症または感染性の疾患に羅患し得るまたは感染症または感染性の疾患に羅患するリスクのあり得る被検体であっても構わない。感染症または感染性の疾患としては、AIDS、水疱瘡(水痘)、感冒、サイトメガロウイルス感染、コロラドダニ熱、デング熱、エボラ出血熱、手足口病、肝炎、単純ヘルペス、帯状疱疹、HPV、インフルエンザ(Flu)、ラッサ熱、麻疹、マールブルグ出血熱、感染性の単核球症、流行性耳下腺炎、ノロウイルス、ポリオ、進行性多病巣性白質脳症、狂犬病、風疹、重症急性呼吸器症候群、天然痘(痘瘡)、ウイルス性脳炎、ウイルス性胃腸炎、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性肺炎、西ナイル熱、黄熱などのウイルス感染性の疾患;炭疽、細菌性髄膜炎、ボツリヌス中毒、ブルセラ症、カンピロバクター症、猫ひっかき病、コレラ、ジフテリア、発疹チフス、淋病、膿痂疹、レジオネラ症、らい病(ハンセン病)、レプトスピラ症、リステリア症、ライム病、類鼻疽、リウマチ熱、MRSA感染、ノカルジア症、百日咳(Pertussis)(百日咳)、ペスト、肺炎球菌肺炎、オウム病、Q熱、ロッキー山紅斑熱(RMSF)、サルモネラ症、猩紅熱、細菌性赤痢、梅毒、破傷風、トラコーマ、結核、野兎病、腸チフス、チフス、尿路感染症などの細菌感染性の疾患;アフリカトリパノソーマ症、アメーバ症、回虫症、バベシア症、シャガス病、肝吸虫症、クリプトスポリジウム症、嚢虫症、裂頭条虫症、メジナ虫症、エキノコックス症、蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、フィラリア症、自由生活性アメーバ感染、ジアルジア症、顎口虫症、膜様条虫症、イソスポーラ症、黒熱病、リーシュマニア症、マラリア、横川吸虫症、はえ幼虫症、オンコセルカ症、しらみ症、蟯虫感染、疥癬、住血吸虫症、条虫症、トキソカラ症、トキソプラスマ症、旋毛虫症(Trichinellosis)、旋毛虫症(Trichinosis)、鞭虫症、トリコモナス症、トリパノソーマ症などの寄生虫感染性の疾患;アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ症、コクシジオイデス症、クリプトコッカス症、ヒストプラスマ症、足部白癬(足白癬)、股部白癬などの真菌感染性の疾患;アルパース病、致死性家族性不眠症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、クールー病、異型クロイツフェルト・ヤコブ病などのプリオン感染性の疾患があげられるが、これに限定されるものではない。
実施例
【0138】
実施例1:共有結合的に結合されたアジュバントを有する合成ナノキャリア
PLGA−R848、PLA−PEG−N3およびovaペプチドを含むナノキャリアを、ovaペプチドをナノキャリアにカプセル化するダブルエマルション法で調製した。
【0139】
ポリビニルアルコール(Mw=11KD〜31KD、87〜89%部分加水分解)をJT Bakerから購入した。オボアルブミンペプチド323−339をBachem Americas Inc.から得た(3132 Kashiwa Street,Torrance CA 90505。パーツ番号4065609)。PLGA−R848、およびPLA−PEG−N3コンジュゲートを合成し、精製した。
【0140】
上記の材料を使用して、以下の溶液を調製した。
1.PLGA−R848コンジュゲートの塩化メチレン溶液@100mg/mL
2.PLA−PEG−N3の塩化メチレン溶液@100mg/mL
3.オボアルブミンペプチド323−339の0.13N HCl溶液@70mg/mL
4.ポリビニルアルコールの100mMリン酸緩衝液(pH8)溶液@50mg/mL。
溶液No.1(0.75mL)および溶液No.2(0.25mL)を組み合わせ、溶液No.3(0.1mL)または0.13NのHCl(0.1mL)を小さな容器で加えて、混合物をBranson Digital Sonifier 250で振幅50%で40秒間超音波処理した。このエマルションに、溶液No.4(2.0mL)を加え、Branson Digital Sonifier 250で振幅30%で40秒間の超音波処理を実施して、第2のエマルションを形成した。これをpH8で70mMのリン酸緩衝液溶液(30mL)が入った攪拌ビーカーに加え、この混合物を室温にて2時間攪拌し、ナノキャリアを形成した。
【0141】
ナノキャリアを洗浄するには、ナノ粒子分散液の一部(26.5mL)を50mLの遠心管に移し、4℃にて9500rpm(13,800g)で1時間回転させた。上清を除去し、ペレットをリン酸緩衝生理食塩水26.5mLに再懸濁させた。遠心手順を切り返し、ペレットを8.3gのリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁させて、約10mg/mLの最終ナノキャリア分散液とした。
【0142】
合成ナノキャリアの懸濁液(10mg/mLのPBS(pH7.4の緩衝液)溶液、5mL、約12.5mg(MW:20、000;0.000625mmol)のPLA−PEG−N3含有)をL2誘導ペプチドH−Ala−Thr−Gln−Leu−Tyr−Lys−Thr−Cys−Lys−Gln−Ala−Gly−Thr−Cys−Pro−Pro−Asp−Ile−Ile−Pro−Lys−Val−X(配列番号2)に、静各攪拌しながら加えた。アスコルビン酸ナトリウム(100mMをH2Oに入れた溶液、0.3mL)を加えた後(Xは、アセチレンリンカー(33mg)を含むリンカー基である)、CuSO4溶液(10mM水溶液、0.6mL)。得られた明るい黄色の懸濁液を20℃で15時間攪拌し、別のCuSO4溶液(0.3mL)をアスコルビン酸ナトリウム溶液(0.15mL)とを加えた。懸濁液を5時間20℃で攪拌し、PBS緩衝液(pH7.4)で希釈し、10mL遠心処理して上清を除去した。残ったナノキャリアペレットをPBS緩衝液で2回洗浄した。洗浄後のナノキャリアを5mLのPBS緩衝液に再懸濁し、冷凍保管した。合成ナノキャリアの表面上のL2ペプチドのコンジュゲーションを、消化されたナノキャリアのHPLC分析とバイオアッセイで確認した。
【0143】
実施例2:合成ナノキャリアと結合していない抗原を有する組成物(机上)
L2置換ナノキャリア8mgを含有する、実施例1で得られた合成ナノキャリア懸濁液のうち4mLを遠心処理して粒子を沈殿させる。上清を破棄し、Gardasil(登録商標)すなわち、HPVタイプ6、11、16、18の主要なカプシド(L1)タンパク質の精製ウイルス様粒子(VLP)を含有するヒトパピローマウイルス四価(タイプ6、11、16、18)ワクチン0.5mLの懸濁液を加える。混合ワクチンを攪拌しナノキャリアを再懸濁して、得られた懸濁液を使用前に−20℃で保管した。
【0144】
実施例3:非共有結合的に結合されたアジュバントを含む合成ナノキャリア[机上]
実施例16のssDNAフルオレセインをホスホロチオエート化DNA CpG7909に代えた以外は、DeSimoneの特許出願国際公開第2008118861号パンフレットの実施例16に記載された方法で、カチオンジスルフィドPRINTナノキャリアを含有するDNAを形成する。単離後、カチオンナノキャリアを、ヘパリン10mg/mLを含有する1.0mLのPBS溶液に懸濁させる。室温にて2時間攪拌後、ナノキャリアを遠心処理して単離し、遠心処理およびデカンテーションによってPBSで2回洗浄する。表面吸着ヘパリンを有するCpG 7909含有ナノキャリアをPBS 1.0mLに再懸濁させ、使用前に−20℃で保管する。
【0145】
実施例4:合成ナノキャリアおよび結合していない抗原を有する組成物(机上)
10mgのヘパリン置換ナノキャリアを含有する実施例3で得られた合成ナノキャリア懸濁液のうちの1mLを遠心処理して粒子を沈殿させる。上清を破棄し、Recombivax HB(登録商標)またはEngerix−B(登録商標)すなわち、HBVの主要な表面抗原(HBsAg)タンパク質からなる精製タンパク質粒子を含有するヒトB型肝炎ウイルス(HBV)ワクチン1mLの懸濁液を加える。混合ワクチンを攪拌してナノキャリアを再懸濁させ、得られた懸濁液を使用前に−20℃で保管する。同様のプロセスを用いて、実施例3のヘパリン置換ナノキャリアを、精製HBsAgおよび不活化ヒトA型肝炎ウイルスからなるヒトA型肝炎およびB型肝炎ウイルス(Twinrix(登録商標))に対する二価ワクチン1mLの懸濁液とを組み合わせる。
【0146】
実施例5:共有結合的に結合されたアジュバントを有する合成ナノキャリア[机上]
実施例5A:チオールに共有結合的に結合したR848の調製
【化2】
3,3’−ジチオビス−プロピオン酸(カタログ#109010)をAldrich Chemical Companyから購入する。Selecta BiosciencesでR848を合成する。3,3’−ジチオビス−プロピオン酸(2.10グラム、1.0×10
−2モル)およびHBTU(15.2g、4×10
−2モル)のEtOAc溶液(450mL)を室温でアルゴン下にて45分間攪拌する。化合物R848(6.28g、2×10
−2モル))を加えた後、DIPEA(20.9mL、1.2×10
−1モル)を加える。混合物を室温で6時間攪拌し、続いて50〜55℃で15時間攪拌する。冷却後、混合物を1%クエン酸溶液(2×40mL)、水(40mL)、ブライン溶液(40mL)で洗浄する。溶液をNa
2SO
4(10g)上で乾燥させ、濾過後、酢酸エチルを真空下にて除去する。生成物を2−メトキシエタノールから再結晶化し、6.5グラム(78%)の白色の固体生成物を得る。
【0147】
上記からのジスルフィド(5.0グラム)をクロロホルム(200mL)に溶解させ、溶液をジチオスレイトール(1.0グラム)で処理する。室温で2時間攪拌後、クロロホルム溶液を水(100mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。乾燥剤を除去するために濾過した後、クロロホルムを真空下にて除去し、残った固体を、10%メタノールの塩化メチレン溶液を溶離液として用いて、シリカでのクロマトグラフィで精製する。チオール−R848コンジュゲートを含有する画分をプールし、蒸発させて3.5グラム(70%)のチオール−R848コンジュゲートを白色の固体として得る。
【0148】
実施例5B:ナノキャリアの調製
ペプチドBC11を上記実施例5AのチオールR848コンジュゲートに代え、オリゴ糖抗原をL2誘導ペプチドH−Ala−Thr−Gln−Leu−Tyr−Lys−Thr−Cys−Lys−Gln−Ala−Gly−Thr−Cys−Pro−Pro−Asp−Ile−Ile−Pro−Lys−Val−X(配列番号2)に代えた以外はMidatech Limitedの米国特許出願公開第20090104268A1号明細書の実施例(a)に記載されているようにして、金合成ナノキャリアを調製する。ここで、Xはシステイン残基を含むリンカー基である。Midatechの出願に記載されているような洗浄および濃縮後、実施例6で説明するように重さ1.0mgの粒子を用いる。
【0149】
実施例6:合成ナノキャリアおよび結合されていない抗原を有する組成物(机上)
実施例5で得られた金ナノキャリアのうち1.0mgを、タイプG1および非G1(G3、G4、およびG9)ロタウイルスタイプによって誘発される胃腸炎に対する組換え抗ロタウイルス生ワクチンRotarix(登録商標)の1mLの経口懸濁液に加える。この混合経口ワクチンを攪拌してナノキャリアを再懸濁させ、得られた懸濁液を混合経口ワクチンとして使用前に−20℃で保管する。
【0150】
実施例7:Tヘルパー抗原およびアジュバントを有する合成ナノキャリア
オボアルブミンペプチド323−339アミド酢酸塩を、Bachem Americas Inc.から購入した(3132 Kashiwa Street,Torrance CA 90505. 製品コード4065609)。ラクチド対グリコライドの比が3:1で、コンジュゲートレシキモド含有量が約8.5%w/wである、PLGAから形成した約7,000DaのPLGA−R848すなわち、ポリ−D/L−ラクチド−co−グリコライド、4−アミノ−2−(エトキシメチル)−α,α−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノールアミドを、Princeton Global Synthesis(300 George Patterson Drive #206, Bristol, PA 19007)でカスタム製造した。HO−PEG−COOHをアミノ−C6H1
2−アジドにコンジュゲートした後に、得られたHO−PEG−C6−N3をdl−ラクチドと開環重合してPLAブロックを形成して、PLA−PEG−C6−N3、約23000Daのポリ−D/L−ラクチド(PLA)ブロックと、アジドに対してアミド−コンジュゲートC6H1
2リンカーで終端化した約2000Daのポリエチレングリコール(PEG)ブロックとからなるブロックコポリマーを合成した。ポリビニルアルコールPhEur、USP(85〜89%加水分解、粘度3.4〜4.6mPa.s)をEMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027. パーツ番号4−88)から購入した。
【0151】
溶液を以下のようにして調製した。
溶液1:オボアルブミンペプチド323−339@20mg/mLを0.13NのHClに入れて室温にて調製した。
溶液2:各々を別々に100mg/mLでジクロロメタンに溶解した後、等容量部で組み合わせて、PLGA−R848@50mg/mLおよびPLA−PEG−C6−N3@50mg/mLのジクロロメタン溶液を調製した。
溶液3:ポリビニルアルコール@50mg/mLを100mMで100mMのリン酸緩衝液(pH8)に入れた溶液
溶液4:70mMのリン酸緩衝液(pH8)
【0152】
まず、溶液1および溶液2を用いて、一次(W1/O)エマルションを形成した。溶液1(0.2mL)と溶液2(1.0mL)とを小さなガラス製圧力管で組み合わせ、Branson Digital Sonifier 250を用いて振幅50%で40秒間超音波処理した。次に、溶液3(2.0mL)を一次エマルションに加え、ボルテックスして粗分散液を形成した後、Branson Digital Sonifier 250を用いて振幅30%で40秒間超音波処理して、二次(W1/O/W2)エマルションを形成した。
【0153】
50mL容の口のあいたビーカーに70mMリン酸緩衝溶液(30mL)を入れた中に、上記の二次エマルションを加え、室温にて2時間攪拌して、ジクロロメタンを揮発させ、懸濁液中でナノキャリアを形成した。ナノキャリア懸濁液を遠心管に移し、21,000rcfで45分間回転し、上清を除去し、ペレットをリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁することで、懸濁したナノキャリアの一部を洗浄した。この洗浄手順を繰り返した後、ペレットをリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁して、ポリマーベースで公称濃度10mg/mLのナノキャリア懸濁液を得た。同一のバッチ2つを形成した後、組み合わせて単一の均質な懸濁液を得た。これをさらに使用するまで−20℃で冷凍保存した。
【0154】
【表4】
【0155】
実施例8:混合アジュバントなしで結合された抗原および遊離タンパク質を有する合成ナノキャリアでの免疫誘導
材料および方法
(1)実施例7で上記のようにして調製した、PLGA−R848およびOva−ペプチドを含有する表面PEG−C6−N3を有するナノキャリア、PBS中7mg/mL懸濁液。
(2)C末端Glyに結合したアルキンリンカーで修飾したM2eペプチド;CS Bio Co、カタログ番号CS4956、ロット:H308、MW2650、TFA塩;配列:
H−Met−Ser−Leu−Leu−Thr−Glu−Val−Glu−Thr−Pro−Thr−Arg−Asn−Glu−Trp−Glu−Cys−Arg−Cys−Ser−Asp−Gly−Gly−NHCH2CCH(配列番号3)
(3)触媒:100mM CuSO4脱イオン水溶液;200mM THPTAリガンド脱イオン水溶液;新たに調製した200mMアスコルビン酸ナトリウム脱イオン水溶液。
(4)pH7.4のPBS緩衝液。
【0156】
NC懸濁液(7mg/mL、4mL)を容量約1mLまで遠心によって濃縮した。M2eペプチド(20mg)を2mLのPBS緩衝液に入れた溶液を加えた。0.2mLのCuSO4(100mM)と0.2mLのTHPTAリガンド(200mM)との予め混合した溶液を加えた後、0.4mLのアスコルビン酸ナトリウム(200mM)を加えた。得られた明るい黄色の懸濁液を暗所にて周囲室温で18時間攪拌した。次に、この懸濁液をPBS緩衝液で10mLまで希釈し、遠心処理して上清を除去した。NC−M2eコンジュゲートを10mLのPBS緩衝液でさらに2回ペレット洗浄し、pH7.4の緩衝液に最終濃度約6mg/mL(約4mL)で再懸濁して、4℃で保管した。
【0157】
結果
NC−M2eと、H5N1トリインフルエンザ株(Vietnam)由来の遊離ヘマグルチニンとの組み合わせで免疫したマウスにおける抗体価を測定した。NC−M2eは、OP−II Tヘルパーペプチド(2.4%)およびR848アジュバント(4.2%)を含有していた。各バーは、抗原に対する力価を示す。1群あたり5匹の動物に対して、120μgのNCおよび10μgのH5ヘマグルチニンを3週間間隔で2回皮下注射して免疫した。初回免疫の33日目の力価を示す(PLA−PEG−M2eおよびH5ヘマグルチニンに対するELISA)。
【0158】
これらの結果から、混合アジュバントなしで遊離タンパク質に混合された抗原を有するNCの組み合わせで免疫すると、NC被保持抗原および遊離タンパク質の両方に対して抗体が生じることがわかる。インフルエンザA型ウイルス由来のNC含有表面M2eペプチド(M2マトリックスタンパク質の外部ドメイン、アミノ酸2〜27)を遊離インフルエンザA型ウイルスヘマグルチニンタンパク質と混合し、動物の免疫に使用する場合、M2eペプチドおよびヘマグルチニンの両方に対してすべての動物で強い全身応答が誘発された(
図1)。免疫前マウスの血清で反応は検出されなかった。
【0159】
実施例9:混合アジュバントを用いた、結合された抗原および遊離タンパク質を有する合成ナノキャリアでの免疫
材料および方法
(1)実施例7で上記のようにして調製した、PLGA−R848およびOva−ペプチドを含有する表面PEG−C6−N3を有するナノキャリア、PBS中7mg/mL懸濁液。
(2)C末端Glyに結合したアルキンリンカーで修飾したM2eペプチド;CS Bio Co、カタログ番号CS4956、ロット:H308、MW2650、TFA塩;配列:
H−Met−Ser−Leu−Leu−Thr−Glu−Val−Glu−Thr−Pro−Thr−Arg−Asn−Glu−Trp−Glu−Cys−Arg−Cys−Ser−Asp−Gly−Gly−NHCH2CCH(配列番号3)
(3)触媒:100mM CuSO4脱イオン水溶液;200mM THPTAリガンド脱イオン水溶液;新たに調製した200mMアスコルビン酸ナトリウム脱イオン水溶液。
(4)pH7.4のPBS緩衝液。
【0160】
NC懸濁液(7mg/mL、4mL)を容量約1mLまで遠心によって濃縮した。M2eペプチド(20mg)を2mLのPBS緩衝液に入れた溶液を加えた。0.2mLのCuSO4(100mM)と0.2mLのTHPTAリガンド(200mM)との予め混合した溶液を加えた後、0.4mLのアスコルビン酸ナトリウム(200mM)を加えた。得られた明るい黄色の懸濁液を暗所にて周囲室温で18時間攪拌した。次に、この懸濁液をPBS緩衝液で10mLまで希釈し、遠心処理して上清を除去した。NC−M2eコンジュゲートを10mLのPBS緩衝液でさらに2回ペレット洗浄し、pH7.4の緩衝液に最終濃度約6mg/mL(約4mL)で再懸濁して、4℃で保管した。
【0161】
結果
NC−M2eと、H5N1トリインフルエンザ株(Vietnam)由来の遊離ヘマグルチニンとの組み合わせで免疫したマウスにおける抗体価を、80μgのミョウバンと混合した。NC−M2eは、OP−II Tヘルパーペプチド(2.4%)およびR848アジュバント(4.2%)を含有していた。各バーは、抗原に対する力価を示す。1群あたり5匹の動物に対して、120μgのNCおよび10μgのH5ヘマグルチニンを3週間間隔で2回皮下注射して免疫した。初回免疫の33日目の力価を示す(PLA−PEG−M2eおよびH5ヘマグルチニンに対するELISA)。
【0162】
これらの結果から、アジュバントが混合され、第2の抗原(遊離タンパク質)が混合された抗原を有するNCの組み合わせで免疫すると、NC被保持抗原および遊離タンパク質の両方に対して抗体が生じることがわかる。インフルエンザA型ウイルス由来のNC含有表面M2eペプチド(M2マトリックスタンパク質の外部ドメイン、アミノ酸2〜27)をインフルエンザA型ウイルスヘマグルチニンタンパク質と混合し、動物の免疫に使用する場合(ミョウバン(Imject Alum, Pierce)と混合)、M2eペプチドおよびヘマグルチニンの両方に対してすべての動物で強い全身応答が誘発された(
図2)。免疫前マウスの血清で反応は検出されなかった。
【0163】
実施例10:結合された抗原およびウイルスワクチンおよびアジュバントを有する合成ナノキャリアでの免疫誘導
材料および方法
(1)実施例7で上記のようにして調製した、PLGA−R848およびOva−ペプチドを含有し、表面PEG−C6−N3を有するナノキャリア、PBS中7mg/mL懸濁液。
(2)C末端Glyに結合したアルキンリンカーで修飾したM2eペプチド;CS Bio Co、カタログ番号CS4956、ロット:H308、MW2650、TFA塩;配列:
H−Met−Ser−Leu−Leu−Thr−Glu−Val−Glu−Thr−Pro−Thr−Arg−Asn−Glu−Trp−Glu−Cys−Arg−Cys−Ser−Asp−Gly−Gly−NHCH2CCH(配列番号3)。
(3)触媒:100mM CuSO4脱イオン水溶液;200mM THPTAリガンド脱イオン水溶液;新たに調製した200mMアスコルビン酸ナトリウム脱イオン水溶液。
(4)pH7.4のPBS緩衝液。
【0164】
NC懸濁液(7mg/mL、4mL)を遠心処理して容量約1mLまで濃縮した。M2eペプチド(20mg)を2mLのPBS緩衝液に入れた溶液を加えた。0.2mLのCuSO4(100mM)と0.2mLのTHPTAリガンド(200mM)との予め混合した溶液を加えた後、0.4mLのアスコルビン酸ナトリウム(200mM)を加えた。得られた明るい黄色の懸濁液を暗所にて周囲室温で18時間攪拌した。次に、この懸濁液をPBS緩衝液で10mLまで希釈し、遠心処理して上清を除去した。NC−M2eコンジュゲートを10mLのPBS緩衝液でさらに2回ペレット洗浄し、pH7.4の緩衝液に最終濃度約6mg/mL(約4mL)で再懸濁して、4℃で保管した。
【0165】
結果
NC−M2eとβプロピオラクトン不活化インフルエンザA型ウイルスH1N1(H1N1 New Caledonia/20/99/ IVR 116)の組み合わせを80μgのミョウバンと混合して免疫したマウスにおける抗体価を測定した。NC−M2eには、OP−II Tヘルパーペプチド(2.4%)およびR848アジュバント(4.2%)を含有していた。各バーは、抗原に対する力価を表す。1群あたり動物5匹に、3週間間隔で2回、注射1回あたり各NCを120μgと不活化チメロサール含有H1N1 New Caledoniaを1μg皮下注射して免疫した。初回の免疫から33日後の力価を示す(それぞれ、PLA−PEG−M2eおよびH1N1 New Caledoniaに対するELISA)。
【0166】
これらの結果から、抗原を保持したNCを不活化ウイルスワクチンおよびアジュバントと混合した組み合わせで免疫すると、NC被保持抗原および不活化ウイルスの両方に対して抗体が生じることがわかる。インフルエンザA型ウイルス(M2マトリックスタンパク質の外部ドメイン、アミノ酸2〜27)由来の表面M2eペプチドを含有するNCを不活化インフルエンザA型ウイルスH1N1と混合し、ミョウバン(Imject Alum, Pierce)と混合して動物の免疫誘導に用いると、すべての動物でM2eペプチドおよび不活化インフルエンザA型ウイルスH1N1の両方に対して強い全身応答が誘発された(
図3)。免疫前マウスの血清で反応は検出されなかった。
【0167】
実施例11:アジュバントとともに結合された抗原および組換えワクチンを有する合成ナノキャリアでの免疫誘導
材料および方法
(1)実施例7で上記のようにして調製した、PLGA−R848およびOva−ペプチドを含有する表面PEG−C6−N3を有するナノキャリア、PBS中7mg/mL懸濁液。
(2)C末端Lysアミノ基に結合したアルキンリンカーで修飾したHPV16 L2ペプチド;Bachem Americas, Inc、ロットB06055、MW2595、TFA塩;配列:
H−Ala−Thr−Gln−Leu−Tyr−Lys−Thr−Cys−Lys−Gln−Ala−Gly−Thr−Cys−Pro−Pro−Asp−Ile−Ile−Pro−Lys−Val−Lys(5−ヘキシノイル)−NH2(Cys−Cysジスルフィド結合を伴う)(配列番号2)。
(3)触媒:100mM CuSO4脱イオン水溶液;200mM THPTAリガンド脱イオン水溶液;新たに調製した200mMアスコルビン酸ナトリウム脱イオン水溶液。
(4)pH7.4のPBS緩衝液。
【0168】
NC懸濁液(7mg/mL、4mL)を遠心処理して容量約1mLまで濃縮した。L2ペプチド(20mg)を2mLのPBS緩衝液に入れた溶液を加えた。0.2mLのCuSO4(100mM)と0.2mLのTHPTAリガンド(200mM)との予め混合した溶液を加えた後、0.4mLのアスコルビン酸ナトリウム(200mM)を加えた。得られた明るい黄色の懸濁液を暗所にて周囲室温で18時間攪拌した。次に、この懸濁液をPBS緩衝液で10mLまで希釈し、遠心処理して上清を除去した。NC−L2コンジュゲートをさらに10mLのPBS緩衝液で2回ペレット洗浄し、pH7.4の緩衝液に最終濃度約6mg/mL(約4mL)で再懸濁して、4℃で保管した。
【0169】
結果
NC−L2−ペプチドと、酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で産生されたHBsAg株aywの組み合わせを80μgのミョウバンと混合して免疫したマウスにおける抗体価を測定した。NC−L2−ペプチドには、OP−II Tヘルパーペプチド(2.4%)およびR848アジュバント(4.2%)を含有していた。各バーは、標記の抗原に対する力価を示す。1群あたり動物5匹に、3週間間隔で2回、注射1回あたり各NCを120μgと組換えHBsAgを0.6μg皮下注射して免疫した。初回の免疫から33日後の力価を示す(それぞれ、PLA−PEG−L2およびHBsAg aywに対するELISA)。
【0170】
これらの結果から、抗原を保持したNCを組換えワクチンおよびアジュバントと混合した組み合わせで免疫すると、NC被保持抗原および不活化ウイルスの両方に対して抗体が生じることがわかる。HPV−16ウイルスマイナーカプシドL2タンパク質(アミノ酸17〜36)由来の表面L2ペプチドを含有するNCを組換えB型肝炎表面抗原(HBsAg)と混合し、ミョウバン(Imject Alum, Pierce)と混合して動物の免疫誘導に用いると、すべての動物でL2ペプチドおよび組換えHBsAgの両方に対して強い全身応答が誘発された(
図4)。免疫前マウスの血清で反応は検出されなかった。