(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明素子の周囲(12、12’、22)の前記個別光源(13、13’、23、23’、33、33’)の数が、デバイス周囲に沿った長さ1メートル当たり5Wと18Wとの間のパワーに対応する、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合透明照明デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面において、本発明のコンセプトを説明するのに必要とされない補助的な構成要素は省略され、例えば、
図1〜
図3を参照すると、個別光源の電源、スイッチ、制御装置は図示されていない。また、一部の特徴は、図面の理解を高めるために拡大されていて、特に、散乱特性(任意でルミネッセンス特性と組み合わせられる)に関して本発明の主要な構成要素である
図1及び
図2の誘電体粒子のサイズは非排他的である。
【0013】
本発明者等は、例えば建物の窓、内壁セパレータ、ランプにおいてその透明性が利用される非動作状態における照明デバイスの見た目を改善すると共に、動作状態において、つまり、その周囲の個別光源をオンにした際において高品質の照明を提供することができるようにするために必要な一組の特徴を見出した。高品質の照明とは、眼に見えるグレアや光の煌めき(ギラツキ)が無く、光が好適に拡散されることを意味する。
【0014】
そのような特徴とは、多重反射を介してパネルから出て行く光を方向決め又は再方向決めする反射フレームの使用と組み合わせられる低濃度の誘電体粒子の均一分布である。そのような特徴及びその組み合わせは従来技術において開示されていない。
【0015】
誘電体粒子の均一分布とは、誘電体粒子を含む透明照明素子のあらゆる点において、10
−2cm
3の体積(全ての体積がそのような構成要素内に含まれるとの条件において)内の粒子の数が、パネル内の平均値に等しいか又は10%以下で異なるものとする。実際には、この条件を検証する簡単な方法は、照明素子の中心部分の濃度と周辺部の濃度との間の差が10%以下であるかどうかを検証することである。上記定義は、散乱粒子を含む照明構成要素が、照明デバイスの縁近くにおいて、及び/又は、個別光源のすぐ近くの箇所において不連続性(誘電体粒子が存在しないこと)を示し得ることも考慮している。
【0016】
典型的には、こうした周辺領域が存在する場合には、それは、照明デバイスの境界から最大3cmまでのものである。
【0017】
本発明に係る複合透明照明デバイスは透明素子を備え、その透明素子の物質は、500nmで評価して0.009cm
−1以下の吸光係数αの物質である。
【0018】
このようなαは以下のように定義される:
α=−(1/d)×ln(T/100)
T=100×(Iout/Iin)+R
R=100×(Iback/Iin)
ここで、
‐ dは透明素子の厚さ、
‐ Iin、Ioutはそれぞれ、入射光強度、透明素子を通過した後の光強度、
‐ Ibackは、入射光を受けた表面によって反射された光強度、
‐ Tは透過率、Rは反射率である。
【0019】
本発明での使用に好適な透明物質は、ガラスやポリマー材料であり、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリシロキサン樹脂、アクリル、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)である。こうした物質は、単独で又は透明基板と組み合わせて使用され得て、つまり、透明素子の薄層(例えば、誘電体粒子の分散体を含むPMMA層)をガラス基板の上に堆積させることができる。好ましい透明基板の厚さは0.1mmと6mmとの間である。
【0020】
本発明に係る複合透明照明デバイスについての誘電体粒子の濃度は低いことが望ましく、つまり、それら粒子が、0.003cm
−1から0.03cm
−1の間の値での吸光係数の増大を与えるものであることを意味する。
【0021】
これは、誘電体粒子の体積濃度の値(マトリクスの体積に対する粒子の体積)が、
【数3】
と
【数4】
との間であることに対応する。ここで、ρは、μm単位での平均誘電体粒子サイズであり、mは、500nmで評価した誘電体粒子の屈折率と透明マトリクスの屈折率との間の比である。
【0022】
より好ましくは、以下の範囲の誘電体粒子濃度の体積濃度が使用される:
・ 10
−6と10
−5との間、20μm>ρ≧5μmについて、放射波長と独立した光散乱を得るため;
・ 10
−6と10
−5との間、1μm>ρ>0.3μmについて、パネルに沿って取り出される光の高い均一性を保証するため;
・ 10
−4.5と10
−3との間、0.1μm>ρ>0.04μmについて、mが0.933と1.067との間の場合(m≠1±0.007)に、優れた透明性を保ちながら最大の取り出し光を得るため。
【0023】
強調すべき点は、散乱粒子が球形を有さないことが有り得て、また、粒子がサイズ分布を示し、上記式において、ρは、粒子の平均半径を表し、又は、不規則な形状の場合には、粒子の半値幅(つまり、各粒子について、最大サイズと最小サイズとの和を4で割ったもの)の平均を表す。これは、異なる種類の粒子が存在し得て、各々がそれ自体のサイズ分布を特徴とすることも考慮している。
【0024】
この点に関して、より多くの粒子及び/又は異なるサイズ分布が存在する場合、各成分の最大濃度は、上記式で与えられるCmaxを超えてはいけない。特に、各成分についての上記Cmin及びCmaxは、誘電体の総体積に対する特定の成分の相対濃度に従って比例的に調整されるべきものである。例えば、40%(vol/vol)の散乱粒子A及び60%の散乱粒子Bが存在する場合、マトリクスに対する最大濃度及び最小濃度は、散乱体Aについて0.4倍、散乱体Bについて0.6倍修正した上記式によって与えられる。
【0025】
誘電体粒子に適した物質の例は、金属酸化物であり、この場合、好ましくは、Ti、Al、Zr、Hf、Ta、Y、Ybの酸化物であり、又は、ケイ酸塩(シリケート)であり、この場合、好ましくは、アルミノケイ酸塩、SiO
2、ガラスビーズであり、又は、白色透明のセラミックビーズ、白色透明のプラスチックビーズ、硫酸バリウムである。
【0026】
均一分散の誘電体粒子を含むマトリクスの厚さは、好ましくは0.1mmと6mmとの間である。
【0027】
本発明に係る複合透明照明デバイスの誘電体粒子としての使用に適した他の種類の物質は、Ce:YAG等の無機蛍光体、オルトケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、窒化物、ユーロピウムをドープした酸窒化物等である。
【0028】
本発明の代替実施形態では、透明素子は、10
−6と10
−9mol/Lの間の濃度の発光染料の分散体を更に含む。適切な発光染料の例は、有機分子、例えば、ビピリジン誘導体、クマリン、ジカルボシアニン誘導体、ラクトン、オキサジン720、ナフタルイミド誘導体、フタロシアニン、ヘマトポルフィリン、ピロメテン、チオキサンテン、スルホローダミン、ローダミン6G、ぺリレン誘導体、(イソ)ビオラントロンの誘導体; 無機量子ドット(CuInS、ZnSe、ZnS、InP、CuInZnS等)、又はナノ蛍光体である。
【0029】
本発明によると、複合照明素子の周囲部は、80%以上の平均反射率を示し、これは、100%の反射率が理想値である点(90%よりも高い反射率の物質が当業者にとってむしろ一般的なものとして容易に識別され得るものではあるが)、及び、デバイスの周囲の一部、例えば、個別光源に対応する部分が反射性ではないものであり得る点を両方とも考慮している。反射性フレームは、多様で等価な解決策によって与えられ得て、例えば、金属ガイド、金属層又は膜の堆積、高反射率ペイント又はコーティングが挙げられる。
【0030】
本発明での使用に適した個別光源の例は、従来のLED、好ましくは青色又は白色LED、レーザーダイオード、有機発光トランジスタ(OLET,organic light emitting transistor)、有機発光ダイオード(OLED,organic light emitting diode)である。好ましくは、光源は、複合透明照明デバイスの少なくとも二側面に配置され、光源の数は、与えられるパワーがデバイス周囲に沿った長さ1メートル当たり5Wと18Wとの間になるような数である。好ましくは、このような個別光源は、複合透明照明デバイスの表面の1平方メートル当たり2000から5000ルーメンの間の総光出力を与える。
【0031】
図1は、第一実施形態の複合透明照明デバイス10の平面図を示す。この場合、一組の個別光源13、13’、13”、が、均一分散の誘電体粒子11を含む透明素子に挿入される。複合透明照明デバイス10の四側面12、12’、12”、12’’’は反射性とされ、例えば、金属薄層を堆積させることによって反射性とされる。この場合、個別光源は、2cm以下の長さで透明素子内にフィットすることが好ましい。
【0032】
図2は、第二実施形態の複合透明照明デバイス20の平面図を示し、均一分散の誘電体粒子を含む透明素子21を備え、その透明素子は周囲(周辺部)22を有し、外側周囲及び内側周囲25を有する反射性フレーム24が、誘電体粒子及び個別光源23、23’、23”、…を含む透明素子21に部分的に重なっている。
【0033】
図1に示される実施形態と同様に、この場合も、誘電体粒子を含む透明素子21の2cm以下の部分が動作という観点からは失われ、つまり、フレームと素子21との重なりは2cm以下である。簡単のため、フレーム24を単一素子として示しているが、サブアセンブリを互いに接続することによって得る方が便利であり、つまり、サブフレーム、例えば、複合透明照明デバイスの各側面に対応する四つのサブフレームを結合することによって、最終的なフレームが得られ、これは、組み立て作業を単純化すると共に、一つ以上の個別デバイスを交換する際の修理作業も単純化する。
【0034】
複合透明照明デバイスの形状は、特定の形状に限定されず、正方形及び長方形が好ましいが(
図1〜
図3に示されるように)、円形や楕円形も使用され得る。本願で言及される形状は、非限定的な例として与えられるものであり、他のあらゆる形状を適切に採用し得る。
【0035】
また、概略的に示される全ての実施形態は平坦なシステムを示し、これは好ましい構成であるが、湾曲した表面も同じく採用し得る。
【0036】
図3は、本発明に係る第三実施形態の複合透明照明デバイス30の概略断面図を示す。この場合、均一分散の誘電体粒子を含む透明層31は、二つの透明基板物質35と35’の間に挟まれ、
図1の場合と同様に、個別光源33及び33’が、透明素子31内に入り込み、複合透明照明デバイス30の境界は、デバイスの周囲に沿って延伸する反射性フレーム34によって与えられる。上述のように、フレーム34は、複数のサブフレームを接続することによって形成され得て、また、適切な放熱性を与えることが望ましい。
【0037】
図3に示される実施形態は、建物の窓の場合に特に適していて、その窓は、二つの外側透明基板35及び35’を有し、断熱作用を与え、また、湿気や酸素と反応し得る場合に誘電体粒子を環境因子から保護する作用を与える。この場合の
図3に示される実施形態に係る好ましい代替解決策では、薄膜を一方のガラス基板35又は35’のみの表面の上に堆積させて、それらガラス基板は、不活性ガス又は乾燥空気で充填されたガラス基板間の隙間を維持して組み立てられる。これは特に、複合透明照明デバイスが密閉されて組み立てられて、その隙間に不活性ガスが充填される場合である。
【0038】
以下の非限定的な例を参照して、本発明を更に説明する。
【0039】
例1
シリコーンマトリクス分散体中のCe:YAGを複数作製した。ロールミルを用いて、5μmから10μmの間のサイズを有する市販のCe:YAG粉末を分散させた。まず、最高濃度のサンプルを作製し(C1)、続けて希釈によって、他のサンプルC2、C3、S1を作製した。
【0040】
TiO
2とSiO
2サンプル分散体については、僅かに異なる製造プロセスを用いた。ここでは、液体分散体を脱イオン水の中に作製した。SiO
2については2.2g/cm
3、TiO
2については4g/cm
3の物質密度を用いた。また、この場合、最高濃度のサンプルを、分散体を均一にする軽い超音波処理の下で最初に作製し、低濃度のサンプルを希釈によって得た。
【0041】
Ce:YAG及びSiO
2粒子の平均寸法は7.5μmであり、一方、TiO
2粒子は、0.1μmにピークが有り、これらの値を、粒子サイズの基準値として用いた。
【0042】
Ce:YAGサンプル(C1〜C3、S1)、TiO
2(C4〜C6、S2)、SiO
2(C7〜C10、S3)に対する特性データ(サンプル番号、物質、サイズ、500nmでのm値、濃度)を以下の表1に示す。
【0044】
請求項1の式について、上記m値及び粒子半径での本発明に係る照明デバイスについての濃度範囲を、以下の表2に示す。
【0046】
従って、S1、S2及びS3のサンプルのみが、本発明によって定められる範囲内の粉末濃度を有することが見て取れ、一方、サンプルC1〜C9は、粒子濃度レベルが高く、比較サンプルである。
【0047】
例2
UV‐Vis JASCO分光計を用いて、例1で説明した多様なサンプルを、可視波長スペクトルに対する吸光係数について特性評価した。
【0048】
Ce:YAGについての曲線が
図4に示されていて、半連続線L1〜L3は、比較サンプルC1〜C3について得られた結果を示し、点線L4は、サンプルS1で得られた結果を示す。
図4では、吸光係数のターゲット範囲(つまり、0.003cm
−1と0.03cm
−1の間)は、二本の水平な連続線の間の部分である。
【0049】
同様に、
図5には、比較サンプルC4(半連続線L5)、比較サンプルC5(半連続線L6)、比較サンプルC6(半連続線L7)、サンプルS2(点線L8)について得られた結果が示される一方、
図6は、比較サンプルC7(半連続線L9)、比較サンプルC8(半連続線L10)、比較サンプルC9(半連続線L11)、比較サンプルC10(半連続線L12)、サンプルS3(点線L13)について得られた結果を示す。
【0050】
図4〜
図6に示される実験データから、本発明に係るサンプルS1〜S3のみが、実験データの点線L4、L8、L13によって示されるように、0.003cm
−1と0.03cm
−1の間の可視スペクトル内の吸光係数を保証している。
【0051】
例3
15cm×15cm×3cmのサンドイッチ構造を、二つの外側ガラス層と、中間複合層とで作製した。複合層を、液体ポリビニルブチラール前駆体を、310nmにピークのある半径を有するSiO
2球と混合して作製した。マトリクス中のSiO
2の濃度は、5×10
−6Vol/Volであった。誘電体粒子の屈折率とマトリクスの屈折率との間の比mは0.99であった、液体分散体を、ドクターブレード法を用いてガラスの上に堆積させて、厚さ0.4mmの層を得た。N
2環境でのUV硬化によって、in situ(その場、インサイチュー)で重合化が生じた。液体分散体の厚さ数マイクロメートルの層を硬化層の上に堆積させて、キャッピングガラス層を配置した。同じ条件下で二回目の重合化を適用した。
【0052】
標準的な個別光源での標準的な使用に関してより厳しい条件でこのアセンブリの特性を評価するため、また簡単にデータ収集するため、反射性フレーム及び個別光源を取り付けず、代わりに、75mWのパワーの平行な(コリメートされた)450nmのレーザーを右上部分からサブアセンブリに照射した。記録用CCDデジタルカメラの出力を
図7に示し、一方、
図8は、中間(活性)層を有さない同様のサブアセンブリで得られた結果を示す。
図8では、パネルの界面/境界での散乱に起因して、入射及び出射のレーザービームに対応する二つのスポットのみが見て取れ、パネル内部からの更なる散乱は記録されなかった。
【0053】
コヒーレントで平行な(コリメートされた)光源での一回の通過のみでも、最小のレーザービーム減衰(吸収係数の上記データを参照)で、一回の通過という条件(反射性フレームが無い)で、顕著で適切な量の散乱光が存在している。
【0054】
従って、本発明に従って作製されたサンプルでは、透明照明デバイスを得ることができる。