特許第6407258号(P6407258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エボニック デグサ ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407258
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】IPMS付加物とアミノシランとの架橋
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/08 20060101AFI20181004BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20181004BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20181004BHJP
   C07F 7/22 20060101ALI20181004BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C09D183/08
   C09D7/63
   C07F7/18 M
   C07F7/18 P
   C07F7/22 K
   C07C31/20 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-512261(P2016-512261)
(86)(22)【出願日】2014年4月10日
(65)【公表番号】特表2016-522852(P2016-522852A)
(43)【公表日】2016年8月4日
(86)【国際出願番号】EP2014057239
(87)【国際公開番号】WO2014180623
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2017年4月7日
(31)【優先権主張番号】102013208356.4
(32)【優先日】2013年5月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マークス ハラック
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ビーベル
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−526355(JP,A)
【文献】 特表2010−502477(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/004038(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともA)イソシアナトシランとヒドロキシ官能性化合物との付加物、B)スズ含有化合物、およびC)アミノシランを含有するコーティング剤であって、前記コーティング中のC)アミノシランの量が、前記コーティング剤に対して10〜20質量%である、前記コーティング剤。
【請求項2】
前記イソシアナトシランが、式(I):
OCN−(アルキル)−Si(アルコキシ)3 (I)
[式中、
アルキルは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキレン鎖であり、
アルコキシは同時または互いに独立してメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、またはブトキシ基である]
の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
ヒドロキシ官能性化合物が、モノアルコール、ジオール、トリオール、ポリオール並びにヒドロキシル基含有ポリマーから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のコーティング剤。
【請求項4】
ヒドロキシ官能性化合物からのOH基対イソシアナトシランからのNCO基の比が0.8:1〜1.2:1、好ましくは0.9:1〜1.1:1であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のコーティング剤。
【請求項5】
前記スズ含有化合物が、式
14-aSnXa
[式中、
aは1、2または3であり、R1は独立して、直鎖または分枝鎖の、場合により置換されたC1〜C30−アルキル基、C5〜C14−シクロアルキル基またはC6〜C14−アリール基、トリオルガニルシリル基、並びにC1〜C30−ジオルガニルアルコキシシリル基からなる群から選択され、且つXはハロゲン、−OR2、−OC(O)R3、−OH、−SR4、−NR52、−NHR6、−OSiR73、−OSi(OR83からなる群から選択され、ここで前記置換基R2〜R8は、各々互いに独立して場合により置換されたC1〜C8−アルキル基、C6〜C14−アリール基および/またはC2〜C8−アルケニル基から選択される]
の有機スズ化合物であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のコーティング剤。
【請求項6】
前記スズ含有化合物は、ジ−n−ブチルスズジクロリド、ジ−n−オクチルスズジクロリド、ジ−n−ブチルスズオキシド、ジ−n−オクチルスズオキシド、ジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズマレエート、ジ−n−ブチルスズ−ビス−2−エチルヘキサノエート、ジ−n−ブチルスズジネオデカノエート、ジ−n−オクチルスズジアセテート、ジ−n−オクチルスズジラウレート、ジ−n−オクチルスズマレエート、ジ−n−オクチルスズ−ビス−2−エチルヘキサノエート、ジ−n−オクチルスズジネオデカノエートまたはジ−n−ブチルスズジアセチルアセトナトから選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のコーティング剤。
【請求項7】
前記アミノシランが、一般式(III)
mSiYn (III)
[式中、
Aは置換または非置換のアミノアルキル基、置換または非置換のジアミノジアルキル基または置換または非置換のトリアミノトリアルキル基を表し、前記基Yは同一または異なり、その際、YはOH、ONa、OK、OR’、OCOR’、OSiR’3、Cl、Br、IまたはNR’2であり、mは1または2であり、且つnは1、2または3であり、ただしm+n=4であり、その際、前記基R’は独立して水素、直鎖または分枝鎖のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、各々1〜18個の炭素原子を有し且つ各々任意に置換されていてよい]
のアミノシランまたはアミノアルキルシランであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のコーティング剤。
【請求項8】
追加的に結合剤成分、助剤添加剤および/または溶剤を含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のコーティング剤。
【請求項9】
木材、プラスチック、ガラスまたは金属のコーティングのための、A)イソシアナトシランとヒドロキシ官能性化合物との付加物、B)スズ含有化合物、およびC)アミノシランからのコーティング剤の使用であって、前記コーティング中のC)アミノシランの量が、前記コーティング剤に対して10〜20質量%である、前記使用
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のコーティング剤を含有するコーティング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともA)イソシアナトシランとヒドロキシ官能性化合物との付加物、B)スズ含有化合物、およびC)アミノシランを含有するコーティング剤、前記コーティング剤の使用、並びに得られたコーティングに関する。
【0002】
感熱性物質の持続性の保護コーティングのために、現在、周囲温度でも硬化され得る2成分系の塗料が通常用いられている。それらは、官能基を有する塗料樹脂と、周囲温度でもこの官能基と反応して架橋する架橋剤からなる。それらの反応性が高いので、この架橋剤は多くの場合、人間に対する固有の毒物学的リスクの可能性を有する。従って、比較的広い使用範囲を有し、同時に、硬化したコーティングが、化学的影響または天候の影響に対するのみならず機械的負荷に対しても高い耐性を有する、代替的なコーティング系を提供することが求められている。技術的な基準点として、長く知られている脂肪族2成分PUR系が引き合いに出される。
【0003】
代替的な2成分系はDE102007013262号内に記載されている。しかし、ここでの2成分系は、温度140℃でようやく硬化することができる。
【0004】
WO2010/004038号は、アルコキシ−および/またはアクリルオキシシラン末端化ポリマーからの硬化性組成物を記載している。しかし、そこに記載される組成物は接着を形成するためだけに適しており、それらは純粋なコーティング剤としては適さない。
【0005】
EP1624027号は、シラン含有ポリマー、金属カルボキシレートおよび/またはカルボン酸およびヘテロ原子含有シランからの硬化性組成物を記載している。
【0006】
従来技術から公知の系は、室温で得られる膜が数日後にようやく使用に耐える耐性を示すという欠点を有する。他方では、従来技術から公知の系は、わずかな貯蔵安定性しか有さない。
【0007】
本発明の課題は、有利には0℃〜40℃の範囲の温度でも硬化可能であり、且つ硬化状態において高い機械的耐性を有するコーティングをもたらすコーティング剤を提供することである。前記課題は、本発明のコーティング剤によって解決される。
【0008】
従って、本発明の第一の対象は、少なくともA)イソシアナトシランとヒドロキシ官能性化合物との付加物、B)スズ含有化合物、およびC)アミノシランを含有するコーティング剤である。
【0009】
意外なことに、上記成分A)〜C)を含有するコーティング剤は、0℃でも安定なコーティングをみちびくことが示された。その際、本発明によるコーティング剤は、塗布が容易な一成分系である。前記コーティング剤の低分子部分に基づき、これは後の使用に関して、追加的な有機溶剤を用いずに配合可能であり且つ作業可能である。従って、100g/l未満のVOC含有率を実現することが可能である。
【0010】
本発明の本質的な対象は、A)イソシアナトシランとヒドロキシ官能性化合物との付加物と、B)スズ含有化合物と、C)アミノシランとの特定の組み合わせである。
【0011】
本発明によるコーティング剤の成分A)は、イソシアナトシランとヒドロキシ官能性化合物との付加物である。かかる付加物は当業者に公知である。
【0012】
有利には、イソシアナトシランは、式(I):
OCN−(アルキル)−Si(アルコキシ)3 (I)
[式中、
アルキルは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキレン鎖であり、且つ
アルコキシは同時または互いに独立してメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、またはブトキシ基を意味する]
の化合物である。
【0013】
式(I) OCN−(アルキル)−Si(アルコキシ)3の化合物として、原則的に先述の可能な化合物の全てが適している。メトキシ基およびエトキシ基から選択されるアルコキシが特に好ましい。式(I)の適した化合物は例えばイソシアナトアルキルアルコキシシランであり、それは殊に3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシラン、2−イソシアナトエチルトリメトキシシラン、2−イソシアナトエチルトリエトキシシラン、2−イソシアナトエチルトリイソプロポキシシラン、4−イソシアナトブチルトリメトキシシラン、4−イソシアナトブチルトリエトキシシラン、4−イソシアナトブチルトリイソプロポキシシラン、イソシアナトメチルトリメトキシシラン、イソシアナトメチルトリエトキシシランおよび/またはイソシアナトメチルトリイソプロポキシシランを含む群から選択される。
【0014】
特に好ましくは3−イソシアナトプロピルトリアルコキシシラン、殊に3−イソシアナトプロピルトリメトキシシランおよび/または3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランが式(I)の化合物として使用される。
【0015】
上記で挙げられたイソシアナトシランは、ヒドロキシ官能性化合物と結合した付加物として存在する。
【0016】
相応のヒドロキシ官能性化合物として、一価または多価のアルコール並びにポリオールが適している。
【0017】
適したヒドロキシ官能性化合物は例えばモノアルコール、ジオール、トリオール、ポリオール並びにヒドロキシル基含有ポリマーである。
【0018】
モノアルコールの場合、それは殊に、1〜50個の炭素原子、好ましくは1〜22個の炭素原子を有する一官能性の分枝または直鎖のアルコールまたはそれらの混合物、殊にメタノール、エタノールおよびプロパノールである。
【0019】
ジオールとしては、殊に、1〜50個の炭素原子、好ましくは1〜22個の炭素原子を有する二官能性の分枝または直鎖のアルコールまたはそれらの混合物、殊にエチレングリコール、プロピレングリコールおよびネオペンチルグリコールが適している。
【0020】
グリコールエーテルとして、殊に、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,1’−オキシビス(2−トリエチレングリコール)モノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−1−メチルエーテル、プロピレングリコール−2−メチルエーテル、プロピレングリコール−1−エチルエーテル、プロピレングリコール−1−ブチルエーテルが適している。
【0021】
トリオールとしては、特に、1〜50個の炭素原子、好ましくは1〜22個の炭素原子を有する三官能性の分枝または直鎖のアルコールまたはそれらの混合物、殊にトリメチロールプロパンおよびグリセリンが適している。
【0022】
テトロールとしては、特に、1〜50個の炭素原子、好ましくは1〜22個の炭素原子を有する四官能性の分枝または直鎖のアルコールまたはそれらの混合物、殊にペンタエリトリトールが適している。
【0023】
さらに、ヒドロキシル基含有ポリマー、例えばポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、エポキシド樹脂、セルロース誘導体、FEVE(フルオロエチレン−アルキルビニルエーテル)アルキドおよびポリウレタンであって、OH価10〜500mg KOH/グラムおよび数平均モル質量250〜6000g/molを有するものがさらなるポリオールとして適している。好ましくは、OH価20〜150mg KOH/グラム、および数平均分子量500〜6000g/molを有するヒドロキシル基含有ポリエステルおよび/またはポリアクリレートが使用される。
【0024】
ヒドロキシル数(OHZ)は、DIN53240−2に準拠して測定される。この方法に際して、試料を、触媒としての4−ジメチルアミノピリジンの存在下で無水酢酸と反応させ、その際、ヒドロキシル基がアセチル化される。その際、ヒドロキシル基1つあたり、1つの分子の酢酸が生じる一方で、引き続く過剰な無水酢酸の加水分解は2つの分子の酢酸を生成する。酢酸の消費を、主値と平行に実施される空試験値との間の差から滴定により算出する。
【0025】
数平均分子量は、DIN 55672−1に準拠してゲル透過クロマトグラフィーを用いて溶離液としてのテトラヒドロフランおよび較正のためのポリスチレン中で測定される。
【0026】
さらに、上記のヒドロキシ官能性化合物の混合物も使用できる。
【0027】
有利には、ヒドロキシ官能性化合物は、OH価20〜150mg KOH/グラム、および数平均分子量500〜6000g/molを有するヒドロキシル基含有ポリエステルおよび/またはポリアクリレートである。
【0028】
付加物A)に際して、有利にはヒドロキシル含有化合物の少なくとも30%のOH基、殊に好ましくは全てのOH基がイソシアナトシランとの反応によって変換される。
【0029】
付加物A)の製造を、一般に無溶剤または非プロトン性溶剤の使用下で行い、その際、反応を断続的または連続的に行うことができる。前記反応を室温、即ち、20〜25℃の範囲の温度で実施できるが、好ましくは30〜150℃の範囲、殊に50〜150℃の範囲のより高い温度が使用される。反応を加速するために、有利にはウレタン化学において公知の触媒、例えばSn−、Bi−、Zn−および他の金属カルボキシレート、tert−アミン、例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエチルアミン等を使用できる。前記反応を好ましくは水の排除下で実施する。
【0030】
付加物A)を形成するためのイソシアナトシランとヒドロキシ官能性化合物との反応を、殊に、ヒドロキシ官能性化合物からのOH基対イソシアナトシランからのNCO基の比0.8:1〜1.2:1、好ましくは0.9:1〜1.1:1であるように行い、その際、化学量論組成比に則る反応がとりわけ特に好ましい。従って、殊に好ましくは、ヒドロキシ官能性化合物の全てのOH基とイソシアナトシラン(殊に式(I)の化合物)のNCO基の完全な反応が起きる。
【0031】
上記の反応の際、イソシアナトシランのNCO基と、ヒドロキシ官能性化合物のOH基とが反応し、NH−CO−O基を形成し、それが上記の化合物を互いに結合する。
【0032】
付加物A)は殊に0℃を上回る温度で液体である。その際、それは非結晶性の低分子化合物である。両方の反応相手の選択された化学量論組成によっては、反応生成物はまだ遊離ヒドロキシル基またはイソシアナト基を含むことがある。
【0033】
好ましい実施態様において、付加物A)は本質的にヒドロキシル基またはイソシアナト基を含まない。該付加物は溶剤を含まない形態において低粘度〜中程度の粘度であり且つ0℃で液体である。しかしながら、より良好な取り扱い性のために、該生成物は、アルコールでもプロトン性であってもよい溶剤と混合されることがある。かかる調製物の固体含有率は、有利には>80質量%であり、且つその際、好ましくは最大粘度500mPas(DIN EN/ISO 3219、23℃)を有する。
【0034】
本発明によるコーティング剤中の成分A)の量は、各々コーティング剤に対して好ましくは10〜90質量%、殊に好ましくは10〜80質量%である。
【0035】
本発明によるコーティング剤の成分B)は、スズ含有化合物、好ましくは有機スズ化合物である。特に好ましくは、式(II)
14-aSnXa (II)
の少なくとも1つの有機スズ化合物であり、前記式中、aは1、2または3であり、R1は独立して、直鎖または分枝鎖の、場合により置換されたC1〜C30−アルキル基、C5〜C14−シクロアルキル基またはC6〜C14−アリール基、トリオルガニルシリル基、並びにC1〜C30−ジオルガニルアルコキシシリル基からなる群から選択され、且つXはハロゲン、−OR2、−OC(O)R3、−OH、−SR4、−NR52、−NHR6、−OSiR73、−OSi(OR83からなる群から選択され、ここで前記置換基R2〜R8は、互いに独立して場合により置換されたC1〜C8−アルキル基、C6〜C14−アリール基および/またはC2〜C8−アルケニル基から選択される。
【0036】
上記の有機スズ化合物の定義において言及された直鎖または分枝鎖の、場合により置換されたC1〜C30−アルキル基は、1〜30個の炭素原子を有するもの、例えばメチル、エチル、クロロエチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、エチルヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル等を含む。好ましくはブチル、ヘキシルまたはオクチルである。
【0037】
上記の有機スズ化合物の定義において言及されたC5〜C14−シクロアルキル基は、単環式または多環式アルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルエチル、シクロオクチル、デカリニル、ヒドリンダニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、ビシクロ[4.2.3]ノニル等を含む。
【0038】
6〜C14−アリール基は、例えばフェニルおよびナフテニルまたはフルオレニル基を含む。
【0039】
適した成分B)のスズ含有化合物の好ましい例は、アルキルスズクロリドおよびその混合物、例えばジ−n−ブチルスズジクロリド並びにジ−n−オクチルスズジクロリド、またはアルキルスズオキシドおよびその混合物、例えばジ−n−ブチルスズオキシド並びにジ−n−オクチルスズオキシド、ジブチルスズカルボキシレート、例えばジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズマレエート、ジ−n−ブチルスズ−ビス−2−エチルヘキサノエート並びにジ−n−ブチルスズジネオデカノエート、ジオクチルスズカルボキシレート、例えばジ−n−オクチルスズジアセテート、ジ−n−オクチルスズジラウレート、ジ−n−オクチル−スズマレエート、ジ−n−オクチルスズ−ビス−2−エチルヘキサノエートまたはジ−n−オクチルスズジネオデカノエート、さらなるジアルキルスズ錯体、例えばジ−n−ブチルスズジアセチルアセトナトである。本発明による混合物において、通常、本発明によるコーティング剤中に直ちに、または加熱後に溶解するスズ化合物が特に有利に使用可能である。
【0040】
とりわけ特に好ましい成分B)の化合物はケトネート(Ketonate)である。
【0041】
本発明によるコーティング剤中のスズ含有化合物B)の量は、各々コーティング剤に対して好ましくは0.01〜1.0質量%、殊に好ましくは0.1〜1質量%である。
【0042】
本発明によるコーティング剤の成分C)はアミノシランであり、殊に前記アミノシランは一般式(III)
mSiYn (III)
のアミノシランまたはアミノアルキルシランであり、前記式中、Aは置換または非置換のアミノアルキル基、置換または非置換のジアミノジアルキル基または置換または非置換のトリアミノトリアルキル基を表し、前記基Yは同一または異なり、その際、YはOH、ONa、OK、OR’、OCOR’、OSiR’3、Cl、Br、IまたはNR’2であり、mは1または2であり、且つnは1、2または3であり、ただしm+n=4であり、その際、前記基R’は独立して水素、直鎖または分枝鎖のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、各々1〜18個の炭素原子を有し且つ各々任意に置換されていてよい。
【0043】
有利には、mは1であり且つnは3である。さらに好ましくは、YはOHまたはOR’から選択され、OR’が特に好ましい。この場合、R’は殊にメチル基またはエチル基から選択され、メチル基が殊に好ましい。
【0044】
かかるアミノシランまたはアミノアルキルシランは、例えば、しかし排他的ではなく、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピル(ジエトキシメトキシシラン)、3−アミノプロピル(トリプロポキシシラン)、3−アミノプロピル(ジプロポキシメトキシシラン)、3−アミノプロピル(トリドデカノキシシラン)、3−アミノプロピル(トリテトラデカノキシシラン)、3−アミノプロピル(トリヘキサデカノキシシラン)、3−アミノプロピル(トリオクタデカノキシシラン)、3−アミノプロピル(ジドデカノキシ)テトラデカノキシシラン、3−アミノプロピル(ドデカノキシ)−テトラデカノキシ(ヘキサデカノキシ)シラン、3−アミノプロピル(ジメトキシメチルシラン)、3−アミノプロピル(メトキシジメチルシラン)、3−アミノプロピル(ヒドロキシジメチルシラン)、3−アミノプロピル(ジエトキシメチルシラン)、3−アミノプロピル(エトキシジメチルシラン)、3−アミノプロピル(ジプロポキシメチルシラン)、3−アミノプロピル(プロポキシジメチルシラン)、3−アミノプロピル(ジイソプロポキシメチルシラン)、3−アミノプロピル(イソプロポキシジメチルシラン)、3−アミノプロピル(ジブトキシメチルシラン)、3−アミノプロピル(ブトキシジメチルシラン)、3−アミノプロピル(ジイソブトキシメチルシラン)、3−アミノプロピル(イソブトキシジメチルシラン)、3−アミノプロピル(ジドデカノキシメチルシラン)、3−アミノプロピル(ドデカノキシジメチルシラン)、3−アミノプロピル(ジテトラデカノキシメチルシラン)、3−アミノプロピル(テトラデカノキシジメチルシラン)、2−アミノエチル(トリメトキシシラン)、2−アミノエチル(トリエトキシシラン)、2−アミノエチル(ジエトキシメトキシシラン)、2−アミノエチル(トリプロポキシシラン)、2−アミノエチル(ジプロポキシメトキシシラン)、2−アミノエチル(トリドデカノキシシラン)、2−アミノエチル(トリテトラデカノキシシラン)、2−アミノエチル(トリヘキサデカノキシシラン)、2−アミノエチル(トリオクタデカノキシシラン)、2−アミノエチル(ジドデカノキシ)テトラデカノキシシラン、2−アミノエチル(ドデカノキシ)テトラデカノキシ(ヘキサデカノキシ)シラン、2−アミノエチル(ジメトキシメチルシラン)、2−アミノエチル(メトキシジメチルシラン)、2−アミノエチル(ジエトキシメチルシラン)、2−アミノエチル(エトキシジメチルシラン)、1−アミノメチル(トリメトキシシラン)、1−アミノメチル(トリエトキシシラン)、1−アミノメチル(ジエトキシメトキシシラン)、1−アミノメチル(ジプロポキシメトキシシラン)、1−アミノメチル(トリプロポキシシラン)、1−アミノメチル(トリメトキシシラン)、1−アミノメチル(ジメトキシメチルシラン)、1−アミノメチル(メトキシジメチルシラン)、1−アミノメチル(ジエトキシメチルシラン)、1−アミノメチル(エトキシジメチルシラン)、3−アミノブチル(トリメトキシシラン)、3−アミノブチル(トリエトキシシラン)、3−アミノブチル(ジエトキシメトキシシラン)、3−アミノブチル(トリプロポキシシラン)、3−アミノブチル(ジプロポキシメトキシシラン)、3−アミノブチル(ジメトキシメチルシラン)、3−アミノブチル(ジエトキシメチルシラン)、3−アミノブチル(ジメチルメトキシシラン)、3−アミノブチル(ジメチルエトキシシラン)、3−アミノブチル(トリドデカノキシシラン)、3−アミノブチル(トリテトラデカノキシシラン)、3−アミノブチル(トリヘキサデカノキシシラン)、3−アミノブチル(ジドデカノキシ)テトラデカノキシシラン、3−アミノブチル(ドデカノキシ)テトラデカノキシ(ヘキサデカノキシ)シラン、3−アミノ−2−メチル−プロピル(トリメトキシシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(トリエトキシシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(ジエトキシメトキシシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(トリプロポキシシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(ジプロポキシメトキシシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(トリドデカノキシシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(トリテトラデカノキシシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(トリヘキサデカノキシシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(トリオクタデカノキシシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(ジドデカノキシ)テトラデカノキシシラン、3−アミノ−2−メチル−プロピル(ドデカノキシ)テトラデカノキシ(ヘキサデカノキシ)シラン、3−アミノ−2−メチル−プロピル(ジメトキシメチルシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(メトキシジメチルシラン)、3−メルカプト−2−メチル−プロピル(ジエトキシメチルシラン)、3−メルカプト−2−メチル−プロピル(エトキシジメチルシラン)、3−メルカプト−2−メチル−プロピル(ジプロポキシメチルシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(プロポキシジメチルシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(ジイソプロポキシメチルシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(イソプロポキシジメチルシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(ジブトキシメチルシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(ブトキシジメチルシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(ジイソブトキシメチルシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(イソブトキシジメチルシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(ジドデカノキシメチルシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(ドデカノキシ−ジメチルシラン)、3−アミノ−2−メチル−プロピル(ジテトラデカノキシメチルシラン)または3−アミノ−2−メチル−プロピル(テトラデカノキシジメチル−シラン)、トリアミノ官能性プロピルトリメトキシシラン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−アミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)−アミン、N−ベンジル−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン−ヒドロクロリド、N−ベンジル−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン−ヒドロアセテート、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−ビニルベンジル−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルポリシロキサンおよびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランである。
【0045】
好ましいアミノシランまたはアミノアルキルシランは、置換または非置換のアミノシラン化合物、殊に3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノエチル−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチル−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシランおよびN−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランである。特に好ましくは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)AMMO)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)AMEO)、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)1505)、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)1189)およびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)DAMO)、(H3CO)3Si(CH23NH(CH23Si(OCH33(ビス−AMMO)、(H52O)3Si(CH23NH(CH23Si(OC253(ビス−AMEO)、(H3CO)3Si(CH23NH(CH22NH(CH22NH(CH23Si(OCH33(ビス−DAMO)(各々、Evonik Industries AG社)が、アミノシランC)として使用される。
【0046】
本発明によるコーティング剤中の成分C)の量は、各々コーティング剤に対して好ましくは5〜30質量%、殊に好ましくは10〜20質量%である。
【0047】
さらには、本発明によるコーティング剤は、任意に、1つまたはそれより多くの結合剤成分を含有し得る。原則的に、結合剤成分として、当業者に公知の種類の全ての結合剤、例えば熱可塑性、つまり、非架橋性の結合剤であって、通常、平均分子量>10000g/molを有するものが適している。しかしながら好ましくは、酸性の水素原子を有する反応性官能基を有する結合剤が使用される。上記の種類の適した結合剤は例えば、少なくとも1つの、しかし好ましくは2つ以上のヒドロキシル基を有する。結合剤のさらに適した官能基は、例えばトリアルコキシシラン官能性である。
【0048】
官能基を有する結合剤として、好ましくはヒドロキシル基含有ポリマー、殊にヒドロキシル基含有ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリカーボネートおよびポリウレタンであってOH価20〜500mg KOH/gおよび平均モル質量250〜6000g/Molを有するものが使用される。特に好ましくは、本発明の範囲において、OH価20〜150mg KOH/g、および平均分子量500〜6000g/molを有するヒドロキシル基含有ポリエステルおよび/またはポリアクリレートが結合剤成分として使用される。
【0049】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルコポリマーとして、モノマー組成物を有する樹脂、例えばWO93/15849号(8ページ、25行目〜10ページ、5行目)またはDE19529124号内に記載されるものを使用できる。その際、モノマーとしての(メタ)アクリル酸の割合に応じた使用によって調節されるべき(メタ)アクリルコポリマーの酸価は、0〜30、有利には3〜15mg KOH/gであるべきである。(メタ)アクリルコポリマーの数平均モル質量(ポリスチレン標準に対してゲル透過クロマトグラフィーによって測定)は、有利には2000〜20000g/molであり、ガラス転移温度は有利には−40℃〜+60℃である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの割合に応じた使用によって調節されるべき、本発明により使用するための(メタ)アクリルコポリマーのヒドロキシル含有率は、有利には70〜250mg KOH/g、特に好ましくは90〜190mg KOH/gである。
【0050】
本発明による適したポリエステルポリオールは、ジカルボン酸およびポリカルボン酸、およびジオールおよびポリオールからのモノマー組成物を有する樹脂、例えばStoye/Freitag、塗料樹脂、C. Hanser Verlag、1996、49ページ、またはWO93/15849号内に記載されるものである。ポリエステルポリオールとして、カプロラクトンと低分子ジオールおよびトリオールとの重付加生成物、例えばCAPA(登録商標)(Perstorp)の名称で市販されているものも使用できる。計算により決定された数平均モル質量は、有利には500〜5000g/mol、特に好ましくは800〜3000g/molであり、平均官能価は有利には2.0〜4.0、好ましくは2.0〜3.5である。
【0051】
本発明により使用されるウレタン基およびエステル基含有ポリオールとして、原則的に例えばEP140186号内に記載されるものも使用される。好ましくは、HDI、IPDI、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)または(H12−MDI)を使用して製造されるウレタン基およびエステル基含有ポリオールが使用される。数平均モル質量は有利には、500〜2000g/molであり、平均官能価は殊に2.0〜3.5の範囲である。
【0052】
当然のことながら、先述の結合剤の混合物も使用できる。好ましい結合剤は、単独または混合物での、ヒドロキシル基含有ポリエステルおよびポリアクリレートである。
【0053】
本発明によるコーティング剤中の任意の追加的な結合剤の割合は、コーティング剤に対して殊に5〜60質量%、殊に10〜40質量%である。
【0054】
本発明によるコーティング剤は、さらに、塗料技術において公知の助剤および/または添加剤、例えば安定剤、光保護剤、触媒、充填材、顔料、流動剤、レオロジー助剤、例えばいわゆる「垂れ調節剤」、マイクロゲルまたは熱分解法二酸化ケイ素を、典型的な濃度で含有できる。必要に応じて、本発明によるコーティング剤に、塗料技術において慣例的な無機または有機色素および/または効果顔料を追加することもできる。
【0055】
助剤および/または添加剤は、顔料を含まないコーティング剤の場合、コーティング剤に対して有利には0.01〜90質量%、殊に0.1〜20質量%の量で、本発明によるコーティング剤中に含有される。顔料および/または充填材含有コーティング剤の場合、助剤および/または添加剤の含有率は、コーティング剤に対して0.01〜99質量%、殊に0.1〜90質量%である。
【0056】
さらには、本発明によるコーティング剤は、有機溶剤を含有し得る。適した溶剤は、例えばケトン、エステル、アルコールまたは芳香族化合物である。
【0057】
溶剤は、コーティング剤に対して有利には1〜50質量%、殊に5〜75質量%の量で、本発明によるコーティング剤中に含有される。溶剤の量は、コーティング剤の調節されるべき塗布粘度による。
【0058】
成分A)〜C)並びに追加的に可能性のある結合剤、助剤および添加剤および溶剤の全ての割合の合計は100質量%である。
【0059】
本発明によるコーティング剤の製造を、先述の成分を混合することによって行う。該混合を、当業者に公知の混合機、例えば撹拌容器、溶解機、ビーズミル、ロールミル等内で行うことができるが、スタティックミキサーを用いて連続的に行うこともできる。
【0060】
本発明によるコーティング剤は、殊に木材、プラスチック、ガラス、金属のコーティングのために使用できる。このようにして、100℃未満の温度でも架橋するコーティングが得られる。
【0061】
従って、本発明のさらなる対象は、木材、プラスチック、ガラスまたは金属のコーティングのための、A)イソシアナトシランとヒドロキシ官能性化合物との付加物、B)スズ含有化合物、およびC)アミノシランからのコーティング剤の使用であって、その際、成分A)〜C)からのコーティング剤は殊に温度0℃〜80℃で硬化可能である。
【0062】
上記のコーティング剤に基づいて得られたコーティングは、機械的負荷に対する高い耐性を特徴とする。さらに、それらは化学物質に対する非常に良好な耐性、際立って良好な耐候性、および硬さと柔軟性との間の非常に良好なバランスを示す。
【0063】
本発明によるコーティング剤を含有するコーティングも同様に、本発明による対象である。
【0064】
さらなる実施態様がなくても、当業者は、前記の記載をさらなる範囲において使用できることが前提である。従って、好ましい実施形態および例は、単に説明として、いかなる場合にも何らかの形で開示を限定するわけではないことが理解されるべきである。以下に、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。本発明の選択的な実施態様は、類似して得られる。
【実施例】
【0065】
コーティング剤の製造手順:
個々の材料を、レシピに従って連続して250mLのガラス瓶に計量導入し、且つ、ラボ用撹拌機を用いて、均質で良好に完全混合された溶液が形成されるまでよく撹拌する。
【0066】
コーティングの製造手順:
個々のコーティング材料を、4方向膜延伸フレーム(Vierkantfilmziehrahmen)を用いてウェット層厚100μmでガラスプレート上に塗布する。コーティング膜を24時間の時間にわたって人工気候室内で23℃且つ相対空気湿度50%で保管する。1時間、3時間、6時間、12時間、および1日の間隔後、製造された膜のケーニッヒによる振り子硬度を測定し、個々の試料の乾燥挙動を測定する。得られたコーティングの結果を表1に示す。コーティング材料の硬度の測定を、振り子硬度の測定によって行う。
【0067】
振り子硬度の基本は、自立性振り子の振動の振幅が速く減少するほど、より強く下地が緩和し、且つ振動エネルギーが吸収されることである。試料プレート(コーティング膜)を可動式テーブル(Hubteller)上に設置する。外部から操作可能なレバーを用いて、前記可動式テーブルを引き続き振り子に移動させる。これは、スケール位置6°まで振られ、且つ、ワイヤトリガーで固定され、引き続き離される。振り子が垂直に対して6°から3°へと減衰するまでに必要とする振動の回数を計測する。該測定を、試料内の2つの異なる位置で実施する。振動に係数1.4を掛けることによって、秒単位でケーニッヒによる振り子緩和が計算される。
【0068】
【表1】
【0069】
(1) イソシアナトプロピルトリメトキシシランと1,9−ノナンジオールとの付加物(イソシアナトプロピルトリメトキシシランと1,9−ノナンジオールとの比は2:1に相応)
(2) Evonik Industries AG社の3−アミノプロピルトリメトキシシラン
(3) ジ−n−ブチルスズジネオデカノエート、TIB Chemicals AG
(4) ヒドロキシル基含有ポリアクリレート、Viverso社。
【0070】
結果:
該結果は、Vestanat M 95と、Dynasylan AMMOとTIB Kat 226との、90:10:0.3の比での組み合わせである、コーティング材料としての試料Cが、室温で良好な乾燥挙動を有することを示す。さらなる溶解された反応性アクリル樹脂Desmophen A 450を伴う試料Fも、この組み合わせで良好な乾燥特性が識別される。
【0071】
Vestanat M 95のコーティング膜である試料A、およびVestanat M 95とDesmophen A 450 BAとの混合物である試料Dは、24時間後に、まだ乾燥が開始していない。前記の膜は粘着性である。試料Bおよび試料Eは、Dynasylan AMMOの添加によって、1時間後に乾燥の開始が識別され、且つ、さらに経過すると完全な乾燥が識別される。ただし、前記2つの試料は、試料CおよびFの良好な乾燥挙動には達しない。触媒TIB Kat. 226の使用は、乾燥をさらに明らかに改善し且つ加速する。