(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407276
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】鋳造された山形配列によって強化された表面に角度づけられたインピンジメントを使用する後縁冷却を含むガスタービンエンジン構成部品
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
F01D5/18
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-527278(P2016-527278)
(86)(22)【出願日】2014年10月9日
(65)【公表番号】特表2016-540149(P2016-540149A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】US2014059796
(87)【国際公開番号】WO2015065671
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2016年6月28日
(31)【優先権主張番号】14/068,070
(32)【優先日】2013年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(73)【特許権者】
【識別番号】512151609
【氏名又は名称】マイクロ システムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MIKRO SYSTEMS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】チン−パン リー
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン イー. ヘネヴェルド
(72)【発明者】
【氏名】グレン イー. ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ジル クリンジャー
【審査官】
倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05263820(US,A)
【文献】
米国特許第07690892(US,B1)
【文献】
特開2013−007381(JP,A)
【文献】
特開2006−063984(JP,A)
【文献】
特開2000−291406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンの構成部品であって、
内面を有する圧力側と、
内面を有する吸込側と、
後縁部分と、
該後縁部分に半径方向に配置された、複数の、吸込側インピンジメントオリフィスおよび圧力側インピンジメントオリフィスと、を備え、
前記吸込側インピンジメントオリフィスはそれぞれ、インピンジメントジェットを、鋭角で、前記吸込側の前記内面に形成された山形配列内の山形の先端部を包囲する延在した目標領域へ方向付けるように構成されており、
前記圧力側インピンジメントオリフィスはそれぞれ、インピンジメントジェットを、鋭角で、前記圧力側の前記内面に形成された山形配列内の山形の先端部を包囲する目標領域へ方向付けるように構成されていることを特徴とする、ガスタービンエンジンの構成部品。
【請求項2】
前記吸込側インピンジメントオリフィスの出口は、平均反り線よりも吸込側に配置されており、前記圧力側インピンジメントオリフィスの出口は、平均反り線よりも圧力側に配置されている、請求項1記載の構成部品。
【請求項3】
前記山形の先端部に衝突した後、消費されたインピンジメント空気は、それぞれの衝突された山形配列の山形の斜辺の拡開と関連して拡開する、請求項1または2記載の構成部品。
【請求項4】
少なくとも1つの前記山形配列は、複数の山形を含み、該複数の山形の各山形の先端部は、それぞれの前記目標領域に配置されており、前記複数の山形の、該山形の斜辺は、該斜辺の間に、消費された冷却空気が流れる少なくとも1つの溝を形成している、請求項1から3までのいずれか1項記載の構成部品。
【請求項5】
前記溝は、山形配列が存在しなかったならば前記消費されたインピンジメント空気が辿ったであろう経路と同じ経路に沿って、前記消費されたインピンジメント空気を案内するように向けられている、請求項4記載の構成部品。
【請求項6】
少なくとも1つの前記山形は、非連続的である、請求項1から5までのいずれか1項記載の構成部品。
【請求項7】
少なくとも1つの前記山形の前記先端部は、開放している、請求項6記載の構成部品。
【請求項8】
少なくとも1つの前記山形は、連続的である、請求項1から5までのいずれか1項記載の構成部品。
【請求項9】
少なくとも1つの前記山形は、それぞれの目標領域の全体にわたって延びている、請求項1から5までのいずれか1項記載の構成部品。
【請求項10】
各インピンジメントオリフィスは、淀み点を、消費されたインピンジメント空気の流れの方向に関してそれぞれの前記山形の前記先端部の上流の前記目標領域に位置決めするように構成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の構成部品。
【請求項11】
複数の前記インピンジメントオリフィスの下流に配置された、インピンジメントオリフィスの第2段をさらに備え、
各吸込側の前記第2段の前記インピンジメントオリフィスは、インピンジメントジェットを、鋭角で、前記山形配列内の前記山形の前記先端部を包囲する延在した目標領域へ、前記吸込側の内壁に向かって方向付けるように構成されており、
各圧力側の前記第2段の前記インピンジメントオリフィスは、インピンジメントジェットを、鋭角で、前記山形配列内の前記山形の前記先端部を包囲する延在した目標領域へ、前記圧力側の内壁に向かって方向付けるように構成されており、
前記複数のインピンジメントオリフィスからの消費されたインピンジメント空気は、それぞれの前記山形の斜辺によって、それぞれの前記第2段の前記インピンジメントオリフィス内へ案内される、請求項1から10までのいずれか1項記載の構成部品。
【請求項12】
前記複数のインピンジメントオリフィスのそれぞれからの消費されたインピンジメント空気は、それぞれの前記山形の斜辺によって、2つのそれぞれの前記第2段の前記インピンジメントオリフィス内へ案内される、請求項11記載の構成部品。
【請求項13】
ガスタービンエンジンの構成部品であって、
山形配列を含む、翼の吸込側に配置された内面と、
冷却流体のインピンジメントジェットを、前記吸込側に配置された内面に、垂直でない角度で方向付けるように構成されたインピンジメントオリフィスと、を備え、
前記インピンジメントジェットの目標領域は、前記山形配列内の山形の先端部を包囲しており、前記山形の斜辺は、消費されたインピンジメント空気の拡開に関連して拡開していることを特徴とする、ガスタービンエンジンの構成部品。
【請求項14】
翼の圧力側に配置された反対側の内面と、
前記吸込側に配置された内面と前記圧力側に配置された反対側の内面との間に配置された複数のインピンジメントオリフィスと、を備え、
前記複数のインピンジメントオリフィスのうちの幾つかは、冷却流体のそれぞれのインピンジメントジェットを前記吸込側に配置された内面へ垂直でない角度で方向付けるように構成されており、前記複数のインピンジメントオリフィスのうちの幾つかは、冷却流体のそれぞれのインピンジメントジェットを前記圧力側に配置された反対側の内面へ垂直でない角度で方向付けるように構成されており、各インピンジメントジェットの前記目標領域は、それぞれの前記山形配列内の前記山形の先端部を包囲しており、それぞれの前記山形の前記斜辺は、それぞれの消費されたインピンジメント空気の拡開に関連して拡開している、請求項13記載の構成部品。
【請求項15】
前記複数のインピンジメントオリフィスは、翼の後縁部分に配置されている、請求項14記載の構成部品。
【請求項16】
前記山形配列は、複数の山形を含み、各山形の先端部は、前記目標領域に配置されており、各山形の前記斜辺は、前記消費されたインピンジメント空気の拡開に関連して拡開している、請求項13から15までのいずれか1項記載の構成部品。
【請求項17】
前記山形は、非連続的である、請求項13から16までのいずれか1項記載の構成部品。
【請求項18】
前記山形の先端部は、開放している、請求項13から17までのいずれか1項記載の構成部品。
【請求項19】
前記山形の前記斜辺は、山形配列が存在しなかったならば前記消費されたインピンジメント空気が辿ったであろう経路に対して角度を成して向けられている、請求項13から18までのいずれか1項記載の構成部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた開発の記載
本発明のための開発は、アメリカ合衆国エネルギ省によって与えられた契約番号SC0001359によって一部補助された。したがって、アメリカ合衆国政府は本発明における何らかの権利を有することがある。
【0002】
発明の分野
本発明は、セラミック中子を使用して鋳造可能なタービン翼の後縁の冷却に関する。特に、本発明は、目標の鋳造された表面特徴部への角度づけられたインピンジメント冷却ジェットの使用を開示する。
【0003】
発明の背景
ガスタービンエンジンのブレードおよびベーンにおいて使用される従来のタービン翼は、空力効率のために薄い後縁を有する。しかしながら、内部における冷却表面積の欠如は、薄い後縁の冷却を困難にしている。後縁は、通常、セラミック中子を使用することによってブレード全体と一体に鋳造される。セラミック中子の特徴およびサイズは、後縁に反映される。しかしながら、中子設計の考慮は、後縁設計の考慮よりも重視されなければならない。例えば、後縁にインピンジメントチャネルを形成する中子特徴部が大きくなるほど、中子強度にとっては好ましいが、インピンジメントチャネルが大きくなると、流れ調量が低下することを意味する。それゆえ、中子の考慮と後縁冷却の要求とのバランスを取る、適切に設計された中子は、適切に設計された後縁設計の重要な側面である。
【0004】
タービン翼後縁における平均反り線に沿ったインピンジメント冷却が知られている。この配列では、オリフィスが後縁の一部として鋳造され、平均反り線の方向に向けられ、冷却流体の高速インピンジメントジェットを発生する。これらのインピンジメントジェットは、隣接する下流のインピンジメントオリフィスの間の面に衝突してもよく、これは、熱伝達率を増大させる。消費された冷却流体が後縁から燃焼ガス通路内へ排出される前に、1回、2回または3回の衝突が生じてもよい。インピンジメントオリフィスの連続は、流れを調量するためにも機能し、これは、冷却流体のより効率的な利用を提供する。
【0005】
平均反り線上にインピンジメントオリフィスを配置することで、インピンジメントオリフィスは、吸込側における凹状内面と、翼の圧力側における凸状内面との間に配置されている。従来の冷却方式は、インピンジメントオリフィスが、凹状および凸状の内面に衝突するインピンジメントジェットを発生するように、インピンジメントオリフィスを角度づけることによって、熱伝達を改良する。これは、ひいては、後縁のそれぞれの外面を冷却する。その他の従来の冷却方式は、インピンジメントジェットと一致する内面に様々な表面特徴を配置する。しかしながら、ガスタービンエンジンの作動温度は、上昇し続ける。これは、当技術分野において、後縁の冷却に対する改良の余地を残している。
【0006】
以下の説明では、本発明を図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本明細書に開示された翼の典型的な実施の形態の概略的な断面図である。
【
図3】後縁の典型的な実施の形態を形成するために使用される鋳造中子の後縁部分の概略的な側面図である。
【
図4】
図3のインピンジメントオリフィス形成中子特徴部の拡大図である。
【
図5】後縁において生じる冷却流体の流れを透視図で概略的に示しており、流れは、
図4の中子の平面5−5に重ね合わされている。
【
図6】後縁において生じる冷却流体の流れを透視図で概略的に示しており、流れは、
図4の中子の平面6−6に重ね合わされている。
【
図7】本明細書に説明された冷却配列を形成するために使用される鋳造中子クーポンを示している。
【
図8】
図7の鋳造中子クーポンを使用して形成された鋳物の断面図を示している。
【
図9】
図7の鋳造中子クーポンを使用した、熱伝達結果を示している。
【0008】
発明の詳細な説明
本願発明者らは、後縁および冷却配列の全てのエレメントがセラミック鋳造中子を使用して翼と一体に鋳造される、タービン翼の後縁のための冷却配列を開発した。本発明は、エレメントが協調して、予想しなかったほど極めて効率的な冷却配列を形成するような配列を形成するために、鋳造中子技術における進歩を利用する。特に、翼および後縁は、後縁内にインピンジメントオリフィスおよび山形を形成するように構成されたセラミック鋳造中子の周囲に鋳造される。インピンジメントオリフィスのうちの幾つかは、インピンジメントジェットを、翼の圧力側における内面に配置された山形に向かって方向付ける。その他のインピンジメントオリフィスは、インピンジメントジェットを、吸込側における内面に配置された山形に向かって方向付ける。インピンジメントオリフィスの1つまたは複数の列が設けられてもよい。消費されたインピンジメント空気は、後縁から燃焼ガスの流れの中へ排出される。全てのインピンジメントジェットが同じ方向を向いている場合と比較して、インピンジメントジェットの目標を吸込側から圧力側へ交互にすることは、冷却される表面積を増大させることを助けるのみならず、セラミック中子の後縁セクションを強化するように機能もし、これにより、インピンジメントジェットの直径をより小さくしつつ、生産歩留りを高める。さらに、山形の使用は、表面積を増大させるのみならず、冷却空気を拡散させるためにも機能し、表面をより均一に冷却し、従来のタービュレータまたは平行な溝と比較したときに、有効に冷却される面積を増大させる。
【0009】
図1は、翼10の典型的な実施の形態を示している。翼10は、圧力側12と、吸込側14と、前縁16と、後縁18と、平均反り線20と、インピンジメントオリフィス24の第1列22と、インピンジメントオリフィス24の第2列26と、インピンジメントオリフィス24の第3列28とを有しており、各列22,26,28は、翼10の基部から翼10の先端部までガスタービンエンジン内で半径方向に向けられている。列22,26,28は、翼10の後縁部分30に配置されている。冷却流体は、インピンジメントオリフィスの第1列22に進入し、排出オリフィス32を通じて後縁部分30から出る。圧力側12は、圧力側内面34の冷却を介して冷却され、吸込側14は、吸込側内面36の冷却を介して冷却される。
【0010】
図2は、
図1の後縁部分30の拡大図を示している。この断面図において、翼10内の上流キャビティ42からの新鮮な冷却流体40は、第1列22のインピンジメントオリフィス24のインピンジメントオリフィス入口44に進入し、インピンジメントジェット48の形式でインピンジメントオリフィス出口46を通じてインピンジメントオリフィス24から排出される。第1列22のインピンジメントオリフィス24のインピンジメントオリフィス出口46の中心は、平均反り線20よりも吸込側14に配置されているが、それぞれのインピンジメントジェット48が平均反り線20に対して所定の角度50で方向付けられる限り、必ずしもそうである必要はない。この断面図において、第1列22のインピンジメントジェット48は、インピンジメントの角度52で吸込側14における凹状の第1列の内面62上の目標領域60に向かって方向付けられる。表面特徴(図示せず)または複数の表面特徴は、少なくとも表面特徴の一部が目標領域60内に位置するように位置決めされている。
【0011】
第1列22のインピンジメントジェット48からの消費された冷却流体64は、第2列26のための新鮮な冷却流体40となる。新鮮な冷却流体40は、第2列26のインピンジメントオリフィス24のインピンジメントオリフィス入口44に進入し、通過し、インピンジメントジェット48の形式でインピンジメントオリフィス出口46を通じてインピンジメントオリフィス24から排出される。第2列26のインピンジメントオリフィス24のインピンジメントオリフィス入口44は、第1列22のインピンジメントオリフィス24のインピンジメントオリフィス出口46とは異なる高さにあってもよく、それゆえ、第2列26のインピンジメントオリフィス24は、破線を用いて表されている。第2列26のインピンジメントオリフィス24のインピンジメントオリフィス出口46の中心は、平均反り線20よりも圧力側12に配置されているが、それぞれのインピンジメントジェット48が平均反り線20に対して所定の角度で方向付けられる限り、必ずしもそうである必要はない。この断面図において、第2列26のインピンジメントジェット48は、圧力側12における凸状の第2列の内面66上の目標領域60に向かって方向付けられる。表面特徴(図示せず)または複数の表面特徴は、少なくとも表面特徴の一部が目標領域60内に位置するように位置決めされている。
【0012】
第2列26のインピンジメントジェット48からの消費された冷却流体は、第3列28のための新鮮な冷却流体40となる。新鮮な冷却流体40は、第3列28のインピンジメントオリフィス24のインピンジメントオリフィス入口44に進入し、通過し、インピンジメントジェット48の形式でインピンジメントオリフィス出口46を通じてインピンジメントオリフィス24から排出される。第3列28のインピンジメントオリフィス24のインピンジメントオリフィス入口44は、第1列22のインピンジメントオリフィス24のインピンジメントオリフィス出口46と同じ高さにあってもよく、それゆえ、第3列28のインピンジメントオリフィス24は、実線を用いて表されている。第3列28のインピンジメントオリフィス24のインピンジメントオリフィス出口46の中心は平均反り線20よりも吸込側14に配置されているが、それぞれのインピンジメントジェット48が平均反り線20に対して所定の角度で方向付けられる限り、必ずしもそうである必要はない。この断面図において、第3列28のインピンジメントジェット48は、吸込側14における凹状の第3列の内面68上の目標領域60に向かって方向付けられる。表面特徴(図示せず)または複数の表面特徴は、少なくとも表面特徴の一部が目標領域60内に位置するように位置決めされている。第3列28のインピンジメントジェット48からの消費された冷却流体64は、排出オリフィス32を通じて後縁部分30から排出される。
【0013】
この典型的な実施の形態では、この断面図における列22,26,28は、吸込側14から圧力側12へ、さらに吸込側へ交互になっている。1つの断面図における全ての3つの列22,26,28が同じ側に方向付けられていてもよいし、または異なる側を向いていてもよいが、必ずしも図示したように交互のパターンでなくてもよい。例えば、代替的な典型的な実施の形態では、第1列22および第2列は圧力側12を向いていてもよいが、第3列は吸込側14を向いていてもよい。あらゆる組み合わせが考えられる。同様に、示された配列は、断面の位置が翼10の基部から先端部へ移行していくときに、変化してもよい。
【0014】
図3は、二重インピンジメントのために構成された後縁部分30の代替的な典型的な実施の形態を形成するために使用される鋳造中子82の後縁部分80の側面図である。鋳造中子は、セラミック材料から形成されていてもよい。
図4は、鋳造中子82が取り出されたときに翼10内にインピンジメントオリフィス24を形成する、インピンジメントオリフィス形成構造84を有する、
図3の後縁部分80内の領域の拡大図である。
【0015】
図5は、
図4の線5−5で終了する鋳造中子の一部を透視図で概略的に示しており、線は、冷却流体の流れが翼10内の同じ位置において取り得る経路を表している。言い換えれば、鋳造中子82の外面86は、この外面86が形成する翼10の内面としてモデル化されている。
図6は、
図5と同様であるが、線5−5のインピンジメントオリフィス形成構造84にすぐ隣接する、インピンジメントオリフィス形成構造84の線6−6に沿って見たものである。
図5を
図6と比較すると、この典型的な実施の形態では、インピンジメントオリフィス形成構造84の第1列90内の隣接するインピンジメントオリフィス形成構造84は、それらがどちらの側を向いているかを交代させていることが明らかである。インピンジメントオリフィス形成構造84は、図示したように1つおきに交互になっていてもよいし、他のグループごとに交互になっていてもよく、例えば、2つが一方の側を向いており、次いで、2つが別の側を向いているなどである。
【0016】
図5および
図6には、インピンジメントオリフィス形成構造84の第2列92も示されている。この図では、第1列90と第2列とは鉛直方向に(すなわち、翼の基部から翼の先端部へ)ずらされていることが分かる。これは、冷却流体がたどる経路をより蛇行状に、ひいてはより効率的にする。
【0017】
図7は、後縁部分30において使用される冷却配列を実装する鋳造中子クーポン(coupon)100を示している。この典型的な実施の形態は、インピンジメントオリフィス形成構造84の第1列90と、第2列92と、第3列102とを含む三重インピンジメント冷却配列を採用している。山形配列形成構造104が鋳造中子クーポン100の外面106に形成されていることが分かり、山形配列形成構造104は、後縁部分30の内面に山形配列を形成するように構成されている。各列90,92,102内においてインピンジメントオリフィス形成構造84はそれらの方向を交代させていることが分かる。山形配列形成構造104は、インピンジメントジェットが冷却流体をそれぞれの山形配列へ方向付けるように、インピンジメントオリフィス形成構造84と調整させられていることも分かる。
【0018】
図8は、
図7の鋳造中子クーポン100を使用して形成された鋳物110の一部の断面図を示している。鋳造中子クーポン100が以前存在していたところには空所112が存在しており、この空所112は、新鮮な冷却流体40をインピンジメントオリフィス24の第1列22へ供給する上流キャビティ42を表している。インピンジメントオリフィス24の第2列26および第3列28、ならびに山形配列120の第1列114、第2列116および第3列118も見られる。各山形配列120は、1つまたは2つ以上の個々の山形122を有してもよい。各列の構成を説明するためにインピンジメントオリフィス24の第1列22を用いると、図面の奥へ向けられた第1グループインピンジメントオリフィス124と、図面の手前へ向けられた第2グループインピンジメントオリフィス126とが設けられていることを見ることができる。第1グループインピンジメントオリフィス124は、インピンジメントジェット48を吸込側14における凹状の第1列内面62における目標領域60に向かって方向付けるインピンジメントオリフィスであると見なすことができる。同様に、第2グループインピンジメントオリフィス126は、インピンジメントジェット48を圧力側12における凸状の第1列内面(この図には示されていない)における目標領域60に向かって方向付けるインピンジメントオリフィスであると見なすことができる。
【0019】
インピンジメントオリフィス24は、断面が円形であってもよいが、第1列内面62に向かって角度づけられているので、円形の断面を備えるインピンジメントオリフィス24は楕円形の目標領域60を形成している。目標領域は、サイズが変化していてもよく、より小さな目標領域130、中程度の目標領域132、およびより大きな目標領域134を含んでもよく、サイズは、山形配列120のうちのどれだけ多くが目標領域60内にあるかに関する。目標領域60の周縁部136の形状は、インピンジメントオリフィス24自体の断面の形状を変化させることによって変化させられてもよい。例えば、インピンジメントオリフィスの断面が楕円形で、長軸が図面に対して前後方向に延びているとすると、周縁部136の楕円形状は、円形の断面を有するインピンジメントオリフィスによって生ぜしめられるものよりも増大させられる。逆に、断面の楕円形状が、長軸が第1列内面62に対してより平行となるように向けられているとすると、周縁部136の形状はより円形に近くなる。同様に、インピンジメント52の角度を変化させることによって、周縁部136の楕円形状を変化させることができる。インピンジメントオリフィス24の断面の形状およびインピンジメント52の角度は、目標領域60の周縁部136のために望まれるどのような形状をも達成するために、必要に応じて操作することができる。加えて、周縁部136の形状は全ての目標領域60のために同じであってもよいし、または目標領域のうちの幾つかまたは全てが、固有の独特の周縁部形状を有してもよい。これらの周縁部形状は、局所的な冷却要求および局所的ジオメトリ等に対応するように選択されてもよい。
【0020】
各山形122は、先端部140および2つの斜辺142を有する。隣接する山形122は、それらの間に溝144を形成しており、この溝144は、冷却流体を案内するために使用することができる。先端部140は、閉鎖された先端部146または開放した先端部148であってもよい。斜辺142は、連続的150または非連続的152であってもよい。山形配列120の構成は、1つの山形配列120から次の山形配列へ変化していてもよく、局所的な冷却要求および局所的なジオメトリなどに対応するように選択されてもよい。山形122は、目標領域60の全体にわたっていてもよいし、または目標領域60は山形122の範囲よりも大きくてもよい。山形配列120における1つまたは全ての山形122の先端部140は、目標領域60内に配置されていてもよい。
【0021】
消費された冷却流体64は、山形122の斜辺142によって形成された溝144内を流れてもよい。これらの溝144は、山形配列120が存在しなかったならば消費された冷却流体64が辿ったであろう経路と同じ経路に沿って、消費された冷却流体64を案内するように向けられていてもよい。言い換えれば、消費された冷却流体64に存在する流線160は、当然、山形配列120が存在しなかった場合の経路をたどる。山形配列120は、斜辺142および/または溝144が、山形配列162に示したものと同じ流線をたどるように構成することができる。その結果、消費された冷却流体64は、山形配列120の存在の結果としてほとんどまたは全くエネルギを損失しないが、山形配列によって生じた増大した表面積による利益を受ける。
【0022】
代替的に、斜辺142および/または溝144を、山形配列164内に示しているように、消費された冷却流体64が当然に形成する流線160に対して所定の角度で配置することができる。この構成は、消費された冷却流体64を強制的に斜辺142上を通流させる。これは乱流を引き起こし、これにより、冷却効果を増大させる。斜辺142の長さおよび自然流線160に対する斜辺142の斜辺角度166は、乱流を増大させる、ひいては冷却効率を高めるという要望と、より長い斜辺142長さおよびより大きな斜辺角度166を形成する斜辺の下流側において形成し得る境界層を低減するという要望とのバランスを取るように設計される必要がある。斜辺角度166は、生じた乱流がどれほどうまく斜辺142および/または溝をたどるかをも決定し、これは、熱伝達にも影響する。同様に、斜辺142が非連続的であるならば、間隙168の間の長さは、乱流発生と境界層形成とをバランスさせることによって冷却有効性を最大化するように選択される必要がある。
【0023】
典型的な実施の形態では、斜辺142および/または溝144は、後続のインピンジメントオリフィス24のインピンジメントオリフィス入口44に向かって、消費された冷却流体64を案内するように構成することができる。例えば、山形配列180は、消費された冷却流体64を第2列インピンジメントオリフィス182から第3列インピンジメントオリフィス184,186のインピンジメントオリフィス入口44に向かって案内する。これは、後縁部分30を通る流れ効率を高めるために行われてもよい。代替的に、より大きな流体カオスがその位置において望まれる場合、斜辺142および/または溝144を、消費された冷却流体64をインピンジメントオリフィス24の間の間隙構造188に向かって案内するように構成することができる。
【0024】
典型的な実施の形態では、冷却配列は、目標領域60内の淀み点190が山形配列120における1つまたは全ての山形122の先端部140の上流に配置されるように構成されていてもよい。そうすることにより、消費された冷却流体64が、先端部140に向かって上流へ流れるのとは反対に、先端部140から離れるように斜辺142および/または溝144に沿って流れることが保証され、これは、より均一な流れを保証する。
【0025】
その他の表面特徴および流路を備える様々な冷却配列が考えられたが、それぞれの山形リブにおける角度づけられたインピンジメントの複数の列のこの組み合わせは、(セラミック材料から形成されてもよい)鋳造中子82を使用して翼10と一体の後縁部分30の形成を許容しつつ、少なくとも増大した表面積および増大した乱流により生じる最大の熱伝達率を提供した。本明細書に開示された配列を使用する改良された熱伝達試験結果を
図9において見ることができる。他の構成による結果と比較したとき、その結果の全てが、本明細書に開示された構成による結果を下回り、この増大した冷却が、技術における改良を表していることが明らかになる。
【0026】
本発明の様々な実施の形態について本明細書中で図示および説明してきたが、これらの実施の形態は単に例として提供されていることが明らかになるであろう。本明細書における本発明から逸脱することなく、多数の改変、変更および代用がなされ得る。したがって、本発明は、添付の請求項の思想および範囲によってのみ限定されることが意図されている。