特許第6407434号(P6407434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6407434超音波HF統合外科手術システム、制御装置及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407434
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】超音波HF統合外科手術システム、制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20181004BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   A61B17/32 510
   A61B18/14
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-530169(P2017-530169)
(86)(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公表番号】特表2017-538489(P2017-538489A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】EP2015066362
(87)【国際公開番号】WO2016091400
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2017年7月24日
(31)【優先権主張番号】102014225178.8
(32)【優先日】2014年12月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ノアック、アンドリアス
(72)【発明者】
【氏名】銅 庸高
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−126447(JP,A)
【文献】 特開平10−094545(JP,A)
【文献】 特開平03−131246(JP,A)
【文献】 特開平03−151957(JP,A)
【文献】 特開平03−131245(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/064530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波変換器が超音波振動を発生させることができる励振信号を発生する発生部を有する超音波発生器と、
二つの出力接点にHFエネルギーを供給するためのHF発生器と、
前記HFエネルギーが前記励振信号に応じて供給されるよう、前記励振信号と前記HFエネルギーが協調して供給されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御するよう構成された制御部であって、HFエネルギーは、前記励振信号の周波数またはその周波数の高調波で変調される、制御部と、
を備え
前記制御部は、前記超音波振動によって移動される処置具がその移動速度を加速するときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給され、且つ、前記超音波振動によって移動される処置具が、その移動速度を減速するときには、前記第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は前記第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御するよう構成される、超音波HF統合外科手術システム。
【請求項2】
超音波変換器が超音波振動を発生させることができる励振信号を発生する発生部を有する超音波発生器と、
二つの出力接点にHFエネルギーを供給するためのHF発生器と、
前記HFエネルギーが前記励振信号に応じて供給されるよう、前記励振信号と前記HFエネルギーが協調して供給されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御するよう構成された制御部であって、HFエネルギーは、前記励振信号の周波数またはその周波数の高調波で変調される、制御部と、
を備え
前記制御部は、前記超音波振動によって移動される処置具がその移動速度を減速するときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給され、且つ、超音波振動によって移動される処置具がその移動速度を加速するときには、前記第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は前記第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御するよう構成される、超音波HF統合外科手術システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記超音波発生器から前記励振信号を受信し、
前記励振信号に応じて、少なくとも一つの同期変調信号を発生し、
前記変調信号を前記HF発生器に出力する、
ように構成された同期部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波HF統合外科手術システム。
【請求項4】
前記制御部は、HFエネルギーが前記励振信号の高調波で変調されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の超音波HF統合外科手術システム。
【請求項5】
前記制御部は、HFエネルギー前記励振信号の二倍または三倍の周波数変調されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御することを特徴とする請求項に記載の超音波HF統合外科手術システム。
【請求項6】
HFエネルギーの前記変調は、
共振回路に給電するために提供されたスイッチのオン時間を変更すること、または、
周期的に前記HFエネルギーを実質的にオン/オフ切り替えること、
によって、振幅変調として実行されることを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の超音波HF統合外科手術システム。
【請求項7】
HFエネルギーの前記変調は、
周波数変調のための共振回路に含まれる容量を変化させること、または、
少なくとも二つの動作周波数の間で切り替えること、
によって、周波数変調として実行されることを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の超音波HF統合外科手術システム。
【請求項8】
超音波変換器が超音波振動を発生させることができる励振信号を発生する発生部を有する超音波発生器と、二つの出力接点にHFエネルギーを供給するためのHF発生器と、を制御するための制御装置であって、
前記超音波変換器が超音波振動を発生させることができる励振信号に応じて前記HFエネルギーが供給されるよう、前記励振信号と前記HFエネルギーが協調して供給されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御するよう構成された制御部であって、前記HFエネルギーは、前記励振信号の周波数またはその周波数の高調波で変調される、制御部備え
前記制御部は、前記超音波振動によって移動される処置具がその移動速度を加速するときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給され、且つ、前記超音波振動によって移動される処置具が、その移動速度を減速するときには、前記第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は前記第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御するよう構成される、制御装置。
【請求項9】
超音波変換器が超音波振動を発生させることができる励振信号を発生する発生部を有する超音波発生器と、二つの出力接点にHFエネルギーを供給するためのHF発生器と、を制御するための制御装置であって、
前記超音波変換器が超音波振動を発生させることができる励振信号に応じて前記HFエネルギーが供給されるよう、前記励振信号と前記HFエネルギーが協調して供給されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御するよう構成された制御部であって、前記HFエネルギーは、前記励振信号の周波数またはその周波数の高調波で変調される、制御部備え
前記制御部は、前記超音波振動によって移動される処置具がその移動速度を減速するときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給され、且つ、超音波振動によって移動される処置具がその移動速度を加速するときには、前記第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は前記第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御するよう構成される、制御装置。
【請求項10】
超音波変換器が超音波振動を発生させることができる励振信号を発生する発生部を有する超音波発生器と、二つの出力接点にHFエネルギーを供給するためのHF発生器と、前記超音波発生器及び前記HF発生器を制御する制御部と、を備える超音波HF統合外科手術システムの作動方法であって、
前記超音波発生器が、前記超音波変換器が超音波振動を発生させることができる励振信号を供給することと、
前記HF発生器が、前記HFエネルギーを供給することと、
前記制御部が、前記励振信号と前記HFエネルギーの供給は、HFエネルギーが前記励振信号に応じて供給されるように協調して行われ、HFエネルギーは、励振信号の周波数またはその周波数の高調波で変調されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御することと、
を備え、
前記制御部が制御することは、前記超音波振動によって移動される処置具がその移動速度を加速するときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給され、且つ、前記超音波振動によって移動される処置具が、その移動速度を減速するときには、前記第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は前記第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御することを備える、超音波HF統合外科手術システムの作動方法。
【請求項11】
超音波変換器が超音波振動を発生させることができる励振信号を発生する発生部を有する超音波発生器と、二つの出力接点にHFエネルギーを供給するためのHF発生器と、前記超音波発生器及び前記HF発生器を制御する制御部と、を備える超音波HF統合外科手術システムの作動方法であって、
前記超音波発生器が、前記超音波変換器が超音波振動を発生させることができる励振信号を供給することと、
前記HF発生器が、前記HFエネルギーを供給することと、
前記制御部が、前記励振信号と前記HFエネルギーの供給は、HFエネルギーが前記励振信号に応じて供給されるように協調して行われ、HFエネルギーは、励振信号の周波数またはその周波数の高調波で変調されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御することと、
を備え、
前記制御部が制御することは、前記超音波振動によって移動される処置具がその移動速度を減速するときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給され、且つ、超音波振動によって移動される処置具がその移動速度を加速するときには、前記第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は前記第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、前記超音波発生器及び/又は前記HF発生器を制御することを備える、超音波HF統合外科手術システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波変換器が超音波振動を発生させることができる励振信号を供給するための発生部を有する超音波発生器と、二つの出力接点にHFエネルギーを供給するためのHF発生器と、を備える、超音波HF(高周波)統合外科手術システムに関する。用語「高周波」とは、本明細書では、無線周波数波の範囲内の電磁波を意味する。従って、HFと無線周波数(RF)とは、同じ意味で使用されることができる。
【0002】
本発明はさらに、そのような超音波HF統合外科手術システムを制御するための制御装置、並びに、そのような超音波HF統合外科手術システムの作動方法に関する。
【背景技術】
【0003】
超音波HF統合外科手術システム及びそれについての処置具は、例えば、DE10021529A1、US6,328,703D1、及びDE102009041329A1から、公知である。これら公知のシステム及び処置具においては、超音波エネルギーとHFエネルギーは、同時に又は逐次的に印加され得る。そのようなシステムのための処置具としては、例えば同時にHFエネルギーと超音波エネルギーを供給されることができるアプリケータが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存のシステム及び処置具は、いくつかの利点を提供するが、さらなる改良が望まれる。
【0005】
従って、本発明は、既存のシステム、制御装置及び方法と比較して改良された超音波HF統合外科手術システム、そのようなシステムのための制御装置、並びに、そのようなシステムの制御及び/又は作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、超音波変換器が超音波振動を発生することができる励振信号を発生する発生部を有する超音波発生器と、二つの出力接点にHFエネルギーを供給するためのHF発生器と、HFエネルギーが励振信号に応じて供給されるよう、励振信号とHFエネルギーが協調して供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するように構成された制御部と、を備え、HFエネルギーが、励振信号の周波数またはその周波数の高調波で変調される、超音波HF統合外科手術システムによって達成される。
【0007】
本発明による超音波HF統合外科手術システムは、統合された超音波とHFエネルギーを使用する医療用処置具が、比較的低エネルギーが使用されたとしても、優れた凝固能力と高速切断能力とを有する、という知見に基づいている。これは、超音波エネルギーが、超音波プローブの周りで断続的に飽和蒸気圧を下げることによると現在考えられている。本発明は、超音波とHFエネルギーの供給が同時に行われるだけでなく、調整されるならば、向上が達成され得るという知見にさらに基づいている。調整された供給は、ある意味では、超音波発生器の励振信号及び/又は超音波変換器によって発生された超音波振動に応じてHFエネルギーが供給されると理解されることができる。このような調整された供給は、例えば、HFエネルギーの振幅及び/又は周波数を調整及び/又は代替することを可能にする。HFエネルギーが励振信号及び/又は超音波振動に応じて供給されるような、超音波発生器及び/又はHFエネルギーの制御によって、超音波HF統合外科手術システムの利用が拡大され得、及び/又は、さらに詳細には、様々な使用状況に適応され得る。特に、超音波とHFエネルギーの調整によって、超音波HF統合外科手術システムの動作においても、相乗効果が達成され得る。
【0008】
HF発生器は、好ましくは、高周波発振器を備える。HFエネルギーは、通常、例えばバイポーラ電気外科手術用処置具に接続され得るHF発生器の二つの出力接点に供給される。HF発生器によって発生される高周波交流は、0.2〜3MHzの範囲の周波数を有し得る。
【0009】
好ましくは、超音波発生器は、超音波周波発振器を備える。動作においては、超音波発生器は、約20〜50KHzの周波数を有する交流電流を発生し得る。この励振信号は、超音波変換器によって超音波振動に変換され得る。このような超音波変換器は、通常は、超音波発生器に接続された処置具内に配置される。この装置では、超音波振動は更に超音波アプリケータに伝達され、この超音波アプリケータによって、超音波振動が、処置されるべき組織に転送され得る。処置具または処置具のアプリケータは、処置具のシャフトの軸方向または処置具シャフトに実質的に垂直な方向に実質的に向けられる、あるいは、非常に小さな円弧部分上の、例えば超音波振動のために駆動され得る。この処置具は、例えば、超音波振動が組織表面に対して実質的に垂直に発生させられる(プレス移動またはプッシュ移動)、あるいは、組織表面に対して実質的に平行に発生させられる(スライド移動または切断移動)ように、ユーザによって利用されることができる。
【0010】
有益な態様では、統合処置具が利用され、この統合処置具によって、超音波振動と共にHFエネルギーが組織に導入されることができる。例えば、超音波振動は、組織を切断するために使用されることができ、一方、HFエネルギーは、出血を止めるため組織を凝固させるために使用されることができる。
【0011】
本発明による制御部は、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するように構成され、配置されている。好ましくは、無線周波発振器及び超音波周波発振器の主な動作パラメータは、記憶された動作プログラム及び/又はグラフィカルユーザインタフェースを介したユーザ入力に基づいて、制御部によって設定される。制御部は、超音波変換器が超音波振動を発生することができる励振信号が供給されるように超音波発生器の発生部を制御するよう構成された超音波制御部を有し得る。制御部はさらに、HFエネルギーがHF発生器の二つの出力接点に供給されるようにHF発生器を制御するよう構成されたHF制御部を有し得る。制御部はさらに、励振信号または超音波エネルギーの供給とHFエネルギーの供給との調整を実行する同期部を有しても良い。超音波制御部、HF制御部及び/又は同期部は、別々のユニットであっても良いし、一体的な一つのユニットであっても良い。制御部が本明細書に記載されている場合、これは、超音波制御、HF制御、及び、超音波とHFエネルギーの調整のための統合制御のための別別のユニットを有する実施形態に加えて、それらの一体的な一つのユニットを有する実施形態を含む。
【0012】
超音波HF統合外科手術システムは、好ましくは、入力部によってユーザにより選択され得る、異なる動作モードで動作されることができる。このような動作モードは、単独の超音波動作、単独のHF外科手術動作、または超音波HF統合外科手術動作であって良い。以下でさらに説明される、超音波とHFエネルギーの統合された調整された制御の異なる方法は、ユーザによって選択可能な事前設定された動作モードで具体化されても良い。また、処置具または処置具の超音波アプリケータの振動方向、及び/又は所望の種類の使用(プレス移動またはプッシュ移動、または、スライド移動または切断移動)は、超音波HF統合外科手術システムにおける動作モードとして、好ましくは、選択され得る及び/又は(事前)設定されていて良い。異なる動作モードの制御パラメータは、好ましくは、超音波HF統合外科手術システムに、例えば制御部内に、記憶されている。
【0013】
HFエネルギーは、所定のパラメータ、特に、HF信号の持続時間、周波数、振幅及び/又は出力電力に関するパラメータを与えられ得る。これらのパラメータは、ユーザによって選択または設定されて良く、及び/又は、それらは、異なる動作モードにおいて事前設定又は事前選択されていても良い。
【0014】
本発明によれば、制御部は、HFエネルギーが励振信号の周波数で変調されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するように構成される。本発明による超音波HF統合外科手術システムのこの特徴は、超音波HF統合外科手術システムに接続された処置具によって、プッシュ移動またはプレス移動の意味において、組織表面に対して実質的に垂直に、超音波振動が適用される場合には、特に有利である。
【0015】
励振信号の周波数によるHFエネルギーの変調は、処置具の超音波アプリケータが組織に高い圧力を加えるときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、また、処置具の超音波アプリケータが組織にわずかしか圧力を加えない又は圧力を加えないときには、第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、実施され得る。このようにして、例えば、処置具の超音波アプリケータの浸透力は、HFエネルギーによって支持される。
【0016】
第2の振幅は、好ましくは、第1の振幅よりも少なくとも25%小さく、より好ましくは、50%小さくて良い。第2の振幅は、ゼロ振幅であってさえも良い。
【0017】
第2の周波数は、好ましくは、第1の周波数よりも少なくとも10%小さく、より好ましくは、20%小さくて良い。
【0018】
超音波HF統合外科手術システムの好ましい実施形態によれば、制御部は同期部を備え、この同期部は、超音波発生器から励振信号を受信し、その励振信号に応じて、少なくとも一つの同期変調信号を発生し、この変調信号をHF発生器に出力するように構成される。
【0019】
好ましくは、変調信号は、HF発生器の高周波発振器によって受信され、それに応じて処理される。さらに好ましくは、第1の同期変調信号は、HFエネルギー信号の振幅変調を行うために使用され得る。第2の同期変調信号は、HFエネルギー信号の周波数変調を行うために使用され得る。同期変調信号は、記憶された動作プログラム及び/又はユーザインタフェースを介したユーザ入力に基づいて制御部によって調整されるような、超音波周波発振器の周波数、または、その周波数の高調波、例えば、2倍または3倍の周波数で発生され得る。
【0020】
超音波HF統合外科手術システムのさらに好ましい実施形態によれば、制御部は、HFエネルギーが高調波、特に、励振信号の2倍または3倍の周波数で変調されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するように構成される。この実施形態は、超音波振動が、スライド移動または切断移動の意味において、組織表面に対して実質的に平行に適用される場合には、特に有用であり得る。超音波周波数の2倍でのHFエネルギーの変調は、処置具の超音波アプリケータの移動速度がゼロ以下であるときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーを供給するために、及び、超音波アプリケータの移動速度が速いときには、第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーを供給するために、有利に利用され得る。それによって、切断移動は、例えば、HFエネルギーによって支持されることができる。
【0021】
超音波HF統合外科手術システムのさらなる実施形態では、制御部は、超音波振動によって移動される処置具及び/又は励振信号がターニングポイントにあるときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給され、且つ、超音波振動によって移動される処置具及び/又は励振信号が二つのターニングポイントの間にあるときには、第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するよう構成される。
【0022】
用語「ターニングポイント」とは、本明細書では、超音波振動によって移動される処置具の移動方向が変わる点、及び/又は、励振信号が最大値(正または負)に達する点を意味する。しかしながら、共振効果により、励振信号のターニングポイントと処置具のターニングポイントとの間に位相ずれが存在することがある。好ましくは、特に、超音波振動によって移動される処置具及び/又は励振信号が、このようなターニングポイントに又はそのようなターニングポイントの領域にあるときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給されるべきものである。そのようなターニングポイントの領域は、例えば、ターニングポイントと当該ターニングポイントの両側のゼロクロス又は次のターニングポイントとの間の曲線の10%、20%、25%、30%、40%または50%を含むことができる。
【0023】
さらに好ましい実施形態では、制御部は、超音波振動によって移動される処置具及び/又は励振信号が二つのターニングポイントの間にあるときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給され、且つ、超音波振動によって移動される処置具及び/又は励振信号がターニングポイントにあるときには、第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するよう構成される。
【0024】
この実施形態は、上記代替案のある程度逆を示している。即ち、本明細書に記載の実施形態では、超音波振動によって移動される処置具及び/又は励振信号が、二つの隣接するターニングポイントの間にあるとき、または、励振信号に関してはゼロクロスの周りの区間としても示されることができる二つの隣接するターニングポイントの領域の間にあるときには、HFエネルギーは、第1の振幅で及び/又は第1の周波数で供給される。これに対比して、超音波振動によって移動される処置具及び/又は励振信号が、ターニングポイントにあるとき、または、ターニングポイントの領域にあるときには、HFエネルギーは、第1の振幅よりも小さい第2の振幅で及び/又は第1の周波数よりも小さい第2の周波数で供給される。
【0025】
超音波HF統合外科手術システムのさらに好ましい実施形態によれば、制御部は、励振信号が第1のターニングポイントまたは第1のターニングポイントの領域にあるときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給され、且つ、超音波振動によって移動される処置具及び/又は励振信号が第2のターニングポイントまたは第2のターニングポイントの領域にあるとき、あるいは、二つの隣接するターニングポイントの間または二つの隣接するターニングポイントの領域の間にあるときには、第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するよう構成される。
【0026】
この実施形態では、超音波振動によって移動される処置具及び/又は励振信号が第1のターニングポイントにあるとき、または第1のターニングポイントの領域にあるときにのみ、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給され、一方、第2のターニングポイント及び二つのターニングポイントの間の領域では、第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給される。第1のターニングポイントは、励振信号の例えば最大値のターニングポイントであり、第2のターニングポイントは、最小値のターニングポイントであることができ、また、その逆であっても良い。
【0027】
超音波HF統合外科手術システムのさらに好ましい実施形態は、超音波振動によって移動される処置具が、移動速度を有していないか、または移動速度が低いときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給される、且つ、超音波振動によって移動される処置具が高い移動速度を有するときには、第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するように制御部が構成されることを特徴とする。この実施形態では、超音波振動によって処置具が移動速度を有していないか又は移動速度が低いときには、即ち、例えばその移動方向が変化するときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給される。しかしながら、処置具が超音波振動による高い移動速度を有する間は、第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給される。
【0028】
処置具の用語「高い移動速度」とは、動作モードにおいて発生する最大移動速度の少なくとも半分または少なくとも3/4である、超音波振動による移動速度を意味する。処置具の用語「低い移動速度」とは、各動作モード(低移動速度)における最大移動速度の半分または1/4よりも低い、処置具の超音波振動による移動速度を意味する。
【0029】
さらに好ましい実施形態では、制御部は、超音波振動によって移動される処置具が、高い移動速度を有するときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給され、且つ、超音波振動によって移動される処置具が、移動速度を有していないか、または移動速度が低いときには、第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するよう構成される。
【0030】
この実施形態は、前述の実施形態の逆を示す。即ち、本明細書に記載の実施形態では、処置具の超音波振動による高い移動速度は、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーによって支持され、一方、処置具の超音波振動による移動速度が、例えば、方向の変化の際に、低い又はゼロに等しい場合には、第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給される。
【0031】
さらに好ましい実施形態によれば、制御部は、超音波振動によって移動される処置具がその移動速度を加速するときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給され、且つ、超音波振動によって移動される処置具が、その移動速度を減速するときには、第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するよう構成される。処置具がその移動速度を加速するときとは、好ましくは、ターニングポイントの後で開始し、隣接するターニングポイントへの半分で実質的に終了するフェーズを意味する。
【0032】
組織を通して移動している間は、処置具は、組織に圧力をかける。加速のフェーズの間、この圧力は、増大される。圧力が増大されている間、HFエネルギーの電力が供給される、もしくは、HFエネルギーの電力が増大される。従って、本実施形態は、加速のフェーズにおいて、凝固能力が向上されるという効果を奏する。
【0033】
別の好ましい実施形態では、制御部は、超音波振動によって移動される処置具がその移動速度を減速するときには、第1の振幅及び/又は第1の周波数を有するHFエネルギーが供給され、且つ、超音波振動によって移動される処置具がその移動速度を加速するときには、第1の振幅よりも小さい第2の振幅及び/又は第1の周波数よりも小さい第2の周波数を有するHFエネルギーが供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するよう構成される。処置具がその移動速度を減速するときとは、好ましくは、ターニングポイントで終了し、隣接する前のターニングポイントから実質的に半分で開始するフェーズを意味する。
【0034】
組織を通して移動している間は、処置具は、組織に圧力をかける。減速のフェーズの間、この圧力は、減少される。圧力が減少されている間、HFエネルギーの電力が供給される、もしくは、HFエネルギーの電力が増大される。従って、本実施形態は、減速のフェーズにおいて、切断能力が向上されるという効果を奏する。
【0035】
本発明による超音波HF統合外科手術システムのさらに好ましい実施形態は、HFエネルギーの変調が、
共振回路に給電するために提供されたスイッチのオン時間を変更すること、または、
周期的にHFエネルギーを実質的にオン/オフ切り替えること、
によって、振幅変調として実行されることを特徴とする。
【0036】
本発明による超音波HF統合外科手術システムのさらに好ましい実施形態は、HFエネルギーの変調が、
周波数変調のための共振回路に含まれる容量を変化させること、または、
少なくとも二つの動作周波数の間で切り替えること、
によって、周波数変調として実行されることを特徴とする。
【0037】
無線周波発振器の変調は、共振回路に給電するための通電スイッチのオン時間を変更して振幅変調を達成するなどの様々な手法によって、あるいは、共振回路に含まれる容量を変化させて周波数変調を達成することによって、行われ得る。共振回路は、好ましくは、インダクタ・キャパシタ回路(LC回路とも称される)を含み得る。また、変調は、二つの動作周波数の間の離散的スイッチングの形態で、あるいは、無線周波処置信号を周期的にオン/オフ切り替えることによって、行われ得る。処置信号を完全にオフに切り替える代わりに、治療効果は持たないが、無線周波発振器に共振動作を維持することを許す、非常に低い振幅に切り替えても良い。
【0038】
異なる実施形態は、異なる組織及び/又は異なる用途に対して異なる効果を奏することができる。従って、超音波HF統合外科手術システム、または、そのような超音波HF統合外科手術システムの制御部が、ユーザインタフェース、例えばタッチスクリーンを含むグラフィカルユーザインタフェースによってユーザにより選択されることができる異なる事前設定された動作モードが供給され得る少なくとも二つの、又は多数の、好ましくは上述した全ての、実施形態を実施するように構成される場合には、特に好ましい。
【0039】
本発明のさらなる態様によれば、前述した超音波HF統合外科手術システムを制御するための制御装置が供給されるもので、この制御装置は、HFエネルギーが励振信号に応じて供給されるよう、超音波変換器が超音波振動を発生させることができる励振信号とHFエネルギーが協調して供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するよう構成された制御部を備え、HFエネルギーは、励振信号の周波数またはその周波数の高調波で変調される。
【0040】
本発明による制御装置及びその可能な向上は、それらを、本発明による超音波HF統合外科手術システムに使用するのに特に適したものとする特徴を有している。制御装置の効果、実施形態、並びに、実施形態の詳細と、その向上に関しては、超音波HF統合外科手術システムのそれぞれの特徴の前述の説明が参照される。
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、超音波変換器が超音波振動を発生することができる励振信号を供給することと、HFエネルギーを供給することと、を備える、上述の超音波HF統合外科手術システムの作動方法が供給されるもので、励振信号とHFエネルギーの供給は、HFエネルギーが励振信号に応じて供給されるように、協調して行われ、HFエネルギーは、励振信号の周波数またはその周波数の高調波で変調される、ことを特徴とする。
【0042】
本発明による方法及びその向上は、それらを、本発明による超音波HF統合外科手術システム及びその向上に使用するのに特に適したものとする特徴または方法ステップを有している。方法の効果、実施形態、並びに、実施形態の詳細と、その向上に関しては、それぞれの装置特徴の前述の説明が参照される。
【0043】
本発明の好ましい実施形態が、添付図面を参照して例示的な方法で記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、超音波HF統合外科手術システムの例示的な一実施形態の概略図である。
図2図2は、異なる動作モードにおける超音波アプリケータの位置とHFエネルギーの供給との間の、時間に関する依存性を示す図である。
図3図3は、さらに異なる動作モードにおける超音波アプリケータの位置とHFエネルギーの供給との間の、時間に関する依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明による例示的な超音波HF統合外科手術システムが、図1に示されている。このシステムは、電気外科手術用発生器1と、電気外科手術用処置具2と、を備える。電気外科手術用処置具2は、ケーブル3によって発生器1に接続される。電気外科手術用処置具2は、オリンパスメディカルシステムズ株式会社(東京、日本)のThunderbeat(サンダービート)鉗子、または、超音波及び高周波処置機能を提供する他の任意の処置具であって良い。
【0046】
電気外科手術用発生器1は、電気外科手術用処置具2における超音波バイブレータ(図示せず)のための励振信号を供給するための超音波周波発振器4を備える。電気外科手術用発生器1は、さらに、電気外科手術用処置具2における処置電極(図示せず)のための無線周波処置信号を供給するための無線周波(HF)発振器5を備える。上記バイブレータ及び/又は電極は、既知の設計のものであるので、その説明は省略する。
【0047】
超音波周波発振器4及び無線周波発振器5は、共通クロック6からタイミング信号を受信する。また、別々のクロックをそれら発振器4,5に供給することもできる。クロック6は、例えば1kHzのタイミング信号を供給し得、発振器4,5はそれぞれ、そのクロック信号を、所望の周波数、超音波周波数としての20〜50kHzまたは無線周波数としての0.2〜3MHz、の出力信号を発生するための基準として使用する。また、固定のタイミング信号の代わりに、共振フィードバックループが発振器4,5によって使用されても良い。
【0048】
発振器4,5の主な動作パラメータは、記憶された動作プログラムに基づいて、及び/又はグラフィカルユーザインタフェース8を介したユーザ入力に基づいて、制御部7によって設定される。
【0049】
発生器1は、同期部9をさらに備えており、この同期部9は、制御部7に接続されると共に、超音波周波発振器4と高周波発振器5の両方に接続される。同期部9は、超音波周波発振器4からの励振信号を受信し、この信号を使用して、無線周波発振器5に出力される1つまたは複数の同期変調信号を発生する。
【0050】
第1の同期変調信号は、上記無線周波処置信号の振幅変調を行うために使用され得る。第2の同期変調信号は、上記無線周波処置信号の周波数変調を行うために使用され得る。超音波周波発振器4の周波数を有する、あるいは、記憶された動作プログラム及び/又はユーザインタフェース8を介したユーザ入力に再び基づいて制御部7によって制御されるような、その周波数の高調波、例えば、二倍や三倍の周波数を有する、同期変調信号が発生されても良い。
【0051】
無線周波発振器5の変調は、振幅変調のための共振回路に給電するための通電スイッチのオン時間を変更することなどの様々な技術によって、または、周波数変調のための共振回路に含まれる容量を変化させることによって、行われ得る。また、変調は、二つの動作周波数間の離散的な切り替えの形態で、または、無線周波処置信号を周期的にオン/オフ切り替えすることによって、行われ得る。処置信号を完全にオフに切り替える代わりに、治療効果は持たないが、無線周波発振器5が共振動作を維持することを可能にする、非常に低い振幅に切り替えられても良い。
【0052】
超音波周波励振信号及び高周波処置信号は、電気外科手術用処置具2のケーブル3の端部のそれぞれのプラグ12,13を接続するための出力ソケット10,11に供給される。発生器1から処置具2を電気的に分離するために、トランス14,15が使用され得る。
【0053】
以下、図2及び図3を参照して、上述のシステムの様々な動作モードを説明する。
【0054】
図2は、横軸に時間を示し、縦軸に四本の異なる曲線を重ねて示した図であり、超音波アプリケータの位置(一番上の曲線)と共に、HFエネルギーを供給するための三つの異なるモード(下の三本の曲線)を示している。
【0055】
10が付された一番上の曲線は、処置具の超音波アプリケータの位置、超音波発生器によって供給された励振信号によって励振され、この励振信号から超音波振動を発生した超音波変換器の位置、を示している。この処置具の超音波アプリケータの超音波振動の周波数と振幅は、図2の一番上の曲線10によって示されることができる。この曲線は、幾つかのターニングポイント10a,10bと、ゼロクロス10cと、を有している。ターニングポイント10aは、第1のターニングポイントであり、ターニングポイント10bは、第2のターニングポイントである。ターニングポイント10aは、励振信号の最大のターニングポイントに対応して良く、ターニングポイント10bは、励振の最小のターニングポイントに対応して良い。
【0056】
21,22,23が付された曲線は、図2の線10で示されることができる励振信号の、異なる依存性におけるHFエネルギーの供給、すなわち、それぞれの超音波振動を示している。
【0057】
曲線21は、超音波HF統合外科手術システムの動作モードを示しおり、ここで、制御部は、超音波振動によって移動される処置具及び/又は励振信号がターニングポイント10a,10bにあるときに、HFエネルギー21が供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するよう構成されている。図2では、供給されたHFエネルギー21の三つの区間21a,21b,21cが示されることができる。図2に更に示されることができるように、HFエネルギー21は、曲線10のターニングポイント10a及び10bだけでなく、これらターニングポイント10a,10bの周りの領域でも供給される。HFエネルギー21a,21b,21cの供給のフェーズ間では、HFエネルギーは供給されない。あるいは、フェーズ21a,21b,21c間では、振幅及び/又は周波数を低減したHFエネルギーが供給されることができる。
【0058】
曲線23は、曲線21によって示された動作モードと比較して逆方向に動作する動作モードを示している。即ち、曲線23によれば、超音波HF統合外科手術システムの制御部は、超音波振動によって移動される処置具及び/又は励振信号が2つのターニングポイント10aと10bの間にあるとき、即ち23a,23b,23c,23dが付されたようなゼロクロス10cの部分にあるときに、HFエネルギー21が供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するよう構成されている。HFエネルギー23a,23b,23c,23dの供給のフェーズ間では、すなわち、超音波振動によって移動される処置具及び/又は励振信号がターニングポイント10a,10bの領域にあるときには、曲線23に従ってHFエネルギーは供給されない。あるいは、フェーズ23a,23b,23c,23d間では、振幅及び/又は周波数を低減したHFエネルギーが供給されることができる。
【0059】
第3の動作モードは、曲線22で示されている。この動作モードでは、制御部は、超音波振動によって移動される処置具及び/又は励振信号が第1のターニングポイント10aに又はこれら第1のターニングポイント10aの領域に存在するそれぞれのときに、HFエネルギー21が供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するよう構成されている。曲線22によれば、HFエネルギー22a,22bの供給のフェーズ間では、HFエネルギーは供給されない、即ち、第2のターニングポイント10bの領域及び二つの隣接するターニングポイントの間(これは、ゼロクロス10cの領域であることを意味する)では、HFエネルギーは供給されない。あるいは、フェーズ22a,22b間では、振幅及び/又は周波数を低減したHFエネルギーが供給されることができる。
【0060】
処置具のそれぞれの超音波振動をもたらす、HFエネルギーの供給と超音波エネルギーの供給とのこのような調整によって、二つのエネルギー間の相乗効果がより良い方法で利用されることができる。さらに、異なる動作モードの設計によって、超音波HF統合外科手術システムの使用は、異なる使用領域や組織の種類に合わせて調整されることができる。
【0061】
図3は、図2に示した図と比較して、さらなる動作モードを含む図を示している。同一または同様の特徴は、図3において同じ参照符号によって示されている。横軸に時間を示し、縦軸に三本の異なる曲線を重ねて示されており、超音波アプリケータの位置(一番上の曲線)と共に、HFエネルギーを供給するための二つの異なるモード(下の二本の曲線)を示している。
【0062】
図2においても示されたように、10が付された一番上の曲線は、処置具の超音波アプリケータの位置、超音波発生器の発生部によって供給された励振信号によって励振され、この励振信号から超音波振動を発生した超音波変換器の位置、を示している。この曲線は、二つのフェーズ、即ち、超音波アプリケータの移動速度が減速する第1のフェーズ(双方向矢印)32と、超音波アプリケータの移動速度が加速する第2のフェーズ(双方向矢印)34とに分割される。
【0063】
曲線41は、超音波HF統合外科手術システムの動作モードを示しおり、ここで、制御部は、超音波振動によって移動される処置具が、その移動速度を減速する時間32にHFエネルギー41が供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するよう構成されている。処置具がその移動速度を減速する時間は、ゼロクロス10cで開始し、次のターニングポイント10a,10bで終了する第1のフェーズ32である。組織を通して移動している間に処置具によって加えられる圧力は、減速のこの第1フェーズ中は減少する。したがって、減速のフェーズでは、切断能力が向上される。
【0064】
曲線43は、超音波HF統合外科手術システムの動作モードを示しており、ここで、制御部は、超音波振動によって移動される処置具が、その移動速度を加速する時間34にHFエネルギー43が供給されるように、超音波発生器及び/又はHF発生器を制御するよう構成されている。処置具がその移動速度を加速する時間は、ターニングポイント10a,10bで開始し、隣接するターニングポイントへの半分、即ちゼロクロス10cで終了する第2のフェーズ34である。組織を通して移動している間、処置具は組織に圧力をかける。加速のこの第2のフェーズの間は、圧力は増大する。したがって、このフェーズにおいては、凝固能力が向上される。
【0065】
図2に関して上述したように、HFエネルギーをフェーズ32または34間でそれぞれ遮断する代わりに、これらのフェーズ間では、振幅及び/又は周波数を低減したHFエネルギーが供給されることができる。
図1
図2
図3