【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「未来医療を実現する先端医療機器・システムの研究開発/先端医療機器の開発/高い安全性と更なる低侵襲化及び高難度治療を可能にする軟性内視鏡手術システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光路を構成する複数の光学部品を有し、被写体における可視光に対する反射光もしくは前記被写体に投与された蛍光物質を蛍光発光させる励起光に対する蛍光を含む、前記被写体からの光を前記光路に入射させて結像する撮像光学系と、
前記撮像光学系により結像された前記被写体からの光を光電変換するイメージセンサと、
前記撮像光学系の前記光路に少なくとも一つの前記光学部品を挟んでそれぞれ配列され、前記被写体からの光のうち前記励起光の少なくとも一部の透過を遮断する複数の励起光カットフィルタと、を備え、
前記複数の励起光カットフィルタのうち第1励起光カットフィルタは、前記撮像光学系の前記被写体に最も近い第1レンズより前記イメージセンサ側に配置され、
前記複数の励起光カットフィルタのうち第2励起光カットフィルタは、前記第1レンズより前記被写体側に配置される、
内視鏡。
前記複数の励起光カットフィルタの少なくとも一つは、反射型カットフィルタにより構成され、透過禁止帯域として、前記励起光のピーク強度に対応する波長と、前記励起光の強度がピークの1/e2以下になる波長と、を含み、かつ、前記励起光に基づいて発生した蛍光の波長帯の一部を含むか、又は前記蛍光の波長帯の全てを含まない波長である、
請求項2に記載の内視鏡。
前記複数の励起光カットフィルタの少なくとも一つは、吸収型カットフィルタにより構成され、透過禁止帯域として、前記励起光のピーク強度に対応する波長と、前記励起光の強度がピークの1/e2以下になる波長と、を含み、かつ、前記励起光に基づいて発生した蛍光の波長帯の一部を含むか、又は前記蛍光の波長帯の全てを含まない波長である、
請求項2に記載の内視鏡。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る内視鏡及び内視鏡システムを具体的に開示した実施の形態(以下、「本実施の形態」という)を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る内視鏡システム11の外観例を示す斜視図である。ここで用いられる用語として、水平面に置かれたビデオプロセッサ13の上方向と下方向をそれぞれ「上」、「下」と称する。また、内視鏡15が観察対象を撮像する側を「前(先)」と称し、ビデオプロセッサ13に接続される側を「後」と称する。
【0012】
内視鏡システム11は、内視鏡15と、ビデオプロセッサ13と、モニタ17とを含む構成である。内視鏡15は、医療用の例えば軟性鏡である。ビデオプロセッサ13は、観察対象(例えば、人体や人体内部の患部)を撮像することで得られた撮像画像(例えば、静止画及び動画を含む)に対して画像処理する。モニタ17は、ビデオプロセッサ13から出力される表示信号に従って、画像を表示する。画像処理は、例えば、色補正、階調補正、ゲイン調整を含む。
【0013】
内視鏡15は、観察対象(被写体)を撮像する。内視鏡15は、観察対象の内部に挿入されるスコープ19と、スコープ19の後端部が接続されるプラグ部21とを備える。また、スコープ19は、比較的長い可撓性を有する軟性部23と、軟性部23の先端に設けられた剛性を有する硬性部25とを含む構成である。スコープ19の構造については後述する。
【0014】
ビデオプロセッサ13は、筐体27を有し、撮像画像に対して画像処理を施し、画像処理後の表示信号を出力する。筐体27の前面には、プラグ部21の基端部29が挿入されるソケット部31が配置される。プラグ部21がソケット部31に挿入され、内視鏡15とビデオプロセッサ13とが電気的に接続されることで、内視鏡15とビデオプロセッサ13との間で電力及び各種信号(例えば映像信号、制御信号)の送受信が可能となる。これらの電力及び各種信号は、スコープ19の内部に挿通された伝送ケーブル(図示略)を介して、プラグ部21から軟性部23に導かれる。また、硬性部25の内側に設けられたイメージセンサ33(
図9参照)から出力される画像信号は、伝送ケーブルを介して、プラグ部21からビデオプロセッサ13に伝送される。
【0015】
ビデオプロセッサ13は、伝送ケーブルを介して伝送された画像信号に対し、画像処理を施し、画像処理後の画像データを表示信号に変換して、モニタ17に出力する。
【0016】
モニタ17は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等の表示デバイスを有する。モニタ17は、内視鏡15によって撮像された被写体の画像を表示する。表示デバイスは、可視光により取得した可視光画像と、励起光により発生した蛍光画像とを表示する。
【0017】
図2は、
図1に示した内視鏡15の先端側の外観例を示す斜視図である。硬性部25の先端面には、撮像窓35が配置される。撮像窓35は、光学ガラスや光学プラスチック等の光学材料を含んで形成され、被写体からの光を入射する。
【0018】
内視鏡15は、蛍光観察用の励起光(つまり、特殊光)を被写体の被観察領域に照射し、励起光の照射に基づいて蛍光物質から発せられる蛍光を撮像し、蛍光の合成画像を取得することができる。蛍光観察では例えば波長405nmの光、赤外光観察では例えば波長780nm,808nmの励起光が用いられる。以下、本実施形態では、蛍光観察用の励起光としてIR(Infrared)励起光を用いる例を説明するが、励起光はこれに限定されない。
【0019】
硬性部25の先端面には、IR励起光源37(
図9参照)からのIR励起光を伝送する一対の光ファイバ39,41の先端が露出する照射窓43,45が配置される。硬性部25の先端面には、可視光源47(
図9参照)からの可視光を伝送する一対の光ファイバ49の先端が露出する一対の照射窓51が配置される。IR用の一対の照射窓43,45は、硬性部25の先端に設けられる円形状の先端フランジ53における直径方向の両側に配置される。また、可視光用の一対の照射窓51,51は、同様に先端フランジ53における直径方向の両側に配置される。これらIR用の一対の照射窓43,45と、可視光用の一対の照射窓51,51とは、円周方向に等間隔で配置される。なお、IR用の一対の光ファイバ39,41、及び可視光用の一対の光ファイバ49,49の数は、上記以外でもよい。
【0020】
図3は、
図2に示した内視鏡15の要部断面図である。内視鏡15は、硬性部25に、撮像光学系55と、イメージセンサ33と、励起光カットフィルタと、を有する。硬性部25は、先端に、上述した円形状の先端フランジ53を有する。先端フランジ53の中央には、円形の撮像窓35が配置される。より具体的には、撮像窓35の円形開口には、円筒状のフロントホルダ57の先端外周が固定される。フロントホルダ57の先端内周には、先端カバーガラスが固定される。
【0021】
フロントホルダ57は、内周に、撮像光学系55の先端部を保持する。撮像光学系55は、光路を構成する複数の光学部品を有し、被写体からの光を光路に入射させて結像する。ここでいう被写体からの光は、例えば被写体における可視光(例えば白色光)に対する反射光、もしくは、被写体に投与された蛍光物質(例えば試薬あるいは色素であるインドシアニンググリーン(ICG:Indocyanine Green))を蛍光発光させるための励起光に対する蛍光を含む。撮像光学系55は、複数の光学部品を収容する円筒状の鏡筒59を有する。鏡筒59は、先端外周が、フロントホルダ57の内周に固定され、後端がフロントホルダ57から後方へ突出する。
【0022】
鏡筒59の内部には、光学部品であるレンズカバーガラス61、第1レンズ63、スペーサ65、第2レンズ67及び第3レンズ69が、先端側より順に収容されている。スペーサ65は、第1レンズ63と第2レンズ67との間に挟入され、例えば内視鏡15の軟性部23などの屈曲時に双方の凸曲面同士が接触することを防止する。フロントホルダ57から突出した鏡筒59の後部外周には、リアホルダ71が嵌合される。リアホルダ71には、鏡筒59の後端に嵌合する連結部材73が設けられる。リアホルダ71は、連結部材73の後方に、センサ基板75を有したイメージセンサ33を保持している。本明細書において、イメージセンサ33は、撮像素子(例えば、CCD(Charge Coupled Device)もしくはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)と、その撮像素子の光入射面側に撮像素子の保護用のセンサカバーガラスとが一体に成形されたものとして構成される。イメージセンサ33の光入射面側には、後述する第1励起光カットフィルタ79が蒸着されたフィルタ蒸着ガラス77が固定される。第1励起光カットフィルタ79は、フィルタ蒸着ガラス77のフィルタ蒸着面上に形成される。イメージセンサ33は、リアホルダ71の外周がフロントホルダ57の内周に嵌合することにより、センサ中心が撮像光学系55の中心に位置決めされる。
【0023】
本実施の形態に係る内視鏡15は、撮像光学系55の光路に、複数の励起光カットフィルタを備える。励起光カットフィルタは、少なくとも一つの光学部品を挟んで、いわゆるタンデム配列される。この励起光カットフィルタは、被写体からの光のうち被写体に照射されて反射した励起光の少なくとも一部を反射又は吸収する光波長フィルタ(optical wavelengh fiter)である。
【0024】
励起光カットフィルタは、例えば真空プロセスにおいてガラス基材(例えば、フィルタ蒸着ガラス77)の表面(つまり、フィルタ蒸着面)上に、真空蒸着やスパッタリング、フラッシュ蒸着等により多層膜を形成したもの、非真空プロセスにおいてガラス基材(例えば、フィルタ蒸着ガラス77)に着色剤を加えたもの、有機色素を2枚のガラス基材の間で挟んだもの等、いずれであってもよい。
【0025】
複数の励起光カットフィルタは、励起光反射率、励起光吸収率又は角度依存特性が、異なる光学特性を有するものとすることができる。もちろん、複数の励起光カットフィルタは、同一の光学特性(励起光反射率、励起光吸収率又は角度依存特性)を有するものであることを排除するものではない。
【0026】
なお、本実施の形態において、励起光カットフィルタは、IR励起光を反射又は吸収によりカットする光波長フィルタを例に説明するが、励起光カットフィルタは、これに限定されない。すなわち、赤外光観察以外の波長での蛍光観察が行われる場合には、励起光カットフィルタは、その波長帯域の光を反射又は吸収によりカットするものが用いられてよい。
【0027】
内視鏡15は、複数の励起光カットフィルタの少なくとも一つである第1励起光カットフィルタ79が、撮像光学系55とイメージセンサ33との間に配置される。第1励起光カットフィルタ79と第1励起光カットフィルタ79が蒸着されたフィルタ蒸着ガラス77とは、鏡筒59に接着固定された連結部材73に固定されるとともに、イメージセンサ33に接着して固定される。また、内視鏡15は、複数の励起光カットフィルタの少なくとも他の一つである第2励起光カットフィルタ81が、撮像光学系55の被写体に最も近い第1レンズ63より被写体側に配置される。第2励起光カットフィルタ81は、外周が例えば鏡筒59の内周に固定される。なお、第1励起光カットフィルタ79と第2励起光カットフィルタ81とは、以下、IR励起光カットフィルタ83とも総称する。
【0028】
内視鏡15は、撮像光学系55が、第1レンズ63より被写体側に第1の負レンズ85を有してよい。内視鏡15は、第1の負レンズ85と第1レンズ63との間に絞り87を有し、第2励起光カットフィルタ81が、第1の負レンズ85と絞り87の間に配置されている。なお、第2励起光カットフィルタ81は、第1励起光カットフィルタ79と同様に、フィルタ蒸着ガラス(図示略)のフィルタ蒸着面上に形成されたものとして構成される。本実施の形態において、第1の負レンズ85は、上述した先端カバーガラスよりなる。先端カバーガラスは、先端面が凹面に形成されることにより、第1の負レンズ85を構成している。以下、上述した先端カバーガラスは、第1の負レンズ85として説明する。この第1の負レンズ85は、撮像光学系55を構成する複数の光学部品のうちの一つに含まれることになる。
【0029】
図4は、
図3に示した撮像光学系55の光線図である。撮像光学系55は、先端より、第1の負レンズ85、第2励起光カットフィルタ81、レンズカバーガラス61、絞り87、第1レンズ63、スペーサ65、第2レンズ67、第3レンズ69及び第1励起光カットフィルタ79の順で配置される。但し、スペーサ65は、
図4では図示が省略されている。第1励起光カットフィルタ79は、イメージセンサ33と一体に接着して固定されたフィルタ蒸着ガラス77のフィルタ蒸着面上に形成される。なお、上記したように、IR励起光カットフィルタ83の数、位置は、これに限定されない。
【0030】
絞り87は、開口絞り(aperture stop)として作用する。開口絞りは、光線束を制限する。すなわち、開口絞りは、Fナンバーを設定する。絞り87は、被写体からの光のうち結像させたい部分の光線だけを通過させる。主光線は、開口絞りが十分に絞られたときでも、開口の中心を通る。内視鏡100は、この絞り87を通った光線がイメージセンサ33で像を結ぶ。
【0031】
上述した光学部品の構成により、内視鏡15は、撮像窓35の第1の負レンズ85から入射した光(蛍光又は可視光)が、第2励起光カットフィルタ81を通った後、撮像光学系55により集光される。撮像光学系55から出射した光は、第1励起光カットフィルタ79を透過した後、イメージセンサ33の撮像面に結像する。つまり、被写体からの光は、第2励起光カットフィルタ81と第1励起光カットフィルタ79の2つの光波長フィルタを通ることになる。
【0032】
図5は、
図4の要部拡大図である。内視鏡15は、第2励起光カットフィルタ81の被写体側に、第1の負レンズ85が設けられる。IR励起光カットフィルタ83(第1励起光カットフィルタ79、第2励起光カットフィルタ81)は、光入射面に垂直な方向に対して成す角度が大きくなると、励起光をカットするための反射率が低下するという角度依存特性を有する。内視鏡15では、第2励起光カットフィルタ81の被写体側に第1の負レンズ85が設けられる。第1の負レンズ85は、IR励起光カットフィルタ83の光入射面に垂直な方向に対する角度θ1の光を、角度θ1よりも小さな角度θ2(θ2<θ1)に屈折する。従って、第1の負レンズ85は、IR励起光カットフィルタ83の角度依存特性による励起光カット効率の低下を緩和することができる。
【0033】
図6は、IR励起光カットフィルタ83の特性と励起光及び蛍光の一例を示すグラフである。内視鏡15は、複数のIR励起光カットフィルタ83の少なくとも一つを、反射型カットフィルタにより構成することができる。この場合、IR励起光カットフィルタ83は、非吸収性フィルタとなるので、誘電体フィルタ(すなわち、反射型カットフィルタ)と称し、吸収を示す金属フィルタと区別することができる。
【0034】
IR励起光カットフィルタ83は、透過帯と阻止帯との境89(エッジ)、境91が急峻なエッジフィルタとなる。この種のエッジフィルタで要請されるのは、一般的に阻止帯から透過帯への変化ができるだけ鋭く、かつ、透過帯ができるだけ100%に近いことである。本実施の形態のIR励起光カットフィルタ83では、阻止帯のほぼ中央が励起光の波長となっている。
【0035】
図7は、
図6に示した波長700〜900nm領域の要部拡大図である。ここで、励起光による蛍光は、励起光に対して数%の微弱なものとなる。特に人体に無害な医療用の蛍光物質であるインドシアニングリーン(ICG)を体内の患部周囲に投与し、観察部位(患部)に近赤外光を当てて患部を光らせて撮像する場合などがこれに相当する。そのため、イメージプロセッサ93(
図9参照)は、蛍光発光画像のゲインを上げるようにゲイン調整する。そのため、微弱な励起光の侵入によっても画質の低下が生じる。このような事情から、阻止帯は、励起光の波長に対して十分な範囲を確保したい。
【0036】
一方で、励起光による蛍光は、励起光の波長帯に連続してなだらかな波長範囲でピークとなる。そこで、IR励起光カットフィルタ83の阻止帯と透過帯との境91が重要となる。すなわち、境91は、励起光波長から離間させつつ、蛍光波長Wkはできるだけ取り込みたい要請がある。IR励起光カットフィルタ83は、阻止帯(透過禁止帯域)が、励起光のピーク強度に対応する波長と、励起光の強度がピークの1/Exp2(つまり、e
2)以下になる波長とを含み、かつ、発生した蛍光波長Wkの全てを含まない波長としている。eは、2.71828…(以下、略)であり、自然対数の底である。すなわち、IR励起光カットフィルタ83は、蛍光波長Wkのうち特に微弱で、励起光に近接する波長領域を阻止帯に含めることで切り捨てている。これにより、励起光の侵入を極力抑制しながら、かつ、微弱な蛍光波長Wkのうち実効ある有効蛍光波長Wkaを効率よく取り込み可能としている。
【0037】
この反射型のIR励起光カットフィルタ83は、光学濃度(OD値)の高いものを使用することが好ましい。OD値は、例えば5以上とすることが望ましい。IR励起光カットフィルタ83は、OD値を高めに設定することにより、励起光の通過をより阻止しやすくできる。
【0038】
また、内視鏡15は、複数のIR励起光カットフィルタ83の少なくとも一つを、吸収型カットフィルタにより構成することができる。吸収型カットフィルタとしては、入射光線角度依存性の少ないフィルタガラス(吸収タイプ)を用いることができる。吸収型のIR励起光カットフィルタ83は、第1励起光カットフィルタ79と第2励起光カットフィルタ81とをタンデム配列した場合に、対向面での反射による迷光の発生を、反射型に比べ低減することが可能となる。この吸収型のIR励起光カットフィルタ83の場合も、阻止帯(透過禁止帯域)が、励起光のピーク強度に対応する波長と、励起光の強度がピークの1/Exp2(つまり、e
2)以下になる波長とを含み、かつ、発生した蛍光波長Wkの全てを含まない波長とすることができる。これにより、上述同様の作用効果を有する。つまり、IR励起光カットフィルタ83は、蛍光波長Wkのうち特に微弱で、励起光に近接する波長領域を阻止帯に含めることで切り捨てている。これにより、励起光の侵入を極力抑制しながら、かつ、微弱な蛍光波長Wkのうち実効ある有効蛍光波長Wkaを効率よく取り込み可能としている。
【0039】
IR励起光カットフィルタ83は、フィルタ面が光学部品であるレンズやレンズカバーガラス61の光入射面又は光出射面に成膜されていてもよい。従って、本実施の形態では、第2励起光カットフィルタ81は、例えばレンズカバーガラス61の光入射面に成膜できる。第1励起光カットフィルタ79は、イメージセンサ33を構成する撮像素子を保護するためのセンサカバーガラスの光入射面に成膜できる。
【0040】
鏡筒59の内周面、及び光学部品であるレンズの外周側面には反射率を抑制する反射抑制面が形成されている。反射抑制面は、カーボンブラックを添加したモールド樹脂材料(エポキシ系樹脂)を塗布することにより形成することができる。これにより、撮像光学系55に侵入した迷光の反射を、吸収により抑制することができる。
【0041】
図8は、イメージセンサ33の構造例を説明する模式図である。イメージセンサ33は、例えば、イメージセンサ33の前面に、赤外光(IR)、赤色(R)、青色(B)及び緑色(G)の波長の光をそれぞれ透過させる色フィルタCfがベイヤ配列で配置されている。イメージセンサ33は、例えば、各波長の光を受光するIR用画素、赤色用画素、青色用画素、及び緑色用画素が複数配列した構造を有する撮像素子である。なお、イメージセンサ33は、赤外光(IR)の波長の光を透過させる色フィルタCfの代わりに、赤外光(IR)の波長の光を透過可能な特性を有する、緑色(G)の波長の光を透過させる色フィルタCfを用いてもよい。
【0042】
イメージセンサ33は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子である。イメージセンサ33は、例えば、赤外光、赤色光、青色光及び緑色光を同時に受光可能な単板式カメラとして用いられる。イメージセンサ33は、撮像光学系55により結像された被写体の情報を持った光を光電変換する。
【0043】
図9は、内視鏡システム11のハードウェア構成例を示すブロック図である。内視鏡15は、前述したように、スコープ19の硬性部25の内側に設けられた、撮像光学系55、IR励起光カットフィルタ83、イメージセンサ33、及び第1駆動回路95を備える。また、内視鏡15は、スコープ19の内側に挿通され、プラグ部21の基端部29から硬性部25の先端面まで延びた上記の一対の光ファイバ39、光ファイバ41、及び一対の光ファイバ49を備える。
【0044】
第1駆動回路95は、駆動部として動作し、イメージセンサ33の電子シャッタをオンオフする。イメージセンサ33は、第1駆動回路95によって電子シャッタがオンにされた場合、撮像面に結像した光学像を光電変換し、画像信号を出力する。光電変換では、光学像の露光及び画像信号の生成や読出しが行われる。
【0045】
IR励起光カットフィルタ83は、イメージセンサ33の前側(受光側)に配置され、レンズを通る光のうち、被写体で反射されたIR励起光を遮光し、IR励起光による蛍光発光の光及び可視光を透過させる。
【0046】
図9に示すように、ビデオプロセッサ13は、コントローラ97、第2駆動回路99、IR励起光源37、可視光源47、イメージプロセッサ93、及びディスプレイプロセッサ101を備える。
【0047】
コントローラ97は、撮像動作を統括的に制御する。コントローラ97は、第2駆動回路99に対して発光制御し、内視鏡内の第1駆動回路95に対して駆動制御する。
【0048】
第2駆動回路99は、例えば光源駆動回路であり、IR励起光源37を駆動し、IR励起光を連続発光させる。IR励起光源37は、撮像期間において、継続して点灯(連続点灯)し、IR励起光を被写体に連続して照射する。
【0049】
この撮像期間は、観察部位を内視鏡15で撮像する期間を示す。撮像期間は、例えば、内視鏡システム11が、ビデオプロセッサ13又は内視鏡15に設けられたスイッチをオンにするユーザ操作を受け付けてから、オフにするユーザ操作を受け付けるまでの期間である。
【0050】
また、第2駆動回路99は、IR励起光源37を駆動し、IR励起光を所定間隔でパルス発光させてもよい。この場合、IR励起光源37は、撮像期間において、断続的に点灯(パルス点灯)し、IR励起光を被写体にパルス照射する。なお、撮像期間において、IR励起光が発光され、可視光が発光されないタイミングが、蛍光発光画像を撮像するタイミングとなる。
【0051】
IR励起光源37は、LD(図示略)を有し、LDから光ファイバ39、光ファイバ41をそれぞれ通った、780nm,808nmの各波長を有するレーザ光(IR励起光)を出射する。なお、780nm,808nmの波長を有するレーザ光は、ICG等の薬品の濃度や被写体となる患者の体調に応じて蛍光発光の態様が変わるので、同時に出射されることが好ましい。
【0052】
第2駆動回路99は、可視光源47を駆動し、可視光(例えば白色光)をパルス発光させる。可視光源47は、撮像期間において、可視光画像を撮像するタイミングで、可視光を被写体にパルス照射する。なお、一般に、蛍光発光の光は微弱な明るさである。一方、可視光は短いパルスでも強い光が得られる。
【0053】
内視鏡システム11の光源装置は、可視光と励起光とを交互に出力する。内視鏡システム11では、可視光の照射タイミングと、励起光により発生した蛍光画像の撮像タイミングが重複しないようになされている。
【0054】
イメージプロセッサ93は、イメージセンサ33から交互に出力される蛍光発光画像と可視光画像とに対して画像処理し、画像処理後の画像データを出力する。
【0055】
例えば、イメージプロセッサ93は、蛍光発光画像の輝度が可視光画像の輝度と比べて低い場合、蛍光発光画像のゲインを上げるように、ゲインコントローラとして、ゲイン調整する。イメージプロセッサ93は、蛍光発光画像のゲインを上げる代わりに、可視光画像のゲインを下げることで、ゲイン調整してもよい。イメージプロセッサ93は、蛍光発光画像のゲインを上げ、かつ、可視光画像のゲインを下げることで、ゲイン調整してもよい。イメージプロセッサ93は、蛍光発光画像のゲインを可視光画像よりも大きく上げ、かつ、可視光画像のゲインを上げることで、ゲイン調整してもよい。
【0056】
ディスプレイプロセッサ101は、イメージプロセッサ93から出力される画像データを、映像表示に適したNTSC(National Television System Committee)信号等の表示信号に変換し、モニタ17に出力する。
【0057】
モニタ17は、ディスプレイプロセッサ101から出力される表示信号に従い、蛍光発光画像と可視光画像とを、例えば同一の領域に表示する。モニタ17は、可視光画像及び蛍光画像を同一の画面上に、重畳又は個別に表示する。これにより、ユーザは、モニタ17に表示された蛍光発光画像と可視光画像とを、同一撮像画像に重ねて、或いは個別に見ながら、観察対象を高精度に確認できる。
【0058】
次に、内視鏡システム11の撮像動作について説明する。
【0059】
本実施形態では、内視鏡システム11が、IR励起光を連続照射する場合と、IR励起光をパルス照射する場合とを想定する。
【0060】
内視鏡15を使用して体内の部位を撮像する場合、前述したように、蛍光物質であるインドシアニングリーン(ICG)を体内に投与し、過剰に集積した腫瘍等の観察部位(患部)に近赤外光を当てて患部を光らせて患部を撮像する。
【0061】
図10は、IR励起光を連続照射する場合の内視鏡システム11による撮像動作の一例を示すタイミングチャートである。
図11は、IR励起光を連続照射する場合の内視鏡システム11による撮像動作手順の一例を示すフローチャートである。内視鏡システム11は、例えば、ビデオプロセッサ13又は内視鏡15に設けられたスイッチ(図示せず)をオンにする操作を受け付けることで、撮像動作を開始する。
【0062】
コントローラ97は、撮像動作が開始されると、第2駆動回路99を駆動する。第2駆動回路99は、IR励起光源37をオンにし、IR励起光を点灯させる(
図11のS1、
図10のタイミングt1)。
【0063】
IR励起光源37がIR励起光を発光させると、IR励起光は、スコープ内の光ファイバ39を通って、照射窓43から被写体に向けて照射され、患部を含む周囲の部位を照明する。患部等の被写体からの光は、撮像窓35を通ると、レンズによって集光される。患部等の被写体からの光のうち、被写体で反射されたIR励起光は、IR励起光カットフィルタ83によって遮断されるが、被写体で蛍光発光した光は、IR励起光カットフィルタ83を透過してイメージセンサ33の撮像面に結像する。
【0064】
図10、
図11では、撮像期間にわたって、IR励起光源37は常にオン(継続してオン)であり、IR励起光が一定光量で被写体に向けて照射される(
図10の波形w1)。
【0065】
IR励起光が照射された被写体(患部)では、IR励起光の照射から所定時間△t(例えば数msec)遅れてピーク光量となるように蛍光発光が生じ、蛍光発光の光が出力される(
図10の波形w2)。被写体から出力される蛍光発光の光がピーク光量に達した後に、蛍光発光による露光が開始されるように、露光開始の所定時間△t以上前に、IR励起光の照射が開始される。
【0066】
コントローラ97は、第1駆動回路95に対し、イメージセンサ33による光電変換を開始させる信号を出力する(イメージセンサON)(
図11のS2)。第1駆動回路95は、この信号を受け取ると、イメージセンサ33にセンサリセット信号を出力して、イメージセンサ33を露光開始前の状態に戻す(センサリセット)(
図11のS3、
図10のタイミングt2)。ここでは、例えばCCDイメージセンサの場合、第1駆動回路95は、露光によって蓄積された電荷をクリアする。
【0067】
センサリセット後、第1駆動回路95は、イメージセンサ33の電子シャッタをオンにして、被写体からの蛍光発光による露光を開始する(
図11のS4、
図10の波形w4)。
【0068】
第1駆動回路95は、露光を開始してから所定時間経過後、イメージセンサ33の電子シャッタをオフにして、被写体からの蛍光発光による露光を終了する(
図11のS5、
図10のタイミングt3)。
【0069】
露光終了と同時に、イメージプロセッサ93は、イメージセンサ33からのIR蛍光信号の読み出しを開始する(
図11のS6、
図10のタイミングt3、波形w6)。IR蛍光信号は、蛍光発光の露光により得られる信号である。IR蛍光信号の読み出しは、画素数に応じた読み出し時間の経過後、終了する(
図10のタイミングt4)。
【0070】
イメージプロセッサ93によるIR蛍光信号の読み出しが終了すると(
図10のタイミングt4)、ディスプレイプロセッサ101は、IR蛍光信号から得られる蛍光発光画像の表示信号を、モニタ17に出力する。モニタ17は、蛍光発光画像を可視光画像に切り替えるまでの期間Ti、蛍光発光画像を表示する(
図10の波形w8)。
【0071】
また、イメージプロセッサ93によるIR蛍光信号の読み出しが終了すると(
図10のタイミングt4)、コントローラ97は、可視光を点灯させるために、第2駆動回路99を駆動する。第2駆動回路99は、可視光源47をオンにし、可視光を点灯させる(
図11のS7、
図10のタイミングt4、波形w3)。
【0072】
可視光源47が点灯し、可視光を発光させると、可視光は、スコープ内の光ファイバ39を通って、一対の照射窓51から被写体に向けて照射され、患部を含む周囲の部位を照明する。患部等で反射された可視光は、撮像窓35を通ると、レンズによって集光され、IR励起光カットフィルタ83を透過してイメージセンサ33の撮像面に結像する。
【0073】
また、イメージプロセッサ93によるIR蛍光信号の読み出しが終了すると(
図10のタイミングt4)、第1駆動回路95は、イメージセンサ33にセンサリセット信号を出力して、イメージセンサ33を露光開始前の状態に戻す(
図11のS8)。
【0074】
センサリセット後、第1駆動回路95は、イメージセンサ33の電子シャッタをオンにして、可視光による露光を開始する(
図11のS9)。
【0075】
第1駆動回路95は、露光を開始してから所定時間経過後、イメージセンサ33の電子シャッタをオフにして、可視光の露光を終了する(
図11のS10、
図10のタイミングt5)。
【0076】
可視光の露光終了と同時に、イメージプロセッサ93は、イメージセンサ33からの可視光信号の読み出しを開始する(
図11のS11、
図10の波形w7)。可視光信号は、可視光の露光により得られる信号である。可視光信号の読み出しは、画素数に応じた読み出し時間の経過後、終了する(
図10のタイミングt6)。
【0077】
イメージプロセッサ93による可視光信号の読み出しが終了すると、ディスプレイプロセッサ101は、可視光信号から得られる可視光画像の表示信号を、モニタ17に出力する。モニタ17は、可視光画像を蛍光発光画像に切り替えるまでの期間Tr、可視光画像を表示する(
図10の波形w8)。
【0078】
また、
図10のタイミングt5で可視光の露光を終了すると、第2駆動回路99は、可視光源47をオフにし、可視光を消灯させる(
図11のS12、
図10の波形w3)。
【0079】
この後、コントローラ97は、撮像を終了するか否かを判別する(S13)。撮像の終了は、例えば、ユーザがビデオプロセッサ13又は内視鏡15に設けられたスイッチ(図示せず)をオフに操作し、この操作が内視鏡システム11により受け付けられたか否かにより、判別される。撮像を終了しない場合、
図11のS3に戻る。そして、前述したように、第1駆動回路95は、イメージセンサ33にセンサリセット信号を出力して、イメージセンサ33を露光開始前の状態に戻す(
図11のS3、
図10のタイミングt5)。
【0080】
一方、S13で撮像を終了する場合、コントローラ97は、第1駆動回路95に対し、イメージセンサ33による光電変換を終了させる信号を出力する(
図11のS14)。第2駆動回路99は、IR励起光源37をオフにし、IR励起光を消灯させる(
図11のS15)。そして、
図11に示した、IR励起光を連続照射する場合の撮像動作が終了する。
【0081】
このように、内視鏡システム11は、撮像期間にわたって、撮像動作が行われる。この間、モニタ17の同一の領域には、蛍光発光画像と可視光画像とが表示される。
【0082】
なお、
図10の波形w8で示された蛍光発光画像と可視光画像との表示の切り替えは短期間であるので、蛍光発光画像と可視光画像とは重ねて表示されているとも言える。また、ここではスイッチのオンオフ操作に応じて撮像動作(撮像期間)が開始され、終了されることを例示したが、その他の方法(例えばタイマにより所定時刻を検出)により、撮像動作(撮像期間)が開始され、終了されてもよい。
【0083】
次に、上記した構成の作用を説明する。
【0084】
本実施の形態に係る内視鏡15では、撮像光学系55の光路に少なくとも一つの光学部品を挟んでタンデム配列される複数のIR励起光カットフィルタ83を設けた。IR励起光カットフィルタ83は、被写体からの光のうち被写体に照射されて反射した励起光の少なくとも一部を反射又は吸収する。内視鏡15では、複数のIR励起光カットフィルタ83を、少なくとも一つの光学部品を挟んでタンデム配列することにより、撮像光学系55の適所に好適なタイプのIR励起光カットフィルタ83を配置することができる。また、同一種のIR励起光カットフィルタ83を用いた場合であっても、イメージセンサ33の直前のIR励起光カットフィルタ83に加え、撮像光学系55の特に被写体側にIR励起光カットフィルタ83を追加することにより、撮像光学系55への励起光侵入抑制作用と、イメージセンサ33への透過抑制作用との異なる作用が生じる。これにより、最終的に、イメージセンサ33への励起光の侵入抑制効果が大きく(より確実に)得られるようになる。
【0085】
図12は、励起光がセンサ内に侵入して画質が低下した画像IMG1の説明図である。
図13は、励起光の侵入が抑制されて画質が良好となった画像IMG2の説明図である。イメージセンサ33の直前にのみIR励起光カットフィルタ83を設けた構成例では、
図12に示すように、励起光の侵入が十分に阻止できない場合がある。その結果、画像IMG1には迷光により露出がオーバーする白抜け等の生じる場合がある。
【0086】
これに対し、上述した本実施の形態による構成では、イメージセンサ33の直前の第1励起光カットフィルタ79に加え、撮像光学系55の被写体側に第2励起光カットフィルタ81を配置することにより、励起光の侵入が十分に阻止できる。従って、
図13に示すように、白抜け等の生じない良好な画像IMG2が得られる。
【0087】
また、IR励起光カットフィルタ83は、複数に分けることにより、高い透過特性を持たせることができる。これは、フィルタ面の2つの別々の部分が独立に良好な透過率を持つように設計が可能となるためである。また、2枚のIR励起光カットフィルタ83を採用することにより、それぞれのエッジを別々に微調整するための入射角シフトの効果を容易に得ることができる。その結果、最適なエッジの境91を容易に設定可能として、励起光の侵入による画質低下を抑制しやすくできる。従って、本実施の形態に係る内視鏡15及び内視鏡システム11によれば、小型化や屈曲性を妨げずに、励起光の侵入による画質低下を抑制できる。
【0088】
また、内視鏡15では、複数のIR励起光カットフィルタ83は、励起光反射率、励起光吸収率又は角度依存特性が異なるものであってもよい。例えば撮像光学系55の被写体側には、角度依存特性の少ない吸収型カットフィルタを配置することにより、撮像光学系55における迷光の発生を大幅に抑制できる。また、イメージセンサ33の前面にOD値の高い反射型カットフィルタを配置することにより、撮像光学系55に侵入してしまった励起光による迷光のイメージセンサ33への透過を抑制することができる。
【0089】
また、内視鏡15では、IR励起光カットフィルタ83の透過禁止帯域が、励起光のピーク強度に対応する波長と、励起光の強度がピークの1/Exp2(つまり、e
2)以下になる波長と、を含み、かつ、励起光に基づいて発生した蛍光の波長帯の全てを含まない波長となる。IR励起光カットフィルタ83は、蛍光波長Wkのうち特に微弱で、励起光に近接する波長領域を阻止帯に含めることで切り捨てている。これにより、励起光の侵入を極力抑制しながら、かつ微弱な蛍光波長Wkのうち実効ある有効蛍光波長Wkaを効率よく取り込み可能としている。
【0090】
また、内視鏡15では、複数のIR励起光カットフィルタ83の少なくとも一つは、吸収型カットフィルタにより構成されるので、複数のIR励起光カットフィルタ83をタンデム配列した場合に、対向面での反射による迷光の発生を、反射型に比べ低減することが可能となる。
【0091】
また、内視鏡15では、第1励起光カットフィルタ79が、撮像光学系55とイメージセンサ33との間に配置され、第2励起光カットフィルタ81が、第1レンズ63より被写体側に配置されるので、撮像光学系55に入射する前の光を、第2励起光カットフィルタ81に通すことができ、一旦、撮像光学系55に侵入した迷光の乱反射等による画質の低下を抑制できる。
【0092】
また、内視鏡15では、撮像光学系55が、第1レンズ63より被写体側に第1の負レンズ85を有する。第1の負レンズ85と第1レンズ63との間に絞り87を有する。第2励起光カットフィルタ81は、第1の負レンズ85と絞り87の間に配置される。言い換えると、第2励起光カットフィルタ81は、第1の負レンズ85よりもイメージセンサ33側に配置される。第1の負レンズ85は、IR励起光カットフィルタ83の光入射面に垂直な方向に対する角度θ1の光を、角度θ1よりも小さな角度θ2(θ2<θ1)に屈折する。従って、第1の負レンズ85を設けた内視鏡15は、入射光をIR励起光カットフィルタ83の光入射面に垂直な方向に近づけることができるので、IR励起光カットフィルタ83の角度依存特性による励起光カット効率の低下を緩和することができる。
【0093】
この内視鏡15では、IR励起光カットフィルタ83のフィルタ面を、光学部品の光入射面又は光出射面に成膜することができる。このような構成とすれば、撮像光学系55の部品点数を減らして、内視鏡15の小型化をより容易とすることができる。
【0094】
この内視鏡15では、鏡筒59の内周面、及び光学部品であるレンズの外周側面には反射率を抑制する反射抑制面を形成することにより、撮像光学系55に侵入した迷光の反射を、吸収により抑制することができる。これにより、微弱な蛍光による蛍光画像の画質低下を抑制できる。なお、イメージセンサ33の周辺部(例えば、イメージセンサ33のセンサカバーガラスの側面)などにも、反射率を抑制可能となるように遮光処理が施されてもよい。
【0095】
本実施形態に係る内視鏡システム11では、可視光により取得した可視光画像と、励起光により発生した蛍光画像とを表示する表示デバイスを有するので、蛍光発光画像と可視光画像との重畳表示や個別表示を可能にできる。
【0096】
また、内視鏡システム11では、モニタ17が、可視光画像及び蛍光画像を同一の画面上に、重畳又は個別に表示する。これにより、ユーザは、モニタ17に表示された蛍光発光画像と可視光画像とを、同一撮像画像に重ねて、或いは個別に見ながら、観察対象を高精度に確認できる。
【0097】
更に、内視鏡システム11は、可視光と励起光とを交互に出力する光源装置を有する。そして、内視鏡システム11では、可視光の照射タイミングと、励起光により発生した蛍光画像の撮像タイミングが重複しないので、可視光と微弱な蛍光とを切り分けて、蛍光画像の画質低下を抑制できる。
【0098】
以上、図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【解決手段】内視鏡は、光路を構成する複数の光学部品を有し、被写体における可視光に対する反射光もしくは被写体に投与された蛍光物質を蛍光発光させる励起光に対する蛍光を含む、被写体からの光を光路に入射させて結像する撮像光学系と、撮像光学系により結像された被写体からの光を光電変換するイメージセンサと、撮像光学系の光路に少なくとも一つの光学部品を挟んでそれぞれ配列され、被写体からの光のうち励起光の少なくとも一部を反射又は吸収する複数の励起光カットフィルタと、を備える。