(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407450
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】車両のための運転支援システムおよび運転支援方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20181004BHJP
B60W 30/00 20060101ALI20181004BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20181004BHJP
B60W 40/105 20120101ALI20181004BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20181004BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20181004BHJP
【FI】
B62D6/00
B60W30/00
B60W30/095
B60W40/105
B62D101:00
B62D119:00
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-548888(P2017-548888)
(86)(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公表番号】特表2018-511515(P2018-511515A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】EP2016065566
(87)【国際公開番号】WO2017050449
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2017年9月21日
(31)【優先権主張番号】15290244.1
(32)【優先日】2015年9月25日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517249495
【氏名又は名称】シーメンス エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】Siemens S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ドゥニ マルシャン
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン シエラ
【審査官】
飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−016600(JP,A)
【文献】
特開2003−261054(JP,A)
【文献】
特開平10−329575(JP,A)
【文献】
特表2015−509455(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0060414(US,A1)
【文献】
特開2002−002519(JP,A)
【文献】
特開2010−000951(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0124041(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B60W 10/00− 50/16
B62D 101/00−137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のための運転支援システムであって、
前記システムは、
前記車両のための経路を決定することができる経路決定装置(2)と、
前記車両の運転時にドライバを支援する自律運転装置(3)と、を備え、
前記自律運転装置(3)は、ドライバが前記車両を運転する車両のマニュアル運転モードから、前記自律運転装置(3)がドライバによる介入なく前記車両を運転する車両のオートマチック運転モードへと、時点tにおける車両の速度V(t)に応じて漸進的に移行するために、操舵制御を漸進的に引き継ぎ、その速度を上回ると、自律運転装置からの支援を受けることなく、ドライバが車両の運転を開始し、それ以降、車両はマニュアル運転モードになる速度V3と、その速度を下回ると自律運転装置がドライバの介入なく車両の運転を開始し、それ以降、車両はオートマチック運転モードになる速度V1(ただしV1<V3)と、の間で、車両の運転を漸進的に支援するように構成されていることを特徴とする、運転支援システム。
【請求項2】
前記自律運転装置(3)は、オートマチック運転モードからマニュアル運転モードへと漸進的に移行するために、前記車両の操舵制御をドライバに漸進的に引き渡すように構成されている、請求項1記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記自律運転装置(3)は、前記車両(1)の車軸の向きを、該車軸のステアリングシャフトへのトルク付加によって制御することができる、前記車両(1)の操舵制御システム(4)を有している、請求項1または2記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記自律運転装置(3)は、前記制御の漸進的な引き継ぎまたは前記制御の漸進的な引き渡しを実現するために、前記車両の速度V(t)および前記経路決定装置(2)による経路の決定に応じて、前記トルクの量を決定および制御するように構成されている、請求項3記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記自律運転装置(3)は、速度V1および速度V3を規定するデータベースを有しており、
前記自律運転装置は、
時点tにおける前記車両(1)の速度V(t)を、前記速度V1および前記速度V3と比較し、
前記速度V3を上回る速度V(t)に対して、マニュアル運転モードを実現し、
前記経路決定装置(2)によって経路が決定されている場合には、前記速度V1を下回る速度V(t)に対して、オートマチック運転モードを実現し、
前記経路決定装置(2)によって経路が決定されている場合には、V1とV3との間の速度V(t)に対して、支援運転モードを実現する、
ように構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の運転支援システム。
【請求項6】
前記自律運転装置(3)は、前記トルクの付加のレベルTVを計算するように構成されており、
前記レベルは、V1とV3との間の速度V(t)に対して可変である、請求項5記載の運転支援システム。
【請求項7】
前記レベルTVは、V3からV1へと低下する速度に対しては0%から100%まで連続的に上昇する値を取ることによって、速度V(t)に応じて変化する、請求項6記載の運転支援システム。
【請求項8】
前記自律運転装置(3)は、時点tにおける前記車両の実際の位置と、前記経路によって規定されている、時点tにおける前記車両の最適な位置と、の偏差E(t)に応じて、前記トルクの量を決定および制御するように構成されており、
前記経路決定装置(2)による経路の決定は、前記制御の漸進的な引き継ぎまたは前記制御の漸進的な引き渡しのために行われる、請求項1から7までのいずれか1項記載の運転支援システム。
【請求項9】
前記自律運転装置(3)は、偏差E1および偏差E3を規定するデータベースを有しており、
前記自律運転装置は、
時点tにおける偏差E(t)を、前記偏差E1および前記偏差E3と比較し、
前記偏差E1を下回る偏差E(t)に対して、マニュアル運転モードを実現し、
前記経路決定装置(2)によって経路が決定されている場合には、前記偏差E3を上回る偏差E(t)に対して、オートマチック運転モードを実現し、
前記経路決定装置(2)によって経路が決定されている場合には、E1とE3との間の偏差E(t)に対して、支援運転モードを実現する、
ように構成されている、請求項8記載の運転支援システム。
【請求項10】
前記自律運転装置(3)は、前記トルクの付加のレベルTEを計算するように構成されており、
前記レベルは、E1とE3との間の偏差E(t)に対して可変である、請求項8または9記載の運転支援システム。
【請求項11】
前記レベルTEは、E1からE3へと増大する偏差E(t)に対しては0%から100%まで連続的に上昇する値を取ることによって、偏差E(t)に応じて変化する、請求項10記載の運転支援システム。
【請求項12】
運転支援システムを用いる車両(1)のための運転支援方法であって、
前記方法は、前記車両の運転に関してドライバを支援するように構成されており、
経路決定装置(2)によって前記車両の経路を決定するステップと、
自律運転装置(3)によって、時点tにおける前記車両の速度V(t)を決定する、および/または時点tにおける前記車両の位置と、前記車両が時点tにおいて前記経路に従っていた場合に前記車両が取るべき最適な位置と、の偏差E(t)を決定するステップと、
時点tにおいて前記経路決定装置(2)によって経路が決定されており、かつ前回に決定された、前記車両の速度V(t)が所定の速度V1以下であり、および/または偏差E(t)が所定の偏差E3以上である場合に、前記自律運転装置(3)によって、ドライバの介入なく前記車両を自動的かつ自律的に運転するステップと、
時点tにおいて、前記経路決定装置によって経路が決定されており、かつ前回に決定された、前記車両の速度V(t)がV1と所定の速度であるV3(ただしV1<V3)との間であり、および/または偏差E(t)が所定の閾値であるE1とE3との間である場合に、前記自律運転装置(3)によって車両の運転を漸進的に支援するステップと、
速度V(t)が所定の速度V3以上になった場合、および/または前記経路決定装置(2)によって経路が決定できなかった場合、および/または偏差E(t)がE1以下になった場合に即座に、前記自律運転装置による操舵制御システム(4)の制御が行われることなく、ドライバが車両をマニュアル運転するステップと、
を含むことを特徴とする、運転支援方法。
【請求項13】
前記自動的な運転は、ドライバの介入なく前記経路に従って前記車両(1)を操舵するための、前記経路に応じた前記自律運転装置(3)による操舵制御システム(4)の制御を含む、請求項12記載の運転支援方法。
【請求項14】
前記支援運転は、
速度V(t)に応じた前記車両のステアリングシャフトへのトルクの付加のレベルTVの決定、および/または偏差E(t)に応じた前記車両のステアリングシャフトへのトルクの付加のレベルTEの決定と、
前記車両(1)の運転中のドライバの労力を、前記レベルTVだけが計算された場合には前記レベルTV分低減することによって、または前記レベルTEだけが計算された場合には前記レベルTE分低減することによって、または前記レベルTEおよび前記レベルTVのいずれも計算された場合にはTEおよびTVの関数である全体のレベルTG分低減することによって、前記経路に従った前記車両(1)の操舵でもってドライバを支援するための、前記経路および前記レベルTVおよび/またはTEに応じた、前記自律運転装置(3)による前記操舵制御システム(4)の制御と、
から成る、請求項12または13記載の運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフラストラクチャが設けられている、特に路面インフラストラクチャが設けられている所定の車線に沿って移動するように構成されている車両のドライバに、所定の経路に従うための支援および種々の停留所または停車場に設置されているプラットホームに横付けするための支援が提供される、車両のための運転支援システムおよび運転支援方法に関する。本発明は、特に、大量輸送交通機関、例えばバスまたはトロリーバスに使用される車両に関し、車線のインフラストラクチャは、例えば、路面に塗装されており、かつ車両のための非常に正確な経路を表しているマーキングを含んでおり、また車両は、例えば車両の運転中にドライバを支援するために、例えば、インフラストラクチャによって、すなわちマーキングによって規定されている経路を読み出して決定することができるビジョンシステムを有している。ビジョンシステムによる光学的な誘導を使用する、そのような運転支援システムは、当業者には十分に公知である。
【0002】
そのような車両に関連する決定の問題は、プラットホームへの横付け、また専用レーンであろうと無標のレーンであろうと、完全にまたは部分的に確保されている車線の使用である。確かに、サービスの品質を保証するために、車両は、停留所のプラットホームに接触することなく、プラットホームに可能な限り正確に横付けすることができなければならない。その一方で、確保されているレーンの幅は、車両の運転速度に関する決定要因のうちの1つである。
【0003】
この問題を解決するために、本発明は、請求項1および請求項10において請求されているような、プラットホームへと向かう操作でもってドライバを支援することができるか、または確保されたレーンを移動している間にドライバを支援することができる、車両のための運転支援システムおよび運転支援方法を提案する。一連の従属請求項には、本発明のその他の利点が記載されている。
【0004】
本発明は、例えばプラットホームに横付けする際に、または確保されたレーン上を車両が走行している間に、車両の運転でもってドライバを支援するように構成されている、車両のための運転支援システムに関する。このシステムは、以下の構成要素を備える:
・特にレーン上に設けられているインフラストラクチャに基づいて、例えば路面インフラストラクチャに基づいて、車両のための経路を決定することができる経路決定装置。経路決定装置は、例えば、上記のインフラストラクチャが設けられており、かつその上における車両の走行が予定されている車線の画像を取得するために車両の前方に設置されるように構成されているカメラを有しており、また特に車両のための経路を、特にレーンの画像に由来する、例えば路面マーキングに由来するインフラストラクチャの識別子に基づいて決定することができる。
・車両の運転時にドライバを支援するための自律運転装置。自律運転装置は、決定装置によって決定することができる経路に応じて、かつ経路に従って車両を操舵するために、車両を自動的かつ自律的に(すなわちドライバの介入なく、例えば車両のステアリングホイールへのドライバの介入なく)運転することができる。
運転支援システムは、ドライバが車両を運転する、車両のマニュアル運転モードから、自律運転装置がドライバの介入なく車両を運転する、車両のオートマチック運転モードへと漸進的に移行するために、特に車両の速度V(t)に応じて、および/または車両が上記経路に従っていた場合に時点tにおいて車両が取るべき最適な位置と、時点tにおける車両の「実際の」位置と、の偏差E(t)に応じて、操舵制御を漸進的に引き継ぐように構成されていることを特徴としている。特に、自律運転装置は、オートマチック運転モードからマニュアル運転モードへと漸進的に移行するために、とりわけ時点tにおける車両の速度V(t)、および/または所定の経路と車両が実際に従った経路との偏差E(t)に応じて、車両の操舵制御をドライバに漸進的に委ねる(または引き渡す)ように構成されている。
【0005】
実際には、本発明によれば、自律運転装置は特に、車両の速度V(t)を特にリアルタイムで決定することができ、速度V(t)に応じて、車両の操舵の制御を漸進的に引き継ぐことができるか、またそれとは逆に、車両の制御を漸進的に引き渡すことができる。すなわち、その速度を上回ると、自律運転装置からの支援を受けることなく、ドライバが車両の運転を開始する速度V3(それ以降、車両はマニュアル運転モードになる)と、その速度を下回ると自律運転装置がドライバの介入なく車両の運転を開始する速度V1(それ以降、車両はオートマチック運転モードになり、運転が自動化される)と、の間の速度(ただしV1<V3)において、車両の運転でもって漸進的に支援するための車両の誘導の制御を、漸進的に引き継ぐことができるか、またそれとは逆に、車両の制御を漸進的に引き渡すことができる。したがって、速度V3よりも速い速度V(t)では、車両がドライバによって100%運転および操作され、それに対し速度V1よりも遅い速度V(t)では、車両が自律運転装置によって100%運転および操作される。V3からV1へと低減する速度Vに関して、自律運転装置は、自律運転装置による車両の操舵の制御を速度V3における0%から速度V1における100%まで漸進的に移行させて、車両の操舵の制御を漸進的に担うように、またそれとは逆に、オートマチック運転モードからマニュアル運転モードへの遷移の間に漸進的に移行させて、車両の操舵の制御を漸進的に引き渡すように構成されている。したがって、本発明によれば、V1以下の速度に関するオートマチック運転から、V3以上の速度に関するマニュアル運転(すなわち、支援なし)までの、またそれとは逆に、V3以上の速度に関するマニュアル運転から、V1以下の速度に関するオートマチック運転までの漸進的な遷移を実現するために、自律運転装置が部分的な運転支援を提供するV1とV3との間の速度V2、例えばV2∈]V1,V3[、(この場合、車両は支援運転モードにある)が存在する。V1は、有利にはV3とは異なる。特に、速度V1およびV3は、自律運転装置のデータベースにおいて予め規定されている。
【0006】
同様に、自律運転装置は特に、時点tにおける車両の実際の位置(例えば車軸の、その長手方向端部に対して相対的な中心位置)と、車両がレーンに設けられているインフラストラクチャによって規定された経路に従った場合に、時点tにおいて車両が取るべき最適な位置と、の偏差E(t)を決定することができ、また偏差E(t)に依存して、車両の操舵の制御を漸進的に引き継ぐことができるか、またはそれとは逆に、車両の制御を漸進的に引き渡すことができる、すなわち、その偏差を下回ると、ドライバが自律運転装置によって提供される支援を一切受けずに車両の運転を開始する偏差E1(それ以降、車両はマニュアル運転モードになる)と、その偏差を上回ると、自律運転装置がドライバの介入なく車両の運転を開始する偏差E3(したがって車両はオートマチック運転モードになり、運転が自動化される)と、の間で、車両の運転を漸進的に支援するための、特にドライバを支援して偏差E(t)がE1以下になるように(ただしE1<E3)偏差E(t)の値を低減するための車両の誘導の制御を漸進的に引き継ぐことができるか、または漸進的に引き渡すことができる。したがって、E3よりも大きい偏差E(t)では、車両が自律運転装置によって100%運転および操作され、それに対しE1よりも小さい偏差E(t)では、車両がドライバによって100%運転および操作される。E3からE1へと低減する偏差E(t)に関して、自律運転装置は、自律運転装置による車両の操舵の制御を、E3以上の偏差の場合の100%からE1以下の偏差の場合の0%まで漸進的に移行させて、車両の操舵の制御を漸進的に引き渡すように、またそれとは逆に、マニュアル運転モードからオートマチック運転モードへの遷移の間に漸進的に移行させて、車両の操舵の制御を漸進的に担うように、構成されている。したがって、本発明によれば、E3以上の偏差E(t)に関するオートマチック運転から、E1以下の偏差E(t)に関するマニュアル運転(すなわち、支援なし)までの、またそれとは逆に、E1以下の偏差E(t)に関するマニュアル運転から、E3以上の偏差E(t)に関するオートマチック運転までの漸進的な遷移を実現するために、自律運転装置が部分的な運転支援を提供するE1とE3との間の偏差E2、例えばE2∈]E1,E3[(この場合、車両は支援運転モードにある)が存在する。E1は、有利にはE3とは異なる。特に、偏差E1およびE3は、自律運転装置のデータベースにおいて予め規定されている。
【0007】
したがって、自律運転装置は、車両の速度V(t)および/または車両に関する偏差E(t)を決定することができ、また速度V(t)および/または偏差E(t)に応じて、車両の操舵の制御を漸進的に引き継ぐことができるか、またはそれとは逆に、車両の制御を漸進的に引き渡すことができる。
【0008】
特に、本発明による自律運転装置は、車両のための操舵制御システムを有しており、この操舵制御システムは、例えば経路決定装置を用いて決定された経路に従って車両を操舵するために、車軸のステアリングシャフトにトルクを加えることによって、車両の車軸の向きを制御するように構成されている。操舵制御システムは、特に、トルクを車軸に加えるために車軸に向けられているステアリングシャフトまたはステアリングカラムに機械的に連結されており、かつ少なくとも100%の大きさのトルクがステアリングシャフトに加えられる場合にのみ、車軸を方向付けるように構成されている。制御システムによる100%未満の大きさのトルクの印加は、車軸の向きを制御にするには不十分である。特に、車両の操舵制御システムは、当業者には公知であるパワーステアリングシステムと直列に動作し、車両の操舵制御システムは、特に、パワーステアリングシステムを制御することができる。自律運転装置による操舵制御システムの制御によって、自律運転装置は、オートマチック運転モードとマニュアル運転モードとの間の遷移を処理することができる。実際には、自律運転装置は特に、経路に従って車両を操舵するために、車両の速度V(t)および経路決定装置による経路の決定、および/または偏差E(t)に応じて、操舵制御システムによって、車両の車軸の向きを制御する車両のステアリングシャフトに加えることができるトルクの大きさを決定および制御するように構成されており、車両のステアリングシャフトへトルクを加えることによって、車両の操舵のための、例えば車両のステアリングホイールを回転させるためのドライバの労力を、V1を下回る速度および/またはE3を上回る偏差に関しては完全に、またはV1とV3との間の速度および/またはE1とE3との間の偏差に関しては部分的に低減することができる。
【0009】
実際には、本発明によれば、自律運転装置は特に、時点tにおいて測定または決定された車両の速度V(t)を、速度V1および速度V3と比較し、車両の速度V(t)に応じて、また経路の決定に依存して、トルク付加のレベルT
Vを計算することができる:
・レベルT
Vは、V3以上の速度では、および/または、経路決定装置によって経路を特定できないかつ/または決定できない場合には、0%である。すなわち、自律運転装置は、車両の操舵を制御するためにステアリングシャフトに与えることができるトルクの量の0%がV3以上の速度に対して適用されるように、操舵制御システムを制御する。この場合、車両を操舵するためのドライバの労力は低減されず、車両はドライバによって運転される。これはマニュアル運転モードである。
・レベルT
Vは、V1以下の速度では、また経路決定装置によって経路が決定されているという条件のもとで、100%である。すなわち、自律運転装置は、ステアリングシャフトに与えることができるトルクの量の100%がV1以下の速度に対して適用されるように、操舵制御システムを制御する。この場合、車両を操舵するための、例えばステアリングホイールに対するドライバの労力は完全に低減される。すなわち、労力は存在せず、車両は自律運転装置によって運転され、ドライバは車両を運転するためにもはや労力を一切必要としない。これはオートマチック運転モードである。
・レベルT
Vは、速度V(t)に応じて変化し、0%から100%までの値を取り、例えばV3−ΔVからV1+ΔV(ただし、ΔVは、(V3−V1)/2を下回る正の速度である)まで低減する速度に関しては0%から100%まで連続的に上昇する値を取る。したがって、レベルT
Vは、経路決定装置によって経路が決定されており、かつ車両の速度V(t)がV1とV3の間にある場合には、可変であり、またトルクの大きさを速度V1とV3との間では変更することができる。換言すれば、]V1+ΔV,V3−ΔV[の範囲における速度V2に関しては、レベルT
Vは、[0,100]の範囲の、有利には]0,100[の範囲のパーセンテージになる。すなわち、自律運転装置は、ステアリングシャフトに与えることができる上記パーセンテージの量のトルクがステアリングシャフトに加えられるように、操舵制御システムを制御する。この場合、車両を操舵するためのドライバの労力は、レベルT
Vに等しいパーセンテージ分だけ部分的に低減され、また車両は、自律運転装置によって支援されたドライバによって運転される。したがって、車両を運転するためのドライバの労力は、レベルT
Vに応じて決定される。これは、速度に応じた支援運転モードである。本発明の1つの特別な実施の形態においては、ΔV=0である。
【0010】
自律運転装置は、好適には、経路がインフラストラクチャから特定されている場合に、時間tの関数として、車両の実際の位置と、経路決定装置によって決定された経路によって規定されている最適な位置との偏差E(t)を、特にリアルタイムで決定し、時点tにおいて車両に関して規定された偏差E(t)を、偏差E1および偏差E3と比較し、偏差E(t)に応じて、トルク付加のレベルT
Eを計算することができる:
・レベルT
Eは、E1以下の偏差では、および/または、経路決定装置によって経路を特定できないかつ/または決定できない場合には、0%である。すなわち、自律運転装置は、車両の操舵を制御するためにステアリングシャフトに与えることができるトルクの量の0%がE1以下の偏差に対して適用されるように、操舵制御システムを制御する。この場合、車両を操舵するためのドライバの労力は低減されず、車両はドライバによって運転される。これはマニュアル運転モードである。
・レベルT
Eは、E3以上の偏差では、また経路決定装置によって経路が決定されているという条件のもとで、100%である。すなわち自律運転装置は、ステアリングシャフトに与えることができるトルクの量の100%がE3以上の偏差に対して適用されるように、操舵制御システムを制御する。この場合、車両を操舵するための、例えばステアリングホイールに対するドライバの労力は完全に低減される。すなわち、労力は存在せず、したがって車両は自律運転装置によって運転され、ドライバは車両を運転するためにもはや労力を一切必要としない。これはオートマチック運転モードである。
・レベルT
Eは、偏差E(t)に応じて変化し、0%から100%までの値を取り、例えばE1+ΔEからE3−ΔE(ただし、ΔEは、(E3−E1)/2を下回る正の偏差である)まで増大する偏差E(t)に関しては0%から100%まで連続的に上昇する値を取る。したがって、レベルT
Eは、偏差E(t)が時点tにおいてE1とE3との間の値を取り、かつ経路が経路決定装置によって決定されている場合には、可変であり、またステアリングシャフトに加えられるトルクの量を変更することができる。換言すれば、]E1+ΔE,E3−ΔE[の範囲における偏差E2に関しては、レベルT
Eは、[0,100]の範囲の、有利には]0,100[の範囲のパーセンテージになる。すなわち、自律運転装置は、ステアリングシャフトに与えることができるパーセンテージの量のトルクがステアリングシャフトに加えられるように操舵制御システムを制御する。この場合、車両を操舵するためのドライバの労力は、レベルT
Eに等しいパーセンテージ分だけ部分的に低減され、したがって、車両は、自律運転装置によって支援されたドライバによって運転される。車両の運転のためのドライバの労力は、レベルT
Eに応じて決定される。これは、車線のインフラストラクチャによって予め規定されている経路に関する偏差に応じた、支援運転モードである。本発明の1つの特別な実施の形態においては、ΔE=0である。
【0011】
また好適かつ有利には、自律運転装置は、全体のレベルT
GをレベルT
VおよびT
Eに応じて決定するように構成されている。例えば、T
G=(T
E+T
V)/2、またはT
G=(T
E・T
V)、またはT
G=max.(T
E,T
V)(すなわちT
E>T
Vの場合にはT
G=T
E、それ以外ではT
G=T
V)。各レベルは、自律運転装置による偏差E(t)および速度V(t)の時点tにおける決定に応じたパーセンテージで表される。全体のレベルは、特に毎回自動的に決定され、またレベルT
VおよびレベルT
Eは、同じ時点tに決定される。全体のレベルが決定されると、全体のレベルの値に等しい量のパーセンテージのトルクがステアリングシャフトに加えられる。場合によっては、レベルT
VまたはT
Eのいずれか一方だけが決定され、レベルT
VまたはT
Eそれぞれの値に等しい量のパーセンテージのトルクがステアリングシャフトに加えられる。
【0012】
また本発明は、上記において説明した運転支援システムを用いて車両のドライバを支援するための方法に関し、この方法は、車両の運転に関してドライバを支援するように構成されており:
・自律運転装置によって車両の速度を決定するステップと、
・経路決定装置によって車両の経路を決定するステップと、
・時点tにおいて、経路決定装置によって経路が決定されており、かつ前回に決定された車両の速度が所定の速度V1以下であり、および/または、自律運転装置によって決定することができる、経路によって規定されている車両の最適な位置と、すなわち時点tにおいて車両が経路に従っていた場合の位置と、時点tにおける車両の実際の位置と、の偏差E(t)が所定の偏差E1以上である場合に、自律運転装置を用いて車両を自動的かつ自律的に運転するステップであって、自動的な運転は、ドライバの介入なく経路に従って車両を操舵または誘導するための、経路に従った自律運転装置による操舵制御システムの制御を含む、ステップと、
・時点tにおいて、経路決定装置によって経路が決定されており、かつ前回に決定された車両の速度V(t)がV1とV3との間であり、および/または、前回に決定された偏差E(t)がE1とE3との間である場合に、自律運転装置によって支援運転するステップであって、支援運転は、ステアリングシャフトに加えられるトルクの量を制御するための、速度V(t)および/または偏差E(t)に応じた車両のステアリングシャフトへのトルク付加の少なくとも1つのレベルの決定と、経路に従った車両の操舵または誘導でもって車両の運転中のドライバの労力を低減することによってドライバを支援するための、経路およびレベルに応じた自律運転装置による操舵制御システムの制御と、を含む、ステップと、
・車両の速度Vが所定の速度V3を上回った場合、および/または経路決定装置によって経路が決定できなかった場合、および/または偏差E(t)が所定の偏差E1を下回った場合に、即座にマニュアル運転するステップ、すなわち自律運転装置による操舵制御システムの支援または制御なしで運転するステップと、
を含む。
【0013】
本発明をより良く理解するために、添付の図面を参照しながら、実施の形態および用途を下記において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】プラットホームに横付けするための操作が行われる車両に提供される、本発明による運転支援システムの一実施形態を示す。
【
図2】確保されている車線上を走行する車両に提供される、本発明による運転支援システムの一実施形態を示す。
【
図3】本発明による自律運転装置によって提供される、運転支援レベルT
Vの適用の漸進的な変化を示す。
【
図4】本発明による自律運転装置によって提供される、運転支援レベルT
Eの適用の漸進的な変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、プラットホーム12に横付けされた、本発明による運転支援システムが設けられている車両1が概略的に示されている。運転支援システムは、以下の構成要素を備える:
・車両1のための経路決定装置2。経路決定装置2は、例えば、所定の経路に従って車両1を誘導するための路面インフラストラクチャが設けられている車線の画像を取得するように構成されている、カメラ21のような光学システムを有している。インフラストラクチャは、例えば、路面に設けられているマーキング、境界標、または経路決定装置によって経路を決定することができるその他の任意の要素、例えば路面に塗装された線11から成るものである。経路決定装置は、路面インフラストラクチャから、車両のための経路を決定することができる。
・経路に従って車両1を自律的に運転および誘導することができる自律運転装置3。自律運転装置3は、経路決定装置によって決定された経路に関する情報を交換するために、経路決定装置2と接続されている。自律運転装置3を、操舵制御システム4に接続することもでき、それによって、操舵制御システムから車両のステアリングシャフトに加えることができるトルクの量を制御することができる。トルクの量の制御は、車両の操舵を制御することによる、例えば車軸41を制御することによる操舵のために、すなわち車両の運転のために車両のドライバが要する労力の低減または増大を可能にする。特に、自律運転装置は、車両に関する速度V(t)も、車両の現実の位置、例えば車両の車軸の中心の位置と、経路によって規定されている最適な位置と、の間の偏差E(t)も決定することができる。
本発明は、自律運転装置3が、特に、その速度を上回るとドライバがマニュアルでの車両の運転を開始する速度V3(
図3を参照されたい)に等しい速度V(t)から、その速度を下回ると自律運転装置3がドライバの介入なく車両の運転を開始する速度V1に等しい速度V(t)までは、車両1の操舵の制御を漸進的に担い、またそれとは逆に、速度V1に等しい速度V(t)から速度V3に等しい速度V(t)までは、車両1の操舵の制御をドライバに漸進的に委ね、および/または、その偏差を下回るとドライバがマニュアルでの車両の運転を開始する偏差E1(
図4を参照されたい)に等しい偏差E(t)から、その偏差を上回ると自律運転装置3がドライバの介入なく車両の運転を開始する偏差E3に等しい偏差E(t)までは、車両1の操舵の制御を漸進的に担い、またそれとは逆に、E3に等しい偏差E(t)からE1に等しい偏差E(t)までは、車両1の操舵の制御をドライバに漸進的に委ねるように、自律運転装置3が構成されていることを特徴とする。
【0016】
換言すれば、本発明による自律運転装置3は、例えば速度V(t)および/または偏差E(t)に依存した、支援運転モードを介して遷移する、完全なオートマチック運転モードからマニュアル運転モードへの、また反対にマニュアル運転モードから完全なオートマチック運転モードへの漸進的な切替を可能にする。支援運転モードにおいては、自律運転装置が、車両を誘導するために操舵制御システム4によって車両のステアリングシャフトに加えられるトルクの量を制御することによる、車両の操舵に関する支援をドライバに提供する。
【0017】
図2には、本発明による運転支援システムが設けられており、また特に路面に塗装された線11から成る路面インフラストラクチャによって画定された、確保されている車線上を走行している、
図1に示したものと同じ車両が示されている。有利には、本発明による運転支援システムの自律運転装置3は、場合によっては、時点tにおける車両の速度V(t)がV1を下回り、かつ経路決定装置2によって経路が決定されていない場合の車両のマニュアル運転モードから、時点t+Δt(ただしΔt>0)において速度V(t+Δt)が依然としてV1を下回るが、経路決定装置2が車両のための経路を決定した場合の車両のオートマチック運転モードに漸進的に移行するために、特に操舵の制御を漸進的に引き継ぐか、または操舵の制御を漸進的に引き渡すように構成されている。
【0018】
また本発明による運転支援システムの自律運転装置3は、時点tにおける車両の速度V(t)がV1を下回り、かつ経路決定装置2によって経路が決定されている場合の車両のオートマチック運転モードから、時点t+Δt(ただしΔt>0)において速度V(t+Δt)が依然としてV1を下回るが、経路決定装置2が時点t+Δtにおける車両のための経路を決定することができない場合の車両のマニュアル運転モードに漸進的に移行するために、特に操舵の制御を漸進的に引き渡すように構成されている。
【0019】
特に、マニュアル運転モードから支援運転モードへと遷移させるときに、時点tにおいて速度V(t)がV1とV3の間にあって、経路決定装置によって経路が決定されておらず、かつ時点t+Δtにおいて速度V(t+Δt)が依然としてV1とV3との間にあって、経路決定装置2が車両のための経路を決定した場合に、または支援運転モードからマニュアル運転モードへと遷移させるときに、時点tにおいて速度V(t)がV1とV3の間にあって、経路決定装置によって経路が決定されており、かつ時点t+Δtにおいて速度V(t+Δt)が依然としてV1とV3との間にあるが、しかしながら経路決定装置2が時点t+Δtにおける車両のための経路を決定することができない場合に、マニュアル運転モードから支援運転モードへの遷移に関して、またそれとは逆に、支援運転モードからマニュアル運転モードへの遷移に関して、操舵制御の漸進的な引き継ぎ、または操舵制御を漸進的に引き渡すための能力を、場合によっては、自律運転装置3によって実現することができる。
【0020】
図3のグラフには、パーセンテージで表されているトルク付加のレベルT
Vと、m/sで表されている車両1の速度V(t)との関係を表す、V(t)=0からV(t)=V
max(すなわち、車両1が達成可能な最大速度)まで延びる曲線Cが示されている。レベルT
Vが100%である場合、すなわちV1を下回る速度の場合、100%のトルクがステアリングシャフトに加えられ、したがってドライバの介入なく、自律運転装置によるオートマチック運転が実現される。レベルT
Vが0%である場合、すなわちV3を上回る速度の場合、0%のトルクがステアリングシャフトに加えられるので、車両1は、車両を誘導するための、または車両の運転でもってドライバを支援するための自律運転装置3の介入なく、ドライバのみによって運転される。自律運転装置は、経路が経路決定装置2によって決定されている場合に、100%に等しいレベルT
VをV1以下の速度V(t)に対して適用し、経路が決定されているか否かにかかわらず、0%に等しいレベルT
VをV3以上の速度V(t)に対して適用するように、操舵制御システム4を制御するように構成されている。
【0021】
V1からV3までのいずれかの速度V(t)に関して、自律運転装置3は、操舵制御システム4を用いて車両の操舵を漸進的に制御することによって、車両1の運転を連続的かつ漸進的に支援することができるようにするために、速度V(t)に応じて適用されるべき決定のレベルT
Vを計算するように構成されている。特に、レベルT
Vは次式に従い計算される:
【数1】
ここで、ΔVは0以上の速度であり、V1は所定の下側の閾値速度であり、V3は所定の上側の閾値速度であり、またV(t)は時点tにおける車両の速度である。好適には、また都市部の経路に関しては、V1は典型的には9.7m/sから12.5m/sであり、V3は典型的には11.1m/sから13.9m/sである(ただしV1<V3)。好適には、また都市間の経路に関しては、V1は典型的には17m/sから19m/sであり、V3は典型的には22m/sから25m/sである。本発明の特別な実施の形態においては、速度V1が0に等しくてよく、また速度V3がV
maxに等しくてよい。本発明の別の特別なケースにおいては、V1がV3に等しくてよい。有利なことに、ΔVは、速度V1および速度V3の閾値付近の不感帯を規定することによって、それらの閾値付近においてシステムを安定化させることができる。
【0022】
図4には、パーセンテージで表されているレベルT
Eと、cmで表されている偏差E(t)との関係を表す曲線Fが示されている。レベルT
Eが100%である場合、すなわちE3を上回る偏差E(t)の場合、100%のトルクがステアリングシャフトに加えられ、したがってドライバの介入なく、自律運転装置によるオートマチック運転が実現される。レベルT
Eが0%である場合、すなわちE1を下回る偏差の場合、0%のトルクがステアリングシャフトに加えられるので、車両1は、車両を誘導するための、または車両の運転でもってドライバを支援するための自律運転装置3の介入なく、ドライバのみによって運転される。自律運転装置は、経路が経路決定装置2によって決定されている場合に、100%に等しいレベルT
EをE3以上の偏差E(t)に対して適用し、E1以下の偏差E(t)に対して、または経路が決定されていない場合に、0%に等しいレベルT
Eを適用するように、操舵制御システム4を制御するように構成されている
【0023】
E1からE3までのいずれかの偏差E(t)に関して、自律運転装置3は、操舵制御システム4を用いて車両の操舵を漸進的に制御することによって、車両1の運転を連続的かつ漸進的に支援することができるようにするために、偏差E(t)に応じて適用されるべき決定のレベルT
Eを計算するように構成されている。特に、レベルT
Eは次式に従い計算される:
【数2】
ここで、ΔEは0以上の偏差であり、E1は所定の下側の閾値偏差であり、E3は所定の上側の閾値偏差であり、またE(t)は時点tにおける車両の位置(例えば、車軸の中心位置)と、車両が上記の経路を辿っていた場合に、時点tにおいて車両が取るべき最適な位置(例えば、車軸の中心が取るべき最適な位置)と、の偏差である。好適には、E1は典型的には8cmから12cmであり、好適には10cmであり、またE3は典型的には18cmから22cmであり、典型的には20cmである。有利なことに、ΔEは、偏差E1および偏差E3の閾値付近の不感帯を規定することによって、それらの閾値付近においてシステムを安定化させることができる。
【0024】
要約すると、本発明は、車両を操舵するために車両のステアリングシャフトに加えるべきトルクの量を制御することによって、自律運転装置が車両の運転を漸進的に引き継ぎ、この引き継ぎは、閾値速度V3を上回っている場合および/または閾値偏差E1を下回っている場合には、車両がマニュアルモードで運転され、閾値速度V1を下回っている場合および/または閾値偏差E3を上回っている場合には、車両が完全にオートマチックモードで運転され、また閾値速度V1からV3までの間および/または閾値偏差E1からE3までの間には、マニュアル運転モードからオートマチック運転モードへと漸進的に移行するために、またはオートマチック運転モードからマニュアル運転モードへと漸進的に移行するために、自律運転装置によって提供される支援が漸進的であるように行われる。したがって、自律運転装置によって提供される支援は可変であり、また時点tにおける車両の速度V(t)および/または偏差E(t)の程度に依存する。
【0025】
したがって、本発明による運転支援システムの自律運転装置は副操縦士のように機能し、自律運転装置は、ドライバによって付加可能なトルクに並行して、それと同時にトルクをステアリングシャフトに、または換言すればステアリングカラムに加える(同時的なアクション)ように構成されており、操舵制御システムによって形成されるトルクのパーセンテージは、時点tにおける車両の速度V(t)および/または偏差E(t)に応じて、0%から100%まで変化し、100%のトルクが加えられる場合には、操舵制御システムによって操舵が完全に制御され、すなわちトルクの量が100%に等しい場合には、操舵制御システムは独立的かつ自律的に(すなわちドライバの介入なく)ステアリングシャフトを操舵することができ、それに対し、加えられるトルクレベルが100%未満である場合には、ステアリングシャフトに加えられるトルクは、車軸の向きを制御するには不十分であり、したがってドライバによって提供される付加的な労力(またはトルク)が必要になる。0からV
maxまでの全ての速度に関して、自律運転装置は、経路決定装置によって決定された経路に関する偏差を含まずに、車両の自律的な運転を提供するために、ステアリングシャフトまたはステアリングカラムに加えるべき最適なトルクを決定するように構成されており、この場合、トルクは上記において規定したようなレベルT
Vによって重み付けされている。したがって、操舵制御システムは、ドライバによる労力に並行してトルクをステアリングシャフトに付加できることから、ドライバによってステアリングカラムに加えられるトルクに対して直列に(増幅器として)動作する車両のパワーステアリングシステムとは異なる。