(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407337
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】材料表面の防汚能力を測定する方法、およびその測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 19/00 20060101AFI20181004BHJP
G01N 19/04 20060101ALI20181004BHJP
G01Q 60/28 20100101ALN20181004BHJP
【FI】
G01N19/00 J
G01N19/04 Z
!G01Q60/28
【請求項の数】34
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-54269(P2017-54269)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2017-191097(P2017-191097A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2017年3月21日
(31)【優先権主張番号】105111775
(32)【優先日】2016年4月15日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】高 豐生
(72)【発明者】
【氏名】朱 仁佑
【審査官】
伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−144573(JP,A)
【文献】
特開2009−120771(JP,A)
【文献】
特開2002−273700(JP,A)
【文献】
特開2007−169814(JP,A)
【文献】
特開2008−239468(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/299627(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00 − 19/10
G01Q 10/00 − 90/00
B82Y 5/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)微粒子を含むか、または微粒子と汚染物質を含み前記微粒子の表面は前記汚染物質で修飾されている、探針、および
バネ特性構造を有し、前記探針が前記バネ特性構造の一端に固定された測定ユニットを含む測定装置を提供するステップ、
(b)前記探針を測定対象の材料表面に接触させ、前記微粒子そのもの、または前記微粒子の前記表面上の前記汚染物質を測定される前記材料表面に付着させるステップ、
(c)前記探針が測定対象の材料表面から離間されて前記バネ特性構造を元に戻すまでバネ特性構造を変形させ、前記測定ユニットを用いて前記変形のレベルを測定するステップ、
(d)前記変形のレベルを用いて測定対象の材料表面に対する前記探針の粘着値を得るステップ、および
(e)前記粘着値に基づいて前記材料表面の防汚能力が判定されるステップ、を含む材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項2】
前記微粒子の形状は、球状、針状、柱状、または錐状を含む請求項1に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項3】
前記微粒子の材料は、二酸化ケイ素、ガラス、金属、金属被覆基板、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル(poly methyl methacrylate)、メラニン、またはポリ乳酸を含む請求項1に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項4】
前記汚染物質は、無機物質、有機酸、蛋白質、炭水化物、または微生物を含む請求項1に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項5】
前記無機物質は、シリコン酸化物、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、または酸化鉄を含む請求項4に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項6】
前記有機酸は、フミン酸、またはフルボ酸を含む請求項4に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項7】
前記炭水化物は、キトサンを含む請求項4に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項8】
前記汚染物質は、水源からのものである請求項1に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項9】
前記水源は、淡水または半塩水を含む請求項8に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項10】
前記汚染物質は、無機物質、有機酸、蛋白質、炭水化物、または微生物を含む水源からのものである請求項8に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項11】
前記無機物質は、シリコン酸化物、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、または酸化鉄を含む請求項10に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項12】
前記有機酸は、フミン酸、またはフルボ酸を含む請求項10に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項13】
前記炭水化物は、キトサンを含む請求項10に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項14】
前記ステップ(a)〜(c)は、水中で行われる請求項8に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項15】
前記微粒子に対する前記汚染物質の表面被覆率は、50〜100%である請求項1に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項16】
前記バネ特性構造は、カンチレバー、またはレーザ光ピンセットを含む請求項1に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項17】
前記測定ユニットによって検出された前記変形のレベルを測定するステップは、電圧またはオフセット値の形態で前記測定ユニットから出力される請求項1に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項18】
ステップ(e)は、
粘着値の範囲の対応する防汚能力を示す基準値を提供するステップ、および
前記粘着値と前記基準値を比較し、前記材料表面の防汚性能を判定するステップを含む請求項1に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項19】
前記対応する防汚能力は、粘着値が8nN以上のとき、防汚能力がないものとして分類され、粘着値が3〜8nNのとき、防汚能力が低いものとして分類され、粘着値が0.6〜3nNのとき、防汚能力が一般であるものとして分類され、且つ粘着値が0〜0.6nNのとき、防汚能力が良いものとして分類される請求項18に記載の材料表面の防汚能力を測定する方法。
【請求項20】
微粒子を含むか、または微粒子と汚染物質を含み前記微粒子の表面は前記汚染物質で修飾されている、探針、および
バネ特性構造を有し、前記探針が前記バネ特性構造の一端に固定された測定ユニットを含み、
材料表面の防汚能力は、前記測定対象の材料表面に対する前記探針の粘着値によって測定対象の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項21】
前記微粒子の形状は、球状、針状、柱状、または錐状を含む請求項20に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項22】
前記微粒子の材料は、二酸化ケイ素、ガラス、金属、金属被覆基板、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル(poly methyl methacrylate)、メラニン、またはポリ乳酸を含む請求項20に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項23】
前記汚染物質は、無機物質、有機酸、蛋白質、炭水化物、または微生物を含む請求項20に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項24】
前記無機物質は、シリコン酸化物、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、または酸化鉄を含む請求項23に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項25】
前記有機酸は、フミン酸、またはフルボ酸を含む請求項23に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項26】
前記炭水化物は、キトサンを含む請求項23に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項27】
前記汚染物質は、水源からのものである請求項20に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項28】
前記水源は、淡水または半塩水を含む請求項27に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項29】
前記汚染物質は、無機物質、有機酸、蛋白質、炭水化物、または微生物を含む水源からのものである請求項27に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項30】
前記無機物質は、シリコン酸化物、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、または酸化鉄を含む請求項29に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項31】
前記有機酸は、フミン酸、またはフルボ酸を含む請求項29に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項32】
前記炭水化物は、キトサンを含む請求項29に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項33】
前記微粒子に対する前記汚染物質の表面被覆率は、50〜100%である請求項20に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【請求項34】
前記バネ特性構造は、カンチレバー、またはレーザ光ピンセットを含む請求項20に記載の材料表面の防汚能力を測定する測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年4月15日に出願された台湾特許出願番号第105111775号についての優先権を主張するものであり、これらの全ては引用によって本願に援用される。
【0002】
本発明は、材料表面の防汚能力を測定する方法に関し、特に、材料表面の防汚能力を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0003】
表面に付着した汚れ、または生物汚損は、一般の生活においてだけでなく、多種多様な産業においても問題となる。また一方で、バイオフィルムに関連する汚損が発生する。ここで用いられる用語“バイオフィルム”とは、水中の有機物または微生物の付着を意味し、これらは、粘液分泌、生長を始め、薄膜が形成されるようになる。一旦、このフィルムが元の材料表面の特性を変えると、藻類、または貝類などを付着させやすくする可能性がある。
【0004】
生物汚損の蓄積は、材料および特性に徐々にダメージを与える。従って、各種の防汚材料または防着材料の開発が現在重要な問題となっている。材料の防汚能力または防着力を測定する現在の方法は、接触角測定、微生物培養、および表面の材料を洗浄して残りの汚損量を計算する方法である。接触角の方法の欠点は、親水性か、または疎水性かを判定するだけで、表面上の汚れの防着力を実際に測定することができないことである。表面量を計算するだけでは、表面に残留した不均一な汚れは、誤った結果を招くため不正確であり、製品の性能に影響を及ぼす。微生物の培養または表面の洗浄は、時間がかかり、コスト高になる。
【0005】
生物汚損の評価をするもう1つの方法は、ASTMゴールドスタンダード認証(ASTM
D6990:Standard
Practice
for
Evaluating
Biofouling Resistance and Physical Performance of Marine
Coating
Systems)である。この方法では、防汚の評価は、防汚材料を数週間から数か月間、水中に浸水させた後、表面上の汚れの付着の面積を計算することを基にしている。
【0006】
上述の方法は、必要な時間が長く、数週または数か月かかることがある。従って、上述の問題を解決するために、材料表面の防汚能力を測定する新規、迅速、且つ正確な方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
新規、迅速、且つ正確な、材料表面の防汚能力を測定する方法、およびその測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に基づいて、本発明は、(a)測定装置を提供し、測定装置は、微粒子を含むか、または微粒子と微粒子の表面上に固定された汚染物質を含む探針、およびバネ特性構造を有し、探針がバネ特性構造の一端に固定された測定ユニットを含む測定装置を提供するステップ、(b)探針を測定対象の材料表面に接触させ、微粒子そのもの、または微粒子の表面上の汚染物質を測定対象の材料表面に付着させるステップ、(c)探針が測定対象の材料表面から離間されてバネ特性構造を元に戻すまでバネ特性構造を変形させ、測定ユニットを用いてこの変形のレベルを測定するステップ、(d)変形のレベルを用いて測定対象の材料表面に対する
探針の粘着値(adhesion force)を得るステップ、および(e)粘着値に基づいて材料表面の防汚能力が判定されるステップ、を含む材料表面の防汚能力を測定する方法を提供する。
【0009】
本発明のもう1つの実施形態に基づいて、本発明は、探針および測定ユニットを含む材料表面の防汚能力を測定する測定装置も提供する。探針は、微粒子を含むか、または微粒子と微粒子の表面上に固定された汚染物質を含む。測定ユニットは、バネ特性構造を有する。探針は、バネ特性構造の一端に固定される。材料表面の防汚能力は、測定対象の材料表面に対する探針の粘着値によって測定される。
【発明の効果】
【0010】
新規、迅速、且つ正確な、材料表面の防汚能力を測定する方法、およびその測定装置を提供することができる。
【0011】
詳細な説明は、添付の図面と併せて以下の実施形態により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面とともに、以下の本発明の様々な実施形態の詳細な説明を検討することで、本発明をより完全に理解できる。
【
図1】本発明の実施形態に係る、材料表面の防汚能力を測定する方法のフロー図を示している。
【
図2】本発明の実施形態に係る、材料表面の防汚能力を測定する測定装置の概略図を示している。
【
図3A】本発明の実施形態に係る、原子間力顕微鏡によりウシ血清アルブミンで修飾された基板をスキャンした結果を示している。
【
図3B】本発明の実施形態に係る、原子間力顕微鏡によりフミン酸で修飾された基板をスキャンした結果を示している。
【
図3C】本発明の実施形態に係る、原子間力顕微鏡によりキトサンで修飾された基板をスキャンした結果を示している。
【
図4】本発明の実施形態に係る、ガラスの表面に対する球状探針および針状探針の粘着値を示している。
【
図5A】本発明の実施形態に係る、高濃度の塩水において測定される二酸化ケイ素探針、ウシ血清アルブミン探針、およびフミン酸探針の粘着値を示している。
【
図5B】本発明の実施形態に係る、純水において測定が行われる各種の試料表面に対するキトサン探針の粘着値を示している。
【
図6】本発明の実施形態に係る、各種の商品および基準値の表面に対するウシ血清アルブミン探針の粘着値を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の発明を実施するための形態では、説明のために、多数の詳細を特定し、および実施形態が本開示の完全な理解を提供するために、明記されている。しかしながら、1つ以上の実施形態では、これらの詳細を特定することなしに行い得ることは明らかである。
【0014】
1つの実施形態では、材料表面の防汚能力を測定する方法を提供する。
【0015】
図1は、本発明の1つの実施形態の材料表面の防汚能力を測定する方法のフロー図を示している。
図1に示されるように、材料表面の防汚能力を測定する方法10は、以下のステップを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0016】
材料表面の防汚能力を測定する方法10が提供される。まず、測定装置(ステップS1)が提供される。
図2に示すように、測定装置100は、探針101および測定ユニット103を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0017】
測定装置100の探針101は、微粒子101aを含むか、または測定装置100の探針101は、微粒子101aと汚染物質101bを含む。汚染物質101bは、微粒子101aの表面に固定される。探針101が微粒子101aのみを含むとき、微粒子101aは、汚染物質とみなされる。探針101が微粒子101aと汚染物質101bを含むとき、汚染物質101bは、微粒子101aの表面に固定される。微粒子101aの表面に汚染物質101bを固定する方法は、特に制限されない。例えば、この固定方法は、物理吸着または化学修飾であることができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
微粒子101aに対する汚染物質101bの表面被覆率は、50〜100%であるが、これに限定されるものではない。1つの実施形態では、微粒子101aに対する汚染物質101bの表面被覆率は、60〜70%である。
【0019】
微粒子101aの形状は、球状、針(tip)状、柱状、または錐状などを含むことができるが、これに限定されるものではない。もう1つの実施形態では、微粒子の形状は、球状である。また、微粒子101aの材料は、二酸化ケイ素、ガラス、金属、金属被覆基板、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル(poly
methyl
methacrylate)、メラニン、またはポリ乳酸などを含むことができるが、これに限定されるものではない。もう1つの実施形態では、微粒子101aの材料は、二酸化ケイ素である。微粒子101aのサイズは、約0.1μm〜100μmであることができるが、これに限定されるものではない。
【0020】
上述の微粒子101aの表面に固定された汚染物質101bは、特に限定されず、例えば、空気中の汚染物質、水源中の汚染物質などの汚染物質の形態であることができるか、または上述の汚染物質101bは、例えば、無機物質、有機酸、蛋白質、炭水化物、微生物などの形態であることができるが、これに限定されるものではない。1つの実施形態では、上述の無機物質は、シリコン酸化物、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄などを含むことができるが、これに限定されるものではない。上述の有機酸は、フミン酸、フルボ酸などを含むことができ、1つの実施形態では、上述の有機酸は、フミン酸である。上述の炭水化物は、キトサンなどの多糖類を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0021】
微粒子101aの表面に固定された上述の汚染物質101bは、水源からのものである。上述の水源は、淡水または半塩水を含む。淡水は、川、淡水湖、地下水、水道水を含むが、これに限定されるものではない。半塩水は、海洋または塩水湖からの水を含むがこれに限定されるものではない。水源からの汚染物質は、特に限定されず、例えば、無機物質、有機酸、蛋白質、炭水化物、微生物などの形態であることができるが、これに限定されるものではない。1つの実施形態では、水源からの汚染物質の無機物質は、シリコン酸化物(例えば、シリカ)、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、または酸化鉄などを含むことができるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、水源からの汚染物質の無機物質は、ケイ素酸化物である。また、水源からの汚染物質の有機酸は、フミン酸またはフルボ酸などを含むことができる。1つの実施形態では、水源からの汚染物質の有機酸は、フミン酸である。上述の炭水化物は、キトサンなどの多糖類を含むことができるが、これに限定されるものではない。1つの実施形態では、上述の多糖類は、キトサンである。
【0022】
測定装置100では、測定ユニット103は、バネ特性構造103aを含むが、これに限定されるものではない。ここでの用語「バネ特性構造」は、バネの特性を有する構造または装置を意味し、負荷を受けたとき、構造または装置は、適量の変形を示し、次いで、負荷が取り除かれた後、この構造または装置はその元の形状または位置に戻ることができる。ここで用いられる用語「負荷」は、例えば、張力、圧力、若しくは吸引力などの力、または重さを意味しているが、これに限定されるものではない。
【0023】
測定装置100では、探針は、バネ特性構造103aの一端に固定される。バネ特性構造103aは、カンチレバー、レーザ光ピンセットを含むことができるが、これに限定されるものではない。1つの実施形態では、上述のバネ特性構造103aは、カンチレバーであることができる。
【0024】
次いで(ステップS2)、材料表面の防汚能力を測定する方法10では、測定装置100の探針101を測定対象の材料表面200に接触させ(ステップS2)、探針101の微粒子101aそのもの、または微粒子の表面上の汚染物質101bを材料表面200に付着させる。測定装置100の探針101と材料表面200の接触の時間は、特に限定されない。通常、探針101が材料表面200に接触してから移動するまでの接触時間は例えば、約0.01〜60秒であることができるが、これに限定されるものではない。1つの実施形態では、上述の接触時間は1秒である。
【0025】
次いで(ステップS3)、材料表面の防汚能力を測定する方法10では、測定装置100の探針101と、測定対象の材料表面200とが接触した後、バネ特性構造103aは、探針101が測定対象の材料表面200から離間されてバネ特性構造103aを元に戻すまで変形させ、測定ユニット103によってこの変形のレベルが測定される(ステップS3)。測定ユニット103から出力される変形のレベルを測定するステップは、特に限定されるものではない。例えば、測定された変形のレベルは、電圧またはオフセット値の形態で測定ユニット103から出力されるが、これに限定されるものではない。
【0026】
また、材料表面の防汚能力を測定する方法10では、探針101が測定対象の材料表面200から離間されてバネ特性構造103aを元に戻した後、探針101の変形のレベルを測定し、材料表面200の粘着値を得る(ステップS4)。
【0027】
次いで、材料表面200の防汚能力が粘着値に基づいて判定される(ステップS5)。
【0028】
本発明のもう1つの実施形態では、上述の粘着値を用いて材料表面200の防汚能力を判定するステップは、以下のステップを更に含むことができる。
【0029】
粘着値の範囲の対応する防汚能力を示す基準値を提供する(ステップS5−1)。基準値は、予め定められるが、特に限定されない。例えば、対応する防汚能力は、粘着値が8nN以上のとき、防汚能力がないものとして分類され、粘着値が3〜8nNのとき、防汚能力が低いものとして分類され、粘着値が0.6〜3nNのとき、防汚能力が一般であるものとして分類され、且つ粘着値が0〜0.6nNのとき、防汚能力が良いものとして分類される。なお、本明細書において粘着値とは、探針と材料表面とが接触した状態から、探針と材料表面とが離接した状態にする場合に必要な力を意味する。
【0030】
次いで、探針101の粘着値は、提供された粘着値の対応する防汚能力と比較され、防汚性能のレベルを判定する(ステップS5−2)。
【0031】
また、本発明の実施形態に係る、本発明の材料表面の防汚能力を測定する方法10では、汚染物質101bは、微粒子101aの表面に固定され、汚染物質101bは水源からの汚染物質であり、上述のステップS1〜S3は、水中で行われる。1つの実施形態では、汚染物質101bは、微粒子101aの表面に固定され、汚染物質101bは淡水からの汚染物質であり、上述のステップS1〜S3は、淡水中で行われる。本発明のもう1つの実施形態に係る汚染物質101bは、微粒子101aの表面に固定され、汚染物質101bは半塩水からの汚染物質であり、上述のステップS1〜S3は、淡水中で行われる。
【0032】
本発明に係る探針と材料表面とを接触するステップにより試料の防汚性能のレベルを容易に判定することができるため、防汚能力をすぐに測定することができ、コストを大幅に削減することができる。本発明に基づいて提供された方法は、材料表面の防汚能力の測定を迅速、且つ正確に完了して、30分内に防汚性能のレベルを判定することができ、数週または数か月かけて材料表面の防汚性能を確認する必要がなくなるため、世界中で最も迅速かつ直接的な方法の1つとなる。
【0033】
本発明の実施形態に係る、材料表面の防汚能力を測定する測定装置が提供される。
【0034】
図2に再度示されるように、本発明の実施形態に係る、本発明の材料表面の防汚能力を測定する測定装置では、材料表面の防汚能力を測定する測定装置100は、探針101および測定ユニット103に限定されない。
【0035】
材料表面の防汚能力を測定する測定装置100の探針101では、探針101は、微粒子101aを含むことができ、または微粒子101aおよび微粒子101aの表面上に固定された汚染物質101bを含むことができる。微粒子101aに対する汚染物質101bの表面被覆率は、50〜100%であるが、これに限定されるものではない。本発明のもう1つの実施形態では、微粒子101aに対する汚染物質101bの表面被覆率は、60〜70%である。
【0036】
微粒子の形状および材料、および微粒子の表面上に固定された汚染物質に関連する詳細は、上述の材料表面の防汚能力を測定する方法に示されている。
【0037】
上述の材料表面の防汚能力を測定する方法の測定ユニット103は、バネ特性構造103aを含むが、これに限定されるものではない。ここでは、用語「バネ特性構造」は、上述の説明と同じである。また、測定ユニット103の探針101は、バネ特性構造103aの一端に固定される。バネ特性構造103aは、カンチレバー、レーザ光ピンセットを含むが、これに限定されるものではない。本発明のもう1つの実施形態では、上述のバネ特性構造103aは、カンチレバーである。
【0038】
本発明の実施形態に係る、材料表面の防汚能力を測定する測定装置100では、測定対象の材料表面に対する探針の粘着値が測定され、材料表面の防汚能力は、粘着値に基づいて判定される。
【0039】
以下においては、当業者が容易に理解できるように、図面を参照して、実施形態の例を詳細に説明する。本発明の概念は、本明細書に記載された実施形態の例に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。既によく知られている構成の説明は明瞭さのために省略し、全体を通して、同じ参照番号は同じ構成を示す。
【0040】
A.材料及び方法
1.化学品
全ての化学品は、Sigma−Aldrichより市販されており、各化学品の名称は以下に示される。
【0041】
3−アミノプロピルトリメトキシシラン((3−aminopropyl)trimethoxysilane;3−APTES)97%;グルタルアルデヒド溶液、グレード(grade)II、H
2O内に25%;N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(N−(3−Dimethylaminopropyl)−N‘−ethylcarbodiimide
hydrochloride);EDC);N−ヒドロキシスクシンイミド(N−Hydroxysuccinimide;NHS)98%;ウシ血清アルブミン(bovine
serum
albumin;BSA);フミン酸(humic
Acid;HA)。
【0042】
2.測定ユニットの測定装置
本発明の実施形態に係る、原子間力顕微鏡(atomic
force
microscope;AFM)(Bruker
Bioscope
Catalyst)が測定装置として用いられ、AFMのマイクロメートルレベルのカンチレバーが測定ユニットのバネ特性構造として用いられる。
【0043】
AFMのメカニズムが以下に示される。
【0044】
AFMは、カンチレバーを湾曲させるときの探針と材料との相互作用を測定し、AFMの検出器は、カンチレバーの湾曲を測定し、それを数値に変換する電気信号に変換する。レーザ光の偏向は、現在市販されているAFMに用いられる最も一般的な検出方法である。
【0045】
測定の過程では、極小の検出用レーザ光がカンチレバーの上面に集光される。カンチレバーの表面は、鏡面状の平滑表面であり、レーザ光を反射させる。カンチレバーの角度が変更すると、反射された光の角度も変更する。これは、光てこの原理である。従って、カンチレバーがやや湾曲すると、光線は大きく偏向させることになる。レーザ光は、カンチレバーチップの上方に近接して集光される。レーザ光はカンチレバーの背面に集光され、4分割フォトダイオード(Quadrant
Photodiode;QPD)がコンピュータなどのデータプロセッサに送信された信号を検出したあと、4分割光検出器(クアドラントフォトダイオード)である、光検出器内に反射され、信号処理を行う。フォースカーブは、硬質表面に圧力を加えることによって得られ、探針の接近距離(approach
distance)が分かり、探針の変化のレベルは、探針の感度(sensitivity)Sである、nm/Vの単位の対応する電圧に変換される。
【0046】
また、フックの法則により、F
=
k
・
x(F=弾性力;k=バネ定数(N/mの単位);x=カンチレバーの偏向量)であり、カンチレバーの偏向量は、弾性力に変換される。販売業者は、探針のモデルに基づいてバネ定数を提供する。しかしながら、同じタイプの探針が用いられても、各探針のバネ定数にいくらかの違いがある。従って、正確な信号を得るために、1つの実施形態では、実験で探針のバネ定数に対して校正される前に、探針は、共振周波数、品質係数、および共振振幅を測定することによって、バネ定数kから得られる。また、探針の電圧信号は探針のバネ定数および探針の感度と掛けることによって、カンチレバーの偏向量から得られる。
【0047】
本発明の実施形態に係る、カンチレバーのバネ定数は0.12N/mである。
【0048】
3.汚染物質の探針の準備ステップ
石英粒子は、エポキシ樹脂によってマイクロメートルレベルのカンチレバーに付着され、次いでUVオゾン処理装置(processor)に配置され、UV光に20分間照射されて、石英粒子の表面上に、OH官能基を形成する。マイクロメートルレベルのカンチレバーに付着された石英粒子は、1%の3−アミノプロピルトリエトキシシランのアルコール希釈に1時間浸漬されて、石英粒子の表面上に、NH
2官能基を形成する。
【0049】
次いで、石英粒子の表面は、汚染物質で修飾される。
【0050】
(1)汚染物質のウシ血清アルブミン(BSA)
上述の石英粒子(NH
2官能基を有する表面を有する)は、2.5%のグルタルアルデヒドの脱イオンの水溶液に30分間浸漬されて、石英粒子の表面上に、アルデヒド官能基を形成する。また、次いで、配置された探針が例えばBSA(PBS中に1mg/mlの濃度)の一般の蛋白質の水中に2時間浸漬されて、石英粒子の表面上に、アルデヒド官能基、およびBSAのNH
2官能基を連結する。よって、石英粒子の表面は汚染物質(即ち、BSA)によって既に修飾されている。
【0051】
(2)汚染物質のフミン酸(HA)
汚染物質にNH
2官能基はないが、例えばフミン酸などのCOOH官能基を有する表面を有するとき、3−[(エチルカルボンイミドイル)アミノ]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミン(3−(ethyliminomethyleneamino)−N,N−dimethyl−propan−1−amine(EDC))またはN−ヒドロキシスクシンイミド(N−Hydroxysuccinimide;NHS)によって、官能基を活性化し、従って、供給結合が汚染物と微粒子のNH
2官能基との間に形成される。3−[(エチルカルボンイミドイル)アミノ]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミンの0.2M、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の0.05M、およびフミン酸の0.5mg/mlは、2:2:1の体積比で10分間混合される。石英粒子は、マイクロメートルレベルのカンチレバーに付着され(NH
2官能基を有する表面を有する)、溶液(EDC/NHS/HA2:2:1)中に3時間浸漬される。よって、石英粒子の表面は汚染物質(即ち、HA)によって既に修飾されている。
【0052】
(3)汚染物質のキトサン
上述の石英粒子(NH
2官能基を有する表面を有する)は、2.5%のグルタルアルデヒドの脱イオンの水溶液に30分間浸漬されて、石英粒子の表面上に、アルデヒド官能基を形成する。また、次いで、配置された探針が例えばキトサン(氷酢酸中に1mg/mlの濃度)の一般の多糖類の水中に2時間浸漬されて、石英粒子の表面上に、アルデヒド官能基、およびキトサンのNH
2官能基を連結する。よって、石英粒子の表面は汚染物質(即ち、多糖類)によって既に修飾されている。
【0053】
4.微粒子に対する汚染物質の表面被覆率の分析
微粒子に対する汚染物質の表面被覆率は、直接測定することができないため、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて基板の汚染物質を測定した後、次いで、石英粒子の表面が汚染物質で修飾され、微粒子に対する汚染物質の表面被覆率として分析される。
【0054】
微粒子に対する汚染物質(即ち、BSA、フミン酸、およびキトサン)は、BSA、フミン酸、およびキトサンの表面被覆率の測定後、二酸化ケイ素の基板上にそれぞれ修飾される。
【0055】
5.探針の形状の比較
微粒子および商業用AFM探針にBSAがそれぞれ修飾されることで、形成される探針の形状は、球状、針状である。
【0056】
AFM(バネ定数が0.12N/mである)のスキャンパラメータをセッティングし、上述の2つの形状タイプの探針をそれぞれ水の中に入れ、ガラスとガラスの表面と接触させ、ガラスの表面に対する2つのタイプの探針の粘着値を測定する。
【0057】
AFMのスキャンパラメータの設定
(a)探針距離の接近/探針距離の離間:1000nm
(b)探針の走査速度:1000nm/s
(c)探針のサンプルの接触時間:1秒
(d)サンプル数:各サンプルは少なくとも15の異なる測定点を有する。
【0058】
6.各材料の防汚能力の測定
(1)二酸化ケイ素探針、BSA端子、およびフミン酸探針の測定
(i)試料の準備
市販のXLE膜(membrane)(DOW−Film
Tec, Edina, MN, USA)が以下の3つのタイプ、 (i)処理を経ていない;(ii)アルコール洗浄した(30分の超音波洗浄);(iii)ポリエチレングリコール(PEG)でXLE膜コーティングする(200nmの厚さ)。また、ナノファイバー膜PolyE(Industrial
Technology
Research
Institute(ITRI)より製造された)が試料のサンプルとして用いられる。全ての試料のサンプルをスライドガラス上に貼り付け、スライドガラス上に塩水(濃度32000ppm;pH7.5)を滴下し、水中で測定が行われる。
【0059】
(ii)試料表面に対する各種の探針の粘着値の測定
上述のように、球状の石英粒子に汚染物質(例えばBSAおよびフミン酸)がそれぞれ修飾されて、BSA探針およびフミン酸探針を形成し、その他、石英粒子(修飾されていない)を探針として直接提供する。AFM(バネ定数が0.12N/mである)のスキャンパラメータを設定し、上述の各種の探針を試料表面と接触させ、試料表面に対する各種の探針の粘着値を測定する。
【0060】
AFMのスキャンパラメータの設定
(a)探針距離の接近/探針距離の離間:1000nm
(b)探針の走査速度:1000nm/s
(c)探針のサンプルの接触時間:1秒
(d)サンプル数:各サンプルは少なくとも15の異なる測定点を有する。
【0061】
(2)キトサンで修飾された探針の測定
(i)テスト材料の準備
PEGおよびガラスの膜を試料とする。全ての試料のサンプルをスライドガラスに貼り付け、スライドガラス上に純水を滴下し、純水において測定が行われる。
【0062】
(ii)試料表面に対するキトサン探針の粘着値の測定
上述のように、球状の石英粒子にキトサンが修飾されて、キトサン探針を形成する。AFM(バネ定数が0.12N/mである)のスキャンパラメータを設定し、キトサン探針を試料表面と接触させ、試料表面に対するキトサン探針の粘着値を測定する。
【0063】
AFMのスキャンパラメータの設定
(a)探針距離の接近/探針距離の離間:1000nm
(b)探針の走査速度:1000nm/s
(c)探針のサンプルの接触時間:1秒
(d)サンプル数:各サンプルは少なくとも15の異なる測定点を有する。
【0064】
7.粘着値に基づく試料表面の防汚能力の分類
(1)テスト材料の準備
ガラス、商業用Dow
Filmtec
NF−270、商業用Dow
Filmtec
NF−90、およびPEG膜が試料として用いられる。全ての試料のサンプルをスライドガラスに貼り付け、スライドガラス上に純水を滴下し、純水において測定が行われる。
【0065】
上述のように、球状の石英粒子にBSAが修飾されて、BSA探針を形成する。AFM(バネ定数が0.12N/mである)のスキャンパラメータを設定し、探針を試料表面とそれぞれ接触させ、各種探針の粘着値を測定する。
【0066】
ガラス探針の粘着値は、防汚能力がないものとして分類され、上述の粘着値に基づいて試料表面の対応する防汚能力が粘着値に基づいた試料表面の防汚能力として分類される。
【0067】
B.結果
1.微粒子に対する汚染物質の表面被覆率の測定
上述の代替の方式に基づいて微粒子に対する汚染物質の表面被覆率を測定し、その結果が
図3A、
図3B、および
図3Cに示される。
【0068】
図3Aは、原子間力顕微鏡によりウシ血清アルブミンで修飾された基板をスキャンした結果を示しており、その粒子は、ウシ血清アルブミンである。原子間力顕微鏡により測定されたウシ血清アルブミンの基板に対する表面被覆率は、約75.1%である。
【0069】
図3Bは、原子間力顕微鏡によりフミン酸で修飾された基板をスキャンした結果を示しており、その粒子は、フミン酸である。原子間力顕微鏡により測定されたフミン酸の基板に対する表面被覆率は、約65.2%である。
【0070】
図3Cは、原子間力顕微鏡によりキトサンで修飾された基板をスキャンした結果を示しており、その粒子は、キトサンである。原子間力顕微鏡により測定されたキトサンの基板に対する表面被覆率は、約66.1%である。
【0071】
2.探針の形状の比較
上述の方法に基づいて、ガラスの表面に対するウシ血清アルブミン修飾の球状および針状探針の粘着値を測定する。ガラスに対する球状探針の粘着値は、8.45±1.6nNの結果が示され、ガラスに対する針状探針の粘着値は、0.59±1.4nNの結果が示された(
図4を参照)。
【0072】
上述の結果に基づいて、ガラスに対する球状探針の粘着値は、針状探針の粘着値に比べ大きく、粘着値が強く、即ち球状探針の試料表面に対する接触面積が大きいということを示し、サンプルの面積が大きいということを意味する。従って、球状探針のサンプル量は、針状探針のサンプル量より多く、球状探針は、針状探針に比べ、いくつかの分子が接触しなくても測定の結果に影響を及ぼし難い。また、球状探針は、粘着値の向上効果を有するため、材料の違いを比較的判定しやすい。
【0073】
3.試料表面の防汚能力の測定
(1)二酸化ケイ素によるウシ血清アルブミン探針およびフミン酸探針の測定
上述の方法に基づいて、二酸化ケイ素探針、ウシ血清アルブミン探針、およびフミン酸探針によって、各種の試料表面の防汚能力を測定し、その結果が表1および
図5Aに示される。
【0075】
表1および
図5Aに基づいてわかるように、市販のXLEは、防汚能力を有する材料の最も代表的な膜である。各種の探針に対するXLE膜の粘着値は(32000ppm;pH7.5の濃度の塩水で)、全て0.6nN以下であり、ポリエチレングリコールでコーティングされた膜は、良好なフミン酸、蛋白質、およびシリカの防汚性を有するということを示している。また、上述の結果は、文献と一致しており、従って、本発明の実施形態の粘着値の検出システムは、材料表面の防汚能力を測定する方法として用いられることができることを証明している。
【0076】
また、表1および
図5Aは、他の3つの膜、市販のXLE膜(処理を経ていない)、市販のXLE膜(アルコール洗浄した)、およびナノファイバー膜PolyE(ITRIより製造された)を測定した結果も示している。この結果は、アルコール洗浄の処理を経ていないXLE膜に比べ、アルコール洗浄を経たXLE膜は、防汚能力が良くなっている。従って、市販のXLE膜の表面層は、粘着防止層というより、保護層であると判定する。また、ナノファイバー膜PolyEの表面は、ポリアミド膜を有し、その防汚能力の特性は、アルコール洗浄を経た市販のXLE膜と類似する。
【0077】
(2)キトサン探針による測定
上述の方法に基づいて、キトサン探針を用いてポリエチレングリコール膜およびガラスの防汚能力を測定した結果が
図5Bに示される。
【0078】
図5Bに基づいて、防着値の最も代表的な材料は、ポリエチレングリコール膜であり、ポリエチレングリコール膜のキトサン探針に対する防着値が0.04nNだけである(純水において)。これは、ポリエチレングリコール膜が良好なキトサンの防汚能力を有するということである。ガラスに対するキトサン探針の粘着値が8nN以上のとき、防汚能力がないものとして分類される(純水において)。
【0079】
3.各粘着値の範囲の対応する防汚能力
上述の方法を用いて、各種の試料表面に対する探針の粘着値が測定され、その結果が
図6に示される。
【0080】
図6からわかるように、ガラスは防汚能力がないものとして分類され、その探針の粘着値は、8nNであり、一般的によく用いられる膜NF−270の探針の粘着値は、8nN以下であり、また、商業用膜NF−90の探針に対する粘着値は、0.6〜3nNの間であり、PEG膜の探針に対する粘着値は、0〜0.6nNの間である。従って、上述の結果によれば、対応する防汚能力は、粘着値が8nN以上のとき、防汚能力がないものとして分類され、粘着値が3〜8nNのとき、防汚能力が低いものとして分類され、粘着値が0.6〜3nNのとき、防汚能力が一般であるものとして分類され、且つ粘着値が0〜0.6nNのとき、防汚能力が良いものとして分類される。
【0081】
本発明の方法及び材料に対して様々な修正及び変形を行えることは当業者には自明であろう。明細書の記述および実施の形態が単なる例示として考慮されるべきであり、特許請求の範囲によって示された真の範囲および技術的思想、および、それらの全範囲の均等範囲を有することが意図されている。
【符号の説明】
【0082】
10 材料表面の防汚能力を測定する方法
100 測定装置
101 探針
101a 微粒子
101b 汚染物質
103 測定ユニット
103a バネ特性構造
200 測定対象の材料表面