(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の固形燃料の製造方法、及び固形燃料の実施の形態を詳説する。
【0017】
<固形燃料の製造方法>
本発明の固形燃料の製造方法は、
バイオマスにバインダーを混合する工程、
バイオマスをバインダーと共に成型する工程、及び
バイオマスを含む成型物を焙焼する工程を含む。
【0018】
当該製造方法によれば、焙焼工程において、既に成型されている状態の(ペレット状の)バイオマスを焙焼するため、焙焼後はそのまま固形燃料として使用可能な成型物を得ることができる。一般的に、焙焼後のバイオマスは、水分量が少ないこと等から成型性が悪化する傾向がある。しかし、当該製造方法は、バイオマス及び水分を含んだ状態で予め成型してから、この成型物を焙焼するため、固形燃料の成型性を向上させることができる。これにより、所望する形状や密度等に成型が可能となるため、ボイラーの種類等の要求に応じた固形燃料を容易に得ることができる。また、当該製造方法によれば、このように予め成型されたバイオマスを焙焼するため、焙焼工程において成型物中の水分が蒸発したり、有機物が分解したりすることによって得られる固形燃料が多孔質状になる。その結果、石炭と混合する際の粉砕性や石炭との均一な混合性を高めることができる。
【0019】
従って、当該製造方法によれば、成型性及び粉砕性、石炭等との均一な混合性が良好な、焙焼されたバイオマスを含む固形燃料を得ることができる。なお、粉体燃料を用いる燃焼装置(ボイラー等)は、重油等の液体燃料や天然ガス等の気体燃料を用いるボイラー等に比べて負荷追従性が低い。よって、燃料の発熱量を限りなく均一化することが、燃焼装置の燃焼安定性の向上につながる。また、粉砕性に優れる当該固形燃料を用いることで、石炭とより均一に混合することができ、ひいては燃料の発熱量を均一化することができるため、燃焼装置の燃焼安定性を効果的に高めることができる。以下、各工程について詳説する。
【0020】
(混合工程及び成型工程)
本工程では、バイオマスにバインダーを混合し、次いで固形燃料の原料となるバイオマスを成型し、成型物を得る。このように先に成型工程を設けることで上述のようにバイオマスの成形性が向上するため、所望の形状、密度、硬さ等に調整することが容易となる。その結果、得られる固形燃料の取扱性や粉砕性を高めることができる。
【0021】
バイオマスとは、化石燃料以外の生物由来の資源をいい、間伐材、剪定枝、廃材、樹皮チップ、その他の木材、竹、草、やし殻、パームオイル残渣、野菜、果実、食品残渣、製紙スラッジ、汚泥等を挙げることができる。これらのバイオマスの中でも、間伐材、剪定枝、廃材、樹皮チップ、その他の木材等の木質系バイオマスが所謂灰分の含有量が少なく好ましく、樹皮チップが資源の有効活用の面からより好ましい。このような材料を用いることで、製紙工程において十分に活用されていなかった資源の有効活用を図ることができる。樹脂チップとしては、特に限定されず、例えば杉、松、檜、ラワン、チーク等から得られるものが挙げられる。
【0022】
バイオマスの総発熱量は、特に限定されず、通常11MJ/kg以上30MJ/kg以下、好ましくは13MJ/kg以上28MJ/kg以下である。バイオマスの総発熱量を上記範囲内とすることで、固形燃料の成型性及び粉砕性に加えて、燃焼性も高められる傾向がある。総発熱量が上記上限を超えると、焙焼に製造コストが多く必要となる場合がある。逆に、総発熱量が上記下限未満であると、固形燃料の燃焼性が低下する場合がある。
【0023】
混合工程においては、バイオマスを予めバインダーと混合する。バインダーを用いることで、成型性が高まると共に、得られる成型物の密度や強度を例えば焙焼後に混合する他の混合燃料との併用が良好な状態となり、石炭と混合する際の粉砕性をより高めることができる。また、当該製造方法はバインダーを用いて成型した後に焙焼工程を有するためバインダー自体も焙焼される。これにより固形燃料に含まれる水分及び有機物がより低減されるため、固形燃料の保存性や取扱性を向上させることができる。
【0024】
上記バインダーとしては、特に限定されず、例えば澱粉、リグニン等が挙げられる。バインダーとして純粋なリグニンを用いることもできるが、リグニンを含む黒液をリグニンの代用として用いることができる。黒液とは、木材チップ等からパルプを作る工程において、木材チップ等が化学的に分解・分離する際に発生する黒又は褐色の液体であり、成分は主にリグニン、樹脂成分及び薬品(蒸解剤等)である。上記黒液は約100℃以下になると固まる性質を有するため、固形燃料のバインダーとして好適に用いることができる。このような黒液をバインダーとして用いることにより、上記効果をより高めることができるとともに、製紙産業における資源の有効利用をより効果的に図ることができる。
【0025】
上記澱粉としては、グラフト化澱粉、リン酸エステル化澱粉、カチオン化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、カルボキシル澱粉、酢酸澱粉等の各種加工澱粉、コーンスターチ等が挙げられ、これらを一種又は二種以上を混合して用いることができる。特に好ましくは、安価で糊化温度が高い穀類澱粉、特にコーンスターチが押出成形時の高温での糊化と澱粉粒子が他の澱粉と比べ比較的小粒径で粘性が低いため、焙焼されたバイオマスとの混合に好ましい。上記バインダーは一種又は二種以上を混合して用いることができる。
【0026】
上記リグニンを含む黒液としては、クラフトパルプ製造工場の副産物である黒液が用いられ、針葉樹クラフトパルプ製造工程にて得られる針葉樹クラフトパルプ系の黒液、広葉樹クラフトパルプ系の黒液が挙げられ、これらを一種又は二種以上を混合して用いることができる。
【0027】
特に、クラフトパルプ蒸解工程における歩留り向上剤として添加されているアンスラキノン系パルプ歩留向上剤(環状ケト化合物)を含む黒液は、焙焼されたバイオマスの成形に有効であり、理由は明確ではないがアンスラキノン系パルプ歩留向上剤にて脱リグニンが促進され黒液中のリグニン含有量が多いためと推測される。クラフトパルプ蒸解工程における歩留り向上剤として添加されているアンスラキノン系パルプ歩留向上剤(環状ケト化合物)を含む黒液は、焙焼されたバイオマスの成形に有効であり、理由は明確ではないがアンスラキノン系パルプ歩留向上剤にて脱リグニンが促進され黒液中のリグニン含有量が多いためと推測される。
【0028】
上記黒液の種類としては、例えば蒸解に使用した直後の黒液や濃縮処理を施した黒液等が挙げられるが、これらのなかでも蒸解直後の比較的粘度が低い黒液が好ましく、L材(広葉樹)と比べ比較的リグニン含有量が多いN材(針葉樹)をKP蒸解して得られる針葉樹クラフトパルプ系の黒液がより好ましい。
【0029】
パルプの製造工程において得られる黒液は、固形分濃度が低いため、通常、濃縮して用いられる。濃縮後の黒液の固形分濃度としては、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上90質量%以下がさらに好ましい。濃縮後の黒液の固形分濃度が上記下限未満の場合、バインダーとしての効果が十分に得られず、バイオマス等を十分に成型できない場合がある。逆に、濃縮後の黒液の固形分濃度が上記上限を超えると、粘度及び沸点が上昇し、バイオマス等への均一な添加が困難となったり、バインダーとしての効果が十分に得られなかったりする場合がある。
【0030】
黒液濃度は、特に限定されず、通常1質量%以上60質量%以下、好ましくは2質量%以上55質量%以下である。黒液固形分中のリグニン含有量も、特に限定されず、通常1質量%以上50質量%以下、好ましくは2質量%以上40質量%以下である。黒液に含まれる液体としては、特に限定されず、例えば水、少量の水溶性有機溶媒を含む水溶液等が挙げられる。
【0031】
バインダーとして、リグニンを含む黒液を用いた場合の添加量としては、特に制限されないが、固形分換算で、バイオマス100質量部に対して0.01質量部以上30質量部以下が好ましく、1質量部以上25質量部以下がより好ましい。バインダーの添加量が上記下限未満の場合、バインダーとしての効果が十分に得られず、バイオマス等を十分に成型できない場合がある。逆に、バインダーの添加量が上記上限を超えると、得られる固形燃料が硬くなり過ぎ、石炭と混合する際の粉砕性が低下するおそれ等がある。
【0032】
また、上記バイオマスには、本発明の目的を損なわない範囲において、上記バイオマス及びバインダー以外に、その他の原料を加えることができる。その他の原料としては、例えば抄紙工程で排出される古紙パルプ由来の脱墨フロスや製紙スラッジ等が挙げられるが、これらのなかでも古紙パルプ由来の脱墨フロスが製紙スラッジの様に含有成分の変動が少なく比較的成分が安定しているため品質の安定化の面で好ましい。このようにその他の原料を加えることにより、得られる固形燃料の成型性や密度等を容易に調整することができる。
【0033】
成型工程に供されるバイオマス等の混合物の水分量としては、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましい。このようにバイオマス等の混合物中に上記範囲の水分を含有させておくことで、成形性が高まる。
【0034】
バイオマスを成型する装置としては、特に限定されないが、押出成型機、造粒成型機等が挙げられ、押出成型機が好ましい。このように成型を押出成型により行うことで、バイオマスやバインダーに含まれるリグニン等の樹脂成分が押出の際の加熱・加圧により溶融し、バイオマス同士を結着させることができるため成型性を高めることができる。また、押出成型機を用いることで密度を高めることができるため、石炭に近い密度への成型物の調製が容易となり、石炭と混合する際の均一化を高めることができる。
【0035】
押出成型機を用いて成型を行う際の加熱温度としては、80℃以上200℃以下が好ましく、100℃以上150℃以下がより好ましい。バイオマスには、リグニン等の樹脂成分やヘミセルロースが含まれる。リグニンの軟化点は約150℃、ヘミセルロースの軟化点は約180℃とされている。そのため、例えば200℃を超える高温での成型は、リグニン以外にヘミセルロースまでが軟化してしまい、再度硬化することでバインダーとしての役割を果たし、成型物の強度を必要以上に高めてしまうため、粉砕性が低下するおそれがある。そこで、このように200℃以下、より好ましくは150℃以下で成型することで、主にリグニンのみがバインダーとしての役割を果たし、比較的密度が高くかつ脆い状態の成型物を得ることができ、石炭と共に容易に粉砕することができる。また、所定温度以上に加熱して成型することで、バイオマス中の水分が成型の際に蒸発し、得られる成型物の多孔質性を高めることができ、結果として、当該固形燃料の粉砕性を高めることができる。
【0036】
本発明の固形燃料の製造方法においては、後述する焙焼工程よりも前に上記成型工程によってバイオマスを予め成型することで、得られる固形燃料を所望の形状、密度、硬さ等へ調整し易くなり、後述する焙焼工程での取り扱い性や作業効率性を向上させることができる。また、バイオマスを予め成型することで、成型物の表面を極度に焙焼させることができ、その結果、得られる固形燃料の粉砕性を向上させることができる。
【0037】
(焙焼工程)
本工程では、バイオマスを含む成型物を焙焼する。上記焙焼とは、バイオマスを含む成型物を熱処理することをいい、この熱処理温度としては、140℃以上350℃以下が好ましく、240℃以上280℃以下がより好ましい。焙焼時間としては、特に限定されず、通常5分以上10時間以下、好ましくは10分以上8時間以下である。この焙焼により、成型物中の水分が蒸発すると共に有機物が部分的に分解し、質量(乾燥基準)が初期質量の70%程度となる。しかしながら、揮発分は75〜90質量%保持されるため、単位質量あたりの熱量が上昇し、石炭と同程度の熱量となる。また、焙焼の際には水分が蒸発するため、多孔質形状を形成することができ、これにより、比較的密度が高くかつ脆い状態の成型物を得ることができる。さらに、焙焼された成型物は、疎水性が高まるため、高い保存安定性を有し長期保存等に優れる。
【0038】
上記焙焼は、公知の加熱(焙焼)装置を用いて行うことができ、例えば、多段加熱炉、回転ドラム式反応器、移送層式反応器、スクリューコンベアー式反応器、環状流動型の炉、連続ベルト式反応器、ターボ式乾燥機、マイクロ波式反応器等を挙げることができる。これらの中でも、成形したバイオマスを回転あるいは流動させることが可能な炉のほうが該成形したバイオマスへの伝熱が良好であること、また成形体の外表面が先に焙焼され固化されることで、成形体自体の微細化が抑制され効率的に焙焼が進む事から回転式又は流動式の乾燥炉を用いることが好ましく、より好ましくは、炉内の酸素濃度を制御し、排ガス中の酸素濃度が15%以下に調整されたロータリーキルンを用いることが過度の酸化や燃焼を抑える面からより好ましい。ロータリーキルンは、通常、成型物が供給される筒と、この筒の内部に備えられ、成型物を送り出すスパイラルリフターとを有する。このようなロータリーキルンを用いることで、バイオマスを含む成型物を連続的に、焙焼及び冷却することができる。また、焙焼に先駆けて、成型物の水分量を減少させる乾燥も一体的に行うことができるため、設備費や製造コストの削減にも繋がる。さらに、ロータリーキルンは、通常、内部に成型物を撹拌・掻揚する並行リフターを有する。このようなロータリーキルンを用いることで、成型物の焙焼や冷却等を均一に行うことができる。なお、上記成型物は、焙焼に先立って成型工程を経ることでバイオマス中のリグニン等が溶融し、バイオマス同士が結着しているため、上記ロータリーキルンを用いて焙焼しても、焙焼後は成形後の形状をほぼ同様に保つことができる。
【0039】
なお、この焙焼の際のバイオマスの雰囲気は、空気でよいが、低酸素濃度下で行うことが好ましい。低酸素濃度下で行うことで、バイオマス自体の燃焼が生じることを抑制することができ、その結果、得られる固形燃料の発熱量を向上させることができる。炉内の酸素濃度としては、例えば5体積%以上15体積%以下が好ましい。
【0040】
焙焼工程における工程温度は上述の熱処理温度が好ましい。焙焼工程における工程温度を上記範囲内とすることで、バイオマスを十分に焙焼できる傾向がある。工程温度が上記上限を超えると、製造コストが多く必要となる場合がある。逆に、工程温度が上記下限未満であると、バイオマスの焙焼が不十分となる場合がある。
【0041】
<固形燃料>
上記固形燃料の製造方法により得られる本発明の固形燃料は、上述のように既に成型されている状態のバイオマスを焙焼して得られたものであるため、成型性に優れる。また、当該固形燃料は、バイオマスを成型後に焙焼することで多孔質状となるため、石炭と混合する場合の粉砕性にも優れる。
【0042】
当該固形燃料の密度としては、0.6g/cm
3以上2.0g/cm
3以下が好ましく、0.8g/cm
3以上1.8g/cm
3以下がより好ましい。当該固形燃料の密度を上記範囲とすることで、石炭との密度差が小さくなる。当該固形燃料は、石炭の代替として好適に用いることができるため、石炭と混合してボイラー等の燃料に用いることが想定される。その場合、当該固形燃料と石炭とは、後に詳述するように、ミル等で押しつぶされながら微粉化される。そのため、当該固形燃料と石炭との密度差が小さい方が、二者をより均一に混合することができ、かつ、同等の速度で粉砕することができる。従って、当該固形燃料の密度を上記範囲とすることで、熱量がより均一化され、安定的な燃焼性を発揮することができる。なお、当該固形燃料の密度が上記下限未満の場合は、混合及び粉砕の際に石炭との分離等が生じ、均一かつ効率的な混合及び粉砕が困難となる場合がある。逆に、当該固形燃料の密度が上記上限を超えると、成型物が粉砕されにくくなり、石炭との混合が不均一となる場合がある。
【0043】
当該固形燃料の形状としては、特に限定されず、例えば球状、柱状等が挙げられるが、柱状が好ましい。上記柱状としては、例えば円柱状、四角柱状、三角柱状等が挙げられるが、円柱状が好ましい。このように当該固形燃料の形状を柱状とすることで、石炭と混合する場合の粉砕を容易に行うことができるとともに、石炭の均一な混合性を得ることができる。
【0044】
当該固形燃料のアスペクト比としては、2以上10以下が好ましく、3以上8以下がより好ましい。当該固形燃料のアスペクト比が上記下限未満の場合、体積に対する面積比が小さくなるため、中心部が燃え残りやすく十分な発熱量を得られないおそれがある。逆に、当該固形燃料のアスペクト比が上記上限を超えると、成型が困難となったり、運搬等の際に折れが生じたりする等、取扱性が低下するおそれがある。ここで、アスペクト比とは、底面の直径に対する高さの比(高さ/直径)をいう。なお、底面が円ではない場合、直径は2(S/π)
1/2(Sは底面積)で求められる値とする。
【0045】
当該固形燃料の断面積としては、12mm
2以上180mm
2以下が好ましく、24mm
2以上120mm
2以下がより好ましい。また、当該固形燃料の高さとしては、4mm以上60mm以下が好ましく、8mm以上40mm以下がより好ましい。このように当該固形燃料のサイズを上記範囲とすることで、取扱性を高めつつ、混合及び粉砕をより均一に行うことができる。当該固形燃料の断面積及び高さが上記下限未満の場合は、サイズが小さくなりすぎて取扱性が低下する場合がある。逆に、当該固形燃料の断面積及び高さが上記上限を超えると石炭との均一な混合が困難となる場合がある。
【0046】
このように当該固形燃料によれば、石炭と混合したり、石炭との混合状態で粉砕したりする場合の混合性や粉砕性を向上させることができる。
【0047】
固形燃料の総発熱量は、特に限定されず、通常13MJ/kg以上32MJ/kg以下、好ましくは15MJ/kg以上30MJ/kg以下である。固形燃料の総発熱量を上記範囲内とすることで、上記取扱性や粉砕性に加えて、固形燃料の燃焼性を高められる傾向がある。総発熱量が上記上限を超えると、固形燃料の製造コストが多く必要となる場合がある。総発熱量が上記下限未満であると、固形燃料の燃焼性が低下する場合がある。
【0048】
<固形燃料の使用方法>
当該固形燃料は、従来から使用されている石炭等の代替燃料として使用することができる。なかでも、当該固形燃料は、石炭と同程度の熱量を有するため、石炭の代替として好適に用いることができ、特に石炭と混合して混合燃料として用いることが好ましい。当該固形燃料を混合燃料として使用する際には、以下の混合工程と粉砕工程とを経ることが好ましい。
【0049】
(混合工程)
本工程では、当該固形燃料と石炭とを混合する。このように、石炭と混合することで、高い熱量を安定して得られる混合燃料とすることができる。当該固形燃料と混合する石炭としては、特に限定されず、例えば無煙炭、瀝青炭、褐炭、亜炭、泥炭等のいずれも用いることができる。
【0050】
混合方法としては特に限定されず、当該固形燃料と石炭とをそれぞれベルトコンベア等の搬送手段により搬送し、石炭バンカー等に供給することにより行えばよい。
【0051】
この混合工程における当該固形燃料と石炭との混合比としては、特に制限されないが、質量基準で、5:95以上50:50以下が好ましく、10:90以上40:60以下がより好ましい。当該固形燃料と石炭との混合比が上記下限未満の場合は、バイオマスの有効利用を十分に図ることができない。一方、当該固形燃料の混合比が上記上限を超える場合は、発熱量の安定性に支障をきたす場合がある。
【0052】
混合する石炭の密度に対する当該固形燃料の密度の比(石炭の密度/成型物の密度)としては、0.5以上2以下が好ましく、0.67以上1.5以下がより好ましく、0.75以上1.33以下がさらに好ましい。このように二者の密度を近づけることで、固形燃料と石炭との混合及び粉砕を均一にすることができ、得られる混合燃料の燃焼安定性をさらに高めることができる。
【0053】
上記石炭は、一定程度の粒径にまで粗粉砕されたものが好ましい。このような石炭を用いることで、固形燃料と石炭とのより均一な混合を図ることができる。粗粉砕された石炭の粒径としては、60mm以下が好ましく、2mm以上50mm以下がより好ましい。石炭を粗粉砕する方法としては、特に限定されず、例えばクラッシャー等の公知の粗粉砕機により行うことができる。
【0054】
(粉砕工程)
上記混合工程の後には、粉砕工程を経ることが好ましい。粉砕工程では、混合された当該固形燃料と石炭とを共に粉砕し、微粉状の混合燃料を得ることができる。この際の粉砕手段としては、特に限定されず、竪型ローラミル、ボールミル、振動ミル、ローラミル等が挙げられる。なお、上述のように混合工程として、一旦石炭バンカー等での混合・貯留を経ずに、固形燃料と石炭とを粉砕機に直接供給し、粉砕機において、混合と粉砕とを行ってもよい。
【0055】
この粉砕の程度は特に限定されないが、例えば、100メッシュパスが95質量%以上となるように粉砕することが好ましい。95質量%を下回ると、燃焼後の燃焼残渣に未燃分が残る等、燃焼効率が低下するおそれがある。
【0056】
このように粉砕工程を経て得られた混合燃料は、例えばボイラー用燃料、セメントキルン用燃料等として好適に用いることができる。例えば、ボイラー用燃料として用いる場合、石炭ボイラーには、上記粉砕された微粉状の混合燃料が燃料として供給される。この石炭ボイラーには、燃焼用空気が吹き込まれ、上記混合燃料が燃焼する。この際、石炭ボイラー内に配設されるチューブ内を通る水が上記混合燃料の燃焼により加熱され、蒸気として石炭ボイラーから排出される。
【実施例】
【0057】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
杉から得られた樹皮チップを破砕装置で破砕した後、目開き50mmの篩を通してバイオマス原料とした(総発熱量21MJ/kg)。このバイオマス原料100質量部に対して、バインダーとしての黒液を固形分換算で5質量部混合し(混合物の水分量1.5質量%)、これを押出成型機を用いて、高さ30mm、直径6mm、アスペクト比5の円柱状の成型物(ペレット)とした。ペレット化の際の加熱温度は140℃だった。得られたペレットをロータリーキルンに供給し、250℃で、30分間熱処理することで焙焼された固形燃料を得た(総発熱量32MJ/kg)。なお、焙焼工程におけるキルン内の酸素濃度は10体積%に制御して行った。得られた固形燃料の密度は2.00g/cm
3、水分量は0.5質量%であった。
【0059】
<実施例2〜6>
バイオマスの成型(ペレット化)に係る各条件を表1に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2〜6の固形燃料を得た。なお、実施例2でバインダーとして用いた澱粉は、日本食品化工社製、製品名「MS3800」(コーンスターチ)を使用した。
【0060】
<比較例1>
バイオマスを成型せずにそのまま焙焼し、焙焼後に成型したこと以外は実施例1と同様にして比較例1の燃料を得た。
【0061】
(成型性評価)
実施例1〜6、及び比較例1の固形燃料の成型性を以下の基準にて評価した。評価結果を表1に示す。
評価基準
A:ペレット状に容易に成型することができ、成型後も崩れにくい。
B:ペレット状に成型することができるが、成型後に崩れやすい。
C:ペレット状に成型することが困難である。
【0062】
(粉砕性評価)
実施例1〜6、及び比較例1の固形燃料と、粗粉砕した石炭とを3:7の質量比で混合した後、この混合物をローラミルを用いて粉砕し、粉末状の混合燃料を得た。得られた混合燃料が均一に粉砕されているか否かを目視にて、以下の基準にて評価した。評価結果を表1に示す。
評価基準
A:均一に微粉砕されている。
B:所々にやや大きい粒状物(固形燃料)の存在が確認できる。
C:粉砕されていない粒状物(固形燃料)の存在が目立つ。
【0063】
(総発熱量)
総発熱量は、JIS M 8814:2003「石炭類及びコークス類―ボンブ熱量計による総発熱量の測定方法及び真発熱量の計算方法」に準拠して10の試料を測定し、それらの平均値を値とした。
【0064】
【表1】
【0065】
表中、実施例2においては、2つのバインダーを質量比率は固形分換算で50:50の割合である。リグニン含有量は黒液固形分中の含有割合である。
【0066】
表1に示されるように、本発明の製造方法によれば、成型性及び粉砕性が良好な、バイオマスを含む固形燃料を得ることができる。従って、このようにして得られた固形燃料は、石炭等の代替燃料として好適に用いることができる。