(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の一側面に係る水中測距装置、その測距方法について、図を参照しつつ説明する。但し、本開示の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。尚、以下の説明及び図において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
(本発明に係る水中測距装置とその測距方法の概要)
図1は、実施形態に係る水中測距装置とその測距方法を一例として、本発明に係る水中測距装置とその測距方法を説明する図である。
【0018】
(本発明に係る水中測距装置の概要)
図1(a)は、水中測距装置1の一例の概略を示す図である。水中測距装置1は水中で被写体を撮像するためのカメラ2と、接続ケーブル5を介してカメラ2と接続される制御装置6とを有する。カメラ2の前面には、カメラ2から撮影方向に伸びるカメラの光軸Oと平行となるように支持部3が取り付けられている。支持部3の先端には、水中での測距精度向上のための校正に使用する複数のチャート板41、42,43がカメラ2の光軸Oと垂直になるように取り付けられている。各チャート板41,42,43のカメラ側平面にはそれぞれ合焦用チャート411.421.431が貼られている。各チャート板41,42,43のカメラ側平面とカメラ2のレンズから各合焦用チャート411.421.431までの距離はそれぞれ既知である。カメラ2は水中でカメラ本体を保護する防水ケース26を有する。防水ケース26の底面に、三脚に固定するための固定台座261を設けてもよい。
【0019】
水中のカメラ2で撮像された撮像信号は、接続ケーブル5を通して、地上又は水上の制御装置6に送信される。制御装置6が受信した撮像信号は、制御装置6の表示部に表示される。制御装置6は、接続ケーブル5を通して、カメラ2を制御する。また、制御装置6は、カメラ2からの情報信号を使用し、測距計算処理や校正処理を行う。
【0020】
(本発明に係る水中測距装置の施工前処理の概要)
図1(b)は、カメラ2の水中での校正を説明する図である。カメラ2の水中内での使用にあたっては、水中での水温、海水の場合は塩分濃度等が屈折率等に影響するので、測距精度を向上するために使用前に施工現場の水中においてカメラ2の校正を行う必要がある。校正は使用の直前からでもよいが、使用前日から水中に置くことが好ましい。カメラ2の水中滞在が長ければ、カメラ2の温度が安定するからである。
【0021】
校正を行うため、制御装置6からカメラ2に各チャート板41,42,43の合焦用チャート411,421,431にピントを合わせるよう指示が順次出される。例えば、チャート板41の合焦用チャート411にピントが合ったとき、すなわち合焦したとき、制御装置6は、カメラ2のレンズの移動距離を取得する。ここで、レンズの移動距離とは、レンズの基準位置、例えば、無限遠点に対するレンズ位置、又は最近接位置に対するレンズ位置、からのレンズの移動距離である(以下、同じ)。制御装置6は各合焦用チャート411,421,431に関しての合焦指示を繰り返す。制御装置6は、レンズと各合焦用チャートの間のそれぞれの距離は実測されており既知なので、レンズと合焦用チャートの間の距離とレンズの移動距離とのペアを複数得ることができる。レンズと合焦用チャートの間の距離とレンズの移動距離との複数のペアを使用して、制御装置6は、測距に関する校正パラメータを計算することができる。カメラ2の校正パラメータを使用することにより、水中測距装置1の距離測定精度は向上する。
【0022】
(本発明に係る水中測距装置の測距作業の概要)
図1(c)は、既設のケーソンAに隣接して、ケーソンBを水中に設置するときの、水中測距装置1の利用の一例を示す図である。施工作業者は、ケーソンBの設置前に、水中にカメラ2を設置して、校正作業を完了しておく。施工作業において、施工作業の精度向上のため、施工作業者はケーソンAとケーソンBとの目地間隔dを正確に知り、所定の目地間隔、例えば、ケーソンAから10cm離れた位置にケーソンBを設置する必要がある。施工作業者は、水中測距装置1のカメラ2の光軸OをケーソンAの水中で隣りあう面の稜線にあてて、稜線とレンズ間の距離を測距する。制御装置6は、レンズからカメラ2の回転軸Rまでの距離は既知なので、ケーソンAの水中で隣りあう面の稜線から回転軸までの距離D1を求めることができる。次に、設置作業者は、カメラ2を回転軸の回りに水平回転させて、カメラ2の光軸OをケーソンBの水中で隣りあう面の稜線にあてて、稜線とレンズ間の距離を測距する。距離D1と同様に、制御装置6は、ケーソンBの水中で隣りあう面の稜線から回転軸までの距離D2を求めることができる。このときの回転角θとする。例えば、回転角θはポテンショメータを用いて計測することができる。ケーソンAとケーソンBとの目地間隔dは、余弦定理、
(式1) d
2=D1
2+D2
2−2・D1・D2・cosθ
から求めることができる。
【0023】
実際には、施工作業者はケーソンAの稜線との距離D1を計測し、要求されるケーソンAとケーソンBの目地間隔d=10cmとなる位置に予めカメラ2の光軸Oを合わせておく。このときの回転角θは既知となるから、(式1)をD2について解いておくことができる。施工作業者は、水中測距装置1を使用して、水中でケーソンBの隣りあう面の稜線がカメラ2の光軸Oと交わるように、すなわち稜線が撮像画像中心にあるように、且つケーソンBの稜線との距離がD2となるように監視して、施工作業をすることが好ましい。以下、実施例について説明する。
【0024】
(本発明に係る水中測距装置の実施例)
図2は、カメラ2の一例のブロック構成概略を示す図である。カメラ2は、撮像部21と光学部22、移動部23、合焦部24、及び合焦マイコン245を有する。撮像部21は、被写体からの光線を撮像面211で受け被写体画像を画像信号に変換する撮像センサ212、例えばCCDセンサやCMOSセンサを有する。キャプチャされた画像信号は合焦部24に送信される。撮像部21の撮像面211側には、光学部22がマウントされ、光学部22は被写体からの光線を撮像面211に導光する。光学部22は、フォーカスレンズ221、フォーカスレンズ221を光軸O方向に平行移動させるフォーカスリング222、ズームレンズ223、ズームレンズ223を光軸O方向に平行移動させるズームリング224、絞り225、及び絞り226を調整する絞りリング226等を有する。各レンズは1枚と限らす複数枚のレンズからなるレンズ群により構成されていてもよい。なお、光学部22は、広角撮影できることが好ましい。複数枚の合焦用チャートの同時撮影ができるからである。
【0025】
光学部22の側面には、移動部23が取り付けられ、光学部22のフォーカスレンズ221の位置を移動調節してピント調整を行う。移動部23は、アクチュエータ、例えばフォーカスモータ(M)231と、フォーカスモータ(M)231を駆動するフォーカスモータ駆動回路232、フォーカスモータ駆動回路232を制御する移動部マイコン233、及びフォーカスモータ(M)231の駆動によるフォーカスレンズ移動量を検出する位置センサ(PS)234を有する。位置センサ(PS)234からのフォーカスレンズ移動量は移動部マイコン233に入力され、更に、合焦マイコン245の合焦制御部246に送られる。光学部22の他の調整は撮影者が各リングを回して調整してすることができる。更に、移動部23は、光学部22のズームレンズ、絞り等を調整して、ズーム、露出等を調整する機能を有してもよい。
【0026】
移動部23を制御して最適なピント合わせをするため、カメラ2は合焦部24を有している。制御装置6は、合焦部24を起動して、制御装置6の表示部61に表示されたAF枠情報を合焦部24に送信する。合焦部24は撮像画像からピント合わせの状態を判定して、移動部23を制御してピント合わせを行う。カメラ2は、合焦部24により、測距対象である被写体に高精度でピントを合わせることができ、精度の高い距離計測ができる。合焦部24は、画像分岐部241、ハイパスフィルタ(HPF)242、ゲート回路243、加算器244、合焦マイコン245、合焦制御部246、及び出力部247を有する。
【0027】
画像分岐部241は、撮像部21からの画像信号、例えば、HD‐SDI(High Definition Serial Digital Interface)規格の画像信号を受信する。画像分岐部241は、受信した信号を次段のハイパスフィルタ(HPF)242に送るとともに、接続ケーブル5を介して制御装置6に送信する。ハイパスフィルタ(HPF)242は画像分岐部241からの画像信号の高周波成分を濾波する。ピント合わせのためのコントラスト比較の精度を上げるためである。ゲート回路243はハイパスフィルタ(HPF)242で濾波された画像信号から、制御装置6から指示されたAF枠の枠内画像信号分を抽出する。ピント合わせの精度判定に必要なのは、AF枠内の画像信号だけだからである。ゲート回路243から出力されたAF枠内の画像信号は加算器244で加算され、加算結果に基づき、合焦制御部246はコントラスト比を計算してピント合わせの精度を判定し、最も高い精度になるよう移動部23を制御する。例えば、コントラスト比が低い場合は、合焦制御部246はコントラスト比が高くなる方向に可能な限り高速でフォーカスレンズを移動する。合焦制御部246はコントラスト比が高くなるにつれてフォーカスレンズの移動を減速し、精度よくコントラスト比の高い点で停止させるように、コントラスト比の、高低と微分量の大小を用いて制御する。このような方式は、一般に、山登りオートフォーカス方式と呼ばれる。通常、合焦制御部246は合焦マイコン245の処理プログラムにより実装される。
【0028】
合焦マイコン245の出力部247は、ピントが合ったときの移動部マイコン233からのフォーカスレンズ221の移動量を、接続ケーブル5を介して制御装置6に送信する。通常、出力部247は合焦マイコン245の処理プログラムにより実装される。制御装置6は、接続ケーブル5を介してカメラ2に接続し、カメラ2が撮影した画像の表示、カメラ2の制御を行う。接続ケーブル5は、合焦部24からの画像信号と、撮像部21に対する制御信号と合焦部24に対する制御信号を通すこととなる。例えば、HD−SDI規格等の画像信号ケーブル1本とRS232C規格等の制御信号用ケーブル2本の3本のケーブルを組み合わせたものでもよい。
【0029】
図3は、カメラ2が有する防水ケース26の一例の外観を示す3面図である。カメラ2は水中で使用されるため、カメラ本体を収納する防水ケース26が必要となる。防水ケース26は円筒形状であり、円筒側面下部には、カメラスタンド、三脚等に据え付けるための固定台座261が付けられている。円筒側面上部には持ち運び用の取手262が付けられている。防水ケース26の正面には、被写体からの光線をカメラに通すためのガラス窓263が設けられている。ガラスに代えて透明アクリル板等の透明素材であってもよい。防水ケース26の正面下部には支持部3を取り付けるための支持部取付け部264、265を有する。防水ケース26の背面には、画像信号ケーブル取り出し口266と制御信号ケーブル取り出し口267が設けられている。各取出し口は、パッキン等を使用して漏水しないような構造としている。なお、画像信号と制御信号ケーブルをまとめ、1本のケーブルとして、取り出し口を1つにまとめてもよい。
【0030】
図4は、支持部3の一例を説明する図である。
図4(a)は、支持部3が、防水ケース26に取り付けられた状態での側面図であり、
図4(b)は、支持部3が、防水ケース26に取り付けられた状態での平面図である。例えば、支持部3は、支持部材311、312を有する。更に、支持部材311と支持部材312との間に梯子状に補強部材321、322を設けて補強してもよい。支持部材311と支持部材312は、防水ケース26のガラス窓263を有する正面下部の取付け部264、265に光軸Oと平行になるように固定又は着脱可能に取り付けられている。支持部3の支持部材311と支持部材312の先端部には、カメラ2のフォーカスレンズ221から被写体方向に複数の矩形のチャート板41,42,43が互いに平行に取り付けられている。各チャート板41,42,43は、チャート板の板面が両支持部材311、312の上に垂直になるように取り付けられている。各チャート板41,42,43のカメラ側平面には、合焦用チャート411,421,431が貼り付けられている。両支持部材311,312が光軸Oと平行であることから、各チャート板の板面は、光軸Oと垂直になる。各チャート板41,42,43は、合焦用チャートが貼り付けられた板面がフォーカスレンズ221の位置、例えばフォーカスレンズ221の基準位置、から所定の距離となるように、両支持部材311、312に取り付けられている。例えば、フォーカスレンズに1番近い第1チャート板41は、合焦用チャート貼り付け面を基準としてフォーカスレンズ221からL1=400mm離れた位置に取り付けられている。また、フォーカスレンズ221に2番目に近い第2チャート板42は、合焦用チャート貼り付け面を基準としてフォーカスレンズ221からL2=500mm離れた位置に取り付けられている。更にフォーカスレンズ221に3番目に近い第3チャート板43は、合焦用チャート貼り付け面を基準としてフォーカスレンズ221からL3=600mm離れた位置に取り付けられている。第1チャート板41、第2チャート板42、第3チャート板43のそれぞれの合焦用チャートに関して、合焦部24がピント合わせしたときのフォーカスレンズのそれぞれの移動量がわかる。各合焦用チャート411,421,431のフォーカスレンズとの距離L1,L2,L3は既知であるので、制御装置6は、合焦部24がピント合わせしたときのフォーカスレンズのそれぞれの移動量を用いて測距用の校正パラメータを計算することができる。
【0031】
図4(c)は、チャート板41,42,43のカメラ2側の板面に貼られる合焦用チャートの一例を示す図である。合焦用チャートは、縦10cm、幅12cmの矩形形状を有する。合焦用チャートは、チャート中心から白黒の模様が放射状に広がるように描かれており、ピント合わせにコントラスト比を用いる山登りオートフォーカス方式に適している。合焦用チャートは、コントラスト比が明確に計測できるチャートであればよく、例えば、全体を黒地として上下左右の位置に4つの白丸を配したチャート等でもよい。
【0032】
図4に示した実施例では、支持部3は、2つの支持部材を有したが、支持部材は1本又は3本以上でもよい。また、測距の校正に使用されるチャート板の枚数は、使用する校正手法に応じて適宜変更してもよいが、少なくとも2枚以上のチャート板が必要となる。
【0033】
図5は、防水ケース26に支持部3を取り付ける取付け方法の変形例を示す図である。
図4では、支持部3の両支持部材311,312は、防水ケース26に設けられた取付け部264,265に固定又は着脱可能に取り付けられた例を示した。
図5(a)は、ホルダ部33を有する支持部3を示している。ホルダ部33は中空円筒形状で、防水ケース26の前方部分にはめ込まれることにより、防水ケース26から着脱可能となっている。ホルダ部33の円筒縁部下部の被写体方向には支持部材311、312が光軸Oに平行に設けられている。
【0034】
図5(b)は、防水ケース26に支持部3を取り付ける取付け方法の別の変形例を示す図である。防水ケース26の前面の取付け部264は、リブ形状となっている。リブ264は、防水ケース26の前面に平行且つ水平に2つの貫通穴268,269が設けられている。一方、支持部3の支持部材311の防水ケース側先端にも、リブ264の2つの貫通穴に対応する2つの貫通穴313、314が設けられている。リベット315をリブ264の貫通穴268と支持部材311の貫通穴313に通して固定すると、支持部材311は、光軸Oに水平な位置から垂直な位置の間を回動可能となるように防水ケース26に取付けられることになる。作業者がもう一つの貫通穴269と支持部材311の貫通穴314に固定ピン316を通すことにより支持部材311が光軸Oに水平な位置に固定される。作業者が固定ピン316を抜けば、支持部材311は、自重で光軸Oと垂直となる方向に垂れ下がることが可能になる。取付け部265と支持部材312に関しても同様の構造にすると、作業者が2本の固定ピンを抜けば、支持部3は、自重で光軸Oと垂直となる方向に垂れ下がる。したがって、支持部3は、作業員等がカメラ2により測距するときの邪魔とならない。
【0035】
図5(c)は、
図5(a)と(b)に示した防水ケース26に支持部3を取り付ける取付け方法を組み合わせた変形例である。支持部を取り付ける取付け部を防水ケース26に直接設けるのではなく、支持部3のホルダ部33にリブ331を設ける。リブ331には2つの貫通穴332,333を設ける。支持部3側は、
図5(b)に示したものと同様である。本変形例によれば、支持部3は、防水ケース26に容易に取り付け可能であり、また、作業員がカメラ2により測距するときの邪魔とならない。
【0036】
図6は、本実施例の制御装置6の概略構成ブロックの一例を示す図である。制御装置6は、接続ケーブル5を介してカメラ2に接続し、カメラ2が撮影した画像の表示、カメラ2の制御を行う。接続ケーブル5は、合焦部24からの画像信号と、撮像部21に対する制御信号と合焦部24に対する制御信号を通すこととなる。接続ケーブル5は、例えば、HD−SDI規格等の画像信号ケーブル1本とRS232C規格等の制御信号用ケーブル2本の3本のケーブルを組み合わせたものでもよい。ケーブルを1本にまとめておけばケーブルの引き回し等のハンドリングが楽になるからである。制御装置6は、施工作業員等により操作される操作部62(キーボード、マウス、タッチパネルディスプレイ等)の操作に応じて、カメラ2が撮影した画像等を表示部61に表示する。また、制御装置6は、カメラ2からのデータに基づいて校正処理や測距処理を行う。したがって、制御装置6は、表示部61、操作部62、記憶部63、及び処理部64を備える。
【0037】
なお、本実施形態では、制御装置6として、ノートパソコン(PC)を想定するが、本発明はノートPCに限定されるものではない。例えば、タブレットPC、携帯情報端末(Personal Digital Assistant, PDA)等でもよい。
【0038】
表示部61は、カメラ2の撮像性能に対応した映像、例えば動画像、静止画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ等である。本実施例では、カメラ2からの画像信号は、表示部61に直接入力されるが、変換装置等を通してもよい。操作部62は、制御装置6の操作が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス、及びタッチパッド等である。施工作業員等の操作者は、操作部62を用いて、文字、数字等を入力することができだけでなく、表示部61に表示されたAF枠等の図形の拡大、縮小、移動等の操作することができる。操作部62は、操作者により操作されると、その操作に対応する信号を発生する。そして、発生した信号は、操作者の指示として、処理部64に供給される。
【0039】
記憶部63は、例えば、半導体メモリ装置、磁気ディスク装置、又は光ディスク装置のうちの少なくともいずれか一つを備える。記憶部63は、処理部64での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部63は、ドライバプログムとして、操作部62を制御する入力デバイスドライバプログラム、表示部61を制御する表示デバイスドライバプログラム等を記憶する。また、記憶部63は、アプリケーションプログラムとして、カメラ2に対するピント合わせ指示プログラムや校正パラメータの算出プログラム等を記憶する。また、記憶部63は、データとして、被写体に合ピント合わせするための表示データ、画像データ等を記憶する。さらに、記憶部63は、校正部644により算出された校正パラメータ631を記憶する。記憶部63は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。
【0040】
処理部64は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。処理部64は、制御装置6の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。処理部64は、制御装置6の各種処理が記憶部63に記憶されているプログラム、操作部62の操作等に応じて適切な手順で実行されるように、表示部61、カメラ2等の動作を制御する。処理部64は、記憶部63に記憶されているプログラム(オペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部64は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。処理部64は、設定部641、指示部642、取得部643、校正部644、書き込み部645、計算部646等を有する。処理部64が有するこれらの各部は、処理部64が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、処理部64が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとして制御装置6に実装されてもよい。
【0041】
図7は、本実施例で使用される校正方法を説明する図である。被写体とフォーカスレンズ221の間の距離は、被写体にピントを合わせるときのフォーカスレンズ221の移動比率は、近似的に反比例することが知られている。
図7(a)は反比例の関係を表したグラフを示している。横軸(X軸)は、フォーカスレンズ221の移動比率[%]である。無限遠点を0%、最近接点の位置を100%としている。縦軸(Y軸)は、被写体のフォーカスレンズ221からの距離[m]である。反比例の関係式は、
(式2) Y=a/(X−b)+c
で表される。a、b、cは定数である。定数a、b、cの値がわかれば、被写体のフォーカスレンズ221からの距離[m]は、(式2)Y=a/(X−b)+cにより校正することはできる。したがって、グラフ上の3点の(X,Y)がわかれば、校正パラメータとしての定数a、b、cを決定できる。なお、フォーカスレンズ221の移動比率[%]は、
(式3)(フォーカスレンズ221の移動距離/フォーカスレンズ221の最大移動距離)×100
により計算される。
【0042】
図7(b)は、校正のための水中での実測値を示す表である。支持部3に取り付けられた各チャート板の3つの合焦用チャート411,421,431とフォーカスレンズ221との実測距離はそれぞれL1=1.2m、L2=1.5m、L3=2.0mであり、レンズ移動比率は、60%、30%、20%である。したがって、連立方程式
(式4) 1.2=a/(60−b)+c
(式5) 1.5=a/(30−b)+c
(式6) 2.0=a/(20−b)+c
を解いて、
図7(c)に示す、校正されたレンズの移動比率と距離の関係式
(式7) Y=10/(x−10)+1
を得る。校正パラメータとしての定数a=10、b=10、c=1は、制御装置6の記憶部63に記憶され、被写体とフォーカスレンズ221との距離の計算に利用される。
【0043】
図8は、本実施例で使用される校正方法の変形例を説明する図である。
図7に示した校正方法の実施例は、被写体とフォーカスレンズ221の間の距離は、近似的に、被写体にピントを合わせるときのフォーカスレンズ221の移動比率に略反比例することを利用した校正方法であった。本変形例は、被写体とフォーカスレンズ間の距離は、撮影された被写体画像の、例えば横幅に関係することを利用するものである。
図9(a)に示すように、表示部61に表示される複数の合焦用チャート画像は、遠くにあるほど小さくなって表示される。この関係を図形的に表したのが
図9(b)である。無限遠点を頂点Aとし、第1合焦用チャートの横幅W1に対応する底辺BCを有する三角形ABCを描くことができる。第2合焦用チャートの横幅W2には線分DEが対応し、第3合焦用チャートの横幅W3には線分FGが対応する。三角形の相似関係に着目すると、
図9(c)に示すように、点Aから辺BCまでの距離Lは、
(式8) L=W1(L3−L1)/(W1−W3)
となり、第1合焦用チャートと第3合焦用チャートの間に、同じサイズの合焦用チャートを張り付けた被写体があり、張り付けられた合焦用チャートの横幅WXであるときのチャートまでの距離LXは、
(式9) LX={(W1−WX)/(W1−W3)}L3
+{(WX−W3)/(W1−W3)}L1
で求められ、L1、L3は既知であり、W1,W3を校正パラメータとして求めれば、校正に利用することができる。例えば、被写体の横幅は、カメラ2の撮像面211の被写体の撮像水平画素数又は制御装置6の表示部61の被写体の表示水平画素数等である。
【0044】
以下、
図9、10に示した動作シーケンスを参照しつつ、カメラ2と制御装置6との間での校正パラメータを求める処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作は、予め記憶部63に記憶されているプログラムに基づき主にCPU等を備える処理部64により制御装置6の各要素と協働して実行される。
【0045】
図9は、
図7で説明した校正パラメータを求めるためのカメラ2と制御装置6との間での動作シーケンスの一例を示す図である。
図7に示した校正方法は、被写体とフォーカスレンズ221の間の距離は、近似的に、被写体にピントを合わせるときのフォーカスレンズ221の移動比率に反比例することを利用した校正方法である。カメラ2の画像分岐部241は、撮影された画像信号を分岐して制御装置6に送信する(ST901)。制御装置6の表示部61は受信した画像信号を表示する(ST902)。設定部641は表示された画像中にある合焦用チャートにオートフォーカス(AF)枠を設定する(ST903)。AF枠が設置されると、指示部642は、合焦部24に合焦指示信号とAF枠信号を送る(ST904)。合焦指示信号を受信した合焦部24は、AF枠で選択された合焦用チャートにピントを合わせるため移動部23を制御する(ST905)。移動部23は、フォーカスレンズ221を移動する(ST906)。移動部23は、フォーカスレンズ221のレンズ移動量を計測して移動量信号を合焦部24に出力する(ST907)。ステップST905‐ST906−ST907−ST905はフィードバックループとして合焦するまで繰り返される。合焦部24は、合焦したときのレンズ移動量信号を制御装置6に送信する(ST908)。信号制御装置6の取得部643はレンズ移動量信号を取得する(ST909)。ステップST903からST909までは、少なくとも3回繰り返される。校正パラメータの決定には少なくとも3つの合焦用チャートに関するデータが必要となるからである。少なくとも3つの合焦用チャートに関するデータが取得されると、校正部644は、校正パラメータを算出する(ST910)。書込み部645は算出された校正パラメータを記憶部63に書込む(ST911)。
【0046】
カメラ2の校正が済むと、施工現場等において、水中測距装置1を使用した測距が実施される。施工作業員等が制御装置6の表示部61を見ながら操作部62を操作して疎距する被写体を選択する、指示部642がカメラ2に水中の被写体にカメラ2のピントを合わせる、すなわち合焦させる処理の実行を指示ずる。カメラ2は、被写体に合焦したときのフォーカスレンズ221の移動距離信号を出力する。取得部643は移動距離信号を取得する。次に、制御装置6の計算部646は、被写体に合焦したときのフォーカスレンズ221の移動距離と
図9に示した動作シーケンスで求めた校正パラメータを使用して、被写体に合焦したときの、被写体とカメラ2との間の距離を計算する。計算した距離は制御装置6の表示部61に表示される。
【0047】
図10は、
図8で説明した校正パラメータを求めるための、カメラ2と制御装置6との間での動作シーケンスの一例を示す図である。
図8で示した校正方法の変形例は、被写体とフォーカスレンズ間の距離は、撮影された被写体画像の、例えば横幅に関係することを利用するものである。カメラ2の画像分岐部241は、撮影された画像信号を分岐して制御装置6に送信する(ST1001)。制御装置6の表示部61は受信した画像信号を表示する(ST1002)。設定部641は表示された画像中にあるチャートにオートフォーカス(AF)枠を設定する(ST1003)。AF枠が設置されると、指示部642は、合焦部24に合焦指示信号を送る。併せて、AF枠情報信号も送られる(ST1004)。合焦指示信号を受信した合焦部24は、AF枠で選択されたチャートにピントを合わせるため移動部23を制御する(ST1005)。移動部23は、フォーカスレンズ221を移動する(ST1006)。移動部23は、フォーカスレンズ221のレンズ移動量を計測して移動量信号を合焦部24に出力する(ST1007)。ステップST1005‐ST1006−ST1007−ST1005はフィードバックループとして合焦するまで繰り返される。合焦したとき、合焦部24は、合焦したことを知らせる合焦通知信号を制御装置6に送信する(ST1008)。制御装置6の取得部643は合焦通知信号を取得する(ST1009)。取得部643が合焦通知信号を取得すると、校正部644は、合焦したときの合焦用チャートの横幅としての水平画素数を算出する(ST1010)。ステップST1003からST1010までは、少なくとも2回繰り返される。校正パラメータの決定には少なくとも2つの合焦用チャートに関する横幅データが必要となるからである。書込み部645は算出された少なくとも2つの合焦用チャートに関する横幅データを校正パラメータとして記憶部63に書き込む(ST1010)。各チャート板に張り付けられた合焦用チャートのカメラ2との距離は既知であり、校正パラメータとして記憶部63に記憶されている。
【0048】
カメラ2の校正が済むと、施工現場等において、水中測距装置1を使用した測距が実施される。施工作業員等が制御装置6の表示部61を見ながら操作部62を操作して測距する被写体に貼り付けられた合焦用チャートを選択する。指示部642がカメラ2に水中の被写体に貼り付けられた合焦用チャートにカメラ2のピントを合わせる、すなわち合焦させる処理の実行を指示ずる。カメラ2は、被写体に貼り付けられた合焦用チャートに合焦したことを通知する信号を出力する。取得部643は通知する信号を取得する。次に、制御装置6の計算部646は、被写体に合焦したときの被写体に貼り付けられた合焦用チャートの横幅と
図10に示した動作シーケンスで求めた校正パラメータを使用して、被写体に合焦したときの、被写体とカメラ2との間の距離を計算する。計算した距離は制御装置6の表示部61に表示される。
【0049】
(本発明に係る水中測距装置の水中構造物の施工作業における実施例)
水中構造物の施工作業、例えば、ケーソンの設置作業における、水中測距装置1の1つの実施例について説明する。
【0050】
図11は、既設のケーソンAの隣にケーソンBを設置するときの、保持具7の一例を示す図である。保持具7は、取付け部71、腕部72、及びカメラ2を載せる鞍部73を有する。取付け部71は、水中に設置する、例えば、クレーン等を使用して水中に下ろされるケーソンBに対向するケーソンAの面と直交する面側に取り付けられる。腕部72は、ケーソンAの取付け面の一端から90°の角度で延伸して、更にケーソンB寄りに45°の角度で折れ曲がっている。なお、取付け部71と腕部72は1枚の厚手平型板金を折り曲げ加工して作成してもよい。腕部72の上には、カメラ2を保持する鞍部73が取り付けられている。
【0051】
カメラ2に前面には、支持部3が取り付けられている。カメラ2は、光軸Oが、ケーソンBの直交する2つの面の稜面を見込むように鞍部73に保持される。カメラ2のフォーカスレンズ221のレンズ面中心を点Aとする。点AからケーソンAの保持具が取り付けられている面に下ろした垂線の足をB、点AからケーソンBの法面に下ろした垂線の足をCとする。三角形ABCは∠ABCを直角とする二等辺直角三角形となって、ケーソンBとケーソンAとの目地間隔d=10cmとなるようにケーソンBが水中に下ろされればよい。ケーソンBとケーソンAとの目地間隔d、AB間をLABcm、AC間をLACcmとすると、点Bは、ケーソンAのケーソンBに対向する面から(LAB−d)の距離となるように保持具7はケーソンAに取り付けられる。AC間の距離は、水中測距装置1により計測されて、
(式10) LAC=(2の平方根)×LAB
となるようにケーソンBの設置作業が行われる。更に制御装置6の表示部61に表示されるカメラ2からの撮影画像の中心にケーソンBの法面が表示されるようにケーソンBの設置作業が行われる。ケーソンBの法面には、好ましくは、
図4(c)に示した合焦用チャートが貼られているとよい。ピント合わせと測距が正確に行われるからである。なお、ケーソンの法面はなくともよい。法面がないときは、稜線に合わせることとなる。なお、保持具7の腕部72の折れ曲がり角度は、45°以外でも既知であればよい。
【0052】
図12は、既設のケーソンAの隣にケーソンBを設置するときの、カメラ2の保持具7の別の利用例を示す図である。
図11に示した1組のカメラ2とカメラ2を保持する保持具7を、更にケーソンAの反対側にもう1組設けた実施例である。例えば、2つのカメラ2からの撮影画像は、それぞれ制御装置6の表示部61の画面を左右に分割して表示される。作業監督者等が、表示部61を見ながらケーソンBを設置する作業指示をする。2つのカメラ2で作業を監視することにより、施工精度はより高くなる。
【0053】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換、及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【解決手段】水中測距装置1は、水中に配置されるカメラ2と、支持部3と、支持部に取り付けられた複数の合焦用チャートと、制御装置6と、を有し、カメラ2は、撮像面と、レンズを有する光学部と、レンズを移動させる移動部と、画像を撮像面に合焦させるように移動部を制御する合焦部と、合焦したときのレンズの移動距離を出力する出力部を備え、制御装置6は、合焦用チャートが合焦したときのレンズの移動距離を取得する取得部と、レンズの移動距離と予め定められているカメラと複数の合焦用チャートの間の距離に基づいて、被写体とカメラとの間の距離を決定するための校正パラメータを算出する校正部と、被写体の画像を合焦させたときのレンズの移動距離と校正パラメータから、被写体とカメラとの間の距離を計算する計算部を備える。